説明

非架橋性有機媒体中のミクロゲル

【課題】ミクロゲルを特定の粘度の液体有機媒体中に微細に分散させ、新規な用途を提供する。
【解決手段】120℃で30000mPas未満の粘度を有する非架橋性有機媒体及び少なくとも1つのミクロゲルを含む組成物であって、ミクロゲルが80未満の膨潤指数を有し、個々の一次粒子の直径の偏りが250%未満であり、かつ一次粒子が99nm未満の平均粒径を有することを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの特定の非架橋性媒体および少なくとも1つのミクロゲルを含む組成物、その調製の方法、組成物の使用、それらから調製されるミクロゲル含有ポリマー、ゴム、潤滑剤、コーティング等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車タイヤの生産における転がり抵抗を改善するために、最も多様なゴムとの混合物に修飾ゴムゲルを含むゴムゲルを用いることは知られている(例えば、DE4220563、GB−PS1078400、EP405216およびEP854171を参照)。これらの場合、ゴムゲルは常に固体マトリックスに混入されている。
【0003】
最終的に印刷インクを製造するために、微細な形態の印刷インク顔料をそれに適する液体媒体に混入させることも知られている(例えば、EP0953615A2、EP0953615A3を参照)。この場合、100nm程度までの粒径が実現される。
【0004】
分散のためにニーダー、ビーズミル、3本ロールミルまたはホモジナイザー、単軸もしくは他軸スクリュー押出機および/または溶解機のような種々の装置を用いることができる。ホモジナイザーの使用およびその機能態様は、主として乳剤の均質化に関するWilliam D.PandolfeおよびPeder BaekgaardによるAPVホモジナイザーグループのマーケティング研究論文(Marketing Bulletin of APV Homogeniser Group)−「高圧ホモジナイザー処理、製品および適用分野(High−pressure homogenisers processes、product and applications)」に記載されている。
【0005】
1μmより著しく小さい粒径を有する非常に微細に分散したゴムゲル分散系を調製することを目的した液体有機媒体との混合物中の固体成分としてのゴムゲルの使用、およびホモジナイザーによるそれらの均質化は、言及した文書には記載されていない。
【0006】
Chinese Journal of Polymer Science、第20巻、第2号、(2002年)、93〜98頁は、高エネルギー照射により完全に架橋したミクロゲルおよびプラスチックの衝撃強さを増大させるためのそれらの使用を記載している。特定のエポキシ樹脂組成物の調製において、照射架橋カルボキシル末端ニトリル/ブタジエンミクロゲルと架橋性有機媒体であるビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの混合物が中間に存在する。さらなる液体ミクロゲル含有組成物は記載されていない。
【0007】
US20030088036A1は同様に、調製のために照射架橋ミクロゲル粒子を熱硬化性プレポリマーを同様に混合する強化熱硬化性樹脂組成物を開示している(EP1262510A1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第4220563号明細書
【特許文献2】英国特許第1078400号明細書
【特許文献3】欧州特許第405216号明細書
【特許文献4】欧州特許第854171号明細書
【特許文献5】欧州特許第0953615号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0088036号明細書
【特許文献7】欧州特許第1262510号明細書
【特許文献8】独国特許第2910154号明細書
【特許文献9】独国特許第3742180号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】William D.PandolfeおよびPeder BaekgaardによるAPVホモジナイザーグループのマーケティング研究論文(Marketing Bulletin of APV Homogeniser Group)−「高圧ホモジナイザー処理、製品および適用分野(High−pressure homogenisers processes、product and applications)」
【非特許文献2】Chinese Journal of Polymer Science、第20巻、第2号、(2002年)、93〜98頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
DE2910154は、有機溶媒によるゴム粒子の分散を開示している。これらは、溶媒を水性ゴムラテックスに添加し、分散剤を添加して調製される。この明細書は、実際にラテックスから生ずる水を除去する可能性も言及している。しかし、無水分散系は記載されていない。実質的に無水である分散系は、実際上この方法により得ることはできない(同じ出願人のDE−A−3742180の2頁10行における評価も参照)。しかし、これは多くの用途において不利である。言及した特許に記載されている分散系は、水相および有機相の均一な分布を達成するために、必然的に追加の分散剤または乳化剤を含む。しかし、そのような乳化剤または分散剤の存在は、多くの用途において非常に厄介である。記載されているゴム粒子はさらに比較的粗い。
【0011】
DE−A−3742180は、水性ラテックスから同様に調製される液体アミド中のシリコーン含有グラフトポリマーの分散を開示している。しかし、記載されている分散系において、水はおおまかに分離されているにすぎず、完全な分離は困難である。シリコーン含有グラフトポリマーは、さらに粒子が非常に粗い(240nm)。記載されている分散系は、PANフィルムの小繊維形成特性を改善するために用いることができる。しかし、シリコーンのコアとアクリルのシェルを有するそれらの特異的な構造のため、グラフトポリマーは、非相溶性のため潤滑剤における使用が特に不適当である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、ミクロゲルを、例えば、ホモジナイザーを用いて特定の粘度の液体有機媒体中に微細に分布させることが可能であることを今回発見した。有機媒体中のミクロゲルの一次粒子範囲内への分割は、例えば、何らかの用途、例えば、プラスチックへの混入の場合に、ミクロゲルのナノ特性を特に再現性のある方法で使用可能にするための必要条件である。特定のミクロゲルを含む本発明による液体組成物は、ミクロゲル自体を用いて従来実現できなかった多くの新規の用途を開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】均質化バルブの機能の様態
【図2】微分および積分粒径分布−BIS−SUA−SPAにより測定
【図3】微分および積分粒径分布−BIS−SUA−SPAにより測定
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明の1つの実施形態において、達成することができる微細な分布に基づき、本発明による組成物は、例えば、プラスチックおよび潤滑剤に混入させ、その結果として、完全に新しい特性が得られる。したがって、本発明による組成物は、驚くべきことに、市販のグリースと同等の特性(沈降に対する安定性、低油分離、粘稠性等)を示す。しかし、それらは、例えば、せん断安定性(すなわち、60000ストロークで摩砕後に貫入値の変化がほとんどない)およびそうでなければ例えば、PUグリースまたはCa複合グリースのような耐熱性グリースによってのみ達成されるような例外的に高い滴点に関してより有利な特性を有する。さらに、本発明による組成物は、標準的なグリースと完全に異なる、摩擦係数に対して正の作用を示す。
【0015】
本発明によるミクロゲル含有組成物は、例えば、エラストマーPUシステム(冷間注型システムおよび熱間注型システム)、コーティング組成物、あるいは潤滑剤への添加剤等の多数の分野に用いることができる。本発明によるミクロゲル含有組成物において、それ自体では非相溶性である物質が長期貯蔵(6カ月)においてさえも安定な状態に留まっている均一な分布をなしている。
【0016】
P.Poetschkeら、Kautschuk Gummi Kunststoffe、第50巻(11)(1997年)787頁は、例えば、分散相としてのp−フェニレンジアミン誘導体および周囲相としてのTPUのような非相溶性物質の場合には、1.5μmより小さい領域を得ることは不可能であることを示している。
【0017】
本発明のミクロゲル組成物について、そのような小さい分散相が実現されることは驚くべきである。
【0018】
非常に異なるレオロジー特性が測定されたミクロゲル含有組成物が発見された。適切なミクロゲル含有組成物において、驚くべきことに、非常に強い固有粘度またはチキソトロピーが認められたが、ニュートン流体と類似の流動特性も認められた。これは、ミクロゲルにより所望の液体組成物の流動特性を他の特性に加えて、制御するために用いることができる。
【0019】
したがって、本発明は、120℃の温度で30000mPas未満の粘度を有する非架橋性有機媒体(A)および少なくとも1つのミクロゲル(B)を含む組成物を提供する。
【0020】
有機媒体の粘度は1000mPas未満が好ましく、より好ましくは200mPas未満、より好ましくは120℃で100mPas未満、より好ましくは120℃で20mPas未満である。非架橋性有機媒体(A)の粘度は、DIN53018に従って120℃でコーン−プレート測定システムを用いて5s−1の速度で測定する。
【0021】
ミクロゲル(B)
