非接触電力伝送装置、及び非接触電力伝送装置用コイルユニット
【課題】コンパクト且つ低コストで、高い効率で電力を伝送できる非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】互いに対向する一次コイルユニット1と、二次コイルユニット3とを有する非接触電力伝送装置において、一次コイルユニット1、及び/又は二次コイルユニット3は、テープ状の導体部材20を、テープ面が向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイル6と、コイル6の背面を担持する平面を有する磁性体コア7と、を具備し、少なくともコイル6の前面と、磁性体コア7の前記平面とを、互いに平行とする。
【解決手段】互いに対向する一次コイルユニット1と、二次コイルユニット3とを有する非接触電力伝送装置において、一次コイルユニット1、及び/又は二次コイルユニット3は、テープ状の導体部材20を、テープ面が向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイル6と、コイル6の背面を担持する平面を有する磁性体コア7と、を具備し、少なくともコイル6の前面と、磁性体コア7の前記平面とを、互いに平行とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車、電動工具、家電機器、情報通信機器などの非接触充電装置に適用される非接触電力伝送装置に関するものであって、特に、コイル及びコイルを担持する磁性体コアからなるコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気を利用する機器に対して非接触で電力を供給するニーズは古くからある。これに関しては、いくつかの手法が知られているが、電磁誘導の原理を利用した手法として、電動歯ブラシや電動シェーバなどで非接触充電装置が実用化されている。
また最近では、電気自動車や、プラグインハイブリッド自動車などに対して、外部から非接触で二次電池に電力供給する非接触充電装置が開発されている。
【0003】
非特許文献1には、このような非接触充電装置に用いる非接触エネルギー伝送方式の理論が示されている。この非接触充電装置は、送電コイルと受電コイルが対向し、送電コイルは高周波電源装置を介して例えば商用電源に、受電コイルは整流器を介して例えば二次電池にそれぞれ接続されるように構成されている。商用電源(通常は交流50Hzまたは60Hz)は、高周波電源装置の内部でいったん直流に変換された後、さらに数kHz〜数十kHzの高周波に変調されて送電コイルに供給される。この送電コイルへの高周波の供給によって、電磁誘導の原理に従って受電コイルに高周波電流が誘起され、電力が伝送される。この誘起された高周波電流は、整流器により直流に戻されて二次電池に充電される。
【0004】
このような非接触充電装置では、電力伝送効率(送電側コイルに供給した電力のうち、受電側コイルに伝送された電力の割合)が重要な性能指標となる。電力伝送効率は、回路構成や負荷条件、高周波の周波数などにより変化するが、非特許文献1によると、送電コイルと受電コイルとの間の最大電力伝進効率ηは、η=k・Q・Qにより定まることが知られている。なお、kは送電コイルと受電コイルの結合係数、Qは送電コイルのQ値、Qは受電コイルのQ値を示している。
【0005】
ところで、結合係数kは、送電コイルと受電コイルの位置関係(及び周囲の磁性体の配置)などにより定まる。上記の式より、電力伝送効率を向上させるためには、結合係数kの増大が効果的であることは明らかであるが、例えば、電気自動車の非接触充電装置などでは、送電コイルと受電コイルの分離距離(空隙=ギヤップ)を取る必要があるため、結合係数kをそれほど大きくすることはできない。そのため、送電コイル及び受電コイルのQ値を向上させることが重要となる。なお、各コイルのQ値は、Q=2πfL/Rにより表される。ここで、fは高周波周波数、Lはコイルのインダクタンス、Rはコイル損失(鉄損+銅損)を示している。
【0006】
この式によると、各コイルのインダクタンスLを大きくすることと、コイル損失(鉄損、銅損)Rを小さくすることによって、電力伝送効率を向上させることができる。
コイル損失Rの銅損部分は、コイルの直流抵抗によるジュール損と、交流磁場が誘起する渦電流損からなる。直流抵抗は導体の断面積と長さにより決まるものであり、直流抵抗を減少させてジュール損を低減させるには、導体の断面積を大きくするか、導体の総長を短くすればよい。しかし、導体の総長を維持しなければ、コイルのインダクタンスを維持することができないので、ジュール損を低減するためには導体の断面積を大きくすることが必要である。
【0007】
次に渦電流損は(磁束密度、高周波周波数が同一である場合には)、導体の磁場に鎖差する連続面の断面積に比例するので、渦電流損を減少させるには、この連続面の断面積を減少させることが必要である。この目的のために従来技術では、コイルの導体に「リッツ導体(絶縁された複数の細い導体素線を集めて撚り合わせた複合導体)」などを用いることによりコイル損失のうちの銅損を低減している。
【0008】
一方、特許文献1では、1次コイル及び2次コイルにリッツ導体を採用することで、ループ電力の起電力を相殺し、ループ電流及びジュール熱損を低減することを意図する技術が開示されている。
すなわち、特許文献1は、非接触給電装置を開示しており、その非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘電作用に基づき、1次コイルから2次コイルに電力を供給する非接触給電装置において、該1次コイルおよび2次コイルは、同一面で扁平に渦巻き巻回された構造よりなり、該1次コイルや2次コイルが配設される磁心コアは、平板状をなす非接触給電装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−87733号公報
【非特許文献1】松木英敏監修、「非接触電力伝送技術の最前線」、シーエムシー出版、2009年8月、p.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来から用いられているリッツ導体は剛性が高いので、小さな曲率半径で巻回することが困難であり、コイルとして巻回するのは容易ではない。さらに、リッツ導体は高価であり、非接触電力伝送装置を低コストで製造するための障害となる。
また、ジュール損を低減するためには導体の断面積を大きくする必要があるが、一方で導体内の渦電流損を低減するためには、素線径を小さくする(導体がさらされる磁場と鎖差する断面積を低減する)ことが必要であり、相矛盾する。このようなリッツ導体においてジュール損の低減と渦電流損の低減を両立するためには、素線径の小さい素線導体をより多く複合して、導体全体としての断面積を大きくする必要がある。しかし、そのようにすれば、リッツ導体の剛性がさらに高くなり、コイルの巻回がますます難しくなるという課題がある。
【0011】
さらに、非接触充電装置の取り扱いを容易にするために、コイルのサイズを小さくすることが強く望まれているが、そのために巻回する導体の総長を短くすると、コイルのインダクタンスが低下するので、高い電力伝送効率を確保することが困難となるという課題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、リッツ導体を用いずに、コンパクトで低コストであるが、高い効率で電力を伝送できる非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の非接触電力伝送装置用コイルユニットは、電力を非接触で伝送するための非接触電力伝送装置に用いられるコイルユニットであって、前記コイルユニットは、テープ状の導体部材を、前記導体部材の幅広面が互いに向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイルと、前記コイルの背面を担持する平面を有する磁性体コアと、を具備し、少なくとも前記コイルの背面と、磁性体コアの前記平面とは、互いに平行となっていることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記導体部材は、テープ状の導体層とテープ状の絶縁層とを厚み方向に積層してなるものであり、前記テープ状の導体層の厚さは、磁場侵入長の3分の1以下に設定され、前記導体層のテープ面の幅は、前記導体層の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるように設定されるとよい。
好ましくは、前記導体部材は、前記導体層と前記絶縁層とを複数積層してなるものであり、各導体層同士が、導体部材の端部において、直列又は並列で電気的に接続されているとよい。
【0014】
好ましくは、前記導体部材の各導体層は、そのいくつかの導体層が並列に配置された並列導体群に分けられ、これら並列導体群が電気的に直列接続された状態で、コイルへと巻回されているとよい。
好ましくは、前記コイルの隣り合う並列導体群において、コイル外周側に位置する並列導体群における外周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における内周側の導体層と接続され、且つコイル外周側に位置する並列導体群における内周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における外周側の導体層と接続されるとよい。
【0015】
ここで、前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するものであり、軟磁性体粉末を成形してなるものであるとよい。
好ましくは、前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するフェライトコアであるとよい
さらに好ましくは、前記磁性体コアは、前記コイルの外周を取り囲むようなサイドヨーク部を有しているとよい。
【0016】
また、本発明の非接触電力伝送装置は、互いに対向する一次コイルユニットと、二次コイルユニットとを有し、一次コイルユニットと二次コイルユニットとの間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送装置であって、前記一次コイルユニット、及び/又は二次コイルユニットが、上述のいずれかの非接触電力伝送装置用コイルユニットで構成されることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記一次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が二次コイルユニットの磁性体コアに対向し、かつ/または、前記二次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が一次コイルユニットの磁性体コアに対向しているとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る非接触電力伝送装置によれば、リッツ導体を用いなくとも、コンパクト且つ低コストで、高い効率で電力を伝送できる非接触電力伝送装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の非接触電力伝送装置を電気自動車の非接触充電装置に適用した状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットを示す模式図である。
