説明

非水電解質二次電池

【課題】粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とを含む負極を用いた非水電解質二次電池において、高温環境下においても優れた充放電サイクル特性が得られるようにする。
【解決手段】正極1と、負極2と、セパレータ3と、非水電解液とを備えた非水電解質二次電池において、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とが含まれる負極を用いると共に、上記の非水電解液に、フッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートを含有させ、この非水電解質二次電池の充電状態における負極の単位面積当たりのLi吸蔵量をA、負極の単位面積当たりの理論最大Li吸蔵量をBとした場合において、(A/B)×100で示される負極の利用率(%)を45%以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と、負極と、上記の正極と負極との間に介在されるセパレータと、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液とを備えた非水電解質二次電池に関する。特に、高い電池容量が得られるように、負極における負極活物質に粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金を用いた非水電解質二次電池において、高温環境下での充放電によって容量が大きく低下するのを防止し、高温環境下においても優れた充放電サイクル特性が得られるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器や電力貯蔵用等の電源として、非水電解液を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて、充放電を行うようにした非水電解質二次電池が利用されている。
【0003】
そして、このような非水電解質二次電池においては、その負極における負極活物質として黒鉛材料が広く利用されている。ここで、黒鉛材料の場合、放電電位が平坦であると共に、リチウムイオンが黒鉛結晶層間に挿入・脱離されて充放電されるため、針状の金属リチウムの発生が抑制され、充放電による体積変化も少ないという利点がある。
【0004】
一方、近年においては、携帯電話、ノートパソコン、PDA等のモバイル機器の小型化・軽量化が著しく進行しており、また多機能化に伴って消費電力も増加しており、これらの電源として使用される非水電解質二次電池においても、軽量化及び高容量化の要望が高まっている。
【0005】
しかし、負極活物質に黒鉛材料を用いた場合、黒鉛材料における容量が必ずしも十分であるとはいえず、上記のような要望に十分に対応することができないという問題があった。
【0006】
このため、近年においては、高容量の負極活物質として、シリコン、ゲルマニウム、スズ等のリチウムと合金を形成する材料を用いることが検討されている。特に、シリコンは1g当り約4000mAhの高い理論容量を示すことから、負極活物質として、シリコンやシリコン合金を使用することが検討されている。
【0007】
しかし、リチウムと合金を形成するシリコン等の材料を負極活物質に使用にした場合、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きく、充放電により膨化して劣化するという問題があった。また、シリコン等の材料は一般に使用されている非水電解液と反応しやすく、非水電解液との反応によりシリコン等の負極活物質が劣化して、充放電サイクル特性が低下する等の問題があった。
【0008】
ここで、特許文献1には、負極集電体上にリチウムと合金を形成する材料からなる負極活物質の薄膜を形成し、この負極活物質の薄膜を厚み方向に形成された切れ目によって柱状に分離させると共に、非水電解液中にカーボネート化合物、特に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのフッ素が結合されたエチレンカーボネート化合物等を添加することが提案されている。これにより、充放電によって負極活物質が膨化して劣化したり、この負極活物質が非水電解液と反応して劣化したりするのが抑制されることが示されている。
【0009】
また、特許文献2においては、SiやSnを含む負極活物質を用いた電池において、電解液中にハロゲン化環状炭酸エステルを含む溶媒を含有させたものが示されている。そして、この特許文献2においては、ハロゲン化環状炭酸エステルを含む溶媒を含有させることにより、電極表面に良好な被膜が形成され、電解液の分解を抑制して、充放電効率を向上させることができ、また低温における放電容量も向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−86058号公報
【特許文献2】特開2006−294403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願の発明者は、負極活物質にシリコンやシリコン合金を用いた非水電解質二次電池において、非水電解液に、フッ素が結合されたカーボネート化合物やフッ素が結合されたエチレンカーボネート系化合物を含有させた非水電解質二次電池の充放電サイクルの特性について検討した。
【0012】
まず、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、溶射法、めっき法等によりシリコンやシリコン合金を負極集電体上に形成した負極を用いた、上記のような非水電解質二次電池について検討した結果、このような非水電解質二次電池は、高温環境下において充放電させた場合にも、充放電サイクル特性が向上されたままであった。
一方、上記の負極に比べて製造が容易で、製造コストも安い、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とを含む負極を用いた非水電解質二次電池においては、高温環境下において充放電させた場合、フッ素が結合されたカーボネート化合物やフッ素が結合されたエチレンカーボネート系化合物が負極と反応した。このため、この非水電解質二次電池においては、非水電解液にフッ素が結合されたカーボネート化合物やフッ素が結合されたエチレンカーボネート系化合物を含有させていないものよりも、充放電サイクル特性が低下するということが分かった。
【0013】