本発明による組成物に用いるミクロゲル(B)は、架橋ミクロゲルである。好ましい実施形態において、それは高エネルギー照射によって架橋するミクロゲルでない。高エネルギー照射は、この場合有利には0.1μm未満の波長を有する電磁照射を意味する。高エネルギー照射によって架橋するミクロゲルは工業規模で調製することは実際上できないので、例えば、Chinese Journal of Polymer Science、第20巻、第2号、(2002年)、93〜98頁に記載されている高エネルギー照射によって架橋したミクロゲルの使用は不利である。放射性コバルトのような照射源からの高エネルギー照射の使用は、さらに重大な安全上の問題を伴う。照射架橋ミクロゲルは通常、完全に照射架橋ミクロゲルであるので、本発明による組成物の例えばプラスチックへの混入時のマトリックス相から分散相へのモジュラスの変化は直接的である。その結果、急激な応力下ではマトリックス相と分散相との間に引裂き効果が発生し、それにより、本発明による組成物を用いて調製したミクロゲル含有プラスチックの機械的特性、膨潤挙動および応力腐食割れ等に障害が生ずる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、ミクロゲル(B)の一次粒子は、ほぼ球形の形状を有する。DIN53206:1992−08によれば、一次粒子は、適切な物理的な方法(電子顕微鏡)により個別のものとして検出することができる干渉性の相中に分散したミクロゲル粒子である(例えば、Rompp Lexikon、Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998を参照)。「ほぼ球形」の形状は、ミクロゲルの分散一次粒子が、例えば、電子顕微鏡を用いて組成物を見たとき、検出可能な円形の像を実質的に生じさせることを意味する。ミクロゲルは本発明による組成物のさらなる処理中にそれらの形状または形態を実質的に変化しないので、上文および下文の陳述は、例えば、プラスチック、コーティング組成物、潤滑剤等の本発明による組成物を用いて得られるミクロゲル含有組成物にも同様に適用される。
【0023】
本発明による組成物に含まれるミクロゲル(B)の一次粒子において、
[(d1−d2)/d2]×100
[式中、d1およびd2は一次粒子の任意の2つの所望の直径であり、d1>d2である]のように定義される個々の一次粒子の直径の偏りは、好ましくは250%未満、より好ましくは100%未満、より好ましくは80%、より好ましくは50%未満である。
【0024】
ミクロゲルの一次粒子の好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%が250%未満、より好ましくは100%未満、より好ましくは80%未満、より好ましくは50%未満の
[(d1−d2)/d2]×100
[式中、d1およびd2は一次粒子の任意の2つの直径であり、d1>d2である]のように定義される直径の偏りを有する。
【0025】
個々の粒子の直径の上記の偏りは、次の方法により測定される。本発明による固化した組成物の薄切片を最初に作製する。次いで、透過型電子顕微鏡写真を例えば、10000倍または200000倍の倍率で得る。833.7nm×828.8nmの範囲で、最大および最小直径を10個のミクロゲル一次粒子におけるd1およびd2として測定する。測定されたミクロゲル一次粒子の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%において、上で定義した偏りが各場合に250%未満、より好ましくは100%未満、より好ましくは80%、より好ましくは50%未満である場合、ミクロゲル一次粒子は上で定義した偏りの特徴を有する。
【0026】
組成物中のミクロゲルの濃度が非常に高いため、可視ミクロゲル一次粒子が著しく重複している場合、測定試料の事前の適切な希釈によって、評価可能性を改善することができる。
【0027】
本発明による組成物において、ミクロゲル(B)の一次粒子は、好ましくは5〜500nm、より好ましくは20〜400nm、より好ましくは20〜300nm、より好ましくは20〜250nm、より好ましくは20〜99nm、より好ましくは40〜80nmの平均粒径を有する(DIN53206による直径値)。乳化重合による特に微細なミクロゲルの調製は、それ自体知られている方法で反応パラメーターを制御することによって行われる(例えば、H.G.Elias、Makromolekuele、第2巻、Technologie、第5版、1992年、99頁以下を参照)。
【0028】
ミクロゲルの形態は本発明による組成物のさらなる処理中に実質的に変化しないので、分散一次粒子の平均粒径は、ミクロゲル含有プラスチック、潤滑剤、コーティング等の本発明による組成物を用いて得られるさらなる処理生成物中の分散一次粒子の平均粒径と実質的に一致する。これは、本発明による組成物の特有の利点である。定義された形態のミクロゲルを含み、顧客が所望の用途においてさらに容易に処理することができる、ある程度まで特注の液体貯蔵安定性ミクロゲル製剤を顧客に提供することができる。費用がかかる分散の前に、ミクロゲルの均質化または均一調製はもはや必要でなく、この理由のため、そのようなミクロゲルは、それらの使用が従来非常に費用がかかると思われていた分野における使用も見いだすと予想することができる。
【0029】
本発明による組成物において、ミクロゲル(B)は、少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%の23℃でトルエンに不溶である部分(ゲル含量)を含むことが有利である。
【0030】
トルエンに不溶である含量は、23℃のトルエン中で測定する。この方法において、250mgのミクロゲルを23℃の20mlのトルエン中で振とうしながら24時間膨潤させる。20000rpmで遠心分離した後、不溶部分を分離し、乾燥する。ゲル含量は、乾燥残留物と秤取量との比率により求め、重量パーセントとして表す。
【0031】
本発明による組成物において、ミクロゲル(B)は、23℃でトルエン中、有利には約80未満、より好ましくは60未満、より好ましくは40未満の膨潤指数を有する。したがって、ミクロゲルの膨潤指数(Qi)は、特に好ましくは1〜15および1〜10であり得る。膨潤指数は、23℃で24時間トルエン中で膨潤させた溶媒含有ミクロゲルの重量(20000rpmで遠心分離した後の)と乾燥ミクロゲルの重量から次のように計算する。
【0032】
Qi=ミクロゲルの湿重量/ミクロゲルの乾燥重量
膨潤指数を測定するために、250mgのミクロゲルを25mlのトルエン中で振とうしながら24時間膨潤させる。遠心分離によりゲルを除去し、重量を測定し、次いで、恒量に達するまで70℃で乾燥し、次いで、再び重量を測定する。
【0033】
本発明による組成物において、ミクロゲル(B)は、有利には−100℃〜+120℃、より好ましくは−100℃〜+100℃、より好ましくは−80℃〜+80℃のガラス転移温度を有する。まれな場合、それらの高度の架橋のためガラス転移温度を有さないミクロゲルを用いることも可能である。
【0034】
さらに、本発明による組成物に用いるミクロゲル(B)は、5℃を超える、好ましくは10℃を超える、より好ましくは20℃を超えるガラス転移範囲を有することが好ましい。そのようなガラス転移範囲を有するミクロゲルは、通常、完全に均一に照射架橋したミクロゲルと異なり、完全に均一には架橋していない。これは、例えば本発明による組成物から調製されるプラスチックのミクロゲル含有組成物におけるマトリックス相から分散相へのモジュラスの変化が直接的でないことを意味する。その結果、これらの組成物への急激な応力下ではマトリックス相と分散相との間の引裂き効果は発生せず、それにより、機械的特性、膨潤特性および応力腐食割れ等は有利な影響を受ける。
【0035】
ミクロゲルのガラス転移温度(Tg)およびガラス転移範囲(ΔTg)は、以下の条件下で示差熱分析(DTA、また示差走査熱量測定(DSC))により測定する。TgおよびΔTgを測定するために、2つの冷却/加熱サイクルを行う。TgおよびΔTgは、2回目の加熱サイクルにおいて測定する。測定のために、10〜12mgの選択したマイクログラムをPerkin−Elmer製のDSC試料容器(標準アルミニウムパン)に入れる。最初のDSCサイクルは、最初に試料を液体窒素で−100℃に冷却し、次いで、試料を20K/分の速度で+150℃まで加熱して行う。2回目のDSCサイクルは、試料の温度が+150℃に到達したとき直ちに試料を冷却することにより開始する。冷却は、約320K/分の速度で行う。2回目の加熱サイクルにおいて、最初のサイクルと同様に、試料を再び+150℃に加熱する。2回目のサイクルにおける加熱速度は再び20K/分である。TgおよびΔTgは、2回目の加熱操作のDSC曲線に基づき図上で求める。この目的のために、3本の直線をDSC曲線上に引く。第1の直線はTgより下のDSC曲線の曲線部分に引き、第2の直線は変曲点を含むTgを通る曲線枝上に引き、第3の直線はTgより上のDSC曲線の曲線枝上に引く。この方法で2つの交点を有する3本の直線が得られる。2つの交点は、それぞれ特性温度によって特徴づけられる。ガラス転移温度Tgはこれらの2つの温度の平均値として得られ、ガラス転移範囲ΔTgは2つの温度の差から得られる。
【0036】
本発明による組成物に含まれ、好ましくは高エネルギー照射によって架橋されていないミクロゲル(B)は、それ自体知られている方法により調製することができる(例えば、EP−A−405216、EP−A−854171、DE−A4220563、GB−PS1078400、DE19701489.5、DE19701488.7、DE19834804.5、DE19834803.7、DE19834802.9、DE19929347.3、DE19939865.8、DE19942620.1、DE19942614.7、DE10021070.8、DE10038488.9、DE10039749.2、DE10052287.4、DE10056311.2およびDE10061174.5を参照)。二重結合含有ゴムとの混合物におけるCR、BRおよびNBRミクロゲルの使用が特許/特許出願EP−A405216、DE−A4220563およびGB−PS1078400において請求されている。DE19701489.5は、NR、SBRおよびBRのような二重結合含有ゴムとの混合物における後に修飾されるミクロゲルの使用を記載している。
【0037】
ミクロゲルは、特に以下のゴムを架橋させることによって得られるゴム粒子を意味すると有利に理解される。
【0038】
【表1】

