説明

非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末、その製造方法及びリチウム二次電池

【課題】高密度及び高強度のような優れた物理的特性、高いリチウム貯蔵能によって達成された優れたエネルギー密度を有する新規の球形炭素質粉末、及びその製造方法を提供。
【解決手段】本発明は、0.1〜40μmの平均径を有し、ランダムに凝集した炭素薄片からなり、前記薄片の層間に形成された細孔を有する小球体と、前記細孔に挿入された非炭素材料とを含む非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末に提供する。本発明の球形炭素質粉末は高密度、高強度及び向上したリチウム貯蔵能を有し、これによって高エネルギー密度及び高容量を示すので、リチウム二次電池に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系リチウム2次電池の負極活物質として有用な非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末、その製造方法及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、ラップトップコンピュータ及びポータブルデジタルカメラの急速な大衆化によって、これらの機器に電力供給源として用いられる二次電池の電力密度及びエネルギー密度を改善する必要が生じた。従って、改善された性能特性を有するリチウム2次電池の新規な正極及び負極活物質を開発しようとする多くの試みがあった。
【0003】
リチウム二次電池の負極活物質としては、例えば、信頼性、電池放電特性、サイクル寿命及び安全性などの面で優れた性能特性を有するグラファイト系材料が用いられている。グラファイト系材料を含むリチウム二次電池においては、リチウムイオンがグラフェンの六角形空洞の大きさの制限によって結晶質グラファイトの基本グラフェン平面(basal graphen plane、六角形網状構造の面)を通過することができず、これによって電池の充電過程中に前記基本平面に垂直な平面の縁を通過してグラファイト層間に介在するようになる。
【0004】
グラファイトの理論容量密度(即ち、372mAh/g)に近い空洞(cavity)の密度を有する高結晶質天然グラファイトは、高効率の充放電及び長い寿命を達成し難いという欠点を有する。かかる問題を解決するため、ブルックス(Brooks,J.D.)らは合成グラファイト材料を提案した(非特許文献1)。しかし、この場合でも、リチウムイオンが電気化学的に挿入される場合、グラファイト結晶層間の間隔が最大10%まで膨脹するため、優れた電池性能を提供することができなく、また、これによって結晶の層間結合力が弱化し、反復した充放電サイクル後にはこれらの層が剥離するようになる。
【0005】
前記層間剥離によるグラファイト結晶構造崩壊の問題を解決するために、特許文献1はグラファイト材料の端(edge)面を低温焼結された炭素材料でコーティングする方法を提案した。しかし、この方法は、コーティングされた材料によるリチウムイオンの挿入量の減少、初期充電時における不可逆性の増大及び負極特性の劣化などの様々な問題点を有する。また、特許文献2は、球状又は纎維状体の合成グラファイト材料(例えば、メソカーボンマイクロビーズ(mesocarbon microbeads,MCMB)又はメソカーボンファイバー(mesocarbon fiber,MCF))の表面を硬質の非溶融性フィルムでコーティングする方法を開示している。しかし、前記方法は、合成グラファイト材料が非常に高価であり、天然グラファイト結晶に比べて低いエネルギー密度を有するという短所がある。
【0006】
従って、最近、前記のような天然グラファイトの欠点を補うため、低温焼結された炭素又は重合体で高結晶質の天然グラファイト複合体の製造方法を開発しようとする試みがあった(特許文献3)。しかし、前記生成複合体の層内におけるリチウムイオンの移動度がグラファイト結晶層に比べて遅く、前記複合体に挿入されたリチウムを除去するために必要な電位がグラファイト結晶に比べてより高いため、大電流放電には不向きであるという短所がある。
【非特許文献1】Carbon 3,185,1965
【特許文献1】米国特許第6,403,259号
【特許文献2】日本国特願第2000−261046号
