説明

非接触型情報処理媒体

【課題】複数のICチップの読み書きを簡単に行うことができる非接触型情報処理媒体を提供すること。
【解決手段】基板2上に複数のICチップ3A,3Bとアンテナコイル4とが搭載された非接触型情報処理媒体1であって、アンテナコイル4の一端4aは複数のICチップ3A,3Bのそれぞれの一方の接続端子6aに共通に接続され、他端は複数のICチップ3A,3Bのそれぞれの他方の接続端子6bに共通に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型情報処理媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にICチップとアンテナコイルを搭載し、リーダライタからの電源の受給とリーダライタとの間の信号の送受信とを非接触で行う非接触型情報処理媒体が知られている。
【0003】
特許文献1には、所定のアプリケーションに用いられるデータが格納された複数のICモジュールが搭載され、その複数のICモジュールに接続されたアンテナを有する非接触型ICカードが開示されている。
【0004】
特許文献1の非接触型ICカードは、ユーザが所望のアプリケーションを利用する場合、そのアプリケーションに用いられるデータが格納されたICチップに接続された接触用端子に触れるように構成される。
【特許文献1】特開2002−251593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の非接触型ICカードでは、ユーザは、非接触型ICカードを利用する毎に、所望のアプリケーションに対応するICカードの接触用端子に触れなければならない。
【0006】
また、間違ってリーダライタに対応しない方のICカードの接触用端子を触ってしまった場合には、ICチップの読み書きが行えない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、複数のICチップの読み書きを簡単に行うことができる非接触型情報処理媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板上に複数のICチップとアンテナコイルとが搭載された非接触型情報処理媒体であって、前記アンテナコイルの一端は前記複数のICチップのそれぞれの一方の接続端子に共通に接続され、他端は前記複数のICチップのそれぞれの他方の接続端子に共通に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナコイルの一端は複数のICチップのそれぞれの一方の接続端子に接続され、他端は複数のICチップのそれぞれの他方の接続端子に接続されるため、全てのICチップは、リーダライタから発生する磁束に応じて常時駆動可能な状態となる。したがって、リーダライタから発生する磁束に応じて複数のICチップの中から適切なICチップを駆動させることができ、ICチップの読み書きを簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の実施の形態に係る非接触型情報処理媒体は、基板にICチップとアンテナコイルを搭載し、外部機器であるリーダライタからの電源の受給とリーダライタとの間の信号の送受信とを非接触で行うものであり、ICカード、ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等を含む。なお、ICチップとは、ICモジュールとベアチップも意味する。
【0012】
本実施の形態では、非接触型情報処理媒体がICカード1である場合について説明する。まず、図1及び図2を参照して、ICカード1の構成について説明する。図1はICカード1のフィルムを剥した状態を示す平面図であり、図2はICカード1の共振回路図である。
【0013】
ICカード1の基板2上には、各種のデータが格納された複数のICチップ3と、ICチップ3に接続されたアンテナコイル4とが搭載される。本実施の形態では、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bの2つのICチップが搭載されたICカード1について説明する。
【0014】
第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、アンテナコイル4に並列に接続される。このように、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、連続した1本のアンテナコイル4を共有している。
【0015】
具体的には、アンテナコイル4の一端4aは第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bのそれぞれの一方の接続端子6aに共通に接続され、他端4bは第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bのそれぞれの他方の接続端子6bに共通に接続される。
【0016】
アンテナコイル4は、基板2に埋め込んで形成する埋め込み方式によって製造される。アンテナコイル4の製造方法としては、埋め込み方式に限られるものではなく、スクリーン印刷方式やエッチング方式等の他の方式を用いてもよい。
【0017】
第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、通信周波数が同一であり、本実施の形態では、13.56MHzのものを用いる。また、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、通信規格が異なり、本実施の形態では、第1ICチップ3AはISO14443 Mifare standard(主にカード用の通信規格で最大通信距離10cm)、第2ICチップ3BはISO15693 I-code SLI(主にタグ用の通信規格で最大通信距離70cm)のものを用いる。
【0018】
図2に示すように、第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bのそれぞれに内蔵されたコンデンサ5A及びコンデンサ5Bと、アンテナコイル4とによって共振回路が形成される。この共振回路の共振周波数fは、下記式によって求められる。
【0019】
f=1/2π√(L・C)
L:アンテナコイルのインダクタンス
C:コンデンサの静電容量
【0020】
第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、アンテナコイル4に並列に接続されているため、図2に示すように、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bのそれぞれに内蔵されたコンデンサ5Aとコンデンサ5Bも並列に接続される。したがって、共振回路の合成静電容量Cは、コンデンサ5Aの静電容量C1とコンデンサ5Bの静電容量C2とを足したもの(C1+C2)となる。
【0021】
インダクタンスLは、共振回路の共振周波数fが第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bの通信周波数である13.56MHzとなるように設定される。具体的には、アンテナコイル4のターン数、断面積、コイルの間隔を調整することによって設定される。
【0022】
以上のように、ICカード1の共振回路では、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bが並列に接続されるため、アンテナコイル4のインダクタンスLを調整することによって適切な共振周波数に設定することができる。
【0023】
次に、ICカード1の使用方法について説明する。
【0024】
第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、並列に接続されているため、リーダライタ(図示せず)から発生する磁束に応じて常時駆動可能な状態となっている。
【0025】
