説明

非接触給電装置

【課題】コイルの高周波抵抗の安定化を図る。
【解決手段】ボビン4の外周面には、コア2の軸方向に沿って外側に突出する板状の複数の位置決め突部41がコア2の周方向に沿って並設されている。これら複数の位置決め突部41は、コイル3の巻線30が収納される収納部42を形成する2個を1組として、隣り合う各組が等間隔aに並んでいる。而して、ボビン4の外周面における巻線30の位置が収納部42の位置で位置決めされる。故に、ボビン4の外周面における巻線30間の隙間が一定となり、その結果、コイル3の高周波抵抗の安定化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触給電装置として、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載されているものは、エレベータの乗かごが昇降する昇降路に沿って高周波電流を流す給電線を張設し、前記給電線と誘導結合されたピックアップ部を前記乗かごに配置し、前記ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷(乗かごを移動させる巻上機)に給電するものである。
【0003】
ピックアップ部は、E形のコアと、コアの中脚に巻線を巻回してなるコイルとを有し、給電線の周囲に生じる磁束の大半がコア内を通ることでコイルに誘起される誘導起電力を高くしている。尚、コイルは、コアの中脚を覆うボビンに巻線を多層巻きして形成されている。
【特許文献1】特開2002−334812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている従来例では、コアの中脚が略角柱形状であるために巻線を均一に巻回することは容易である。しかしながら、巻線の巻回部分が湾曲した形状を有するコア、例えば、内周面及び外周面の双方が曲面で構成され且つ軸方向に交差する断面形状が略C形である筒状のコアにおいては、内周面で巻線が密に巻回されていたとしても外周面では巻線間に隙間が生じ、しかも、その隙間にばらつきがあるためにコイルの高周波抵抗が安定せずに歩留まりが悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、コイルの高周波抵抗の安定化を図ることができる非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲む筒状のコアと、コアに外挿されるボビンと、ボビンに巻線を巻回してなるコイルとを有し、コアは、内周面及び外周面の双方が曲面で構成され且つ軸方向に交差する断面形状が略C形に形成されてなり、ボビンは、コアの周方向に沿って設けられた複数の位置決め突部を外周面に有し、隣り合う位置決め突部の間に形成される収納部に巻線が収納されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、ボビンの位置決め突部間に形成される収納部に巻線が収納されるので、ボビンの外周面における巻線間の隙間が一定となり、その結果、コイルの高周波抵抗の安定化を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ボビンの周方向に沿って並ぶ複数の収納部は、相対的に深さ寸法が大きい第1の収納部と、相対的に深さ寸法が小さい第2の収納部とが交互に設けられてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、隣接する巻線間の距離を広げることで近接効果による影響を低減して高周波抵抗を減少させることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、ボビンは、巻線と接する角の部分が曲面で構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、ボビンの角の部分で巻線が損傷して断線するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コイルの高周波抵抗の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本実施形態の非接触給電装置は、図3(a)に示すようにループ状に設置された給電線100と、給電線100に高周波電流を流す高周波電源110と、給電線100と誘導結合されるピックアップ部1とを備え、ピックアップ部1から負荷(例えば、インバータ並びにモータ)111に給電するものである。
【0015】
給電線100は、図3(b)に示すように円筒形状の内管部101と、内管部101の外側に配置された円筒形状の外管部102と、内管部101と外管部102を互いに同心となるように連結する連結部103とが金属板を曲げ加工することで一体に形成された導体を、角筒状の合成樹脂成形品からなる絶縁体104で被覆して構成されている。すなわち、高周波電流が流れる給電線においては、導体の材料(金属板)が有する電気抵抗以外に表皮効果と近接効果による抵抗(高周波抵抗)が存在するが、図3(b)に示す二重管構造の導体を給電線100に用いれば、円柱形状の導体に比較して高周波抵抗を低減し且つ損失を減少させることができる。
【0016】
ピックアップ部1は、コア2、コイル3、ボビン4、受電回路部5を有している。受電回路部5は、コイル3とともに共振回路を形成するコンデンサ、コイル3並びにコンデンサの共振回路から出力される共振電圧を定電圧化する定電圧回路などを有している。