【特許文献3】米国特許第6,589,696号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は高密度及び高強度のような優れた物理的特性、高いリチウム貯蔵能によって達成される優れたエネルギー密度を有する新規の球形炭素質粉末、その製造方法及びリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、ランダムに凝集した平均粒径0.1〜40μmの炭素薄片からなり、前記薄片の層間に形成された細孔を有する小球体と前記細孔内に挿入された非炭素材料とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素粉末の製造方法は、炭素薄片を窒素又は不活性気体の雰囲気下でガス状又は粉末状の非炭素材料と混合する工程と、得られた混合物を回転加圧する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のリチウム二次電池は、上記非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末を負極活物質として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、非炭素材料が炭素薄片との間の細孔内に存在するので密度及び強度が高い。また、本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、リチウム貯蔵能が向上して重量当たり及び体積当たりの高容量を有し、体積変化がなく、かつ向上した電気伝導度によって安定した寿命特性を示す。従って、本発明の粉末は高エネルギー密度のリチウム二次電池及びポータブル器機の小型化に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の一実施態様によれば、ランダムに凝集した平均粒径0.1〜40μmの炭素薄片からなり、前記薄片の層間に形成された細孔を有する小球体と前記細孔内に挿入された非炭素材料とを含む、非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末を提供する。
本発明の他の実施態様によれば、窒素又は不活性気体の雰囲気下で炭素薄片をガス状又は粉末状の非炭素材料と混合する段階、生成した混合物を回転加圧する段階とを含む、非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法を提供する。
本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、平均粒径0.1〜40μmの炭素薄片が全方向にランダムに分布された球形粉末(小球体)の基本骨格を形成しながら前記薄片層間に存在する細孔の内部に非炭素材料が挿入されていることを特徴とする。
【0013】
本願において、用語「炭素質粉末」はグラファイト、硬質炭素、軟質炭素などの炭素材料粉末を総称する。
本発明による非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、炭素薄片を窒素又は不活性気体の雰囲気下でガス状又は粉末状の非炭素材料と混合した後、生成混合物を回転加圧することによって得られる。
本発明で、用いられた非炭素材料がガス状である場合には、炭素薄片とガス状の非炭素材料との混合物を回転加圧する前又は後で熱処理し得る。
【0014】
また、本発明によれば、炭素薄片を非炭素材料と混合する前に回転加圧して小球体を形成した後、これを窒素又は不活性気体の雰囲気下で加圧し、ガス状の非炭素材料と混合した後で熱処理し得る。
【0015】
本発明において、回転加圧工程によって炭素薄片1を小球体に転換させる工程中に、前記炭素薄片1は、図1に示すように、ランダムに凝集して平均径10nm〜10μmの細孔を有した小球体を形成するようになり、前記細孔の内部に非炭素材料が挿入される。
細孔の内部に挿入される非炭素材料は単一金属成分、二種以上の金属成分の合金、又は金属酸化物又は窒化物であってもよい。
【0016】
本発明で、前記単一金属成分は元素周期表のIII族、IV族、及びV族元素からなる群から選択され得る。前記単一金属成分の代表的な例としては、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、及びビズマス(Bi)が挙げられる。
【0017】
また、合金が用いられる場合、前記合金は前記単一金属成分の中で選ばれた一つの金属と元素周期表のI族及びII族金属及び遷移金属から選ばれた少なくとも1つの元素を含むものが好ましい。前記合金の代表的な例としては、MgSi、CrSi及びNiSiなどのケイ化物(silicide)、CuSn、SnFe、SnSb、SnMn及びSnCoなどのスズ化合物、AlCuなどのアルミニド(aluminide)、及びCuSb及びInSbなどのアンチモン化物(antimonide)などが挙げられる。
【0018】
前記金属酸化物はM(ここで、Mは前記単一金属成分又は遷移金属であり、x及びyはそれぞれ独立的に1〜5範囲の数である)で表現される化合物であってもよく、その代表的な例としては、SiO及びSiOなどの酸化ケイ素、SnO及びSnOなどの酸化スズ、CoO及びCoなどの酸化コバルト、Feなどの酸化鉄、NiO及びNiOなどの酸化ニッケルなどが挙げられる。
【0019】
前記金属窒化物はM、Li3−xN、及びLi2x−1MN(ここで、Mは前記単一金属成分又は遷移金属であり、x及びyはそれぞれ独立的に1〜5範囲の数である)で表現される化合物のいずれか1つであってもよく、その代表的な例としては、Sn、Ge、Li2.6Co0.4N、Li2.6Ni0.4N、Li2.6Cu0.4N、LiMnN、LiBN、LiSiN、LiFeN及びLiAlNなどが挙げられる。