【0039】
非架橋ミクロゲル出発生成物の調製は、以下の方法により有利に行うことができる。
1.乳化重合
2.変形形態1によって得ることができないゴムの溶液重合
3.例えば、天然ゴムラテックスのような天然に存在するラテックスをさらに用いることができる。
【0040】
本発明による組成物において、用いるミクロゲル(B)は、好ましくは、乳化重合と架橋により得ることができるものである。
【0041】
フリーラジカル重合を受けることができる以下のモノマーは、例えば、本発明により用いられるミクロゲルの乳化重合による調製に用いられる。すなわち、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、アクリルおよびメタクリル酸のエステル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン、ならびに例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の二重結合を含むカルボン酸、例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アミン官能基化(メタ)アクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素およびN−アリルチオ尿素等の二重結合を含むヒドロキシ化合物、ならびに2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレートおよび2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等の第二級アミノ(メタ)アクリル酸エステル。ゴムゲルの架橋は、架橋作用を有する多官能化合物との共重合による等の乳化重合中に直接、または下記のように後続の架橋により達成することができる。直接架橋が本発明の好ましい実施形態である。好ましい多官能コモノマーは、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、1,2−ポリブタジエン、N,N−m−フェニレンマレイミド、2,4−トルイレンビス(マレイミド)および/またはトリメリト酸トリアリル等の少なくとも2つ、好ましくは2〜4つの共重合性C=C二重結合を有する化合物である。さらに可能な化合物は、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、2〜20個、好ましくは2〜8個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールおよびソルビトール等の多価、好ましくは2〜4価C2〜C10アリコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルと、脂肪族ジおよびポリオールとマレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸からの不飽和ポリエステルである。
【0042】
乳化重合中にゴムミクロゲルを生成する架橋も高転化率まで重合を継続することにより、または高内部転化率を伴う重合によるモノマー供給法により行わせることができる。調節剤の非存在下での乳化重合を行うことも他の可能性である。
【0043】
乳化重合後の非架橋または弱く架橋したミクロゲル出発物質の架橋のために、乳化重合で得られるラテックスを用いることが最も好ましい。原則として、この方法は、他の方法、例えば、再溶解により得られる非水ポリマー分散系についても用いることができる。天然ゴムラテックスもこの方法で架橋させることができる。
【0044】
架橋作用を有する適切な化学物質は、例えば、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン、3,2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等の有機過酸化物、ならびに、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンニトリル等の有機アゾ化合物、ならびに、ジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトへキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジン等のジおよびポリメルカプト化合物、ならびにビスクロロエチルホルマールとポリスルフィドナトリウムとのメルカプト末端反応生成物等のメルカプト末端ポリスルフィドゴムである。
【0045】
後架橋を行うための最適温度は架橋剤の反応性に当然依存し、室温から約180℃までの温度で、場合によって、高圧下で行わせることができる(これに関して、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第4版、第14巻/2、848頁を参照)。特に好ましい架橋剤は過酸化物である。
【0046】
ミクロゲルを生成させるためのC=C二重結合を含むゴムの架橋は、US5302696またはUS5442009に記載されているようにヒドラジン、または場合によって他の水素化剤、例えば、有機金属ヒドリド錯体によるC=C二重結合の同時の部分的もしくは完全な水素化とともに分散系または乳濁液中で行わせることもできる。
【0047】
集合による粒子の拡大は、後架橋の前、途上または後に場合によって行うことができる。
【0048】
本発明により好ましくは用いられる、高エネルギー照射の使用を伴わない調製方法において、上記の利点を示す可能性がある不完全に均一に架橋したミクロゲルが常に得られる。
【0049】
溶液重合により調製されるゴムは、ミクロゲルの調製の出発材料とすることもできる。これらの場合、適切な有機溶媒中のこれらのゴムの溶液を出発材料として用いる。
【0050】
所望のサイズのミクロゲルは、適切な粒径範囲のゴムの分散系が得られるように、適切な表面活性を有する補助物質、例えば、界面活性剤を場合によって加えた液体媒体中、好ましくは水中ゴム溶液を適切な装置により混合して得られる。分散溶液ゴムの架橋の手順は、乳化ポリマーの後続架橋について上で述べたとおりである。適切な架橋剤は上記の化合物であり、分散系の調製に用いた溶媒を架橋の前に場合によって例えば、蒸留により除去することが可能である。
【0051】
本発明による組成物の調製に用いることができるミクロゲルは、特に表面に反応性基を実質的に含まない未修飾ミクロゲルと、特に表面において官能基により修飾されたミクロゲルとの両方を用いることができる。後者のミクロゲルは、既に架橋したミクロゲルとC=C二重結合に対して反応性である化学物質との化学反応により調製することができる。これらの反応性化学物質は、特に、例えば、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトリル等の極性基、また、例えば、メルカプト、ジチオカルバメート、ポリスルフィド、キサントゲネート、チオベンズチアゾールおよび/またはジチオリン酸基といった硫黄含有基、および/または不飽和ジカルボン酸基によりミクロゲルに化学的に結合することができる化合物である。これは、N,N’−m−フェニレンジアミンについても当てはまる。ミクロゲルを修飾する目的は、調製中の良好な分布能力ならびに良好なカップリングを達成するために、本発明による組成物をミクロゲル混入後のマトリックスの調製に用いる場合、または本発明による組成物をマトリックスへの混入のために用いる場合に、ミクロゲルの適合性を改善することである。
【0052】
特に好ましい修飾の方法は、機能モノマーによるミクロゲルのグラフティングおよび低分子量試薬との反応である。
【0053】
機能モノマーによるミクロゲルのグラフティングの場合、フリーラジカル乳化重合の条件下で、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキブチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素およびN−アリルチオ尿素等の極性モノマー、ならびに2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレートおよび2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等の第二級アミノ(メタ)アクリル酸エステルと反応する水性ミクロゲル分散系を出発物質として用いることが有利である。この方法で、コア/シェル形態を有するミクロゲルが得られる。この場合、シェルはマトリックスと高度に適合性であるべきである。修飾段階に用いるモノマーが未修飾ミクロゲル上にできる限り定量的にグラフトされることが望ましい。ミクロゲルの架橋が完了する前に、機能モノマーを計量することが有利である。
【0054】
非水系におけるミクロゲルのグラフティングも原則として考えられ、イオン重合法によるモノマーによる修飾もこの方法で可能になる。
【0055】
低分子量試薬によるミクロゲルの表面修飾のために次の試薬が特に可能である。すなわち、元素硫黄、硫化水素および/または1,2−ジメルカプトエタンもしくは1,6−ジメルカプトヘキサン等のアルキルポリメルカプタン、さらに、ジメチルジチオカルバメートおよび/またはジベンジルジチオカルバメートのアルカリ金属塩等のジアルキルおよびジアルキルアリールジチオカルバメート、さらに、メチルキサントゲン酸カリウムおよびイソプロピルキサントゲン酸ナトリウム等のアルキルおよびアリールキサントゲン酸塩、ならびにジブチルジチオリン酸およびジオクチルジチオリン酸ならびにドデシルジチオリン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩との反応。言及した反応は、硫黄の存在下で有利に行うこともでき、硫黄はともに取り込まれて、ポリスルフィド結合が形成される。この化合物の添加のために、有機および無機過酸化物のようなフリーラジカルイニシエータおよび/またはアゾイニシエータを添加することができる。
【0056】
例えば、オゾン分解ならびに塩素、臭素およびヨウ素によるハロゲン化等による二重結合を含むミクロゲルの修飾も可能である。例えば、エポキシ化ミクロゲルからのヒドロキシル基により修飾されたミクロゲルの調製のような修飾ミクロゲルのさらなる反応もミクロゲルの化学修飾であると理解される。
【0057】
好ましい実施形態において、ミクロゲルをヒドロキシル基により、特にその表面においても修飾する。ミクロゲルのヒドロキシル基含量は、DIN53240に準じた無水酢酸との反応とそれにより遊離した酢酸のKOHによる滴定により、mgKOH/gポリマーの次元を有するヒドロキシル数として測定する。ミクロゲルのヒドロキシル数は、好ましくは0.1〜100、より好ましくは0.5〜50mgKOH/gポリマーである。
【0058】
用いる修飾試薬の量は、その活性と個々の場合になされる要求によって決まり、用いるゴムミクロゲルの総量に基づき0.05〜30重量%の範囲にあり、ゴムゲルの総量に基づき0.5〜10重量%が特に好ましい。
【0059】
修飾反応は、0〜180℃、好ましくは20〜95℃の温度で、場合によって1〜30バールの圧力下で行うことができる。修飾は、物質中ゴムミクロゲル上で、またはそれらの分散系の形態で行うことができ、後者の場合に反応媒体として不活性有機溶媒または水も用いることが可能である。修飾は、架橋ゴムの水性分散系中で行うことが特に好ましい。
【0060】
未修飾ミクロゲルの使用は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンならびにスチレン、ブタジエンおよびイソプレンに基づくブロックコポリマー(SBR、SIR)および水素化イソプレン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)ならびに通常のTPE−OsおよびTPE−Vs等の非極性ゴムまたは非極性熱可塑性プラスチック材料への混入のために用いられる本発明による組成物の場合に特に好ましい。
【0061】
修飾ミクロゲルの使用は、例えば、PA、TPE−A、PU、TPE−U、PC、PET、PBT、POM、PMMA、PVC、ABS、PTFE、PVDF等の極性ゴムまたは極性熱可塑性プラスチック材料(A)への混入のために用いられる本発明による組成物の場合に特に好ましい。
【0062】
調製されるミクロゲルの平均直径は、例えば、すべてのミクロゲル粒子の少なくとも75%が0.095μm〜0.105μmのサイズである粒径分布が達成されるように、例えば、0.1μm(100nm)±0.01μm(10nm)までの高い精度で調節することができる。特に5〜500nmの範囲の他の直径のミクロゲルを同じ精度で(すべての粒子の少なくとも75%が積分粒径分布曲線(光散乱により測定)の極大のまわりの上下±10%の範囲にある)製造し、用いることができる。その結果、本発明による組成物中に分散したミクロゲルの形態を実際上「ピンポイント精度」で調節することができ、本発明による組成物および例えば、それから製造されるプラスチックの特性を調節することができる。
【0063】
好ましくはBR、SBR、NBR、SNBRまたはアクリロニトリルまたはABRに基づく、そのように調製されるミクロゲルは、例えば、蒸発、凝析、別のラテックスポリマーとの共凝析、凍結凝析(US−PS2187146を参照)または噴霧乾燥により後処理することができる。噴霧乾燥により後処理する場合、例えば、CaCOまたはシリカ等の市販の流動助剤も加えることもできる。
【0064】
本発明による組成物の好ましい実施形態において、ミクロゲル(B)はゴムベースである。
【0065】
本発明による組成物の好ましい実施形態において、ミクロゲル(B)はC=C二重結合に対して反応性の官能基で修飾されている。
【0066】
好ましい実施形態において、ミクロゲル(B)は23℃でトルエン中、1〜15の膨潤指数を有する。
【0067】
本発明による組成物は、20℃でのDIN53018に準拠したコーン−プレート粘度計により測定される5s−1の速度での好ましくは2mPas〜50000000mPas、より好ましくは50mPas〜3000000mPasの粘度を有する。
【0068】
有機非架橋性媒体(A)
本発明による組成物は、120℃の温度で30000mPas未満、より好ましくは1000mPas未満、より好ましくは200mPas未満、より好ましくは100mPas未満、より好ましくは20mPas未満の粘度を有する少なくとも1つの有機媒体(A)を含む。
【0069】
そのような媒体は、室温(20℃)で液体ないし固体、好ましくは液体または流動性である。
【0070】
本発明の範囲内の有機媒体は、媒体が少なくとも1つの炭素原子を含むことを意味する。
【0071】
本発明の文脈における非架橋性媒体は、特に、フリーラジカルにより、UV光線により、熱によりかつ/または通常の態様でのオリゴマーもしくはポリマーの生成を伴う付加架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、ポリアミン、酸無水物)等との重付加もしくは重縮合により、通常の態様で架橋もしくは重合する通常のモノマーもしくはプレポリマーのようなヘテロ原子またはC=C基を含む官能基を介して架橋させることができる基を含まない媒体を特に意味すると理解される。本発明によれば、用いることができる有機非架橋性媒体はまた、実際に例えば、特定の含量の不飽和結合(特定のポリエステル油、菜種油等)またはヒドロキシル基(ポリエーテル)を含むが、架橋または重合して通常の態様でオリゴマーもしくはポリマーを生成しない媒体である。非架橋性媒体はまた特に、特にDIN55945による溶媒である。
