非接触型ICカードリーダ装置
【課題】過大な電圧からIC回路を保護するための定電圧回路を備え、ロードスイッチング方式でデータを送信するICカードを非接触で読み取る場合に、ICカードリーダ装置が送信する電磁界の強さを最適値に制御する。
【解決手段】ICカードリーダ装置10がICカード1に向けて送信する電磁界の強さを変化させながらICカード1の負荷インピーダンス3の変化を検出し、ICカード1の定電圧回路6が作動して過大な電圧を吸収して電流が流れ始めた時に送信している電磁界の強さより少し大きい電磁界の強さになるよう出力を制御する。
【解決手段】ICカードリーダ装置10がICカード1に向けて送信する電磁界の強さを変化させながらICカード1の負荷インピーダンス3の変化を検出し、ICカード1の定電圧回路6が作動して過大な電圧を吸収して電流が流れ始めた時に送信している電磁界の強さより少し大きい電磁界の強さになるよう出力を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードスイッチング方式にてICカードに記憶されたデータを非接触で読み取る非接触型ICカードリーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、施設への入退場管理、交通機関の自動改札などの用途に非接触型のICカードを使用したシステムが普及してきている。非接触型ICカードの多くはカード内に電源を備えておらず、ICカードリーダ装置からの電磁波をアンテナで受信し、それを整流して電源としている。この生成される電源の容量は小さいため、ICカードからICカードリーダ装置へのデータ送信には消費電力が少なくて済む、いわゆるロードスイッチング方式が採用されることが多い。このロードスイッチング方式とは、送信するデータに基づいてICカード内の負荷を変動させ、その変動をICカードリーダ装置で検出し、復調する方式である。
【0003】
図12は、ロードスイッチング方式を採用したICカード1およびICカードリーダ装置2の従来の構成例をブロック図で示したものである。
ICカードリーダ装置2において、搬送波発生回路11で発生した搬送波は、変調回路14で変調され、回路インピーダンスZ1、フィルタ22等を通してアンテナ回路16へ導かれる。そして、アンテナ回路16では、当該搬送波の周波数で励振されてICカード1に向けて電磁波を放射する。
【0004】
制御回路12は、送信すべき情報に対応した電圧の信号を出力するよう可変電圧発生回路13を制御し、変調回路14は可変電圧発生回路13が出力する電圧に基づいて振幅変調を行う。
アンテナ回路16から放射された電磁波は、ICカード1のアンテナ回路7で受信される。受信された電磁波のエネルギーによりアンテナ回路7に発生した電圧は、整流回路8で整流されて直流電圧を発生し、電源としてIC回路9に供給される。整流回路8で発生した電源電圧がIC回路9に内蔵されたICの最大許容電圧を超えないように、非線形な電気的特性を有する定電圧回路6が接続されている。
【0005】
更に定電圧回路6と並列に、負荷インピーダンス3とスイッチング素子4の直列回路からなる変調回路が接続されている。例えばICカードリーダ装置2からリードコマンドを受信した場合、IC回路9は内部のメモリから送信すべきデータを読み出し、その内容に基づいてスイッチング素子4をオン/オフ動作させる。スイッチング素子4がオン/オフ動作すると、負荷インピーダンス3が接続/開放を繰り返すことになり、負荷インピーダンス3を変化させる。
【0006】
ICカードリーダ装置2のアンテナ回路16とICカード1のアンテナ回路7とは電磁的に結合しているので、ICカード1における負荷インピーダンス3の変化は、ICカードリーダ装置2のアンテナ回路16を通して接続点N3にも伝わることとなり、N3点において負荷インピーダンスの変化に応じた搬送波の電圧変動が発生する。
復調回路19では、N3点の搬送波の電圧変動を検出する。こうして制御回路12は、ICカード1より送られてくるデータを受信することができる。
【0007】
図12のICカード1およびICカードリーダ装置2におけるインピーダンスの等価回路図である図13を参照しながら、ICカードリーダ装置2がICカード1からデータを受信する仕組みについて詳細に説明する。
図13において、変調回路14の出力電圧は出力インピーダンスZ1、フィルタ回路のインピーダンスZf、アンテナ回路16のインピーダンスZa1、Za2を経てICカードに伝達される。ICカード1は、IC回路9のインピーダンスZL、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRL、定電圧回路6が発生する非線形特性をもつインピーダンスZDなどが接続された負荷回路と見なすことができる。
【0008】
N2点からICカード側を見た場合、変動する可能性があるインピーダンスはアンテナ回路とICカードとの結合度合いによって変化するインピーダンスZa2、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRLおよび非線形の特性をもつインピーダンスZDである。
検出回路17は、ICカード1からの情報送信時にスイッチング素子4がオン/オフされ、インピーダンスRLが変動する状態をN2点における電圧変動として検出する。検出回路17がN2点において大きな信号を検出するためには、ICカード1内に存在するインピーダンスZL,ZDに比べ、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRLが相対的に小さいことが必要となるので、非線形の特性をもつインピーダンスZDはできるだけ大きいことが望ましい。即ち、インピーダンスZDが極めて大きく、実質的に定電圧回路6には電流が流れない状態が最も望ましいということになる。
【特許文献1】特開平6−96292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらICカード1で受信する電力が弱くなると、定電圧回路6には上記のように電流が流れない状態にはなるものの、IC回路9の動作が不安定になってしまうという問題がある。
更に、ICカード1で受信する電力が定電圧回路6で保護できないほど強くなると、ICの最大許容電圧を超えてしまって、ICが破壊されてしまうという問題がある。
【0010】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ICカード側で受信される電力が強過ぎず、また弱過ぎないように、最適な電磁エネルギーを送信することが可能な非接触型ICカードリーダ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、請求項1記載の発明においては、所定電圧を超える電力を吸収してICを保護する保護手段を有すると共に、受信した電磁界より動作電力を得て、負荷インピーダンスを変動させることにより情報を送信するICカードに対して、非接触で当該情報を受信する非接触型ICカードリーダ装置であって、供給された電圧に応じた強さの電磁界を発生させる電磁界発生手段、およびこの電磁界発生手段に供給する電圧を変更可能な可変電圧出力手段、を有する可変出力送信手段と、この可変出力送信手段により電磁界の強さを変化させ、当該変化に基づくICカードの負荷インピーダンスの変化を検出する負荷変化検出手段と、この負荷変化検出手段によりICカードの負荷インピーダンスの変化が検出された場合には、その時点での可変電圧出力手段の出力電圧を変化点出力電圧として検出し、当該変化点出力電圧に基づいて最適出力電圧を設定して、可変電圧出力手段が最適出力電圧を出力するように制御する出力制御手段と、を備えている。
【0012】
従って、請求項1記載の発明によれば、保護手段が作動しない所定電圧までは、可変電圧出力手段の出力電圧を変更してもICカードの負荷インピーダンスに変化は無いが、所定電圧を超えると、ICを保護すべく保護手段が所定電圧を超える電力を吸収するようになるので、当該保護手段に電流が流れ、ICカードの負荷インピーダンスが変化する。
ICカード側で最適な電力となるのは、保護手段で規程された所定電圧を若干超える状態に相当するため、保護手段に電流が流れる、すなわちICカードの負荷インピーダンスの変化を検出したタイミングに基づいて出力制御手段は、最適出力電圧を設定し、当該電圧を可変電圧出力手段より出力させるように制御するので、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、可変出力送信手段は、可変電圧出力手段および電磁界発生手段の間に所定の出力インピーダンスを有するものであり、負荷変化検出手段は、出力インピーダンスに入力される前の電圧を検出する第1の電圧検出手段と、少なくとも出力インピーダンスの一部を通過した後の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、を有するものであり、出力制御手段は、第1の電圧検出手段が検出した電圧が第1の検出電圧である時に、第2の電圧検出手段が検出した電圧を第2の検出電圧とし、第1の電圧検出手段が検出した電圧が第3の検出電圧である時に、第2の電圧検出手段が検出した電圧を第4の検出電圧とし、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に、所定の関係が成立するか否かを判定することによって変化点出力電圧を検出するものである。
【0014】
従って、請求項2記載の発明においては、ICカードの負荷インピーダンスの影響を受ける可変出力送信手段の出力インピーダンスの通過前後の電圧を測定することにより、ICカードの負荷インピーダンスの変化を容易に検出することができ、これによりICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に成立する所定の関係とは、第1の検出電圧および第2の検出電圧の比である第1の比と、第3の検出電圧および第4の検出電圧の比である第2の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴としている。
【0016】
更に、請求項4記載の発明においては、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に成立する所定の関係とは、第1の検出電圧および第3の検出電圧の比である第3の比と、第2の検出電圧および第4の検出電圧の比である第4の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴としている。
【0017】
従って、請求項3,4記載の発明によれば、ICカードの負荷インピーダンスの影響を受ける可変出力送信手段の出力インピーダンスの通過前後の電圧変化の度合いを判断することで、ICカードの負荷インピーダンスの変化を的確に検出することができ、これによりICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、第1の電圧検出手段が検出する電圧は、可変電圧出力手段の出力端における出力電圧であり、第2の電圧検出手段が検出する電圧は、出力インピーダンスの少なくとも一部を通過した出力回路部位における出力電圧であることを特徴としている。
【0019】
従って、可変出力送信手段の方から見たICカードの負荷インピーダンスを、可変出力送信手段の出力回路インピーダンスに対する相対的な大きさとして検出するものであり、これら第1の電圧検出手段および第2の電圧検出手段が検出する電圧は、回路上、容易に検出することができる電圧であるため、回路を複雑化することなくICカードの負荷インピーダンスの変化を的確に検出して、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、負荷変化検出手段は、更に、電磁界発生手段の近傍に設けられ、当該電磁界発生手段が発生する電磁界の強さに応じた電圧を出力する電磁界検出手段を有し、第2の電圧検出手段は、当該電磁界検出手段が出力した電圧を検出することを特徴としている。
【0021】
また、請求項7記載の発明によれば、電磁界検出手段は、電磁界発生手段が発生する電磁界と交差する検出コイルであり、第2の電圧検出手段は、電磁誘導作用によって前記検出コイルが発生する電圧を検出することを特徴としている。
