説明

非熱可塑性デンプン繊維及びデンプン組成物並びに同一物を製造するための方法

融点を有さず、及び約0.2メガパスカル(MPa)を超える湿潤引張応力の見かけのピークを有する非熱可塑性デンプン繊維。この繊維は、変性デンプン及び架橋剤を含む組成物から製造されることができる。この組成物は、約1パスカル・秒〜約80パスカル・秒の剪断粘度、及び約150パスカル・秒〜約13,000パスカル・秒の範囲の見かけの伸長粘度を有することができる。この組成物は、約50重量%〜約75重量%の変性デンプン;約0.1重量%〜約10重量%のアルデヒド系架橋剤;及び約25重量%〜約50重量%の水を含むことができる。架橋前に、変性デンプンは、約100,000g/モルを超える重量平均分子量を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性デンプンを含む非熱可塑性繊維、及びこのような繊維を製造するための方法に関する。非熱可塑性デンプン繊維は、不織布ウェブ及びその他の使い捨て物品を製造するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
天然のデンプンは容易に入手可能であり、安価な物質である。そのため、標準的装置上で、プラスチック業界で既知の既存の技術を用いて、天然のデンプンを加工する試みが行われてきた。しかしながら、天然のデンプンは一般に粒状構造を有するため、熱可塑性物質のように溶融加工され得る前に「構造を破壊される」及び/又は他の態様で変性されることが必要である。微細直径のデンプン繊維、又はより具体的には、例えばトイレットペーパーに好適なもののような、ティッシュ等級の繊維ウェブの製造に好適な、約20ミクロン未満の平均等価直径を有する繊維を製造するために、デンプン物質を紡ぐ仕事は更なる課題を提示する。第一に、加工可能なデンプン組成物は、微細直径のデンプン繊維を有効に及び経済的に紡ぐことができる特定のレオロジー的特性を所有しなければならない。第二に、結果として生じる繊維ウェブ、及びそのためこうしたウェブを構成する微細直径デンプン繊維は、一定時間(使用)の間に、十分な湿潤引張強度、柔軟性、伸縮性、及び非水溶性を所有しなければならない。
【0003】
「熱可塑性」又は「熱可塑的に加工可能な」デンプン組成物は、本明細書の以下の幾つかの参考文献に記載されており、良好な伸縮性及び柔軟性を有するデンプン繊維の製造に適している可能性がある。しかし、熱可塑性デンプンは、トイレットペーパー、ペーパータオル、生理用品、おむつ、ティッシュペーパーなどのような消費者による使い捨て物品にとって非常に重要な性質である、必要な湿潤引張強度を所有していない。
【0004】
例えば高濃度の比較的高価な非水溶性合成ポリマーのような強化剤が存在しない場合には、デンプン繊維の十分な湿潤引張強度を得るためには架橋が必要である可能性がある。同時に、熱可塑性デンプン組成物を製造するためにデンプンを変性又は構造破壊するためには、化学剤又は酵素剤が典型的に用いられてきた。例えば、デンプン及び可塑剤の混合物を、結果として得られる熱可塑性デンプン−可塑剤混合物を軟化させるのに十分な温度まで加熱することができる。場合によっては、熱可塑性混合物の軟化を促進するために圧力を用いることもできる。デンプン顆粒の分子構造の溶融及び崩壊が起こり、構造破壊されたデンプンが得られる。しかしながら、デンプン混合物中の可塑剤の存在はデンプンの架橋を妨害し、従って結果として生じるデンプン繊維が十分な湿潤引張強度を獲得するのを阻害する。
【0005】
熱可塑性又は熱可塑的に加工可能であるデンプン組成物は、幾つかの米国特許、例えば米国特許第5,280,055号(1994年1月18日発行);第5,314,934号(1994年5月24日発行);第5,362,777号(1994年11月発行);第5,844,023号(1998年12月発行);第6,117,925号(2000年9月12日発行);第6,214,907号(2001年4月10日発行);及び第6,242,102号(2001年6月5日発行)、すべてのこれら7つの特許はトムカ(Tomka)に発行;米国特許第6,096,809号(2000年8月1日発行);第6,218,321号(2001年4月17日発行);第6,235,815号及び第6,235,816号(2001年5月22日発行)、すべてのこれら4つの特許はロークス(Lorcks)らに発行;米国特許第6,231,970号(2001年5月15日、アンデルセン(Andersen)らに発行)に記載されている。一般に、熱可塑性デンプン組成物は、デンプンを添加物(例えば可塑剤)と共に、例えば本明細書の上記に参照された米国特許第5,362,777号中に記載されるように好ましくは水の存在なしに混合することにより製造され得る。
【0006】
例えば、ビューラー(Buehler)らの米国特許第5,516,815号及び5,316,578号は、溶融紡糸方法からデンプン繊維を製造するための熱可塑性デンプン組成物に関する。溶融された熱可塑性デンプン組成物は、スピナレットを通して押し出され、スピナレット上のダイ開口部の直径に比べて僅かに拡大された直径を有する長繊維を製造する(即ち、ダイスウェル効果)。長繊維は、その後引張装置により機械的に又は熱機械的に引っ張られ、繊維直径を減少させる。ビューラー(Buehler)らのデンプン組成物の主な欠点は、それが多量の水溶性可塑剤を必要とし、これはデンプン繊維中で湿潤引張応力の見かけのピークを生成する架橋反応を妨害することである。
【0007】
その他の熱可塑的に加工可能なデンプン組成物は、米国特許第4,900,361号(1989年8月8日、サチェット(Sachetto)らに発行);米国特許第5,095,054号(1992年3月10日、レイ(Lay)らに発行);米国特許第5,736,586号(1998年4月7日、バスティオリ(Bastioli)らに発行;及びPCT国際公開特許WO98/40434(1997年3月14日、ハンナ(Hanna)らにより出願公開)に開示されている。
【0008】
デンプン繊維を製造する以前の試みの幾つかは、主として湿式紡糸方法に関する。例えば、デンプン/溶媒コロイド懸濁液は、スピナレットから凝固浴中に押し出され得る。デンプン繊維の湿式紡糸についての参考文献には、米国特許第4,139,699号(1979年2月13日、エルナンデス(Hernandez)らに発行);米国特許第4,853,168号(1989年8月1日、イーデン(Eden)らに発行);及び米国特許第4,234,480号(1981年1月6日、エルナンデス(Hernandez)らに発行)が挙げられる。JP08−260,250は、デンプン及びアミノ樹脂予備縮合物から製造される変性デンプン繊維、並びに同一物を製造するための方法を記載する。この方法は、デンプン及びアミノ樹脂予備縮合物の非希釈溶液の乾式紡糸、それに続く加熱処理を包含する。この用途に用いられるデンプンは、トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモなどに含有されるような天然デンプンである。
【0009】
天然デンプンは、高い重量平均分子量−1モル当たり30,000,000グラム(g/モル)〜100,000,000g/モル超過までを有する。このようなデンプンを含む水溶液の溶融レオロジー的特性は、微細直径デンプン繊維の製造のためのスパンボンド又はメルトブローのような高速紡糸方法には不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術は、良好な湿潤引張強度特性を所有し、繊維ウェブ、特にティッシュ等級の繊維ウェブの製造に好適である、微細直径のデンプン繊維を製造することができる、安価で溶融加工可能なデンプン組成物の必要性を示す。それ故に、本発明は、湿潤引張応力の十分な見かけのピークを有する非熱可塑性の微細直径のデンプン繊維を準備する。本発明は、このような非熱可塑性デンプン繊維を製造するための方法を更に準備する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は非熱可塑性デンプン繊維を含み、ここでこの繊維は全体として融点を示さない。この繊維は、約0.2メガパスカル(MPa)を超える、より具体的には約0.5MPaを超える、更により具体的には約1.0MPaを超える、より具体的には約2.0MPaを超える、更により具体的には約3.0MPaを超える湿潤引張応力の見かけのピークを有する。この繊維は、約20ミクロン未満、より具体的には約10ミクロン未満、更により具体的には約6ミクロン未満の平均等価直径を有する。
【0012】