この状態で、例えば、ICカード1を第1ICチップ3Aの通信規格に対応したリーダライタにかざした場合、アンテナコイル4にて発生した誘導起電力が第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bの双方に印加され、双方とも個別に駆動する。しかし、リーダライタに対応した通信規格のICチップ3Aは、リーダライタとの間で信号を送受信するが、第2ICチップ3Bは、その通信規格がリーダライタに対応していないため、リーダライタとの間で信号を送受信しない。
【0026】
このように、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、常時駆動可能な状態であり、ICカード1をリーダライタにかざした場合に、そのリーダライタに対応した通信規格のICチップのみがリーダライタとの間で信号を送受信する。
【0027】
ここで、図3に示すように、2つのICチップ3A,3Bのそれぞれに個別にアンテナコイル4を接続して一つの基板2上に搭載したICカードでは、それぞれのICチップのアンテナの読み取り面積が小さい。また、リーダライタに対応した通信規格のICチップ3A,3Bに接続されたアンテナコイル4をリーダライタにかざさなければ、そのICチップを駆動することができず、読み取り位置に制限がある。さらに、2つのアンテナコイル4の間となるICカードの中央部付近は、リーダライタから発生する磁束をとらえることができない。
【0028】
これに対して、本実施の形態のICカード1では、アンテナコイル4が第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bに共通に用いられる連続した1本のコイルであるため、図1に示すように、アンテナコイル4をICカード1の基板2の外縁に沿って配設することが可能となる。したがって、ICカード1では、アンテナの読み取り面積を大きくとることができ、読み取り位置に制限がないため、リーダライタに対するICカード1の位置が少々ずれていても信号の送受信を行うことができる。また、ICカード1は、中央部付近でもリーダライタから発生する磁束をとらえることができる。このように、ICカード1の通信特性は良好である。
【0029】
以上の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0030】
アンテナコイル4の一端4aは第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bのそれぞれの一方の接続端子6aに接続され、他端4bは第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bのそれぞれの他方の接続端子6bに接続されるため、全てのICチップ3A,3Bは、リーダライタから発生する磁束に応じて常時駆動可能な状態となる。したがって、ICカード1をリーダライタにかざせば、そのリーダライタに対応した通信規格のICチップのみがリーダライタとの間で信号の送受信を行う。このように、ICカード1をリーダライタにかざすだけで、所望のICチップを駆動させることができ、ICチップの読み書きを簡単に行うことができる。
【0031】
また、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、アンテナコイル4に並列に接続され、連続した1本のアンテナコイル4を共有しているため、1本のアンテナコイル4を調整するだけで共振回路の共振周波数を設定することができる。
【0032】
また、アンテナコイル4が1本のみであるため、2つのICチップのそれぞれに個別にアンテナコイルを接続する場合と比較して、製造コストを抑えることができる。
【0033】
さらに、アンテナコイル4が1本のみであるため、ICカード1の基板2の外縁に沿って配設することができ、アンテナの読み取り面積を十分大きくすることができる。したがって、リーダライタから発生する磁束を容易にとらえることができ、通信特性は良好である。
【0034】
次に、本実施の形態の他の形態について説明する。
【0035】
(1)上記実施の形態では、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、通信周波数が同一で、かつ通信規格が異なると説明した。しかし、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、通信周波数が同一で、かつ通信規格も同一であるものを用いてもよい。
【0036】
この場合、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bの記憶部に保存されるIDや識別子等を異なるものとし、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bを異なる用途に用いるようにすればよい。また、第1ICチップ3A及び第2ICチップ3Bの一方を、他方が故障した場合のバックアップ用として用いるようにしてもよい。
【0037】
(2)上記実施の形態では、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bは、アンテナコイル4に並列に接続されると説明した。しかし、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bを1本のアンテナコイル4に直列に接続するようにしてもよい。
【0038】
この場合、アンテナコイル4は、第1ICチップ3Aと第2ICチップ3Bのそれぞれを駆動する印加電圧の総和以上の誘導起電力を発生可能なものでなければならない。
【0039】
本発明は、上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0040】
例えば、上記実施の形態では、本発明の非接触型情報処理媒体としてICカードについて説明したが、リーダライタからの電源の受給とリーダライタとの間の信号の送受信とを非接触で行うものであれば、ICタグやRFIDタグ等にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、リーダライタからの電源の受給とリーダライタとの間の信号の送受信を非接触で行うICカードに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係るICカードを示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るICカードの共振回路である。
【図3】本発明の実施の形態に係るICカードの比較例を示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ICカード
2 基板
3A 第1ICチップ
3B 第2ICチップ
4 アンテナコイル
4a,4b アンテナコイルの両端部
5A,5B コンデンサ
6a、6b 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のICチップとアンテナコイルとが搭載された非接触型情報処理媒体であって、
前記アンテナコイルの一端は前記複数のICチップのそれぞれの一方の接続端子に共通に接続され、他端は前記複数のICチップのそれぞれの他方の接続端子に共通に接続されることを特徴とする非接触型情報処理媒体。
【請求項2】
前記複数のICチップは、前記アンテナコイルに並列に接続されることを特徴とする請求項1に記載の非接触型情報処理媒体。
【請求項3】
前記複数のICチップは、通信周波数が同一で、かつ通信規格が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触型情報処理媒体。
【請求項4】
前記複数のICチップは、通信周波数が同一で、かつ通信規格が同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触型情報処理媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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