本発明は、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とを含む負極を用いた非水電解質二次電池において、高温環境下において充放電させた場合においても、充放電サイクル特性が大きく低下するのを抑制し、高温環境下においても優れた充放電サイクル特性が得られるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、上記のような課題を解決するため、正極と、負極と、上記の正極と負極との間に介在されるセパレータと、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液とを備えた非水電解質二次電池において、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とが含まれる負極を用いた場合に、上記の非水電解液に、下記の一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートを含有させると共に、この非水電解質二次電池の充電状態における負極の単位面積当たりのLi吸蔵量をA、負極の単位面積当たりの理論最大Li吸蔵量をBとした場合において、(A/B)×100で示される負極利用率(%)が45%以下になるようにした。
【化1】


(式中、R1〜R4は水素基とフッ素基とアルキル基とから選択される基であり、フッ素基とアルキル基とがそれぞれ少なくとも1つ含まれている。)
【0015】
非水電解液に含有させる一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートとしては、例えば、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−4,5,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどを用いることができる。
【0016】
特に、負極活物質が充放電により膨化して劣化するのを抑制して、非水電解質二次電池における充放電サイクル特性を向上させるためには、電気化学的に安定している4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いることが望ましい。
【0017】
さらに、上記の非水電解液に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとから選択される少なくとも1種を含有させることが好ましい。このようにエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとから選択される少なくとも1種を非水電解液に含有させると、フッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートと、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートとの相互作用により、負極に良好な被膜が形成される。この結果、高温での充放電反応がさらに向上されて、高温環境下における充放電サイクル特性がさらに向上される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非水電解質二次電池のように、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とが含まれる負極を用いた場合において、非水電解液に、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートを含有させると、通常の環境下における充放電時に、負極活物質と非水電解液とが反応するのが抑制され、充放電サイクル特性が向上される。
【0019】
また、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートは、アルキル基を有していないフッ素化環状カーボネートに比べて、このフッ素化環状カーボネートにおける活性水素の数が減少する。これにより、高温環境下においても、フッ素化環状カーボネートが負極と反応するのが抑制され、充放電サイクル特性が低下するのが防止されると考えられる。
【0020】
さらに、本発明の非水電解質二次電池のように、非水電解質二次電池の充電状態における負極の単位面積当たりのLi吸蔵量をA、負極の単位面積当たりの理論最大Li吸蔵量をBとした場合において、(A/B)×100で示される負極利用率(%)を45%以下にすると、充放電による負極活物質の膨張・収縮が抑制されて、充放電を安定して繰り返すことができるようになる。
これは、非水電解質二次電池の充放電の深度が深くなると、シリコンの膨張・収縮が大きくなり、多くの新たな活性な表面が現れ、活性な表面と電解液の反応が過剰になる。このため、充放電を安定して行うことができなくなることによるものと考えられる。したがって、負極活物質の活性が高くなりすぎるということもなく、負極活物質が非水電解液とが反応するのが適切に抑制され、充放電サイクル特性がさらに向上されるようになる。
【0021】
この結果、本発明の非水電解質二次電池においては、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とが含まれる負極を用いた場合においても、通常環境下だけではなく、高温環境下においても、優れた充放電サイクル特性が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例及び比較例において作製した扁平電極体の部分断面説明図及び概略斜視図である。
【図2】実施例及び比較例において作製した非水電解質二次電池の概略平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池について具体的な説明する。なお、本発明の非水電解質二次電池は下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0024】
(実施例1)
正極を作製するにあたっては、正極活物質として、LiCoO2で表わされるコバルト酸リチウム(平均粒子径13μm,BET比表面積0.35m2/g)の表面にジルコニウムを固着させたものを用いた。そして、この正極活物質と、導電剤の炭素材料粉末と、結着剤のポリフッ化ビニリデンとが95:2.5:2.5の質量比になるようにし、これにN−メチル−2−ピロリドン溶液を加えて混練し、正極合剤スラリーを調製した。
【0025】
正極集電体として、厚み15μm,長さ402mm,幅50mmのアルミニウム箔を用いた。正極合剤スラリーを、正極集電体の片面には長さ340mm,幅50mmで塗布し、反対側の面には長さ271mm,幅50mmで塗布し、これを乾燥させて圧延して、正極を作製した。ここで、正極の厚みは143μmで、正極集電体上の正極合剤の量は48mg/cm2であり、正極合剤の充填密度は3.75g/ccであった。
【0026】