【0022】
従って、請求項6,7記載の発明によれば、電磁界発生手段が発生する電磁界の強さは電磁界発生手段に供給される電圧に対応し、ICカードの負荷インピーダンスの変化によって可変出力送信手段側に生じる電圧変動によって電磁界の強さも変動することになる。そのため、第2の電圧検出手段として、当該電磁界の強さに対応した電圧(検出コイルが発生する電圧)を検出すれば、変化点出力電圧を検出することができ、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
また、特に、検出コイルを用いた請求項7記載の発明においては、検出コイルから出力される信号が特定の電位に拘束されていないため、当該特定電位の除去を行う回路を設ける必要がなく、さらに前記特定電位に含まれるノイズ等の影響を受けないので、特性面でも優れたものとなる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御して、変化点出力電圧を検出するようにしたことを特徴としている。
従って、請求項8記載の発明によれば、微妙な変化であるICカードの負荷インピーダンスの変化を、漸増または漸減により的確に検出することができ、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧が検出された後は、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴としている。
【0025】
また、請求項10記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧が検出された後は、その時点で可変電圧出力手段が出力している出力電圧とその直前に出力した出力電圧との中間に次の出力電圧を設定し、以後、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴としている。
【0026】
さらに、請求項11記載の発明によれば、出力制御手段は、過去に検出した変化点出力電圧を変化点出力電圧履歴情報として記憶する記憶手段を備え、かつ、出力制御手段は、記憶した出力電圧履歴情報に基づいて変化点出力電圧を予測し、予測した変化点出力電圧の近傍においては可変電圧出力手段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧の近傍以外では、可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出するように可変電圧出力手段を制御するようにしたことを特徴としている。
【0027】
従って、請求項9,10,11記載の発明によれば、変化点出力電圧が検出されるまでの、いわゆる初期段階においては、可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出するようにしているので、素早く変化点出力電圧を検出することができ、変化点出力電圧が検出された後は、可変電圧出力段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて変化点出力電圧を検出するようにしているので、処理の迅速化と検出の正確さとを両立させることができるという優れた効果がある。
【0028】
請求項12記載の発明によれば、出力制御手段は、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンとなるように可変電圧出力手段を制御し、かつ、当該出力電圧パターンを漸増または漸減するように制御することを特徴としている。
【0029】
従って請求項12記載の発明によれば、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンで出力することにより、出力インピーダンスを通過して当該出力電圧パターンがどのように変化したかを検出することにより、請求項8と同様の効果を得ることができる。
【0030】
請求項13記載の発明によれば、出力制御手段は、ICカードに向けて送信される情報種別および符号化方式に基づいて、第1の期間の所定の出力電圧および第2の期間の所定の出力電圧とは異なる出力電圧を各々設定し、ICカードへの情報送信と並行して、変化点出力電圧を検出することを特徴としている。
これにより、最適な電力供給のための検査電磁波を特別に送信することなく、実際の情報送信に基づいて最適な電力供給の検出を行うことができるので、ICカード側からの情報受信を最適な電力供給で素早く実現することができるという優れた効果がある。
【0031】
請求項14記載の発明によれば、出力制御手段が設定する最適出力電圧は、変化点出力電圧より所定量だけ大きい電圧として設定されることを特徴としている。
また、請求項15記載の発明によれば、出力制御手段が設定する最適出力電圧は、変化点出力電圧の変化を検出するために出力した、または出力する予定であった可変電圧出力手段の出力電圧のうちから1つの出力電圧を選択して設定されることを特徴としている。
【0032】
従って,請求項14,15記載の発明においては、ICカードの回路電圧が安定することを優先に考え、定電圧回路に少し電流が流れるような、変化点出力電圧より少し大きめの電圧を最適出力電圧として設定することにより、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るICカードリーダ装置10、及びICカード1の回路構成を示したものである。なおICカード1は「背景技術」の項で説明した図12中のICカード1と同じ回路構成であるので同一符号を付し、説明は省略する。
【0034】
本実施形態のICカードリーダ装置10は、ICカード1から受信した情報を復調する復調回路19、情報送信のために所定の周波数、例えば13.56MHzの搬送波周波数fを発振する搬送波発生回路11、制御回路12、この制御回路12が設定した電圧を出力する可変電圧発生回路13、搬送波発生回路11から出力される搬送波を可変電圧発生回路13が出力する電圧信号で振幅変調する変調回路14、出力回路に挿入された出力インピーダンスZ1、フィルタ回路15、供給された電圧に対応した強さの電磁界を発生しICカード1に向けて放射するアンテナ回路16、ICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出するための検出回路17、検出回路17が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路18とで構成される。なお、本実施形態における出力インピーダンスZ1は、変調回路14やフィルタ回路15などに寄生するインピーダンスであるが、専用のインピーダンス素子としても構成しても良い。
【0035】
なお、図1において、アンテナ回路16が電磁界発生手段に、可変電圧発生回路13が可変電圧出力手段にそれぞれ相当し、可変電圧発生回路13およびアンテナ回路16に搬送波発生回路11、変調回路14、出力インピーンスZ1、フィルタ回路15等を加えたものが可変出力送信手段に相当する。また、検出回路17およびA/D変換回路18が第2の電圧検出手段に、制御回路12が負荷変化検出手段、出力制御手段および第1の電圧検出手段に相当する。
【0036】
次に、図2に示した波形図を参照して前述の最適出力電圧を決定する過程を説明する。図2において、(1)は搬送波発生回路11が出力する搬送波、(2)は制御回路12が可変電圧発生回路13を制御して出力させる直線的に漸増する出力電圧V0、(3)は搬送波を直線的に漸増する出力電圧V0で変調した変調回路14が出力する電圧V1、(4)は図1におけるN2点の電圧V2、(5)は検出回路17が出力するN2点の電圧を検出した信号Vi、の波形図である。
【0037】
図2(3)に示すように、変調回路14が出力する電圧V1の振幅が漸増すると、図2(4)に示すようにN2点の電圧V2も漸増するが、ある大きさの振幅になった時にICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始めるので、それ以降は変調回路14が出力する電圧V1の振幅が増加するほどにはN2点の電圧V2は増加しない。定電圧回路6に電流が流れなければ電圧V1の増加に対応して破線のようにN2点の電圧V2の振幅が増加するはずである。
【0038】
このように変調回路14が出力する電圧V1と、N2点の電圧V2と複数の時点で比較することによって、ICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始める点、即ち負荷インピーダンスの変化点を検出することができる。
ここで、IC回路9が安定して動作するためには、電源電圧はある程度高い(例えば2V以上)方が良く、しかもその電圧が安定していることが望ましいため、本実施形態では、定電圧回路6に少し電流が流れる状態を最適とする。それは、ICカード1の回路電圧が安定している状態が少し余裕をもって維持させるためである。
【0039】
この点を踏まえて、上記の変化点検出に基づく最適出力電圧V10’を算出する方法について説明する。
可変電圧回路13の出力電圧V0と検出回路17の出力電圧Viとの関係は図3のようになる。図3の例では、P0点からP7点に向かって順次検出を行うもので、P3点とP4点とでは出力電圧V3と出力電圧V0との比に差異があることが検出されるので、P3点とP4点との間に変化点が存在すると推定され、P4点の出力電圧V10が変化点出力電圧として検出される。
【0040】
正確には、真の変化点はP3点とP4点との間に存在すると推定されるので、P4点は真の変化点に対する近似的な変化点であるが、実用上はP4点を変化点と考えても支障がないので、以下の説明はP4点を変化点とし、P4点の出力電圧を変化点出力電圧V10として扱うことにする。
また、実際にはICカード1の回路電圧が安定することが重要なので、ICカード1に内蔵されたICを保護する定電圧回路6に少し電流が流れるよう、変化点出力電圧V10より少し大きい電圧を最適出力電圧V10’として設定する。図3の例ではP4点の出力電圧より1段階だけ大きいP5点における出力電圧を最適出力電圧V10’として設定している。
【0041】
そして、制御回路12は可変電圧発生回路13に対して、前記最適出力電圧V10’を出力するように指示する。
図2においては、理解を容易にするために出力電圧を連続的に漸増する例を示したが、図4の例のように、所定時間毎に出力電圧を階段状に変化させる方がより実用的である。図4の例においても作用や効果は図2の例と基本的に同じなので説明は省略する。
【0042】
ここで、最適出力値V10’を算出する制御回路12の作動を図10(a)のフローチャートを用いて説明する。
図10(a)において、制御回路12は、ステップS100で初期値n=0を設定し、ステップS110で可変電圧発生回路13の出力電圧V0(0)を出力し、ステップ120で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V0(0)と、その時の出力電圧値Vi(0)を入力して記憶する。
【0043】
続くステップS130では、可変電圧発生回路13の出力電圧をV0(0)からV0(1)に上げて(または下げて)出力し、ステップ140で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V0(1)と、その時の出力電圧値Vi(1)とを入力して記憶する。ステップS150において検出された電圧値の比であるα(0)およびα(1)を計算し、ステップS160で前記電圧比の差が所定値より大きいかどうかを判定し、大きい場合には負荷インピーダンスが変化したと判断してステップS180へ進む。
【0044】
ステップS180では、現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V1(n)を変化点出力電圧V10として記憶し、ステップ190において変化点出力電圧V10に基づいて最適出力電圧V10’を決定し、最適出力電圧V10’を出力するよう可変電圧発生回路13を制御する。
