説明

非晶性樹脂からなるマニホールド

【課題】耐環境性、特に耐薬品性に優れていながらも、廉価な非晶性樹脂からなるマニホールドを提供する。
【解決手段】マニホールド10a、10b、10c、10dは、非晶性樹脂からなる基材部12と、弁体である複数の電磁弁20を含む電磁弁部16と、複数の管継手22を含む継手部18とを有する。基材部12の表面全体は、化学的に安定した物質からなる緻密な膜である保護膜14によって、ピンホールのないように包被される。必要に応じて、マニホールド10a、10b、10c、10dは、保護ボックス80によって囲繞されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製マニホールドに関し、一層詳細には、非晶性樹脂からなるマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の流体圧機器間に圧力流体を流通させる場合、流体流路の簡素化と省スペース化を目的として、マニホールドが使用されている。この場合、金属製マニホールドが主として用いられているが、より一層の成形容易性と、軽量化を図る目的で、樹脂製のマニホールドが使用されるに至った。
【0003】
樹脂製マニホールドに関連して、本出願人は発明「熱可塑性樹脂からなる基材への部品埋め込み方法」をすでに提案しており、この発明は特許第3775975号公報(特許文献1)として特許が成立するに至っている。前記特許発明は、インサート部品を基材の表面に対して傾けることなく、基材の中間層に容易且つ低コストで埋め込むことができるものであって、特に、前記基材に熱可塑性樹脂を用いるものである。
【0004】
これに関連して、樹脂製マニホールドの材質として、成形時の寸法精度が出し易いこと等による加工成形の容易性を考慮し、非晶性樹脂が用いられることがある。そこで、樹脂製であるが故に、マニホールドの耐久性、又は製品機能を低下させる要因となる物質と接触する可能性についての懸念を否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3775975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記樹脂製マニホールドに関連してなされたものであって、耐環境性、特に耐薬品性に優れていながらも、廉価な非晶性樹脂からなるマニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本願の請求項1で特定される発明は、流体が流通するマニホールドであって、複数の流路が内部に形成された非晶性樹脂からなる基材部と、前記基材部に設けられ前記流路への流体の導入及び導出を制御する電磁弁部と、前記基材部の流路と連通して流体の導入及び導出を行う継手部とを有し、前記基材部は、保護膜によって包被されていることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項1の発明によれば、保護膜が基材部を包被することによって、非晶性樹脂からなる基材部に、ある特定の溶剤が接触することを可及的に回避させることで、該基材部にソルベントクラックを生じることがなく、該基材部の耐久性、及び該基材部に形成された流路の密封性の低下を抑えることができるという効果が得られる。
【0009】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載のマニホールドにおいて、前記マニホールドは、保護ボックスで包被されていることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項2の発明によれば、保護ボックスがマニホールドを包被することによって、非晶性樹脂からなる基材部を保護膜で防護することに加えて、さらに保護ボックスによって二重に溶剤に対する保護措置を講じている。すなわち、ソルベントクラックを形成する可能性がある特定の溶剤と、該基材部とが接触することを一層減少させることで、該基材部の耐久性、及び該基材部に形成された流路の密封性の低下を一層抑えることができるという効果が得られる。
【0011】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載のマニホールドにおいて、前記マニホールドは、前記保護ボックスに導入される不活性ガスで加圧されることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項3の発明によれば、保護ボックスに導入される不活性ガスでマニホールドが加圧されることによって、前記特定の溶剤の保護ボックス内への浸入を阻止できるという効果が得られる。
【0013】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項2又は3記載のマニホールドにおいて、前記保護ボックスは、流体の導入路と、導出路とを有することを特徴とする。
【0014】
本願の請求項4の発明によれば、保護ボックスで囲繞された空間に、導入路から導出路への気体の流れを発生させることによって、非晶性樹脂からなる基材部にソルベントクラックを形成する可能性がある特定の溶剤が、該空間に浸入した場合、該溶剤の該空間における滞留が防止されるという効果が得られる。
【0015】