そして、正極において、正極合剤が塗布されていない部分に、厚み70μm,長さ35mm,幅4mmのアルミニウム平板からなる正極集電タブを取り付けた。
【0027】
なお、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池において、その正極に用いる正極活物質としては、一般に使用されている公知の正極活物質を用いることができる。例えば、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMn24,LiMnO2等のリチウム・マンガン複合酸化物、LiNi1-xCox2(0<x<1)等のリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物、LiMn1-xCox2(0<x<1)等のリチウム・マンガン・コバルト複合酸化物、LiNixCoyMnz2(x+y+z=1)等のリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物、LiNixCoyAlz2(x+y+z=1)等のリチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物等のリチウム含有遷移金属酸化物などを用いることができる。
【0028】
ここで、正極活物質にコバルト酸リチウムLiCoO2を用いる場合、その結晶構造を安定化させて充放電サイクル特性を向上させると共に、非水電解液との界面とにおいて充放電反応以外の副反応が生じるのを抑制するため、その表面にジルコニウムを固着させることが望ましい。
【0029】
負極を作製するにあたっては、負極活物質に平均粒子径が10μmのシリコン粉末(純度99.9%)を用いた。そして、この負極活物質と、導電剤である黒鉛粉末と、結着剤である熱可塑性ポリイミドとを、87:3:7.5の質量比になるようにして、これらにN−メチル−2−ピロリドン溶液を加え、これを混練して負極合剤スラリーを調製した。なお、熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は295℃であった。
【0030】
負極集電体として、表面粗さRaが0.3μmで、厚みが20μmのCu−Ni−Si−Mg(Ni:3wt%,Si:0.65wt%,Mg0.15wt%)合金箔を用いた。負極合剤スラリーを、負極集電体の両面に塗布し、これを乾燥させた。なお、負極集電体上の負極合剤の量は5.6mg/cm2であった。
【0031】
そして、負極合剤を設けた負極集電体を、長さ380mm,幅52mmの長方形状に切り抜いて圧延させ、アルゴン雰囲気中において400℃で10時間熱処理して焼結させて負極を作製した。なお、焼結後の負極の厚みは56μmであった。
【0032】
次いで、負極の端部に厚み70μm,長さ35mm,幅4mmのニッケル平板からなる負極集電タブを取り付けた。
【0033】
なお、負極活物質に用いるシリコン合金としては、シリコンと他の1種以上の元素との固溶体、シリコンと他の1種以上の元素との金属間化合物、シリコンと他の1種以上の元素との共晶合金などを用いることができる。
【0034】
また、結着剤としては、強度の高いポリイミドを用いることが好ましい。そして、このようなポリイミドを用いると、充放電によって粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質が膨化して劣化するのも抑制される。
【0035】
また、負極集電体としては、その表面粗さRaが0.2μm以上のものを用いることが好ましい。このような表面粗さRaが0.2μm以上の負極集電体を用いると、負極活物質と負極集電体との接触面積が大きくなると共に、負極集電体の表面の凹凸部分に結着剤が入り込むようになる。そして、この状態でこれを焼結させると、アンカー効果も発現して、負極活物質と負極集電体との密着性が大きく向上し、充放電時における負極活物質の膨張・収縮によって負極活物質が負極集電体から剥離したりするのが一層抑制されるようになる。
【0036】
また、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とを含む負極合剤を負極集電体の表面に付与し、これを圧延した後、結着剤のガラス転移温度以上の温度で焼結させると、負極活物質相互の密着性及び負極活物質と負極集電体との密着性を高められる。この結果、充放電時における負極活物質の膨張・収縮によって負極活物質が負極集電体から剥離したりするのが抑制される。
【0037】
非水電解液を作製するにあたっては、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートの4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いた。この混合溶媒に、溶質としてLiPF6を1.0mol/lの濃度になるように溶解させ、さらにこれに対して炭酸ガスを0.4質量%溶解させて非水電解液を作製した。
【0038】
なお、非水電解液の作製において、非水系溶媒に溶解させる溶質としては、非水電解質二次電池において一般に使用されているリチウム塩を用いることができる。例えば、LiPF6,LiBF4,LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(C25SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiC(C25SO23,LiAsF6,LiClO4,Li210Cl10,Li212Cl12や、これらの混合物等を用いることができる。また、これらのリチウム塩に加えて、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を含ませることが好ましい。そして、このようなオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、リチウム−ビス(オキサラト)ボレートなどを用いることができる。
【0039】
非水電解質二次電池を作製するにあたっては、厚さ22μm、長さ430mm、幅54.5mmのポリエチレン製多孔質体からなるセパレータを2枚用いた。図1(A),(B)に示すように、正極1と負極2とをセパレータ3を介して対向するように配置して、これらを所定の位置で折り曲げるようにして巻回し、これをプレスして扁平電極体10を作製した。正極1と負極2とに設けた正極集電タブ1aと負極集電タブ2aとをこの扁平電極体10から突出させた。
【0040】
次いで、図2に示すように、扁平電極体10をアルミニウムラミネートフィルムで構成された電池容器20内に収容させた。そして、この電池容器20内に非水電解液を加え、正極集電タブ1aと負極集電タブ2aとを外部に取り出すようにして、電池容器20の開口部を封口させた。これにより、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池が作製された。
