説明

非接触給電装置

【課題】二次側へ所望の電力を安定的に供給することができる非接触給電装置を提供する。
【解決手段】非接触給電装置Aの一次側ユニット1は、扉枠側に配置される一次側巻線35a,35bと、商用電源ACを高周波に変換して一次側巻線35a,35bに供給する高周波インバータ回路12を備える。二次側ユニット2は、開閉扉側に配置され開閉扉が閉まった状態で一次側巻線35a,35bに磁気結合される二次側巻線38a,38bと、二次側巻線38a,38bから供給される高周波を安定化して電気錠装置4に電源を供給する安定化電源回路24とを備え、二次側巻線38a,38bの漏れインダクタンスと共に共振回路を形成し、一次側コアと二次側コアとの磁極対向距離の所定範囲内で磁極対向距離が大きいほど前記共振回路の共振が強くなるような静電容量値を有する共振コンデンサ21a,21bを、二次側巻線38a,38bに直列に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅や事業所などへのセキュリティシステムの導入によって、開閉扉に電気錠装置を設置する事例が増加しているが、図11に示すように開閉扉52に取り付けられた電気錠装置4に商用電源を給電する場合、扉50枠に対して開閉扉52を支持させる蝶番51に通電金具6を配置し、この通電金具6を介して扉枠50から開閉扉52に取り付けた電気錠装置4へ給電する方法が一般的である。しかしながら、蝶番51に通電金具6を施工する配線作業が非常に複雑であり、また長期間に亘って開閉扉52の開閉が繰り返された場合は、電線の捩れや周辺部材との接触、摩耗によって短絡や断線が発生する可能性があった。
【0003】
また、開閉扉52がアルミ製や鋼製の場合には、開閉扉52の強度を確保するために、開閉扉52の内部に上下方向に延びる補強板53が配置されているのであるが、通電部材6を介して開閉扉52内部に配線された内部配線5を、蝶番51と反対側のハンドル54付近に取り付けられた電気錠装置4まで配線するためには、補強板53に貫通孔53aを開けて内部配線5を通す必要があり、配線作業に手間がかかっていた。
【0004】
このように、扉枠に対して開閉自在に支持された開閉扉に扉枠側から接触給電する場合は、蝶番に配置される通電金具の接触信頼性が低いという問題や、蝶番が大型化して美観を損ねるといった問題があるため、扉枠側に設けられた一次側コイルと、開閉扉側に設けられて一次側コイルに磁気結合される二次側コイルとを用いて、扉枠側から開閉扉に取り付けられた電気錠装置へ非接触給電を行う非接触給電装置が提案されていた(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この種の非接触給電装置は、スイッチング電源と同様にフィードバック制御系で使用される場合が多く、受電側である二次側の状態を電流値或いは電圧値で監視して、給電側である一次側にフィードバックし、一次側の高周波インバータ回路の発振周波数やデューティ比を調整することによって二次側への電力供給を安定化していた(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3927272号公報(段落[0033]−[0061]、及び、第1図)
【特許文献2】特開2006−74848号公報(段落[0034]−[0038]、及び、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の非接触給電装置で一次側の高周波インバータ回路をフィードバック制御する場合、二次側から一次側に非接触で信号を帰還する手段が必要になる。信号を帰還する手段として赤外線通信を用いる場合は、外乱光や水滴、埃などの影響を受け易いという問題があった。すなわち、赤外波長域のエネルギーを持つ太陽光が通信部に照射される光量は、開閉扉や非接触給電装置の施工条件や天候あるいは時間帯によって一定とはならず、また結露による水滴の発生や長期間の使用により受光部に埃が蓄積する可能性も考えられるため、通信の信頼性が低いという問題があった。
【0007】
また、信号を帰還する手段として、磁気的な高周波信号を磁気トランスの励磁磁束に重畳する方法を用いる場合、給電用の巻線(上記の一次側コイルおよび二次側コイル)とは別に、磁気トランスの一次側および二次側の両方に信号用の巻線をそれぞれ必要とし、また、信号の送信側には重畳する信号の発生回路、信号の受信側にはフィルタ回路や復調回路などの信号処理回路がそれぞれ必要になるため、回路規模が大きくなるといった問題やコストアップを招くといった問題があった。