【図3】(a)は、本発明の第1実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットの上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図4】(a)は、本発明の第2実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、コイルの接続端子にチョークコイルを接続した図である。
【図5】(a)は、本発明の第3実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、導体層の接続方法を示す概念図、(c)は、導体層の接続方法を示す概念図である。
【図6】(a)は、本発明の第4実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、導体層の接続方法を示す概念図、(c)は、導体層の接続方法を示す概念図である。
【図7】本発明の第5実施形態によるコイルユニットのコイルの製作方法を示す模式図である。
【図8】本発明の各実施形態で用いられる磁性体コアの変形例を示す模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態による、一次コイルユニットと二次コイルユニットの構成及び配置を示す図である。
【図10】図9に示す構成における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの端部及び磁束線の様子を示す図である。
【図11】第6実施形態の変形例における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの端部及び磁束線の様子を示している。
【図12】(a)は、本発明の第7実施形態における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの配置及び構成の上面図であり、(b)は、一次コイルユニットと二次コイルユニットの配置及び構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して、本発明の実施形態による非接触電力電送装置について説明する。
本発明の実施形態による非接触電力伝送装置は、間隔を開けて対向した一次コイルユニット(送電コイルユニット)と二次コイルユニット(受電コイルユニット)との間で、電磁誘導の原理に基づいて電力伝送するものである。
[第1実施形態]
図1は、本発明の非接触電力伝送装置を電気自動車の非接触充電装置に適用した場合の概略図である。なお、本実施形態及び後述する第2〜5実施形態による非接触電力伝送装置を電気自動車以外のものに適用できることは、その技術内容から明らかである。
【0021】
本発明の非接触電力伝送装置は、一次コイルユニット1、高周波電源2、二次コイルユニット3、整流器4、及びバッテリ5を有している。
図1において、地上側には、送電コイルユニットである一次コイルユニット1と高周波電源2が設置されている。一次コイルユニット1は、そのコイル前面が上方に向かうように地面に設置されており、高周波電源2に接続されている。その高周波電源2は、商用電源に接続されている。電気自動車には、二次コイルユニット3、整流器4、及びバッテリ5が搭載されている。二次コイルユニット3は、そのコイル前面が地上に向かうように、例えば、電気自動車床面に設置されており、整流器4に設置されている。その整流器4は、二次電池であるバッテリ5に接続されている。電気自動車は、搭載した二次コイルユニット3のコイルが、地上に設置された一次コイルユニット1のコイルと対向するような位置に停車し、図1に示すような位置関係となる。
【0022】
図2及び図3を参照して、本実施形態の非接触電力伝送装置について説明する。図2は、図1に示す非接触電力伝送装置において、互いに前面を対向させた一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3を模式的に示す図である。図3(a)は、図1に示す非接触電力伝送装置の一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3の上面図、図3(b)は、その側面図である。
【0023】
まず、図2における地上側の一次コイルユニット1は、テープ状の導体部材20で形成される略円板状のコイル6と、このコイル6を担持する略円板状の磁性体コア7を有している。
この略円板状のコイル6に用いられるテープ状の導体部材20は、例えば、銅、アルミ、又はその合金からなる一層のテープ状の導体層23で構成されている。このテープ状の導体部材20の幅方向をコイル6の軸芯方向に略一致させた態様で、導体部材20の幅広面(テープ面)が互いに向かい合わせとなるように、時計回り又は反時計回りに所定回数巻回(フラットワイズ巻き)されて形成されたものである。
【0024】
図3(a)は、コイル6の上面図を示し、導体部材20を反時計回りに巻回した状態を示している。このコイル6において向かい合うテープ面同士は、例えば図2及び図3(a)において網掛けで示される絶縁性の樹脂により被覆されており、電気的に接触しないようにして、絶縁が確保されている。巻回時に、向かい合うテープ面の間に絶縁シートを挟むことで絶縁を確保してもよい。また、一層の導体層23に一層の絶縁層24を積層することで導体部材20を構成してもよい。
【0025】
導体部材20の内周側及び外周側の両端は、図2及び図3(b)に示すようにコイル6から口出しされており、電気的な接続端子8、9となっている。一次コイルユニット1の2つの接続端子8、9は、ともに高周波電源2に接続されている。
このような一次コイルユニット1の導体部材20において、銅損部分である渦電流損とジュール損を低減するために、本実施形態では、導体層23の厚さを、磁場侵入長の3分の1以下となるように定める。また、導体層23のテープ面の幅は、該テープ面の幅を導体層23の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるような値に定める。
【0026】
なお、導体内への磁場侵入長(スキンデプス)は、下記の式(1)によって表される。
【0027】
【数1】
【0028】
具体例として、一次コイルユニット1を形成する導体層23に銅テープ(ρ=0.01μΩ・m、μ=1、厚さ0.15mm、幅19mm、アスペクト比≒127)を適用し、高周波周波数fを10kHzとした場合を考える。この場合、上記の式より、スキンデプスδ≒0.5mmとなり、導体層23の厚さ0.15mmは、スキンデプス0.5mmの1/3以下となる。このような導体層23を用いて導体部材20を構成すると、厚さ0.5mm程度の厚い導体層を用いる場合に比べて渦電流損を1/10程度に低減することができる。本実施形態による一次コイルユニット1において、渦電流損を効果的に低減するには、アスペクト比が10以上となるような、例えば、厚さ0.15mmで幅1.5mmの銅テープを用いればよい。
【0029】
この導体層23一層当たりの断面積は2.85mmであり、例えばこの導体層23を数層〜十数層程度並列に接続すれば、一般的に用いられるリッツ導体とほぼ同等の断面積が得られるので、一般的なリッツ導体とほぼ同等のジュール損となる条件下でも、渦電流損を低減することができる。このとき、導体層23の厚さを変えずに幅を増やしても良い。
次に、コイル6の背面、すなわち前面が対応するように配置されたコイルの反前面側に配置される磁性体コア7について説明する。磁性体コア7は、例えば、軟磁性体粉末を成形してできたものであって、透磁率など磁気特性が等方性を示すように、後述する磁性粉末を略円板状に圧粉形成したフェライトコアである。略円板状の磁性体コア7の2つの略円形平面は、互いに略平行となっている。
【0030】
これらの構成によれば、磁性体コア7について、所望の磁気特性が比較的容易に得られると共に、比較的容易に所望の形状に成形され得る。
磁性体コア7は、所望の磁気特性(比較的高い透磁率)の実現容易性および所望の形状の成形容易性の観点から、軟磁性体粉末を成形したものであることが好ましい。
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属材料であることが好ましい。
【0031】
磁性体コア7を、磁気的に等方性を有するフェライトコアで構成してもよい。ただし、漏れ磁束が無いように空芯コイルを磁性体で囲む場合、電磁鋼板のような積層コアでは、必ず磁束線が平面を貫通するため、磁性体コア7に生じる渦電流損が大きくなる。磁束密度が高い方が漏れ磁束を抑制でき且つ小型化できるため、ソフトフェライトよりも鉄系軟磁性粉末の圧粉コアが好ましい。
【0032】
この磁性体コア7は、略円状平面の一方と、この略円状平面に対向する面であるコイル6の背面とが略平行となるように、コイル6を担持する。このように、コイル6の背面付近で磁性体コアの磁束線と導体部材20のテープ面を略平行とすることにより渦電流損を抑制する。
ここでいう、磁性体コア7の略円状平面の一方と、コイル6の背面との略平行とは、幾何学的に完全な平行だけを意味するものではない。完全な平行を必ずしも保てなくても、渦電流損が所望の水準で抑制できればよく、本願発明の作用効果を奏する範囲であれば、、角度にして数度程度の多少の平行度のずれは、十分に許容できる範囲である。
【0033】
なお、図1〜図3では、略円板状の磁性体コア7の直径が、略円板状のコイル6の直径より大きくなるように描かれているが、必ずしも磁性体コア7の直径の方が大きくなければならないという訳ではない。磁性体コア7の直径又は幅をW1、コイル6の直径又は幅をW2としたとき、本実施形態ではW1>W2であるが、W1=W2であっても、W1≦W2であってもよく、コイル6の背面付近で磁性体コア7の磁束線と導体部材20のテープ面を略平行とすることができれば、渦電流損を抑制することができる。
【0034】
このような一次コイルユニット1に対して、図2に示す本実施形態おける車載側の二次コイルユニット3は、一次コイルユニット1とほぼ同様の構成である。この二次コイルユニット3は、必ずしも一次コイルユニット1と同様の構成でなくてもよいが、本実施形態においては、一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3は、互いに同様の構成を有するものとする。
【0035】
続いて、このような構成の一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3を有する非接触電力伝送装置の動作を説明する。
まず、交流電流(通常は50Hz又は60Hz)が、商用電源から高周波電源装置2に入力される。
次に、入力された交流電流は、高周波電源装置2の内部でいったん直流に変換された後、さらに数kHz〜数十kHzの高周波に変調されて一次コイルユニット1に供給される。
【0036】
この結果、一次コイルユニット1に対向する二次コイルユニット3には、電磁誘導の原理により高周波電流が誘起される。誘起された高周波電流は、整流器4に入力される。入力された高周波電流は、整流器4によって直流電流に変換されて、バッテリ5に供給される。この供給された直流電流によって、バッテリ5が充電される。
[第2実施形態]
図4を参照して、本発明の第2実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図4は、本発明の第2実施形態によるコイルユニットのコイル10を示す模式図である。
【0037】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、絶縁層、導体層、絶縁層、導体層の順に交互に各2層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を2層有している。
【0038】
図4(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル10を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル10の外周側の端部において、導体部材20の導体層A及びBを分離して口出しし、コイル10の内周側の端部において、導体層A及びBの各端部に端子を設ける。
