説明

非接触充電装置

【課題】充電部12に設けられるリチウムイオン電池34の充電状態に応じて適切な電力を給電部11から充電部12に送電することが可能な非接触充電装置を提供する。
【解決手段】給電部11では、第1の周期(T1)となる波形、及び第2の周期(T2)となる波形を、それぞれ「1」,「0」のビット信号に対応させて、送電コイル25に供給する交流電圧を変調し、該交流電圧に通信信号を重畳する。従って、給電部11と充電部12との間での双方向通信を行うことができ、リチウムイオン電池34の充電状態を確認した上で給電部11側からの電力の給電を行うことができる。その結果、リチウムイオン電池34の充電状態を常時適切な状態に維持することができ、且つ、不要な電力の給電を停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電部から充電部に非接触で電力を供給して充電部に設けられたバッテリを充電する非接触充電装置に係り、特に、給電部と充電部との間で双方向通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業者が工事現場で作業する際に着用する作業服やヘルメット等の着用品には、照明機器、冷却装置等の電気機器が搭載されるタイプのものがあり、このような着用品には、電気機器に電力を供給するためのバッテリが搭載される。
【0003】
従って、作業者は定期的(例えば、一日の作業が終了したとき)にバッテリを充電し、次回の使用時に備える必要がある。ところが、一日の作業が終了した後においては作業者は疲労していることが多く、作業服やヘルメットに装着されたバッテリを専用の充電器に接続して、充電操作を行うという面倒な操作を割愛することが多々あり得る。
【0004】
そこで、バッテリ(充電部)と電源回路(給電部)とを電線で接続するという面倒な操作を必要とせず、電源側からバッテリ側に非接触で電力を送電することによりバッテリを充電する技術として、例えば特開2006−314181号公報(特許文献1)に記載されているものが提案されている。該特許文献1には、給電側に送電コイルを設け、且つ、充電側に受電コイルを設け、送電コイルと受電コイルを近接して配置することにより、給電側で発生した電力を非接触で充電側に送電し、充電側に設けられたバッテリを充電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−314181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来における非接触充電装置では、送電コイルに一定の電圧を供給して電力を送電する方式であり、バッテリの充電状態を考慮していない。従って、バッテリの充電量が多く、これ以上の充電が不要である場合でも給電部から電力が送電されることや、バッテリの充電量が低下して、充電に多くの電力が必要な場合でも供給電力を増大する制御が行われないことがあり、バッテリを効率良く充電することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、充電部に設けられる蓄電手段の充電状態に応じて適切な電力を給電部から充電部に送電することが可能な非接触充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、給電部、及び該給電部に近接配置される充電部を備え、前記給電部より送電される電力を前記充電部にて受電してこの電力を充電する非接触充電装置において、前記給電部は、電源より供給される交流電圧を通電する送電コイルと、前記送電コイルに供給する交流電圧の波形を第1の周期で決定される第1波形(「1」)、及び前記第1の周期の2倍の周期となる第2の周期で決定される第2波形(「0」)のいずれかにより変調して、該交流電圧に通信信号を重畳する給電側通信制御手段(24)と、を有し、前記充電部は、前記送電コイルに対して近接配置されて、前記送電コイルより送信される電力を受電する受電コイルと、前記受電コイルで受電された電力を充電する蓄電手段(リチウムイオン電池34)と、前記受電コイルにて受電される交流電圧の波形を前記第1波形(「1」)、及び前記第2波形(「0」)のいずれかにより変調して、該交流電圧に通信信号を重畳する充電側通信制御手段(35)と、を有し、更に、前記給電側通信制御手段は、前記充電側通信制御手段により変調された通信信号を復調して受信する機能を有し、前記充電側通信制御手段は、前記給電側通信制御手段により変調された通信信号を復調して受信する機