この繊維は、変性デンプン及び架橋剤を含む組成物から製造され得る。この組成物は、3,000秒−1の剪断速度及び加工温度において測定した場合に、約1パスカル・秒〜約80パスカル・秒、好ましくは約3パスカル・秒〜約30パスカル・秒、より好ましくは約5パスカル・秒〜約20パスカル・秒の剪断粘度を有することができる。この組成物は、約90秒−1の伸長速度及び加工温度において測定した場合に、約150パスカル・秒〜約13,000パスカル・秒、具体的には約500パスカル・秒〜約5,000パスカル・秒、より具体的には約800パスカル・秒〜約3,000パスカル・秒の、見かけの伸長粘度を有することができる。
【0013】
この組成物は、約50重量%〜約75重量%の変性デンプン;約0.1重量%〜約10重量%のアルデヒド系架橋剤;及び約25重量%〜約50重量%の水を含む。この組成物は、二価又は三価の金属イオンの塩、天然ポリカチオン性ポリマー、合成ポリカチオン性ポリマー、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択されるポリカチオン性化合物を更に含むことができる。この組成物は、酸触媒を、この組成物のpHを約1.5〜約5.0の範囲で、より具体的には2.0〜約3.0の範囲で、更により具体的には2.2〜約2.6の範囲で備えるのに十分な量で更に含んでもよい。変性デンプンは、約100,000g/モルを超える重量平均分子量を有することができる。
【0014】
アルデヒド系架橋剤は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒド、グリオキサール尿素樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メチル化グリオキサールエチレン尿素樹脂(methylated ethylene urea glyoxal resin)、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択され得る。二価又は三価の金属イオンの塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸アルミニウム、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択され得る。酸触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択され得る。
【0015】
別の態様では、本発明は約50重量%〜約99.5重量%の変性デンプンを含む繊維を含み、ここでこの繊維は全体として融点を示さない。変性デンプンは、架橋前に、約100,000(g/モル)を超える重量平均分子量を有する。一実施形態では、変性デンプンは酸化デンプンを含む。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、1グラムの繊維当たり約2グラム未満の食塩水、より具体的には1グラムの繊維当たり約1グラム未満の食塩水、更により具体的には1グラムの繊維当たり約0.5グラム未満の食塩水の食塩水吸収能力を有する非熱可塑性デンプン繊維を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書で使用する時、次の用語は、次に示す意味を有する。
【0018】
「非熱可塑性デンプン組成物」は、デンプンとこの物質を流動状態にさせ得る程度に軟化させるために必要な水とを含む物質であり、これは所望のように成形することができ、より具体的には加工して(例えば紡糸により)、柔軟性のある繊維構造を形成するために好適な複数個の非熱可塑性デンプン繊維を成形することができる。非熱可塑性デンプン組成物を、高温だけの効果により必要な流動状態にさせることはできない。非熱可塑性デンプン組成物は、例えば、非熱可塑性組成物の流動を促進し得る可塑剤のような少量の他の構成成分を含んでもよいが、これらの量はそれ自体では、非熱可塑性デンプン組成物を全体として、非熱可塑性デンプン組成物が加工され好適な非熱可塑性繊維を成形することができる流動状態にするためには十分でない。非熱可塑性デンプン組成物はまた、非熱可塑性組成物が、例えば乾燥により一旦脱水されて凝固状態を構成すると、非熱可塑性組成物はその「熱可塑性」の性質を失うという点で熱可塑性組成物とは異なっている。この組成物が架橋剤を含む場合は、脱水された組成物は、実質的に架橋熱硬化性組成物になる。例えば、このような非熱可塑性デンプン組成物から製造された複数個の繊維のような生成物は、全体として融点を示さず、また全体として融解温度(熱可塑性組成物の特徴である)を有しない;その代わりに非熱可塑性デンプン生成物は、全体としてその温度がある程度(「分解温度」)まで上昇すると、流動状態に達することもなく分解する。対照的に、熱可塑性組成物は、その中の水の有無にかかわりなくその熱可塑性の性質を保持し、その融点(「融解温度」)に達することができ、その温度が上昇すると流動可能になる。
【0019】
「非熱可塑性デンプン繊維」は、非熱可塑性デンプン組成物から製造された繊維である。典型的には、ただし必ずというわけではないが、非熱可塑性デンプン繊維は、薄い、細い、及び柔軟性のある構造を含む。非熱可塑性デンプン繊維は融点を示さず、温度が上がると流動状態、即ち繊維が全体として融解し及び流動して、その結果繊維が繊維の統合性、寸法(直径及び長さ)などのようなその「繊維的」特徴を失う状態に達することなく分解する。この文脈において「全体として」という表現は、統合要素としての繊維(その別個の化学的構成成分とは対照的に)が考慮されることを強調することを意味する。例えば可塑剤のような一定量の流動可能物質が非熱可塑性繊維中に存在してもよく、ある程度の「流動」を示す可能性があることは認識されるべきである。しかし、非熱可塑性繊維は、その構成成分の幾つかは流動する可能性があるとしても、全体としてその繊維的特徴を失うことはない。
【0020】
「微細直径」デンプン繊維は、約20ミクロン未満、より具体的には約10ミクロン未満の平均等価直径を有する非熱可塑性デンプン繊維である。
【0021】
「等価直径」とは、本明細書では、本発明の個々の非熱可塑性繊維の断面積を定義するために用いられ、この断面積は、この断面積が円形であるか又は非円形であるかにかかわりなく、繊維の長手方向軸に対して垂直である。いかなる幾何学的図形の断面積も次式に従って定義することができる:S=1/4πD、ここでSはいずれかの幾何学的図形の面積であり、π=3.14159であり、Dは等価直径である。仮定の例を用いると、長方形の形状を有する、0.005平方ミクロンの繊維の断面積Sは、0.005平方ミクロンの等価の円の面積として表すことができ、ここで円の面積は直径「D」を有する。その結果、直径Dを次式から計算することができる:S=1/4πD、ここでSは長方形の既知の面積である。前述の例では、直径Dは、仮定の長方形の断面の等価直径である。言うまでもなく、円形の断面を有する繊維の等価直径は、この円形の断面の実際の直径である。「平均」等価直径は、繊維の長さに沿って繊維の少なくとも三位置で光学顕微鏡により測定された、実際の繊維の直径の算術平均として計算された等価直径である。
【0022】
「変性デンプン」は、化学的又は酵素的に変性されたデンプンである。変性デンプンは天然デンプンと対比されるが、天然デンプンは、化学的に又は他のいかなる方法によっても変性されていないデンプンである。
【0023】
「多官能性化学架橋反応剤」は、デンプンのヒドロキシ官能基又はカルボキシ官能基と反応できる2以上の化学官能基を有する化学物質である。「多官能性化学架橋反応剤」という用語は、二官能性化学反応剤を含む。
【0024】
「初期の非熱可塑性デンプン繊維」又は単に「初期繊維」は、非熱可塑性デンプン繊維の形成の一番初期段階で製造される、主として細長化領域に存在する非熱可塑性デンプン繊維である。初期繊維が細長化し、その後脱水されると、本発明の非熱可塑性繊維になる。初期繊維は、製造される、結果の非熱可塑性デンプン繊維のより初期の段階であるため、読者の便宜のため、初期繊維及び非熱可塑性繊維は同じ参照数字110により指定される。
【0025】
「細長化領域」は、平面図(図3〜6)の複数個の押出成形ノズルの全体の形状により形成される領域により輪郭を描かれ、製造される繊維の全般的移動方向においてはノズルチップからの細長化距離Z(図2及び図9)まで伸びる三次元空間である。「細長化距離」は、押出成形ノズルチップから始まり、製造される繊維の全般的移動方向に伸びる距離であり、またこの距離内で、製造される非熱可塑性初期繊維は細長化して、約20ミクロン未満の個々の平均等価直径を有する、結果の非熱可塑性繊維を成形することができる。
【0026】