このような構成のコイル10の端部を並列に接続するだけでは、コイル10に高周波電流を供給したときに、並列接続した導体層A及びBが互いに磁気的に結合し、渦電流損が増大する。そのため、導体層A及びB間の磁気的結合を解消しなくてはならない。そこで、図4(b)に示すようにコイル10の端部で、導体層A及びBに直列にチョークコイル11、12を接続すれば、磁気的結合を解消することができる。
【0039】
このチョークコイル11、12は、導体層A及びBに接続された導体線のそれぞれが、ドーナツ状の磁心に、ほぼ並列に並ぶように巻回されてできたものである。各導体線の磁心への巻回方向は、同一方向である。こうすることで、チョークコイル11、12は、同相の電流に対しては抵抗にならず、逆相の電流に対しては抵抗として働く。
このように構成されたコイル10を、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
【0040】
このような一次コイルユニット及び二次コイルユニットを用いれば、磁場侵入長に対する導体層の厚さを十分小さく保ちながら、導体層の断面積を大きくしたのと同じ効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図5を参照して、本発明の第3実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図5(a)は、本発明の第3実施形態によるコイルユニットのコイル13を示す模式図、図5(b)は、各導体層の接続方法を示す概念図、図5(c)は、各導体層の接続方法を示す概念図である。
【0041】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。
導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、第2実施形態と同様の要領で交互に各4層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を4層有している。
【0042】
図5(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル13を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル13の外周側の端部において、導体部材20の導体層A〜Dを分離して口出しし、コイル13の内周側の端部において、導体層A〜Dの各端部に端子を設ける。
このようなコイルの外周側の端部において、導体層A及びBを並列に接続し、導体層C及びDを並列に接続する。また、内周側の端部において、導体層Aと導体層Dとを直列に接続し、導体層Bと導体層Cとを直列に接続する。図5(a)では、このように接続されたコイル13において、並列接続された導体層A及びBに高周波電流が入力されると、並列接続された導体層C及びDから高周波電流が出力される状態を、コイル13の外周側の導体層A及びB、導体層C及びDに対する矢印の向きで示している。
【0043】
次に、図5(b)は、図5(a)に示す各導体層間の接続を概念的に示した図であり、高周波電流の向きを矢印の向きで例示している。図5(b)において、導体層A及びBと、導体層C及びDとをそれぞれ1つの組と考えると、これら2つの組が直列に接続されていることがわかる。
以降、これら並列接続された導体層A及びB、並びに並列接続された導体層C及びDを、「並列導体群14、15」と呼ぶ。
【0044】
図5(b)に示す各導体層間の接続は、コイル13の導体部材20において隣り合う並列導体群に注目し、外周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層とを接続し、外周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層とを接続することで実現できる。本実施形態では、ここに示す接続を「2枚並列×2直列」という。
【0045】
図5(c)は、「2枚並列×2直列」接続を、概念的に示す図であり、図中の矢印は、高周波電流の向きを模式的に示したものである。図5(c)において、導体層Aと導体層Cは、並列導体群14、15における外周側の導体層であり、導体層Bと導体層Dは、並列導体群14、15における内周側の導体層である。図5(c)では、導体層Aと導体層Dをつなぐ線と、導体層Bと導体層Cをつなぐ線とが交差している。
【0046】
このように、外周側の導体層と内周側の導体層が交差するように並列導体群14、15を直列接続すると、各導体層間の磁気的結合を解消することができるとともに、導体部材20の総長を長くとることができるので、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
[第4実施形態]
図6を参照して、本発明の第4実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図6(a)は、本発明の第4実施形態によるコイルユニットのコイル16を示す模式図、図6(b)は、各導体層の接続方法を示す概念図、図6(c)は、各導体層の接続方法を示す概念図である。
【0047】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、第2及び第3実施形態と同様の要領で交互に各6層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を6層有している。
【0048】
図6(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル16を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル16の外周側の端部において、導体部材20の導体層A〜Fを分離して口出しし、コイル16の内周側の端部において、導体層A〜Fの各端部に端子を設ける。このようなコイル16の外周側の端部において、導体層A及びBを並列に接続し、導体層C及びFを直列に接続し、導体層D及びEを直列に接続する。また、内周側の端部において、導体層Aと導体層Dとを直列に接続し、導体層Bと導体層Cとを直列に接続し、導体層E及びFを並列に接続する。図5(a)では、このように接続されたコイル16において、並列接続された導体層A及びBの外周側に高周波電流が入力されると、並列接続された導体層C及びDの内周側から高周波電流が出力される状態を、コイル16の外周側の導体層A及びB、並びにコイルの内周側の導体層C及びDに対する矢印の向きで示している。
【0049】
次に、図6(b)は、図6(a)に示す各導体層間の接続を概念的に示した図であり、高周波電流の向きを矢印の向きで例示している。図6(b)において、導体層A及びBと、導体層C及びDと、導体層E及びFとをそれぞれ1つの組と考えると、これら3つの組が直列に接続されていることがわかる。
以降、これら並列接続された導体層A及びB、並列接続された導体層C及びD、並びに並列接続された導体層E及びFを、「並列導体群17、18、19」と呼ぶ。
【0050】
図6(b)に示す各導体層間の接続は、コイル16の導体部材20において隣り合う並列導体群に注目し、外周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層とを接続し、外周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層とを接続することで実現できる。本実施形態では、ここに示す接続を「2枚並列×3直列」という。
【0051】
図6(c)は、「2枚並列×3直列」接続を、概念的に示す図であり、図中の矢印は、高周波電流の向きを模式的に示したものである。図6(c)において、導体層A、導体層C、及び導体層Eは、並列導体群17〜19における外周側の導体層であり、導体層B、導体層D、及び導体層Fは、並列導体群17〜19における内周側の導体層である。図6(c)では、導体層Aと導体層Dをつなぐ線と、導体層Bと導体層Cをつなぐ線とが交差し、導体層Cと導体層Fをつなぐ線と、導体層Dと導体層Eをつなぐ線とが交差している。
【0052】
このように、外周側の導体層と内周側の導体層が交差するように並列導体群17〜19を直列接続すると、各導体層間の磁気的結合を解消することができるとともに、導体部材20の総長を長くとることができるので、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
【0053】
ところで、第3実施形態における接続形態は「2枚並列×2直列」であり、第4実施形態における接続形態は「2枚並列×3直列」であることを述べたが、翻って第2実施形態を考えるに、第2実施形態による各導体層の接続方法は、「2枚並列×1直列」ということができる。
[第5実施形態]
図7を参照して、本発明の第5実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。
【0054】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第3実施形態で用いられたものと同様であり、テープ状の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、交互に各4層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を4層有している。
【0055】
図7(b)に示すように、導体部材20をその両端から巻き取り、導体部材20の略中心部位で、導体部材20の幅方向に幅の分だけ、両巻き取り部分が互いに平行に移動するように導体部材20の中心部位を上下方向(コイルの軸芯方向)に変形させる。
図7(b)に示すように、非磁性体の巻き枠21に、巻き枠21の軸芯と巻き取り部分の導体部材20の幅方向とが平行となるように、変形させた部位を沿わせた後、両巻き取り部分を巻き枠21に巻き付ける。
【0056】
このとき、図7(c)に示すように、図面内、上下方向に2段のコイル22となる。図7(c)においては、図面内、上方向から巻き枠21の軸芯に沿ってコイル22を見ると、コイル22の上段部分は、反時計回り、コイル22の下段部分は、時計回りに巻回する。このとき、コイル22の上段部分と下段部分との絶縁を確保するために、上段部分と下段部分との間には、隙間が設けられるか、または絶縁部材が設けられる。このように導体部材20を巻き付けると、コイル22の上段部分と下段部分の巻き方向は、互いに逆向きとなる。
【0057】
巻き枠21への導体部材20の巻回を終え、第3実施形態と同様に、コイル22の外周側にある導体部材20の端部から各導体層を口出しする。その後、図7(d)に示すように、2段のコイル22の口出し部分において、導体層A及び導体層B、並びに導体層C及び導体層Dを、それぞれ並列導体群として、各並列導体群を直列に接続する。
このようにコイルを形成すると、導体部材20の両端部全てを、ともにコイル外周側に構成することができるとともに、導体部材20の総長を第3実施形態よりも長くとることができるので、コイルのインダクタンスをさらに大きくすることができる。
【0058】
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
尚、上記第1〜第5実施形態において円板状の磁性体コアを用いたが、磁性体コアの形状はこれに限らない。図8に示すような、サイドヨーク部25を有する磁性体コアを用いてもよい。図8のサイドヨーク部25は、磁性体コアと同じ材質の部材であって、コイル外周部の外側を取り囲むように磁性体コア上に設けられている。サイドヨーク部25は、略Oーリング状の部材であり、その内周はコイル外周より大きく、その外周は、磁性体コアの外周と略同じ大きさである。
