説明

非接触型データ受送信体およびその製造方法

【課題】製造過程において、基材などの熱収縮による皺の発生を抑制した非接触型データ受送信体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、インレット11と、インレット11の両面に設けられた接着層12と、接着層12を介してインレット11を挟持する第一基材13および第二基材14と、を備え、インレット11の少なくとも対向する2辺に沿う縁部において、間隔を置いて、インレットの厚さ方向にスリット22が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型データ受送信体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICカードは、例えば、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットと、その両面に設けられた接着層と、接着層を介してインレットを挟持する一対の基材とから構成されている。
このような非接触型データ受送信体の製造方法としては、ロール状に巻かれた長尺の材料を用いて、連続的に製造する低圧ラミネート法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−030618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の低圧ラミネート法を用いた製造方法では、材料を正確に搬送できず、製造途中で基材やインレットに皺ができることがある。そのままの状態で接着剤を硬化すると、非接触型データ受送信体に外観不良が生じるという問題があった。
低圧ラミネート法を用いた製造方法において、基材やインレットに皺ができる原因としては、次のようなことが考えられる。
【0005】
非接触型データ受送信体の基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)などが用いられるため、接着剤を硬化させるための加熱工程において、基材が熱収縮する。
また、インレットを構成する基材の一方の面には、アンテナとなる金属箔が設けられているため、インレットは部分的に熱収縮量が異なる。
さらに、接着剤も硬化時に熱収縮する。
そして、長尺の基材などを用いているため、基材に加えられる張力にばらつきがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、製造過程において、基材などの熱収縮による皺の発生を抑制した非接触型データ受送信体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触型データ受送信体は、インレットと、該インレットの両面に設けられた接着層と、該接着層を介して前記インレットを挟持する第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体であって、前記インレットの少なくとも対向する2辺に沿う縁部において、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットが設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットと、該インレットの両面に設けられた接着層と、該接着層を介して前記インレットを挟持する第一基材および第二基材と、を備え、前記インレットの少なくとも対向する2辺に沿う縁部において、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットが設けられた非接触型データ受送信体の製造方法であって、搬送中の長尺の第一基材の一方の面に接着剤を塗布する工程Aと、前記第一基材に塗布した接着剤を介して、前記第一基材の一方の面上に、搬送中の長尺のインレットにおけるICチップが設けられた面を重ね合わせて、前記第一基材に対して前記インレットを押圧することにより、前記第一基材と前記インレットの間に、前記接着剤を展開させる工程Bと、前記接着剤と接している面とは反対の面側から、前記インレットに対し、その搬送方向に沿って、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットを形成する工程Cと、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面に接着剤を塗布する工程Dと、前記インレットに塗布した接着剤を介して、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面上に、搬送中の長尺の第二基材を重ね合わせ、前記インレットに対して前記第二基材を押圧することにより、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面と、前記第二基材との間に、前記接着剤を展開させる工程Eと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、スリットの熱による収縮や反りが相殺されるので、その表面に皺が生じることなく、その皺に起因する凹凸がなく、平滑で一様な外観をなす。
【0010】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、工程Cにおいて、接着剤と接している面とは反対の面側から、インレットに対し、その搬送方向に沿って、間隔を置いてスリットを形成するので、第一基材、接着剤、インレットなどが熱収縮しても、スリットにて、その収縮を緩和することができる。したがって、第一基材、接着剤、インレット、第二基材などの熱収縮に起因する皺ができることなく、表面が平滑でかつ一様な外観をなす非接触型データ受送信体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略断面図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線沿う断面図である。
【図2】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Aを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Bを示す概略斜視図である。
【図4】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Bを示し、図3のC−C線に沿う概略断面図である。
【図5】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Cを示す概略斜視図である。
【図6】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Dを示す概略斜視図である。
【図7】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Eおよび工程Fを示す概略斜視図である。
【図8】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Fを示し、図7のD−D線に沿う概略断面図である。
