説明

非接触給電装置

【課題】コアの開口溝から漏れる磁束の影響やコアの外側に配置される給電線の周囲に生じる磁束の影響を低減する。
【解決手段】磁気シールド体5は、高透磁率である金属磁性材料により略円筒形状に形成されてコア2並びにコイル3に外挿される。このようにコア2並びにコイル3が磁気シールド体5で包み込まれているので、戻りの給電線100の周囲に生じる磁束がコア2内を通過するのを阻止することができ、その結果、ピックアップ部1の電力伝達の効率低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触給電装置として、例えば、移動体の移動線路に沿って高周波電流を流す給電線を張設し、前記給電線と誘導結合されたピックアップ部を前記移動体に配置し、前記ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷(移動体を移動させる電動機)に給電するものが提供されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲む筒状のコアと、コアに巻線を巻回してなるコイルとを有し、給電線の周囲に生じる磁束の大半がコア内を通ることでコイルに誘起される誘導起電力を高くしている。尚、コアには、少なくとも給電線が径方向に通過可能である開口溝が給電線の軸方向に沿って設けられ、給電線へのピックアップ部の装着及び離脱が容易に行えるようになっている。
【特許文献1】特開2004−120880号公報
【特許文献2】特許第3263421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来例におけるコアには給電線を挿通するための開口溝が設けられているため、コア内を通過する磁束の一部が開口溝を通して外部に漏れてしまう。そして、ピックアップ部の近傍に配置されている金属部材(例えば、移動体や移動線路)に漏れ磁束による渦電流が流れて損失が生じ、その結果、ピックアップ部の電力伝達の効率が低下してしまう虞がある。あるいは、高周波電源に対する往きと戻りの2本の給電線のうちの一方の給電線がコアの内側に配置され、他方の給電線がピックアップ部の近傍に配置されている場合、当該他方の給電線の周囲に生じる磁束が、開口溝を通してコア内を通過する磁束と打ち消しあい、その結果、ピックアップ部の電力伝達の効率が低下してしまう虞がある。尚、特許文献1,2に記載されている従来例では、コイルと移動体との間が磁気シールドされているが、コアの開口溝から漏れる磁束の影響やコアの外側に配置される給電線の周囲に生じる磁束の影響については何等考慮されていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、コアの開口溝から漏れる磁束の影響やコアの外側に配置される給電線の周囲に生じる磁束の影響を低減することができる非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲み且つ少なくとも給電線が径方向に通過可能である開口溝が給電線の軸方向に沿って設けられた筒状のコアと、コアに巻線を巻回してなるコイルと、高透磁率の磁性材料からなりコア及びコイルを包み込む磁気シールド体とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体でコア及びコイルを包み込んでいるので、コアの開口溝から漏れる磁束の影響を低減することができる。
【0008】
請求項2の発明は、上記目的を達成するために、高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲み且つ少なくとも給電線が径方向に通過可能である開口溝が給電線の軸方向に沿って設けられた筒状のコアと、コアに巻線を巻回してなるコイルとを有し、給電線は、コア内に挿通される往きの給電線と、コアの外に配置される戻りの給電線とからなり、高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体が戻りの給電線とコアの開口溝との間に配設されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体が戻りの給電線とコアの開口溝との間に配設されているので、戻りの給電線の周囲に生じる磁束がピックアップ部のコア及びコイルに及ぼす影響を低減することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、ピックアップ部は、高透磁率の磁性材料からなりコア及びコイルを包み込む第2の磁気シールド体を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、戻りの給電線の周囲に生じる磁束がピックアップ部のコア及びコイルに及ぼす影響を低減すると同時に、コアの開口溝から漏れる磁束の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コアの開口溝から漏れる磁束の影響やコアの外側に配置される給電線の周囲に生じる磁束の影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