【0059】
このようなサイドヨーク部25を形成することにより、一次コイルユニットと二次コイルユニットの結合係数kを増大させることができる。このサイドヨーク部25の厚み及び幅は、実現したい結合係数kに応じて、適宜選択することができる。
図8に示すサイドヨーク部25は、コイルの全外周を取り囲むように構成されているが、必ずしもコイルの全外周を取り囲む必要はない。コイルの外周を部分的に取り囲むようにサイドヨーク部25を構成しても、一次コイルユニットと二次コイルユニットの結合係数kを大きくとることができる。
[第6実施形態]
また、図8において、サイドヨーク部25の内周面と外周面は、磁性体コアにおけるコイルを担持する平面に対してほぼ垂直となっているが、必ずしも垂直である必要はない。サイドヨーク部25の内周面及び/又は外周面、特に内周面が磁性体コアのコイルを担持する平面に対して所定の角度をもって傾斜するように、サイドヨーク部25を形成することもできる。
【0060】
次に、このような傾斜したサイドヨークを有するコイルユニットの適用例を、本発明の第6実施形態として説明する。まず、図9を参照して、傾斜した内周面と外周面とを持つサイドヨーク部25aを磁性体コアに有する一次コイルユニット26の適用例を説明する。図9は、略円板状の一次コイルユニット26と略円板状の二次コイルユニット27とが、互いに中心軸を一致させて対向した配置を示している。
【0061】
図9の二次コイルユニット27の磁性体コアは、図9に示すように、一次コイルユニット26のコイルと対向する中央部分が、該コイルに向かって凸形状の凸状中央部となるように形成されており、この凸状中央部32を取り囲むようにコイルが巻回されている。この二次コイルユニット27の磁性体コアは、サイドヨーク部を備えていない。このように構成された二次コイルユニット27において、磁性体コアの凸状中央部32は、図9に示すように、コイルの内周面と隣り合う面30が、コイルを担持する面31に対して所定の角度で傾斜するように形成されている。
【0062】
一次コイルユニット26で用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20が望ましいが、二次コイルユニット27で用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20であってもよいし、一般的な丸線材でもよい。
図9に示すように、二次コイルユニット27の磁性体コアの凸状中央部32が一次コイルユニット26のコイルと対向するように両コイルユニットを配置すると、一次コイルユニット26のコイルは、該凸状中央部32と対向し、二次コイルユニット27のコイルは、一次コイルユニット26のサイドヨーク部25aと対向する。
【0063】
このように、一次コイルユニット26のコイルと二次コイルユニット27のコイルとが互いに対向しないように、且つ、一方のコイルの前面と、他方のコイルユニットの磁性体コアとが互いに略平行となるように、一次コイルユニット26と二次コイルユニット27を配置することで、磁束線を一次コイルユニット26のコイルに対し、より垂直に入射させ渦電流損を低減することができる。また、2つのコイルユニット間の結合係数kを、さらに大きくとることもできる。
【0064】
図10は、磁束線のシミュレーション解析結果であり、二次コイルユニット27は整合した負荷(整流器から電池)が接続されている状態を想定し、二次コイルユニット27のコイルは計算上ないものとして(一次コイルユニット26(コイル及び一次側磁性体コア)、二次側磁性体コアのみを考慮した設定で)計算したものであり、図9に示す構成における、一次コイルユニット26と二次コイルユニット27の端部、コイル、及び磁束線の様子を示している。また、一方のコイルユニットのコイルの前面が他方のコイルユニットの磁性体コアと略平行に対向する部分では、磁束線が、磁性体コアからコイルに向かって、コイル前面に対してほぼ垂直に侵入している。このように磁束線がコイルに侵入することで、渦電流損を低減することができる。
【0065】
ここで、二次コイルユニット及び一次コイルユニットの両磁性体コアの端部を図11に示すような構成とすることもできる。図11は、図10と同様のシミュレーション結果であり、一次コイルユニット26aと二次コイルユニット27aの端部、コイル、及び磁束線の様子を示している。図11において、一次コイルユニット26aは、図9及び図10の一次コイルユニット26と同様にサイドヨーク部25bを有しており、二次コイルユニット27aの磁性体コアは、その周縁部にサイドヨーク部25cを備えている。図11に示すように二次コイルユニット27aにサイドヨーク部25cを設けると、サイドヨーク部25cと一次コイルユニット26aのサイドヨーク部25bとの間の磁束密度が高くなり、一次コイルユニット26aと二次コイルユニット27aとの間の電力伝送効率を高めることができる。
[第7実施形態]
続いて、図12を参照して、別のコイルユニットの適用例を、本発明の第7実施形態として説明する。図12は、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29とが対向して配置された構成を示している。図12(a)は、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29の配置及び構成を平面視した状態を示す図であり、図12(b)は、図12(a)のA−A線矢視断面図である。
【0066】
一次コイルユニット28と二次コイルユニット29は、共に同様の構成を有しており、略方形の板状の磁性体コアの平面における対角線上の一方端寄りに形成された環状の溝(環状溝)にコイルを配置することで構成されている。環状溝の内周面と外周面とは、第6実施形態と略同様に、磁性体コアのコイルを担持する平面に対して所定の角度をもって傾斜するように形成されている。
【0067】
図12(a)に示すように、このように構成された一次コイルユニット28と二次コイルユニット29を、それぞれのコイルが互いの前面で平行となるように、且つ、平面視で一次コイルユニット28の投影面が二次コイルユニット29に一部重なるように配置する。こうすることで、図12(a)及び図12(b)に示すように、コイルにおいて磁性体コアと対向する部分を確保することができるので、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29の間の結合係数kを大きくとることができる。なお、ここで用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20が望ましい。
【0068】
以上、上記実施形態1〜5で説明した導体部材20は、導体層のアスペクト比(縦横比)が大きいので、この導体部材20を用いて一次コイルユニット及び二次コイルユニットを構成し、また、これらの導体層を並列に接続することで、導体全体としての断面積を大きくすることができ、ジュール損を低減することができる。また、導体層の厚さを磁場侵入長(スキンデプス)に対して十分に薄くすることができるので、渦電流損を抑制することができる。
【0069】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、第1〜第5実施形態において、略円板状のコイル及び磁性体コアを例示したが、コイル及び磁性体コアの形状は、これに限らない。略円板状の形状以外にも、略方形や楕円形としてもよい。送電コイルと受電コイルとの間で、電磁誘導の原理による電力の電送ができれば、いずれの形状を採用してもよい。
【0070】
また、この非接触電力伝送装置を、例えば、電気自動車に適用される非接触充電装置の分離型トランスとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 一次コイルユニット
2 高周波電源
3 二次コイルユニット
4 整流器
5 バッテリ
6、10、13、16、22 コイル
7 磁性体コア
8、9 接続端子
11、12 チョークコイル
14、15、17、18、19 並列導体群
20 導体部材
21 巻き枠
23 導体層
24 絶縁層
25 サイドヨーク部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車、電動工具、家電機器、情報通信機器などの非接触充電装置に適用される非接触電力伝送装置に関するものであって、特に、コイル及びコイルを担持する磁性体コアからなるコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気を利用する機器に対して非接触で電力を供給するニーズは古くからある。これに関しては、いくつかの手法が知られているが、電磁誘導の原理を利用した手法として、電動歯ブラシや電動シェーバなどで非接触充電装置が実用化されている。
また最近では、電気自動車や、プラグインハイブリッド自動車などに対して、外部から非接触で二次電池に電力供給する非接触充電装置が開発されている。
【0003】
非特許文献1には、このような非接触充電装置に用いる非接触エネルギー伝送方式の理論が示されている。この非接触充電装置は、送電コイルと受電コイルが対向し、送電コイルは高周波電源装置を介して例えば商用電源に、受電コイルは整流器を介して例えば二次電池にそれぞれ接続されるように構成されている。商用電源(通常は交流50Hzまたは60Hz)は、高周波電源装置の内部でいったん直流に変換された後、さらに数kHz〜数十kHzの高周波に変調されて送電コイルに供給される。この送電コイルへの高周波の供給によって、電磁誘導の原理に従って受電コイルに高周波電流が誘起され、電力が伝送される。この誘起された高周波電流は、整流器により直流に戻されて二次電池に充電される。
【0004】
このような非接触充電装置では、電力伝送効率(送電側コイルに供給した電力のうち、受電側コイルに伝送された電力の割合)が重要な性能指標となる。電力伝送効率は、回路構成や負荷条件、高周波の周波数などにより変化するが、非特許文献1によると、送電コイルと受電コイルとの間の最大電力伝進効率ηは、η=k・Q・Qにより定まることが知られている。なお、kは送電コイルと受電コイルの結合係数、Qは送電コイルのQ値、Qは受電コイルのQ値を示している。
【0005】
ところで、結合係数kは、送電コイルと受電コイルの位置関係(及び周囲の磁性体の配置)などにより定まる。上記の式より、電力伝送効率を向上させるためには、結合係数kの増大が効果的であることは明らかであるが、例えば、電気自動車の非接触充電装置などでは、送電コイルと受電コイルの分離距離(空隙=ギヤップ)を取る必要があるため、結合係数kをそれほど大きくすることはできない。そのため、送電コイル及び受電コイルのQ値を向上させることが重要となる。なお、各コイルのQ値は、Q=2πfL/Rにより表される。ここで、fは高周波周波数、Lはコイルのインダクタンス、Rはコイル損失(鉄損+銅損)を示している。
【0006】
この式によると、各コイルのインダクタンスLを大きくすることと、コイル損失(鉄損、銅損)Rを小さくすることによって、電力伝送効率を向上させることができる。
コイル損失Rの銅損部分は、コイルの直流抵抗によるジュール損と、交流磁場が誘起する渦電流損からなる。直流抵抗は導体の断面積と長さにより決まるものであり、直流抵抗を減少させてジュール損を低減させるには、導体の断面積を大きくするか、導体の総長を短くすればよい。しかし、導体の総長を維持しなければ、コイルのインダクタンスを維持することができないので、ジュール損を低減するためには導体の断面積を大きくすることが必要である。
【0007】