【0008】
このような問題点を解決するために、非接触給電装置においてフィードバック制御を行わずに、信号を帰還する手段を不要にした場合、一次側の高周波インバータ回路は、磁気トランスの一次側コアと二次側コアとの磁極対向距離に関わらず一定条件で動作することになる。ここで、磁気トランスの磁極対向距離は開閉扉の種類や施工条件によってばらつきがあり、また経年による蝶番の緩みやズレに伴って開閉扉の建て付けが悪化すると、磁極対向距離は変動することになり、特に開閉の支軸となる蝶番から離れた位置にあるハンドル側ではその影響が顕著であった。そして、磁極対向距離が大きくなるほど、一次側コイルと二次側コイルとの磁気結合が低下するため、一次側の高周波インバータ回路を一定条件で動作させた場合は、磁極対向距離の増加に伴って給電能力が低下し、所望の給電能力を得られなくなるという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、二次側へ所望の電力を安定的に供給することができる非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、扉枠側に設けた一次側ユニットと、蝶番を介して扉枠に支持される開閉扉側に設けた二次側ユニットとを有し、一次側ユニットから二次側ユニットへ非接触給電を行うことによって、扉枠側から一次側ユニットおよび二次側ユニットを介して開閉扉に配置した電気錠装置に電力供給する非接触給電装置であって、一次側ユニットは、開閉扉に磁極面を対向させるようにして扉枠側に配置される一次側コアおよび一次側コアに巻回された一次側巻線を有する一次側コイルと、商用電源を高周波に変換して一次側巻線に供給する高周波インバータ回路とを備えるとともに、二次側ユニットは、開閉扉が閉まった状態で一次側コアと磁極面同士が対向するように開閉扉に配置された二次側コアおよび二次側コアに巻回された二次側巻線を有し、一次側コイルと共に磁気トランスを構成する二次側コイルと、二次側巻線から供給される高周波を安定化して電気錠装置に電源を供給する安定化電源回路とを備え、二次側巻線の漏れインダクタンスと共に共振回路を形成し、一次側コアと二次側コアとの磁極対向距離の所定範囲内で磁極対向距離が大きいほど前記共振回路の共振が強くなるような静電容量値を有する共振コンデンサを、二次側巻線に電気的に接続したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、一次側コア又は二次側コアのうち少なくとも何れか一方の、磁極対向面以外の部位の少なくとも一部を覆う非磁性の導電性材料からなる電磁遮蔽部材を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、一次側ユニット又は二次側ユニットのうち少なくとも何れか一方の筐体が、非磁性の導電性材料で形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、共振コンデンサが二次側巻線に直列接続されたことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの発明において、一次側コアおよび二次側コアは、それぞれ、両脚片の一端側を継ぎ部を介して連結したU字型コアからなり、各コアの継ぎ部の略全体に等ピッチで一次側巻線又は二次側巻線の何れかを巻回したことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの発明において、一次側コアおよび二次側コアは、磁極対向面の面積が他の部位の断面積よりも大きく形成されるとともに、磁極対向面の少なくとも1つの辺の長さを一次側コアと二次側コアとで異なる長さに設定したことを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかの発明において、一次側巻線又は二次側巻線のうち少なくとも何れか一方が、コアにバイファイラ巻きされた2本の巻線からなることを特徴とする。ここにおいて、バイファイラ巻きとは、2本の巻線を1束にした状態で1束の巻線を一緒にコアに巻回する巻き方を言う。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、一次側コアと二次側コアとの磁極対向距離が大きくなると、磁気結合の低下によって供給電力の低下が発生するが、磁極対向距離が大きいほど、二次側巻線の漏れインダクタンスと共振コンデンサとで構成される共振回路の共振が強くなることで、二次側巻線から安定化電源回路に供給される高周波電力を大きくして、供給電力の低下を抑制することができる。したがって、経年によって磁極対向距離が変化する場合でも、安定化電源回路から所望の供給電力を得ることができ、広範囲の磁極対向距離に対してフィードバック制御を用いずに所望の供給電力を確保することができる。さらに、経年によって磁極間距離が変動しやすい開閉扉の自由端側に二次側ユニットを設置することができるから、ハンドル付近に配置される電気錠装置と二次側ユニットの間の距離を短くして、開閉扉内部の配線作業を簡略化することができる。