一方、ステップS160で前記電圧比の差が所定値より小さいと判定した場合には、負荷インピーダンスの変化がないと判断してステップS170へ進み、ステップ170では、nを増してステップ110に戻り、上記のステップを繰り返す。
【0045】
ここで、上述したように、出力電圧V0を漸増しながらICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出する場合には、上記のステップS160のように判定を行うが、出力電圧V0を漸減しながらICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出する場合には図10(b)のステップS160’のように大小関係が逆転した判定を行うことになる。また、上述のステップS150では、検出した電圧値の比をV1に対するViとして算出するが、図10(c)に示すように、V1同士、Vi同士の比として算出するステップS150’としても同様の結果が得られる。
【0046】
なお、ステップS160で、前回の電圧の比α(0)と今回の電圧の比α(1)との差を絶対値として取り扱っているのは、図3に一点鎖線で示すように、直列共振が発生する回路を含む場合などにおいては電圧降下ではなく、電圧上昇が発生して出力電圧Viが上昇する例もあるため、本実施例では絶対値とした。
図10の処理手順は、出力制御手段、可変出力送信手段および負荷変化検出手段が協働して実行するもので、出力電圧を決定し出力するステップS100,S110、S130、S170、S190等が出力制御手段および可変出力送信手段に相当し、信号を入力し判定するステップS120、S140、S150、S160、S180等が負荷変化検出手段に相当する。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、ステップS100に示すようにN=0より処理を開始し、以後、予定された出力電圧を一定の割合で増加または減少させながら順次出力するようにしているが、この実施形態においては、出力電圧を増加または減少させる差分電圧値を複数種類用意しておき、状況により出力電圧を増加または減少させる割合を変えるものである。
【0048】
図5の例においては、初期の段階では大きな差分電圧値を用いて粗な分解能で変化点出力電圧の検出を行い、変化点電圧の近傍においては小さな差分電圧値を用いて密な分解能で変化点出力電圧の検出を行うよう可変出力送信手段を制御する。この例では3種類の分解能を設けており、図5(a)は可変電圧送信手段の出力電圧V1と、検出される信号電圧V3との関係を示し、図5(b)は可変電圧送信手段の出力電圧V1の時間的な変化の状態を示している。
【0049】
図5(a)および図5(b)において、P0点(V(P0))、P1点(V(P1))、P2点(V(P2))、P3点(V(P3))と大きな差分電圧値(粗な分解能)で検出を行い、その結果、P3点によって負荷インピーダンスの変化が検出されると、大きな差分電圧値(粗な分解能)の2倍の分解能となる中程度の差分電圧値(中位の分解能)に切り替え、一旦P4点の出力電圧(V(P4))に戻している。しかし、P2点に対するP4点の出力電圧では、なおも負荷インピーダンスの変化が検出されるので、中程度の差分電圧値(中位の分解能)よりさらに2倍の分解能である小さな差分電圧値(密な分解能)に切り替え、P5点の出力電圧(V(P5))まで戻る。
P2点に対してP5点の出力電圧では負荷インピーダンスの変化が検出されないので、P5点とP4点の中間に負荷インピーダンスの変化点が存在すると判断し、P4点の出力電圧(V(P5))を変化点出力電圧として検出し、P4点の出力電圧より1段階大きい出力電圧として出力する予定であったP6点の出力電圧(V(P6))を最適出力電圧V10’として設定し、可変電圧発生回路13から出力した。
【0050】
このように粗と密の分解能を組み合わせて負荷インピーダンスの変化を検出することにより、短時間で目的の出力電圧に接近し、接近した後はより小さな誤差で最適出力電圧を見つけ出して設定することができる。
なお、図5の例では差分電圧値を整数比の3段階に設定したが、複数の異なる差分電圧値を任意の数だけ設定することによって、初期の段階では大きな差分電圧値を用いて最適出力電圧に短時間で接近し、接近した後は小さな差分電圧値に切り替えてより小さな誤差で最適出力電圧を見つけ出すものとすることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
本実施形態のICカードリーダ装置は、前述の第1の実施形態、第2の実施形態のいずれに対しても適用できるものであって、構成は図6に示すものである。
図6において、ICカードリーダ装置20は、第1の実施形態で説明した図1中のICカードリーダ装置10とほぼ同じ構成であるが、ICカードリーダ装置20には検出素子24が設けられ、検出回路17の信号源となっている点が異なっている。以下、図6に示すICカードリーダ装置20の構成と作用について説明するが、図1のICカードリーダ装置10と同じ構成および作用となる部分は説明を省略する。
【0052】
図6に示すICカードリーダ装置20において、検出素子24はアンテナ回路16を構成するコイル状に形成されたアンテナ(電磁界発生手段)16aに近接して設けられ、アンテナ16aが発生させる電磁界と交差して電磁界の強さを検出する。アンテナ16aが検出する電磁界の強さは、アンテナ16aに供給される電圧に対応しているので、この電磁界の強さを検出すれば間接的にアンテナ16aの端子N4における電圧を検出することになり、第1の実施形態で説明した図1におけるN2点の電圧V2と同じような信号を得ることができる。このように検出コイル24は、電磁誘導作用によってアンテナ16aが発生する電磁界の強さに対応した電圧信号を検出し、検出回路17へ出力する。そして、この電圧信号により図1にメス実施形態と同様にして最適出力電圧V10’が設定される。
【0053】
図6において、検出素子24が第2の電圧検出手段に相当し、電磁界検出手段および検出コイルに相当する。
また、ここではコイル状のアンテナ素子である検出コイルを用いる例について説明したが、検出素子24としてはホール素子や他の形態のアンテナ素子などを用いることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態のICカードリーダ装置の構成は、第1の実施形態で説明した図1中のICカードリーダ装置10、または第2の実施形態で説明した図6中のICカードリーダ装置20と同じ構成である。図1のICカードリーダ装置10と図6のICカードリーダ装置20とでは、信号の検出方法が異なるが、本実施形態のICカードリーダ装置は、いずれの検出方法であっても適用できるものである。
【0055】
本実施形態のICカードリーダ装置が第1の実施形態で説明したICカードリーダ装置10と異なる点は、変調回路14の出力電圧V1を最適出力電圧にする方法にある。以下、出力電圧V1を最適出力電圧にする方法を示す図7、および出力電圧V1と検出した信号電圧の比z(n)との関係を示す図8を参照して説明する。
図7において、(1)は搬送波発生回路11が出力する所定周波数の搬送波Vf、(2)は第1の期間と第2の期間とを1対として、第1組は出力電圧Va1とVb1、第2組は出力電圧Va2とVb2、第3組は出力電圧Va3とVb3、……というように出力される可変電圧発生回路13の出力電圧V0、(3)は搬送波発生回路11が出力する搬送波を可変電圧発生回路13の出力電圧で変調した変調回路14の出力電圧V1、(4)は可変電圧発生回路13の出力電圧Va1、Vb1、Va2、Vb2、Va3、Vb3などに対応して検出回路17がN2点において検出した電圧Viであって、それぞれの電圧がVc1、Vd1、Vc2、Vd2、Vc3、Vd3である。
【0056】
ここで出力電圧Va1とVb1、出力電圧Va2とVb2、出力電圧Va3とVb3、……などは、それぞれの対において振幅の比が一定値を保つものである。
図8は、可変電圧発生回路13が第1の期間において出力する出力電圧V0と検出回路17が検出した電圧Viとの比(Vi/V0)をx(n)とし、第2の期間において出力する出力電圧V0と検出回路17が検出した電圧Viとの比(Vi/V0)をy(n)として、さらにx(n)とy(n)との比(x(n)/y(n))を求めてz(n)とし、出力電圧V0と比z(n)との関係を示したものである。即ち、出力電圧V0がVa1、Vb1、Va2、Vb2、Va3、Vb3というように順に出力され、電圧ViがVc1、Vd1、Vc2、Vd2、Vc3、Vd3というように検出された時に、x(1)を(Vc1/Va1)、y(1)を(Vd1/Vb1)として算出し、出力電圧V0と電圧Viとの比z(1)を(x(1)/y(1))のように算出する。
【0057】
出力電圧V0が小さい間は比z(n)はほぼ一定値を保つが、出力電圧V0がある電圧を超えると出力電圧V0が大きい第1の期間においてICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始め、変化点を生じ、比z(n)が低下し始める。変化点が生じることは第1の実施形態における図3の説明、第2の実施形態における図5の説明と同様である。
最適出力電圧V10’を設定する制御手順について図11を参照しながら説明する。図11の制御手順は、基本的考え方は第1の実施形態で説明した図1の場合と同じであるが、図11の手順では第1の出力電圧と第2の出力電圧とが1対であって、その比が一定値を保つ点が異なる。
【0058】
図11(a)において、制御回路12は、ステップS300で初期値n=1を設定し、ステップS310で第1の期間における可変電圧発生回路13の出力電圧Va(1)を出力し、ステップ120で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値Va(1)と、その時の検出回路17が検出した電圧Vc(1)とを入力し、記憶する。ステップS330で第2の期間における可変電圧発生回路13の出力電圧V1b(1)を出力し、ステップ140で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値Vb(1)と、その時の検出回路17が検出した電圧Vd(1)とを入力し記憶する。ステップS350において検出された電圧値の比であるx(1)、y(1)を算出し、さらにそれらの比z(1)を計算して、ステップS360で前記比z(1)が所定値より大きいかどうかを判定し、小さい場合には負荷インピーダンスが変化したと判断してステップS380へ進む。
【0059】
ステップS380では、可変電圧発生回路13の出力電圧値Va(n)を変化点出力電圧V10として記憶し、ステップ190において変化点出力電圧V10に基づいて最適出力電圧V10’を決定し、制御回路12はこの最適出力電圧V10’を出力するよう可変電圧発生回路13を制御する。
ステップS360で前記比z(n)が所定値より大きい場合には、負荷インピーダンスの変化がないと判断してステップS370へ進み、ステップ170では、nを増してステップ110に戻り、以上のステップを繰り返す。
【0060】
図7および図11(a)の例では可変電圧発生回路13の第1の期間における出力電圧Va(n)に比べ、第2の期間における出力電圧Vb(n)が小さい場合について説明したが、大小関係が逆であっても同じ結果が得られる。但し、出力電圧Va(n)に比べ第2の期間における出力電圧Vb(n)の方が大きい場合には、変化点出力電圧V10として大きい方の出力電圧Vb(n)を採用する。
【0061】
また、図7および図11の例では可変電圧発生回路13の第1の期間における出力電圧V1aが漸増させる場合について説明したが、出力電圧V1aが漸減させるようにしても同様の結果が得られる。この場合、図11(a)のステップS360を、図11(b)のステップS360’のように大小関係が逆転した判定を行うことになる。
さらに、図11(a)のステップS350では検出した電圧値の比を同一時期に入力された可変電圧発生回路13の出力電圧Va(n)(またはVb(n))と、検出回路17が検出した電圧Vc(n)(またはd(n))との比として算出するが、これは図11(c)のようにVa(n)とVb(n)、Vc(n)とVd(n)の比として算出するステップS350’としても同様の結果が得られる。