能を有すること、を特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記充電部は、前記蓄電手段の充電状態を監視する監視手段(36)を有し、前記給電側通信手段は、前記蓄電手段の充電状態の監視要求信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、前記充電側通信手段は、前記監視要求信号を受信した際に、前記蓄電手段の充電状態を示す充電状態検出信号を通信信号として送信することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記蓄電手段は複数個設置され、且つ、前記充電部は前記各蓄電手段の充電状態を監視する監視手段(36)を有し、前記給電側通信手段は、前記蓄電手段の個数を確認する電池個数確認信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、前記充電側通信手段は、前記電池個数確認信号を受信した際に、前記蓄電手段の個数を示す電池個数検出信号を通信信号として送信することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記充電部は、前記蓄電手段の充電状態を監視する監視手段(36)を有し、前記充電側通信手段は、任意のタイミングで前記蓄電手段の充電が必要であるか否かを示す給電確認信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、前記給電側通信手段は、前記給電確認信号を受信し、充電が必要であると判断した場合には、交流電圧を送電し、充電が不要であると判断した場合には、交流電圧の送電を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る非接触充電装置では、給電部から充電部に送電する交流電圧の波形に通信信号を重畳するので、別途の通信回線を設けることなく送電コイルと受電コイルとの間での双方向通信を行うことができる。また、双方向通信により、蓄電手段の充電状態を確認した上で、交流電圧を給電することができるので、蓄電手段の充電状態に応じた適切な電力供給が可能となる。従って、蓄電手段の充電状態に応じた適切な給電制御を行うことが可能となる。
【0013】
更に、交流電圧に通信信号を重畳する際に、第1の周期となる波形、及び第2の周期となる波形の2通りの波形を用いて交流電圧を変調する方式を採用し、且つ、送電コイルと受電コイルは近接して配置されるので、周辺機器からの妨害波による影響を低減することができ、通信エラーの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置で用いられる通信信号の変調方式を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置で、充電量制御を実行する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置で、給電量の適正化制御を実行する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置で、給電要求待ち制御を実行する際の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非接触充電装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この非接触充電装置10は、電力を供給する給電部11と、給電部11より供給される電力を受電してリチウムイオン電池34に充電する充電部12に大別して構成されている。なお、本実施形態では、蓄電手段の一例としてリチウムイオン電池34を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の電池を用いることが可能である。
【0016】
そして、本実施形態に係る非接触充電装置10は、例えば、充電部12をLED照明付きのヘルメットに搭載し、給電部11をヘルメットの収容棚に搭載し、ヘルメットが収容棚に収容されているときに、非接触で給電部11から充電部12へ電力を送電し、ヘルメット内に設けられる電池を充電する場合等に用いることができる。
【0017】
図1に示す給電部11は、電源回路21と、給電回路22と、送受信回路23と、制御回路24(給電側通信制御手段)、及び送電コイル25を有している。
【0018】
