説明

非水電解液二次電池パック

【課題】 非水電解質二次電池を複数直列する電池パックにおいて、単電池のばらつきによる電池パックの劣化を抑制し、安全性を維持させながら、個々の電池の電圧監視回路などの電圧監視手段を半減することを可能にする。
【解決手段】 この非水電解質電池パックにおいては、予め非水電解質二次電池パックの充電電圧を設定し、この設定した非水電解質二次電池パックの充電電圧の半分の値よりも0.8V高い充電電圧にて、前記電池パックを構成する個々の非水電解質電池を25℃、0.1Cレートにて充電した場合の25℃における0.1C放電容量と、前記設定した充電電圧の半分の値の電圧にて充電した場合の25℃における0.1C放電容量の容量変化率が、90%以上である非水電解質二次電池を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、非水電解質二次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Liイオンが負極と正極を移動することにより充放電が行われる非水電解質二次電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。このような非水電解質二次電池は、環境問題の観点から、特に電気自動車やエンジンとモーターを併用するハイブリッド自動車などの大型用電源として期待されている。また自動車用途に限らず、大型電源としての非水電解質二次電池は非常に着目されている。
【0003】
非水電解質二次電池の1つとしてリチウムイオン二次電池があげられるが、殆どのリチウムイオン二次電池は、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO)あるいはマンガン酸リチウム(LiMn)等が用いられ、負極にグラファイト系材料が用いられている。このような組み合わせの二次電池は、多くの場合、3Vから4.2Vの間で使用され、電池の平均動作電圧は3.7V程度になる。この電池を大型電源として活用するためには、複数の直列接続を行い、用途によっては数百Vかそれ以上まで高める必要がある。
【0004】
リチウムイオン二次電池は高いエネルギー密度を有する半面、その安全性が問題視されている。安全性を高めるために、種々の工夫が施され、改良が施されているものの、特に過充電時は、負極の場合、グラファイト系材料表面で金属リチウムの析出がおこりやすく、また、正極の場合LiCoOから酸素が放出されやすくなり、熱暴走を引き起こす要因となっており、安全性の観点から大きな問題となることが知られている。
【0005】
このようなリチウムイオン二次電池を大量に直列接続をするためには、電池個々の電圧を常に監視する制御方法が常に必要となる。例えば、リチウムイオン二次電池の10直列パックを充電するために、42Vの電圧を電池パックにかけた場合、通常に全ての電池が機能していれば、それぞれの電池は4.2Vにて充電されるが、万が一、1つのセルがショートして0Vになってしまった場合、9個の電池が42Vの電圧がかかるため、1個平均4.7Vもの電圧がかかってしまう。この場合、個々のセルはあきらかに過充電状態になり、発火の可能性が高くなる。
【0006】
安全性の観点だけでなく、例えば電池パックにて充放電サイクルを行うと、内部の温度ムラ等により、容量劣化速度が異なり、最終的には、電池個々の容量、電圧がばらついてしまう。リチウムイオン二次電池は充電電圧が0.1V高くなるだけでも容量劣化が大きくなるため、電池パックそのものも、極端に劣化してしまう。
【0007】
以上の観点からも、従来のリチウムイオン二次電池にて複数直列を行う場合には、1つ1つの電池電圧を監視する回路が必須の構成となり、装置が大がかりなものになるという欠点があった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−67928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本実施の形態は、非水電解質二次電池を複数直列する電池パックにおいて、単電池のばらつきによる電池パックの劣化を抑制し、安全性を維持させながら、個々の電池の電圧監視回路など電圧監視手段を半減することのできる電池パックを提供する。

【課題を解決するための手段】
【0010】
この実施の形態の2直列非水電解質電池パックは、予め非水電解質二次電池パックの充電電圧を設定し、この設定した非水電解質二次電池パックの充電電圧の半分の値よりも0.8V高い充電電圧にて、前記電池パックを構成する個々の非水電解質電池を25℃、0.1Cレートにて充電した場合の25℃における0.1C放電容量と、前記設定した充電電圧の半分の値の電圧にて充電した場合の25℃における0.1C放電容量の容量変化率が、90%以上である非水電解質二次電池を採用することを特徴とするものである。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一般的なリチウムイオン二次電池の1Cレートでの充電曲線を示すグラフである。