【0041】
(実施例2)
実施例2においては、実施例1における非水電解液の作製において、エチレンカーボネート(EC)に代えてプロピレンカーボネート(PC)を用いた。非水系溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)と、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0042】
(実施例3)
実施例3においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを20:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0043】
(実施例4)
実施例4においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、アルキル基を有していないフッ素化環状カーボネートの4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0044】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0045】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0046】
(比較例3)
比較例3においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを20:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0047】
(比較例4)
比較例4においては、実施例1における非水電解液の作製において、非水系溶媒として、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを20:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が950mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
ここで、実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池においては、充電状態における負極の単位面積当たりのLi吸蔵量をA、負極の単位面積当たりの理論最大Li吸蔵量をBとした場合に、(A/B)×100で示される負極利用率(%)が何れも40%であった。
【0049】
次に、設計容量が950mAhになった実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池について、それぞれ25℃の室温条件において、190mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が47mAになるまで定電圧充電させた。その後、190mAの定電流で2.75Vになるまで放電させて、初期充放電を行った。
【0050】
初期充放電させた実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池を、それぞれ25℃の室温条件において、950mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が47mAになるまで定電圧充電させた後、950mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0051】
そして、実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池について、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、下記の式により、それぞれ25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0052】
容量維持率=(Q200/Q1)×100
【0053】
また、初期充放電させた実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池を、それぞれ45℃の高温条件において、950mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が47mAになるまで定電圧充電させた後、950mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0054】
そして、実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池について、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、それぞれ45℃の高温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0055】
そして、実施例1の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率をサイクル寿命100として、実施例1〜4及び比較例1〜4の各非水電解質二次電池における、25℃の室温条件及び45℃の高温条件におけるサイクル寿命を求め、その結果を下記の表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
フッ素化環状カーボネートを含有させた非水電解液を用いた実施例1〜4及び比較例1,4の各非水電解質二次電池は、フッ素化環状カーボネートを含有させていない非水電解液を用いた比較例2,3の非水電解質二次電池に比べて、室温条件におけるサイクル寿命が大きく向上していた。
【0058】
また、フッ素化環状カーボネートとして、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)を含有させた実施例1〜4の各非水電解質二次電池においては、比較例1及び4の非水電解質二次電池と比較して、室温条件におけるサイクル寿命に対する高温条件におけるサイクル寿命の低下が少なくなっていた。
【0059】
また、非水電解液に、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と一緒にエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートを含有させた実施例1,2の非水電解質二次電池は、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートを含有させていない実施例3,4の非水電解質二次電池に比べて、高温条件におけるサイクル寿命がさらに大きく向上していた。