「加工温度」とは、本発明の非熱可塑性デンプン組成物が加工され、初期非熱可塑性デンプン繊維を成形し得る、非熱可塑性デンプン組成物の温度を意味する。加工温度は、押出成形ノズルチップにおいて測定した場合に50℃〜95℃であり得る。
【0027】
デンプン試料の「食塩水吸収能力」は、以下の試験方法及び実施例に記載されるように、デンプン試料のグラム当たりの、デンプン試料により吸収された食塩水のグラムの比である。
【0028】
「湿潤引張応力の見かけのピーク」又は単に「湿潤引張応力」は、以下の試験方法及び実施例に記載されるように、外部の力、より具体的には延伸力によるひずみの結果としてのその最大(即ち「ピーク」)応力の時点での非熱可塑性デンプン繊維中に存在する状態である。応力は「見かけ」であるが、これは、繊維の延伸の結果としての繊維直径の変化は、たとえあったとしても試験のために考慮されないからである。非熱可塑性繊維の湿潤引張応力の見かけのピークは、それらの湿潤引張強度に比例しており、本明細書では後者を定量的に見積もるために用いられる。
【0029】
本発明の非熱可塑性デンプン繊維110(図1、7〜9、及び10)は、変性デンプン及び架橋剤を含む組成物から製造され得る。一態様では、この組成物は、約50重量%〜約75重量%の変性デンプン、約0.1重量%〜約10重量%のアルデヒド系架橋剤、及び約25重量%〜約50重量%の水を含んでもよい。このような組成物は、3,000秒−1の剪断速度及び加工温度において測定した場合に、約1Pa・s〜約80Pa・sの剪断粘度を有利に有することができる。より具体的には、本明細書の非熱可塑性デンプン組成物は、約50重量%〜約75重量%の変性デンプンを含んでもよい。この組成物は、約90秒−1の伸長速度及び加工温度において測定した場合に、約150Pa・s〜約13,000Pa・sの見かけの伸長粘度を更に有してもよい。伸長粘度及び剪断粘度は、本明細書に記載される試験方法に従って測定され得る。
【0030】
この組成物は、二価又は三価の金属イオンの塩、天然ポリカチオン性ポリマー、合成ポリカチオン性ポリマー、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択されるポリカチオン性化合物を更に含むことができる。ポリカチオン性化合物は、約0.1重量%〜約15重量%を構成してもよい。この組成物は、酸触媒を、この組成物のpHを約1.5〜約5.0の範囲で、より具体的には約2.0〜約3.0の範囲で、更により具体的には約2.2〜約2.6の範囲で備えるのに十分な量で更に含んでもよい。組成物を構成する変性デンプンは、約100,000(g/モル)を超える重量平均分子量を有することができる。
【0031】
天然デンプンは、当該技術分野において周知のように、化学的又は酵素的に変性され得る。例えば、天然デンプンは酸処理、ヒドロキシエチル化、又はヒドロキシプロピル化、又は酸化され得る。すべてのデンプンは本明細書において潜在的に有用であり、本発明は、豊富に供給され、容易に補充可能であり、安価であるという利点を提供する農作物源から誘導される高アミロペクチン天然デンプンを用いて、有益に実施され得る。デンプンの化学変性は、典型的には、分子量及び分子量分布を減少させる、酸又はアルカリ加水分解及び酸化による鎖切断を含む。デンプンの化学変性のための好適な化合物としては、有機酸、例えばクエン酸、酢酸、グリコール酸、及びアジピン酸;無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、及び多塩基酸の部分塩、例えばKHPO、NaHSO;Ia又はIIa族の金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム;アンモニア;酸化剤、例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸塩など;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
化学変性はまた、デンプンのOH基のアルキレンオキシド、及びその他のエーテル形成物質、エステル形成物質、ウレタン形成物質、カルバメート形成物質、又はイソシアネート形成物質との反応によるデンプンの誘導体化を含んでもよい。ヒドロキシアルキル、アセチル、又はカルバメートデンプン、又はこれらの混合物は、化学変性デンプンとして用いられ得る。化学変性デンプンの置換の程度は0.05〜3.0、より具体的には0.05〜0.2である。デンプンの生物学的変性には、炭水化物の結合の細菌による消化、又はアミラーゼ、アミロペクターゼなどのような酵素を用いた酵素加水分解を含んでもよい。
【0033】
一般に、すべての種類の天然デンプンは本発明において用いられ得る。好適な天然起源のデンプンとしては:コーンスターチ、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サゴパームデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、アミオカデンプン(amioca starch)、ワラビデンプン、ハスデンプン、ワクシートウモロコシデンプン、及び高アミロースコーンスターチを挙げることができるが、これらに限定されない。天然起源のデンプン、特にコーンスターチ及び小麦デンプンは、それらの低価格及び入手可能性により特に有益であり得る。
【0034】
本発明に用いられ得る架橋剤は、変性デンプンのヒドロキシ官能基又はカルボキシ官能基と反応できる多官能性化学反応剤を含む。製紙業で木材パルプ繊維を架橋するために用いられる架橋剤は、一般に「湿潤強度向上樹脂」と称する。これらの湿潤強度向上樹脂はまた、架橋デンプン系物質において有用であり得る。製紙技術において使用される湿潤強度向上樹脂の種類についての一般的な論文は、TAPPIモノグラフシリーズNo.29、紙及び板紙における湿潤強度(Wet Strength in Paper and Paperboard)、紙パルプ技術協会(Technical Association of the Pulp and Paper Industry)(ニューヨーク、1965年)に見出すことができ、これは製紙業において使用される湿潤強度向上樹脂の種類を記載する目的で、本明細書に参考として組み込まれる。ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂は、特に有用性があることが見出されている、カチオン性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン湿潤強度向上樹脂である。このような樹脂の好適な種類は、米国特許第3,700,623号(1972年10月24日発行)、及び第3,772,076号(1973年11月13日発行)に記載されており、両方ともにカイム(Keim)に発行されており、また両方ともに本発明に用いられ得る湿潤強度向上樹脂の種類を記載する目的で、参考として本明細書に組み込まれる。有用なポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂の1つの市販の供給源は、デラウェア州ウィルミントンのハーキュレス社(Hercules Inc.)であり、同社はこのような樹脂をカイメン(Kymene(登録商標))の名称で市販している。
【0035】
グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂もまた、湿潤強度向上樹脂として有用性があることが見出されている。これらの樹脂は、米国特許第3,556,932号(1971年1月19日にコスチア(Coscia)らに発行)、及び第3,556,933号(1971年1月19日にウィリアムズ(Williams)らに発行)に記載されており、両特許とも本発明に用いられ得る湿潤強度向上樹脂の種類を記載する目的で、参考として本明細書に組み込まれる。グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂の1つの市販の供給源は、コネチカット州スタンフォードのサイテック社(Cytec Co.)であり、同社は、このような樹脂の1つをパレッツ(Parez(登録商標))631NCの名称で市販している。
【0036】
パレッツ(Parez(登録商標))631NCにような好適な架橋剤が、酸性条件下で本発明のデンプン組成物に添加された場合、非熱可塑性デンプン組成物から製造された非熱可塑性デンプン繊維は、顕著な湿潤引張強度を有し、これは以下に記載されるように、繊維の湿潤引張応力の見かけのピークを試験することにより評価され得る。それ故に、本発明の非熱可塑性デンプン繊維により製造された、例えば消費者使い捨て品に好適な繊維ウェブのような製品もまた、顕著な湿潤引張応力の見かけのピークを有する。