【0062】
(第5の実施形態)
この実施形態においては、技術的な概念としては第4の実施形態に含まれるものであり、負荷インピーダンスの変化を検出する過程とICカードへ情報送信する過程とを並行して実行する点において第3の実施形態と異なる。
ICカードリーダ装置からICカードへ情報を送信する場合に、情報を2進数で表現される符号化を行ない、その符号化の方法にはマンチェスタ符号やFM0符号などが含まれる。図9にこれらの符号化方式の例を示したので、それぞれの符号の特徴を簡単に説明する。
【0063】
図9(1)はマンチェスタ符号の例であって、例えば、1周期の前半の振幅が小さく、後半の振幅が大きい場合を2進数の“0”とし、逆に1周期の前半の振幅が大きく、後半の振幅が小さい場合を2進数の“1”とする。また、図9(2)はFM0符号の例であって、例えば、1周期の中で振幅が変化しない場合を2進数の“0”とし、1周期の前半と後半とで振幅が異なる場合を2進数の“1”として、なおかつ各周期の区切りにおいて搬送波の振幅が変化するものである。
【0064】
本実施形態においては、第4の実施形態において2つの振幅が所定の比を保つ1組の出力電圧によって電磁界が送信されることに対応して、上記のような符号を適用して情報送信を並行して行なう。例えば、図7(1)のa1とb1、a2とb2、a3とb3、……のそれぞれに図9(1)のa1とb1(データ“0”)、a2とb2(データ“0”)、a3とb3(データ“1”)、……を対応させて情報を送信し、同様に、図7(2)のa1とb1、a2とb2、……のそれぞれに図9(2)のa1とb1(データ“0”と“0”)、a2とb2(データ“1”)、……を対応させて情報を送信する。
【0065】
この実施形態は、負荷インピーダンスの変化を検出して最適出力電圧を探しながら、並行してICカードに向けてコマンド等の情報送信を行なうことができるので、一旦、最適電圧が見つかった後、ICカードとの通信中にも絶えず環境変化などによる最適電圧の変化を監視し、最適出力電圧を更新することができることになるという利点がある。
なお、本発明は様々な変形が可能であり、例えば、図1や図6において、検出回路17は回路中のN2点から信号電圧を入力する構成となっているが、他の回路部位、例えばN3点やN4点などから入力する構成とすることも可能である。また、制御回路は、可変電圧発生回路13が出力する電圧V1は、実際に出力されている電圧をA/D変換回路を通して入力しても良いし、図1や図6のように実際に出力されている電圧を入力する構成とせず、制御回路が可変電圧発生回路13に対して出力を指示した電圧を可変電圧発生回路13が出力する電圧と見なして入力しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明における第1の実施形態に係るICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図2】上記第1の実施形態に係るICカードリーダ装置の主要部位の波形を説明する図である。
【図3】図2における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとの関係を説明する図である。
【図4】上記第1の実施形態において可変電圧発生回路が出力する出力電圧V0の他の例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとの関係を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るICカードリーダ装置の主要部位の波形を説明する図である。
【図8】図7における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとから変化点を検出する方法を説明する図である。
【図9】第5の実施形態に係るICカードリーダ装置がICカードに向けて情報を送信する場合に用いることができる符号化方式の例を説明する図である。
【図10】上記第1の実施形態に係る制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【図11】上記第4の実施形態に係る制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【図12】従来のICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図13】図12のICカードリーダ装置とICカードにおけるインピーダンスの作用を説明するための等価回路図である。
【符号の説明】
【0067】
図面中、1はICカード、2、10、20はICカードリーダ装置、11は搬送波発生回路、12は制御回路、13は可変電圧発生回路、14は変調回路、16はアンテナ回路、17は検出回路、18はA/D変換回路、19は復調回路、24は検出素子、6は定電圧回路、3は負荷インピーダンス、4はスイッチング素子である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードスイッチング方式にてICカードに記憶されたデータを非接触で読み取る非接触型ICカードリーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、施設への入退場管理、交通機関の自動改札などの用途に非接触型のICカードを使用したシステムが普及してきている。非接触型ICカードの多くはカード内に電源を備えておらず、ICカードリーダ装置からの電磁波をアンテナで受信し、それを整流して電源としている。この生成される電源の容量は小さいため、ICカードからICカードリーダ装置へのデータ送信には消費電力が少なくて済む、いわゆるロードスイッチング方式が採用されることが多い。このロードスイッチング方式とは、送信するデータに基づいてICカード内の負荷を変動させ、その変動をICカードリーダ装置で検出し、復調する方式である。
【0003】
図12は、ロードスイッチング方式を採用したICカード1およびICカードリーダ装置2の従来の構成例をブロック図で示したものである。
ICカードリーダ装置2において、搬送波発生回路11で発生した搬送波は、変調回路14で変調され、回路インピーダンスZ1、フィルタ22等を通してアンテナ回路16へ導かれる。そして、アンテナ回路16では、当該搬送波の周波数で励振されてICカード1に向けて電磁波を放射する。
【0004】
制御回路12は、送信すべき情報に対応した電圧の信号を出力するよう可変電圧発生回路13を制御し、変調回路14は可変電圧発生回路13が出力する電圧に基づいて振幅変調を行う。
アンテナ回路16から放射された電磁波は、ICカード1のアンテナ回路7で受信される。受信された電磁波のエネルギーによりアンテナ回路7に発生した電圧は、整流回路8で整流されて直流電圧を発生し、電源としてIC回路9に供給される。整流回路8で発生した電源電圧がIC回路9に内蔵されたICの最大許容電圧を超えないように、非線形な電気的特性を有する定電圧回路6が接続されている。
【0005】
更に定電圧回路6と並列に、負荷インピーダンス3とスイッチング素子4の直列回路からなる変調回路が接続されている。例えばICカードリーダ装置2からリードコマンドを受信した場合、IC回路9は内部のメモリから送信すべきデータを読み出し、その内容に基づいてスイッチング素子4をオン/オフ動作させる。スイッチング素子4がオン/オフ動作すると、負荷インピーダンス3が接続/開放を繰り返すことになり、負荷インピーダンス3を変化させる。
【0006】
ICカードリーダ装置2のアンテナ回路16とICカード1のアンテナ回路7とは電磁的に結合しているので、ICカード1における負荷インピーダンス3の変化は、ICカードリーダ装置2のアンテナ回路16を通して接続点N3にも伝わることとなり、N3点において負荷インピーダンスの変化に応じた搬送波の電圧変動が発生する。
復調回路19では、N3点の搬送波の電圧変動を検出する。こうして制御回路12は、ICカード1より送られてくるデータを受信することができる。
【0007】
図12のICカード1およびICカードリーダ装置2におけるインピーダンスの等価回路図である図13を参照しながら、ICカードリーダ装置2がICカード1からデータを受信する仕組みについて詳細に説明する。
図13において、変調回路14の出力電圧は出力インピーダンスZ1、フィルタ回路のインピーダンスZf、アンテナ回路16のインピーダンスZa1、Za2を経てICカードに伝達される。ICカード1は、IC回路9のインピーダンスZL、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRL、定電圧回路6が発生する非線形特性をもつインピーダンスZDなどが接続された負荷回路と見なすことができる。
【0008】
N2点からICカード側を見た場合、変動する可能性があるインピーダンスはアンテナ回路とICカードとの結合度合いによって変化するインピーダンスZa2、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRLおよび非線形の特性をもつインピーダンスZDである。
検出回路17は、ICカード1からの情報送信時にスイッチング素子4がオン/オフされ、インピーダンスRLが変動する状態をN2点における電圧変動として検出する。検出回路17がN2点において大きな信号を検出するためには、ICカード1内に存在するインピーダンスZL,ZDに比べ、スイッチング素子4によってオン/オフされるインピーダンスRLが相対的に小さいことが必要となるので、非線形の特性をもつインピーダンスZDはできるだけ大きいことが望ましい。即ち、インピーダンスZDが極めて大きく、実質的に定電圧回路6には電流が流れない状態が最も望ましいということになる。
【特許文献1】特開平6−96292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらICカード1で受信する電力が弱くなると、定電圧回路6には上記のように電流が流れない状態にはなるものの、IC回路9の動作が不安定になってしまうという問題がある。
更に、ICカード1で受信する電力が定電圧回路6で保護できないほど強くなると、ICの最大許容電圧を超えてしまって、ICが破壊されてしまうという問題がある。
【0010】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ICカード側で受信される電力が強過ぎず、また弱過ぎないように、最適な電磁エネルギーを送信することが可能な非接触型ICカードリーダ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、請求項1記載の発明においては、所定電圧を超える電力を吸収してICを保護する保護手段を有すると共に、受信した電磁界より動作電力を得て、負荷インピーダンスを変動させることにより情報を送信するICカードに対して、非接触で当該情報を受信する非接触型ICカードリーダ装置であって、供給された電圧に応じた強さの電磁界を発生させる電磁界発生手段、およびこの電磁界発生手段に供給する電圧を変更可能な可変電圧出力手段、を有する可変出力送信手段と、この可変出力送信手段により電磁界の強さを変化させ、当該変化に基づくICカードの負荷インピーダンスの変化を検出する負荷変化検出手段と、この負荷変化検出手段によりICカードの負荷インピーダンスの変化が検出された場合には、その時点での可変電圧出力手段の出力電圧を変化点出力電圧として検出し、当該変化点出力電圧に基づいて最適出力電圧を設定して、可変電圧出力手段が最適出力電圧を出力するように制御する出力制御手段と、を備えている。
【0012】
従って、請求項1記載の発明によれば、保護手段が作動しない所定電圧までは、可変電圧出力手段の出力電圧を変更してもICカードの負荷インピーダンスに変化は無いが、所定電圧を超えると、ICを保護すべく保護手段が所定電圧を超える電力を吸収するようになるので、当該保護手段に電流が流れ、ICカードの負荷インピーダンスが変化する。