電源回路21は、外部に設けられる商用電源より供給される交流電圧(例えば、50Hz,100V)から、制御用電圧(例えば、DC12V)を生成する。給電部11に設けられる各機器は、この制御用電圧により駆動する。
【0019】
給電回路22は、内部にインバータ回路(図示省略)を備え、電源回路21を経由して得られる交流電圧(50Hz,100V)を、所望の周波数(例えば、100Hz)の電圧に変換する機能を有する。従って、周波数を変化させることにより、送電コイル25に供給する電力を調整することができる。
【0020】
送受信回路23は、給電回路22より出力される交流電圧に、後述する変調方式により制御回路24より出力される通信信号(後述する、監視要求信号、電池個数確認信号)を重畳し、通信信号が重畳された交流電圧を送電コイル25に出力する。また、充電部12より送信され送電コイル25で受信される通信信号(後述する、充電状態検出信号、電池個数検出信号、給電確認信号)を復調して制御回路24に出力する。
【0021】
制御回路24は、外部機器(図示省略)より供給される各種の通信信号に基づいて、「0」,「1」からなるビット列信号を生成し、このビット列信号を送受信回路23に出力する。また、送受信回路23で受信される通信信号より、「0」,「1」からなるビット列信号を取り出して、このビット列信号を外部機器に出力する。
【0022】
一方、充電部12は、送受信回路31と、受電回路32と、充電回路33と、リチウムイオン電池34(蓄電手段)と、通信回路35(充電側通信制御手段)と、充電状態監視回路36、及び受電コイル37を有している。そして、該充電部12は、受電コイル37と給電部11に設けられる送電コイル25とが互いに近接して配置された状態で、送電コイル25に交流電圧が供給された際に、受電コイル37で受電される交流電圧をリチウムイオン電池34に供給し、該リチウムイオン電池34を充電する。また、交流電圧に各種の通信信号(後述する、監視要求信号、電池個数確認信号)が重畳されている場合には、この通信信号に対する応答となる通信信号(後述する、充電状態検出信号、電池個数検出信号、給電確認信号)を送信する。
【0023】
送受信回路31は、受電コイル37で受電された交流電圧を受信すると共に、該交流電圧に通信信号が重畳されている場合には、この通信信号を復調して、通信回路35に出力する。また、通信回路35より、「0」,「1」のビット列からなる通信信号が出力された場合には、後述する変調方式によりこの通信信号を、受電コイル37で受電された交流電圧に重畳する。この通信信号は、給電部11の送電コイル25で受電されることになる。
【0024】
受電回路32は、受電コイル37で受電された交流電圧を整流して直流電圧に変換し、この直流電圧を充電回路33に出力する。
【0025】
充電回路33は、受電回路32より供給される直流電圧を所望の電圧に降圧し、降圧後の直流電圧をリチウムイオン電池34に供給して該リチウムイオン電池34を充電する。また、リチウムイオン電池34の出力電圧を随時測定し、測定した電圧データを充電状態監視回路36に出力する。なお、図1では、1個のリチウムイオン電池34を記載しているが、リチウムイオン電池34が複数個設けられる場合もある。
【0026】
充電状態監視回路36(監視手段)は、リチウムイオン電池34の出力電圧に基づいて、該リチウムイオン電池34の充電状態(満充電を100%とした場合の充電量)を検出し、この検出信号を通信回路35に出力する。また、リチウムイオン電池34が複数設けられる場合においては、各リチウムイオン電池34毎に充電状態を検出する。
【0027】
通信回路35は、給電部11側に送信する通信信号が与えられた場合に、この通信信号から「0」,「1」のビット列からなる信号を生成し、この信号を送受信回路31に出力する。例えば、充電状態監視回路36よりリチウムイオン電池34の充電状態を示す信号が供給された場合には、この信号から「0」,「1」のビット列からなる信号を生成し、この信号を充電状態検出信号として送受信回路31に出力する。
【0028】
次に、各送受信回路23,31で用いられる変調方式について説明する。図2は、給電部11の送受信回路23、及び充電部12の送受信回路31における変調方式を示す説明図であり、図2(a)は変調前の電力波形を示し、図2(b)は変調後の電力波形を示している。
【0029】