【0060】
(比較例5)
正極を作製するにあたっては、実施例1における正極の作製において、正極の厚みが90μm、正極集電体上の正極合剤の量が28mg/cm2、正極合剤の充填密度が3.75g/ccに変更された正極を作製した。
【0061】
負極を作製するにあたっては、負極集電体として、表面粗さRaが0.3μmで、厚みが6μmのCu−Ni−Si−Mg(Ni:3wt%,Si:0.65wt%,Mg:0.15wt%)合金箔を用いた。この負極集電体の両面に、Arのイオンビームを圧力0.05Pa、イオン電流密度0.27mA/cm2で照射した後、蒸着材料に単結晶シリコンを用い、電子ビーム蒸着法によりシリコン薄膜を形成した。
【0062】
ここで、シリコン薄膜が形成された負極集電体の断面をSEM観察して、その膜厚を測定した結果、負極集電体の両面に厚みが約10μmのシリコン薄膜が形成されていた。また、このシリコン薄膜を、ラマン分光法によって測定した結果、波長480cm-1近傍のピークは検出されたが、520cm-1近傍のピークは検出されなかった。このため、このシリコン薄膜は、非晶質のシリコン薄膜であることが分かった。
【0063】
そして、負極集電体の両面にシリコン薄膜を形成したものを、長さ380mm,幅52mmの長方形状に切り抜いた。これに実施例1の場合と同様に、負極集電タブを取り付けて負極を作製した。
【0064】
非水電解液の作製にあたっては、非水系溶媒として、比較例1と同様に、エチレンカーボネート(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。
【0065】
そして、上記のようにして作製した正極と負極と上記の非水電解液を用いる以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が600mAhになった非水電解質二次電池を作製した。
【0066】
(比較例6)
比較例6においては、非水電解液の作製において、非水系溶媒として、実施例1と同様に、エチレンカーボネート(EC)と、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートの4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、比較例5の場合と同様にして、設計容量が600mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0067】
ここで、比較例5,6の各非水電解質二次電池においても、負極利用率(%)は何れも40%であった。
【0068】
次に、設計容量が600mAhになった比較例5,6の非水電解質二次電池について、25℃の室温条件において、120mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が30mAになるまで定電圧充電させた。その後、120mAの定電流で2.75Vになるまで放電させて、初期充放電を行った。
【0069】
初期充放電させた比較例5,6の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、600mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が30mAになるまで定電圧充電させた後、600mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0070】
そして、比較例5,6の非水電解質二次電池についても、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0071】
また、初期充放電させた比較例5,6の非水電解質二次電池を、45℃の高温条件において、600mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が30mAになるまで定電圧充電させた後、600mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0072】
そして、比較例5,6の非水電解質二次電池についても、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、45℃の高温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0073】
そして、比較例5の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率をサイクル寿命100として、比較例5,6の各非水電解質二次電池における、25℃の室温条件及び45℃の高温条件におけるサイクル寿命を求め、その結果を下記の表2に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
この結果、負極活物質のシリコンが負極集電体に蒸着によって形成された負極を用いた比較例5,6の非水電解質二次電池においては、非水電解液に、アルキル基を有していないフッ素化環状カーボネートと、フッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートとの何れを含有させた場合においても、室温条件におけるサイクル寿命に対して、高温条件におけるサイクル寿命が低下するということはなかった。
【0076】
このため、非水電解液に、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートを含有させることによって、高温条件におけるサイクル寿命が低下するのが抑制されるのは、負極活物質のシリコン粉末と結着剤とを負極集電体に塗布させた負極を用いた非水電解質二次電池における特有の効果であることが分かった。
【0077】
(比較例7)
正極を作製するにあたっては、実施例1における正極の作製において、正極の厚みが148μm、正極集電体上の正極合剤の量が50mg/cm2、正極合剤の充填密度が3.75g/ccに変更された正極を作製した。
【0078】
負極を作製するにあたっては、負極活物質の原料として、スズとコバルトとチタンとインジウムとからなる合金粒子と用いた。合金粒子は、スズとコバルトとチタンとインジウムとを45:45:9:1の原子比で混合し、これらを溶融して急冷させた後、これを粉砕することにより得た。
【0079】
そして、この合金粒子78質量部と、炭素材料のアセチレンブラック22質量部とを、アルゴン雰囲気中で遊星ボールミルを用いて15時間メカニカルアロイング処理を行って、複合合金粒子からなる負極活物質を得た。
【0080】