【0018】
ところで、磁気トランスの周辺に磁性材料がある場合、この磁性材料が漏れ磁束の経路(漏れ磁路)を形成するため、磁気結合が低下して給電能力を悪化させるという問題があった。また、例えば鋼製の扉枠や開閉扉に非接触給電装置を設置する場合、扉枠や開閉扉を高周波の漏れ磁束が鎖交することによって鉄損が発生し、扉枠や開閉扉が発熱してしまうという問題もあった。
【0019】
それに対して、請求項2の発明によれば、一次側コア又は二次側コアのうち少なくとも何れか一方の、磁極対向面以外の部位の少なくとも一部を、非磁性の導電性材料からなる電磁遮蔽部材で覆っているので、電磁遮蔽部材の電磁遮蔽効果によって漏れ磁束を低減することができ、供給電力の低下を抑制するとともに、鉄損の発生によって扉枠や開閉扉が発熱するのを抑制できるという効果がある。
【0020】
請求項3の発明によれば、一次側ユニット又は二次側ユニットの筐体に電磁遮蔽効果を持たせることができるので、筐体の電磁遮蔽効果によって漏れ磁束を低減することができ、供給電力の低下を抑制するとともに、鉄損の発生によって扉枠や開閉扉が発熱するのを抑制できるという効果がある。しかも、電磁遮蔽部材を別途設けなくても良いから、一次側ユニット又は二次側ユニットの部品数を少なくして、小型化を図ることができるという効果がある。
【0021】
ところで、負荷である電気錠装置の動作状態によって二次側ユニットの負荷インピーダンスは大きく変動するのであるが、請求項4の発明によれば、共振コンデンサを二次側巻線に直列接続しているので、負荷インピーダンスの大きさに関係なく、一定の負荷電圧を得ることができ、過大な共振電圧によって負荷に耐圧以上の電圧が印加されるのを防止できるという効果がある。
【0022】
請求項5の発明によれば、コアの継ぎ部の略全体に一次側巻線又は二次側巻線の何れかを巻回しているので、一次側巻線又は二次側巻線の巻幅をできるだけ大きくとることで、巻線周辺の漏れ磁路の磁気抵抗をできるだけ大きくして、漏れ磁束を減少させることができ、また等ピッチで巻線を巻回することによって、漏れ磁束を低減できるから、磁気結合の低下を抑制して、供給電力を向上させることができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、一次側コアおよび二次側コアは、磁極対向面の面積が他の部位の断面積よりも大きく形成されており、磁気効率は磁極対向面積に比例するため、磁極対向面の面積を大きくとることで磁気効率を高めて、供給電力を向上させることができる。しかも、磁極対向面の少なくとも1つの辺の長さが一次側コアと二次側コアとで異なる長さに設定されているので、この辺に沿う方向において一次側コアと二次側コアの位置が相対的にずれたとしても、磁気結合の低下を抑制して、供給電力の低下を抑制することができ、位置ずれに対する許容範囲を大きくとることができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、2本の巻線を1束にした状態で1束の巻線を一緒にコアに巻回しているので、2本の巻線の巻線長を均一化でき、巻線抵抗と漏れインダクタンスを含むインダクタンス値のばらつきを小さくできる。この結果、一次側ではインダクタンスのばらつきに起因して発生するノイズを抑制でき、二次側では共振条件のばらつきを小さくできるから、給電能力を安定化できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態の非接触給電装置Aは、図3(a)に示すように、扉枠50に蝶番51を介して開閉自在に支持される開閉扉52に設けた電気錠装置4に対して扉枠側から非接触で電力供給を行うためのものであり、扉枠50の上枠部に設けた一次側ユニット1と、開閉扉52の上部に設けた二次側ユニット2とを有している。一次側ユニット1には電源線3を介して商用電源ACが供給され、一次側ユニット1から二次側ユニット2へ電磁誘導により非接触で電力を供給し、二次側ユニット2から内部配線5を介して電気錠装置4へ電力供給を行うようになっている。尚、図3(a)中の53は、開閉扉52の内部に上下方向に沿って配設された補強部材である。