ICカード側で最適な電力となるのは、保護手段で規程された所定電圧を若干超える状態に相当するため、保護手段に電流が流れる、すなわちICカードの負荷インピーダンスの変化を検出したタイミングに基づいて出力制御手段は、最適出力電圧を設定し、当該電圧を可変電圧出力手段より出力させるように制御するので、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、可変出力送信手段は、可変電圧出力手段および電磁界発生手段の間に所定の出力インピーダンスを有するものであり、負荷変化検出手段は、出力インピーダンスに入力される前の電圧を検出する第1の電圧検出手段と、少なくとも出力インピーダンスの一部を通過した後の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、を有するものであり、出力制御手段は、第1の電圧検出手段が検出した電圧が第1の検出電圧である時に、第2の電圧検出手段が検出した電圧を第2の検出電圧とし、第1の電圧検出手段が検出した電圧が第3の検出電圧である時に、第2の電圧検出手段が検出した電圧を第4の検出電圧とし、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に、所定の関係が成立するか否かを判定することによって変化点出力電圧を検出するものである。
【0014】
従って、請求項2記載の発明においては、ICカードの負荷インピーダンスの影響を受ける可変出力送信手段の出力インピーダンスの通過前後の電圧を測定することにより、ICカードの負荷インピーダンスの変化を容易に検出することができ、これによりICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に成立する所定の関係とは、第1の検出電圧および第2の検出電圧の比である第1の比と、第3の検出電圧および第4の検出電圧の比である第2の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴としている。
【0016】
更に、請求項4記載の発明においては、第1の検出電圧、第2の検出電圧、第3の検出電圧、および第4の検出電圧の間に成立する所定の関係とは、第1の検出電圧および第3の検出電圧の比である第3の比と、第2の検出電圧および第4の検出電圧の比である第4の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴としている。
【0017】
従って、請求項3,4記載の発明によれば、ICカードの負荷インピーダンスの影響を受ける可変出力送信手段の出力インピーダンスの通過前後の電圧変化の度合いを判断することで、ICカードの負荷インピーダンスの変化を的確に検出することができ、これによりICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、第1の電圧検出手段が検出する電圧は、可変電圧出力手段の出力端における出力電圧であり、第2の電圧検出手段が検出する電圧は、出力インピーダンスの少なくとも一部を通過した出力回路部位における出力電圧であることを特徴としている。
【0019】
従って、可変出力送信手段の方から見たICカードの負荷インピーダンスを、可変出力送信手段の出力回路インピーダンスに対する相対的な大きさとして検出するものであり、これら第1の電圧検出手段および第2の電圧検出手段が検出する電圧は、回路上、容易に検出することができる電圧であるため、回路を複雑化することなくICカードの負荷インピーダンスの変化を的確に検出して、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、負荷変化検出手段は、更に、電磁界発生手段の近傍に設けられ、当該電磁界発生手段が発生する電磁界の強さに応じた電圧を出力する電磁界検出手段を有し、第2の電圧検出手段は、当該電磁界検出手段が出力した電圧を検出することを特徴としている。
【0021】
また、請求項7記載の発明によれば、電磁界検出手段は、電磁界発生手段が発生する電磁界と交差する検出コイルであり、第2の電圧検出手段は、電磁誘導作用によって前記検出コイルが発生する電圧を検出することを特徴としている。
【0022】
従って、請求項6,7記載の発明によれば、電磁界発生手段が発生する電磁界の強さは電磁界発生手段に供給される電圧に対応し、ICカードの負荷インピーダンスの変化によって可変出力送信手段側に生じる電圧変動によって電磁界の強さも変動することになる。そのため、第2の電圧検出手段として、当該電磁界の強さに対応した電圧(検出コイルが発生する電圧)を検出すれば、変化点出力電圧を検出することができ、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
また、特に、検出コイルを用いた請求項7記載の発明においては、検出コイルから出力される信号が特定の電位に拘束されていないため、当該特定電位の除去を行う回路を設ける必要がなく、さらに前記特定電位に含まれるノイズ等の影響を受けないので、特性面でも優れたものとなる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御して、変化点出力電圧を検出するようにしたことを特徴としている。
従って、請求項8記載の発明によれば、微妙な変化であるICカードの負荷インピーダンスの変化を、漸増または漸減により的確に検出することができ、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧が検出された後は、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴としている。
【0025】
また、請求項10記載の発明によれば、出力制御手段は、可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧が検出された後は、その時点で可変電圧出力手段が出力している出力電圧とその直前に出力した出力電圧との中間に次の出力電圧を設定し、以後、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴としている。
【0026】
さらに、請求項11記載の発明によれば、出力制御手段は、過去に検出した変化点出力電圧を変化点出力電圧履歴情報として記憶する記憶手段を備え、かつ、出力制御手段は、記憶した出力電圧履歴情報に基づいて変化点出力電圧を予測し、予測した変化点出力電圧の近傍においては可変電圧出力手段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて変化点出力電圧を検出し、変化点出力電圧の近傍以外では、可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出するように可変電圧出力手段を制御するようにしたことを特徴としている。
【0027】
従って、請求項9,10,11記載の発明によれば、変化点出力電圧が検出されるまでの、いわゆる初期段階においては、可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて変化点出力電圧を検出するようにしているので、素早く変化点出力電圧を検出することができ、変化点出力電圧が検出された後は、可変電圧出力段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて変化点出力電圧を検出するようにしているので、処理の迅速化と検出の正確さとを両立させることができるという優れた効果がある。
【0028】
請求項12記載の発明によれば、出力制御手段は、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンとなるように可変電圧出力手段を制御し、かつ、当該出力電圧パターンを漸増または漸減するように制御することを特徴としている。
【0029】
従って請求項12記載の発明によれば、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンで出力することにより、出力インピーダンスを通過して当該出力電圧パターンがどのように変化したかを検出することにより、請求項8と同様の効果を得ることができる。
【0030】
請求項13記載の発明によれば、出力制御手段は、ICカードに向けて送信される情報種別および符号化方式に基づいて、第1の期間の所定の出力電圧および第2の期間の所定の出力電圧とは異なる出力電圧を各々設定し、ICカードへの情報送信と並行して、変化点出力電圧を検出することを特徴としている。
これにより、最適な電力供給のための検査電磁波を特別に送信することなく、実際の情報送信に基づいて最適な電力供給の検出を行うことができるので、ICカード側からの情報受信を最適な電力供給で素早く実現することができるという優れた効果がある。
【0031】
請求項14記載の発明によれば、出力制御手段が設定する最適出力電圧は、変化点出力電圧より所定量だけ大きい電圧として設定されることを特徴としている。
また、請求項15記載の発明によれば、出力制御手段が設定する最適出力電圧は、変化点出力電圧の変化を検出するために出力した、または出力する予定であった可変電圧出力手段の出力電圧のうちから1つの出力電圧を選択して設定されることを特徴としている。
【0032】
従って,請求項14,15記載の発明においては、ICカードの回路電圧が安定することを優先に考え、定電圧回路に少し電流が流れるような、変化点出力電圧より少し大きめの電圧を最適出力電圧として設定することにより、ICカードリーダ装置の最適な送信電力を供給することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るICカードリーダ装置10、及びICカード1の回路構成を示したものである。なおICカード1は「背景技術」の項で説明した図12中のICカード1と同じ回路構成であるので同一符号を付し、説明は省略する。
【0034】
本実施形態のICカードリーダ装置10は、ICカード1から受信した情報を復調する復調回路19、情報送信のために所定の周波数、例えば13.56MHzの搬送波周波数fを発振する搬送波発生回路11、制御回路12、この制御回路12が設定した電圧を出力する可変電圧発生回路13、搬送波発生回路11から出力される搬送波を可変電圧発生回路13が出力する電圧信号で振幅変調する変調回路14、出力回路に挿入された出力インピーダンスZ1、フィルタ回路15、供給された電圧に対応した強さの電磁界を発生しICカード1に向けて放射するアンテナ回路16、ICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出するための検出回路17、検出回路17が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路18とで構成される。なお、本実施形態における出力インピーダンスZ1は、変調回路14やフィルタ回路15などに寄生するインピーダンスであるが、専用のインピーダンス素子としても構成しても良い。
【0035】
なお、図1において、アンテナ回路16が電磁界発生手段に、可変電圧発生回路13が可変電圧出力手段にそれぞれ相当し、可変電圧発生回路13およびアンテナ回路16に搬送波発生回路11、変調回路14、出力インピーンスZ1、フィルタ回路15等を加えたものが可変出力送信手段に相当する。また、検出回路17およびA/D変換回路18が第2の電圧検出手段に、制御回路12が負荷変化検出手段、出力制御手段および第1の電圧検出手段に相当する。
【0036】
次に、図2に示した波形図を参照して前述の最適出力電圧を決定する過程を説明する。図2において、(1)は搬送波発生回路11が出力する搬送波、(2)は制御回路12が可変電圧発生回路13を制御して出力させる直線的に漸増する出力電圧V0、(3)は搬送波を直線的に漸増する出力電圧V0で変調した変調回路14が出力する電圧V1、(4)は図1におけるN2点の電圧V2、(5)は検出回路17が出力するN2点の電圧を検出した信号Vi、の波形図である。
【0037】
図2(3)に示すように、変調回路14が出力する電圧V1の振幅が漸増すると、図2(4)に示すようにN2点の電圧V2も漸増するが、ある大きさの振幅になった時にICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始めるので、それ以降は変調回路14が出力する電圧V1の振幅が増加するほどにはN2点の電圧V2は増加しない。定電圧回路6に電流が流れなければ電圧V1の増加に対応して破線のようにN2点の電圧V2の振幅が増加するはずである。