次いで、この負極活物質と導電剤である平均粒径が20μmの鱗片状の人造黒鉛とを6:4の質量比で混合したものに対して、結着剤のポリフッ化ビニリデンが98.4:1.6の質量比になるように加え、これにN−メチル−2−ピロリドン溶液を加えて混練し、負極合剤スラリーを調製した。
【0081】
そして、この負極合剤スラリーを、厚みが10μmの電解銅箔からなる負極集電の両面に塗布し、これを120℃で乾燥させた。なお、負極集電体上の負極合剤の量は19.5mg/cm2であった。
【0082】
その後、これをローラープレスにより圧延した後、これを長さ380mm,幅52mmの長方形状に切り抜いて負極を作製した。なお、この負極の厚みは75μmであった。
【0083】
そして、負極の端部に厚み70μm,長さ35mm,幅4mmのニッケル平板からなる負極集電タブを取り付けた。
【0084】
また、非水電解液としては、実施例1と同様に、非水系溶媒に、エチレンカーボネート(EC)と、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(4−FPC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を使用した非水電解液を用いるようにした。
【0085】
そして、上記のようにして作製した正極と負極と上記の非水電解液を用いる以外は、実施例1の場合と同様にして、設計容量が800mAhになった非水電解質二次電池を作製した。
【0086】
(比較例8)
比較例8においては、非水電解液の作製において、比較例1と同様に、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを10:10:80の体積比で混合させた混合溶媒を用いるようにした。それ以外は、比較例7の場合と同様にして、設計容量が800mAhの非水電解質二次電池を作製した。
ここで、比較例7,8の各非水電解質二次電池の負極利用率(%)は、何れも91%であった。比較例7,8の非水電解質二次電池のように負極活物質の原料としてスズ合金を用いた場合には、負極利用率が高くても充放電サイクルを繰り返しうる。
【0087】
次に、設計容量が800mAhになった比較例7,8の非水電解質二次電池について、それぞれ25℃の室温条件において、160mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が40mAになるまで定電圧充電させた。その後、160mAの定電流で2.5Vになるまで放電させて、初期充放電を行った。
【0088】
初期充放電させた比較例7,8の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、800mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が40mAになるまで定電圧充電させた後、800mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0089】
そして、比較例7,8の非水電解質二次電池についても、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0090】
また、初期充放電させた比較例7,8の非水電解質二次電池を、45℃の高温条件において、800mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が40mAになるまで定電圧充電させた後、800mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして200サイクルの充放電を繰り返して行った。
【0091】
そして、比較例7,8の非水電解質二次電池についても、それぞれ1サイクル目の放電容量Q1と200サイクル目の放電容量Q200とを求め、45℃の高温条件での200サイクル目の容量維持率を求めた。
【0092】
そして、比較例7の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での200サイクル目の容量維持率をサイクル寿命100として、比較例7,8の各非水電解質二次電池における、25℃の室温条件及び45℃の高温条件におけるサイクル寿命を求め、その結果を下記の表3に示した。
【0093】
【表3】

【0094】
この結果、負極活物質に、シリコン粒子に代えてスズ等の合金粒子を用いた比較例7,8の非水電解質二次電池においては、非水電解液に、アルキル基を有していないフッ素化環状カーボネートと、フッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートとの何れを含有させた場合においても、室温条件におけるサイクル寿命に対して、高温条件におけるサイクル寿命が低下するということはなかった。
【0095】
このため、非水電解液に、一般式(1)で表されるフッ素基とアルキル基とを有するフッ素化環状カーボネートを含有させることによって、高温条件におけるサイクル寿命が低下するのが抑制されるのは、負極活物質のシリコン粉末と結着剤とを負極集電体に塗布させた負極を用いた非水電解質二次電池における特有の効果であることが分かった。
【0096】
(実施例5)
正極を作製するにあたっては、実施例1の正極の作製において、正極合剤スラリーを正極集電体に塗布させる量だけを変更して、正極を作製した。なお、この正極においては、正極の厚みが151μm、正極集電体上の正極合剤の量が51mg/cm2であり、正極合剤の充填密度は3.75g/ccであった。
【0097】
また、負極を作製するにあたっては、実施例1の負極の作製において、負極集電体上の負極合剤の量が4.9mg/cm2に変更された負極を作製した。ここで、焼結後の負極の厚みが40μmであった。
【0098】
そして、上記のように作製した正極と負極とを使用し、実施例1と同じ非水電解液を用いて、実施例1の場合と同様にして非水電解質二次電池を作製した。なお、この実施例5の非水電解質二次電においては、設計容量が1060mAhであり、負極利用率(%)は45%になっていた。
【0099】
次に、設計容量が1060mAhになった実施例5の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、212mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が53mAになるまで定電圧充電させた。その後、212mAの定電流で2.75Vになるまで放電させて、初期充放電を行った。
【0100】