本願の請求項5で特定される発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のマニホールドにおいて、前記基材部は、アクリル樹脂製であることを特徴とする。
【0016】
本願の請求項5の発明によれば、基材部をアクリル樹脂で構成するために、マニホールド全体を廉価に製造することができるという効果が得られる。
【0017】
本願の請求項6で特定される発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のマニホールドにおいて、前記保護膜は、フッ素コーティング剤で形成されていることを特徴とする。
【0018】
本願の請求項6の発明によれば、保護膜を化学的に安定した物質であるフッ素コーティング剤で構成するために、取り扱いが容易であると共に、保護膜の耐久性が向上するという効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0020】
すなわち、廉価でありながら、非晶性樹脂からなる基材部に、ある特定の溶剤が接触することを可及的に回避させることで、該基材部にソルベントクラックを生じることがなく、該基材部の耐久性、及び該基材部に形成された流路の密封性の低下を抑えることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るマニホールドの一部省略斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すマニホールドにおける基材部の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った基材部の一部省略断面図である。
【図4】図4は、第1の実施の形態に係るマニホールドの一部省略分解斜視図である。
【図5】図5は、第2の実施の形態に係るマニホールドの一部省略斜視図である。
【図6】図6は、図5に示すマニホールドの一部省略分解斜視図である。
【図7】図7は、第3の実施の形態に係るマニホールドの一部省略断面図である。
【図8】図8は、第4の実施の形態に係るマニホールドの一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る非晶性樹脂からなるマニホールドに関し、第1〜第4の実施の形態として電磁弁マニホールドを例示し、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る電磁弁マニホールド10aは、マニホールド本体としての基材部12と、複数の電磁弁20を含む電磁弁部16と、複数の管継手22を含む継手部18とを有する。
【0024】
基材部12は、非晶性樹脂製で、好ましくは、アクリル樹脂製であって、略直方体形状を有している。基材部12は、基本的には、全体として保護膜14によって包被されている。
【0025】
図2に示すように、基材部12は、上層を形成する第1基材12aと、中間層を形成する第2基材12bと、下層を形成する第3基材12cとからなる三層構造である。ここでは、基材部12を三層からなるとしたが、層の数はこれに限定されない。
【0026】
ここで、三層構造の第1〜第3基材12a、12b、12cの中、先ず、中間の第2基材12bについて説明する。図2において、第2基材12bの上面、下面には、所定のパターンで複数の溝部21がそれぞれ形成されると共に、上面の溝部21と下面の溝部21とを連通する孔部23、23が形成される。
【0027】
前記第2基材12bの上面側に積層される第1基材12aには、その上面から下面に指向して該第1基材12aを貫通し、且つ第2基材12bの溝部21に貫通する孔部34が形成される。後述するように、孔部34は第1基材12aの上面に複数の電磁弁20が並設されるとき、電磁弁ポートとして機能する。前記孔部34の近傍に孔部36が形成される。この孔部36に後述するナット38が嵌合し、該ナット38に電磁弁取付用ボルト44が螺合する。
【0028】
第3基材12cの上面には、溝部25が所定のパターンで形成されると共に、長尺な側端部近傍に管継手用螺子孔40が複数個設けられる。そこで、前記第2基材12bは、第1基材12aと第3基材12cとの間に介装されて、前記溝部21、21が、第1基材12a及び第3基材12cによってそれぞれ閉塞されることにより、流体(例えば、エア)を流通させる複数の流体通路である流路30が形成される。ここでは、第1基材12aと第2基材12bとの間に形成された流路30を第1流路30aとし、第2基材12bと第3基材12cとの間に形成された流路30を第2流路30bとする(図3参照)。
【0029】
前記のように、三層に積層される第1〜第3基材12a、12b、12cは、一体化されて保護膜14で包被される。保護膜14は、例えば、フッ素コーティング剤の如き化学的に安定した物質からなる緻密な膜で、基材部12の表面全体をピンホールのないように包被している。基材部12を保護膜14で包被する際には、フッ素コーティング剤の溶液に基材部12を浸漬させ、次いで基材部12を取り出して溶液を固化させればよい。
【0030】
図4に示すように、電磁弁部16は、複数の電磁弁20と、該電磁弁20のシール材であるガスケット42と、該電磁弁20を装着するための電磁弁取付用ボルト44からなる。電磁弁20は、略直方体形状弁体であり、その内部に図示しない電磁弁と圧力流体用流路が形成される。弁本体には、電磁弁取付用孔部46が設けられる。
【0031】
電磁弁取付用孔部46は、電磁弁20を図4において上下方向に貫通する。