【0038】
このように変調回路14が出力する電圧V1と、N2点の電圧V2と複数の時点で比較することによって、ICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始める点、即ち負荷インピーダンスの変化点を検出することができる。
ここで、IC回路9が安定して動作するためには、電源電圧はある程度高い(例えば2V以上)方が良く、しかもその電圧が安定していることが望ましいため、本実施形態では、定電圧回路6に少し電流が流れる状態を最適とする。それは、ICカード1の回路電圧が安定している状態が少し余裕をもって維持させるためである。
【0039】
この点を踏まえて、上記の変化点検出に基づく最適出力電圧V10’を算出する方法について説明する。
可変電圧回路13の出力電圧V0と検出回路17の出力電圧Viとの関係は図3のようになる。図3の例では、P0点からP7点に向かって順次検出を行うもので、P3点とP4点とでは出力電圧V3と出力電圧V0との比に差異があることが検出されるので、P3点とP4点との間に変化点が存在すると推定され、P4点の出力電圧V10が変化点出力電圧として検出される。
【0040】
正確には、真の変化点はP3点とP4点との間に存在すると推定されるので、P4点は真の変化点に対する近似的な変化点であるが、実用上はP4点を変化点と考えても支障がないので、以下の説明はP4点を変化点とし、P4点の出力電圧を変化点出力電圧V10として扱うことにする。
また、実際にはICカード1の回路電圧が安定することが重要なので、ICカード1に内蔵されたICを保護する定電圧回路6に少し電流が流れるよう、変化点出力電圧V10より少し大きい電圧を最適出力電圧V10’として設定する。図3の例ではP4点の出力電圧より1段階だけ大きいP5点における出力電圧を最適出力電圧V10’として設定している。
【0041】
そして、制御回路12は可変電圧発生回路13に対して、前記最適出力電圧V10’を出力するように指示する。
図2においては、理解を容易にするために出力電圧を連続的に漸増する例を示したが、図4の例のように、所定時間毎に出力電圧を階段状に変化させる方がより実用的である。図4の例においても作用や効果は図2の例と基本的に同じなので説明は省略する。
【0042】
ここで、最適出力値V10’を算出する制御回路12の作動を図10(a)のフローチャートを用いて説明する。
図10(a)において、制御回路12は、ステップS100で初期値n=0を設定し、ステップS110で可変電圧発生回路13の出力電圧V0(0)を出力し、ステップ120で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V0(0)と、その時の出力電圧値Vi(0)を入力して記憶する。
【0043】
続くステップS130では、可変電圧発生回路13の出力電圧をV0(0)からV0(1)に上げて(または下げて)出力し、ステップ140で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V0(1)と、その時の出力電圧値Vi(1)とを入力して記憶する。ステップS150において検出された電圧値の比であるα(0)およびα(1)を計算し、ステップS160で前記電圧比の差が所定値より大きいかどうかを判定し、大きい場合には負荷インピーダンスが変化したと判断してステップS180へ進む。
【0044】
ステップS180では、現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値V1(n)を変化点出力電圧V10として記憶し、ステップ190において変化点出力電圧V10に基づいて最適出力電圧V10’を決定し、最適出力電圧V10’を出力するよう可変電圧発生回路13を制御する。
一方、ステップS160で前記電圧比の差が所定値より小さいと判定した場合には、負荷インピーダンスの変化がないと判断してステップS170へ進み、ステップ170では、nを増してステップ110に戻り、上記のステップを繰り返す。
【0045】
ここで、上述したように、出力電圧V0を漸増しながらICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出する場合には、上記のステップS160のように判定を行うが、出力電圧V0を漸減しながらICカード1の負荷インピーダンスの変化を検出する場合には図10(b)のステップS160’のように大小関係が逆転した判定を行うことになる。また、上述のステップS150では、検出した電圧値の比をV1に対するViとして算出するが、図10(c)に示すように、V1同士、Vi同士の比として算出するステップS150’としても同様の結果が得られる。
【0046】
なお、ステップS160で、前回の電圧の比α(0)と今回の電圧の比α(1)との差を絶対値として取り扱っているのは、図3に一点鎖線で示すように、直列共振が発生する回路を含む場合などにおいては電圧降下ではなく、電圧上昇が発生して出力電圧Viが上昇する例もあるため、本実施例では絶対値とした。
図10の処理手順は、出力制御手段、可変出力送信手段および負荷変化検出手段が協働して実行するもので、出力電圧を決定し出力するステップS100,S110、S130、S170、S190等が出力制御手段および可変出力送信手段に相当し、信号を入力し判定するステップS120、S140、S150、S160、S180等が負荷変化検出手段に相当する。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、ステップS100に示すようにN=0より処理を開始し、以後、予定された出力電圧を一定の割合で増加または減少させながら順次出力するようにしているが、この実施形態においては、出力電圧を増加または減少させる差分電圧値を複数種類用意しておき、状況により出力電圧を増加または減少させる割合を変えるものである。
【0048】
図5の例においては、初期の段階では大きな差分電圧値を用いて粗な分解能で変化点出力電圧の検出を行い、変化点電圧の近傍においては小さな差分電圧値を用いて密な分解能で変化点出力電圧の検出を行うよう可変出力送信手段を制御する。この例では3種類の分解能を設けており、図5(a)は可変電圧送信手段の出力電圧V1と、検出される信号電圧V3との関係を示し、図5(b)は可変電圧送信手段の出力電圧V1の時間的な変化の状態を示している。
【0049】
図5(a)および図5(b)において、P0点(V(P0))、P1点(V(P1))、P2点(V(P2))、P3点(V(P3))と大きな差分電圧値(粗な分解能)で検出を行い、その結果、P3点によって負荷インピーダンスの変化が検出されると、大きな差分電圧値(粗な分解能)の2倍の分解能となる中程度の差分電圧値(中位の分解能)に切り替え、一旦P4点の出力電圧(V(P4))に戻している。しかし、P2点に対するP4点の出力電圧では、なおも負荷インピーダンスの変化が検出されるので、中程度の差分電圧値(中位の分解能)よりさらに2倍の分解能である小さな差分電圧値(密な分解能)に切り替え、P5点の出力電圧(V(P5))まで戻る。
P2点に対してP5点の出力電圧では負荷インピーダンスの変化が検出されないので、P5点とP4点の中間に負荷インピーダンスの変化点が存在すると判断し、P4点の出力電圧(V(P5))を変化点出力電圧として検出し、P4点の出力電圧より1段階大きい出力電圧として出力する予定であったP6点の出力電圧(V(P6))を最適出力電圧V10’として設定し、可変電圧発生回路13から出力した。
【0050】
このように粗と密の分解能を組み合わせて負荷インピーダンスの変化を検出することにより、短時間で目的の出力電圧に接近し、接近した後はより小さな誤差で最適出力電圧を見つけ出して設定することができる。
なお、図5の例では差分電圧値を整数比の3段階に設定したが、複数の異なる差分電圧値を任意の数だけ設定することによって、初期の段階では大きな差分電圧値を用いて最適出力電圧に短時間で接近し、接近した後は小さな差分電圧値に切り替えてより小さな誤差で最適出力電圧を見つけ出すものとすることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
本実施形態のICカードリーダ装置は、前述の第1の実施形態、第2の実施形態のいずれに対しても適用できるものであって、構成は図6に示すものである。
図6において、ICカードリーダ装置20は、第1の実施形態で説明した図1中のICカードリーダ装置10とほぼ同じ構成であるが、ICカードリーダ装置20には検出素子24が設けられ、検出回路17の信号源となっている点が異なっている。以下、図6に示すICカードリーダ装置20の構成と作用について説明するが、図1のICカードリーダ装置10と同じ構成および作用となる部分は説明を省略する。
【0052】
図6に示すICカードリーダ装置20において、検出素子24はアンテナ回路16を構成するコイル状に形成されたアンテナ(電磁界発生手段)16aに近接して設けられ、アンテナ16aが発生させる電磁界と交差して電磁界の強さを検出する。アンテナ16aが検出する電磁界の強さは、アンテナ16aに供給される電圧に対応しているので、この電磁界の強さを検出すれば間接的にアンテナ16aの端子N4における電圧を検出することになり、第1の実施形態で説明した図1におけるN2点の電圧V2と同じような信号を得ることができる。このように検出コイル24は、電磁誘導作用によってアンテナ16aが発生する電磁界の強さに対応した電圧信号を検出し、検出回路17へ出力する。そして、この電圧信号により図1にメス実施形態と同様にして最適出力電圧V10’が設定される。
【0053】
図6において、検出素子24が第2の電圧検出手段に相当し、電磁界検出手段および検出コイルに相当する。
また、ここではコイル状のアンテナ素子である検出コイルを用いる例について説明したが、検出素子24としてはホール素子や他の形態のアンテナ素子などを用いることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態のICカードリーダ装置の構成は、第1の実施形態で説明した図1中のICカードリーダ装置10、または第2の実施形態で説明した図6中のICカードリーダ装置20と同じ構成である。図1のICカードリーダ装置10と図6のICカードリーダ装置20とでは、信号の検出方法が異なるが、本実施形態のICカードリーダ装置は、いずれの検出方法であっても適用できるものである。
【0055】
本実施形態のICカードリーダ装置が第1の実施形態で説明したICカードリーダ装置10と異なる点は、変調回路14の出力電圧V1を最適出力電圧にする方法にある。以下、出力電圧V1を最適出力電圧にする方法を示す図7、および出力電圧V1と検出した信号電圧の比z(n)との関係を示す図8を参照して説明する。
図7において、(1)は搬送波発生回路11が出力する所定周波数の搬送波Vf、(2)は第1の期間と第2の期間とを1対として、第1組は出力電圧Va1とVb1、第2組は出力電圧Va2とVb2、第3組は出力電圧Va3とVb3、……というように出力される可変電圧発生回路13の出力電圧V0、(3)は搬送波発生回路11が出力する搬送波を可変電圧発生回路13の出力電圧で変調した変調回路14の出力電圧V1、(4)は可変電圧発生回路13の出力電圧Va1、Vb1、Va2、Vb2、Va3、Vb3などに対応して検出回路17がN2点において検出した電圧Viであって、それぞれの電圧がVc1、Vd1、Vc2、Vd2、Vc3、Vd3である。
【0056】
ここで出力電圧Va1とVb1、出力電圧Va2とVb2、出力電圧Va3とVb3、……などは、それぞれの対において振幅の比が一定値を保つものである。