【図2】図2は、本実施の形態のリチウムイオン二次電池の1Cレートでの充電曲線を示すグラフである。
【図3】図3は、本実施の形態の電池を適用することのできる薄型非水電解質二次電池の部分欠截斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、従来一般的なリチウムイオン二次電池を例にあげて説明する。
正極材料にLiCoOおよび負極材料にグラファイトを用いた場合、正極は主にLiCoOの層状を形成しながらLiが連続的に挿入・脱離する。LiCoOは、電池の充電深度(State Of Charge;以後SOC)を100%にした状態でも、LiCoOの可逆性を保ち、かつ、熱的な安定性を確保するために、LiCoO内のLiが完全に抜けないように正極と負極の容量バランスが塗布量により制御されている。従って、リチウムイオン二次電池において、SOC100%の状態から強制的に充電し続けると、正極からさらにリチウムが引き抜かれ、可逆性が悪く、熱安定性も失いやすい。また、正極から引き抜かれたリチウムは、負極グラファイト表面にリチウム金属の状態として析出する。この状態では、電池電圧が連続的に上昇し、充電電圧に比例して見かけ上容量が増加する。従って、SOC100%の状態から電圧上昇に伴い容量が顕著に増加する状態は、サイクル性能を悪化させるばかりか、電池の安全性にも過大な問題が残る。
【0013】
このようなリチウムイオン二次電池を2つ直列させた電池パックについて説明する。
図1に一般的なリチウムイオン二次電池の1Cレートでの充電曲線を示す。例えば、正極をニッケル酸リチウム(LiNiO)、負極にグラファイトを用いた場合、図のように充電深度(SOC)に応じて連続的に電位が変化する挙動を示すことが多い。このような同じリチウムイオン二次電池を二直列で管理することを考える。2つの電池、AとBとを直列に接続した電池パックは本来、図1で示した(a)のように、個々の電池電圧挙動が等しい状態が理想的である。しかしながら、電池パック内の温度ムラによる自己放電等により、電池Aと電池BとのSOCが徐々にずれやすくなる。極端な例を図1の(b)にて示した。この例は、片方の電池Bが、自己放電等で当初設定していたSOCよりも低い状態になったため、電池AがSOC80%、電池BがSOC50%になった状態を示している。
【0014】
このような状態で2直列電池パックに8.4Vの充電を施そうとすると、電池パック電圧が8.4Vに達したときには、電池Aは4.4V、電池Bは4.0Vになる可能性がある。この場合、電池Aは本来適正な充電電圧を超えた、過充電状態になるので、電池性能が劣化しやすくなるばかりか、電池発火といった大変危険な状態に陥る。
【0015】
従って、リチウムイオン二次電池の場合、2直列に限らず複数直列の電池パックを作製するにあたり、1つ1つの電池電圧を監視するための回路を電池内あるいは、電池外の制御システムに組み込むことがある。このようにすることで、電池パック内のSOCばらつきがおきたとしても、構成する電池の過充電を防ぐことができるが、電池の数ほどの監視回路が必要となるため、システムは大掛かりになってしまう。
【0016】
これに対して、予め非水電解質二次電池パックの充電電圧を設定し、この設定した非水電解質二次電池パックの充電電圧の半分の値よりも0.8V高い充電電圧にて、構成する個々の電池を25℃、0.1Cレートにて充電した場合の25℃における0.1C放電容量と、前記設定した充電電圧の半分の値の電圧にて充電した場合の25℃における0.1C放電容量の容量変化率が、90%以上である非水電解質二次電池を採用することにより、前記課題を解決することができることが判明した。
なお、単電池を満充電電圧まで充電した際の充電容量(電気量)を1時間で割った電流値を1Cとした。
【0017】
すなわち、非水電解質電池の充電電圧を4.2Vに設定した場合、この4.2Vの半分の電圧、つまり2.1Vでの充電を0.1Cレートに行い、0.1Cレートでの放電容量を測定した値をC2とした時、0.8V高い電圧、つまり2.9Vでの充電を25℃、0.1Cレートにて行い、0.1Cレートでの放電容量をC1とした時、C2/C1×100(%)を算出し、90%以上になる電池を選び、電池パックとする。これにより、前記課題が解決された電池パックを得ることができる。
【0018】
上記本実施の形態で、単一の非水電解質二次電池の評価において、充電電圧の設定値の半分の電圧より0.8V高い電圧で充電した場合と、充電電圧の設定値の半分の電圧で充電した場合の放電容量を比較したが、これは以下の理由による。
充電電圧の設定値の半分の電圧より0.8Vを超える電圧で充電した場合、電池内の電解液分解などの副反応が顕著に起こりやすい。このような場合、見かけ上、充電容量が増大、その一方で劣化などによる放電容量が減少するおそれがあり、本発明を達成させるための正確な容量比率の算出(C2/C1×100(%))が困難になる。

【0019】