【0072】
本発明の範囲内の非架橋性有機媒体(A)は、室温(20℃)で液体であり、特に炭化水素(塩素、フッ素等のハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、カルボキシル、カルボニル、アセトまたはアミドから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換することができる1〜200個の炭素原子を有する直鎖、分枝、環状、飽和、不飽和および/または芳香族炭化水素)、合成炭化水素、ポリエーテル油、エステル油、リン酸エステル、ケイ素含有油およびハロ炭化水素またはハロ炭素である非架橋媒体であることが好ましい(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemier、Verlag Chemie Weinheim、第20巻、(1981年)457頁以下参照、504頁、507以下参照、517/518頁、524頁を参照)。これらの非架橋性有機媒体(A)は特に、40℃で2〜1500mm/s(cSt)の粘度により区別される。非架橋性有機媒体(A)は、室温(20℃)で液体であり、特に、キシレン、溶媒ナフサ、メチルエチルケトン、酢酸メトキシプロピル、N−メチルピロリドンおよびジメチルスルホキシド等のDIN55945による溶媒である非架橋性有機媒体である。
【0073】
合成炭化水素は、オレフィンの重合、オレフィンもしくはクロロパラフィンと芳香族化合物との縮合またはクロロパラフィンの脱塩素化縮合によって得られる。ポリマー油の例は、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、ポリブテン、高級オレフィンおよびアルキル芳香族化合物のポリマーである。エチレンポリマーは、400〜2000g/モルの分子量を有する。ポリブテンは、300〜1500g/モルの分子量を有する。
【0074】
ポリエーテル油の場合、脂肪族ポリエーテル油、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレンおよびポリプロピレングリコール、そのコポリマー、それらのモノおよびジエーテルおよびエステルエーテルおよびジエステル、テトラヒドロフランポリマー油、ペルフルオロポリアルキルエーテルおよびポリフェニルエーテルの間の区別をする。ペルフルオロポリアルキルエーテルは、1000〜10000g/モルの分子量を有する。脂肪族ポリエーテル油は、38℃で8〜19500mm/sの粘度を有する。
【0075】
ポリフェニルエーテルは、アルカリ金属フェノラートとハロベンゼンとの縮合により調製される。ジフェニルエーテルおよびそのアルキル誘導体も用いられる。
【0076】
エステル油の例は、アジピン酸、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)およびセバシン酸もしくはアジピン酸ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)ならびにオレイン酸TMPのような天然に存在する脂肪酸と単もしくは多官能性アルコールとのエステルである。フッ素含有エステル油は、さらなるクラスを構成する。リン酸エステルの場合、リン酸トリアリール、トリアルキルおよびアルキルアリールの間の区別をする。例は、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)およびビス(2−エチルヘキシル)フェニルである。
【0077】
ケイ素含有油は、シリコーン油(アルキルおよびアリールシロキサン系列のポリマー)およびシリケートである。
【0078】
再生可能な非架橋性有機媒体は、菜種油およびひまわり油である。
【0079】
ハロ炭化水素またはハロ炭素としては、クロロトリフルオロエチレンポリマー油およびヘキサフルオロベンゼン等の塩素化パラフィン等がある。
【0080】
DIN55945による(非反応性)溶媒は、ヘキサン、指定の沸点範囲のベンジン、ホワイトスピリット、キシレン、溶媒ナフサ、バルサムテレビン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、酢酸ブチル、酢酸1−メトキシプロピル、酢酸ブチルグリコール、酢酸エチルジグリコールおよびN−メチルピロリドン(Brock、Thomas、Groteklaes、Michael、Mischke、Peter、Lehrbuch der Lacktechnologie、Curt R. Vincentz Verlag Hannover、(1998年)93頁以後参照)。
【0081】
特に好ましい非架橋性媒体としては、ポリエーテル、例えば、Baylube 68CL、ナフテン油、例えば、Nynas T110、パラフィン系高度精製油、例えば、Shell Catenex S932、エステル油、例えば、Methyl Ester SUおよび再生可能な原材料に基づく油、例えば、精製菜種油等がある。
【0082】
特に好ましい非架橋性媒体(A)は、大クラスの炭化水素、ポリエーテル油およびDIN55945による溶媒である。
【0083】
本発明による組成物は、組成物の総量に基づき、好ましくは0.5〜90重量%、より好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜3重量%のミクロゲル(B)を含む。
【0084】
本発明による組成物はさらに、好ましくは10〜99.5重量%、より好ましくは40〜97重量%、より好ましくは50〜95重量%、さらにより好ましくは60〜95重量%の有機媒体(A)を含む。
【0085】
本発明による組成物は、好ましくは非架橋性有機媒体(A)およびミクロゲル(B)ならびに場合によって下記のさらなる成分を含む。水の存在は好ましくなく、本発明による組成物は、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の水を含む。水の存在は、排除することがより好ましい(<0.1重量%)。後者が調製のために本発明による組成物に一般的に当てはまる。
【0086】
本発明による組成物は、充填剤、顔料ならびに分散助剤、脱気剤、流動助剤、流動促進剤、物質の濡れのための補助物質、沈降防止剤、物質の濡れを調節または伝導性を調節するための補助物質、色調の安定性、光沢および浮きまだらを調節するための補助物質、酸化防止剤、流動点降下剤、高圧添加剤、泡防止剤、乳化破壊剤、摩耗防止剤、防食剤、非鉄金属不活性化剤、摩擦係数調節剤等の添加剤をさらに含んでいてよい。
【0087】
言及した添加剤は、特に、本発明による組成物中に特に均一に混入させることができ、ひいては、ポリマー組成物、潤滑剤等のそれから調製される製品の改善をもたらす。
【0088】
非架橋性媒体(A)を含む本発明による組成物およびそれらから調製されるミクロゲル含有プラスチックの調製に特に適する顔料および充填剤は、例えば、無機および有機顔料、カオリン、タルク等のシリケート様充填剤、炭酸カルシウムおよびドロマイト等の炭酸塩、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム等の金属酸化物、高度に分散したシリカ(沈殿シリカおよび熱的手段により製造されたシリカ)、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、ガラス繊維およびガラス繊維製品(スラット、糸またはガラスマイクロビーズ)、炭素繊維、熱可塑性プラスチック繊維(ポリアミド、ポリエステル、アラミド)、ポリクロロプレンおよび/またはポリブタジエンに基づくゴムゲル、あるいは、また、高度の架橋および5〜1000nmの粒径を有する前述のすべての他のゲル粒子である。
【0089】
言及した充填剤は、単独または混合物として用いることができる。該方法の特に好ましい実施形態において、0.5〜3.0重量部のゴムゲル(B)、ならびに場合によって0.1〜40重量部の充填剤、および30〜99.5重量部の液体非架橋性媒体(A)を本発明による組成物の調製に用いる。
【0090】
本発明による組成物は、老化防止剤、熱安定化剤、光安定化剤、抗オゾン化物質、加工助剤、可塑剤、粘着性付与剤、発泡剤、染料、ワックス、増量剤、有機酸、および、例えば、トリメトキシシラン、ポリエチレングリコール等の充填剤活性化剤、または述べた産業において知られているその他の物質等の補助物質をさらに含むことができる。
【0091】
補助物質は、意図する用途に特に依存する通常の量で用いられる。通常の量は、例えば、用いる液体媒体(A)および用いるゴムゲル(B)の量に基づき、0.1〜50重量%の量である。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、120℃の温度で30000mPas未満の粘度を有する少なくとも1つの非架橋性有機媒体(A)と高エネルギー照射により架橋されない少なくとも1つの乾燥ミクロゲル粉末(B)(揮発性部分の含量が好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満(成分(A)と(B)を混合するときミクロゲルラテックスを用いない))とをホモジナイザー、ビーズミル、3本ロールミル、単軸型または多軸型スクリュー押出機、ニーダーおよび/または溶解機により、好ましくはホモジナイザー、ビーズミルまたは3本ロールミルにより混合することによって調製する。
【0093】
調製する組成物の粘度に関して、好ましくは極めて高度に粘稠な(ほぼ固体から固体)組成物のみを使用することができるニーダーが最も限定的である。すなわち、それは、特別な場合にのみ用いることができる。
【0094】
ビーズミルの欠点は、粘度範囲が比較的限定されていること(薄い組成物への傾向)、洗浄の経費が高いこと、用いることができる組成物の製品切替えの経費が高いこととボールおよび粉砕装置の摩耗である。
【0095】
本発明による組成物の均質化は、ホモジナイザーまたは3本ロールミルによって行うことが特に好ましい。3本ロールミルの欠点は、粘度範囲が比較的限定されていること(非常に濃い組成物への傾向)、処理能力が低いことと方法が閉鎖式でないこと(労働安全が不十分)である。したがって、本発明による組成物の均質化は、ホモジナイザーによって行うことが非常に好ましい。ホモジナイザーは、希薄および濃厚組成物を高い処理能力(高い柔軟性)で処理することを可能にする。製品切替えは、比較的迅速で、問題を伴わない。
【0096】
ミクロゲル(B)を非架橋性有機媒体中に分散させることができることは、驚くべきことであり、かつ新しいことである。一次粒子まで分散させることに成功したことは特に驚くべきことである(実施例を参照)。
【0097】
液体媒体(A)中のミクロゲル(B)の分散は、ホモジナイザーにおける均質化バルブ内で行われる(図1を参照)。
【0098】
本発明により好ましくは用いられる方法において、塊状体が凝集体および/または一次粒子に粉砕される。塊状体は、分散中に一次粒子の大きさの変化が起こることなく物理的に分離できる単位である。
【0099】
均質化すべき製品は、低速度で均質化バルブに入り、均質化ギャップ中で高速度に加速される。分散は、主として乱れとキャビテーションの結果として、ギャップの後ろで起こる(William D.Pandolfe、Peder Baekgaard、Marketing Bulletin of APV Homogeniser Group−「High−perssure homogenisers processes、product and applications」)。
【0100】
ホモジナイザーへの導入時の本発明による組成物の温度は、有利には−40〜140℃、好ましくは20〜80℃である。
【0101】
均質化に供する本発明による組成物は、20〜4000バール、好ましくは100〜4000バール、好ましくは200〜4000バール、好ましくは200〜2000バール、非常に好ましくは500〜1500バールの圧力の装置中で均質化することが好ましい。通過回数は、所望の分散の質によって決まり、1〜20回、好ましくは1〜10回、より好ましくは1〜4回に変化し得る。
【0102】
本発明により調製される組成物は、特に微細な粒子の分布を有し、これは、特にホモジナイザーにより達成され、液体媒体と得られる組成物の多様な粘度および必要な温度に関する方法の柔軟性ならびに分散の質の点でも極めて有利である。
【0103】
本発明はさらに、上で説明したように、ミクロゲル含有ポリマーおよびプラスチックの調製のための本発明による組成物の使用に関する。
【0104】
本発明による組成物を熱可塑性ポリマーに混入させる場合、全く驚くべきことに、熱可塑性エラストマーのように挙動するミクロゲル含有ポリマーが得られることが見いだされる。
【0105】
本発明はさらに、通常の方法によりそれから製造される成形品およびコーティングにも関する。
【0106】
本発明は、以下の実施例に関連してより詳細に説明する。本発明は、もちろんこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0107】
Nynas T110中SBRゲル
【0108】
以下に述べる実施例1において、構造粘性、チキソトロピーおよびほぼニュートン流動特性のような特有なレオロジー特性を示す本発明による組成物がSBRに基づくミクロゲルを用いて得られることが示されている。
【0109】
機能および/またはレオロジー添加物としての本発明による組成物の使用は、とりわけこのことによっている。粘度にほとんど影響を有さない、すなわち、第一近似でニュートン流動特性を示すミクロゲルは、ゴムまたはプラスチックにおける本発明による混合物の使用の有利な前提条件を有する。粘度に著しい影響を及ぼす、すなわち、構造粘性またはチキソトロピー流動特性を示すミクロゲルは、グリースにおける本発明による混合物の使用に特に適している。
【0110】
組成物を以下の表に示す。
1.Nynas T110 80%
2.Micromorph 1Pまたは5P 20%
合計 100%
【0111】
Nynas T110は、Nynas Naphthenics AB製の水素化ナフテン系油である。
【0112】
Micromorph 5Pは、RheinChemie Rheinau GmbH製の4のOH価を有する架橋ゴムゲルである。Micromorph 5Pは、40重量%のスチレン、57.5重量%のブタジエンおよび2.5重量%のジクミルペルオキシドを含む。
【0113】
Micromorph 1Pは、RheinChemie Rheinau GmbH製のSBRに基づく架橋表面修飾ゴムゲルである。Micromorph 1Pは、80重量%のスチレン、12重量%のブタジエン、5重量%のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)および3重量%のヒドロキシメタクリレート(HEMA)を含む。
SBRゲルの特性データを表1に要約する。
【0114】
【表2】