【図9】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態において、工程Hを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非接触型データ受送信体およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
「非接触型データ受送信体」
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略断面図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線沿う断面図である。
本実施形態の非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状のインレット11と、インレット11の両面(一方の面11aおよび他方の面11b)に設けられた接着層12と、接着層12を介してインレット11を挟持する第一基材13および第二基材14とから概略構成されている。
また、インレット11の一方の面11aに接する接着層12を第一接着層15と言い、インレット11の他方の面11bに接する接着層12を第二接着層16と言う。
【0014】
すなわち、非接触型データ受送信体10は、第一基材13、第一接着層15、インレット11、第二接着層16および第二基材14が、その厚さ方向において、この順に積層された構造をなしている。これにより、非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状をなしている。
【0015】
インレット11は、基材17と、基材17の一方の面17aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ18およびアンテナ19とから概略構成されている。
アンテナ19は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ18と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子20,21からなるダイポールアンテナである。
アンテナ19の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子20,21の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0016】
なお、インレット11の一方の面11aは、基材17の一方の面17aに相当し、インレット11の他方の面11bは、基材17の他方の面17bに相当する。
ゆえに、インレット11の一方の面11aでは、ICチップ18およびアンテナ19が第一接着層15によって覆われている。
インレット11を構成する基材17の長手方向に沿う両縁部には、間隔を置いて、インレット11の基材17の厚さ方向にスリット22が設けられている。
なお、スリット22は、基材17を貫通するように形成されていても、基材17を貫通することなく、基材17の厚さ方向の途中まで形成されていてもよい。
【0017】
第一接着層15の厚さは、特に限定されないが、少なくともICチップ18およびアンテナ19に起因する凹凸が、非接触型データ受送信体10の一方の面(外面)10aに現れない程度、かつ、インレット11が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000mmの範囲内である。
また、第二接着層16の厚さは、特に限定されないが、インレット11が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000mmの範囲内である。
【0018】
さらに、非接触型データ受送信体10の柔軟性(可撓性)を十分なものとし、非接触型データ受送信体10を曲げた場合に、インレット11に対して、第一接着層15と第二接着層16の厚さの差に起因する応力が生じないようにするためには、第一接着層15の厚さと第二接着層16の厚さは等しいことが好ましい。
【0019】
接着層12は、使用前は液状であり、加熱によって硬化する接着剤からなるものである。
【0020】
接着層12を形成する接着剤には、必要に応じて、公知の無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。この着色剤により、接着層12は任意の色に着色される。
【0021】
第一基材13、第二基材14、基材17としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0022】
ICチップ18としては、特に限定されず、アンテナ19を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能であり、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0023】
アンテナ19は、基材17の一方の面17aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0024】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0025】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナ19をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ19をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜を構成する導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0026】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型あるいは架橋/熱可塑併用型(ただし、熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型あるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0027】
また、アンテナ19をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ19をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0028】
非接触型データ受送信体10によれば、スリット22において、インレット11を構成する基材17の熱による収縮や反りが相殺されるので、その表面に皺が生じることなく、その皺に起因する凹凸がなく、平滑で一様な外観をなす。
【0029】
なお、本実施形態では、非接触型データ受送信体10が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
また、本実施形態では、一対の面状の放射素子20,21から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ19を有するインレット11を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナなどであってもよい。
また、本実施形態では、スリット22が、インレット11を構成する基材17の長手方向に沿う両縁部に設けられた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、スリットが、インレットを構成する基材の短手方向に沿う両縁部に設けられていてもよい。
