説明

非接触型情報媒体および非接触型情報媒体付属冊子

【課題】非接触型情報媒体の偽変造防止機能を向上させるため、特に熱を用いた分解および不正な再利用を抑止する構造をもった非接触型情報媒体を提供する。
【解決手段】アンテナとして使用するためのパターン化された導体12とアンテナ基材シート11との接着剤層14の接着力の方が導体12と外装基材21との接着剤層23の接着力より小さく、および/またはジャンパー線として使用するためのパターン化された導体13とアンテナ基材シート11との接着剤層15の接着力の方が導体13と外装基材22との接着剤層24の接着力より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルとICチップとを備え、非接触でICチップに情報を記録させることができる非接触型情報媒体に関するものであり、特に熱を利用した変造を防止する機能を有する非接触型情報媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや非接触ICタグを用いたシステムの普及が著しい。非接触ICチップとそれに接続されたアンテナからなるICインレットを外装基材で挟み込んでカード形状にした非接触型情報媒体は、運転免許証や社員証など個人を特定する目的でIDカードとして使用されている。また電子パスポートも普及しており、最近のパスポートは冊子ページの間に上記非接触型情報媒体が綴じられていたり、カバークロスと内貼り用紙の間に非接触型情報媒体を挟みこんだりしたものが使用されている。これらの特徴としては、普段の認証の際には印刷された顔写真や氏名などのデータを参照し、場合によってはICチップのデータを読み出して参照できるため、より厳密に所持者のIDを確認できるということがあげられる。
【0003】
非接触型情報媒体の製造方法には各種あるが、たとえば特許文献1のように、ICチップとアンテナが接続されたICインレットの両側に外装基材として樹脂シートを積層し、熱圧をかけて接着させたものがある。また、接着方法としては外装基材のシート自体を熱で溶融させたり、外装基材シートに熱可塑性の接着剤を塗布した上で加熱して接着したりする場合があるが、加熱処理を加えることで平滑化も同時に行う場合が多い。
【0004】
このような非接触型情報媒体を使用した個人認証媒体は、常に偽変造の対象とされている。非接触型情報媒体が付属した冊子である電子パスポートを例に取ると、多くの偽造と変造が報告されており、それらの偽変造を防止するため、冊子に偽変造防止機能を付加させることが行なわれている。冊子の偽造を防止するためには、一般的に用いられている偽造防止技術を使用することが出来、例えば見る角度によって色が変化するインキ(OVI)や、UVライトに反応するUV蛍光インキなどを印刷したり、用紙自体に特殊な蛍光を発する糸を漉き込んだり、セキュリティスレッドを挿入したりすることも行なわれている。また近年では機械検知によって偽変造を判別するため、例えば特殊な波長で吸収ピークを持つ赤外吸収インキを印刷することなども行なわれている。
【0005】
また、IDカードのような個人認証媒体を例に取ると、名前や顔写真などの個人情報の変造を防止するために、例えばホログラムフィルムのラミネートが施されていたり、レーザーエングレービングによって個人情報を記録してあったりする。
【0006】
しかし、上で述べたように非接触型情報媒体が付属した冊子やIDカード等の個人認証媒体において、個人情報記録部分に関しての変造対策はなされているものの、非接触型情報媒体自体をカードや冊子から取り出すことについての対策はなされていなかった。たとえばICチップとアンテナが挟まれたIDカードの顔写真だけを変造することは困難であるが、IDカードを外装基材とICインレットに分離して、ICインレットを別の基材に挟んでカードを作成し、新たに顔写真を形成するといった偽造が行われる危険性があった。加えて、前述したようにこのような非接触型情報媒体は熱ラミネート方式で製造される事が主流になっているため、同じように熱を加えることで外装基材の分離は容易であり、アンテナやICチップの機能を損なうことなく取り出せてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4442094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決するものであり、非接触型情報媒体の偽変造防止機能を向上させるため、特に熱を用いた分解および不正な再利用を抑止する構造をもった非接触型情報媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決する手段として、本発明の請求項1は、少なくとも、ICチップと、前記ICチップと接続され外部通信装置と非接触で通信可能とするアンテナと、
前記ICチップを実装し前記アンテナをその表面に形成するためのアンテナ基材シートとからなるICインレットと、前記ICインレットの表裏面に貼着するための外装基材と、を積層したことによって作製した非接触型情報媒体であって、