本実施形態の非接触給電装置は、図7(a)に示すようにループ状に設置された給電線100と、給電線100に高周波電流を流す高周波電源110と、給電線100と誘導結合されるピックアップ部1とを備え、ピックアップ部1から負荷(図示しない移動体を移動させるためのインバータ並びにモータ)111に給電するものである。尚、本実施形態の非接触給電装置を搭載した移動体(図示せず)は、図1に示すように金属製の移動線路(レール)200に沿って移動するものであって、断面形状略コ字形のレール200の内側と外側に往きと戻りの給電線100が配設されている。
【0015】
給電線100は、図7(b)に示すように円筒形状の内管部101と、内管部101の外側に配置された円筒形状の外管部102と、内管部101と外管部102を互いに同心となるように連結する連結部103とが金属板を曲げ加工することで一体に形成された導体を、角筒状の合成樹脂成形品からなる絶縁体104で被覆して構成されている。すなわち、高周波電流が流れる給電線においては、導体の材料(金属板)が有する電気抵抗以外に表皮効果と近接効果による抵抗(高周波抵抗)が存在するが、図7(b)に示す二重管構造の導体を給電線100に用いれば、円柱形状の導体に比較して高周波抵抗を低減し且つ損失を減少させることができる。
【0016】
ピックアップ部1は、コア2、コイル3、ボビン4、磁気シールド体5、受電回路部6を有している。受電回路部6は、コイル3とともに共振回路を形成するコンデンサ、コイル3並びにコンデンサの共振回路から出力される共振電圧を定電圧化する定電圧回路などを有している。
【0017】
コア2は、図1に示すように内周面及び外周面の双方が曲面(円筒面)で構成され且つ軸方向(紙面に垂直な方向)に交差する断面形状が略C形に形成されている。ここで、開口溝2aを挟んで対向するコア2の両端部20,20は、コア2の当該両端部20を除く部位(以下、「胴部」と呼ぶ。)21よりも、軸方向に沿った断面の面積が大きく形成されている。
【0018】
ボビン4は、円弧状に湾曲した角筒形状の合成樹脂成形品からなり、軸方向の両端部に外鍔40が設けられている。尚、コア2は開口溝2aと反対側の箇所で胴部21が二分割されており、それぞれの胴部21,21にボビン4,4が外挿された後に胴部21,21の端部同士が接合されることによって、図1に示すコア2が構成されている。
【0019】
コイル3は、絶縁被覆を有する巻線がボビン4,4に単層巻きされることで形成されている。尚、コア2の端部20と胴部21との段差が巻線の直径よりも大きく設定されており、コイル3がコア2の端部20よりも外側にはみ出さないようになっている。このようにコイル3がコア2の端部20よりも外側にはみ出さないことにより、コイル3の端部からコア2の端部20の外へ漏れる磁束を減らすことができる。
【0020】
磁気シールド体5は、高透磁率である金属磁性材料により略円筒形状に形成されてコア2並びにコイル3に外挿される。但し、磁気シールド体5にはコア2の開口溝2aと連通する溝5aが軸方向に沿って設けられている。
【0021】
而して、開口溝2aを通してコア2の内側に配置される給電線100に高周波電流が流れると、給電線100を中心とする同心円上に高周波磁界(磁束)が発生し、磁束の大半がコア2内を周方向に沿って通過する。そして、当該磁束が高周波電流に応じて変化することによってコイル3に誘導起電力が生じる。
【0022】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように高周波電源110に対する往きと戻りの2本の給電線100のうちの一方(往き)の給電線100がコア2の内側に配置され、他方(戻り)の給電線100がピックアップ部1の近傍に配置されている。このような場合、コア2の外に配置されている戻りの給電線100の周囲に生じる磁束は、コア2内に配置されている往きの給電線100の周囲に生じる磁束と向きが反転しているため、コア2内を通過する磁束を打ち消してしまう虞がある。しかしながら、本実施形態ではコア2並びにコイル3が磁気シールド体5で包み込まれているので、戻りの給電線100の周囲に生じる磁束がコア2内を通過するのを阻止することができ、その結果、ピックアップ部1の電力伝達の効率低下を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態におけるコア2には給電線100を挿通するための開口溝2aが設けられているため、コア2内を通過する磁束の一部が開口溝2aを通して外部に漏れてしまい、当該漏れ磁束によって導体であるレール200に渦電流が流れて損失が生じ、その結果、ピックアップ部1の電力伝達の効率が低下してしまう虞がある。
【0024】