また、充電電圧の設定値は、外部装置の充電電圧により決定することができる。好ましい充電電圧の設定値としては、非水電解質二次電池パックのSOC50%における電圧よりも0.8V高い電圧値である。0.8Vを超えると非水電解質二次電池の劣化を招きやすい。

【0020】
以下、本実施の形態を、代表的な構成例を用いてさらに詳しく説明する。
【0021】
例えば正極がLiFePO、負極がLiTi12から構成される場合、25℃におけるSOC50%の開回路電圧は約1.8Vを示した。つまり2直列の電池パックの場合、約3.6Vの電圧を示した。この非水電解質二次電池の電池パックにおける充電電圧を4.2Vに設定した。
【0022】
このような非水電解質二次電池を2直列にし、電池パックを作製した。この時の充電挙動を図2の(a)に示した。このように正極LiFePO、負極LiTi12から構成される電池は、約1.9Vに平坦な領域を持ち、充電末期あるいは充電初期は非常に急峻に電圧が変化する特徴を持ちやすい。図2の(b)に、先ほどの図1の(b)で示したのと同様に、この2直列の電池パックがパック内部の温度ムラ等による自己放電ばらつき、劣化等により、電池パック内の電池AがSOC80%、電池BがSOC50%を示した電池パックの充電曲線の例を示した。このような電池パックに4.2Vの充電電圧にて充電を行うと、充電末期に電池Bの電圧はほぼ一定状態であるが、電池Aは急激に電圧が上昇しはじめる。電池Aが実質SOC100%になる状態では電池Aの電圧が2.1V付近に達しているのに対し、電池AはSOC70%の状態であるものの電圧はSOC50%とほぼ等しく、電池パックの電圧は4Vにしか達していない。電池パックの充電電圧が4.2Vに設定されているため、電池Bは事実上過充電状態に陥る。
【0023】
しかしながら、本発明の電池は、上述の例にあわせると、充電電圧が2.1Vの時の容量と0.8V高い2.9Vの時の容量との比率が90%以上である。つまり、本発明の非水電解質二次電池は、充電末期に電位が急上昇する特徴があり、この比率が短ければ短いほど、充電末期の副反応は起こりにくい。事実、電池AはSOC100%を越えたあたりから急峻に電圧が上昇し、電池Aが1.9Vであったとしても、電池Bの電圧はすぐに2.3Vに達するため、電池劣化も起こりにくく、安全性が損なわれる危険性がはるかに少なくなる。従って、2直列に電池を接続する場合、電池電圧を管理する回路が省略できる。
【0024】
このように、本発明では充電末期にて充電曲線が急峻であるほど、各々の電池のSOCがパック内部のバラツキにより異なる値を示したとしても、電池パック全体の安全性は保たれる。従って、本発明の請求項1のように、構成する個々の電池を25℃、0.1Cレートにて充電した場合、非水電解質二次電池パックの充電電圧の半分の値にて充電した場合の0.1C放電容量と充電電圧の半分の値より0.8V高い電圧にて充電した場合の25℃における0.1C放電容量の容量変化率が、90%以上の場合は、充電末期の電位上昇が急激に変化するために、電池パック全体の安全性が保たれる。一方、90%未満の場合は、電圧変化がゆるやかになる、つまり、個々の電池が過充電にさらされる時間がながくなるため、電池が劣化しやすくなるばかりか、安全性が損なわれる危険性があるため、各々の電池電圧を監視する仕組みが必須となる。
【0025】
上記知見に基づいて本発明者らが検討した結果、本実施の形態の非水電解質二次電池の正負極材料として、それぞれ、オリビン型のリチウムリン酸鉄(LiFePO)及び、スピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)を用い、このリチウムイオン二次電池を2直列ずつ、直列接続を行うことにより、電圧監視手段を従来の半分に減らしても、高い安全性を維持しつつ、優れた電池性能を維持できることを見出した。
【0026】
これらの材料は、充電末期の電圧変化が急峻である特徴を備えており、本実施の形態の材料として適している。この2つの材料は、反応全体の殆どが、放電状態の結晶相と充電状態の結晶相の二相共存反応による充放電機構にて進行するため、充電中の平坦性が高く、かつ充電末期の電圧変化が急峻となるため、本発明の趣旨にもっとも好適である。
しかしながら、この材料の組合せは、あくまでも、上記実施の形態の一例であり、上記容量変化率の特徴を備えている材料であれば、他の材料であってもこの発明において使用することができる。
【0027】
本実施の形態の電池パックにおいて用いることのできる非水電解質電池は、非水電解質と、正極と、本発明の非水電解質電池用負極材料を負極活物質として含む負極とを具備するものである。
【0028】
1)正極
本実施の形態の非水電解質二次電池パックで用いる正極材料としては、平均粒径が0.05μm以上25μm以下のオリビン型のリチウム燐酸鉄が好ましい。このほかにも、スピネル型のリチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn)、層状構造を持つリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiNiMnCo;x+y+z=1)のような化合物を用いることができる。