【0027】
図1は非接触給電装置Aの概略構成を示す回路ブロック図であり、一次側ユニット1は、入力フィルタ回路11と、高周波インバータ回路12と、一次側コイル31とを備える。また二次側ユニット2は、一次側コイル31に磁気結合された二次側コイル32と、共振コンデンサ21a,21bと、ダイオードブリッジ回路22と、平滑コンデンサ23と、安定化電源回路24とを備えている。
【0028】
入力フィルタ回路11は、例えば電源投入時の突入電流を低減するサーミスタ素子、過電流ヒューズ、サージ吸収素子、雑音端子電圧を低減するLCフィルタ回路、整流平滑化回路などで構成される。
【0029】
高周波インバータ回路12は、2巻線式の絶縁型スイッチングレギュレータ回路(例えばプッシュプル回路など)で構成され、入力フィルタ回路11を介して供給される商用電源ACの電源電圧を高周波に変換し、磁気トランス30の一次側コイル31(一次側巻線35a,35b)に供給する。
【0030】
一次側コイル31と、一次側コイル31に磁気的に結合された二次側コイル32とで磁気トランス30が構成されており、一次側コイル31の構成を図4および図5を参照して説明する。尚、図5中のB1は主磁路を、B2は漏れ磁路をそれぞれ示している。
【0031】
一次側コイル31は、磁性材料により脚片33a,33bの一端側を継ぎ部33cを介して連結したU字形状に形成されるとともに、各脚片33a,33bの先端面を磁極対向面33dとした一次側コア33と、角筒状の巻胴部34bの両端部に鍔部34a,34aを有し、巻胴部34bの孔内に継ぎ部33cを挿通した状態で一次側コア33に組み合わされたコイルボビン34と、コイルボビン34にそれぞれ巻回された2本の一次側巻線35a,35bとを備える。なお、一次側コア33の材料としては、高周波領域の鉄損が小さく、形状の自由度が高いフェライト材料が好適であり、数点の部材を組み合わせることでU字形状に形成しても良い。
【0032】
また、一次側コア33の断面積は、高周波インバータ回路12の動作状態において磁気飽和しない程度の大きさが必要である。また継ぎ部33cの長さ、すなわち両脚片33a,33bの間隔はできるだけ広い方が好ましく、磁極対向面33d,33dは大面積である方が好ましい。そこで、本実施形態では両脚片33a,33bの側面視の形状を逆T字形に形成してあり、継ぎ部33cに連結される側の端部に比べて、磁極対向面33d側を幅広として、磁極対向面33dの面積を大きくしてある。
【0033】
また、コイルボビン34はできるだけ大きな巻幅が得られるように、脚片33a,33bと鍔部34aとの間の隙間や、鍔部34aの厚みをできるだけ小さくして、巻胴部34bの長さを継ぎ部33cよりも若干小さい寸法に形成してあり、2本の一次側巻線35a,35bは、2本を1束にした状態で、1束の巻線を同時にコイルボビン34に巻回することで(この巻き方をバイファイラ巻きと言う。)、図4(b)に示すように軸方向において一次側巻線35aと一次側巻線35bとが交互に並ぶように両巻線35a,35bを複数回巻回している。このように2本の一次側巻線35a,35bは一束にされた状態でバイファイラ巻きされているので、2本の巻線35a,35bの巻線長を均一化でき、巻線抵抗と漏れインダクタンスを含むインダクタンス値のばらつきを小さくできる。この結果、一次側コイル31ではインダクタンスのばらつきに起因して発生するノイズを抑制でき、また二次側コイル32では共振条件のばらつきを小さくできるから、給電能力を安定化できるという効果がある。また一次側巻線35a,35bの巻幅をできるだけ大きくとることで、巻線周辺の漏れ磁路の磁気抵抗をできるだけ大きくして、漏れ磁束を減少させることができ、さらに等ピッチで均一に巻線を巻回することによって、漏れ磁束を低減できるから、磁気結合の低下を抑制して、供給電力を向上させることができる。
【0034】
また、図4(a)に示すようにU字形状の一次側コア33の左右両側には、非磁性の導電材料からなる電磁遮蔽部材41a,41bが配置されている。電磁遮蔽部材41a,41bは、一次側巻線35a,35bの巻幅方向に沿った平板形状に形成され、脚片33a,33bおよび継ぎ部33cを側面方向から挟むように配置されている。電磁遮蔽部材41a,41bは、一次側コア33の側面の外形よりも十分大きな面積を有するほうが好ましく、その材料としては非磁性で導電率が高い金属材料(例えばアルミニウムや銅など)を用いることが好ましい。尚、電磁遮蔽部材41a,41bの形状は矩形板状に限定されるものではなく、電磁遮蔽部材41a,41bの形状をくの字形状やU字形状とし、その組み合わせによって、一次側コア33の側面や上面(磁極対向面33dと反対側の面)を覆うようにしても良い。