前記ICインレットの一方の面には熱可塑性接着剤層Aを介してアンテナとして使用するためのパターン化された導体が形成されており、もう一方の面にも前記熱可塑性接着剤層Aと同一材料の熱可塑性接着剤層を介してアンテナのジャンパー線として使用するためのパターン化された導体が形成されており、
前記ICインレットの表裏面に貼着する2枚の前記外装基材の、それぞれ前記ICインレットに面する側には、前記熱可塑性接着剤層Aとは異なる熱可塑性接着剤層Bが形成されており、
前記アンテナとして使用するためのパターン化された導体aと前記アンテナ基材シートとの接着力の方が前記導体aと前記外装基材との接着力より小さく、および/または前記ジャンパー線として使用するためのパターン化された導体bと前記アンテナ基材シートとの接着力の方が前記導体bと前記外装基材との接着力より小さいことを特徴とする非接触型情報媒体である。
【0010】
また請求項2は、外装基材として多孔質熱可塑性シートを使用したことを特徴とする、請求項1に記載の非接触型情報媒体である。
【0011】
また請求項3は、パターン化された導体の形成方法としてフォトリソグラフィを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体である。
【0012】
また請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触型情報媒体が、冊子の表紙用部材と内貼り用紙との間に挟まれて接着されたことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、仮に本発明の非接触型情報媒体を外装基材とアンテナ基材シートに分離しようと試みた場合、アンテナコイルと外装基材の接着強度が、アンテナコイルとアンテナ基材の接着強度よりも高いため、アンテナは外装基材側に接着されたままアンテナ基材より分離する。その結果、アンテナコイルとアンテナのジャンパー線の接続が切断され、非接触情報媒体としての機能を失うことになるため、不正な再利用や変造を防止することができる。また、アンテナ基材の反対側に設けられたアンテナのジャンパー線に関しても同様の特徴をもたせることで不正な再利用を防止することができる。
【0014】
また請求項2の発明によれば、熱可塑性の接着剤を設けた多孔質熱可塑性シートを外装基材に用いることを特徴とした非接触情報媒体に関するものである。このような構成で使用されている熱可塑性接着剤は、加熱することによって接着強度が低下する傾向があるため
、アンテナコイルとアンテナ基材シートの接着強度をアンテナコイルと外装基材の接着強度よりも低くすることで不正な再利用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の非接触型情報媒体に用いるICインレットの一例を説明する平面図の概念図である。
【図2】図1の切断面Aに沿った、ICインレットの断面の概念図と、その部分的拡大図である。
【図3】本発明の非接触型情報媒体の製造方法を説明するため、工程のある段階の断面の一例を示した概念図である。
【図4】本発明の非接触型情報媒体の一実施例を示す断面の概念図である。
【図5】本発明の非接触型情報媒体の変造防止効果が発揮された様子を示す断面の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
本発明の非接触型情報媒体はICインレット10と外装基材から構成される。ICインレット10は図1と、図2に示されるように、アンテナ基材シート11の一方の面にアンテナコイル12が形成され、他方の面にアンテナのジャンパー線13が形成されたアンテナシートとICチップ16から構成され、ICチップ16とアンテナコイル12は接続されている。アンテナコイル12はエッチング方式、あるいは印刷方式のアンテナによって形成することができるが、本発明の請求項4に示すように、エッチング方式を用いて製造されたアンテナコイルが最も耐久性と信頼性が高いため、多く利用されている。エッチング方式によって形成されたアンテナコイルとアンテナのジャンパー線の素材としてはアルミ、銅が最も多く用いられる。また印刷方式のアンテナによる場合には銀やカーボンを含有するインキを印刷することによってアンテナが形成される。
【0018】
以下、エッチング方式によるアンテナを例とし、この断面を図2の部分的拡大図に示す。アンテナ基材シート11としてはPET、PEN等のプラスティックフィルムが多く用いられる。これらの基材上に、メッキ法、蒸着法、貼り合わせ法などにより、金属の薄膜を形成する。図2の部分的拡大図に示されたものは貼り合わせ法で金属膜を形成したものであり、これは20μmから40μm程度の厚みのアルミ、銅のような金属箔を接着剤を介して基材上に貼り付ける製造法である。
【0019】
このようにして得られた金属箔付きの基材上に必要なパターンに樹脂を印刷し、それをエッチングマスクとしてエッチングすることによってアンテナコイル12を形成する。また、アンテナコイル12を形成した面の反対面にはアンテナのジャンパー線13が必要であるが、これはあらかじめ両面に金属箔とその上に必要な樹脂の印刷パターンを設けて同時にエッチング処理を行うか、片面にアンテナコイルパターンを形成した後にアンテナのジャンパー線13のみを貼り付けるかして形成することができる。このようにして得られたアンテナコイル12はアンテナコイル用接着剤層14を介して、アンテナ基材シート11に接着しており、アンテナのジャンパー線13はアンテナのジャンパー線用接着剤層15を介してアンテナ基材シート11に接着している。