【0030】
「非接触型データ受送信体の製造方法」
図2〜図9を参照して、本実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、図3に示すような、基材17Aと、その一方の面17aに、RFID用のアンテナ19と、このアンテナ19を通じて通信するICチップ18とが等間隔に多数設けられた、長尺のインレットシート11Aを用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体10を製造する場合を例示する。
【0031】
まず、図2に示すように、図中の矢印方向に搬送されている長尺の第一基材13Aの一方の面13aの中央部に、第一基材13Aの搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル31から吐出される第一接着剤15Aを線状に塗布する(工程A)。
【0032】
第一接着剤15Aとしては、上記の接着層12を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、第一基材13Aの一方の面13aに第一接着剤15Aを塗布する幅、すなわち、第一基材13Aの一方の面13aに対する第一接着剤15Aの塗布量は、特に限定されないが、この第一接着剤15Aによって被覆される、インレットシート11Aに設けられたICチップ18およびアンテナ19の大きさや数、第一接着剤15Aを硬化することにより形成される第一接着層15に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0033】
第一基材13Aとしては、上述の第一基材13と同様のものが用いられる。
【0034】
次いで、図3に示すように、図中の矢印方向に回転する一対のローラー32,33の対向する部分にて、第一接着剤15Aを介して、図中の矢印方向に搬送されているインレットシート11Aを、図中の矢印方向に搬送されている第一基材13Aの一方の面13a上に重ね合わせ、第一基材13Aとインレットシート11Aをローラー32,33で挟み込む。これにより、図4に示すように、第一基材13Aとインレットシート11Aの間のほぼ全域にわたって、第一接着剤15Aを展開させる(工程B)。
【0035】
第一接着剤15Aとしては、上記のように、使用前は液状であり、加熱によって硬化する接着剤を用いる。したがって、第一接着剤15Aは、第一基材13Aとインレットシート11Aの間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、加熱により反応が始まり、反応の進行に伴って次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート11Aの一方の面11a、並びに、その一方の面11aに設けられたICチップ18およびアンテナ19が第一接着剤15Aによって被覆されるとともに、第一基材13Aとインレットシート11Aが接着される。なお、第一接着剤15Aは硬化すると、上記の第一接着層15となる。
【0036】
また、工程Bでは、第一基材13Aとインレットシート11Aの間に展開させた後の第一接着剤15Aの厚さを、少なくともICチップ18およびアンテナ19に起因する凹凸が、第一基材13Aの第一接着剤15Aに接している面とは反対側の面(以下、「他方の面」と言う。)13bに現れない程度、かつ、ICチップ18およびアンテナ19が外部からの衝撃により破損しない程度とし、例えば、10μm〜2000μmの範囲内とする。
【0037】
また、工程Bにおいて、第一基材13Aとインレットシート11Aを一対のローラー32,33で挟み込む力、すなわち、第一基材13Aに対してインレットシート11Aを厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、第一基材13Aおよびインレットシート11Aの厚さや大きさ、第一接着剤15Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm〜20kg/cmであることが好ましく、より好ましくは5kg/cm〜10kg/cmである。
【0038】
この工程Bにより、第一接着剤15Aによって、ICチップ18およびアンテナ19が完全に被覆される。
【0039】
次いで、図5に示すように、第一基材13A、第一接着剤15Aおよびインレットシート11Aからなる積層体αを、図中の矢印方向に回転する一対の加熱ベルト34,35の間を通過させ、積層体αが加熱ベルト34,35の間を通過する間に、第一接着剤15Aを加熱して、第一接着剤15Aを半硬化させる。
【0040】
この接着剤を半硬化させる工程において、第一接着剤15Aを加熱して、第一接着剤15Aを半硬化させるとは、第一接着剤15Aが完全に硬化しない程度に加熱して、第一接着剤15Aの流動性を失わせることである。また、第一接着剤15Aが半硬化した状態とは、完全に硬化していないものの、流動性を失って、指で触れた場合に、指に付着しない程度に硬化している状態を言う。
【0041】
次いで、図6に示すように、第一接着剤15Aと接している面とは反対側の面(他方の面11b)側から、インレットシート11Aに対し、その搬送方向に沿って、間隔を置いてスリット22を形成する(工程C)。
本実施形態では、インレットシート11Aの搬送方向に沿って、最終的に得られる非接触型データ受送信体10の長手方向が配置されているので、この工程Cでは、非接触型データ受送信体10の長手方向に沿う両縁部にスリット22が形成される。
【0042】
この工程Cにおいて、スリット22を形成する方法としては、インレットシート11Aの基材17Aにカッターナイフで切込みを入れる方法、インレットシート11Aの基材17Aにレーザーで切込みを入れる方法などが挙げられる。
スリット22は、基材17Aの他方の面17bから一方の面17aに向かって形成された線状、点状などの細い切込である。また、スリット22は、基材17Aを、その厚さ方向に貫通していてもよく、あるいは、スリット22の最も深い部分(底)は第一接着剤15Aに至ることなく、基材17A内部にあって、スリット22は、基材17Aを、その厚さ方向に貫通していなくてもよい。
【0043】
また、スリット22の間隔、長さおよび深さは特に限定されないが、基材17Aの材質、基材17Aの幅などに応じて適宜調整される。
なお、接着剤を半硬化させる工程において、第一接着剤15Aを半硬化させた後、スリット22を形成するので、誤って、第一接着剤15Aに至る切込を形成したとしても、第一接着剤15Aが基材17Aの他方の面17b側に染み出してくることはない。
【0044】
次いで、図7に示すように、図中の矢印方向に、第一基材13A、第一接着剤15Aおよびインレットシート11Aからなる積層体αを搬送しながら、インレットシート11Aの他方の面11b、すなわち、基材17Aの他方の面17bの中央部に、積層体αの搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル36から吐出される第二接着剤16Aを線状に塗布する(工程D)。
【0045】