【0035】
なお、磁気トランス30の二次側コイル32は、図5(a)(b)に示すようにU字形状の二次側コア36と、二次側コア36の継ぎ部36cに組み付けられたコイルボビン37と、コイルボビン37に巻回された二次側巻線38a,38bとを備えており、二次側コア36、コイルボビン37、二次側巻線38a,38bは、一次側コイル31の一次側コア33、コイルボビン34、一次側巻線35a,35bと同様の構成を有しているので、その説明は省略する。なお、二次側コイル32では、二次側コア36の磁極対向面36dが一次側コア33の磁極対向面33dに比べて大きく形成されている。すなわち、図5の例では磁極対向面33dの幅方向(図5(b)中の左右方向)に沿った2辺が磁極対向面33dよりも大きく形成されており、この辺に沿う双方向において一次側コア33と二次側コア36の相対的な位置が多少ずれたとしても、一次側コア33の磁極対向面33dが二次側コア36の磁極対向面36dに対向しているから、磁気結合の低下を抑制して、供給電力の低下を抑制することができ、ユニット1,2間の相対的な位置ずれに対する許容範囲を大きくとることができる。
【0036】
そして、本実施形態では、二次側巻線38a,38bと直列にそれぞれ共振コンデンサ21a,21bを接続してあり、二次側巻線38a,38bの漏れインダクタンスと共振コンデンサ21a,21bとでそれぞれ共振回路を構成している。図6は非接触給電装置Aの二次側の等価回路であり、Eは二次側巻線38a,38bに誘起される周波数fの電圧を、Lは二次側巻線38a,38bの漏れインダクタンスを、Cは共振コンデンサ21a,21bの静電容量値を、Rは負荷回路のインピーダンスを夫々示している。ここで、周波数fがf=1/(2π√LC)のとき、LC直列共振の状態であり、電源E側から見たインピーダンスZが負荷回路のインピーダンスRに等しく(Z=R)、インピーダンスZが最小になるので負荷で最大電力を取り出すことができる。ここで、共振コンデンサ21a,21bの静電容量値は、磁気トランス30の磁気結合が初期に比べて小さくなるような条件下、すなわち一次側巻線35a,35bが巻回された一次側コア33と、二次側巻線38a,38bが巻回された二次側コア36との磁極対向距離が初期時に比べて大きくなった際に上記共振回路が共振点を有するような静電容量値に設定されている。ここにおいて、負荷である電気錠装置4の動作状態によって二次側ユニット2の負荷インピーダンスRは大きく変動するのであるが、本実施形態では、共振コンデンサ21a,21bを二次側巻線38a,38bに直列接続しているので、負荷インピーダンスRの大きさに関係なく、一定の負荷電圧を得ることができ、過大な共振電圧によって負荷に耐圧以上の電圧が印加されるのを防止できるという効果がある。なお、共振コンデンサ21a,21bとしては、誘導正接(tanδ)の小さいポリプロピレン系のものが、高周波領域で低損失のため好適である。
【0037】
ダイオードブリッジ回路22の交流入力端子間には共振コンデンサ21a,21bが接続されるとともに、直流出力端子間には平滑コンデンサ23が接続されており、共振コンデンサ21a,21bに発生した交流電圧はダイオードブリッジ回路22によって整流された後、平滑コンデンサ23によって平滑される。なお、ダイオードブリッジ回路22はショットキーバリアダイオードを4個組み合わせて構成しても良い。
【0038】
安定化電源回路24は、例えばシリーズレギュレータ回路やスイッチングレギュレータ回路により構成され、平滑コンデンサ23から入力される直流電圧を安定化して、負荷となる電気錠装置4に供給する。
【0039】