【0020】
外装基材としては、例えば 、PVC、PET−G(共重合PET)のような熱可塑性樹脂シートを用いることが一般的であるが、その他にも多孔質熱可塑性シートを使用することが出来る。多孔質熱可塑性シートは一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シート又は合成紙として市販されている。アンテナ基材シートとしてこのような多孔質熱可塑性シートを使用することで、柔軟性のある非接触型情報媒体を
形成することが可能となり、また、この非接触型情報媒体を冊子など別の媒体と貼り合わせる場合にも、接着剤と良好な密着性を得ることが出来るため加工性に優れた方法となる。
【0021】
アンテナ基材シート11として上述した多孔質熱可塑性シートを使用する場合、図3に示すように、2枚の外装基材(外装基材(アンテナコイル側)21と外装基材(アンテナのジャンパー線側)22)のそれぞれ貼り合わせる内側の部分に、あらかじめ熱可塑性接着剤層(熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)23と熱可塑性接着剤層(アンテナのジャンパー線側)24)を塗布し、ICインレット10を挟んで積層し、熱圧Bをかけることで接着させ、図4に示すような非接触型情報媒体を得ることができる。ここで使用可能な熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)23と熱可塑性接着剤層(アンテナのジャンパー線側)24は、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系樹脂、ナイロン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、一般的な各種熱可塑性の樹脂
を使用することができる。
【0022】
これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化し、接着部分に剥がれを生じないものを使用する。これらの性能を両立させるために2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることも可能である。また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体系の水系エマルジョン接着剤にエポキシ系架橋剤を添加したものや、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤などをグラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることが出来る。一方、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。
【0023】
非接触型情報媒体付属冊子は、この非接触型情報媒体を表紙用部材と内貼り用紙との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工したものである。非接触型情報媒体は内貼り用紙と接着剤によって接着されるが、この接着剤は作業性や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多い。この理由として、一般的な冊子を製造するための設備は、紙と紙、や、布と紙、の貼り合わせを行うことが多いことがあげられる。仮に非接触型情報媒体付属冊子に使用する非接触型情報媒体を、一般のICカードに使われるような外装基材、例えばPVCやPET−Gを使用して作製した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙を接着することができない上、剛度が高いことによる問題が生じる。このような問題を解決するため、請求項3にある多孔質熱可塑性基材シートを外装基材として使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟な非接触型情報媒体付冊子を作製することが出来る。
【0024】
非接触型情報媒体と表紙用部材を接着する際には、体積変化が小さい反応硬化型の接着剤を好適に用いることが出来る。仮に体積変化が大きい乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると、接着剤の使用量が多くなるため乾燥硬化後の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまうため、外観上の問題となる。このような問題を解決するために、乾燥硬化後の体積変化が少ない接着剤を使用することが望ましい。例えば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、などが好適に使用できる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。