【0037】
本発明において有用性を見出すその他の水溶性樹脂には、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒド、グリオキサール尿素樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メチル化グリオキサールエチレン尿素樹脂(methylated ethylene urea glyoxal resin)、及びその他のグリオキサール系樹脂、並びにこれらのいずれかの組み合わせを挙げてもよい。ポリエチレンイミンの種類の樹脂もまた、本発明において有用性を見出す可能性がある。加えて、カルダス(Caldas(登録商標))10(日本カーリットにより製造)及びコボンド(CoBond(登録商標))1000(ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社(National Starch and Chemical Company)により製造)のような一時湿潤強度樹脂も、本発明に用いられてもよい。
【0038】
本発明において有用性を見出す更にその他の架橋剤には、ジビニルスルホン、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのようなコポリマーを含有する無水物、ジクロロアセトン、ジメチロール尿素、ジエポキシド、例えばビスエポキシブタン又はビス(グリシジルエーテル)、エピクロロヒドリン、及びジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
デンプンのヒドロキシ官能基及びカルボキシ官能基と共有結合的に反応する架橋剤に加えて、二価及び三価の金属イオンが、デンプン上のカルボキシ官能基との金属イオン錯体形成によりデンプンを架橋するために本発明において有用である。特に、酸化デンプンは、カルボキシ官能基の増加した濃度を有しており、二価及び三価の金属イオンと良好に架橋することができる。ポリカチオン性金属イオンに加えて、天然又は合成供給源のいずれかからのポリカチオン性ポリマーもまた、デンプン上のカルボキシ官能基とのイオン対錯体形成によりデンプンを架橋し、「コアセルベート」と一般的に称される不溶性錯体を形成するために有用である。金属イオン架橋は、共有結合的架橋剤との組み合わせにより用いられる場合に、特に有効であることが見出されている。本発明に関して、好適な架橋剤は、約0.1重量%〜約10重量%、より典型的には約0.1重量%〜約3重量%の範囲の量で組成物に添加され得る。
【0040】
天然の変性されていないデンプンは、一般に非常に高い重量平均分子量、及び広い分子量分布を有し、例えば天然コーンスターチは、約40,000,000g/モルを超える重量平均分子量を有する。そのため、天然の変性されていないデンプンは、微細直径繊維を製造することができる、不織布のスパンボンド又はメルトブロー方法のような高速溶液紡糸方法に用いるのに好適な固有のレオロジー特性を有しない。これらの小さい直径は、例えばトイレットペーパー、拭き取り用品、おむつ、ナプキン、及び使い捨てタオルのような様々な消費者使い捨て製品にとって重要な機能特性である、最終製品の十分な柔軟性及び不透明性を達成する際に非常に有益である。
【0041】
高速紡糸方法に必要なレオロジー的特性を生成するために、天然の変性されていないデンプンの分子量は減少される必要がある。最適な分子量は、用いられるデンプンの種類によって決まる。例えば、ワクシートウモロコシデンプンのような低濃度のアミロース構成成分を有するデンプンは、熱を適用することにより、水溶液中にむしろ容易に分散し、顕著には逆行又は再結晶しない。これらの特性により、ワクシートウモロコシデンプンは、例えば500,000g/モル〜5,000,000g/モルの範囲の比較的高い重量平均分子量で用いられることができる。約25%のアミロースを含有するヒドロキシエチル化デントコーンスターチのような変性デンプン、又は酸化デントコーンスターチは、ワクシートウモロコシデンプンより逆行しやすいが、酸処理デンプンより逆行しにくい。この逆行、又は再結晶は、水溶液中のデンプンの重量平均分子量を有効に上昇させるための物理的架橋として作用する。そのため、ヒドロキシエチル化デントコーンスターチ又は酸化デントコーンスターチの適切な重量平均分子量は、約200,000g/モル〜約1,000,000g/モルである。酸処理デントコーンスターチは、酸化デントコーンスターチより逆行しやすいため、適切な重量平均分子量は、約100,000g/モル〜約500,000g/モルである。
【0042】
デンプンの平均分子量は、鎖切断(酸化又は酵素による)、加水分解(酸又はアルカリで触媒される)、物理的/機械的分解(例えば、加工装置の熱機械エネルギーの入力を介して)、又はこれらの組み合わせによって、本発明にとって所望の範囲まで減少させることができる。熱機械方法及び酸化方法は、それらが溶融紡糸プロセスのその場で実施され得るという点で、追加的利点を提供する。本発明の非熱可塑性繊維は、約50重量%〜約99.5重量%の変性デンプンを含有してもよいと考えられている。
【0043】
天然デンプンは、酸触媒の存在下で加水分解されて、組成物の分子量及び分子量分布を減少させることができる。酸触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択され得る。また、鎖切断剤は、鎖切断反応が、デンプンとその他の構成成分を混合するのと実質的に同時に起こるように、紡糸可能なデンプン組成物中に組み込まれてもよい。本明細書に用いるのに好適な酸化鎖切断剤の非限定例には、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。典型的には、鎖切断剤は、デンプンの重量平均分子量を所望の範囲に減少させるのに有効な量で添加される。好適な重量平均分子量の範囲の変性デンプンを有する組成物は、好適な剪断粘度を有し、従って組成物の加工性を向上させることが見出された。向上した加工性は、プロセスの障害がより少ないこと(例えば破損、無駄、不良、問題点の減少)、及び本発明の繊維のような最終製品のより良好な表面の外観及び強度特性において明らかである。
【0044】
二価又は三価の金属イオンの塩は、いずれかの水溶性の二価又は三価の金属イオンの塩を含むことができ、並びに塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸アルミニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択され得る。ポリカチオン性ポリマーは、例えばポリエチレンイミン、四級化ポリアクリルアミドポリマー、例えばニュージャージー州ウエストパターソンのサイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries,Inc)により製造されたサイプロ(Cypro(登録商標))514、又は天然ポリカチオン性ポリマー、例えばキトサン、及びこれらのいずれかの組み合わせのようないずれかの水溶性ポリカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0045】
本発明によると、非熱可塑性デンプン繊維は、約0.2メガパスカル(MPa)を超える、より具体的には約0.5MPaを超える、更により具体的には約1.0MPaを超える、更により具体的には約2.0MPaを超える、なお更により具体的には約3.0MPaを超える、湿潤引張応力を有する。幾つかの実施形態では、非熱可塑性デンプン繊維は、約3.0MPaを超える湿潤引張応力を有することができる。理論に束縛されるものではないが、本発明の非熱可塑性デンプン繊維中の湿潤引張強度の生成は、デンプンの重量平均分子量を減少させて、微細直径の非熱可塑性デンプン繊維の高速溶液紡糸とそれに続く形成された繊維中のデンプンの架橋にとって適切なレオロジー的特性を有する、非熱可塑性デンプン組成物の製造を可能にすることにより達成され得ると考えられる。架橋は、形成される繊維中のデンプンの分子量を増加させ、それにより繊維の非水溶性を促進し、これは今度は結果として得られる非可塑性デンプン繊維の高い湿潤引張強度を生じる。
【0046】
伸長粘度又は延伸粘度(η)は、非熱可塑性デンプン組成物の伸展性に関し、繊維製造のような伸長プロセスにおいて特に重要であり得る。伸長粘度には三種類の変形:一軸又は単一の伸長粘度、二軸伸長粘度、及び純粋な剪断伸長粘度がある。一軸伸長粘度は、繊維紡糸、メルトブロー、及びスパンボンドのような一軸の伸長プロセスに重要である。