【0032】
電磁弁20は、基材部12を構成する第1基材12aにガスケット42を介して固着される。具体的には、電磁弁取付用孔部46に電磁弁取付用ボルト44を挿通し、該電磁弁取付用ボルト44の螺子は、保護膜14を貫通して孔部36に嵌合されたナット38に螺入する。
【0033】
図4に示すように、継手部18は、複数の管継手22と、該管継手22のシール材であるシールリング54からなる。
【0034】
管継手22は、略円筒形状で、その先端部の螺子は、シールリング54を介して基材部12の第3基材12cに設けられた管継手用螺子孔40に、保護膜14を貫通して螺入する。
【0035】
第1の実施の形態に係るマニホールド10aは、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用並びに効果について説明する。
【0036】
先ず、第1の実施の形態に係るマニホールド10aの組立方法について説明する。準備として、複数組の孔部34、36とが形成された第1基材12aと、複数の溝部21及び孔部23が形成された第2基材12bと、複数の管継手用螺子孔40が形成された第3基材12cとを用意する。
【0037】
次に、第1基材12aの上面における孔部36に、ナット38を嵌合する(図4参照)。
【0038】
さらに、第1〜第3基材12a、12b、12cを積層し(図2参照)、図示しない手段によって一体化して固定する。
【0039】
次いで、図示しない加熱手段によって第1〜第3基材12a、12b、12cを加熱することでゴム状弾性域まで軟化させ、さらに、図示しない金型又は圧力流体によって、該第1〜第3基材12a、12b、12cを加圧することで、基材部12として一体的に結合させた後、加圧状態を維持したまま十分な時間をかけて冷却することで固化させる。これによって、基材部12内に複数の流路30が形成される。また、十分な時間をかけて冷却することによって、固化する際の収縮で、基材部12に発生する可能性のあるクラックを、可及的に減少させることができる。
【0040】
次に、フッ素コーティング剤の液層に基材部12全体を浸漬し、該液層から取り出した後、十分な時間をかけて乾燥固化させることで、保護膜14を形成する。フッ素コーティング剤は、化学的に安定した物質であるため、取り扱いが容易であると共に、保護膜14の耐久性が向上する。また、基材部12全体を液層に浸漬することで、例えば、孔部34、36、ナット38、及び管継手用螺子孔40周辺部の如く、基材部12に形成された凹凸部分においても、基材部12の表面全体をピンホールのないように包被することができる。しかも、十分な時間をかけて乾燥固化させることによって、乾燥固化する際の収縮で保護膜14に発生する可能性のあるピンホールやクラックを可及的に回避することができる。特に、保護膜14を有することで、マニホールド10aの使用環境下において、例えば、四塩化炭素や、エタノールや、トルエン、酢酸エチル、酢酸メチル、キシレン、メタノール等を含む有機溶剤であるシンナーのような溶剤と、該基材部12とが接触することを可及的に回避することができ、これによって該基材部12にソルベントクラックを生じることはない。
【0041】
なお、前記工程を複数回繰り返し、より一層確実に基材部12を積層された保護膜14で包被させてもよい。また、保護膜14は、フッ素コーティング剤の液層に浸漬して形成したが、これに限定されず、例えば、フッ素コーティング剤を刷毛塗り又はスプレーすること等で形成してもよく、またフッ素コーティング剤のフィルムシートを基材部12の表面全体に被着させることで形成してもよい。
【0042】
次に、電磁弁取付用ボルト44を、電磁弁20の電磁弁取付用孔部46に挿通させ、さらに、ガスケット42を介して、ナット38と螺合させ、且つ図示しない電磁弁20の圧力流体用流路を孔部34と嵌合させることで、前記電磁弁20を、基材部12を構成する第1基材12aの上面に固着する(図4参照)。また、ガスケット42を、電磁弁20と、保護膜14で包被された基材部12との間に設けることで、該電磁弁20を固着する際に、ナット38周辺部へ付与される応力が減少し、該応力によって該ナット38周辺部の保護膜14及び基材部12にクラックが生じる可能性を可及的に減少させることができる。
【0043】
次いで、管継手22の螺子側の端部にシールリング54を介装して、該螺子を管継手用螺子孔40に形成された螺子溝に螺合させることで、管継手22を基材部12を構成する第3基材12cの下面に装着する(図4参照)。
【0044】
以上のように製造されるマニホールド10aを使用するに際しては、流体が、管継手22へ圧入される。圧入された前記流体は、該管継手22から、管継手用螺子孔40、第2流路30b、孔部23、第1流路30a、孔部34を経て、図示しない電磁弁20内部の圧力流体用流路に至り、一定の圧力を有したまま滞留する。
【0045】
次に、図示しない電源によって、電磁弁部16に通電し、さらに、図示しない外部コントローラから所定の電磁弁20に制御信号を導出することで、該所定の電磁弁20を駆動させる。すなわち、該所定の電磁弁20内部の電磁弁(図示せず)を変位させて、開弁する。
【0046】
従って、一定の圧力を有したまま滞留していた前記流体が、該圧力によって、電磁弁20内部の圧力流体用流路(図示せず)から、孔部34、別の第1流路30a、及び孔部23を経て、前記外部コントローラ所望の別の第2流路30bへと導出する。