次に渦電流損は(磁束密度、高周波周波数が同一である場合には)、導体の磁場に鎖差する連続面の断面積に比例するので、渦電流損を減少させるには、この連続面の断面積を減少させることが必要である。この目的のために従来技術では、コイルの導体に「リッツ導体(絶縁された複数の細い導体素線を集めて撚り合わせた複合導体)」などを用いることによりコイル損失のうちの銅損を低減している。
【0008】
一方、特許文献1では、1次コイル及び2次コイルにリッツ導体を採用することで、ループ電力の起電力を相殺し、ループ電流及びジュール熱損を低減することを意図する技術が開示されている。
すなわち、特許文献1は、非接触給電装置を開示しており、その非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘電作用に基づき、1次コイルから2次コイルに電力を供給する非接触給電装置において、該1次コイルおよび2次コイルは、同一面で扁平に渦巻き巻回された構造よりなり、該1次コイルや2次コイルが配設される磁心コアは、平板状をなす非接触給電装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−87733号公報
【非特許文献1】松木英敏監修、「非接触電力伝送技術の最前線」、シーエムシー出版、2009年8月、p.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来から用いられているリッツ導体は剛性が高いので、小さな曲率半径で巻回することが困難であり、コイルとして巻回するのは容易ではない。さらに、リッツ導体は高価であり、非接触電力伝送装置を低コストで製造するための障害となる。
また、ジュール損を低減するためには導体の断面積を大きくする必要があるが、一方で導体内の渦電流損を低減するためには、素線径を小さくする(導体がさらされる磁場と鎖差する断面積を低減する)ことが必要であり、相矛盾する。このようなリッツ導体においてジュール損の低減と渦電流損の低減を両立するためには、素線径の小さい素線導体をより多く複合して、導体全体としての断面積を大きくする必要がある。しかし、そのようにすれば、リッツ導体の剛性がさらに高くなり、コイルの巻回がますます難しくなるという課題がある。
【0011】
さらに、非接触充電装置の取り扱いを容易にするために、コイルのサイズを小さくすることが強く望まれているが、そのために巻回する導体の総長を短くすると、コイルのインダクタンスが低下するので、高い電力伝送効率を確保することが困難となるという課題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、リッツ導体を用いずに、コンパクトで低コストであるが、高い効率で電力を伝送できる非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の非接触電力伝送装置用コイルユニットは、電力を非接触で伝送するための非接触電力伝送装置に用いられるコイルユニットであって、前記コイルユニットは、テープ状の導体部材を、前記導体部材の幅広面が互いに向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイルと、前記コイルの背面を担持する平面を有する磁性体コアと、を具備し、少なくとも前記コイルの背面と、磁性体コアの前記平面とは、互いに平行となっていることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記導体部材は、テープ状の導体層とテープ状の絶縁層とを厚み方向に積層してなるものであり、前記テープ状の導体層の厚さは、磁場侵入長の3分の1以下に設定され、前記導体層のテープ面の幅は、前記導体層の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるように設定されるとよい。
好ましくは、前記導体部材は、前記導体層と前記絶縁層とを複数積層してなるものであり、各導体層同士が、導体部材の端部において、直列又は並列で電気的に接続されているとよい。
【0014】
好ましくは、前記導体部材の各導体層は、そのいくつかの導体層が並列に配置された並列導体群に分けられ、これら並列導体群が電気的に直列接続された状態で、コイルへと巻回されているとよい。
好ましくは、前記コイルの隣り合う並列導体群において、コイル外周側に位置する並列導体群における外周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における内周側の導体層と接続され、且つコイル外周側に位置する並列導体群における内周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における外周側の導体層と接続されるとよい。
【0015】
ここで、前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するものであり、軟磁性体粉末を成形してなるものであるとよい。
好ましくは、前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するフェライトコアであるとよい
さらに好ましくは、前記磁性体コアは、前記コイルの外周を取り囲むようなサイドヨーク部を有しているとよい。
【0016】
また、本発明の非接触電力伝送装置は、互いに対向する一次コイルユニットと、二次コイルユニットとを有し、一次コイルユニットと二次コイルユニットとの間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送装置であって、前記一次コイルユニット、及び/又は二次コイルユニットが、上述のいずれかの非接触電力伝送装置用コイルユニットで構成されることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記一次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が二次コイルユニットの磁性体コアに対向し、かつ/または、前記二次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が一次コイルユニットの磁性体コアに対向しているとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る非接触電力伝送装置によれば、リッツ導体を用いなくとも、コンパクト且つ低コストで、高い効率で電力を伝送できる非接触電力伝送装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の非接触電力伝送装置を電気自動車の非接触充電装置に適用した状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットを示す模式図である。
【図3】(a)は、本発明の第1実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットの上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図4】(a)は、本発明の第2実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、コイルの接続端子にチョークコイルを接続した図である。
【図5】(a)は、本発明の第3実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、導体層の接続方法を示す概念図、(c)は、導体層の接続方法を示す概念図である。
【図6】(a)は、本発明の第4実施形態によるコイルユニットのコイルを示す模式図であり、(b)は、導体層の接続方法を示す概念図、(c)は、導体層の接続方法を示す概念図である。
【図7】本発明の第5実施形態によるコイルユニットのコイルの製作方法を示す模式図である。
【図8】本発明の各実施形態で用いられる磁性体コアの変形例を示す模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態による、一次コイルユニットと二次コイルユニットの構成及び配置を示す図である。
【図10】図9に示す構成における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの端部及び磁束線の様子を示す図である。
【図11】第6実施形態の変形例における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの端部及び磁束線の様子を示している。
【図12】(a)は、本発明の第7実施形態における、一次コイルユニットと二次コイルユニットの配置及び構成の上面図であり、(b)は、一次コイルユニットと二次コイルユニットの配置及び構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して、本発明の実施形態による非接触電力電送装置について説明する。
本発明の実施形態による非接触電力伝送装置は、間隔を開けて対向した一次コイルユニット(送電コイルユニット)と二次コイルユニット(受電コイルユニット)との間で、電磁誘導の原理に基づいて電力伝送するものである。
[第1実施形態]
図1は、本発明の非接触電力伝送装置を電気自動車の非接触充電装置に適用した場合の概略図である。なお、本実施形態及び後述する第2〜5実施形態による非接触電力伝送装置を電気自動車以外のものに適用できることは、その技術内容から明らかである。
【0021】
本発明の非接触電力伝送装置は、一次コイルユニット1、高周波電源2、二次コイルユニット3、整流器4、及びバッテリ5を有している。
図1において、地上側には、送電コイルユニットである一次コイルユニット1と高周波電源2が設置されている。一次コイルユニット1は、そのコイル前面が上方に向かうように地面に設置されており、高周波電源2に接続されている。その高周波電源2は、商用電源に接続されている。電気自動車には、二次コイルユニット3、整流器4、及びバッテリ5が搭載されている。二次コイルユニット3は、そのコイル前面が地上に向かうように、例えば、電気自動車床面に設置されており、整流器4に設置されている。その整流器4は、二次電池であるバッテリ5に接続されている。電気自動車は、搭載した二次コイルユニット3のコイルが、地上に設置された一次コイルユニット1のコイルと対向するような位置に停車し、図1に示すような位置関係となる。
【0022】
図2及び図3を参照して、本実施形態の非接触電力伝送装置について説明する。図2は、図1に示す非接触電力伝送装置において、互いに前面を対向させた一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3を模式的に示す図である。図3(a)は、図1に示す非接触電力伝送装置の一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3の上面図、図3(b)は、その側面図である。
【0023】
まず、図2における地上側の一次コイルユニット1は、テープ状の導体部材20で形成される略円板状のコイル6と、このコイル6を担持する略円板状の磁性体コア7を有している。
この略円板状のコイル6に用いられるテープ状の導体部材20は、例えば、銅、アルミ、又はその合金からなる一層のテープ状の導体層23で構成されている。このテープ状の導体部材20の幅方向をコイル6の軸芯方向に略一致させた態様で、導体部材20の幅広面(テープ面)が互いに向かい合わせとなるように、時計回り又は反時計回りに所定回数巻回(フラットワイズ巻き)されて形成されたものである。
【0024】