【0047】
トルートン比(Tr)は、本発明のデンプン組成物の伸長流動を表すために用いられ得る。トルートン比は、伸長粘度(η)及び剪断粘度(η)の比として定義される、
Tr=η(ε,t)/η
ここで、伸長粘度ηは、変形速度(ε)及び時間(t)によって決まる。ニュートン流体については、一軸伸長トルートン比は、3の一定値を有する。本明細書のデンプン組成物のような非ニュートン流体については、伸長粘度は変形速度(ε)及び時間(t)によって決まる。本発明の加工可能な組成物はまた、典型的には少なくとも約3のトルートン比を有することもまた見出された。トルートン比は、加工温度及び90秒−1の伸長速度で測定した場合、約5〜約1,000、具体的には約30〜約300、より具体的には約50〜約200の範囲であってよい。
【0048】
本発明の非熱可塑性繊維は、例えばトイレットペーパー、ペーパータオル、ナプキン、及びティッシュペーパー、おむつ、生理用品及び失禁用品などの製造に用いられるもののようなティッシュ等級の紙用ウェブに好適な不織布のような様々な消費者使い捨て物品に用途を見出す可能性がある。加えて、これらの繊維は、空気、油及び水用フィルタ、掃除機用フィルタ、炉用フィルタ、フェイスマスク、コーヒーフィルタ、ティー又はコーヒーバッグ、断熱材及び遮音材、微小繊維又は通気性布地のような吸水性及び着用の柔軟性を改良するための生分解性織物布地、粉塵の回収及び除去のための静電的に帯電した構造ウェブ、補強材及び包装紙、筆記用紙、新聞印刷用紙、ダンボールのような硬質紙用ウェブ、外科用カーテン、創傷包帯、包帯、皮膚貼付剤、及び自己溶解性縫合糸のような医療用途;並びにデンタルフロス及び歯ブラシの毛のような歯科用途に用いられ得る。本発明から製造される非熱可塑性デンプン繊維又は繊維ウェブはまた、のこぎりくず、木材パルプ、プラスチック、及びコンクリートのような他の材料に組み入れられて、壁、支持梁、プレス板、乾式壁体及び裏材、並びに天井タイルのような建築材料として使用できる複合材料を形成してもよく;ギプス、副木、及び舌圧子のようなその他の医療用途;並びに暖炉の装飾用及び/又は燃焼用の丸太に組み入れられてもよい。
【0049】
本発明による非熱可塑性繊維を製造する方法は、次の工程を含む。
【0050】
第一に、約50重量%〜約75重量%の変性デンプンと約25重量%〜約50重量%の水とを含む非熱可塑性デンプン組成物が提供される。幾つかの実施形態では、非熱可塑性デンプン組成物を準備する工程は、非熱可塑性デンプン組成物を調製する工程に先行され得る。
【0051】
さて図1〜9を参照すると、本発明の非熱可塑性繊維110は、非熱可塑性デンプン組成物を複数個のノズル200を通して押し出し、それにより複数個の初期繊維を成形する工程と;この初期繊維を高速細長化空気により細長化し(細長化空気の方向は図2の矢印Cにより図解的に示される)、その結果得られる非熱可塑性繊維110が約20ミクロン未満の個々の平均等価直径を有するようにする工程と、この繊維110を濃度約70重量%〜約99重量%に脱水する工程とを含む方法を用いて製造することができる。本発明によると、この繊維は約20ミクロン未満の、より具体的には約10ミクロン未満の、更により具体的には約6ミクロン未満の個々の平均等価直径を有してもよい。
【0052】
本発明によると、結果として得られる個々の非熱可塑性繊維110は、約50重量%〜約99.5重量%の変性(例えば酸化されているというような)デンプンを含み、上記に詳述しているように、全体として融点を有しない。
【0053】
本発明の微細直径の非熱可塑性繊維110を製造するために、組成物が、加工温度及び3,000秒−1の剪断速度で測定した場合に、約1Pa・s〜約80Pa・s、より具体的には約3Pa・s〜約30Pa・s、更により具体的には約5〜約20Pa・sの範囲の好適な剪断粘度を有する場合に、所望の細長化が有益に生じる。好適な範囲の好適な剪断粘度を保持する工程は、細長化領域を加湿する及び/又は細長化領域を周囲の環境から少なくとも部分的に隔離することにより有益に補完され得る。約50%を超える相対湿度を有する細長化空気を準備し、その結果、以下に記載するような方法に従って、押し出しノズルチップにおいて測定した場合に、細長化領域内の空気の相対湿度が約50%を超える、具体的には約60%を超え、より具体的には約70%を超え得ることは有益である。
【0054】
細長化領域内の所望の湿度を保持するための手段には、例えば細長化領域の囲いを準備することが挙げられる。図7では、細長化領域は、壁400により少なくとも部分的に囲われている。あるいは更には、細長化領域は、細長化領域の周囲に供給され得る境界空気(図8の矢印D)により少なくとも部分的に隔離することができる。境界空気は、平面図において見られるように、複数個のノズル200を囲む複数個の不連続な開口部300(図4)又はスロット(図5)を通して供給することができる。図6では、境界空気は細長化領域の外周を縁取る連続的スロット320を通して供給される。細長化領域内の所望の湿度を保持するその他の手段には、細長化領域中に蒸気を準備する又は水を噴霧することを挙げてもよい(図示せず)。境界空気は、外部から即ちダイから独立して(図示せず)供給することもできるし、又は別の方法としてはもしくは更には内部から即ちダイを通して(図4〜6)供給することもできる。有益なことに、境界空気は、約50%を超える相対湿度を有するように湿らすことができる。境界空気の速度は、細長化空気の速度と実質的に等しくすることができる。
【0055】
本発明の方法において、細長化距離Zは、約250ミリメートル(約10インチ)未満、より具体的には約150ミリメートル(約6インチ)未満、更により具体的には100ミリメートル(約4インチ)未満であることができると考えられている。当業者は、本方法の性質により、細長化距離の正確な寸法は容易に確かめられない可能性があることを理解する。また、繊維の細長化の程度は、細長化領域内で変化してもよく、例えば細長化程度は、細長化領域の終わりに近づくと次第に減少すると考えられている。
【0056】
繊維ウェブの製造のために、図3〜6に最良に示されるように、複数個の押し出しノズル200が多重列に有益に配列されることができる。細長化空気は、図3の押し出しノズル200を囲む、複数個の不連続の円形開口部250を通して供給され得る。主として、このような配列は、両方共シュワルツ(Schwarz)への米国特許第5,476,616号(1995年12月19日発行)、及び米国特許第6,013,223号(2000年1月発行)に記載されており、これらの特許は、円形の空気用開口部にそれぞれが囲まれた、個々の押し出しノズルの多重列を含む装置の配列を示すために、参考として本明細書に組み込まれる。シュワルツ(Schwarz)の特許の両方とも、熱可塑性物質の加工に関する。本発明の非熱可塑性繊維を成形するために、本明細書に記載される方法によりノズルチップにおいて測定した場合に、細長化空気は、約30m/秒を超える、より具体的には約30m/秒〜約500m/秒の平均速度を有し得ることが見出された。当業者は、特別に設計された(例えば収束−発散)ノズルの形状が、超音速を達成するために必要である可能性があることを認識する。
【0057】
形成された非熱可塑性繊維を脱水する工程は、乾燥ノズル112(図9)により供給される熱い乾燥空気109を細長化領域の下方に準備することにより達成されることができ、ここで乾燥空気は約150℃〜約480℃、より具体的には約200℃〜約320℃の温度、及び約10%未満の相対湿度を有する。
【0058】
幾つかの実施形態では、第二の細長化空気(図9の矢印C1)が、例えば細長化空気の下流に有益に準備され得る。第二の細長化空気は、追加の長手方向の力を繊維に適用し、製造される繊維をそれにより更に細長化する。第二の細長化空気は細長化領域の下流で繊維に接触できるが、この第二の力は、細長化領域内にまだ存在する初期繊維のそうした部分に主として影響することに留意すべきである。第二の細長化空気は、約20℃〜約480℃、より具体的には約70℃〜約320℃の温度を有することができる。第二の細長化空気の速度は、第二の細長化空気のノズル出口、図9の第二の細長化空気噴流排出口700の先端からの最小距離(約3mm)において測定した場合に、約30m/秒〜約500m/秒、より具体的には約50m/秒〜約350m/秒であり得る。第二の細長化空気は、乾燥空気又は別の方法では湿った空気であり得る。
【0059】
必要であれば、第二の細長化空気は押し出しノズルの下流の複数の位置において適用することができる。例えば、図9では、第二の細長化空気は、第二の細長化空気噴流排出口700を通して供給される空気C1と、空気C1の下流の第二の細長化空気噴流排出口710を通して供給される空気C2とを含む。第二の細長化空気は、形成される繊維の全般的方向に対して、60度未満、より具体的には約5〜約45度の角度で適用することができる。