【0047】
さらに、前記別の第2流路30bへと導入された前記流体は、該別の第2流路30bと連通状態にある管継手用螺子孔40、及び管継手22を介して、マニホールド10aの外部へと導出される。
【0048】
上述したように、第1の実施の形態に係る非晶性樹脂からなるマニホールド10aによれば、廉価でありながら、基材部12の表面全体が、保護膜14によってピンホールやクラックのないように包被されることによって、該マニホールド10aの使用環境下において、例えば、アクリル樹脂製の該基材部12にソルベントクラックを形成する可能性がある、例えば、シンナーや四塩化炭素やエタノールの如き特定の溶剤と、接触することを可及的に回避させることができる。これによって、マニホールド10aの耐久性、及び該基材部12に形成された流路30の密封性の低下を抑えることができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態に係るマニホールド10bについて説明する。なお、以下の実施の形態に係るマニホールド10b〜10dにおいて、第1の実施の形態のマニホールド10aと同一の構成要素については同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
マニホールド10bは、図5に示すように、マニホールド本体としての基材部12と、複数の電磁弁20を含む電磁弁部16と、複数の管継手22を含む継手部18と、保護ボックス80とを有する。すなわち、第1の実施の形態のマニホールド10aに対して、保護ボックス80を加えた構成となっている。
【0051】
保護ボックス80は、底板82と、保護カバー84とを備え、保護膜14で包被された基材部12及び電磁弁部16を囲繞する大きさを有する。
【0052】
底板82は、例えば、透明な合成樹脂からなる板体であり、基材部12の下面より一回り大きな面を有する。また、底板82には、複数の底板孔部86が設けられる(図6参照)。
【0053】
底板孔部86は、底板82の上下方向両面を直線状に貫通し、管継手22が装着可能な大きさの径を有する。
【0054】
保護カバー84は、例えば、透明な合成樹脂からなり、保護膜14で包被された基材部12及び電磁弁部16を囲繞する大きさを有する。
【0055】
第2の実施の形態に係るマニホールド10bは、基本的には以上のように構成されるものであり、この実施の形態によれば、保護ボックス80が、保護膜14で包被された基材部12及び電磁弁部16を囲繞することで、二重の保護構造となり、マニホールド10bの使用環境下において、例えば、シンナーや四塩化炭素やエタノールのような溶剤と、該基材部12とが接触することを一層確実に回避することができ、これによって該基材部12にソルベントクラックを生じることはない。
【0056】
なお、第2の実施の形態に係るマニホールド10bの保護ボックス80は、保護膜14で包被された基材部12及び電磁弁部16を囲繞するとしたが、保護膜14で包被された基材部12を囲繞していれば足り、電磁弁部16は必ずしも囲繞されていなくてもよい。
【0057】
次に、第3の実施の形態に係るマニホールド10cについて説明する。
【0058】
図7に示すように、保護カバー84には、複数(ここでは2つ)の開口部が設けられ、一方を導入孔(導入路)100、他方を導出孔102(導出路)とする。なお、ここでは開口部を2つとしたが、数はこれに限定されない。
【0059】
導入孔100及び導出孔102は、該導入孔100と該導出孔102との間の距離が可及的に長くなるように設けられる。
【0060】
第3の実施の形態に係るマニホールド10cは、基本的には以上のように構成されるものであるが、その作用並びに効果については以下の通りである。
【0061】
図示しない手段によって、導入孔100から保護ボックス80内の空間に気体、例えば、不活性ガス104を圧入する。圧入された該不活性ガス104は、導出孔102より保護ボックス80の外部へと導出される(図7参照)。
【0062】
導入孔100と導出孔102との間の距離が可及的に長くなるように設けられているため、不活性ガス104は、保護ボックス80内の空間に満遍なく行き渡ることによって、マニホールド10cの使用環境下において、例えば、シンナーや四塩化炭素やエタノールのような溶剤が、保護ボックス80内の空間に滞留することを防止できることで、該溶剤と、基材部12とが接触することを可及的に回避することができ、これによって該基材部12にソルベントクラックを生じることはない。
【0063】
さらに、不活性ガス104を圧入することによって、保護ボックス80内の空間の気圧は、該保護ボックス80外の気圧より高くなる。この場合、不活性ガス104以外の流体が、保護ボックス80内の空間に浸入することを減少させることができる。これによって、前記溶剤と、保護ボックス80内に配設された基材部12とが接触することを可及的に回避させることができ、該基材部12の耐久性、及び該基材部12に形成された流路30の密封性の低下を抑えることができる。
【0064】
次に、第4の実施の形態に係るマニホールド10dについて説明する。
【0065】
基材部12には、図8において上下方向両面を貫通する導入通路(導入路)122が形成され、該基材部12の上面の周縁部に複数箇所(ここでは2箇所)開口している。該導入通路122は、マニホールド10dの種類に応じて、所定の管継手22と連通接続している。なお、ここでは開口箇所を2箇所としたが、数はこれに限定されない。