そこで、図2に示すように磁気シールド体5の溝5aを磁気シールドカバー50によって開閉自在に閉塞する構成とすれば、開口溝2aを通過する磁束を遮蔽し、上述のように漏れ磁束によって生じる渦電流損を低減することができる。磁気シールドカバー50は、磁気シールド体5と同材料によって帯板状に形成されており、磁気シールド体5の溝5aに着脱自在に嵌合される。尚、磁気シールド体5でコア2及びコイル3全体を包み込む代わりに、図3に示すようにコア2の両端部20,20に着脱自在に取着されてコア2の開口溝2aを閉塞する磁気シールド体5’を設けても同様に渦電流損を低減することができる。
【0025】
(実施形態2)
本実施形態の非接触給電装置の基本構成は実施形態1と共通であるから、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0026】
実施形態1でも説明したように、コア2の外に配置されている戻りの給電線100の周囲に生じる磁束の影響でコア2内を通過する磁束が減少してしまう虞がある。
【0027】
そこで本実施形態では、図4に示すようにコア2の外に配置されている戻りの給電線100とコア2の開口溝2aとの間に、高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体7を配設している。この磁気シールド体7は断面形状が略L字形の樋状に形成され、長手方向に沿った両端縁でレール200に固定されており、レール200との間に形成される空間に戻りの給電線100を収納している。
【0028】
而して、本実施形態では高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体7が戻りの給電線100とコア2の開口溝2aとの間に配設されているので、戻りの給電線100の周囲に生じる磁束がピックアップ部1のコア2及びコイル3に及ぼす影響を低減することができる。しかも、本実施形態ではコア2の開口溝2aとレール200との間に配設されている磁気シールド体7によって、開口溝2aから漏れてレール200と鎖交する磁束を低減することができるので、漏れ磁束によって生じる渦電流損を低減することもできる。但し、磁気シールド体7の形状は、図5に示すように平板状であってもよい。
【0029】
また、図6に示すように実施形態1における磁気シールド体5でコア2並びにコイル3を包み込むようにすれば、戻りの給電線100の周囲に生じる磁束がピックアップ部1のコア2及びコイル3に及ぼす影響をさらに低減することができる。尚、図2や図3に示したようにコイル2の開口溝2aを磁気シールドカバー50や磁気シールド体5’で閉塞する構成と組み合わせれば、開口溝2aから漏れる漏れ磁束によって生じる渦電流損をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1の要部断面図である。
【図2】同上の別の要部断面図である。
【図3】同上のさらに別の要部断面図である。
【図4】本発明の実施形態2の要部断面図である。
【図5】同上の別の要部断面図である。
【図6】同上のさらに別の要部断面図である。
【図7】(a)は同上の全体構成図、(b)は同上における給電線の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ピックアップ部
2 コア
2a 開口溝
3 コイル
5 磁気シールド体
100 給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、
ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲み且つ少なくとも給電線が径方向に通過可能である開口溝が給電線の軸方向に沿って設けられた筒状のコアと、コアに巻線を巻回してなるコイルと、高透磁率の磁性材料からなりコア及びコイルを包み込む磁気シールド体とを有することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、
ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲み且つ少なくとも給電線が径方向に通過可能である開口溝が給電線の軸方向に沿って設けられた筒状のコアと、コアに巻線を巻回してなるコイルとを有し、
給電線は、コア内に挿通される往きの給電線と、コアの外に配置される戻りの給電線とからなり、
高透磁率の磁性材料からなる磁気シールド体が戻りの給電線とコアの開口溝との間に配設されることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
ピックアップ部は、高透磁率の磁性材料からなりコア及びコイルを包み込む第2の磁気シールド体を有することを特徴とする請求項2記載の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−75019(P2010−75019A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242930(P2008−242930)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】