【0060】
結果として生じる非熱可塑性デンプン繊維は、作業面又は収集装置111(図1)上、例えば更なる加工のための小孔のあるベルト上に収集され得る。
【0061】
(試験方法及び実施例)
(A)湿潤引張応力の見かけのピーク
次の試験は、例えばトイレットペーパーのような最終製品の、その使用中の強度特性に関する消費者の実生活での期待を反映するために−−湿らされた繊維の最初の1分間のデンプン繊維の湿潤引張応力の見かけのピークを測定するために設計されている。
【0062】
(A)(1)装置:
・サンビーム(Sunbeam(登録商標))超音波加湿器、モデル696−12(米国、テネシー州マクミンビルのサンビーム家庭用品社(Sunbeam Household Products Co.)により製造)。加湿器は、オン/オフのスイッチを有し、室温で操作される。外径0.625インチ(1.59cm)内径0.25インチ(0.64cm)の長さ27インチ(68.6cm)のゴムホースが出力に取り付けられた。正しく動作する場合、加湿器は、1分当たり0.54〜0.66グラムの水を霧状に排出する。
【0063】
加湿器により生成される霧状の水滴の速度及び水滴の直径は、写真測量技術を用いて測定することができる。画像は、日本のニコン(Nikon(登録商標))、モデルD1、3メガピクセルデジタルカメラ、37mmカップリングリング、ニコン(Nikon(登録商標))PB−6ベローズ、及びニコン(Nikon(登録商標))自動焦点AF マイクロ・ニコー(Micro Nikkor(登録商標))200mm 1:4Dレンズ装備を用いて撮影することができる。各ピクセルは、正方形ピクセルと仮定して、約3.5マイクロメートルの寸法を有した。画像は、ナノ・ツイン・フラッシュ(Nano Twin Flash)(ドイツ、ウェーデルの高速フォトシステム(High-Speed Photo-Systeme))を用いてシャドウモードで撮影することができる。様々な市販の画像処理パッケージを用いて画像を処理することができる。このシステムの2つのフラッシュの間の待ち時間を5、10、及び20マイクロ秒に設定する。フラッシュの間に水滴が移動する距離を用いて水滴の速度が計算される。
【0064】
水滴は、直径が約12ミクロン〜約25ミクロンであることが見出された。柔軟性のあるホースの排出口から約(25±5)mmの距離における水滴の速度は、1秒当たり約27メートル(m/秒)で、約15m/秒〜約50m/秒の範囲であることが計算された。明らかに、霧の流れが部屋の空気と遭遇した時、水滴の速度は、ホース出口からの距離が増加するにつれて、流体抵抗のために遅くなる。
【0065】
柔軟性のあるホースは、霧の流れが完全に繊維を包み込み、それにより繊維を完全に湿らせるように位置付けられる。霧の流れにより繊維を損傷したり又は破壊したりしないことを確実にするために、柔軟性のあるホース排出口と繊維との間の距離は、霧の流れが繊維のところ又は繊維をちょうど過ぎたところで失速するように調整される。
【0066】
・1グラム力変換器を有する長繊維伸縮レオメーター(Filament Stretching Rheometer(FSR))、モデル405A(カナダ、オンタリオ州オーロラのオーロラ科学社(Aurora Scientific Inc.)により製造)、小金属フック装備。機器の初期設定は、
初期ギャップ=0.1cm ひずみ速度=0.1秒−1
ヘンキー(Hencky)ひずみ限界=4 1秒当たりのデータ点=25
計上移動時間(post move time)=0
FSRは、本明細書に参考として組み込まれる、レオロジー誌(J.Rheology)37(6)、1993年、1081〜1102頁(タータートマージャ(Tirtaatmadja)及びスリドハル(Sridhar))により公開された、「伸長粘度の測定用長繊維伸縮装置(A Filament Stretching Device For Measurement Of Extensional Viscosity)」と題する論文の中に記載されたものと類似した設計に基づいているが、以下の変性を有する。
【0067】
(a)FSRは、2つの末端プレートが垂直方向に移動できるように向けられる。
【0068】
(b)FSRは、2つの独立したボールネジ・リニアアクチュエータ、モデルPAG001(米国、カリフォルニア州ペタルマのインダストリアル・デバイス社(Industrial Device Corp.)により製造)を含み、各アクチュエータはステッピングモーター(例えばゼータ(Zeta(登録商標))83−135(米国、カリフォルニア州ローナートパークのパーカー・ハネフィン社(Parker Hannifin Corp.)のコンピュモーター部門(Compumotor Division)により製造)により駆動される。モーターの1つはエンコーダ(例えばモデルE151000C865(米国、イリノイ州ガーニーのダイナパー・ブランド(Dynapar Brand)、ダナハー・コントロールズ(Danaher Controls)により製造))を装備してアクチュエータの位置を追跡することができる。2つのアクチュエータは、等距離を等スピードで反対方向に移動するようにプログラムすることができる。
【0069】
(c)末端プレートの間の最大距離は、およそ813mm(約32インチ)である。
【0070】
広帯域単一チャネル信号調整モジュール、モデル5B41−06(米国、マサチューセッツ州ノーウッドのアナログデバイス社(Analog Devices Co.)により製造)を用いて、力変換器、モデル405A(カナダ、オンタリオ州オーロラのオーロラ科学社(Aurora Scientific Inc.)により製造)からの信号を調整することができる。
【0071】
(B)非熱可塑性繊維の実施例(1又は複数)、同一物を製造するための方法、並びに湿潤引張応力の見かけのピーク、剪断粘度、及び伸長粘度を測定するための試験方法
(B)(1)非熱可塑性デンプン繊維を製造するための方法
繊維は小規模の装置を用いて形成されたが、その略図は図1に示される。図1を参照すると、装置100は、1分当たり少なくとも12グラム(g/分)のデンプン組成物を18mm共回転二軸押出成形機102(米国、ニュージャージー州のアメリカン・ライストリッツ・エキストルーダー社(American Leistritz Extruder Co.)により製造)に準備できる定量供給機101から構成された。押出成形機の容器部分の温度は、コイルの加熱及びウォーター・ジャケット(図示せず)により制御され、水によりデンプンの構造を破壊するのに適切な温度を準備する。乾燥したデンプン粉末がホッパー113中に添加され、脱イオン水がポート114において添加された。
【0072】
用いられるポンプ103は、1回転当たり0.6立方センチメートル(cc/回転)の能力を有するゼニス(Zenith(登録商標))、タイプPEPII(米国、ノースカロライナ州サンフォードのパーカー・ハネフィン社(Parker Hannifin Corporation)、ゼニスポンプ部門(Zenith Pumps division)により製造)であった。ダイ104へのデンプン流量は、ポンプ103の1分当たりの回転数(rpm)を調整することにより制御された。押出成形機102に接続するパイプ、ポンプ103、ミキサー116、及びダイ104は、約90℃に保持されるように、電気的に加熱され及びサーモスタット制御された。
【0073】
ダイ104は、約1.524ミリメートル(約0.060インチ)のピッチP(図2)により互いに間隔を空ける円形押出成形ノズルの数列を有した。ノズルは、約0.305ミリメートル(約0.012インチ)の個別の内径D2、及び約0.813ミリメートル(約0.032インチ)の個別の外径(D1)を有した。各個別ノズルは、約1.9ミリメートル(約0.075インチ)の厚さを有するプレート260(図2)内に形成される、環状及び末広がりの開口部250により囲まれていた。プレート260内の複数個の末広がりの開口部250のパターンは、押出成形ノズル200のパターンに対応していた。開口部250は、細長化空気のために、約1.372ミリメートル(約0.054インチ)の、大きい方の直径D4(図2)及び1.17ミリメートル(約0.046インチ)の、小さい方の直径D3を有した。プレート260は、ノズル200を通して押し出された初期繊維110が、開口部250を通して供給される、一般に円筒形の湿った空気の流れにより囲まれ及び細長化されるように固定された。ノズルは、プレート260の表面261(図2)を超えて、約1.5mm〜約4mm、より具体的には約2mm〜約3mmの距離まで伸びることができる。複数個の境界空気開口部300(図4)は、平面に見られるように、複数個のノズルの各側の2つの外側の列のノズルを塞ぐことにより形成され、その結果境界層の各開口部は、本明細書の上記の環状の開口250を含むようになされた。