【0029】
充電末期の電圧変化を急峻にするためには、正極のオリビン型のリチウム燐酸鉄の平均粒径を制御する必要がある。0.05μm未満の場合、ナノ粒子化による表面エネルギーの影響にて、リチウム燐酸鉄の充放電曲線が全体的になだらかなになるため、充電末期の電圧変化が急峻にはならない。一方、25μmを超えると、リチウム燐酸鉄のレート性能が悪化しやすい。
【0030】
正極は、LiFePOを正極活物質とし、正極活物質、導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布し、乾燥し、プレスして帯状電極にすることにより作製される。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0031】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80〜95質量%、導電剤3〜20質量%、結着剤2〜7質量%の範囲にすることが好ましい。
【0032】
2)負極
本実施の形態の非水電解質二次電池パックで用いる負極材料としては、平均粒径が0.1μm以上50μm以下であるスピネル型チタン酸リチウムが好ましい。
【0033】
充電末期の電圧変化を急峻にするためには、負極のスピネル型のチタン酸リチウムの平均粒径を制御する必要がある。0.1μm未満の場合、ナノ粒子化による表面エネルギーの影響にて、リチウム燐酸鉄の充放電曲線が全体的になだらかなになるため、充電末期の電圧変化が急峻にはならない。一方50μmを超えると、リチウム燐酸鉄のレート性能が悪化しやすい。
【0034】
負極にはチタン酸リチウムを用いる。負極電極の作製には、本発明の非水電解質電池用負極材料を含むチタン酸リチウム、導電剤及び結着剤からなる負極合剤を適当な溶媒に懸濁して混合し、塗液としたものを集電体の片面もしくは両面に塗布し、乾燥することにより作製される。
【0035】
さらに、負極には使用される導電剤としては、通常炭素材料が使用される。前述した負極活物質に用いる炭素材料として、アルカリ金属の吸蔵性と導電性との両特性の高いものがあれば、負極活物質として用いる前述の炭素材料を導電剤と兼用させることが可能であるが、メソフェーズピッチカーボンファイバーなどの炭素吸蔵性の高い黒鉛のみでは導電性が低くなるため、導電剤として使用される炭素材料としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック等を負極に使用することが好ましい。
【0036】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0037】
前記負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質70〜95質量%、導電剤0〜25質量%、結着剤2〜10質量%の範囲にすることが好ましい。
【0038】
3)非水電解質
前記非水電解質は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される液体状非水電解質(非水電解液)、高分子材料に前記非水溶媒と前記電解質を含有した高分子ゲル状電解質、高分子材料に前記電解質を含有した高分子固体電解質、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質が挙げられる。
【0039】
液状非水電解質に用いられる非水溶媒としては、リチウム電池で公知の非水溶媒を用いることができ、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートや、環状カーボネートと環状カーボネートより低粘度の非水溶媒(以下第2の溶媒)との混合溶媒を主体とする非水溶媒などを挙げることができる。
【0040】
第2の溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、環状エーテルとしてテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなど、鎖状エーテルとしてジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどが挙げられる。
【0041】
電解質としては、アルカリ塩が挙げられるが、とくにリチウム塩が挙げられる。リチウム塩として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)などが挙げられる。特に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)が好ましい。前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lとすることが好ましい。
【0042】