本実施形態で採用する変調方式は、送電コイル25、或いは受電コイル37に発生する交流電圧の波形(例えば、100Hz;図2(a)参照)を、周期T1(第1の周期)で振幅する信号を「1」(第1波形)とし、周期T1の2倍の周期T2(第2の周期)で振幅する信号を「0」(第2波形)として変調し、「1」、「0」のビット列からなる通信信号を交流電圧に重畳する。その結果、例えば、図2(b)に示すように、周期T1,T2からなる波形(例えば、周波数10Hz)に交流電圧波形の振幅が変調されることになる。そして、この「1」、「0」のビット列からなる通信信号により、給電部11と充電部12との間での双方向通信が行われることになる。
【0030】
次に、本実施形態に係る非接触充電装置10の動作について説明する。本実施形態では、リチウムイオン電池34の充電量を制御する処理、充電部12に設置されるリチウムイオン電池34の個数に応じて適正な充電を行うように制御する処理、及び、充電部12側からの要求を待って給電する処理の、3つの処理手順についてそれぞれ説明する。
【0031】
[リチウムイオン電池の充電量を制御する処理]
図3は、本実施形態に係る非接触充電装置10による充電量制御処理を示すフローチャートである。初めに、充電部12の充電状態監視回路36は、リチウムイオン電池34の充電量を測定する(ステップS11)。この測定では、リチウムイオン電池34が満充電である場合を100%としたときの充電量を測定する。
【0032】
次いで、給電部11の制御回路24は外部より供給される入力信号に基づいて、リチウムイオン電池34の充電量を設定する(ステップS12)。
【0033】
その後、給電部11の給電回路22は、電源回路21より出力される電圧から、所望周波数の交流電圧(例えば、100Hz,100V)を生成して送受信回路23に出力し、更に、該送受信回路23は、この交流電圧を送電コイル25に出力する(ステップS13)。その結果、送電コイル25に対して近接して配置される受電コイル37に交流電圧が発生し、該交流電圧は送受信回路31で受信され、受電回路32で直流電圧に整流された後、充電回路33に供給される。その結果、リチウムイオン電池34に直流電圧が印加されて電力が充電される。
【0034】
次いで、給電部11の制御回路24は、現在のリチウムイオン電池34の充電量を監視するための監視要求信号(通信信号)を「1」,「0」のビット列からなる信号として生成し、この監視要求信号を送受信回路23に出力する。その後、該送受信回路23は、図2に示した変調方式を用いて、「1」,「0」のビット列からなる監視要求信号を交流電圧に重畳する。その結果、監視要求信号が重畳した交流電圧が送電コイル25から受電コイル37に送信されることになる(ステップS14)。
【0035】
その後、充電部12の受電コイル37は、監視要求信号が重畳した交流電圧を受信する(ステップS15)。この交流電圧は送受信回路31で受信され、更に、通信回路35にて復調されて監視要求信号が取り出される。そして、充電状態監視回路36は、この監視要求信号を受けて、現在のリチウムイオン電池34の充電量を示す信号を通信回路35に出力する。
【0036】
通信回路35は、充電量を示す信号から「1」,「0」のビット列からなる充電状態検出信号を生成し、この信号を充電状態検出信号(通信信号)として送受信回路31に出力する。該送受信回路31は、受電コイル37で受電される交流電圧に、図2に示した変調方式を用いて、充電状態検出信号を重畳する。その結果、充電状態検出信号が重畳した交流電圧が送電コイル25から受電コイル37に送信されることになる(ステップS16)。
【0037】
その後、給電部11の送電コイル25は、充電状態検出信号が重畳した交流電圧を受信する(ステップS17)。この交流電圧は送受信回路23に送信され、更に、制御回路24にて復調されて充電状態検出信号が取り出される。そして、制御回路24は、この充電状態検出信号に基づいて、現在のリチウムイオン電池34の充電量が適正な充電量であるか否かを判断する(ステップS18)。
【0038】
そして、適正な充電量であると判断された場合には、本処理を終了する。また、充電量が多いと判断された場合には、給電回路22で生成される交流電圧の周波数を低下させることにより送電する電力を低下させ、リチウムイオン電池34の充電量が高くなり過ぎないように調整する。他方、充電量が少ないと判断された場合には、給電回路22で生成される交流電圧の周波数を増大させることにより、送電する電力を増加させ、リチウムイオン電池34の充電量が高くなるように調整する。こうして、給電部11と充電部12との間で双方向通信を行うことにより、リチウムイオン電池34の充電量が適正な充電量となるように、交流電圧の周波数を適宜設定することができるのである。