ところで、開閉扉52に設けた電気錠装置4に対して扉枠50側から非接触給電する場合に、開閉扉52を開閉自在に支持する蝶番51側に寄せて一次側ユニット1および二次側ユニット2を配置すると、開閉扉52の自由端側(蝶番51と反対側であってハンドル54の近傍)に配置される電気錠装置4と二次側ユニット2との間を内部配線5により接続する必要があり、開閉扉52内部に補強板53が配置されている場合は内部配線5の施工に手間がかかるという問題がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、開閉扉52の自由端側(電気錠装置4と同じ側)に一次側ユニット1および二次側ユニット2を配置しているが、開閉扉52の自由端側では、経年による蝶番51の緩みやずれによって、一次側コア33および二次側コア36の磁極間距離が変化する量が蝶番側よりも大きくなっている。扉枠50の間口と開閉扉52の外側面との間の隙間(所謂チリ寸法)は一般に0mmより大きく10mm以下の範囲内であり、チリ寸法が0mmの状態とは扉枠50と開閉扉52とが干渉して、開閉動作に弊害を生じるような状態である。このチリ寸法は開閉扉52の種類や施工条件によって一概ではなく、また経年による蝶番51の緩みやズレなどでチリ寸法が変動する可能性がある。この変動は開閉の支軸となる蝶番51側では小さく、支軸から遠いハンドル54や電気錠装置4が配置される側では大きくなっているため、本実施形態のように開閉扉52の自由端側に両ユニット1,2を配置した場合は、磁極対向距離の変動によって磁気結合が低下する恐れがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、磁気トランス30の二次側巻線38a,38bと直列に共振コンデンサ21a,21bを接続してあり、二次側巻線38a,38bの漏れインダクタンスと共振コンデンサ21a,21bとで構成される共振回路は、一次側コア33と二次側コア36との磁極対向距離が所定範囲内で大きくなるほど、共振が強くなるように共振コンデンサ21a,21bの静電容量値が設定されているので、磁極対向距離の増加に伴う供給電力の低下を、共振回路による共振動作で補うことができ、フィードバック制御を行うことなく所望の供給電力を確保することが可能になる。図2(a)は本実施形態の磁極対向距離L(mm)と供給電力W1(W)との関係を示すグラフ、図2(b)は共振コンデンサ21a,21bが無い場合の磁極対向距離L(mm)と供給電力W1(W)との関係を示すグラフであり、共振コンデンサ21a,21bが無い場合は磁極間距離の増加に伴って、磁気トランス30の磁気結合(図2(b)中のb)が低下し、それによって供給電力W1(同図中のa)が低下するため、所望の目標電力を確保できる磁極対向距離Lの範囲が狭くなっている(0<L≦L2)。一方、本実施形態でも磁極間距離の増加に伴って、磁気トランス30の磁気結合(図2(a)中のb)が低下するのであるが、共振点に近付くにつれて共振回路の共振の強さ(同図中のc)が強くなることで、供給電力W1(同図中のa)の低下が抑制され、より広範囲の磁極対向距離(0<L≦L1、L1>L2)で所望の目標電力を得ることができる。
【0042】
次に、本実施形態の非接触給電装置Aを開閉扉に施工した状態について図3(a)を参照して説明する。給電装置Aの一次側ユニット1は、一次側コア33の磁極対向面33dを下側に向けた状態で、扉枠50の上枠部内に埋込配設されている。一方、二次側ユニット2は、開閉扉52を閉じた状態で二次側コア36の磁極対向面36dが一次側コア33の磁極対向面33dと対向するように、開閉扉52の上側部に埋込配設されている。この時、両ユニット1,2は、開閉扉52の開閉動作が行われても接触したり干渉したりすることがないように所定の空間距離を確保した状態で、一次側の磁極対向面33d,33dと、二次側の磁極対向面36d,36dとをそれぞれ対向させて配置されている。尚、一次側ユニット1および二次側ユニット2は、それぞれ、ねじ止めなどの手段を用い、一次側の磁極対向面33d,33dと二次側の磁極対向面36d,36dとの間に所定の空間距離を開けた状態で、扉枠50および開閉扉52の表面に取り付けるようにしても良い。
【0043】
また内部配線5は、二次側ユニット2の安定化電源回路24と電気錠装置4とを電気的に接続するための電気配線であり、開閉扉52の内部に配線されている。ここで、磁気トランス30の二次側コイル32は電気錠装置4の上方に配置されており、内部配線5は略上下方向に沿って配線するだけで良いので、二次側ユニット2と電気錠装置4との間の配線距離を短くして配線作業を簡略化することができる。またアルミニウム製や鋼製の開閉扉52の場合には、開閉扉52の内部に補強板53が上下方向に沿って配設されているが、二次側ユニット2と電気錠装置4とを補強板53で仕切られた同一の区画内に配置しているので、補強板53を貫通する形で内部配線5を配線する必要が無く、補強板53に通線用孔を貫設したり、通線用孔に内部配線5を通す手間がいらなくなるから、配線作業をさらに簡略化できる。
【0044】