図8は、可変電圧発生回路13が第1の期間において出力する出力電圧V0と検出回路17が検出した電圧Viとの比(Vi/V0)をx(n)とし、第2の期間において出力する出力電圧V0と検出回路17が検出した電圧Viとの比(Vi/V0)をy(n)として、さらにx(n)とy(n)との比(x(n)/y(n))を求めてz(n)とし、出力電圧V0と比z(n)との関係を示したものである。即ち、出力電圧V0がVa1、Vb1、Va2、Vb2、Va3、Vb3というように順に出力され、電圧ViがVc1、Vd1、Vc2、Vd2、Vc3、Vd3というように検出された時に、x(1)を(Vc1/Va1)、y(1)を(Vd1/Vb1)として算出し、出力電圧V0と電圧Viとの比z(1)を(x(1)/y(1))のように算出する。
【0057】
出力電圧V0が小さい間は比z(n)はほぼ一定値を保つが、出力電圧V0がある電圧を超えると出力電圧V0が大きい第1の期間においてICカード1の定電圧回路6に電流が流れ始め、変化点を生じ、比z(n)が低下し始める。変化点が生じることは第1の実施形態における図3の説明、第2の実施形態における図5の説明と同様である。
最適出力電圧V10’を設定する制御手順について図11を参照しながら説明する。図11の制御手順は、基本的考え方は第1の実施形態で説明した図1の場合と同じであるが、図11の手順では第1の出力電圧と第2の出力電圧とが1対であって、その比が一定値を保つ点が異なる。
【0058】
図11(a)において、制御回路12は、ステップS300で初期値n=1を設定し、ステップS310で第1の期間における可変電圧発生回路13の出力電圧Va(1)を出力し、ステップ120で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値Va(1)と、その時の検出回路17が検出した電圧Vc(1)とを入力し、記憶する。ステップS330で第2の期間における可変電圧発生回路13の出力電圧V1b(1)を出力し、ステップ140で現在の可変電圧発生回路13の出力電圧値Vb(1)と、その時の検出回路17が検出した電圧Vd(1)とを入力し記憶する。ステップS350において検出された電圧値の比であるx(1)、y(1)を算出し、さらにそれらの比z(1)を計算して、ステップS360で前記比z(1)が所定値より大きいかどうかを判定し、小さい場合には負荷インピーダンスが変化したと判断してステップS380へ進む。
【0059】
ステップS380では、可変電圧発生回路13の出力電圧値Va(n)を変化点出力電圧V10として記憶し、ステップ190において変化点出力電圧V10に基づいて最適出力電圧V10’を決定し、制御回路12はこの最適出力電圧V10’を出力するよう可変電圧発生回路13を制御する。
ステップS360で前記比z(n)が所定値より大きい場合には、負荷インピーダンスの変化がないと判断してステップS370へ進み、ステップ170では、nを増してステップ110に戻り、以上のステップを繰り返す。
【0060】
図7および図11(a)の例では可変電圧発生回路13の第1の期間における出力電圧Va(n)に比べ、第2の期間における出力電圧Vb(n)が小さい場合について説明したが、大小関係が逆であっても同じ結果が得られる。但し、出力電圧Va(n)に比べ第2の期間における出力電圧Vb(n)の方が大きい場合には、変化点出力電圧V10として大きい方の出力電圧Vb(n)を採用する。
【0061】
また、図7および図11の例では可変電圧発生回路13の第1の期間における出力電圧V1aが漸増させる場合について説明したが、出力電圧V1aが漸減させるようにしても同様の結果が得られる。この場合、図11(a)のステップS360を、図11(b)のステップS360’のように大小関係が逆転した判定を行うことになる。
さらに、図11(a)のステップS350では検出した電圧値の比を同一時期に入力された可変電圧発生回路13の出力電圧Va(n)(またはVb(n))と、検出回路17が検出した電圧Vc(n)(またはd(n))との比として算出するが、これは図11(c)のようにVa(n)とVb(n)、Vc(n)とVd(n)の比として算出するステップS350’としても同様の結果が得られる。
【0062】
(第5の実施形態)
この実施形態においては、技術的な概念としては第4の実施形態に含まれるものであり、負荷インピーダンスの変化を検出する過程とICカードへ情報送信する過程とを並行して実行する点において第3の実施形態と異なる。
ICカードリーダ装置からICカードへ情報を送信する場合に、情報を2進数で表現される符号化を行ない、その符号化の方法にはマンチェスタ符号やFM0符号などが含まれる。図9にこれらの符号化方式の例を示したので、それぞれの符号の特徴を簡単に説明する。
【0063】
図9(1)はマンチェスタ符号の例であって、例えば、1周期の前半の振幅が小さく、後半の振幅が大きい場合を2進数の“0”とし、逆に1周期の前半の振幅が大きく、後半の振幅が小さい場合を2進数の“1”とする。また、図9(2)はFM0符号の例であって、例えば、1周期の中で振幅が変化しない場合を2進数の“0”とし、1周期の前半と後半とで振幅が異なる場合を2進数の“1”として、なおかつ各周期の区切りにおいて搬送波の振幅が変化するものである。
【0064】
本実施形態においては、第4の実施形態において2つの振幅が所定の比を保つ1組の出力電圧によって電磁界が送信されることに対応して、上記のような符号を適用して情報送信を並行して行なう。例えば、図7(1)のa1とb1、a2とb2、a3とb3、……のそれぞれに図9(1)のa1とb1(データ“0”)、a2とb2(データ“0”)、a3とb3(データ“1”)、……を対応させて情報を送信し、同様に、図7(2)のa1とb1、a2とb2、……のそれぞれに図9(2)のa1とb1(データ“0”と“0”)、a2とb2(データ“1”)、……を対応させて情報を送信する。
【0065】
この実施形態は、負荷インピーダンスの変化を検出して最適出力電圧を探しながら、並行してICカードに向けてコマンド等の情報送信を行なうことができるので、一旦、最適電圧が見つかった後、ICカードとの通信中にも絶えず環境変化などによる最適電圧の変化を監視し、最適出力電圧を更新することができることになるという利点がある。
なお、本発明は様々な変形が可能であり、例えば、図1や図6において、検出回路17は回路中のN2点から信号電圧を入力する構成となっているが、他の回路部位、例えばN3点やN4点などから入力する構成とすることも可能である。また、制御回路は、可変電圧発生回路13が出力する電圧V1は、実際に出力されている電圧をA/D変換回路を通して入力しても良いし、図1や図6のように実際に出力されている電圧を入力する構成とせず、制御回路が可変電圧発生回路13に対して出力を指示した電圧を可変電圧発生回路13が出力する電圧と見なして入力しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明における第1の実施形態に係るICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図2】上記第1の実施形態に係るICカードリーダ装置の主要部位の波形を説明する図である。
【図3】図2における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとの関係を説明する図である。
【図4】上記第1の実施形態において可変電圧発生回路が出力する出力電圧V0の他の例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとの関係を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るICカードリーダ装置の主要部位の波形を説明する図である。
【図8】図7における可変電圧発生回路の出力電圧V0と検出回路の出力電圧Viとから変化点を検出する方法を説明する図である。
【図9】第5の実施形態に係るICカードリーダ装置がICカードに向けて情報を送信する場合に用いることができる符号化方式の例を説明する図である。
【図10】上記第1の実施形態に係る制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【図11】上記第4の実施形態に係る制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【図12】従来のICカードリーダ装置とICカードの構成を説明する図である。
【図13】図12のICカードリーダ装置とICカードにおけるインピーダンスの作用を説明するための等価回路図である。
【符号の説明】
【0067】
図面中、1はICカード、2、10、20はICカードリーダ装置、11は搬送波発生回路、12は制御回路、13は可変電圧発生回路、14は変調回路、16はアンテナ回路、17は検出回路、18はA/D変換回路、19は復調回路、24は検出素子、6は定電圧回路、3は負荷インピーダンス、4はスイッチング素子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定電圧を超える電力を吸収してICを保護する保護手段を有すると共に、受信した電磁界より動作電力を得て、負荷インピーダンスを変動させることにより情報を送信するICカードに対して、非接触で当該情報を受信する非接触型ICカードリーダ装置であって、
供給された電圧に応じた強さの電磁界を発生させる電磁界発生手段、およびこの電磁界発生手段に供給する電圧を変更可能な可変電圧出力手段、を有する可変出力送信手段と、
この可変出力送信手段により前記電磁界の強さを変化させ、当該変化に基づく前記ICカードの負荷インピーダンスの変化を検出する負荷変化検出手段と、
この負荷変化検出手段により前記ICカードの負荷インピーダンスの変化が検出された場合には、その時点での前記可変電圧出力手段の出力電圧を変化点出力電圧として検出し、当該変化点出力電圧に基づいて最適出力電圧を設定して、前記可変電圧出力手段が前記最適出力電圧を出力するように制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項2】
前記可変出力送信手段は、前記可変電圧出力手段および前記電磁界発生手段の間に所定の出力インピーダンスを有するものであり、
前記負荷変化検出手段は、
前記出力インピーダンスに入力される前の電圧を検出する第1の電圧検出手段と、
少なくとも前記出力インピーダンスの一部を通過した後の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、を有するものであり、
前記出力制御手段は、前記第1の電圧検出手段が検出した電圧が第1の検出電圧である時に、前記第2の電圧検出手段が検出した電圧を第2の検出電圧とし、前記第1の電圧検出手段が検出した電圧が第3の検出電圧である時に、前記第2の電圧検出手段が検出した電圧を第4の検出電圧とし、前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に、所定の関係が成立するか否かを判定することによって前記変化点出力電圧を検出することを特徴とする請求項1記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項3】
前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に成立する前記所定の関係とは、前記第1の検出電圧および前記第2の検出電圧の比である第1の比と、前記第3の検出電圧および前記第4の検出電圧の比である第2の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項4】
前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に成立する前記所定の関係とは、前記第1の検出電圧および前記第3の検出電圧の比である第3の比と、前記第2の検出電圧および前記第4の検出電圧の比である第4の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項5】
前記第1の電圧検出手段が検出する電圧は、前記可変電圧出力手段の出力端における出力電圧であり、前記第2の電圧検出手段が検出する電圧は、前記出力インピーダンスの少なくとも一部を通過した出力回路部位における出力電圧であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項6】
前記負荷変化検出手段は、更に、