図3(a)は、コイル6の上面図を示し、導体部材20を反時計回りに巻回した状態を示している。このコイル6において向かい合うテープ面同士は、例えば図2及び図3(a)において網掛けで示される絶縁性の樹脂により被覆されており、電気的に接触しないようにして、絶縁が確保されている。巻回時に、向かい合うテープ面の間に絶縁シートを挟むことで絶縁を確保してもよい。また、一層の導体層23に一層の絶縁層24を積層することで導体部材20を構成してもよい。
【0025】
導体部材20の内周側及び外周側の両端は、図2及び図3(b)に示すようにコイル6から口出しされており、電気的な接続端子8、9となっている。一次コイルユニット1の2つの接続端子8、9は、ともに高周波電源2に接続されている。
このような一次コイルユニット1の導体部材20において、銅損部分である渦電流損とジュール損を低減するために、本実施形態では、導体層23の厚さを、磁場侵入長の3分の1以下となるように定める。また、導体層23のテープ面の幅は、該テープ面の幅を導体層23の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるような値に定める。
【0026】
なお、導体内への磁場侵入長(スキンデプス)は、下記の式(1)によって表される。
【0027】
【数1】
【0028】
具体例として、一次コイルユニット1を形成する導体層23に銅テープ(ρ=0.01μΩ・m、μ=1、厚さ0.15mm、幅19mm、アスペクト比≒127)を適用し、高周波周波数fを10kHzとした場合を考える。この場合、上記の式より、スキンデプスδ≒0.5mmとなり、導体層23の厚さ0.15mmは、スキンデプス0.5mmの1/3以下となる。このような導体層23を用いて導体部材20を構成すると、厚さ0.5mm程度の厚い導体層を用いる場合に比べて渦電流損を1/10程度に低減することができる。本実施形態による一次コイルユニット1において、渦電流損を効果的に低減するには、アスペクト比が10以上となるような、例えば、厚さ0.15mmで幅1.5mmの銅テープを用いればよい。
【0029】
この導体層23一層当たりの断面積は2.85mmであり、例えばこの導体層23を数層〜十数層程度並列に接続すれば、一般的に用いられるリッツ導体とほぼ同等の断面積が得られるので、一般的なリッツ導体とほぼ同等のジュール損となる条件下でも、渦電流損を低減することができる。このとき、導体層23の厚さを変えずに幅を増やしても良い。
次に、コイル6の背面、すなわち前面が対応するように配置されたコイルの反前面側に配置される磁性体コア7について説明する。磁性体コア7は、例えば、軟磁性体粉末を成形してできたものであって、透磁率など磁気特性が等方性を示すように、後述する磁性粉末を略円板状に圧粉形成したフェライトコアである。略円板状の磁性体コア7の2つの略円形平面は、互いに略平行となっている。
【0030】
これらの構成によれば、磁性体コア7について、所望の磁気特性が比較的容易に得られると共に、比較的容易に所望の形状に成形され得る。
磁性体コア7は、所望の磁気特性(比較的高い透磁率)の実現容易性および所望の形状の成形容易性の観点から、軟磁性体粉末を成形したものであることが好ましい。
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属材料であることが好ましい。
【0031】
磁性体コア7を、磁気的に等方性を有するフェライトコアで構成してもよい。ただし、漏れ磁束が無いように空芯コイルを磁性体で囲む場合、電磁鋼板のような積層コアでは、必ず磁束線が平面を貫通するため、磁性体コア7に生じる渦電流損が大きくなる。磁束密度が高い方が漏れ磁束を抑制でき且つ小型化できるため、ソフトフェライトよりも鉄系軟磁性粉末の圧粉コアが好ましい。
【0032】
この磁性体コア7は、略円状平面の一方と、この略円状平面に対向する面であるコイル6の背面とが略平行となるように、コイル6を担持する。このように、コイル6の背面付近で磁性体コアの磁束線と導体部材20のテープ面を略平行とすることにより渦電流損を抑制する。
ここでいう、磁性体コア7の略円状平面の一方と、コイル6の背面との略平行とは、幾何学的に完全な平行だけを意味するものではない。完全な平行を必ずしも保てなくても、渦電流損が所望の水準で抑制できればよく、本願発明の作用効果を奏する範囲であれば、、角度にして数度程度の多少の平行度のずれは、十分に許容できる範囲である。
【0033】
なお、図1〜図3では、略円板状の磁性体コア7の直径が、略円板状のコイル6の直径より大きくなるように描かれているが、必ずしも磁性体コア7の直径の方が大きくなければならないという訳ではない。磁性体コア7の直径又は幅をW1、コイル6の直径又は幅をW2としたとき、本実施形態ではW1>W2であるが、W1=W2であっても、W1≦W2であってもよく、コイル6の背面付近で磁性体コア7の磁束線と導体部材20のテープ面を略平行とすることができれば、渦電流損を抑制することができる。
【0034】
このような一次コイルユニット1に対して、図2に示す本実施形態おける車載側の二次コイルユニット3は、一次コイルユニット1とほぼ同様の構成である。この二次コイルユニット3は、必ずしも一次コイルユニット1と同様の構成でなくてもよいが、本実施形態においては、一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3は、互いに同様の構成を有するものとする。
【0035】
続いて、このような構成の一次コイルユニット1及び二次コイルユニット3を有する非接触電力伝送装置の動作を説明する。
まず、交流電流(通常は50Hz又は60Hz)が、商用電源から高周波電源装置2に入力される。
次に、入力された交流電流は、高周波電源装置2の内部でいったん直流に変換された後、さらに数kHz〜数十kHzの高周波に変調されて一次コイルユニット1に供給される。
【0036】
この結果、一次コイルユニット1に対向する二次コイルユニット3には、電磁誘導の原理により高周波電流が誘起される。誘起された高周波電流は、整流器4に入力される。入力された高周波電流は、整流器4によって直流電流に変換されて、バッテリ5に供給される。この供給された直流電流によって、バッテリ5が充電される。
[第2実施形態]
図4を参照して、本発明の第2実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図4は、本発明の第2実施形態によるコイルユニットのコイル10を示す模式図である。
【0037】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、絶縁層、導体層、絶縁層、導体層の順に交互に各2層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を2層有している。
【0038】
図4(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル10を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル10の外周側の端部において、導体部材20の導体層A及びBを分離して口出しし、コイル10の内周側の端部において、導体層A及びBの各端部に端子を設ける。
このような構成のコイル10の端部を並列に接続するだけでは、コイル10に高周波電流を供給したときに、並列接続した導体層A及びBが互いに磁気的に結合し、渦電流損が増大する。そのため、導体層A及びB間の磁気的結合を解消しなくてはならない。そこで、図4(b)に示すようにコイル10の端部で、導体層A及びBに直列にチョークコイル11、12を接続すれば、磁気的結合を解消することができる。
【0039】
このチョークコイル11、12は、導体層A及びBに接続された導体線のそれぞれが、ドーナツ状の磁心に、ほぼ並列に並ぶように巻回されてできたものである。各導体線の磁心への巻回方向は、同一方向である。こうすることで、チョークコイル11、12は、同相の電流に対しては抵抗にならず、逆相の電流に対しては抵抗として働く。
このように構成されたコイル10を、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
【0040】
このような一次コイルユニット及び二次コイルユニットを用いれば、磁場侵入長に対する導体層の厚さを十分小さく保ちながら、導体層の断面積を大きくしたのと同じ効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図5を参照して、本発明の第3実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図5(a)は、本発明の第3実施形態によるコイルユニットのコイル13を示す模式図、図5(b)は、各導体層の接続方法を示す概念図、図5(c)は、各導体層の接続方法を示す概念図である。
【0041】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。
導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、第2実施形態と同様の要領で交互に各4層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を4層有している。
【0042】
図5(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル13を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル13の外周側の端部において、導体部材20の導体層A〜Dを分離して口出しし、コイル13の内周側の端部において、導体層A〜Dの各端部に端子を設ける。
このようなコイルの外周側の端部において、導体層A及びBを並列に接続し、導体層C及びDを並列に接続する。また、内周側の端部において、導体層Aと導体層Dとを直列に接続し、導体層Bと導体層Cとを直列に接続する。図5(a)では、このように接続されたコイル13において、並列接続された導体層A及びBに高周波電流が入力されると、並列接続された導体層C及びDから高周波電流が出力される状態を、コイル13の外周側の導体層A及びB、導体層C及びDに対する矢印の向きで示している。
【0043】
次に、図5(b)は、図5(a)に示す各導体層間の接続を概念的に示した図であり、高周波電流の向きを矢印の向きで例示している。図5(b)において、導体層A及びBと、導体層C及びDとをそれぞれ1つの組と考えると、これら2つの組が直列に接続されていることがわかる。
以降、これら並列接続された導体層A及びB、並びに並列接続された導体層C及びDを、「並列導体群14、15」と呼ぶ。
【0044】
図5(b)に示す各導体層間の接続は、コイル13の導体部材20において隣り合う並列導体群に注目し、外周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層とを接続し、外周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層とを接続することで実現できる。本実施形態では、ここに示す接続を「2枚並列×2直列」という。
【0045】
図5(c)は、「2枚並列×2直列」接続を、概念的に示す図であり、図中の矢印は、高周波電流の向きを模式的に示したものである。図5(c)において、導体層Aと導体層Cは、並列導体群14、15における外周側の導体層であり、導体層Bと導体層Dは、並列導体群14、15における内周側の導体層である。図5(c)では、導体層Aと導体層Dをつなぐ線と、導体層Bと導体層Cをつなぐ線とが交差している。
【0046】
このように、外周側の導体層と内周側の導体層が交差するように並列導体群14、15を直列接続すると、各導体層間の磁気的結合を解消することができるとともに、導体部材20の総長を長くとることができるので、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