ゲル状電解質として前記溶媒と前記電解質を高分子材料に溶解しゲル状にしたもので、高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PECO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0043】
固体電解質としては、前記電解質を高分子材料に溶解し、固体化したものである。高分子材料としてはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PEO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。また、無機固体電解質として、リチウムを含有したセラミック材料が挙げられる。なかでもLiN、LiPO−LiS−SiSガラスなどが挙げられる。
【0044】
正極と負極の間には、セパレータを配置することができる。また、このセパレータと併せてゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いても良いし、セパレータの代わりにゲル状もしくは固体の非水電解質層を用いることも可能である。セパレータは、正極および負極が接触するのを防止するためのものであり、絶縁性材料で構成される。さらに、正極および負極の間を電解質が移動可能な形状のものが使用される。具体的には、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムあるいは、セルロース系のセパレータが可能である。
【0045】
非水電解質電池の一実施形態である薄型非水電解質二次電池の部分切欠斜視図を示す。扁平型の電極群11は、正極12と負極13をその間にセパレータ14を介在させて扁平形状にした構造を有する。帯状の正極端子15は、正極12に電気的に接続されている。帯状の負極端子16は、負極13に電気的に接続されている。電極群11は、ラミネートフィルム製外装袋17内に正極端子15および負極端子16の端部を外装袋17から延出させた状態で収納されている。非水電解液は、ラミネートフィルム製外装袋17内に収容されている。ラミネートフィルム製外装袋17は、その開口部を正極端子15および負極端子16と共にヒートシールにより電極群11および非水電解液が封止されている。


【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
<正極の作製>
平均粒径0.5μmのLiFePO粉末を正極活物質とし、アセチレンブラック、グラファイト、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、100:8:8:6の割合(いずれも質量%)にてミキサーを用いて混合した。さらにN−メチルピロリドンを加えて混合し、厚さ15μmのアルミニウム箔の集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度2.0〜3.5g/cmの正極を作製した。
【0047】
<負極の作製>
負極活物質としては、平均粒径1.2μmのスピネル型リチウムチタン酸化物に、負極活物質材料の粉末85質量%に導電剤としてのグラファイト5質量%と、同じく導電剤としてのアセチレンブラック3質量%と、PVdF7質量%と、NMPとを加えて混合し、厚さ11μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥し、プレスすることにより負極を作製した。
【0048】
<電極群の作製>
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルム及びセルロースからなるセパレータ、前記負極、及び前記セパレータをそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。
【0049】
<非水電解液の調製>
さらに、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒に(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0モル/L溶解して非水電解液を調製した。
【0050】
前記電極群及び前記電解液をラミネートフィルム内にそれぞれ収納して、容量3Ahの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0051】
<電池パックの作製>
上述のように作製した円筒形非水電解質二次電池を直列に接続するために、2つの電池の正極と負極の両端を厚さ1mm、幅1cmの銅製のリードと抵抗溶接し、2直列電池パックを作製した。今回は、発明の効果を検証するために、それぞれの電池の正極端子と負極端子にリード線を繋げ、それぞれの電圧が測定できるようにした。
【0052】
<個々の電池の容量確認>