【0020】
本発明の方法の好適な実施態様は下記の工程を含み得る。
(A)図2Aに示すように、炭素薄片と粉末状の非炭素材料とを窒素又は不活性気体の雰囲気下で混合し、生成混合物を回転加圧する工程、
(B)図2Bに示すように、炭素薄片を窒素又は不活性気体の雰囲気下で加圧し、金属水素化物のようなガス状の非炭素材料と混合した後、生成した混合物を熱処理してから回転加圧する工程、
(C)図2Cに示すように、炭素薄片を回転加圧して小球体を形成した後、該小球体を金属水素化物のようなガス状の非炭素材料と混合しながら窒素又は不活性気体の雰囲気下で加圧した後、生成物を熱処理する工程、及び
(D)図2Dに示すように、窒素又は不活性気体の雰囲気下で炭素薄片と金属水素化物のようなガス状の非炭素材料3との混合物を回転加圧した後、生成物を熱処理する工程。
【0021】
前記工程において、炭素材料は平均粒子径が1μm〜10mm、好ましくは5μm〜1,000μm、より好ましくは10μm〜500μmである。
前記工程(A)に用いられる粉末状の非炭素材料は、平均粒子径が1nm〜1mm、好ましくは10nm〜10μm範囲であってもよく、グラファイトの理論容量密度である372mAh/gより高い容量密度を有する単一金属成分又はその合金、又は金属酸化物又は窒化物系材料であってもよい。前記非炭素材料は炭素材料を基準に1〜70体積%の範囲、好ましくは20〜40体積%の範囲で挿入され得る。
【0022】
前記工程(B)〜(D)で用いられるガス状の非炭素材料はM(ここで、Mは前記単一金属成分であり、x及びyはそれぞれ1〜5範囲の数である)で表現される金属水素化物が好ましく、その代表的な例としては、水素化ケイ素(SiH)、水素化ゲルマニウム(GeH)、水素化スズ(SnH)、水素化鉛(Pb)、水素化アンチモン(SbH)及び水素化ビズマス(BiH)が挙げられる。前記ガス状の非炭素材料は、炭素材料1g当たり0.03〜0.10リットル(l)/分の流量で用い得る。
前記不活性気体はアルゴン又はヘリウムであってもよく、前記回転加圧は1〜1,000kg/cmのせん断応力及び300〜20,000mm/秒の接線速度の条件下で行われ得る。
【0023】
本発明における前記回転加圧工程は、モーターによって発生される吸入空気の作用によって粉末が移送されるピン(pin)付きローター(rotor)が備えられた通常の小球体形成装置を用いて行われ得る。前記小球体形成装置に移送された炭素質粉末はローターの回転加圧性運動によって小球体になる。
【0024】
本発明の方法によって得られた球形炭素質粉末は、小球体の細孔の内部に非炭素材料が挿入されて高密度及び高強度を有し、非炭素材料の高エネルギー密度のために優れたリチウム貯蔵能を示す。
【0025】
本発明において、前記小球体の表面上に存在して小球体の体積、電気伝導性及び酸素との親和性に影響を及ぼし得る金属性不純物を除去するために、図6に概略的に示すように、前記非炭素材料2が挿入された球形炭素質粉末をさらにコーティングし得る。なお、図6中の符番4はココーティング層を示す。前記コーティング工程は、球形炭素質粉末をコーティング材料と混合して生成混合物を回転加圧した後、生成物を100〜3,000℃、好ましくは1,200〜3,000℃で加熱炭化して粉末表面上の不純物を除去することで行われ、これによって粉末の表面特性が改善される。前記コーティング材料は石油ピッチ(pitch)、コールタール(coal tar)ピッチ又は熱可塑性樹脂であってもよい。
【0026】
本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、非炭素材料が炭素薄片との間の細孔内に存在するので密度及び強度が高い。また、本発明の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末は、リチウム貯蔵能が向上して重量当たり及び体積当たりの高容量を有し、体積変化がなく、かつ向上した電気伝導度によって安定した寿命特性を示す。従って、本発明の粉末は高エネルギー密度のリチウム二次電池及びポータブル器機の小型化に有用である。
【0027】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を制限しない。
【0028】
(実施例1):工程(A)による非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造
天然グラファイト薄片1.4kgを平均粒径50μmに粉砕した後、生成した粉末を平均粒径2μmのケイ素粉末0.56kgと一緒にアルゴンガス雰囲気下で小球体形成器に供給した。生成混合物を初期回転速度300mm/秒で室温で1分間混合した。得られた混合物を350kg/cmのせん断応力及び1,100mm/秒の接線速度で1時間回転加圧してケイ素粒子が細孔内に挿入された平均粒径18μmの球形炭素質粉末を得た(図2A参照)。
【0029】
(実施例2):工程(B)による非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造