前記電磁界発生手段の近傍に設けられ、当該電磁界発生手段が発生する電磁界の強さに応じた電圧を出力する電磁界検出手段を有し、
前記第2の電圧検出手段は、当該電磁界検出手段が出力した電圧を検出することを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項7】
前記電磁界検出手段は、前記電磁界発生手段が発生する電磁界と交差する検出コイルであり、
前記第2の電圧検出手段は、電磁誘導作用によって前記検出コイルが発生する電圧を検出することを特徴とする請求項6記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項8】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御して、前記変化点出力電圧を検出するようにしたことを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項9】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧が検出された後は、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項10】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧が検出された後は、その時点で前記可変電圧出力手段が出力している出力電圧とその直前に出力した出力電圧との中間に次の出力電圧を設定し、以後、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項11】
前記出力制御手段は、過去に検出した前記変化点出力電圧を変化点出力電圧履歴情報として記憶する記憶手段を備え、
かつ、前記出力制御手段は、記憶した前記出力電圧履歴情報に基づいて変化点出力電圧を予測し、予測した前記変化点出力電圧の近傍においては前記可変電圧出力手段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧の近傍以外では、前記可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出するように前記可変電圧出力手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項12】
前記出力制御手段は、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、前記所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンとなるように前記可変電圧出力手段を制御し、かつ、当該出力電圧パターンを漸増または漸減するように制御することを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項13】
前記出力制御手段は、前記ICカードに向けて送信される情報種別および符号化方式に基づいて、前記第1の期間の前記所定の出力電圧および前記第2の期間の前記所定の出力電圧とは異なる出力電圧を各々設定し、ICカードへの情報送信と並行して、前記変化点出力電圧を検出することを特徴とする請求項12記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項14】
前記出力制御手段が設定する前記最適出力電圧は、前記変化点出力電圧より所定量だけ大きい電圧として設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項15】
前記出力制御手段が設定する前記最適出力電圧は、前記変化点出力電圧の変化を検出するために出力した、または出力する予定であった前記可変電圧出力手段の出力電圧のうちから1つの出力電圧を選択して設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項1】
所定電圧を超える電力を吸収してICを保護する保護手段を有すると共に、受信した電磁界より動作電力を得て、負荷インピーダンスを変動させることにより情報を送信するICカードに対して、非接触で当該情報を受信する非接触型ICカードリーダ装置であって、
供給された電圧に応じた強さの電磁界を発生させる電磁界発生手段、およびこの電磁界発生手段に供給する電圧を変更可能な可変電圧出力手段、を有する可変出力送信手段と、
この可変出力送信手段により前記電磁界の強さを変化させ、当該変化に基づく前記ICカードの負荷インピーダンスの変化を検出する負荷変化検出手段と、
この負荷変化検出手段により前記ICカードの負荷インピーダンスの変化が検出された場合には、その時点での前記可変電圧出力手段の出力電圧を変化点出力電圧として検出し、当該変化点出力電圧に基づいて最適出力電圧を設定して、前記可変電圧出力手段が前記最適出力電圧を出力するように制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項2】
前記可変出力送信手段は、前記可変電圧出力手段および前記電磁界発生手段の間に所定の出力インピーダンスを有するものであり、
前記負荷変化検出手段は、
前記出力インピーダンスに入力される前の電圧を検出する第1の電圧検出手段と、
少なくとも前記出力インピーダンスの一部を通過した後の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、を有するものであり、
前記出力制御手段は、前記第1の電圧検出手段が検出した電圧が第1の検出電圧である時に、前記第2の電圧検出手段が検出した電圧を第2の検出電圧とし、前記第1の電圧検出手段が検出した電圧が第3の検出電圧である時に、前記第2の電圧検出手段が検出した電圧を第4の検出電圧とし、前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に、所定の関係が成立するか否かを判定することによって前記変化点出力電圧を検出することを特徴とする請求項1記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項3】
前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に成立する前記所定の関係とは、前記第1の検出電圧および前記第2の検出電圧の比である第1の比と、前記第3の検出電圧および前記第4の検出電圧の比である第2の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項4】
前記第1の検出電圧、前記第2の検出電圧、前記第3の検出電圧、および前記第4の検出電圧の間に成立する前記所定の関係とは、前記第1の検出電圧および前記第3の検出電圧の比である第3の比と、前記第2の検出電圧および前記第4の検出電圧の比である第4の比との差が所定値を超えないという関係であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項5】
前記第1の電圧検出手段が検出する電圧は、前記可変電圧出力手段の出力端における出力電圧であり、前記第2の電圧検出手段が検出する電圧は、前記出力インピーダンスの少なくとも一部を通過した出力回路部位における出力電圧であることを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項6】
前記負荷変化検出手段は、更に、
前記電磁界発生手段の近傍に設けられ、当該電磁界発生手段が発生する電磁界の強さに応じた電圧を出力する電磁界検出手段を有し、
前記第2の電圧検出手段は、当該電磁界検出手段が出力した電圧を検出することを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項7】
前記電磁界検出手段は、前記電磁界発生手段が発生する電磁界と交差する検出コイルであり、
前記第2の電圧検出手段は、電磁誘導作用によって前記検出コイルが発生する電圧を検出することを特徴とする請求項6記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項8】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御して、前記変化点出力電圧を検出するようにしたことを特徴とする請求項2記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項9】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧が検出された後は、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項10】
前記出力制御手段は、前記可変電圧出力手段に対してその出力電圧を漸増または漸減させるように制御する際、初期の段階では出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧が検出された後は、その時点で前記可変電圧出力手段が出力している出力電圧とその直前に出力した出力電圧との中間に次の出力電圧を設定し、以後、出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記最適出力電圧を設定するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項11】
前記出力制御手段は、過去に検出した前記変化点出力電圧を変化点出力電圧履歴情報として記憶する記憶手段を備え、
かつ、前記出力制御手段は、記憶した前記出力電圧履歴情報に基づいて変化点出力電圧を予測し、予測した前記変化点出力電圧の近傍においては前記可変電圧出力手段の出力電圧を小さく変更して密な分解能にて前記変化点出力電圧を検出し、前記変化点出力電圧の近傍以外では、前記可変電圧出力手段の出力電圧を大きく変更して粗な分解能にて前記変化点出力電圧を検出するように前記可変電圧出力手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項12】
前記出力制御手段は、第1の期間中、所定の出力電圧を保持し、当該第1の期間に連続する第2の期間中、前記所定の出力電圧とは異なる出力電圧を保持するような出力電圧パターンとなるように前記可変電圧出力手段を制御し、かつ、当該出力電圧パターンを漸増または漸減するように制御することを特徴とする請求項8記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項13】
前記出力制御手段は、前記ICカードに向けて送信される情報種別および符号化方式に基づいて、前記第1の期間の前記所定の出力電圧および前記第2の期間の前記所定の出力電圧とは異なる出力電圧を各々設定し、ICカードへの情報送信と並行して、前記変化点出力電圧を検出することを特徴とする請求項12記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項14】
前記出力制御手段が設定する前記最適出力電圧は、前記変化点出力電圧より所定量だけ大きい電圧として設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【請求項15】
前記出力制御手段が設定する前記最適出力電圧は、前記変化点出力電圧の変化を検出するために出力した、または出力する予定であった前記可変電圧出力手段の出力電圧のうちから1つの出力電圧を選択して設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の非接触型ICカードリーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−39744(P2006−39744A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215857(P2004−215857)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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