また、開閉扉52又は扉枠50が鋼製の時、扉枠50内に配設された一次側ユニット1では、図7(a)に示すように、一次側ユニット1の筐体10内に一次側コア33の側面を覆うようにして電磁遮蔽部材41a,41bを配置してあり、この電磁遮蔽部材41a,41bは、扉枠50の側壁50a,50aと一次側コア33との間に配置されることになる。ここで、図7(b)のように扉枠50の側壁50a,50aと一次側コア33との間に、電磁遮蔽部材41a,41bが介在しない場合は、一次側コア33から扉枠50の側壁50a,50aに流入する漏れ磁束Bによって、一次側コイル31と二次側コイル32との磁気結合が低下してしまうが、本実施形態のように電磁遮蔽部材41a,41bを介在させた場合、その電磁遮蔽効果によって漏れ磁束Bが低減されるので、給電能力の低下を抑制することができ、且つ、鉄損の発生による扉枠50の異常発熱を防止することもできる。尚、図7(a)に示す例では、一次側コア33の磁極対向面33d以外の部位の少なくとも一部を覆うように電磁遮蔽部材41a,41bを配置しているが、電磁遮蔽部材によって二次側コア36の磁極対向面36d以外の部位の少なくとも一部を覆うことで、上述と同様に漏れ磁束を低減し、供給電力の低下や鉄損による開閉扉52の異常発熱を抑制することができる。
【0045】
また、一次側コア33の磁極対向面33d以外の部位を覆う電磁遮蔽部材41a,41bを設ける代わりに、図8(a)に示すように一次側ユニット1の筐体10A自体を非磁性の導電性材料により形成しても良く、電磁遮蔽部材41a,41bを別途設けなくても、筐体10A自体が電磁遮蔽機能を有しているので、漏れ磁束の低減を図りつつ、一次側ユニット1の部品数の低減や小型化を図ることができる。なお、この筐体10Aでは、一次側コア33の磁極対向面33dと対向する部位(図中の領域D1,D2)のみを、主磁束の通過を妨げることがないように合成樹脂製としているが、図8(b)に示すように一次側ユニット1の筐体10Bにおいて一次側コア33の全体と対向する部位(図中の矩形領域C2)を合成樹脂製としても良い。また、二次側コア36の磁極対向面36d以外の部位を電磁遮蔽部材で覆う代わりに、二次側ユニット2の筐体20そのものを非磁性の導電性材料により形成しても良く、上述と同様に電磁遮蔽部材を別途設けなくても、筐体20自体が電磁遮蔽機能を有しているので、漏れ磁束の低減を図りつつ、二次側ユニット2の部品数の低減や小型化を図ることができる。
【0046】
ところで、本実施形態では扉枠50および開閉扉52の上部の一端側(軸支される側と反対側)に一次側ユニット1および二次側ユニット2を配置しているが、扉枠50および開閉扉52の下部の一端側(軸支される側と反対側)に一次側ユニット1および二次側ユニット2を配置しても良いし、図3(b)に示すように開閉扉52の一端側(軸支される側と反対側)に磁極対向面36dを側方に向けて二次側ユニット2を配置すると共に、扉枠50の横枠部において二次側コア36と磁極対向面同士が対向するようにして一次側ユニット1を配置しても良い。このように配置した場合でも、経年により磁極対向面同士の距離が変動した場合には、二次側巻線38a,38bの漏れインダクタンスと共振コンデンサ21a,21bとで構成される共振回路の共振が強まることによって、磁気結合の低下による供給電力の低下を抑制することができ、広範囲の磁極対向距離で所望の供給電力を確保することができる。
【0047】
また、本実施形態では高周波インバータ回路12が2巻線式の絶縁型スイッチングレギュレータ回路で構成されているが、図10に示すように、磁気トランス30の一次側を2巻線(一次側巻線35a,35b)、二次側を1巻線(二次側巻線38)とした絶縁型スイッチングレギュレータ回路(例えばプッシュプル回路)で構成しても良く、この場合は、二次側巻線38と直接に共振コンデンサ21が接続されている。また、図10に示すように高周波インバータ回路12を1巻線式の絶縁型スイッチングレギュレータ回路(例えばハーフブリッジ回路)で構成しても良く、この場合は、磁気トランス30の一次側巻線35および二次側巻線38はそれぞれ1巻線となり、二次側巻線38に共振コンデンサ21が直列接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の非接触給電装置の概略構成を示す回路ブロック図である。
【図2】(a)は同上の磁極対向距離と供給電力との関係を示すグラフ、(b)は従来例の磁極対向距離と供給電力との関係を示すグラフである。
【図3】(a)(b)は同上の施工状態を示す説明図である。