【0025】
本発明の目的は、上記の非接触型情報媒体を分解してICチップやアンテナを取り出し、別の基材に挟み込むことでIDカードや電子パスポートを偽造する行為を防止することである。以下、図4を例にして説明するが、この図4は外装基材(アンテナコイル側)21と外装基材(アンテナのジャンパー線側)22に、熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)23と熱可塑性接着剤層(アンテナのジャンパー線側)24が、それぞれ塗布された構成を例にとっており、仮に外装基材自体に接着性がある場合には、熱可塑性接着剤層は必要なく、その場合には熱可塑性接着剤層の部分を、外装基材とアンテナの接着部分という風に読み替えて差し支えない。同じく、アンテナコイル12やアンテナのジャンパー線13は、アンテナコイル用接着剤層14やアンテナのジャンパー線用接着剤層15を介してアンテナ基材シート11と接着しているが、蒸着方式などでアンテナを形成した場合には、接着剤層の部分をアンテナコイルとアンテナ基材シートの接着部分と読み替えて差し支えない。
【0026】
図4において、アンテナコイル12は熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)23を介して外装基材(アンテナコイル側)21と接着し、アンテナコイル用接着剤層14を介してアンテナ基材シート11と接着している。仮にこの外装基材(アンテナコイル側)21を剥離して、ICインレット10を取り出そうとした場合、アンテナコイル12と外装基材(アンテナコイル側)21の接着強度が、アンテナコイル12とアンテナ基材シート11の接着強度よりも低い場合、非接触型情報媒体としての機能を損なうことなく外装基材を取り除くことができてしまう。これに対し、アンテナコイル12と外装基材(アンテナコイル側)21の接着強度が、アンテナコイル12とアンテナ基材シート11の接着強度よりも高い場合、図5に示すように、アンテナコイル12は外装基材(アンテナコイル側)21の側に接着されたままアンテナ基材シート11から剥離し、アンテナコイル12が断線して非接触型情報媒体としての機能が損なわれるため、不正な再利用を防止することができる。
【0027】
上記の効果はアンテナのジャンパー線13についても同じである。アンテナのジャンパー線13と外装基材(アンテナのジャンパー線側)22の接着強度がアンテナのジャンパー線13とアンテナ基材シート11の接着強度よりも高い場合、図5に示すように、アンテナのジャンパー線13は外装基材(アンテナのジャンパー線側)22の側に接着されたままアンテナ基材シート11から剥離し、アンテナコイルが断線して非接触型情報媒体としての機能が損なわれるため、不正な再利用を防止することができる。
【0028】
以下2種類の試料(試料1と試料2)を作製して発明の効果を検証した結果を示す。
アンテナ基材シートとアンテナコイルとを接着している接着剤としてはいずれも同じEVA系の接着剤を使用した。外装基材に設ける接着剤として、試料1では同じEVA系の接着剤を使用し、試料2ではEAA(エチレンアクリル酸共重合体)系の接着剤を使用した。ここで用いたEVA系接着剤の融点は110度で、EAA系接着剤の融点は140度である。
【0029】
得られた試料1と試料2に対し、偽造を想定した剥離試験を行ったところ、いずれの試料も常温においては剥離が不可能で、無理にはがそうとした場合には基材やアンテナが破損した。このため、この試料を加熱した上で剥離を行った所、試料1では外装基材のみを剥離することが出来たのに対し、試料2ではアンテナコイルがアンテナ基材シートから剥離して破損した。これは外装基材とアンテナコイルの接着強度が、アンテナコイルとアンテナ基材シートの接着強度よりも高かったからである。この結果、試料1は通信機能を損なうことなく外装基材をはがすことが出来たため、耐偽造性は無いと評価されたが、試料2は偽造を想定した剥離作業の過程で通信機能が損なわれてしまったため耐偽造性が有ると評価することが出来た。以上の結果を表1にまとめた。
【表1】

【実施例】
【0030】
次に、図2、図3、図4を参照して、本発明の実施例について説明する。
<エッチングアンテナを用いたICインレットの作製>(図2参照)
38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートをアンテナ基材シート11とし、両面に熱可塑性の接着剤を塗布してアルミフィルムを貼り合わせた上で、一方の面にアンテナコイル形状のエッチングマスク層の印刷を、もう一方の面にアンテナのジャンパー形状のエッチングマスク層の印刷を行い、パターンエッチングによって表面にアンテナコイル12と裏面にアンテナのジャンパー線13を形成した。上記熱可塑性の接着剤としては、EVAを主成分とし、溶融温度は110度のものを用いた。さらに、レーザー溶接により、アンテナコイル12とアンテナのジャンパー線13を接合し、アンテナコイル12の接続端子部にICチップ16を溶接した。アンテナコイル12の外周は80mm×48mmで、内周は67mm×37mmである。さらに、アンテナコイル12の内側を65mm×35mmの大きさで打ち抜いて除去した。さらに、アンテナコイル12の外周およびICチップ16から2mm離れた輪郭を取って、その外側のアンテナ基材シートを打ち抜いて除去しICインレット10を得た。
