説明

非接触ICカードを搭載した腕時計

【課題】非接触ICカードを腕時計に組み込むことにより、腕時計本来の機能の他に、当該非接触ICカードの機能をも享受可能にし、利便性を大いに向上させ得る非接触ICカードを搭載した腕時計を提供することを課題とする。
【解決手段】 ケース1内に、時計構成要素と共に非接触ICカードモジュール20を組み込むことにより、腕時計の機能と共に当該非接触ICカードの機能を享受可能にした腕時計であり、非接触ICカードモジュール20は、中枠10の中央部に形成される筒部11に収装される時計構成要素のムーブメント2の裏面側に、前記裏面との間に間隙を保持して配置される。その間隙保持は、筒部11の高さがムーブメント2の厚みよりも少し高くなるように設定することにより、あるいは、中枠10の筒部11の外側に配設される、筒部11と同じかそれよりも少し高いスペーサー12によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードを搭載した腕時計に関するものであり、より詳細には、非接触ICカードを搭載していて、腕時計としての機能の他に、非接触ICカードによる電子マネー決済や社員証の認証等の機能をも併せ有する、非接触ICカードを搭載した腕時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Felica(登録商標)等の非接触ICカードは、自動改札用カードや社員認証カードとして、あるいは、電子マネー決済用カード等として広く用いられている。非接触ICカードは独立したカードとして用いられることが多いが、コイン型トークンやリング型モジュールの形態に構成されて、バンドに組み込まれたりして用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−277285号公報
【特許文献2】特開2007−316706号公報
【特許文献3】特開2002−6061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来非接触ICカードは、独立したカードとして用いられる他、コイン型トークンやリング型モジュールの形態に構成されて、バンドに組み込まれたりして用いられているが、腕時計に組み込むことは考えられていなかった。
【0005】
そこで本発明は、非接触ICカードを腕時計に組み込むことにより、腕時計本来の機能の他に、当該非接触ICカードの機能をも享受可能にし、利便性を大いに向上させ得る非接触ICカードを搭載した腕時計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ケース内に、時計構成要素と共に、非接触ICカードモジュールを組み込むことにより、腕時計の機能と共に当該非接触ICカードの機能を享受可能にした腕時計であり、前記非接触ICカードモジュールは、中枠の中央部に形成される筒部に収装される前記時計構成要素のムーブメントの裏面側に、前記裏面との間に間隙を保持して配置されることを特徴とする非接触ICカードを搭載した腕時計である。
【0007】
一実施形態においては、前記ムーブメントと前記非接触ICカードモジュールとの間の間隙保持は、前記ムーブメント収装用筒部の高さが前記ムーブメントの厚みよりも少し高くなるように設定することによって達成される。
【0008】
また、他の実施形態においては、前記ムーブメントと前記非接触ICカードモジュールとの間の間隙保持は、前記中枠の前記筒部の外側に配設される、前記筒部と同じかそれよりも少し高いスペーサーによって達成される。
【0009】
一実施形態においては、前記中枠は非金属製とされ、また、前記時計構成要素の1つである文字板は非金属製とされる。また、一実施形態においては、前記ケースの内天面に、前記非接触ICカードモジュールの縁部を収めるための凹部が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したとおりであって、腕時計内にモジュール化した非接触ICカードが搭載されているため、腕時計本来の機能の他に、当該非接触ICカードの機能をも併せ享受することが可能となり、以て、大いに利便性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計の一実施形態の、裏蓋を除いた状態の裏面図である。
【図2】本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計の一実施形態の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計の一実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計の一実施形態の、裏蓋を除いた状態の裏面図、図2はその分解斜視図、そして図3はその縦断面図であり、それらに示されるように、本腕時計は、ケース1内に、腕時計本来の構成要素であるムーブメント2と文字板3と長短針(秒針を含む)4とが組み込まれると共に、電子マネー機能や人認証機能を有する非接触ICカードモジュール20が組み込まれて構成される。
【0013】
非接触ICカードモジュール20は、Felica(登録商標)カード等の非接触方式のICカードを、樹脂被覆してモジュール化したものである。図示した非接触ICカードモジュール20の形状は正方形状であるが、これに限られる訳ではなく、他の多角形、円形、楕円形等に形成されることもある。
【0014】
ケース1の形状は特に問わず、丸型、角型、その他任意の形状となし得る。ケース1の内天面には、非接触ICカードモジュール20の縁部を収めて安定的に保持する、一段窪んだ凹部5が形成される(図2参照)。凹部5の形態は非接触ICカードモジュール20の形状に依存することになり、図示した例では、非接触ICカードモジュール20はほぼ正方形に形成されているため、凹部5は、非接触ICカードモジュール20の四隅を収めるものとして、4個所に配設されている。ケース1の上面には、見返しリング6を介してガラス7が嵌め付けられる。
【0015】