[第4実施形態]
図6を参照して、本発明の第4実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。図6(a)は、本発明の第4実施形態によるコイルユニットのコイル16を示す模式図、図6(b)は、各導体層の接続方法を示す概念図、図6(c)は、各導体層の接続方法を示す概念図である。
【0047】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第1実施形態で示した導体層23と同様の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、第2及び第3実施形態と同様の要領で交互に各6層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を6層有している。
【0048】
図6(a)に示すように、この導体部材20を第1実施形態と同じ要領で巻回してコイル16を形成し、導体部材20の両端を口出しする。コイル16の外周側の端部において、導体部材20の導体層A〜Fを分離して口出しし、コイル16の内周側の端部において、導体層A〜Fの各端部に端子を設ける。このようなコイル16の外周側の端部において、導体層A及びBを並列に接続し、導体層C及びFを直列に接続し、導体層D及びEを直列に接続する。また、内周側の端部において、導体層Aと導体層Dとを直列に接続し、導体層Bと導体層Cとを直列に接続し、導体層E及びFを並列に接続する。図5(a)では、このように接続されたコイル16において、並列接続された導体層A及びBの外周側に高周波電流が入力されると、並列接続された導体層C及びDの内周側から高周波電流が出力される状態を、コイル16の外周側の導体層A及びB、並びにコイルの内周側の導体層C及びDに対する矢印の向きで示している。
【0049】
次に、図6(b)は、図6(a)に示す各導体層間の接続を概念的に示した図であり、高周波電流の向きを矢印の向きで例示している。図6(b)において、導体層A及びBと、導体層C及びDと、導体層E及びFとをそれぞれ1つの組と考えると、これら3つの組が直列に接続されていることがわかる。
以降、これら並列接続された導体層A及びB、並列接続された導体層C及びD、並びに並列接続された導体層E及びFを、「並列導体群17、18、19」と呼ぶ。
【0050】
図6(b)に示す各導体層間の接続は、コイル16の導体部材20において隣り合う並列導体群に注目し、外周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層とを接続し、外周側に位置する並列導体群内の内周側の導体層と、内周側に位置する並列導体群内の外周側の導体層とを接続することで実現できる。本実施形態では、ここに示す接続を「2枚並列×3直列」という。
【0051】
図6(c)は、「2枚並列×3直列」接続を、概念的に示す図であり、図中の矢印は、高周波電流の向きを模式的に示したものである。図6(c)において、導体層A、導体層C、及び導体層Eは、並列導体群17〜19における外周側の導体層であり、導体層B、導体層D、及び導体層Fは、並列導体群17〜19における内周側の導体層である。図6(c)では、導体層Aと導体層Dをつなぐ線と、導体層Bと導体層Cをつなぐ線とが交差し、導体層Cと導体層Fをつなぐ線と、導体層Dと導体層Eをつなぐ線とが交差している。
【0052】
このように、外周側の導体層と内周側の導体層が交差するように並列導体群17〜19を直列接続すると、各導体層間の磁気的結合を解消することができるとともに、導体部材20の総長を長くとることができるので、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
【0053】
ところで、第3実施形態における接続形態は「2枚並列×2直列」であり、第4実施形態における接続形態は「2枚並列×3直列」であることを述べたが、翻って第2実施形態を考えるに、第2実施形態による各導体層の接続方法は、「2枚並列×1直列」ということができる。
[第5実施形態]
図7を参照して、本発明の第5実施形態による非接触電力伝送装置のコイルユニットについて説明する。
【0054】
本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットに用いられる導体部材20について説明する。導体部材20は、第3実施形態で用いられたものと同様であり、テープ状の導体層と、各導体層を絶縁するための絶縁層24とを、交互に各4層ずつ積層して構成されている。よって、本実施形態における導体部材20は、導体層を4層有している。
【0055】
図7(b)に示すように、導体部材20をその両端から巻き取り、導体部材20の略中心部位で、導体部材20の幅方向に幅の分だけ、両巻き取り部分が互いに平行に移動するように導体部材20の中心部位を上下方向(コイルの軸芯方向)に変形させる。
図7(b)に示すように、非磁性体の巻き枠21に、巻き枠21の軸芯と巻き取り部分の導体部材20の幅方向とが平行となるように、変形させた部位を沿わせた後、両巻き取り部分を巻き枠21に巻き付ける。
【0056】
このとき、図7(c)に示すように、図面内、上下方向に2段のコイル22となる。図7(c)においては、図面内、上方向から巻き枠21の軸芯に沿ってコイル22を見ると、コイル22の上段部分は、反時計回り、コイル22の下段部分は、時計回りに巻回する。このとき、コイル22の上段部分と下段部分との絶縁を確保するために、上段部分と下段部分との間には、隙間が設けられるか、または絶縁部材が設けられる。このように導体部材20を巻き付けると、コイル22の上段部分と下段部分の巻き方向は、互いに逆向きとなる。
【0057】
巻き枠21への導体部材20の巻回を終え、第3実施形態と同様に、コイル22の外周側にある導体部材20の端部から各導体層を口出しする。その後、図7(d)に示すように、2段のコイル22の口出し部分において、導体層A及び導体層B、並びに導体層C及び導体層Dを、それぞれ並列導体群として、各並列導体群を直列に接続する。
このようにコイルを形成すると、導体部材20の両端部全てを、ともにコイル外周側に構成することができるとともに、導体部材20の総長を第3実施形態よりも長くとることができるので、コイルのインダクタンスをさらに大きくすることができる。
【0058】
このように構成されたコイルを、第1実施形態と同様の磁性体コアが担持することで、本実施形態による非接触電力伝送装置の一次コイルユニット及び二次コイルユニットが構成される。
尚、上記第1〜第5実施形態において円板状の磁性体コアを用いたが、磁性体コアの形状はこれに限らない。図8に示すような、サイドヨーク部25を有する磁性体コアを用いてもよい。図8のサイドヨーク部25は、磁性体コアと同じ材質の部材であって、コイル外周部の外側を取り囲むように磁性体コア上に設けられている。サイドヨーク部25は、略Oーリング状の部材であり、その内周はコイル外周より大きく、その外周は、磁性体コアの外周と略同じ大きさである。
【0059】
このようなサイドヨーク部25を形成することにより、一次コイルユニットと二次コイルユニットの結合係数kを増大させることができる。このサイドヨーク部25の厚み及び幅は、実現したい結合係数kに応じて、適宜選択することができる。
図8に示すサイドヨーク部25は、コイルの全外周を取り囲むように構成されているが、必ずしもコイルの全外周を取り囲む必要はない。コイルの外周を部分的に取り囲むようにサイドヨーク部25を構成しても、一次コイルユニットと二次コイルユニットの結合係数kを大きくとることができる。
[第6実施形態]
また、図8において、サイドヨーク部25の内周面と外周面は、磁性体コアにおけるコイルを担持する平面に対してほぼ垂直となっているが、必ずしも垂直である必要はない。サイドヨーク部25の内周面及び/又は外周面、特に内周面が磁性体コアのコイルを担持する平面に対して所定の角度をもって傾斜するように、サイドヨーク部25を形成することもできる。
【0060】
次に、このような傾斜したサイドヨークを有するコイルユニットの適用例を、本発明の第6実施形態として説明する。まず、図9を参照して、傾斜した内周面と外周面とを持つサイドヨーク部25aを磁性体コアに有する一次コイルユニット26の適用例を説明する。図9は、略円板状の一次コイルユニット26と略円板状の二次コイルユニット27とが、互いに中心軸を一致させて対向した配置を示している。
【0061】
図9の二次コイルユニット27の磁性体コアは、図9に示すように、一次コイルユニット26のコイルと対向する中央部分が、該コイルに向かって凸形状の凸状中央部となるように形成されており、この凸状中央部32を取り囲むようにコイルが巻回されている。この二次コイルユニット27の磁性体コアは、サイドヨーク部を備えていない。このように構成された二次コイルユニット27において、磁性体コアの凸状中央部32は、図9に示すように、コイルの内周面と隣り合う面30が、コイルを担持する面31に対して所定の角度で傾斜するように形成されている。
【0062】
一次コイルユニット26で用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20が望ましいが、二次コイルユニット27で用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20であってもよいし、一般的な丸線材でもよい。
図9に示すように、二次コイルユニット27の磁性体コアの凸状中央部32が一次コイルユニット26のコイルと対向するように両コイルユニットを配置すると、一次コイルユニット26のコイルは、該凸状中央部32と対向し、二次コイルユニット27のコイルは、一次コイルユニット26のサイドヨーク部25aと対向する。
【0063】
このように、一次コイルユニット26のコイルと二次コイルユニット27のコイルとが互いに対向しないように、且つ、一方のコイルの前面と、他方のコイルユニットの磁性体コアとが互いに略平行となるように、一次コイルユニット26と二次コイルユニット27を配置することで、磁束線を一次コイルユニット26のコイルに対し、より垂直に入射させ渦電流損を低減することができる。また、2つのコイルユニット間の結合係数kを、さらに大きくとることもできる。
【0064】
図10は、磁束線のシミュレーション解析結果であり、二次コイルユニット27は整合した負荷(整流器から電池)が接続されている状態を想定し、二次コイルユニット27のコイルは計算上ないものとして(一次コイルユニット26(コイル及び一次側磁性体コア)、二次側磁性体コアのみを考慮した設定で)計算したものであり、図9に示す構成における、一次コイルユニット26と二次コイルユニット27の端部、コイル、及び磁束線の様子を示している。また、一方のコイルユニットのコイルの前面が他方のコイルユニットの磁性体コアと略平行に対向する部分では、磁束線が、磁性体コアからコイルに向かって、コイル前面に対してほぼ垂直に侵入している。このように磁束線がコイルに侵入することで、渦電流損を低減することができる。
【0065】
ここで、二次コイルユニット及び一次コイルユニットの両磁性体コアの端部を図11に示すような構成とすることもできる。図11は、図10と同様のシミュレーション結果であり、一次コイルユニット26aと二次コイルユニット27aの端部、コイル、及び磁束線の様子を示している。図11において、一次コイルユニット26aは、図9及び図10の一次コイルユニット26と同様にサイドヨーク部25bを有しており、二次コイルユニット27aの磁性体コアは、その周縁部にサイドヨーク部25cを備えている。図11に示すように二次コイルユニット27aにサイドヨーク部25cを設けると、サイドヨーク部25cと一次コイルユニット26aのサイドヨーク部25bとの間の磁束密度が高くなり、一次コイルユニット26aと二次コイルユニット27aとの間の電力伝送効率を高めることができる。