【0039】
[電池の個数に応じて適正な充電を行うように制御する処理]
次に、充電部12に複数のリチウムイオン電池34が設置され、該リチウムイオン電池の個数に応じて、給電部11側より送電する電力が適正となるように制御する処理を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図1に示した回路図では、リチウムイオン電池34が1個のみ設けられている場合について示しているが、この例ではリチウムイオン電池34が複数個設けられている場合を想定している。
【0040】
初めに、充電部12の充電状態監視回路36は、充電対象となるリチウムイオン電池34の個数を特定する(ステップS31)。
【0041】
次いで、給電部11の給電回路22は、電源回路21より出力される電圧から、所望周波数の交流電圧(例えば、100Hz,100V)を生成して送受信回路23に出力し、更に、該送受信回路23は、この交流電圧を送電コイル25に供給する(ステップS32)。その結果、送電コイル25に対して近接して配置される受電コイル37に交流電圧が発生し、該交流電圧は送受信回路31で受信され、受電回路32で直流電圧に整流された後、充電回路33に供給される。その結果、リチウムイオン電池34に直流電圧が印加されて電力が充電される。
【0042】
その後、給電部11の制御回路24は、充電対象となるリチウムイオン電池34の個数を確認するための信号を「1」,「0」のビット列からなる信号として生成し、この信号を電池個数確認信号(通信信号)として送受信回路23に出力する。送受信回路23は、図2に示した変調方式を用いて、電池個数確認信号を交流電圧に重畳する。その結果、電池個数確認信号が重畳した交流電圧が送電コイル25から受電コイル37に送信されることになる(ステップS33)。
【0043】
次いで、充電部12の受電コイル37は、電池個数確認信号が重畳した交流電圧を受信する(ステップS34)。この交流電圧は送受信回路31で受信され、更に、通信回路35にて復調されて電池個数確認信号が取り出される。そして、充電状態監視回路36は、この電池個数確認信号を受けて、充電対象となるリチウムイオン電池34の個数を示す信号を通信回路35に出力する。
【0044】
通信回路35は、リチウムイオン電池34の個数を示す信号から「1」,「0」のビット列からなる信号を生成し、この信号を電池個数検出信号として送受信回路31に出力する。該送受信回路31は、受電コイル37で受電される交流電圧に、図2に示した変調方式を用いて、電池個数検出信号を重畳する。その結果、電池個数検出信号が重畳した交流電圧が送電コイル25から受電コイル37に送信されることになる(ステップS35)。
【0045】
その後、給電部11の送電コイル25は、電池個数検出信号が重畳した交流電圧を受信する(ステップS36)。この交流電圧は送受信回路23で受信され、更に、制御回路24にて復調されて電池個数検出信号が取り出される。そして、制御回路24は、この電池個数検出信号に基づいて、充電対象となるリチウムイオン電池34の個数が特定されたか否かを判断する(ステップS37)。
【0046】
電池個数が特定された場合には(ステップS37でYES)、特定された電池個数に応じた充電量制御を行う(ステップS38)。他方、電池個数が特定されない場合には(ステップS37でNO)、図3に示したように、通常の充電量制御を実施する(ステップS39)。こうして、充電部12に複数のリチウムイオン電池34が設置されている場合においても、このリチウムイオン電池34の個数に応じた適切な給電制御を行うことができるのである。
【0047】
[充電部からの要求を待って給電する処理]
次に、充電部12からの充電要求が発生した場合に、給電部11からの交流電圧の供給を開始する処理について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、充電部12は、所定時間毎のポーリングを設定し、所定時間が経過する毎に給電部11との間の通信を行う(ステップS51)。
【0048】
また、充電状態監視回路36は、リチウムイオン電池34の充電状態を監視して、充電が必要であるか否かを判断する(ステップS52)。この処理では、例えば、リチウムイオン電池34の充電量が50%未満である場合に充電が必要であると判断する。そして、通信回路35は、充電が必要であるか否かを示す信号に基づいて「1」,「0」のビット列からなる信号を生成し、この信号を給電確認信号として送受信回路31に出力する。該送受信回路31は、受電コイル37で受電される交流電圧に、図2に示した変調方式を用いて、給電確認信号を重畳する。その結果、給電確認信号が重畳した交流電圧が受電コイル37から送電コイル25に送信されることになる(ステップS53)。