硬質炭素薄片1.4kgを平均粒径50μmに粉砕した後、生成した粉末をアルゴンガス雰囲気下で小球体形成器に供給した。前記小球体形成器の圧力を約500mmHgに減圧した後、これに水素化ケイ素ガス(SiH)を100リットル/分の流量で5分間導入した。前記小球体形成器の温度を200℃に上昇させて水素化ケイ素ガスの分解反応を誘導した。前記分解によって生成した水素ガスを排出口を通じて排出し、前記小球体形成器を大気圧に保持した。得られた生成物を350kg/cmのせん断応力及び1,100mm/秒の接線速度で1時間回転加圧して、ケイ素粒子が細孔内に挿入された平均粒径18μmの球形炭素質粉末を得た(図2B参照)。
【0030】
(実施例3):工程(C)による非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造
人造グラファイト薄片1.4kgを平均粒径50μmに粉砕した後、生成した粉末を小球体形成器に供給し、350kg/cmのせん断応力及び1,100mm/秒の接線速度で回転加圧して球形炭素質粉末を得た。小球体形成器にアルゴンガスを供給して非活性雰囲気に保持した後、圧力を約500mmHgに減圧した。この小球体形成器に水素化ケイ素ガスを100リットル/分の流量で5分間導入した後、前記小球体形成器の温度を200℃に上昇させて水素化ケイ素の分解を誘導した。前記分解によって生成した水素ガスを排出口を通じて排出しながら前記小球体形成器を大気圧に保持してケイ素粒子が細孔内に挿入された平均粒径18μmの球形炭素質粉末を得た(図2C参照)。
【0031】
(実施例4):工程(D)による非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造
コークス粉末1.4kgを平均粒径50μmに粉砕した後、生成した粉末を不活性アルゴン雰囲気に保持された小球体形成器に供給し、これに水素化ケイ素ガスを100リットル/分の流量で5分間導入した。生成混合物を350kg/cmのせん断応力及び1,100mm/秒の接線速度で回転加圧して球形炭素質粉末を製造した。次いで、前記小球体形成器の圧力を約500mmHgに減圧した後、温度を200℃に上昇させて水素化ケイ素の分解を誘導した。前記分解によって生成した水素ガスを排出口を通じて排出しながら前記小球体形成器を大気圧に保持してケイ素粒子が細孔内に挿入された平均粒径18μmの球形炭素質粉末を得た(図2D参照)。
【0032】
(実施例5〜8):非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末のコーティング
前記実施例1〜4で得られた平均粒径18μmの球形炭素質粉末10kgずつをそれぞれ2kgの石油メソフェース(mesophase)ピッチと、アルゴンガス雰囲気に保持された二重円筒状回転加圧ミル(mill)で均質に混合した後、生成混合物を11,500mm/秒の接線速度で回転加圧して表面コーティングされた球形粉末を製造した。このようにしてコーティングされた粉末をアルゴンガス雰囲気下で1,200℃で10時間加熱してメソフェースピッチを炭化させてそれぞれ平均粒径20μmのコーティングされた非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末を得た。
【0033】
(比較例1):コーティングされた球形炭素質粉末の製造
平均粒径50μmに粉砕された天然グラファイトの薄片1.4kgを小球体形成器に供給し、350kg/cmのせん断応力及び1,100mm/秒の接線速度で1時間回転加圧して球形炭素質粉末を製造した(図1参照)。この炭素質粉末を前記実施例5〜8と同一な工程によってコーティングして、平均粒径20μmのコーティングされた球形炭素質粉末を製造した。
【0034】
(比較例2):炭素−非炭素複合体の製造
天然グラファイト薄片70gを平均粒径50μmに粉砕した後、生成した粉末をアルゴンガス雰囲気下で平均粒径2μmのケイ素粉末30gと混合した。生成混合物を200rpmの回転速度で5時間ボールミル粉砕(この際、原料対ボールの重量比は1:8となるようにした)して平均粒径3μmの炭素−ケイ素複合体を製造した。
【0035】
(試験例)
前記実施例5〜8で得たコーティングされた非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末、比較例1で得られたコーティングされた球形炭素質粉末、及び比較例2で得られた炭素−非炭素複合体のリチウム二次電池用負極活物質としての電池特性を評価した。
【0036】
各粉末を導電材料としてのスーパー ピー ブラック(Super P Black,MMMカーボン社製)及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(アルドリッチ社製)と、炭素材料:導電材料:バインダーが70:20:10の重量比になるように混合した。生成混合物を銅箔集電体上にキャストした後、乾燥圧縮して負極極板を製造し、これを分離膜及びリチウム電極と順次に積層してリチウム二次電池用半電池を製作した。基準電極として用いられたリチウム金属及び分離膜は市販製品を購入して追加的な精製なしで実験に用い、電解液は1M六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含むエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1(体積比)溶液(Starlyte、第一毛織社製)であった。