【0115】
表中の略語は以下の意味を有する。
DCP:ジクミルペルオキシド
50:直径d50はDIN53206に従って平均値と定義される。この場合、それはラテックス中の粒子の平均粒径である。ラテックス粒子の粒径は、ここでは超遠心分離により測定した(W.Scholtan、H,Lange、「Bestimmung der Teilchengroessenverteilung von Latices mit der Ultrazentrifuge」、Kolloid−Zeitschrift und Zeitschrift fuer Polymere(1972年)第250巻、第8刷)。ミクロゲル粒子の粒径は本発明による組成物の調製中に変化しないので、ラテックス中および本発明による組成物中の一次粒子の直径値は事実上同じである。
【0116】
Tg:ガラス転移温度
TgおよびΔTgの測定のために、Perkin−Elmer製のDSC−2装置を用いる。
【0117】
膨潤指数QI
膨潤指数QIは以下のように求めた。
膨潤指数は、23°で24時間トルエン中で膨潤させた溶媒を含むミクロゲルの重量と乾燥ミクロゲルの重量から次のように計算する。
【0118】
Qi=ミクロゲルの湿重量/ミクロゲルの乾燥重量
膨潤指数を求めるために、250mgのミクロゲルを25mlのトルエン中で振とうしながら24時間膨潤させた。トルエンで膨潤した(湿潤)ゲルの重量を20000rpmで遠心分離した後に測定し、次いで、70℃で恒量まで乾燥し、再び重量を測定した。
【0119】
OH価(ヒドロキシル数)
OH価(ヒドロキシル数)は、DIN53240に従って測定され、無水酢酸による1gの物質のアセチル化反応中に遊離する酢酸の量に相当するmg単位のKOHの量に相当する。
【0120】
酸価
酸価は、既に上で述べたようにDIN53402に従って測定され、1gのポリマーを中和するのに必要なmg単位のKOHの量に相当する。
【0121】
ゲル含量
ゲル含量は、23℃でトルエンに不溶である含量に相当する。ゲル含量は、乾燥残留物と秤取量との比率で示され、重量%で表す。
【0122】
Micromorph 1Pの調製実施例1
Micromorph 1Pは、架橋コモノマーエチレングリコールジメタクリレートを用いた直接乳化重合により調製されたヒドロキシル修飾SBRに基づくミクロゲルである。
【0123】
325gの長鎖アルキルスルホン酸(Bayer AG製の330gのMersolat K30/95)および235gのメチレン架橋ナフタレンスルホン酸のNa塩(Bayer AG製のBaykanol PQ)を18.71gの水に溶解し、溶液を最初に40lオートクレーブに導入する。オートクレーブを排気し、窒素を3回充填する。その後、8.82kgのスチレン、1.32kgのブタジエン、503gのエチレングリコールジメタクリレート(純度90%)、314gのヒドロキシルメタクリレート(96%)および0.75gのヒドロキノンモノメチルエーテルを加える。反応混合物を撹拌しながら30℃に加熱する。170gの水、1.69gのエチレンジアミン四酢酸(Merck−Schuchardt)、1.35gの硫酸鉄(II)*7HO、3.47gのRongalit C(Merck−Schuchardt)および5.24gのリン酸三ナトリウム*12HOからなる水溶液を計量して入れる。250gの水に溶解した2.8gのp−メンタンヒドロペルオキシド(Akzo−Degussa製のTrigonox NT50)および10.53gのMersolat K30/95の水溶液を加えて反応を開始させる。5時間の反応時間の後に、10.53gのMersolat K30/95および2.8gのp−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox NT50)を溶解した250gの水からなる水溶液で混合物を後活性化する。95〜99%の重合転化率に達したとき、500gの水に溶解した25.53gのジエチルヒドロキシルアミンの水溶液の添加により重合を停止させる。その後、水蒸気によるストリッピングにより未反応モノマーをラテックスから除去する。ラテックスをろ過し、US6399706の実施例2のように、安定化剤を加え、生成物を凝固させ、乾燥した。
【0124】
Micromorph 5Pを同様に調製する。本発明によりさらに処理した乾燥ミクロゲル粉末Micromorph 1PおよびMicromorph 5Pは、噴霧乾燥によりラテックスから得られた。
【0125】
本発明による組成物の調製のために、Nynas T110を最初に調製容器に導入し、溶解機により撹拌しながらMicromorph 5Pを加えた。組成物を950バール下でホモジナイザーに4回通した。
【0126】
Invensys製の実験用高圧ホモジナイザーAPV1000をホモジナイザーとして用いた。
【0127】
組成物のレオロジー特性は、Physica製のレオメーターMCR300を用いて測定した。プレート−コーンシステムCP25−1を測定本体として用いた。測定は、20℃で行った。
【0128】
80%のNynas T110と20%のMicromorph 1PおよびMicromorph 5Pの組成物のいくつかの測定結果を以下の表2に示す。
【0129】
半最終製品であるグリースLi−12OHおよびRheinChemie Rheinau GmbH製の実験用製品であるE301(15%)も比較として測定した。
【0130】
5s−1、100s−1、1000s−1、3000s−1および0.1s−1のせん断速度ν’で測定した粘度ηを表に示す。測定は、測定値(動粘度η等)を上に示した順序で記録した測定プログラムを用いて行った。比率η(ν’=0.1s−1)/η(ν’=3000s−1)をミクロゲルの粘度増加作用の任意尺度として定義した。
【0131】
950バール下でホモジナイザーに4回通した80%のNynas T110と20%のMicromorph 5Pの組成物は、Li−12OH AK33またはE301と同等のレオロジー特性を示す。すなわち、Micromorph 5Pは、グリースの調製のための原料として適している。
【0132】
表2における値は、ミクロゲルによりどれだけ多様なレオロジーを実現することができるかを非常に明確に示している。
【0133】
【表3】

【0134】
1)Nynas T11020重量%Mikromorph 5P
2)Nynas T11020重量%Mikromorph 5P
3)η(ν‘=0.1s−1)/η(ν‘=1000s−1
測定された値は、レオロジーの観点からミクロゲル/潤滑剤の組合せを適切に選択することにより、驚くべきことに潤滑グリースの調製を可能にする粘稠化を示している。
【0135】
さらに、レオロジー特性は、記載した液体媒体中のミクロゲルにより調節することができる。本発明による組成物は、粘稠化剤、流動および沈降を防ぐための薬剤として、レオロジー添加剤として特に興味深い。
【0136】
記載した組成物または類似組成物は、潤滑グリース、ラッカーおよびペンキ、接着剤、ゴム、プラスチックおよびゲルコートまたは熱可塑性エラストマーに有利に用いることができる。
【0137】
実施例1で調製した組成物は、潤滑グリースに特に有利に用いることができる。これらにおいて、それらは、高チキソトロピーまたは構造粘性のような得に好ましい特性を示す。
【0138】
ミクロゲルによって特定の系に同時に導入されるさらなる非常に有利な特性は、以下の実施例からわかる。
【実施例2】
【0139】
2%ミクロゲル−潤滑油の組合せによる潤滑剤の透明性および相分離ならびにレオロジー学的および摩擦学的特性
【0140】
以下に記述する実施例2において、透明性および分離に対する安定性に関する特有の特性を示す本発明による組成物は、SBRおよびNBRをベースとするミクロゲルを用いて得られる。
【0141】
組成物を以下の表に示す。
1.潤滑油 98%
2.ミクロゲル 2%
合計 100%
【0142】
Shell Catenex S932は、Deutsche Shell GmnH製のパラフィン系の高度に精製された鉱油である。
【0143】
Shell Gravex 921は、Shell&DEA Oil GmbH製の水素化ナフテン系ベースの製造油である。
【0144】
Methyl Ester SUは、Oleon NV製のメチルエステル(Radia 7961)である。
【0145】
Silicone Oil M350は、Bayer MaterialScience AG製のポリジメチルシロキサンである。
【0146】
Baylube 68CLは、RheinChemie Rheinau GmbH製のポリエーテルである。
【0147】
ミクロゲル OBR 1210およびORB 1212は、RheinChemie Rheinau GmbH製のSBRベースの架橋表面修飾ゴムゲルである。Micromorph 4Pは、RheinChemie Rheinau GmbH製の非表面修飾SBRベースの架橋ゴムゲルである。
【0148】
OBR 1310Dは、NBRベースの架橋表面修飾ゴムゲルである(表3)。ミクロゲルは、Micromorph 1Pについて実施例1に記載した手順と同様な手順により調製される。
【0149】
【表4】

【0150】
SBRゲルおよびNBRゲルの特性データを表4に要約する。
【0151】
【表5】

【0152】
表中の略語は、以下の意味を有する。
SAspec:m/g単位の比表面積
ガラス転移範囲:
ガラス転移範囲は、上記のように測定した。
他の点については実施例1を参照のこと。
【0153】
均質性の管理:
調製してから1週間後の分離について試料を目視により試験した。
【0154】
透明性の管理:
試料の透明性を目視により調べた。分離または凝集を示した試料は、評価の前に撹拌した。
【0155】
本発明による組成物の調製
本発明による組成物を調製するために、特定の潤滑油を最初に調製容器に導入し、溶解機により撹拌しながら、特定のミクロゲルを加えた。混合物を少なくとも1日放置し、次いで、ホモジナイザーでさらに処理した。本発明による組成物を室温でホモジナイザーに導入し、900〜1000バール下でのバッチ操作でホモジナイザーに6回通した。1回目の通過時にミクロゲルペーストを約40℃に、2回目の通過時に約70℃に加熱した。その後、ミクロゲルペーストを放置して室温に冷却し、6回の通過が達成されるまで操作を繰り返した。
【0156】
組成物のレオロジー特性は、Physica製のレオメーターMCR300を用いて測定した。プレート−コーンシステムCP50−2を測定本体として用いた。測定は、40℃で行った。
【0157】
上記のミクロゲルに関するいくつかの測定結果を以下の表5〜7に示す。
【0158】
【表6】

【0159】
表5から、一方で種々の潤滑油をベースとし、他方で沈降分離しない本発明による多くの組成物が存在することがわかる。特に、Micromorph 4Pはあらゆる組合せにおいて沈降を示さない。2重量%のミクロゲルを加えただけであるので、これは驚くべきことである。
【0160】
さらに、おおかた透明で、分離しない組成物、すなわち、Methyl Ester SU中のOBR1210が発見された。
【0161】
【表7】

【0162】
表6から、2重量%の濃度でさえもミクロゲルのレオロジー作用が明確にわかる。それにもかかわらず、ニュートン、構造粘性およびチキソトロピー流動特性への明らかな差別化が存在する。ORB1210は、Silicone Oil M350中でニュートン流動特性を有する。
【0163】
摩擦係数の測定のためにSRV試験をさらに行った(表7、図2aおよび2b)。SRV試験は、以下のようにASTM 5706−97の方法により行い、リング−プレート形状をボール−プレート形状の代わりに選択した。
【0164】
100CR6鋼製リングを100CR6鋼製プレート上に重ねた
周波数:50Hz
荷重:300N(必要に応じて変化)
温度:100℃
振幅:1.500mm
持続時間:60分
【0165】
【表8】

【0166】
表7から本発明による組成物OBR 1210/Baylube 68CLについて純粋の潤滑油Baylube68CLと比較して明確に低い摩擦係数が認められることがわかる。さらに、ミクロゲルが試験プレート上のより低い摩耗をもたらすことを示す、測定中の曲線の行路がより平滑であることが認められた。
【0167】
該ミクロゲルは、他の多くのミクロゲルと同様に、驚くべきことに摩擦係数を低下させる特性も有し、したがって、摩擦係数調節剤として用いることができる。
【実施例3】
【0168】
10%、15%、20%および30%ミクロゲル−潤滑油の組合せによる潤滑剤の相分離ならびにレオロジーおよび摩擦特性
【0169】
以下に記述する実施例3において、透明性に関する特有な特性および分離に関する安定性を示す本発明による組成物がSBRおよびNBRベースのミクロゲルを用いて得ることができることが示されている。さらに、潤滑グリースを得ることができることが見いだされた。
【0170】
ミクロゲルペーストの組成を以下の表に示す。
1.潤滑油 90%、85%、80%、70%
2.ミクロゲル 10%、15%、20%、30%
合計 100%
【0171】
Shell Catenex S932は、Deutsche Shell GmbH製のパラフィン系の高度に精製された鉱油である。
【0172】
Methyl Ester SUは、Oleon NV製のメチルエステル(Radia 7961)である。
【0173】
精製菜種油は、再生可能な原料から得られるCereol Deutschland GmbH製の油である。
【0174】
Baylube 68CLは、RheinChemie Rheinau GmbH製のポリエーテルである。
【0175】
Nynas T110は、Nynas Naphthenics AB製の水素化ナフテン系油である。
【0176】
ミクロゲルOBR 1210およびOBR 1212は、RheinChemie Rheinau GmbH製のSBRベースの架橋表面修飾ゴムゲルである。OBR 1135およびMicromorph 5Pは、RheinChemie Rheinau GmbH製の表面修飾されておらず、それぞれBRおよびSBRベースの架橋ゴムゲルである。
【0177】
Micromorph 5Pは、実施例1に記載されている。ミクロゲルOBR 1210およびOBR 1212は、実施例2に記載されている。OBR 1135は、BRゲルであり、97.5%および2.5%ジクミルペルオキシドを含む。このミクロゲルは、Micromorph 1Pについて実施例1で述べたように調製する。
【0178】
半最終製品であるグリースLi−120HおよびRheinChemie Rheinau GmbH製の実験用製品であるM10411も比較として測定した。
【0179】
ミクロゲルの特性データは、実施例1および2に要約されている。
【0180】
本発明による組成物の調製
本発明による組成物は、既に上で述べたように調製した。これからの逸脱において、特定の場合に材料をホモジナイザー中に運ぶために1〜5バールの空気圧が必要であった。通過回数は、以下に示す。
【0181】
組成物のレオロジー特性は、Physica製のレオメーターMCR300を用いて測定した。プレート−コーンシステムCP25−1を測定本体として用いた。測定は、20℃で行った。
【0182】
上記のミクロゲルに関するいくつかの測定結果を以下に示す(表8〜10)。
【0183】
20および30%Micromorph 5P/Nynas T110は、潤滑油をほとんど滲出させず、固体である。
【0184】
30%OBR 1135およびOBR 1210/Nynas T110は、潤滑油をほとんど滲出させず、固体である。
【0185】
20%OBR 1135/菜種油および20%Micromorph 5P/菜種油も1.5年後でさえも表面における分離を示さない。菜種油中10%の同じゲルについても分離はほとんど示さない。
【0186】
【表9】

【0187】
滴点、貫入および油分離能は、以下の特定の規格の方法により、またはそれに従って測定した。
【0188】
DIN51801:滴点
滴点は測定する物質から最初の液滴が発生し、液滴容器の底部に接触する温度である。
【0189】
DIN51580:貫入
貫入度は、試料中へのコニカルコーンシェルの貫入によるペースト様またはワックス様固体の粘稠性の尺度を意味すると理解される。1/10mm単位の貫入深さを貫入値Pと言う。
【0190】
無処理試料上:Pu
ミリング済み試料上:Pm、60(60ストローク後)またはPm、100000(100000ストローク後)
【0191】
DIN51817:油分離
油分離は、粘稠化剤およびベース液体のグリースマトリックスの安定性の尺度である。試料を例えば40℃で特定の時間おもりで圧迫する。この手段により、負荷をかけている間にベース液体がグリースマトリックスから出てくる。所与の温度での負荷時間後のベース液体の含有率を測定する。
【0192】
【表10】

【0193】
油分離能(18時間/40℃)は、Nynas T110−OBR 1135(30%)の本発明による組成物とリチウムグリースLi−12OHグリースとで同じであり、0.29%である。
【0194】
低Pおよび高Pm、60000値は、グリースを代表するものであった。これは、表9からわかるように、リチウム12グリースおよびPUグリースにおける測定により確認される。
【0195】
ミクロゲル−潤滑油の組合せは、静止貫入Pおよびミリング貫入Pm、60000の値の差を殆どまたは全く示さない。したがって、OBR 1210−Baylube 68CLの組合せは、せん断力に対して特に安定である。
【0196】
【表11】

【0197】
SRV曲線の過程は以下の状態を示している。
【0198】
比較グリースと異なり、OBR 1210グリースは、より低いレベルの摩擦係数で終わる滑らかな曲線の過程および金属ブランク摩擦部位を示している。
【0199】
【表12】