【0031】
<非接触型情報媒体の作製>(図3参照)
外装基材(アンテナコイル側)21と外装基材(アンテナのジャンパー線側)22として、厚さ380μmの「TESLINシート」(PPG Industry社製)を準備し、このシートの片面に熱可塑性接着剤を10μm塗布し、乾燥させた後、150mm×200mmのシート2枚に断裁した。この熱可塑性接着剤としては、エチレンアクリル酸を主成分とし、溶融温度は140度のものを用いた。上記で準備した一方の外装基材の接着面側に上記ICインレット10を重ね、その上にもう一方の外装基材を同じく接着剤層の面を内側にして重ね合わせて積層し、この積層されたシートを2枚のSUS板に挟み込み加熱加圧することで接着した。加熱部温度は150℃、圧力20Kgf/cm、処理時間60秒の条件で処理することによって、平滑な非接触型情報媒体を得ることができた。
【0032】
<効果の確認>(図5参照)
得られた非接触型情報媒体に160℃の熱を加えることで、外装基材に設けられた接着剤層を軟化させ、外装基材とICインレットを分離することを試みた。この操作により、外装基材(アンテナコイル側)21とアンテナ基材シート11は剥離することができたが、アンテナコイル12は外装基材(アンテナコイル側)21側に接着したままアンテナ基材シート11から剥離した。これはアンテナコイル12とアンテナ基材シート11のアンテナコイル用接着剤層14の部位の接着強度がアンテナコイル12と外装基材(アンテナコイル側)21の熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)23の接着強度よりも小さかったためである。このようにアンテナコイル12がアンテナ基材シート11から剥離した際に、アンテナのジャンパー線13とアンテナコイル12との接続も切断され、非接触型情報媒体としての機能が無くなった。これにより、ICインレット10の不正な再利用を防止することができ、発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0033】
10 ‥ICインレット
11 ‥アンテナ基材シート
12 ‥アンテナコイル
13 ‥ジャンパー線
14 ‥アンテナコイル用接着剤層
15 ‥アンテナのジャンパー線用接着剤層
16 ‥ICチップ
21 ‥外装基材(アンテナコイル側)
22 ‥外装基材(アンテナのジャンパー線側)
23 ‥熱可塑性接着剤層(アンテナコイル側)
24 ‥熱可塑性接着剤層(アンテナのジャンパー線側)
A‥断面の線
B‥熱圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ICチップと、
前記ICチップと接続され外部通信装置と非接触で通信可能とするアンテナと、
前記ICチップを実装し前記アンテナをその表面に形成するためのアンテナ基材シートとからなるICインレットと、前記ICインレットの表裏面に貼着するための外装基材と、を積層したことによって作製した非接触型情報媒体であって、
前記ICインレットの一方の面には熱可塑性接着剤層Aを介してアンテナとして使用するためのパターン化された導体が形成されており、もう一方の面にも前記熱可塑性接着剤層Aと同一材料の熱可塑性接着剤層を介してアンテナのジャンパー線として使用するためのパターン化された導体が形成されており、
前記ICインレットの表裏面に貼着する2枚の前記外装基材の、それぞれ前記ICインレットに面する側には、前記熱可塑性接着剤層Aとは異なる熱可塑性接着剤層Bが形成されており、
前記アンテナとして使用するためのパターン化された導体aと前記アンテナ基材シートとの接着力の方が前記導体aと前記外装基材との接着力より小さく、および/または前記ジャンパー線として使用するためのパターン化された導体bと前記アンテナ基材シートとの接着力の方が前記導体bと前記外装基材との接着力より小さいことを特徴とする非接触型情報媒体。
【請求項2】
外装基材として多孔質熱可塑性シートを使用したことを特徴とする、請求項1に記載の非接触型情報媒体。
【請求項3】
パターン化された導体の形成方法としてフォトリソグラフィを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触型情報媒体が、冊子の表紙用部材と内貼り用紙との間に挟まれて接着されたことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208799(P2012−208799A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74811(P2011−74811)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】