【0037】
前記半電池に対して単位重量当たり37mAの電気電流密度を用いて充放電試験を行い、その充放電容量を測定した。この際、充放電カットオフはそれぞれ0Vと3Vの電位に制御し、前記工程は10回繰り返して平均値を求めた。
【0038】
下記表1に示すように、比較例1で得たコーティングされた球形炭素質粉末は10回の間、約350mAh/gの容量を示し、比較例2で得た炭素−非炭素複合体の場合、充/放電を繰り返すにつれて充放電容量特性が急激に劣化した。一方、実施例5〜8で得たコーティングされた非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末を含む半電池は充/放電サイクルを繰り返しても高い充放電容量を保持した。従って、本発明による非炭素材料を含む炭素材料は高い充放電容量を示すだけでなく、安定したサイクル寿命を有することが分かる。
【表1】

【0039】
前述したように、本発明を具体的な実施例により説明したが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当該技術分野における熟練者が多様に変形及び変化させ得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】回転加圧による炭素材料の小球体の製造過程を示す概略図である。
【図2A】本発明の各実施態様による非炭素材量が挿入された球形炭素質粉末の製造過程を示す概略図である。
【図2B】本発明の各実施態様による非炭素材量が挿入された球形炭素質粉末の製造過程を示す概略図である。
【図2C】本発明の各実施態様による非炭素材量が挿入された球形炭素質粉末の製造過程を示す概略図である。
【図2D】本発明の各実施態様による非炭素材量が挿入された球形炭素質粉末の製造過程を示す概略図である。
【図3】非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末のコーティング工程を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムに凝集した平均粒径0.1〜40μmの炭素薄片からなり、前記薄片の層間に形成された細孔を有する小球体と前記細孔内に挿入された非炭素材料とを含むことを特徴とする非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項2】
前記非炭素材料が単一金属成分、2種以上の金属成分の合金、金属酸化物及び金属窒化物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項3】
前記単一金属成分が元素周期表III族〜V族元素のいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項4】
前記単一金属成分がケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)からなる群から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項5】
前記合金が前記単一金属成分と元素周期表のI族及びII族金属及び遷移金属から選ばれた少なくとも1つの元素の合金であることを特徴とする請求項2に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項6】
前記合金がMgSi、CrSi、NiSi、CuSn、SnFe、SnSb、SnMn、SnCo、AlCu、CuSb及びInSbからなる群から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項7】
前記金属酸化物がMxOyで表現される化合物(ここで、Mは前記単一金属成分又は遷移金属であって、x及びyはそれぞれ独立的に1〜5範囲の数である)であることを特徴とする請求項2に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項8】
前記金属酸化物がSiO、SiO、SnO、SnO、CoO、Co、Fe、NiO及びNiOからなる群から選ばれる、請求項7に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項9】
前記金属窒化物がM、Li3−xxN又はLi2−xMNで表現される化合物(ここで、Mは前記単一金属成分又は遷移金属であり、x及びyはそれぞれ独立的に1〜5範囲の数である)であることを特徴とする請求項2に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項10】