【0066】
さらに、基材部12には、上下面を貫通する導出通路(導出路)126が形成され、該基材部12の上面の中央部近傍に開口している。該導出通路126は、マニホールド10dの種類に応じて、導入通路122が接続している管継手22とは別の所定の管継手22と連通接続している。なお、ここでは開口箇所を1箇所としたが、数はこれに限定されない。
【0067】
第4の実施の形態に係るマニホールド10dの作用並びに効果は、以下の通りである。
【0068】
図示しない手段によって、所定の管継手22へ気体、例えば、不活性ガス104を圧入する。前記所定の管継手22へ圧入された不活性ガス104は、導入通路122を経て、基材部12の上面の周縁部から、保護ボックス80内の空間へと圧入される。圧入された不活性ガス104は、その圧力で付勢され、保護ボックス80内の空間の上方向端における周縁部まで上昇する。さらに、該不活性ガス104は、保護カバー84と衝突することで、その流通方向が保護ボックス80内の空間の上方向端から中央部方向へ変更される。
【0069】
この際、不活性ガス104が保護ボックス80内の空間に圧入されることによって、該保護ボックス80内の空間の気圧は、該保護ボックス80外の気圧より高くなるため、該不活性ガス104は、基材部12の上方向面の中央部近傍に開口した導出通路126へと導かれ、別の所定の管継手22を経て、保護ボックス80の外部へと導出される(図8参照)。
【0070】
このような不活性ガス104の流れを、保護ボックス80内の空間に発生させることによって、マニホールド10dの使用環境下において、例えば、アクリル樹脂製の該基材部12にソルベントクラックを形成する可能性がある、例えば、シンナーや四塩化炭素やエタノールのような溶剤が、保護ボックス80内の空間に滞留することを防止できることによって、該溶剤と、該基材部12とが接触することを可及的に回避させ、これによって、該基材部12の耐久性、及び該基材部12に形成された流路30の密封性の低下を抑えることができる。
【0071】
上述の説明は、基材部12がアクリル樹脂製であることに基づいて行ったが、これには限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂製、又はポリカーボネート製であってもよく、この場合に、該基材部12にソルベントクラックを形成する可能性がある溶剤は、アクリル樹脂製の場合と同様に、シンナーや四塩化炭素やエタノールであってもよい。
【0072】
以上、本発明について、好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10a〜10d…マニホールド 12…基材部
12a…第1基材 12b…第2基材
12c…第3基材 14…保護膜
16…電磁弁部 18…継手部
20…電磁弁 21、25…溝部
22…管継手 23、34、36…孔部
30…流路 30a…第1流路
30b…第2流路 38…ナット
40…管継手用螺子孔 42…ガスケット
44…電磁弁取付用ボルト 46…電磁弁取付用孔部
54…シールリング 80…保護ボックス
82…底板 84…保護カバー
86…底板孔部 100…導入孔
102…導出孔 104…不活性ガス
122…導入通路 126…導出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通するマニホールドであって、
複数の流路が内部に形成された非晶性樹脂からなる基材部と、
前記基材部に設けられ前記流路への流体の導入及び導出を制御する電磁弁部と、
前記基材部の流路と連通して流体の導入及び導出を行う継手部とを有し、
前記基材部は、保護膜によって包被されている
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項2】
請求項1記載のマニホールドにおいて、
前記マニホールドは、保護ボックスで包被されている
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項3】
請求項2記載のマニホールドにおいて、
前記マニホールドは、前記保護ボックスに導入される不活性ガスで加圧される
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項4】
請求項2又は3記載のマニホールドにおいて、
前記保護ボックスは、流体の導入路と、導出路とを有する
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のマニホールドにおいて、
前記基材部は、アクリル樹脂製である
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のマニホールドにおいて、
前記保護膜は、フッ素コーティング剤で形成されている
ことを特徴とするマニホールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−261558(P2010−261558A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114713(P2009−114713)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】