なお、非接触ICカードモジュール20の製造番号を外部から透視可能にしなければならないという要請があるため、ケース1の下面に嵌め付けられる裏蓋8は、その全体、あるいは、少なくとも、上記製造番号表示部に対応する部分がガラス又は透明プラスチック等の透視部材製とされる。図示された例では、裏蓋8に大きな四角形の透明板9が嵌め込まれた構成となっているが、裏蓋8の全体が透明という態様であってもよい。
【0016】
ケース1の中程には中枠10が配備され、中枠10の上面に文字板3が定置される。文字板3と中枠10は、非接触ICカードモジュール20の動作に影響を与えないように、共に非金属製(通例、樹脂製)とすることが好ましい。中枠10の中央部は、ムーブメント2の形状に対応する輪郭に開口され、その開口の下縁が下方に延長されることにより、ムーブメント2を密に収装するための筒部11が形成される。
【0017】
本発明においては、ムーブメント2と非接触ICカードモジュール20の正常動作を確保するために、非接触ICカードモジュール20は、中枠10の筒部11に収装された状態のムーブメント2の裏面側に、その裏面との間に間隙を保持して配置されるが、その間隙保持は、筒部11の高さをムーブメント2の厚みよりも少し高くなるようにし、筒部11の下端部がムーブメント2の裏面より少し下方に延びた状態となるようにすることによって達成することができる。
【0018】
また、上記間隙の保持は、中枠10の裏面の筒部11の外側に、筒部11よりも少し高いスペーサー12を配設することによって達成することもできる。なお、筒部11の高さをムーブメント2の厚みよりも少し高くなるようにした場合は、スペーサー12を筒部11と同じ高さに形成し、スペーサー12と筒部11との協働により、上記間隙を保持させるようにすることもできる。
【0019】
中枠10には、ムーブメント2から延びるリューズ杆14を水平方向に逃がすための切欠き13が形成される。言うまでもなく、リューズ杆14の先端は、ケース1を貫いて差し込まれるリューズ15の軸に連結される。
【0020】
非接触ICカードモジュール20はケース1の裏面側から装入され(実際には、図2に示されるように、ケース1を上下反転させて上方から装入する。)、その四隅(周縁部)を凹部5に収めるようにして装填される。その状態において裏蓋8がネジ止めされることにより、非接触ICカードモジュール20は、その上面が筒部11及び/又はスペーサー12の下端面に当接した状態において確固と押え止められる。そのため、非接触ICカードモジュール20は、裏蓋8と筒部11及び/又はスペーサー12に挟み込まれることによって確固と押え止められる。
【0021】
本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計の組立て方法の一例を説明すると、先ず、ガラス7を取り付けたケース1を反転させ、見返しリング6を装入した後、予め文字板3と長短針4を取り付けたムーブメント2をケース1に装入する。そして、リューズ15を取り付けたリューズ杆14を、ケース1の側部に設けられる穴から差し込み、ムーブメント2に結合する。その後、ムーブメント2を筒部11に収装するようにして、中枠10をケース1に装入する。その際、中枠10の周縁部を文字板3の下縁に当接させ、見返しリング6の裏面に突設される突子が、文字板3の周縁部に形成される嵌合孔内に嵌入されることにより、文字板3が押し止めされる。
【0022】
次いで、その上に非接触ICカードモジュール20を、その四隅を凹部5内に収めるようにして装填し、最後に裏蓋8をネジ止めして組立て終了となる。その組立て状態において非接触ICカードモジュール20は、その下面が裏蓋8によって支持されると共に、その上面の周縁部が筒部11及び/又はスペーサー12の下端面に当たり、上述した筒部11及び/又はスペーサー12の作用により、非接触ICカードモジュール20の上面とムーブメント2の裏面との間に、必ずある程度の間隙が保持される。かくして、ムーブメント2及び非接触ICカードモジュール20の正常動作が確保される。
【0023】
本発明に係る非接触ICカードを搭載した腕時計は、一般の腕時計と同様の機能を果たす一方、当該非接触ICカードの有する電子マネー等の機能を奏することが可能となるので、その用途での使用も可能となり、利便性が大いに向上する。
【符号の説明】
【0024】
1 ケース
2 ムーブメント
3 文字板
4 長短針
5 凹部
6 見返しリング
7 ガラス
8 裏蓋
9 透明板
10 中枠
11 筒部
12 スペーサー
13 切欠き部
14 リューズ杆
15 リューズ
20 非接触ICカードモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、時計構成要素と共に、非接触ICカードモジュールを組み込むことにより、腕時計の機能と共に当該非接触ICカードの機能を享受可能にした腕時計であり、
前記非接触ICカードモジュールは、中枠の中央部に形成される筒部に収装される前記時計構成要素のムーブメントの裏面側に、前記裏面との間に間隙を保持して配置されることを特徴とする非接触ICカードを搭載した腕時計。
【請求項2】
前記ムーブメントと前記非接触ICカードモジュールとの間の間隙保持は、前記ムーブメント収装用筒部の高さが前記ムーブメントの厚みよりも少し高くなるように設定することによって達成される、請求項1に記載の非接触ICカードを搭載した腕時計。
【請求項3】
前記ムーブメントと前記非接触ICカードモジュールとの間の間隙保持は、前記中枠の前記筒部の外側に配設される、前記筒部と同じかそれよりも少し高いスペーサーによって達成される、請求項1に記載の非接触ICカードを搭載した腕時計。
【請求項4】
前記中枠は非金属製とされる、請求項1乃至3のいずれかに記載の非接触ICカードを搭載した腕時計。
【請求項5】
前記時計構成要素の1つである文字板は非金属製とされる、請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触ICカードを搭載した腕時計。
【請求項6】
前記ケースの内天面に、前記非接触ICカードモジュールの縁部を収めるための凹部が形成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の非接触ICカードを搭載した腕時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate