説明

非極性基体のための接着剤

【課題】
低いエネルギーの表面に対して高い接着力をもたらし、ジブロックコポリマーの含有量の多いブロックコポリマーをベースとして生成され、かつ、液状粘着性樹脂の割合が多いが、同時に接着剤の凝集性に悪影響を及ぼすことなく低温での接合にも使用できる特に適する感圧接着剤の提供。
【解決手段】
この課題は、粘着性樹脂、一般的構造A−Bの第一のブロックコポリマー及び一般的構造A−Bの少なくとも2で、最高11の連結された副次的単位よりなる第二のブロックコポリマーを含む感圧接着剤であって、前記Aはいずれの場合にも、少なくとも1つの芳香族基を含むビニル化合物よりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、前記Bは非置換の及び/又は置換された1,3−ジエンよりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、そして第一のブロックコポリマーが接着剤中のブロックコポリマーの全質量を規準として少なくとも50質量%の割合で存在する上記感圧接着剤において、粘着性樹脂の全質量を規準として該粘着性樹脂の少なくとも30質量%が室温で液状であり、室温で液状である粘着性樹脂がポリマーブロックAと均一に混和することができずそして更にポリマーブロックBと実質的に均一に混和し得る粘着性樹脂であることを特徴とする、上記感圧接着剤によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性樹脂、一般的構造A−Bの第一のブロックコポリマー及び一般的構造A−Bの少なくとも2で、最高11の連結された副次的単位よりなる第二のブロックコポリマーを含む感圧接着剤であって、前記Aはいずれの場合にも、少なくとも1つの芳香族基を含むビニル化合物よりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、前記Bは非置換の及び/又は置換された1,3−ジエンよりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、そして第一のブロックコポリマーが接着剤中のブロックコポリマーの全質量を規準として少なくとも50質量%の割合で存在する上記感圧接着剤、並びにかかる感圧接着剤を感圧接着性シート状要素の製造に用いることに関する。更に本発明はこのような感圧接着剤を有する感圧接着性シート状要素並びに45mJ/cmより低い表面エネルギーを持つ表面と接合するための、該要素の用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
2つの加工半製品を結合するための最も重要な技術の一つは該加工半製品を接合することである。この場合、使用される接着剤を意図的に選択することによって、複数の異なる材料を接合によって互いに結合することに成功する。2つの加工半製品を簡単に結合させることを可能とする種類の接着剤としては感圧接着剤を使用するのが特に有利である。
【0003】
感圧接着剤としては、既に比較的に弱い圧力のもとでも基体(基礎、粘着基盤又は接着基盤)との持続的接合を可能とする接着剤を意味する。この接着剤の接合性はそれの接着特性に起因している。
【0004】
“接着”とは一般に、二つの互いに接触する相を互いに、それらの界面において該界面で生じる分子間相互作用によって保持することに関与する物理的効果を意味する。したがって接着は基体表面への接着剤の付着性を決定しそして初期接着性(いわゆる“粘着性”)として及び接着力として決めることができる。接着剤の接着性に意図的に影響を及ぼすために、接着剤にはしばしば軟化剤及び/又は接着力増強性樹脂(いわゆる“粘着性付与剤”)が添加される。
【0005】
“凝集性”とは、物質又は物質混合物の互いの内部保持性を分子間及び/又は分子内相互作用の結果としてもたらす通例の物理的効果を意味する。したがって凝集力は、例えば粘性とも及び保持力として測定される接着剤の靱性及び流動性を決める。接着剤の凝集性を意図的に高めるためには、接着剤をしばしば追加的な架橋反応に付し、そのために接着剤には反応性の(及びそれ故に架橋性の)成分又は他の化学的架橋剤を添加し及び/又はその接着剤に後処理段階でイオン化放射線を印加する。
【0006】
感圧接着剤の接着技術的性質は専ら接着性と凝集性との関係によって決められる。例えば若干の用途にとっては、使用される接着剤が高い凝集性があることが重要であり、すなわち、特に強い内部保持力を有するが、他の用途のために特に高い粘着性が必要とされることもある。
【0007】
実地において、低いエネルギーの表面への高い接着力を有する適切な感圧接着剤を見出すことは困難であることがわかっている。本発明で言う低いエネルギー表面は、表面エネルギーが45mJ/cmより低い、それどころかしばしば40mJ/cmより低い又は更に35mJ/cmより低い材料よりなるあらゆる表面である。低いエネルギー表面を持つ典型的な物質は例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE),ポリプロピレン又はエチレンとプロピレン並びに他のオレフィン類とのコポリマー、例えばエチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPDM)である。
【0008】
ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン−ジエン−ゴムはよく使用されるフィルム用材料であり、更に他の形態、例えば中実物体又は発泡体としても使用されるので、この種類の非極性材料を接合するための接着剤の需要が大きい。
【0009】
市場で入手し得る殆どの感圧接着剤は、このような低いエネルギーの表面に対して十分な接着力を有していないので、この様な低いエネルギーの表面のためには限定的にしか利用できない。市販の感圧接着剤を非極性基体の接合に最適化するためには、接着剤を全体として柔らかくさせる通例の助剤、例えば粘着性樹脂又は可塑剤が添加される。これは低いエネルギーの表面への粘着力を高める結果をもたらすが、粘度の低下を伴いそして全体として凝集力を低下させる結果をもたらし、全体として機械的負荷を掛けることが可能な接合を実現することができない。
【0010】
接合すべき表面の性状に関係での感圧接着剤の選択の他に、いかなる周囲条件でも接合を保証することが同様に重要である。例えば低温でも相応する基体に高い接着力を示すが、同時に室温でも又はそれどころかさらに高い温度でも十分に高い接着力を提供する感圧接着剤を見出すことも困難である。この問題は、例えば凍結された製品のための容器、例えばフリーザーバックをシールするために使用される接合の場合に生じる。
【0011】
接着剤の粘着挙動は,中でも、ガラス転移温度以下の温度で硬化しそしてそれ故にそれの初期粘着性、例えばそれの接着力を失うので、接着剤のガラス転移温度Tに依存している。以下に挙げる温度は、例えば動的散乱熱量測定(DSC)によって疑似定常状態試験で得られる温度に相当する。
【0012】
非極性の基体への高い接着力を発現し得るある種の感圧接着剤系は公知である。さらに、低温でも高い接着強度を有するように、意図的な付加反応によってこの種類の感圧接着剤の接着挙動を変える沢山の試みもされている。
【0013】
例えば、アクリレート又は天然ゴムをベースとするものの様な別の感圧接着剤よりも、低いエネルギー表面に高い接着力を生じるスチレンブロックコポリマーをベースとする接着剤が公知である。非極性基体へのこのようなスチレンブロックコポリマーの接着力を更に高めるために、該接着剤に追加的に種々の添加物及び粘着性樹脂が混入できる。
【0014】
例えば米国特許第5,453,319号明細書からは、一般式A−Bタイプのジブロックコポリマー(要するに2つの異なるホモポリマーブロックよりなるブロックコポリマー;このものは二ブロックコポリマーとも称される)及び一般式A−Bタイプの副次的単位よりなるマルチブロックコポリマー並びに追加的に固体粘着性樹脂及び、脂肪族及び芳香族成分を有する液体粘着性樹脂(20質量%)を含有する感圧接着剤が公知である。この場合、ポリマーブロックAはモノアルケニル基を持つ芳香族炭化水素を含有しそしてポリマーブロックBは1,3−ブタジエンを含有している。これらの系にて、確かに、−12℃までのガラス転位温度を得ることが可能であるが、この種類の系は、低温でも安定な接合を可能とするためには凝集性が不十分であったので必ず非常に悪い剪断強度を示した。更に、米国特許第5,453,319号明細書に記載のサンプルは、このサンプルの接着剤層がいずれの場合にも非常に厚い層厚を有しておりそして接着剤の接着力はそれの層厚と比例して増加するので、慣用の製品と比較することができない。
【0015】
更にヨーロッパ特許出願公開第1,151,052号明細書から、一般式A−Bタイプのジブロックコポリマー及び一般式A−Bタイプ(ポリマーブロックAはアルケニル基を持つ芳香族炭化水素及びポリマーブロックBは1,3−ブタジエンよりなる)の副次的単位よりなるマルチブロックコポリマー並びに追加的にポリフェニレンオキシド樹脂及び粘着性樹脂を含有する感圧接着剤が公知である。この接着剤を使用する場合には、確かに非極性基体への接着力の増強が確認されたが、低温での使用可能性は改善されなかった。概して、感圧接着剤中のジブロックコポリマーの割合を多くした場合には接着力が改善できるが、それの凝集性が同時に著しく悪影響を受けることはわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それ故に本発明の課題は、これらの欠点を排除し、低いエネルギーの表面に対して高い接着力をもたらし、そしてそれ故にジブロックコポリマーの含有量の多いブロックコポリマーをベースとして生成され、かつ、液状粘着性樹脂の割合が多いが、同時に接着剤の凝集性に悪影響を及ぼすことなく低温での接合にも使用できる特に適する感圧接着剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、本発明に従って、粘着性樹脂の全質量を規準として該粘着性樹脂の少なくとも30質量%が室温で液状であり、室温で液状である該粘着性樹脂がポリマーブロックAと均一に混和することができずそして更にポリマーブロックBと実質的に均一に混和し得る粘着性樹脂である、冒頭に記載の種類の感圧接着剤によって解決される。したがって、本発明によれば、硬質成分及び軟質成分を含有する粘着性樹脂が使用され、後者の成分がBタイプのエラストマーブロックと相互作用している。
【0018】
このような態様によって、本発明の感圧接着剤は多い割合で液状の樹脂を含有することが保証されている。この種類の接着剤は、室温で液状の樹脂が30質量%より多い高割合であるために低温でも非常に柔らかくそしてそれ故に高い初期粘着性を有している。
【0019】
粘着性樹脂は、Aタイプのポリマーブロック(要するに少なくとも1種類の芳香族基を含有するビニル化合物を含むモノマー単位を有するブロック)と混和することができないように選択される。このようなポリマーブロックはポリマーブロックの内部において高い強度を有しそしてそれ故に比較的に硬質であり(いわゆる硬質ブロック又は硬質部分)そしてその結果としてポリマーの凝集性を実質的に共同決定するブロックコポリマー部分を構成しているので、硬質ブロックの接着力は粘着性樹脂の添加によって顕微鏡レベルでは変化せず、該ポリマーブロックは接着には僅かしか寄与しない。硬質ブロックは液状粘着樹脂と混和できないので、硬質ブロックは液状の粘着性樹脂の擬似的な充填剤と考えられる。この種類の硬質ブロックは一般に90℃より高いガラス転位温度を有している。
【0020】
反対に粘着性樹脂はBタイプのポリマーブロック、要するに置換された及び非置換の1,3−ジエンを含むモノマー単位を持つブロックと実質的に均一に混和しなければならない。このポリマーブロックは軟質であるブロックコポリマー部分を構成する(いわゆる軟質ブロック又は軟質セグメント)。粘着性樹脂の添加によってこの領域は顕微鏡レベルでは接着剤の剪断強度を全体的に低下させることなく更に軟質になる。この種類の粘着性樹脂は沢山の当業者に十分に知られている。
【0021】
この特別な組成の点で、本発明の接着剤は既に知られる感圧接着剤混合物と著しく相違しておりそしてそれ故に低温でも非極性基体に機械的に安定な接合を可能とする。これは、例えば米国特許第5,453,319号明細書に記載される粘着性樹脂によったのでは不可能である。何故ならば該樹脂はその芳香族特性のためにビニル芳香族化合物よりなるポリマーブロック(Aタイプ)との良好な混和性を有しそしてジエンよりなるポリマーブロック(Bタイプ)との混和性を有していないので、この接着剤の凝集性は全体としては不十分である。
【0022】
室温で液状の粘着性樹脂は脂肪族の粘着性樹脂であってもよい。このような粘着性樹脂を選択することによって、該粘着性樹脂がBタイプのポリマーブロックと良好に混和することができそしてAタイプのポリマーブロックと均一には混和できないことを特に簡単に保証することができる。これによって得られる液状粘着性樹脂はBタイプのポリマーブロックとの混和性及び相容性に関しても優れて適しておりそして低温でも優れた機械的安定性を持つ感圧接着剤を製造することを可能とする。
【0023】
特に、粘着性樹脂がポリテルペン樹脂、特にリモネン類及び/又はピネン類、中でもα−ピネンをベースとするものを含有する場合に有利であることがわかっている。この粘着性樹脂は一般に室温で固体の状態で存在しておりそして理想的には室温で液体の粘着性樹脂を補助物質とし、結果として全体として非極性の基体に対しての高い接着力を保証する。
【0024】
更に、感圧接着剤が−15℃より低い、特に−20℃より低いガラス転位温度に調整されている場合が有利である。ガラス転位温度を調整する具体的な手法は当業者に十分に知られている。例えばその都度使用されるモノマー単位の選択を後記で説明するフローリ(Flory)及びホックス( Fox)によって完成された式を用いて選択することによって 調整される。このような低いガラス転位温度は、−20℃の低い温度でも機械的負荷を掛けることを可能とする結合を本発明の接着剤の使用によってもたらすことを可能とする。
【0025】
Aタイプのポリマーブロックとして、モノマー単位を非置換及び/又は置換スチレンを含む群から選択するポリマーブロックを使用する場合が有利であることがわかっている。感圧接着剤のベースポリマーのためにこのような副次的単位を選択することによって、低いエネルギーの表面に対して特に高い接着力が保証される。ブロックコポリマー中のスチレン含有量を特に多く使用することによって、すなわち、第一のブロックコポリマー及び/又は第二のブロックコポリマーが非置換の及び/又は置換されたスチレンの群からの少なくとも20質量%のモノマー単位を有する場合に特に非常に有利な結果が達成される。
【0026】
さらに、Bタイプのポリマーブロックとして、非置換の及び/又は置換された1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンの群からのモノマー単位を有するポリマーブロックを選択することができる。このような構成は、特に高い内部凝集を持つ接着剤を実現することを可能とする。これは、低いエネルギーの表面に対して高い機械的負荷が可能な接合を保証するために、更にAタイプのポリマーブロックとしてスチレン類をモノマー単位として持つものを使用する場合に特に重要である。
【0027】
更に、第二のブロックコポリマー中の副次的単位が互いに線状に又は星型状に結合している場合が有利である。この場合には、その空間的配置のために他のポリマー分子との強い分子間相互作用に関与しそして低温でも特に高い凝集性を保証するブロックコポリマーが得られる。
【0028】
更に第一のブロックコポリマーと第二のブロックコポリマーとが一緒にして、接着剤の全質量を規準として少なくとも20質量%で最高70質量%、好ましくは少なくとも30質量%で最高60質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%で最高55質量%の割合で存在する場合が有利である。この種類の高い(第一のブロックコポリマーの割合と第二のブロックコポリマーの割合との合計に相当する)ブロックコポリマー含有量を用いることによって原則として接着剤の高い接着力が保証される。
【0029】
本発明の別の課題は、低いエネルギーの表面に低温でも機械的負荷が可能な接合を可能とするシート状要素を提供することでもある。この課題は、粘着性のシート状要素を製造するために前述の粘着剤を用いることによって並びにこうして得られる粘着性シート状要素によって解決される。この粘着性のシート状要素を45mJ/cmより低い表面エネルギーを持つ表面と接合するために用いているので、低温でもこの種の基体に特に負荷可能な接合を得ることができた。
【0030】
本発明は、感圧接着剤の組成に関する。感圧接着剤とは比較的に弱い圧力で既に基体と永久的接合を可能とする接着剤を意味する。この接着剤の接着性はその接着特性に起因する。
【0031】
この種類の接着剤は一般に主要成分としてベースポリマー又は複数のベースポリマーの混合物を有している。このものは、更にポリマー的な性質でもよい別の助剤の添加によってその都度望まれる要求プロフィールの関係で変性することができる。
【0032】
本発明の感圧接着剤はベースポリマーとして少なくとも2種類のコポリマー、すなわち第一のブロックコポリマー及び第二のブロックコポリマーを含有している。コポリマーとしては、少なくとも2種類の異なる種類のモノマー単位で構成されるポリマーを意味する。ブロックコポリマーとは、構造単位として少なくとも2種類の異なるポリマーブロックを有するコポリマーである。ブロックコポリマーはその内部に含まれている(異なる)ブロックの数に相応して、例えばジブロックコポリマー(2種のポリマーブロックを持つ)、トリブロックコポリマー(3種のポリマーブロックを持つ)又はマルチブロックコポリマー(複数種のポリマーブロックを持つ)に分類される。
【0033】
ポリマーブロックとは、主要構造単位としての、実質的に順番に互いに多数連結されている唯一の種類のモノマー単位を持つオリゴマー又はポリマー(ホモポリマー)を意味する。このようなポリマーブロックの物理的及び化学的性質を意図的に調整するために、このものは更に、主要構造単位と相違する構造の個々のモノマー単位を含有していてもよい。
【0034】
本発明の接着剤はエラストマー成分として第一のブロックコポリマー及び第二のブロックコポリマーを有している。すなわち、これら両者は、場合によってはブロックコポリマーをベースとする接着剤の別の成分と一緒に、該接着剤のブロックコポリマーの全質量を供している。
【0035】
第一のブロックコポリマーは接着剤中に、ブロックコポリマーの全質量を規準として少なくとも50質量%の割合で存在している。したがって、第一のブロックコポリマーが接着剤のポリマー主要成分を構成する。
【0036】
第一のブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。要するに2種類の異なるポリマーブロック、すなわちAタイプのポリマーブロックとBタイプのポリマーブロックとよりなるポリマーである。第一のブロックポリマーにおいてはAタイプのポリマーブロックとBタイプのポリマーブロックが互い連結されているので、第一のブロックコポリマーは一般的構造式A−Bで表される。
【0037】
Aタイプのポリマーブロックは、少なくとも1つの芳香族基を有するビニル化合物の群よりなる互いに結合したモノマー単位を有している。Aタイプのポリマーブロック中には、これらのモノマー単位に加えて別の個々のモノマー単位も存在していてもよい。
【0038】
少なくとも1つの芳香族基を有するビニル化合物とは、非置換のビニル基 H3C=CH−を有するか 又は芳香族的性質を有する少なくとも1種類の有機基と結合している前ビニル基から誘導される単一の又は複数置換のビニル基を有しているそれらの化合物である。少なくとも1種類の芳香族基を含有するこの種類のビニル化合物(ビニル芳香族化合物とも称する)としては、原則としてこれらの物質の分類に属するあらゆる化合物が適する。最も簡単な場合は、この化合物は非置換のスチレン又は置換されたスチレンである。この種類のモノマーはAタイプのポリマーブロック中に重合された状態で存在している。Aタイプのポリマーブロックとしては、少なくとも1つの芳香族基を有するビニル化合物の2種類以上の異なる種類のモノマーを有するポリマーブロックと同様に、少なくとも1つの芳香族基を含有するビニル化合物の1種類だけの簡単な種類のモノマーを有するポリマーブロックも含有している。Aタイプに属するようなポリマーブロックをこうして説明することによっても、このポリマーブロック中にどのくらい沢山のモノマーが含まれているかは説明できないし、Aタイプのポリマーブロックのモノマー単位が同じブロックコポリマー内の又は別のブロックコポリマー内のこのタイプの他のポリマーブロックと同じであるか又は異なっているかどうなのかも説明できない。
【0039】
Bタイプのポリマーブロックは非置換の及び置換された1,3−ジエンの群からのモノマー単位を有している。この種類の非置換の及び置換された1,3−ジエンとしては原則として1,3−位に2つの二重結合を持つあらゆる有機化合物が適する。最も簡単な場合は、この化合物は非置換の及び/又は置換された1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである。この種類のモノマーはBタイプのポリマーブロック中に重合された状態で存在している。Bタイプのポリマーブロックとしては非置換の及び置換された1,3−ジエンの群から選ばれる1種類だけのモノマーを有するポリマーブロックを、この群から選ばれた2種類以上の異なる種類のモノマー、例えばブタジエンとイソプレンよりなるコポリマーを有するポリマーブロックと同様に含有している。Bタイプに属するようなポリマーブロックをこうして説明することによっても、このポリマーブロック中にどのくらい沢山のモノマーが含まれているかは説明できないし、Bタイプのポリマーブロックのモノマー単位が同じブロックコポリマー内の又は別のブロックコポリマー内のこのタイプの他のポリマーブロックと同じであるか又は異なっているかどうなのかも説明できない。
【0040】
第二のブロックコポリマーはマルチブロックコポリマーである。要するに、複数の異なるポリマーブロックよりなるポリマーである。このマルチブロックコポリマーの構造単位はAタイプのポリマーブロック及びBタイプのポリマーブロックで構成されている。この第二のブロックコポリマーは、AタイプのポリマーブロックとBタイプのポリマーブロックとでそれぞれ構成される副次的単位で構成されている。この副次的単位も同様に一般的構造A−Bを有している。
【0041】
Aタイプのポリマーブロック及びBタイプのポリマーブロックは第一のブロックコポリマーについて説明した化合物群から選択される。ある接着剤の内部には、第一のブロックコポリマーにおいて選択されたAタイプのポリマーブロック及び第二のブロックコポリマーにおいて選択されたAタイプのポリマーブロックはそれぞれの場合に同じであるか又はさもなければ相違している。本発明によれば、また、ある接着剤において、第一のブロックコポリマーで使用されたBタイプのポリマーブロックと第二のブロックコポリマーにおいて使用されたBタイプのポリマーブロックとはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0042】
本発明の感圧接着剤の第二のブロックコポリマー中にはそれぞれ少なくとも2で、
最高11のこのA−B−副次的単位が互いに連結されている。この連結の結果として、第二のブロックコポリマーは異なる構造を有していてもよい。すなわち、副次的単位は例えば線状に互いに結合されていてもよい。この種類の線状の結合の場合には、一般的な(A−B)nタイプ(2≦n≦11)の部分交互ブロックコポリマーが常に得られる。この場合、ブロックコポリマー中のAタイプ及びBタイプのポリマーブロックの長さは相違していてもよい。これは、同じタイプの2つのポリマーブロックが互いに連結されている2つの副次的単位を連結する場合にこれら両者が同様にこのタイプである比較的大きなポリマーブロックに相当する事実に起因している。例えば二つのA−B’副次的単位をBタイプのポリマーブロックを介して連結する場合A−B’−B’−Aタイプのブロックコポリマーが得られる。このブロックコポリマーは、比較的大きいポリマーブロックが互いに結合された比較的に小さい2つのポリマーブロックB’−B’にB”タイプが相当する場合のA−B”−Aタイプのブロックコポリマーに等しい(B’及びB”はそれぞれ一般的なBタイプに属する)。これは、Aタイプ又はBタイプの2つの同じポリマーブロックの結合物もいずれの場合にもそれら自体がそれぞれAタイプ又はBタイプの比較的大きいポリマーブロックであることに起因している。この場合、第二のブロックコポリマーの末端ポリマーブロックが比較的に硬質のポリマーブロックで形成されている場合、要するにAタイプのポリマーブロックで形成されている場合が総合的には有利であることがわかっている。(この場合のためには、室温で液状の粘着性樹脂の均一混和性の観点から、それ故に、中間ブロックとの相容性が特に有益である。)
【0043】
したがって、本発明の目的のための第二のブロックコポリマーは、最も簡単な場合には、2つのA−B副次的単位の連結物である。すなわち、これは一般的構造式A−B−A−Bを有するテトラブロックコポリマー又は一般的構造式A−B−Aで表されるトリブロックコポリマーと記載される。
【0044】
さらに、第二ブロックコポリマーのA−B−副次的単位は星型状に結合されて、放射状ブロックコポリマーを得てもよい。中心の結合位置は、ポリマーブロックの一部であるか又は別に使用される追加的な結合単位が役立つ。
【0045】
特に有利であるとここで推奨した2つの例に関係なく、第二のブロックコポリマー中のA−B副次的単位は原則として、A−B−副次的単位の分岐した連鎖中も含めて、任意の範囲で存在していてもよい。
【0046】
それ故に接着剤のベースポリマーとしてブロックコポリマーの混合物が得られる。この混合物は少なくとも50質量%までジブロックコポリマーよりなる。本発明の関係では、異なるブロックコポリマーの混合物並びに部分的に又は完全に水素化された生成物も使用することができる。ジブロックコポリマーは全体的に接着剤の軟らかさを決定しそしてそれ故に接着剤の接着力に寄与し、他方、マルチブロックコポリマーは実質的に接着剤の凝集性に寄与する。
【0047】
接着剤中に含まれる全てのブロックコポリマーの大部分が第一のブロックコポリマーで形成されるという限定のもとで、接着剤中の第一のブロックコポリマー及び第二のブロックコポリマーの割合は、接着剤中の第一のブロックコポリマー及び第二のブロックコポリマーの全割合が接着剤の全質量を規準として少なくとも20質量%で最高70質量%、好ましくは少なくとも30質量%で最高60質量%又はさらに好ましくは少なくとも35質量%で最高55質量%であるように規定することができる。
【0048】
非置換の及び/又は置換されたスチレンを少なくとも1つの芳香族基を含有するビニル化合物として使用する場合には、更に第一のブロックコポリマー及び/又は第二のブロックコポリマーのスチレンモノマー単位の割合は、接着剤の良好な凝集性を総合的に保証するために、その都度のブロックコポリマーの少なくとも20質量%を選択することができる。
【0049】
本発明の接着剤のブロックコポリマーは原則としてブロックコポリマーの公知の適当なあらゆる製造方法によって製造される。
【0050】
接着特性を意図的に制御するために接着剤は追加的な粘着性樹脂を有している。この種類の粘着性樹脂は、接着剤の接着力を総合的に向上させるために、要するに接着剤を粘着性にするために、一般にベースポリマーに混入される。
【0051】
粘着性樹脂としては公知の及び文献に開示されたあらゆる粘着性樹脂を例外なく使用することができる。一般に異なる種類の粘着性樹脂の混合物も適するが、粘着性樹脂は唯一の種類の粘着性樹脂で構成されていてもよい。
【0052】
粘着性樹脂としては原則としてあらゆる適する粘着性樹脂を使用することができる。例えばコロホニウム又はそれの誘導体をベースとする未水素化、部分水素化又は完全水素化樹脂、ジシクロペンタジエンの水素化ポリマー、C5−、C5/C9−又はC9−モノマーをベースとする未水素化、部分水素化、選択的水素化又は完全水素化炭化水素樹脂、リモネン類、例えばδ−リモネン及び/又はピネン類、例えばα−ピネン及びβ−ピネンをベースとするポリテルペン樹脂並びにそれらの混合物がある。これらの内、例えばα−ピネンを使用することができる。この場合、これらの粘着性樹脂の少なくとも1種類は少なくとも100℃の軟化点(ローリング・ボール法に従って測定)を有しており、室温でも固体であるのが有利である。
【0053】
しかしながら粘着性樹脂の選択の際には、本発明を実現するために、使用される全部の粘着性樹脂の少なくとも30質量%が室温で液状で存在し或いは室温で液状で存在する1種類以上の粘着性樹脂で構成されていることが重要である。
【0054】
更に室温で液状の少なくとも1種類の粘着性樹脂はAタイプのポリマーブロックと均一に混和できず、その代わりBタイプのブロックポリマーと混和できる必要がある。それ故に液状の粘着性樹脂は脂肪族ポリマーブロックとよりもビニル芳香族ポリマーブロックとの混和性が原則として悪いことに注意する必要がある。
【0055】
二成分が均一に混和できる(相容性がある)とは、相分離、すなわち混和しない状態又は分散した状態、例えばエマルジョン状態又は懸濁状態が見られることなくその都度に意図する混合比で二成分が均一相及び連続相の状態で互いに完全に混和できる場合を言う。液状粘着性樹脂の特別な態様の結果として粘着性樹脂はブロックコポリマーのエラストマーブロックとも相容性がありそしてそれ故にBタイプのポリマーブロックの場合に感圧接着剤内部に位置しており、それによって低温において接着剤の良好な接合性が全体として実現される。
【0056】
感圧接着剤は粘着性樹脂に加えて、接着剤の性質を意図的に変更又は調整すべき別の処方成分を有していてもよい。これらには適当なあらゆる添加物及び助剤が可能である。例えば第一酸化防止剤、例えば立体障害フェノール類;第二酸化防止剤、例えばホスフィト類又はチオエーテル;加工安定剤、例えばC−遊離基捕捉剤;光安定剤、例えば紫外線吸収剤及び立体障害アミン類;加工助剤又はエンドブロック補強樹脂がある。場合によっては添加物として他のポリマー、特にエラストマーの性質を持つポリマー、例えば不飽和ポリジエン類、天然又は合成ポリイソプレン又はポリブタジエン、実質的に飽和のエラストマー、例えば飽和のエチレン−プロピレン−コポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム並びに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有の又はビニルエーテル含有のポリオレフィンもある。これらは、ここに例示したものに限定されない。
【0057】
更に接着剤のポリマー成分を低温で使用するために意図的に調整することも可能である。例えば生じる接着剤が−15℃より低い、特に好ましくは−20℃より低いガラス転位温度を有するようにブロックコポリマーを選択することによって調整する。
【0058】
−15℃よりも低い、接着剤のガラス転移温度Tを達成するためには、接着剤の個々の成分を構造及び接着剤中の量的割合に関して、例えば、接着剤全体のガラス転移温度Tの所望の値をフローリ(Flory)及びホックス(Fox)によって完成された以下の如き式(G1)にしたがって得るように選択することができる:
【0059】
【数1】

【0060】
この式中、iは接着剤の使用される成分の数であり、Wはそれぞれの成分iの質量割合(質量%)でありそしてTG,iはそれぞれの成分iのガラス転位温度(K)である。
【0061】
この場合、2つのポリマーブロックを構成するブロックコポリマー、例えば第一のブロックコポリマー又は第二のブロックコポリマーは2つのガラス転移温度を有しており、それらはAタイプのポリマーブロック(硬質ブロック)及びBタイプのポリマーブロック(軟質ブロック)のガラス転移温度である。ブロックコポリマー全体のガラス転移温度の計算にとって重要なのは、この場合には主としてBタイプのポリマーブロックのガラス転移温度である。何故ならば使用される粘着性樹脂がこのポリマーブロックとのみ相容性があるからである。さらに、ブロックコポリマーのそれぞれの質量割合を決める場合にもBタイプのポリマーブロックの質量割合を考慮するべきである。
【0062】
本発明の接着剤の成分は、公知の及びこの種の混合に適するあらゆる方法で、例えば溶液状態で、分散物の状態で、(例えば押出機において)溶融物として又は混合装置、例えばニーダーにおいて混合される。組成物の製造は連続的に、半連続的に又は不連続的に、例えばバッチ法で実施することができる。使用するために、混合された感圧接着剤を一時的支持体(いわゆる加工ラインで)に又は永久的支持体に塗布することができる。
【0063】
本発明の接着剤は感圧接着性シート状要素の製造に使用することができる。本発明の意味でのシート状要素とは実質的に二次元の広がりを持つ通例の適当なあらゆる構造を意味している。本発明のシート状要素は接合を可能としそして種々の形状、特に柔軟性のある形状、例えば接着シート、接着テープ、接着ラベル又は造形打ち抜き物を形成しうる。粘着性シート状要素とは、既に僅かな押し圧で貼り付けることができるシート状要素である。この目的のためにはシート状要素は片面又は両面に少なくとも1種類の接着剤が塗布されている。この場合、両面接着性シート状要素の場合には、接着剤がシート状要素の異なる面で同じでも又は異なっていてもよい。
【0064】
この種類のシート状要素は支持体を有しているか又は支持体なしで形成されていてもよい。シート状要素が高い機械的負荷を掛けることができるべき場合には、一般に、支持体、例えばフィルム、織物、不織布、発泡体等が使用される。これに対して、シート状要素の支持体のない態様は、できるだけ小さい結合水準の接合を実現することを目的とする場合に有利である。
【0065】
この種類のシート状要素を製造するためには、あらゆる典型的な加工法を同様に使用することが可能である。例えば本発明の感圧接着剤を溶液、懸濁物又は溶融物から加工することが可能である。一般に、溶液又は溶融物からの加工を行う製造法及び加工法がめざされる。その際に溶融物からの加工が特に有利である。ここでも連続的、半連続的又は不連続的加工法を選択することができる。すなわち、バッチ法の他にこの種類の製造段階ではしばしば押出機の使用下での連続法を使用するのが通例である。
【0066】
本発明の接着剤を使用するとき、低い環境温度でも非極性の基体、要するに、45mJ/cmより低い表面エネルギーを持つ表面との接合に卓越的に適する感圧接着性シート状要素が製造される。例えば、低温でも少なくとも8N/cmの高密度ポリエチレン(HDPE)に対して高い接着力を示す感圧接着性シート状要素を製造することが可能である。
【0067】
別の長所及び用途可能性は以下に詳細に説明する実施例から明らかである。
【0068】
一般的な本発明の思想を説明するために、5種類の異なる感圧接着剤を製造し並びに2種類の他の感圧接着剤を比較例として実例説明する。(比較例の感圧接着剤は、粘着性樹脂として使用できない室温で液状の成分を含有している。)この目的のために感圧接着剤の個々の成分をトルエンに溶解した。得られる溶液の固形分含有量は40質量%に調整した。こうして得られた溶液をコーティングバーによってポリエステルフィルム(36μmの厚さのポリエチレンテレフタレート)の片面に塗布しそして次の乾燥段階で100℃でトルエンを除去した。得られる塗布量はそれぞれ50g/m2であった。
【0069】
第一のブロックコポリマーとして及び第二のブロックコポリマーとして以下の市販のブロックコポリマーを使用した。
− Quintac 3433:約56質量%のジブロックコポリマー(第一のブロックコポリマー)部分及び全部で約16質量%のポリスチレンのポリマーブロック部分(Aタイプ)を有する日本ゼオン株式会社のスチレン・イソプレン・スチレンコポリマー(SIS)。
− Kraton D 1118:約76質量%のジブロックコポリマー(第一のブロックコポリマー)部分及び全部で約31質量%のポリスチレンのポリマーブロック部分(Aタイプ)を有するKraton Polymers社のスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー(SBS)。
− Kraton D 1102:約14質量%のジブロックコポリマー(第一のブロックコポリマー)部分及び全部で約30質量%のポリスチレンのポリマーブロック部分(Aタイプ)を有するKraton Polymers社のスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー。及び
− Solprene 1205:約100質量%のジブロックコポリマー(第一のブロックコポリマー)部分及び約18質量%のポリスチレンのポリマーブロック部分(Aタイプ)を有するHousmex社のスチレン・ブタジエンブロックコポリマー(SB)。
【0070】
粘着性樹脂として、室温で液状であった二種類の市販の粘着性樹脂の混合物をそれぞれ使用した。室温で固体の粘着性樹脂として以下の樹脂を使用した:
− Pentalyn H-E:約110℃の軟化点(ローリング・ボール法)及び48℃のガラス転位温度を有するEastman 社の水素化コロホニウムエステル;
− Dercolyte A 115:約115℃の軟化温度及び74℃のガラス転位温度を有するDRT 社のα−ピネン樹脂;
− Piccolyte A 135:約135℃の軟化温度及び89℃のガラス転位温度を有するHercules 社のα−ピネン樹脂。
【0071】
室温で液状の粘着性樹脂として以下の樹脂を使用した:
− Picco A 10:−48℃のガラス転位温度を有するEastman 社の液状炭化水素樹脂;
− Foralyn 5020:−31℃のガラス転位温度を有するEastman 社の液状コロホニウム樹脂;及び
− Wingtack 10:−31℃のガラス転位温度を有するGoodyear 社の液状炭化水素樹脂。
【0072】
室温で液状であるが粘着性樹脂として役立たない成分として、−64℃のガラス転位温度を有するナフテン油を比較例のために使用した(Shellflex 371 :製造元 Shell)。
【0073】
5種類の本発明の接着剤E1、E2、E3、E4及びE5並びに2つの比較例V1及びV2は表1に記載した組成を有していた(質量%で表示)。
【0074】
【表1】

【0075】
比較例として選択した接着剤は、ブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤である。これらは主要部分として粘着性樹脂を含有し、追加的に液状であるが自身は粘着性を有していない油を含有している。
【0076】
これらの接着剤を塗布する前に、半分の質量の老化防止剤(立体障害フェノール:Irganox 1010 ;製造元 Ciba Additive)及び紫外線防止剤(Tinuvin P;製造元 Ciba Additive)を添加した。
【0077】
こうして得られた片面感圧接着性シート状要素をそれの接着技術的性質に関して、すなわち接着力、初期粘着性及び保持力に関して試験した。
【0078】
接着力の測定は次のとおり実施した:規定の基体として鋼鉄表面並びにポリエチレン(PE)面を使用した。試験する接着可能なシート状要素を20mmの幅及び約25cmの長さに切断し、取り扱い領域を設けそしてその直後に4kgの鋼鉄性ローラで五回10m/分の前進速度でそれぞれの選択された基体の上に押し付ける。その直後に、接着可能なシート状要素を180°の角度で基体から引張り試験装置(Zwick社製)で引き剥がす。室温でこの引き剥がしに必要な力を測定した。測定値(N/cm)は三回の個々の測定から得られる平均値とした。
【0079】
接着剤の内部強度の目安として接着可能なシート状要素の剪断強度を静的剪断試験において保持力として測定した。この測定のために、13mmの幅及び約20mmの長さの接着可能なシート状要素を鋼鉄製の規定の試験用基体に塗布しそして2kgの鋼鉄性ローラを用いて長手方向に4回30mm/分の前進速度で一定の押し圧で押し付ける。接着可能なシート状要素を室温で一定の剪断負荷をかけそして試験用基体から剥ぎ取るまでの時間を保持時間(分)として測定する。保持時間のそれぞれの値を三度の測定の平均値として得る。剪断荷重は標準条件(すなわち23℃の周囲温度及び250%の相対湿度のもとで)10Nでありそして60℃の周囲温度のもとでは5Nであった。
【0080】
初期粘着性の測定を次のとおり実施した:非常に短い接触時間のもとでの初期粘着性の目安としていわゆる“ローリングボール法粘着”試験で測定した。接着性シート状要素の約30cmの長さのストリップを接着剤側を上に向けて緊張状態で試験面の上に水平に固定する。鋼鉄製の試験用ボール(直径11mm;質量45.6g)をアセトンで洗浄しそして標準状態(温度23℃+/- 1°C;相対湿度50%+/- 1%)で30分状態調整する。測定において、鋼鉄球は65mmの高さの傾斜台(傾斜角21°)から重力で転がり落とすことによって加速される。鋼鉄球は傾斜台から試料の粘着性表面上を真っ直ぐ進む。該球が停止するまで接着剤上を進んだ距離を測定する。こうして測定された転がり距離を、極性の転がり物体の場合の感圧接着剤の初期粘着性についての反比例での目安として役立つ(すなわち、転がり距離が短ければ短いほど、初期粘着性が大きく、そしてこの逆もまた同様である)。それぞれの測定値は、接着性シート状要素について個々に5回測定した値の平均値として得た(長さ表示:mm)。
【0081】
最後にそれぞれの粘着剤についてガラス転位温度をDSCによって測定した。
【0082】
ここで得られた結果を表2に総括掲載する。
【0083】
【表2】

【0084】
測定値は、本発明の試料及び比較例が室温において鋼鉄製基体及びポリエチレン製基体上に対して平均的な接着力を持つことを示している。しかしながら、−10℃の環境温度では本発明の試料はポリエチレンに対して液状油が混入された比較例の接着剤よりも著しく高い接着力を示した。本発明の接着剤について測定された低温での接着力は比較例の相応する値の4〜10倍大きかった。それどころか、ある場合には22倍より大きかった。この場合(試料E5)にはベースポリマー混合物(例えば40質量%)と粘着性樹脂(約60質量%)とよりなる接着剤が適している。その際にベースポリマー混合物の約60質量%はポリスチレンブロックとポリブタジエンブロックを有するジブロックコポリマーよりなり(接着剤を規準として24質量%に相当する)そして粘着性樹脂の約42質量%は室温で液状の脂肪族粘着性樹脂でありそして粘着性樹脂の残りの58質量%は固体のα−ピネン樹脂である(接着剤を規準としてそれぞれ約25質量%及び35質量%に相当する)。この試料の高い接着力は、固体粘着性樹脂及び液状粘着性樹脂を含む粘着性樹脂の特に高い割合に起因している。
【0085】
室温では試験した全ての試料が高い保持力を示した。予想したとおり、本発明の接着剤(E1及びE2)の一部は保持力が高温において著しく低下したが、これらの接着剤は低温で使用するのに最適化したものであり、粘着性樹脂の固体成分に比較して液状粘着性樹脂は少ない割合でしか含まれていない。これに対して、残りの試料E3、E4及びE5は比較例の接着剤よりも、高温で高い保持力を示した。
【0086】
極性表面を持つ試験体(鋼鉄製球)に対しての初期粘着性は全ての実施例において十分に良好であったが、試料E3の場合にはそれどころか非常に良好であった。測定したガラス転位温度は本発明の試料の場合には−20℃で一貫しており、これに対して比較例の場合には比較的に高いガラス転位温度が測定された。
【0087】
したがって、液状の粘着性樹脂を使用している結果として、低温でも非極性基体に対して非常に高い接着力を示す感圧接着剤を製造することが可能であることがわかる。これに対して油を混入した比較例の感圧接着剤の場合にはこれは観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性樹脂、一般的構造A−Bの第一のブロックコポリマー及び一般的構造A−Bの少なくとも2で、最高11の連結された副次的単位よりなる第二のブロックコポリマーを含む感圧接着剤であって、前記Aはいずれの場合にも、少なくとも1つの芳香族基を含むビニル化合物よりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、前記Bは非置換の及び/又は置換された1,3−ジエンよりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックであり、そして第一のブロックコポリマーが接着剤中のブロックコポリマーの全質量を規準として少なくとも50質量%の割合で存在する上記感圧接着剤において、
粘着性樹脂の全質量を規準として該粘着性樹脂の少なくとも30質量%が室温で液状であり、
室温で液状である粘着性樹脂がポリマーブロックAと均一に混和することができずそして更にポリマーブロックBと実質的に均一に混和し得る粘着性樹脂であることを特徴とする、上記感圧接着剤。
【請求項2】
室温で液状である粘着性樹脂が脂肪族の粘着性樹脂である、請求項1に記載の感圧接着剤。
【請求項3】
感圧接着剤が−15℃より低い、特に−20℃より低いガラス転位温度に調整されている、請求項1又は2に記載の感圧接着剤。
【請求項4】
粘着性樹脂がポリテルペン樹脂、好ましくはリモネン類及び/又はピネン類、特にα−ピネンをベースとする樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項5】
粘着性樹脂が少なくとも+100℃の軟化点を有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項6】
Aがそれぞれ、非置換の及び/又は置換されたスチレンよりなる群から選択されるモノマー単位を含有するポリマーブロックである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項7】
Bがそれぞれ、非置換の及び/又は置換された1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンよりなる群から選択されるモノマー単位を含むポリマーブロックである、請求項1〜6のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項8】
第一のブロックコポリマー及び/又は第二のブロックコポリマーが非置換の及び/又は置換されたスチレンよりなる群から選択される少なくとも20質量%の割合のモノマー単位を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項9】
第二のブロックコポリマー中の副次的単位が互いに線状又は星型状に連結されている、請求項1〜8いずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項10】
第一のブロックコポリマー及び第二のブロックコポリマーが一緒にして、感圧接着剤の全質量を規準としてそれぞれ少なくとも20質量%で最高70質量%の割合で、好ましくは少なくとも30質量%で最高60質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%で最高55質量%の割合で存在している、請求項1〜9のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の感圧接着剤の、感圧接着性のシート状要素の製造での用途。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の感圧接着剤を含む感圧接着性のシート状要素。
【請求項13】
45mJ/cmより低い表面エネルギーを持つ表面と接合するための、請求項12に記載の感圧接着性のシート状要素の用途。

【公開番号】特開2009−149889(P2009−149889A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323344(P2008−323344)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(507249591)テーザ・アクチエンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】