【0074】
細長化空気は、供給源106からの圧縮空気を電気抵抗加熱器108、例えば、米国、ペンシルベニア州ピッツバーグのエマーソン・エレクトリック(Emerson Electric)のクロマロックス部門(Chromalox,Division)により製造された加熱器により加熱することにより準備することができる。グローブバルブ(図示せず)により制御される約240〜約420キロパスカル(kPa)の絶対圧力の蒸気105の適切な量が、電気的に加熱されサーモスタット制御される送出パイプ115中の条件で加熱された空気を飽和又はほとんど飽和するために添加された。復水は、電気的に加熱されサーモスタット制御される分離器107中で除去された。細長化空気は、パイプ115中で測定すると約130kPa〜約310kPaの絶対圧力を有した。
【0075】
例えばパレッツ(Parez(登録商標))490のような架橋剤及び酸触媒を含む架橋溶液がオフラインで調製され、パイプ116を通して、例えばSMX−スタイルのスタティックミキサー(米国、カンザス州ウィッチタのコッホ・ケミカル社(Koch Chemical Corporation)により製造)のようなスタティックミキサー117に供給され得る。
【0076】
押し出された非熱可塑性の初期繊維110は、約25重量%〜約50重量%の含水率を有した。初期繊維110は、乾燥空気流109により乾燥されたが、この乾燥空気流109は、電気抵抗加熱器(図示せず)により約149℃(約300°F)〜約315℃(約600°F)の温度を有し、乾燥ノズル112を通して供給され、押し出された非熱可塑性初期繊維の全般的方向に対して約40〜約50度傾斜した向きで放出される。約25%の含水率〜約5%の含水率(即ち約75%の濃度〜約95%の濃度)に乾燥された初期繊維は、例えば小孔のある可動ベルトのような収集装置111上に収集された。
【0077】
(B)(2)非熱可塑性繊維及びその湿潤引張応力を測定するための方法の実施例1
25グラムのスタコート(StaCote(登録商標))H44デンプン(およそ500,000g/モルの重量平均分子量を有する酸化されたワクシートウモロコシデンプン)(米国、イリノイ州ジケーターのA.E.ステーリー製造会社(A.E.Staley Manufacturing Corporation)から)、1.25グラムの無水塩化カルシウム(デンプンの5重量%)、1.66グラムのパレッツ(Parez(登録商標))490(米国、ペンシルベニア州ピッツバーグのバイエル社(Bayer Corp.)より)(デンプンの3重量%の尿素−グリオキサール樹脂)、及び45グラムの0.1Mリン酸カリウム水性緩衝液(pH=2.1)が200mlのビーカーに添加された。ビーカーを水浴中に配置し、およそ1時間沸騰させるが、その間にデンプン混合物を手動で撹拌してデンプンの構造を破壊し、ビーカー中に約25グラムの水が残るまで水の量を蒸発させた。次に混合物は約40℃の温度まで冷却された。混合物の一部分は10立方センチメートル(cc)の注射器に入れられ、そこから押し出されて繊維を成形した。繊維が約10ミクロン〜約100ミクロンの直径を有するまで、繊維を手動で延伸した。次に、繊維を周囲空気中におよそ1分間吊るして、繊維を乾燥させ、固化させた。繊維はアルミニウム皿上に設置され、対流式オーブン中で約10分間約120℃の温度で硬化された。硬化された繊維は次に、約22℃の一定温度及び約25%の一定相対湿度を有する室内に約24時間設置された。
【0078】
単一繊維は脆弱なため、クーポン90(図10)を用いて繊維110を支持することができる。クーポン90は、通常の事務用コピー用紙又は類似の軽い材料から製造することができる。図10の図解例では、クーポン90は、クーポン90の中央に約9ミリメートル×約5ミリメートルの大きさの長方形の切り抜き91を有する、約20ミリメートル×約8ミリメートルの全体の大きさを有する長方形構造を含む。繊維110の末端110a、110bは、図10に示されるように、クーポン90の末端に接着テープ95(例えば従来のスコッチテープ)又は別の方法により固定され、その結果繊維110はクーポン90の中央の切り抜き91の距離(本実施例では約9ミリメートル)を跨ぐことができる。設置の便宜のために、クーポン90は、力変換器の上部プレート上に設置された好適なフックを受け入れるために構築された孔98をクーポン90の上部に有してもよい。繊維に力を適用する前に、繊維の直径を光学顕微鏡により三位置で測定し、平均して計算に用いる平均繊維直径を得ることができる。
【0079】
次にクーポン90は、繊維伸縮レオメーター(図示せず)上に、繊維110が、適用される負荷「P」(図10)の方向に実質的に平行であるように設置され得る。繊維110に平行なクーポン90の横の部分が切断され(図10の線92に沿って)、その結果繊維110は負荷を受け取る唯一の要素になり得る。
【0080】
繊維110は実質的に湿らすことができる。例えば、出力の霧が直接繊維に向くようにゴムホースが繊維から約200ミリメートル(約8インチ)離して位置付けられ、超音波加湿器(図示せず)の電源を投入することができる。繊維110は、約1分間蒸気に暴露することができ、その後力の負荷Pを繊維110に適用することができる。繊維110は、繊維110に延伸力を付加する力の負荷の適用中に、連続して蒸気に暴露する。力が繊維に適用されている時に、繊維110が加湿器の出力の主流内に連続して確実に存在するように注意する必要がある。正しく暴露した場合、典型的には繊維110の上又は周囲に水滴を見ることができる。加湿器、その中身、及び繊維110は、使用前に周囲温度と平衡化することができる。
【0081】
力の負荷及び直径の測定を用いて、湿潤引張応力をメガパスカル(MPa)の単位で計算することができる。試験は複数回、例えば8回繰り返すことができる。8本の繊維の湿潤引張応力の測定結果が平均される。力変換器からの力の読みは、残りのクーポンの質量について、繊維が破壊された後に収集された力変換器の信号の平均を、すべての組の力の読みから引き算することにより補正される。繊維の破壊時の応力は、繊維上に生成された最大の力を、試験を行う前に測定された繊維の平均等価直径の光学顕微鏡測定に基づいた、繊維の断面積により割り算することにより計算することができる。実際のプレートの分離開始(bps)は、試験される特定試料に依存し得るが、試料の実際の工学ひずみを計算するために記録される。本実施例では、結果として0.33MPaの平均湿潤引張応力が0.29の標準偏差により得られた。
【0082】
(B)(3)非熱可塑性繊維の実施例2
25グラムのクリントン(Clinton(登録商標))480デンプン(およそ740,000g/モルの重量平均分子量を有する酸化デントコーンスターチ)(米国、イリノイ州ジケーターのアーチャー、ダニエルズ、ミッドランド社(Archer,Daniels,Midland Co.)から)、1.25グラムの無水塩化カルシウム(デンプンの5重量%)、1.66グラムのパレッツ(Parez(登録商標))490(デンプンの3重量%の尿素−グリオキサール樹脂)、及び45グラムの0.5重量対重量%クエン酸水溶液が200mlのビーカーに添加された。繊維は、上記の実施例1に概要を述べた手順に従って製造及び調製され、次に繊維の湿潤引張応力が、実施例1に記載された方法により測定された。結果として、3.4MPaの最大湿潤引張応力と共に、2.1MPaの平均湿潤引張応力が1.25の標準偏差により得られた。
【0083】
(B)(4)非熱可塑性繊維の実施例3
25グラムのエチレックス(Ethylex(登録商標))2005デンプン(およそ250,000g/モルの重量平均分子量を有し、2重量対重量%のエチレンオキシドの置換を有するヒドロキシエチル化デントコーンスターチ)(A.E.ステーリー製造会社(A.E.Staley Manufacturing Corporation)から)、5.55グラムのパレッツ(Parez(登録商標))490(デンプンの10重量%の尿素−グリオキサール樹脂)、N−300ポリアクリルアミドの1.0重量対重量%溶液の2.0グラム(米国、ニュージャージー州ウエストパターソンのサイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries,Inc.)から)、及び45グラムの0.5重量対重量%のクエン酸水溶液が200mlのビーカーに添加された。繊維は、上記の実施例1に概要を述べた手順に従って生成及び調製され、次に繊維の湿潤引張応力が、実施例1に記載された方法により測定された。結果として、0.45MPaの平均湿潤引張応力が0.28の標準偏差により得られた。