[第7実施形態]
続いて、図12を参照して、別のコイルユニットの適用例を、本発明の第7実施形態として説明する。図12は、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29とが対向して配置された構成を示している。図12(a)は、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29の配置及び構成を平面視した状態を示す図であり、図12(b)は、図12(a)のA−A線矢視断面図である。
【0066】
一次コイルユニット28と二次コイルユニット29は、共に同様の構成を有しており、略方形の板状の磁性体コアの平面における対角線上の一方端寄りに形成された環状の溝(環状溝)にコイルを配置することで構成されている。環状溝の内周面と外周面とは、第6実施形態と略同様に、磁性体コアのコイルを担持する平面に対して所定の角度をもって傾斜するように形成されている。
【0067】
図12(a)に示すように、このように構成された一次コイルユニット28と二次コイルユニット29を、それぞれのコイルが互いの前面で平行となるように、且つ、平面視で一次コイルユニット28の投影面が二次コイルユニット29に一部重なるように配置する。こうすることで、図12(a)及び図12(b)に示すように、コイルにおいて磁性体コアと対向する部分を確保することができるので、一次コイルユニット28と二次コイルユニット29の間の結合係数kを大きくとることができる。なお、ここで用いられるコイルの線材は、上記第1〜第5実施形態で用いた導体部材20が望ましい。
【0068】
以上、上記実施形態1〜5で説明した導体部材20は、導体層のアスペクト比(縦横比)が大きいので、この導体部材20を用いて一次コイルユニット及び二次コイルユニットを構成し、また、これらの導体層を並列に接続することで、導体全体としての断面積を大きくすることができ、ジュール損を低減することができる。また、導体層の厚さを磁場侵入長(スキンデプス)に対して十分に薄くすることができるので、渦電流損を抑制することができる。
【0069】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、第1〜第5実施形態において、略円板状のコイル及び磁性体コアを例示したが、コイル及び磁性体コアの形状は、これに限らない。略円板状の形状以外にも、略方形や楕円形としてもよい。送電コイルと受電コイルとの間で、電磁誘導の原理による電力の電送ができれば、いずれの形状を採用してもよい。
【0070】
また、この非接触電力伝送装置を、例えば、電気自動車に適用される非接触充電装置の分離型トランスとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 一次コイルユニット
2 高周波電源
3 二次コイルユニット
4 整流器
5 バッテリ
6、10、13、16、22 コイル
7 磁性体コア
8、9 接続端子
11、12 チョークコイル
14、15、17、18、19 並列導体群
20 導体部材
21 巻き枠
23 導体層
24 絶縁層
25 サイドヨーク部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を非接触で伝送するための非接触電力伝送装置に用いられるコイルユニットであって、
前記コイルユニットは、
テープ状の導体部材を、前記導体部材の幅広面が互いに向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイルと、
前記コイルの背面を担持する平面を有する磁性体コアと、を具備し、
少なくとも前記コイルの背面と、磁性体コアの前記平面とは、互いに平行となっていることを特徴とする非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項2】
前記導体部材は、テープ状の導体層とテープ状の絶縁層とを厚み方向に積層してなるものであり、
前記テープ状の導体層の厚さは、磁場侵入長の3分の1以下に設定され、
前記導体層のテープ面の幅は、前記導体層の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項3】
前記導体部材は、前記導体層と前記絶縁層とを複数積層してなるものであり、
各導体層同士が、導体部材の端部において、直列又は並列で電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項4】
前記導体部材の各導体層は、そのいくつかの導体層が並列に配置された並列導体群に分けられ、これら並列導体群が電気的に直列接続された状態で、コイルへと巻回されていることを特徴とする請求項3に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項5】
前記コイルの隣り合う並列導体群において、コイル外周側に位置する並列導体群における外周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における内周側の導体層と接続され、且つコイル外周側に位置する並列導体群における内周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における外周側の導体層と接続されることを特徴とする請求項4に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項6】
前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するものであり、軟磁性体粉末を成形してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項7】
前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するフェライトコアであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項8】
前記磁性体コアは、前記コイルの外周を取り囲むようなサイドヨーク部を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項9】
互いに対向する一次コイルユニットと、二次コイルユニットとを有し、一次コイルユニットと二次コイルユニットとの間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送装置であって、
前記一次コイルユニット、及び/又は二次コイルユニットが、請求項1〜8のいずれかの非接触電力伝送装置用コイルユニットで構成されることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項10】
前記一次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が二次コイルユニットの磁性体コアに対向し、かつ/または、
前記二次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が一次コイルユニットの磁性体コアに対向していることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項1】
電力を非接触で伝送するための非接触電力伝送装置に用いられるコイルユニットであって、
前記コイルユニットは、
テープ状の導体部材を、前記導体部材の幅広面が互いに向かい合わせとなるように、且つ互いに向かい合うテープ面の絶縁を保ちながら巻回して形成されたコイルと、
前記コイルの背面を担持する平面を有する磁性体コアと、を具備し、
少なくとも前記コイルの背面と、磁性体コアの前記平面とは、互いに平行となっていることを特徴とする非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項2】
前記導体部材は、テープ状の導体層とテープ状の絶縁層とを厚み方向に積層してなるものであり、
前記テープ状の導体層の厚さは、磁場侵入長の3分の1以下に設定され、
前記導体層のテープ面の幅は、前記導体層の厚さで除して得られるアスペクト比が10以上となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項3】
前記導体部材は、前記導体層と前記絶縁層とを複数積層してなるものであり、
各導体層同士が、導体部材の端部において、直列又は並列で電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項4】
前記導体部材の各導体層は、そのいくつかの導体層が並列に配置された並列導体群に分けられ、これら並列導体群が電気的に直列接続された状態で、コイルへと巻回されていることを特徴とする請求項3に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項5】
前記コイルの隣り合う並列導体群において、コイル外周側に位置する並列導体群における外周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における内周側の導体層と接続され、且つコイル外周側に位置する並列導体群における内周側の導体層は、コイル内周側に位置する並列導体群における外周側の導体層と接続されることを特徴とする請求項4に記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項6】
前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するものであり、軟磁性体粉末を成形してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項7】
前記磁性体コアは、磁気的に等方性を有するフェライトコアであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項8】
前記磁性体コアは、前記コイルの外周を取り囲むようなサイドヨーク部を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の非接触電力伝送装置用コイルユニット。
【請求項9】
互いに対向する一次コイルユニットと、二次コイルユニットとを有し、一次コイルユニットと二次コイルユニットとの間で電力を非接触で伝送する非接触電力伝送装置であって、
前記一次コイルユニット、及び/又は二次コイルユニットが、請求項1〜8のいずれかの非接触電力伝送装置用コイルユニットで構成されることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項10】
前記一次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が二次コイルユニットの磁性体コアに対向し、かつ/または、
前記二次コイルユニットのコイルは、少なくともその一部が一次コイルユニットの磁性体コアに対向していることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図8】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図8】
【公開番号】特開2011−142177(P2011−142177A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1374(P2010−1374)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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