前記金属窒化物がSn、Ge、Li2.6Co0.4N、Li2.6Ni0.4N、Li2.6Cu0.4N、LiMnN、LiBN、LiFeN及びLiAlNからなる群から選ばれる、請求項9に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項11】
前記粉末の表面に、石油ピッチ、コールタールピッチ及び熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1つの物質からなるコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末。
【請求項12】
炭素薄片を窒素又は不活性気体の雰囲気下でガス状又は粉末状の非炭素材料と混合する工程と、得られた混合物を回転加圧する工程とを含むことを特徴とする非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項13】
前記非炭素材料がガス状であり、回転加圧段階の前又は後で熱処理段階をさらに行うことを特徴とする請求項12に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項14】
前記炭素薄片を前記非炭素材料と混合する前に、窒素又は不活性気体の雰囲気下で加圧する段階をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項15】
炭素薄片を回転加圧して小球体を形成する段階、前記小球体を窒素又は不活性気体の雰囲気下で加圧しながらガス状の非炭素材料と混合する段階、得られた生成物を熱処理する段階を含むことを特徴とする非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項16】
前記炭素材料が1μm〜10mmの平均粒径を有することを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項17】
前記粉末状の非炭素材料が1nm〜1mmの平均粒径を有することを特徴とする請求項12に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項18】
前記粉末状の非炭素材料が炭素材料を基準に1〜70体積%の量で用いられることを特徴とする請求項12に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項19】
前記ガス状の非炭素材料がMで表現される金属水素化物(ここで、Mは元素周期表のIII族〜V族元素のいずれか一つであり、x及びyはそれぞれ独立的に1〜5範囲の数である)であることを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項20】
前記金属水素化物が水素化ケイ素(SiH)、水素化ゲルマニウム(GeH)、水素化スズ(SnH)、水素化鉛(Pb)、水素化アンチモン(SbH)及び水素化ビズマス(BiH)からなる群から選ばれることを特徴とする請求項19に記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項21】
前記ガス状の非炭素材料が1gの炭素材料当たり0.03〜0.1リットル/分の流速で用いられることを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項22】
前記回転加圧段階が1〜1,000kg/cmのせん断応力及び300〜20,000mm/秒の接線速度の条件下で行われることを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項23】
前記球形炭素質粉末を石油ピッチ、コールタールピッチ及び熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1つのコーティング材料と混合する段階、生成した混合物を回転加圧する段階、得られた生成物を100〜3,000℃の温度で加熱して焼結させる段階とを含むコーティング段階をさらに含むことを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の非炭素材料が挿入された球形炭素質粉末を負極活物質として含むことを特徴とするリチウム二次電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526664(P2008−526664A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549259(P2007−549259)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004606
【国際公開番号】WO2006/071076
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507224266)ソディフ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SODIFF ADVANCED MATERIALS CO.,LTD.
【Fターム(参考)】