そして、このように初期充放電させた実施例5の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、1060mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が53mAになるまで定電圧充電させた後、1060mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして150サイクルの充放電を繰り返して行い、実施例5の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での150サイクル目の容量維持率を求めた。
【0101】
また、初期充放電させた実施例5の非水電解質二次電池を、45℃の高温条件において、1060mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が53mAになるまで定電圧充電させた後、1060mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして150サイクルの充放電を繰り返して行い、実施例5の非水電解質二次電池における45℃の高温条件での150サイクル目の容量維持率を求めた。
【0102】
(比較例9)
正極を作製するにあたっては、実施例1の正極の作製において、正極の厚みが159μm、正極集電体上の正極合剤の量が54mg/cm2に変更された正極を作製した。この正極合剤の充填密度は3.75g/ccであった。
【0103】
また、負極を作製するにあたっては、実施例1の負極の作製において、負極集電体上の負極合剤の量が3.6mg/cm2に変更された負極を作製した。ここで、焼結後の負極の厚みが40μmであった。
【0104】
そして、上記のように作製した正極と負極とを使用し、実施例1と同じ非水電解液を用いて、実施例1の場合と同様にして非水電解質二次電池を作製した。なお、この比較例9の非水電解質二次電池においては、設計容量が1140mAhであり、負極利用率(%)が63%になっていた。
【0105】
次に、設計容量が1140mAhになった比較例9の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、228mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が48mAになるまで定電圧充電させた。その後、228mAの定電流で2.75Vになるまで放電させて、初期充放電を行った。
【0106】
そして、このように初期充放電させた比較例9の非水電解質二次電池を、25℃の室温条件において、1140mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が57mAになるまで定電圧充電させた後、1140mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして150サイクルの充放電を繰り返して行い、比較例9の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での150サイクル目の容量維持率を求めた。
【0107】
また、初期充放電させた比較例9の非水電解質二次電池を、45℃の高温条件において、1140mAの定電流で4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が57mAになるまで定電圧充電させた後、1140mAの定電流で2.75Vになるまで放電させた。そして、これを1サイクルとして150サイクルの充放電を繰り返して行い、比較例9の非水電解質二次電池における45℃の高温条件での150サイクル目の容量維持率を求めた。
【0108】
そして、実施例1の非水電解質二次電池における25℃の室温条件での150サイクル目の容量維持率をサイクル寿命100とした指数で、実施例5及び比較例9の各非水電解質二次電池における、25℃の室温条件及び45℃の高温条件におけるサイクル寿命を求め、その結果を下記の表4に示した。
【0109】
【表4】

【0110】
この結果、負極利用率(%)が63%になった比較例9の非水電解質二次電池は、負極利用率(%)が45%以下になった実施例1,5の非水電解質二次電池に比べて、25℃の室温条件及び45℃の高温条件の何れのサイクル寿命も大幅に低下していた。
【0111】
これは、比較例9の非水電解質二次電池のように充放電の深度が深くなると、シリコンの膨張・収縮が大きくなり、多くの新たな活性な表面が現れ、活性な表面と電解液の反応が過剰になる。このため、充放電を安定して行うことができなくなるものと考えられる。
【符号の説明】
【0112】
10 扁平電極体
11 正極
11a 正極集電タブ
12 負極
12a 負極集電タブ
13 セパレータ
20 電池容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、上記の正極と負極との間に介在されるセパレータと、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液とを備えた非水電解質二次電池において、上記の負極に、粒子状のシリコン及び/又はシリコン合金からなる負極活物質と結着剤とが含まれると共に、上記の非水電解液に、下記の一般式(1)で表されるフッ素化環状カーボネートが含有され、この非水電解質二次電池の充電状態における負極の単位面積当たりのLi吸蔵量をA、負極の単位面積当たりの理論最大Li吸蔵量をBとした場合において、(A/B)×100で示される負極利用率(%)が45%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
【化1】

(式中、R1〜R4は水素基とフッ素基とアルキル基とから選択される基であり、フッ素基とアルキル基とがそれぞれ少なくとも1つ含まれている。)
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、前記のフッ素化環状カーボネートが、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンであることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池において、前記の非水電解液に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとから選択される少なくとも1種が含有されていることを特徴とする非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−108915(P2010−108915A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182966(P2009−182966)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】