【0049】
その後、給電部11の送電コイル25は、給電確認信号が重畳した交流電圧を受信する(ステップS54)。この交流電圧は送受信回路23で受信され、更に、制御回路24にて復調されて給電確認信号が取り出される。そして、制御回路24はこの給電確認信号に基づいて、リチウムイオン電池34を充電する必要があるか否かを判断する(ステップS55)。
【0050】
そして、充電する必要があると判断された場合には(ステップS55でYES)、給電回路22から交流電圧を出力して電力を充電部12側に送電する(ステップS57)。即ち、送電中でない場合には送電を開始し、送電中である場合には送電を継続する。他方、充電する必要がないと判断された場合には(ステップS55でNO)、給電部11からの交流電圧の出力を停止する(ステップS56)。こうして、所定時間毎にリチウムイオン電池34の充電量を確認し、充電量が低下している場合に、給電部11から電力が供給されるように制御して、リチウムイオン電池34を適切に充電することができるのである。
【0051】
次に、本実施形態に係る非接触充電装置10の具体的な実施例について説明する。
【0052】
[実施例1]
LED照明付きのヘルメットに充電部12を設け、且つ、ヘルメットを収容する収容棚に給電部11を設けることにより、ヘルメットを収容した状態で送電コイル25と受電コイルが近接配置されるようにして、給電部11側から充電部12側に非接触で電力を供給する構成とする。このような構成とすれば、作業者が作業を終了してヘルメットを収容棚に収容した場合で、該ヘルメットに搭載される電池の充電量が低下している場合に、この電池の充電量が適切な充電量となるようにすることが可能となる。また、電池の充電量が適正な数値に達した場合には、給電部11からの電力供給が停止するので、不要な電力消費を削減することができる。
【0053】
[実施例2]
作業服の背中となる部位に受電コイル37を搭載し、車両のシートバック(シートの背もたれ)に送電コイル25を搭載し、作業者が車両に乗車してシートに着座した際に、送電コイル25と受電コイル37が近接配置されるようにして、作業者が携帯する電池を充電する構成とする。このような構成とすれば、例えば、LEDベスト(LED照明を搭載したベスト)を着用する作業者は車両のシートに着座することにより、電池の充電量が適切な充電量となるようにすることが可能となる。この場合においても、電池の充電量が適正な数値に達した場合には、給電部11からの電力供給が停止するので、不要な電力消費を削減することができる。
【0054】
[実施例3]
作業者が着用する靴に受電コイル37を搭載し、休憩所等に設置されるフロアマットに送電コイル25を搭載し、作業者が休憩中でフロアマットの上に靴を乗せているときに、送電コイル25と受電コイル37が近接配置されるようにして、作業者が携帯する電池を充電する構成とする。このような構成とすれば、上記と同様に、LEDベストを着用する作業者は、休憩時にフロアマットの上に靴を乗せることにより、電池の充電量が適切な充電量となるようにすることが可能となる。
【0055】
このようにして、本実施形態に係る非接触充電装置10では、給電部11から充電部12へ交流電圧を非接触で送電して、充電部12に設けられるリチウムイオン電池34を充電することができる。また、給電部11から充電部12に送電する交流電圧の波形に通信信号を重畳する方式を採用しているので、別途の通信回線を設けることなく送電コイル25と受電コイル37との間での双方向通信を行うことができる。
【0056】
更に、双方向通信により、リチウムイオン電池34の充電状態を確認した上で、交流電圧を給電することができるので、リチウムイオン電池34の充電状態に応じた適切な電力供給が可能となる。従って、リチウムイオン電池34の充電量が多く、これ以上の充電が不要である場合でも給電部11から交流電圧が送電されることや、リチウムイオン電池34の充電量が低下して、充電に多くの電力が必要な場合でも供給電力を増大する制御が行われないという従来の問題を解消することができ、リチウムイオン電池34の充電状態に応じた適切な給電制御を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る非接触充電装置10では、交流電圧に通信信号を重畳する際に、第1の周期となる波形(図2に示すT1で示される波形)、及び第2の周期となる波形(図2に示すT2で示される波形)の2通りの波形をそれぞれ「1」,「0」のビット信号に対応させて交流電圧を変調する方式を採用し、且つ、送電コイル25と受電コイル37は近接して配置されるので、周辺機器からの妨害波による影響を低減することができ、通信エラーの発生を低減することができる。