第二接着剤16Aとしては、上記の接着層12を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、インレットシート11Aの他方の面11bに第二接着剤16Aを塗布する幅、すなわち、基材17Aの他方の面17bに対する第二接着剤16Aの塗布量は、特に限定されないが、第二接着剤16Aを硬化することにより形成される第二接着層16に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0046】
次いで、図7に示すように、図中の矢印方向に搬送されている第二基材14Aを、図中の矢印方向に回転する一対のローラー37,38の対向する部分にて、第二接着剤16Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている積層体αを構成するインレットシート11Aの他方の面11b上に重ね合わせるとともに、積層体αと第二基材14Aをローラー37,38で挟み込むことにより、図8に示すように、積層体αと第二基材14Aの間のほぼ全域にわたって、第二接着剤16Aを展開させて(工程E)、第一基材13Aと第二基材14Aの間に、第一接着剤15A、インレットシート11Aおよび第二接着剤16Aが、この順に積層、一体化された積層体βを形成する。
【0047】
第二基材14Aとしては、上述の第二基材14と同様のものが用いられる。
【0048】
工程Eでは、積層体αと第二基材14Aの間に展開させた後の第二接着剤16Aの厚さを、上述の工程Bにおいて、第一基材13Aとインレットシート11Aの間に展開させた後の第一接着剤15Aの厚さと同程度とし、例えば、10μm〜1000μmの範囲内とする。
【0049】
工程Eにおいて、積層体αと第二基材14Aをローラー37,38で挟み込む力、すなわち、インレットシート11Aに対して第二基材14Aを厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、積層体αおよび第二基材14Aの厚さや大きさ、第二接着剤16Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm〜20kg/cmであることが好ましく、より好ましくは5kg/cm〜10kg/cmである。
【0050】
次いで、接着剤を半硬化させる工程と同様にして、積層体βを、回転する一対の加熱ベルトの間を通過させ、積層体βが加熱ベルトの間を通過する間に、第一接着剤15Aと第二接着剤16Aを加熱して、第一接着剤15Aと第二接着剤16Aを完全に硬化させる。
【0051】
次いで、図9に示すように、裁断装置の切断刃(図示略)により、第一基材13A、第一接着剤15A、インレットシート11A、第二接着剤16Aおよび第二基材14Aからなる積層体βを、その厚さ方向に(図9の一点鎖線に沿って)、アンテナ19の形状に応じて裁断し、積層体βを個片化し、図1に示す非接触型データ受送信体10を得る。
ここで、積層体βをアンテナ19の形状に応じて裁断するとは、アンテナ19を損傷することなく、目的とする非接触型データ受送信体10の形状に合わせて裁断することを言う。
【0052】
本実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、工程Cにおいて、他方の面11b側から、インレットシート11Aに対し、その搬送方向に沿って、所定の間隔を置いてスリット22を形成するので、第一基材13A、第一接着剤15A、インレットシート11Aなどが熱収縮しても、スリット22にて、その収縮を緩和することができる。したがって、第一基材13A、第一接着剤15A、インレットシート11A、第二基材14Aなどの熱収縮に起因する皺ができることなく、表面が平滑でかつ一様な外観をなす非接触型データ受送信体10が得られる。
【0053】
本実施形態では、インレットシート11Aの搬送方向に沿って、最終的に得られる非接触型データ受送信体10の長手方向が配置されているので、工程Cにおいて、非接触型データ受送信体10の長手方向に沿う両縁部にスリット22を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、インレットシートの搬送方向に沿って、最終的に得られる非接触型データ受送信体の短手方向を配置し、工程Cにおいて、インレットを構成する基材の短手方向に沿う両縁部にスリットを形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10・・・非接触型データ受送信体、11・・・インレット、11A・・・インレットシート、12・・・接着層、13,13A・・・第一基材、14,14A・・・第二基材、15・・・第一接着層、15A・・・第一接着剤、16・・・第二接着層、16A・・・第二接着剤、17,17A・・・基材、18・・・ICチップ、19・・・アンテナ、20,21・・・放射素子、22・・・スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットと、該インレットの両面に設けられた接着層と、該接着層を介して前記インレットを挟持する第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体であって、
前記インレットの少なくとも対向する2辺に沿う縁部において、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットが設けられたことを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
インレットと、該インレットの両面に設けられた接着層と、該接着層を介して前記インレットを挟持する第一基材および第二基材と、を備え、前記インレットの少なくとも対向する2辺に沿う縁部において、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットが設けられた非接触型データ受送信体の製造方法であって、
搬送中の長尺の第一基材の一方の面に接着剤を塗布する工程Aと、
前記第一基材に塗布した接着剤を介して、前記第一基材の一方の面上に、搬送中の長尺のインレットにおけるICチップが設けられた面を重ね合わせて、前記第一基材に対して前記インレットを押圧することにより、前記第一基材と前記インレットの間に、前記接着剤を展開させる工程Bと、
前記接着剤と接している面とは反対の面側から、前記インレットに対し、その搬送方向に沿って、間隔を置いて、前記インレットの厚さ方向にスリットを形成する工程Cと、
前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面に接着剤を塗布する工程Dと、
前記インレットに塗布した接着剤を介して、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面上に、搬送中の長尺の第二基材を重ね合わせ、前記インレットに対して前記第二基材を押圧することにより、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面と、前記第二基材との間に、前記接着剤を展開させる工程Eと、を有することを特徴とする非接触型データ受送信体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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