【0200】
表11は、衝撃荷重およびFBA製品/溶接荷重は、本発明により著しく改善されることを示している。
【0201】
実施例3は、比較的高いミクロゲル含量(15〜30%)を有する本発明による組成物は驚くべきことに市販のグリースと同等の特性(沈降に対する安定性、油の分離、粘稠性等)を示すが、より好ましい特性(高せん断安定性、すなわち、60000ストロークでのミリングの後に貫入値の変化がほぼない)および例えば、PUグリース又はCa複合グリースのような耐熱性グリースによってのみ達成されるような例外的に高い滴点を示すことを示している。
【0202】
さらに、これらの組成物は、摩擦係数に対する正の作用を示し、これは標準的グリースには全く見られないことである。
【実施例4】
【0203】
Baylube 68CL中ヒドロキシル基修飾SBRゲルOBR 1312B
【0204】
下の実施例4において、ヒドロキシル基修飾SBRベースのミクロゲルを用いることにより、約43nmの平均粒径を有する一次粒子を主として含む本発明による組成物をホモジナイザーで900〜1000バーをかけ、2〜6回通過させて調製することができることが示されている。
【0205】
組成を以下の表に示す。
1.Baylube 68CL 97.8
2.OBR 1312B 2.0
3.分散助剤 0.2
合計 100.0
【0206】
Baylube 68CLは、RheinChemie Rheinau GmbH製のポリエーテルである。
【0207】
ミクロゲルOBR 1312Bは、RheinChemie Rheinau GmbH製の架橋表面修飾SBRベースゴムゲルである(表12)。このミクロゲルは、Micromorph 1Pについて実施例1で述べたのと同様に調製される。
【0208】
【表13】

【0209】
OBR 1312Bの特性データを表13に要約する。
【0210】
【表14】

【0211】
本発明による組成物を調製するために、Baylube 68CLを最初に調製容器に入れ、溶解機により撹拌しながらOBR 1312Bを加えた。混合物を少なくとも1日放置し、次いで、ホモジナイザーによりさらに処理した。
【0212】
本発明による組成物を室温でホモジナイザーに導入し、バッチ操作で960バール下でホモジナイザーに6回通した。ミクロゲルペーストの1回目の通過時に約40℃に、2回目の通過時に約70℃に加熱した。その後、ミクロゲルペーストを室温に冷却し、3および4回目に分散させた。6回の通過が達成されるまで、これを繰り返した。
【0213】
ラテックス粒子の粒径は、超遠心分離により測定した(W.Scholtan、H.Lange、「Bestimmung der Teilchengroessenverteilung von Latices mit der Ultrazentrifuge」、Kolloid−Zeitschrift und Zeitschrift fuer Polymere (1972) 第250巻、第8刷を参照)。
【0214】
OBR 1312BミクロゲルおよびBaylube 68CL(TZE122)中に再分散させたOBR 1312Bの最初の未だ乾燥されていないラテックスの粒径分布を以下の図に示す。
【0215】
驚くべきことに、乾燥およびしたがって塊状OBR粉末のほぼ全量が一次粒子まで再分散させることに成功し、再分散混合物の平均粒径が最初のラテックスの平均粒径以下でさえあることがわかる。さらに、測定は室温で6カ月間保存した再分散試料について行ったこと、すなわち、驚くべきことに分散が6カ月間安定のままであったことに注意すべきである。
【0216】
再凝集粒子の含量が低いため、再分散組成物はさらに高度に透明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
120℃の温度で30000mPas未満の粘度を有する非架橋性有機媒体(A)および少なくとも1つのミクロゲル(B)を含む組成物。
【請求項2】
非架橋性有機媒体(A)が120℃の温度で1000mPas未満の粘度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非架橋性有機媒体(A)が120℃の温度で200mPas未満の粘度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ミクロゲル(B)の一次粒子がほぼ球形の形状を有することを特徴とする請求項1から3に記載の組成物。
【請求項5】
式、[(d1−d2)/d2]×100
[式中、d1およびd2は一次粒子の任意の2つの直径であり、d1>d2である]で定義されるミクロゲル(B)の個々の一次粒子の直径の偏りが250%未満であることを特徴とする請求項1または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記偏りが50%未満である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ミクロゲル(B)の一次粒子が5〜500nmの平均粒径を有することを特徴とする請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
ミクロゲル(B)の一次粒子が99nm未満の平均粒径を有することを特徴とする請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項9】
ミクロゲル(B)が23℃でトルエンに不溶である少なくとも約70重量%の含量を有することを特徴とする請求項1から8の一項に記載の組成物。
【請求項10】
ミクロゲル(B)が23℃でトルエン中、約80未満の膨潤指数を有することを特徴とする請求項1から9の一項に記載の組成物。
【請求項11】
ミクロゲル(B)が−100℃〜+120℃のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1から10の一項に記載の組成物。
【請求項12】
ミクロゲル(B)が高エネルギー照射により架橋していない架橋ミクロゲルであることを特徴とする請求項1から11の一項に記載の組成物。
【請求項13】
ミクロゲル(B)が約5℃を超えるガラス転移範囲の幅を有することを特徴とする請求項1から12の一項に記載の組成物。
【請求項14】
ミクロゲル(B)が乳化重合により得られることを特徴とする請求項1から13の一項に記載の組成物。
【請求項15】
ミクロゲル(B)がゴムをベースとすることを特徴とする請求項1から14の一項に記載の組成物。
【請求項16】
ミクロゲル(B)がホモポリマーまたはランダムコポリマーをベースとすることを特徴とする請求項1から15の一項に記載の組成物。
【請求項17】
ミクロゲル(B)がC=C二重結合に対して反応性の官能基で修飾されていることを特徴とする請求項1から16の一項に記載の組成物。
【請求項18】
非架橋性媒体(A)が溶媒、飽和または芳香族炭化水素、ポリエーテル油、天然および合成エステル油、ポリエーテルエステル油、リン酸エステル、シリコン含有油、ハロ炭化水素および再生可能液体原料からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項1から17の一項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物の総量を基準として0.1〜90重量%のミクロゲル(B)を含む請求項1から18の一項に記載の組成物。
【請求項20】
10〜99.9重量%の非架橋性有機媒体(A)を含むことを特徴とする請求項1から19の一項に記載の組成物。
【請求項21】
さらに充填剤および/または添加剤を含むことを特徴とする請求項1から20の一項に記載の組成物。
【請求項22】
ホモジナイザー、ビーズミル(撹拌型ボールミル)、3本ロールミル、単軸もしくは多軸スクリュー押出機、ニーダー、Ultra−Turrax装置および/または溶解機により非架橋性有機媒体(A)とミクロゲル(B)とを混合して調製したことを特徴とする請求項1から21の一項に記載の組成物。
【請求項23】
ホモジナイザー、ビーズミル(撹拌型ボールミル)、3本ロールミルまたは溶解機により調製したことを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
DIN53018に従って20℃でコーン−プレート測定システムを用いて5s−1の速度で測定した2mPasから50000000mPasまでの粘度を有することを特徴とする請求項1から23の一項に記載の組成物。
【請求項25】
ミクロゲル(B)が23℃でトルエン中、1〜15の膨潤指数を有することを特徴とする請求項1から24の一項に記載の組成物。
【請求項26】
ミクロゲル(B)が23℃でトルエンに不溶である少なくとも95重量%の含量を有することを特徴とする請求項1から25の一項に記載の組成物。
【請求項27】
ミクロゲルがヒドロキシ基で修飾されていないことを特徴とする請求項1から26の一項に記載の組成物。
【請求項28】
ミクロゲルが修飾されていないことを特徴とする請求項1から27の一項に記載の組成物。
【請求項29】
熱可塑性プラスチック、ゴムまたは熱可塑性エラストマーに混入させるための請求項1から28の一項に記載の組成物の使用。
【請求項30】
ミクロゲル含有ポリマーの調製のための請求項1から28の一項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
ミクロゲル含有ゴムの調製のための請求項30に記載の使用。
【請求項32】
ミクロゲル含有熱可塑性エラストマーの調製のための請求項30に記載の使用。
【請求項33】
潤滑剤、成形品またはコーティングの調製のための請求項1から28の一項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
潤滑グリースまたは改質潤滑油の調製のための請求項33に記載の組成物の使用。
【請求項35】
プラスチック、ゴム、コーティング組成物または潤滑剤用の添加剤としての請求項1から28の一項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
120℃の温度で30000mPas未満の粘度を有する非架橋性有機媒体中、レオロジー添加剤、特に増粘剤またはチキソトロープ剤としてのミクロゲルの使用。
【請求項37】
請求項1から28の一項に記載の組成物を含むプラスチック、ゴム、熱可塑性エラストマー、コーティング組成物または潤滑剤。
【請求項38】
成分(A)および(B)を共にホモジナイザー、ビーズミル、3本ロールミル、単軸もしくは多軸スクリュー押出機、ニーダーおよび/または溶解機による処理に供することを特徴とする請求項1から28の一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項39】
成分(A)および(B)を共にホモジナイザー、ビーズミル、3本ロールミルおよび/または溶解機による処理に供することを特徴とする請求項1から28の一項に記載の組成物を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−174078(P2011−174078A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−84707(P2011−84707)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2006−527421(P2006−527421)の分割
【原出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(501074227)ライン ヘミー ライナウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (15)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】