【0058】
更に、給電部11と充電部12との間で通信される通信データは数ビット程度であるので、送電する電力に与える影響は少ない。
【0059】
以上、本発明の非接触充電装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、非接触で電池を充電する際の効率を向上させる上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 非接触充電装置
11 給電部
12 充電部
21 電源回路
22 給電回路
23 送受信回路
24 制御回路
25 送電コイル
31 送受信回路
32 受電回路
33 充電回路
34 リチウムイオン電池
35 通信回路
36 充電状態監視回路
37 受電コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電部、及び該給電部に近接配置される充電部を備え、前記給電部より送電される電力を前記充電部にて受電してこの電力を充電する非接触充電装置において、
前記給電部は、
電源より供給される交流電圧を通電する送電コイルと、前記送電コイルに供給する交流電圧の波形を第1の周期で決定される第1波形、及び前記第1の周期の2倍の周期となる第2の周期で決定される第2波形のいずれかにより変調して、該交流電圧に通信信号を重畳する給電側通信制御手段と、を有し、
前記充電部は、
前記送電コイルに対して近接配置されて、前記送電コイルより送信される電力を受電する受電コイルと、前記受電コイルで受電された電力を充電する蓄電手段と、前記受電コイルにて受電される交流電圧の波形を前記第1波形、及び前記第2波形のいずれかにより変調して、該交流電圧に通信信号を重畳する充電側通信制御手段と、を有し、
更に、
前記給電側通信制御手段は、前記充電側通信制御手段により変調された通信信号を復調して受信する機能を有し、前記充電側通信制御手段は、前記給電側通信制御手段により変調された通信信号を復調して受信する機能を有すること、
を特徴とする非接触充電装置。
【請求項2】
前記充電部は、前記蓄電手段の充電状態を監視する監視手段を有し、
前記給電側通信手段は、前記蓄電手段の充電状態の監視要求信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、
前記充電側通信手段は、前記監視要求信号を受信した際に、前記蓄電手段の充電状態を示す充電状態検出信号を通信信号として送信することを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項3】
前記蓄電手段は複数個設置され、且つ、前記充電部は前記各蓄電手段の充電状態を監視する監視手段を有し、
前記給電側通信手段は、前記蓄電手段の個数を確認する電池個数確認信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、
前記充電側通信手段は、前記電池個数確認信号を受信した際に、前記蓄電手段の個数を示す電池個数検出信号を通信信号として送信することを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記充電部は、前記蓄電手段の充電状態を監視する監視手段を有し、
前記充電側通信手段は、任意のタイミングで前記蓄電手段の充電が必要であるか否かを示す給電確認信号を通信信号として前記交流電圧に重畳して送信し、
前記給電側通信手段は、前記給電確認信号を受信し、充電が必要であると判断した場合には、交流電圧を送電し、充電が不要であると判断した場合には、交流電圧の送電を停止することを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95461(P2012−95461A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241003(P2010−241003)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】