実施例1では、2直列電池の充電電圧の設定値を4.2Vとした。この設定値に基づき、25℃環境下にて、その設定値の半分(すなわち2.1V)の+0.8V(すなわち2.9V)にて0.1Cレートにて充電し、0.1Cレートにて放電した容量(C1)と、充電電圧の設定値の半分(すなわち2.1V)にて0.1Cレートにて充電し、0.1Cレートにて放電した容量(C2)の比率、C2/C1×100(%)を確認したところ、96%であった。
【0053】
(実施例2〜8)
表1に示すような平均粒子径を持つ正極材料と負極材料を用いた他は、実施例1と同様な方法にて、電池ならびに電池パックを作製した。作製した電池パックの充電電圧を表1に従って設定した。さらに、個々の電池容量と充電電圧の関係を測定した結果、上述のC2/C1×100(%)の値についても表1にまとめた。
【表1】

【0054】
(比較例1)
正極にコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極にグラファイトを用いたこと以外は、実施例1と同様に電池ならびに電池パックを作製した。
【0055】
<実験>
電池パック内を構成する個々の電池のSOCばらつき現象は、本来、長期の保存による自己放電や設置された温度ムラにより生じやすい。しかしながら本測定においては、加速試験のために、実施例1〜8、および比較例1の電池パックを一度ばらして、それぞれ構成する電池、電池AがSOC80%、電池Bが50%になるように、意図的にSOCがばらついた状態の電池パックを構成した。
【0056】
その後、得られた電池パックを再び設定した充電電圧まで1Cレートにて充電した時の2つの電池の電圧を測定した結果を表2にまとめた。
【0057】
これらの電池を1Cレート、45℃環境下にて、充放電サイクル試験を行った。なお、放電カットオフ電圧は、設定充電電圧から2V低い電圧(つまり、4.2Vであれば1.2Vまで放電)とした。それぞれの電池パックを構成する電池の初回の厚さを測定し、500サイクル後の厚さを測定し、電池パック劣化の指標とした。その厚さ変化を表2に示す。
【表2】

【0058】
電池Aは総じて電池Bに比べると総じて膨れやすいが、比較例1に比べると本発明の電池は殆ど膨れていないことが分かる。比較例1については、基準の電圧(つまりは電池B)以内の充放電では殆ど膨れていないのに対し、基準の電圧を大きく上回ると膨れが顕著に発生する。このような大きな膨れは、さらに時間が経過すると、膨れはより大きくなり、電池破裂につながる可能性がある。実施例と比較例の差は、すでに述べたように、SOCのズレにより、電池Aが過充電となるが、その過充電にさらされる時間が本発明よりも長くなるためであると考えられる。一方、本発明の実施例1〜8については、過充電になっても、その時間が非常に短いため、電圧上昇の影響を殆ど受けないためであると考えられる。
【0059】
このように、本発明では、電池パック内の電池のSOCがずれたとしても、電池の安全性を損なうことがないため、電池パック作製時において、各々の電池の電圧監視する必要がないことが確認できた。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】
【0062】
11…電極群
12…正極
13…負極
14…セパレータ
15…正極端子
16…負極端子
17…外装袋



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の非水電解質電池を直列に接続した電池パックにおいて、予め非水電解質二次電池パックの充電電圧を設定し、この設定した非水電解質二次電池パックの充電電圧の半分の値よりも0.8V高い充電電圧にて、構成する個々の電池を25℃、0.1Cレートにて充電した場合の25℃における0.1C放電容量と、前記設定した充電電圧の半分の値の電圧にて充電した場合の25℃における0.1C放電容量の容量変化率が、90%以上である非水電解質二次電池を採用することを特徴とする非水電解質二次電池パック。
【請求項2】
前記非水電解質二次電池の正極材料がオリビン型のリチウム燐酸鉄であり、前記非水電解質二次電池の負極材料がスピネル型リチウムチタン酸であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項3】
前記オリビン型のリチウム燐酸鉄の平均粒径が、0.05μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池パック。
【請求項4】
前記スピネル型リチウムチタン酸の平均粒径が、0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池パック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−43683(P2012−43683A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184798(P2010−184798)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】