【0017】
コア2は、図1(a)に示すように内周面及び外周面の双方が曲面(円筒面)で構成され且つ軸方向(紙面に垂直な方向)に交差する断面形状が略C形に形成されている。ここで、開口溝2aを挟んで対向するコア2の両端部20,20は、コア2の当該両端部20を除く部位(以下、「胴部」と呼ぶ。)21よりも、軸方向に沿った断面の面積が大きく形成されている。
【0018】
ボビン4は、図1(c)に示すように円弧状に湾曲した角筒形状の合成樹脂成形品からなり、軸方向の両端部に外鍔40が設けられている。尚、コア2は開口溝2aと反対側の箇所で胴体部20が二分割されており、それぞれの胴体部20,20にボビン4,4が外挿された後に胴体部20,20の端部同士が接合されることによって、図1(a)に示すコア2が構成されている。
【0019】
図1(a)並びに(b)に示すように、ボビン4の外周面には、コア2の軸方向に沿って外側に突出する板状の複数の位置決め突部41がコア2の周方向に沿って並設されている。これら複数の位置決め突部41は、コイル3の巻線30が収納される収納部42を形成する2個を1組として、隣り合う各組が等間隔aに並んでいる。
【0020】
また、ボビン4の角部分、すなわち、内周面及び外周面と側面との境界部分が外向きに凸の曲面形状に形成されている(図1(b)参照)。
【0021】
コイル3は、絶縁被覆を有する巻線30がボビン3に単層巻きされることで形成されている。尚、コア2の端部21と胴部20との段差が巻線30の直径よりも大きく設定されており、コイル3がコア2の端部20よりも外側にはみ出さないようになっている。
【0022】
而して、本実施形態のように内周面及び外周面の双方が曲面で構成され且つ軸方向に交差する断面形状が略C形である筒状のコア2においては、内周面で巻線30が密に巻回されていたとしても外周面では巻線30間に隙間が生じる。従来例では当該隙間にばらつきがあるためにコイルの高周波抵抗が安定せずに歩留まりが悪化するという問題があった。これに対して本実施形態では、ボビン4の外周面に複数の位置決め突部41が設けられるとともに隣り合う2個1組の位置決め突部41,41間の空間を巻線30の収納部42としているので、ボビン4の外周面における巻線30の位置が収納部42の位置で位置決めされる。故に、ボビン4の外周面における巻線30間の隙間が一定となり、その結果、コイル3の高周波抵抗の安定化を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態ではボビン4の巻線30と接する角の部分を曲面で構成することにより、ボビン4の角の部分で巻線30が損傷して断線するのを防いでいる。
【0024】
ここで、隣り合う巻線30同士の間隔が広いほど、近接効果の影響を低減してコイル3の高周波抵抗を減少させることができる。そこで、図2に示すようにボビン4の周方向に沿って並ぶ複数の収納部42を、相対的に深さ寸法が大きい第1の収納部42aと、相対的に深さ寸法が小さい第2の収納部42bとを交互に設けて構成すれば、隣接する巻線30間の距離b(>a)を広げることができ、その結果、近接効果による影響を低減してコイル3の高周波抵抗を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は一部省略したピックアップ部の断面図、(b)は同上におけるボビンの要部断面図、(c)は同上におけるボビンの斜視図である。
【図2】同上におけるボビンの別の構成を示す要部断面図である。
【図3】(a)は同上の全体構成図、(b)は同上における給電線の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ピックアップ部
2 コア
2a 開口溝
3 コイル
4 ボビン
30 巻線
41 位置決め突部
42 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流が流れる給電線と誘導結合されるピックアップ部を備え、ピックアップ部に誘起される誘導起電力によって負荷に給電する非接触給電装置において、
ピックアップ部は、給電線を周方向に沿って囲む筒状のコアと、コアに外挿されるボビンと、ボビンに巻線を巻回してなるコイルとを有し、
コアは、内周面及び外周面の双方が曲面で構成され且つ軸方向に交差する断面形状が略C形に形成されてなり、
ボビンは、コアの周方向に沿って設けられた複数の位置決め突部を外周面に有し、隣り合う位置決め突部の間に形成される収納部に巻線が収納されてなることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
ボビンの周方向に沿って並ぶ複数の収納部は、相対的に深さ寸法が大きい第1の収納部と、相対的に深さ寸法が小さい第2の収納部とが交互に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の非接触給電装置。
【請求項3】
ボビンは、巻線と接する角の部分が曲面で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−75020(P2010−75020A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242931(P2008−242931)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】