【図4】同上に用いる一次側コイルを示し、(a)は一部省略せる外観斜視図、(b)は側断面図である。
【図5】(a)は同上に用いる磁気トランスを概略的に示した正面図、(b)は側面図である。
【図6】同上の二次側回路の等価回路図である。
【図7】(a)は同上の一次側コイルを扉枠内に配置した状態の概略断面図、(b)は従来の一次側コイルを扉枠内に配置した状態の概略断面図である。
【図8】(a)(b)は同上に用いる一次側ユニットの一部省略せる断面図である。
【図9】同上の非接触給電装置の他の回路例を示す回路ブロック図である。
【図10】同上の非接触給電装置のまた別の回路例を示す回路ブロック図である。
【図11】従来の非接触給電装置の施工状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
A 非接触給電装置
1 一次側ユニット
2 二次側ユニット
4 電気錠装置
12 高周波インバータ回路
21a,21b 共振コンデンサ
24 安定化電源回路
31 一次側コイル
32 二次側コイル
33 一次側コア
35a,35b 一次側巻線
36 二次側コア
38a,38b 二次側巻線
AC 商用電源
50 扉枠
51 蝶番
52 開閉扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠側に設けた一次側ユニットと、蝶番を介して扉枠に支持される開閉扉側に設けた二次側ユニットとを有し、一次側ユニットから二次側ユニットへ非接触給電を行うことによって、扉枠側から一次側ユニットおよび二次側ユニットを介して開閉扉に配置した電気錠装置に電力供給する非接触給電装置であって、
一次側ユニットは、開閉扉に磁極面を対向させるようにして扉枠側に配置される一次側コアおよび一次側コアに巻回された一次側巻線を有する一次側コイルと、商用電源を高周波に変換して一次側巻線に供給する高周波インバータ回路とを備えるとともに、
二次側ユニットは、開閉扉が閉まった状態で一次側コアと磁極面同士が対向するように開閉扉に配置された二次側コアおよび二次側コアに巻回された二次側巻線を有し、一次側コイルと共に磁気トランスを構成する二次側コイルと、二次側巻線から供給される高周波を安定化して電気錠装置に電源を供給する安定化電源回路とを備え、
二次側巻線の漏れインダクタンスと共に共振回路を形成し、一次側コアと二次側コアとの磁極対向距離の所定範囲内で磁極対向距離が大きいほど前記共振回路の共振が強くなるような静電容量値を有する共振コンデンサを、二次側巻線に電気的に接続したことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
一次側コア又は二次側コアのうち少なくとも何れか一方の、磁極対向面以外の部位の少なくとも一部を覆う非磁性の導電性材料からなる電磁遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の非接触給電装置。
【請求項3】
一次側ユニット又は二次側ユニットのうち少なくとも何れか一方の筐体が、非磁性の導電性材料で形成されたことを特徴とする請求項1記載の非接触給電装置。
【請求項4】
共振コンデンサが二次側巻線に直列接続されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
一次側コアおよび二次側コアは、それぞれ、両脚片の一端側を継ぎ部を介して連結したU字型コアからなり、各コアの継ぎ部の略全体に等ピッチで一次側巻線又は二次側巻線の何れかを巻回したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項6】
一次側コアおよび二次側コアは、磁極対向面の面積が他の部位の断面積よりも大きく形成されるとともに、磁極対向面の少なくとも1つの辺の長さを一次側コアと二次側コアとで異なる長さに設定したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項7】
一次側巻線又は二次側巻線のうち少なくとも何れか一方が、コアにバイファイラ巻きされた2本の巻線からなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−55745(P2009−55745A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221844(P2007−221844)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】