【0084】
上記の単一繊維の湿潤引張応力を測定する方法は、重要な繊維性能特性の直接測定を準備するが、一方でこの測定は時間がかかる可能性がある。繊維の架橋の程度を測定し、その結果その引張強度を測定するために用いられ得る別の方法は、繊維による食塩水の吸収を測定する方法である。この方法は、架橋デンプンは、水又は食塩水中に設置された場合、このような溶液中の水を吸収するという事実に基づいている。溶液の濃度の測定可能な変化は、デンプン繊維による溶液吸収の結果である。高程度の繊維架橋は繊維の吸収能力を減少する。
【0085】
次の方法は、ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))溶液を用いる。ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))分子は、デンプン繊維又は粒子中に浸透しないほど十分大きいが、一方水分子は浸透しデンプン繊維により吸収される。そのため、デンプン繊維による水の吸収の結果として、ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))は溶液中で濃縮され、吸光度測定を用いて正確に測定され得る。
【0086】
ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))溶液は、0.3グラムのブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))(ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma)から)を100ミリリットルの蒸留水に溶解することにより調製できる。このブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))溶液の20ミリリットルのアリコートを、80ミリリットルの食塩水と混合する。食塩水は、10グラムの塩化ナトリウム、0.3グラムの塩化カルシウム二水和物、及び0.6グラムの塩化マグネシウム六水和物を1.0リットルフラスコ中で混合し、蒸留水で容積いっぱいにすることにより調製された。
【0087】
ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))/食塩水の吸光度(空測定又は基線測定)は、標準的1センチメートルキュベットを用い、617ナノメートル波長において、DR/4000U UV/VIS分光光度計(米国、コロラド州ラブランドのHACH社(HACH Company)により製造)を用いて測定することができる。
【0088】
デンプンのフィルムは、ガラスビーカー中の25グラムのデンプンを25グラムの蒸留水と共におよそ1時間、95℃に加熱された水浴中で加熱することにより、デンプンを「構造破壊する」ことにより調製される。デンプンが構造破壊された後、パレッツ(Parez(登録商標))490架橋剤及びリン酸触媒がデンプン混合物に添加され、この混合物は撹拌される。この混合物は1平方フット(929平方センチメートル)のテフロン(Teflon(登録商標))材料のシート上に注がれ、広げられてフィルムを形成する。このフィルムを室温で1日乾燥させ、次いでオーブン中で約120℃で10分間硬化させる。
【0089】
乾燥させたフィルムは破られ、IKAオールベイシックグラインダー(IKA All Basic grinder)(米国、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKAワークス社(IKA Works,Inc.)により製造)中に設置され、25,000rpmでおよそ1分間粉砕される。粉砕されたデンプンは、次に600ミクロンのふるい、例えばふるい番号30(Sieve Number 30)(米国標準ふるいシリーズ(U.S.Standard Sieve Series)、A.S.T.M.E−11規格により製造、米国、イリノイ州シカゴのドュアル製造会社(Dual Mfg.Co.)により製造)を通して300ミクロンのふるい(ふるい番号50)上にふるわれる。
【0090】
2グラムのふるいにかけられたデンプンは、蒸発を避けるために覆われたビーカー中で室温で約15分間連続的に撹拌される15グラムのブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))/食塩水に添加される。この溶液は、次に5マイクロメートルのシリンジフィルタ、例えばスパルタン(Spartan(登録商標))−25ナイロン膜フィルタ(米国、ニューハンプシャー州キーンのシュライヒャー・アンド・シェル社(Schleicher & Schuell Co.)から)を通して濾過される。濾過された溶液の吸光度は、ブルーデキストラン(Blue Dextran(登録商標))/食塩の空測定と同様に測定することができる。デンプン試料の「食塩水吸収能力」は、デンプン試料のグラム(GS)当たりの、吸収された食塩水のグラム(GA)の比として表すことができ、次の式により計算される:
GA/GS=(15−((空測定の吸光度/試料の吸光度)x15))/2
非熱可塑性デンプン繊維は、繊維をデンプン粒子に置き換えることによる、食塩水吸収能力試験により試験することができる。本発明によると、非熱可塑性デンプン繊維は、1グラムの繊維当たり約2グラム未満、より具体的には1グラムの繊維当たり約1グラム未満、更により具体的には1グラムの繊維当たり約0.5グラム未満の食塩水の食塩水吸収能力を有することができる。
【実施例】
【0091】
次のデンプンのふるいに掛けられた粒子が、上記に記載された方法に従って調製され測定された。パレッツ(Parez(登録商標))490架橋剤、リン酸触媒、及び任意に塩化カルシウム架橋剤を含むデンプン試料のそれぞれが、すべて活性固体基盤で、溶液吸収値と共に次の表中に記載されている。
【0092】
【表1】

(C)剪断粘度
本発明の非熱可塑性デンプン組成物の剪断粘度は、キャピラリーレオメーター、モデルレオグラフ(Model Rheograph)2003(米国、サウスカロライナ州ロックヒルのゲットファート(Goettfert)USAにより製造)を用いて測定することができる。測定は、1.0mmの直径D及び30mmの長さL(即ちL/D=30)を有するキャピラリーダイを用いて行うことができる。ダイはレオメーターの容器の低い方の末端に取り付けられることができ、これは約25℃〜約90℃の範囲の試験温度(t)に保持される。試料組成物を、試験温度に予備加熱することができ、レオメーターの容器部分中に実質的に容器を充填するまで導入することができる(約60グラムの試料が用いられる)。容器は、指定された試験温度(t)に保持される。
【0093】
導入後に表面に気泡がある場合には、試験を実行する前に、圧縮を用いて試料から取り込まれた空気を取り除くことができる。ピストンは、容器からキャピラリーダイを通って一連の選択された速度で試料を押すようにプログラムされることができる。試料が容器からキャピラリーダイを通る時に、試料は圧力低下を経験する。見かけの剪断粘度が、キャピラリーダイを通る試料の圧力低下及び流速から計算されることができる。次にlog(見かけの剪断粘度)は、log(剪断速度)に対してプロットされることができ、このプロットは、次式に従う指数法則に適合されることができ、η=Kγn−1、ここでKは物質定数であり、γは剪断速度である。本明細書の組成物の報告された見かけの剪断粘度は、指数法則の関係を用いた3,000秒−1の剪断速度までの外挿である。
【0094】
(D)伸長粘度
本発明の非熱可塑性組成物の伸長粘度は、キャピラリーレオメーター、モデルレオグラフ(Model Rheograph)2003(ゲットファート(Goettfert)USAにより製造)を用いて測定することができる。測定は、15mmの初期等価直径D初期、0.75mmの最終等価直径(D最終)及び7.5mmの長さLを有する半双曲線ダイの設計を用いて行うことができる。
【0095】
ダイの半双曲線形状は、2つの等式により定義される。ここでZは、初期等価直径からの軸方向の距離であり、D(z)は、D初期からの距離zにおけるダイの等価直径である。
【0096】
【数1】

【0097】
【数2】

ダイは容器の低い方の末端に取り付けられることができ、これは非熱可塑性デンプン組成物が加工される温度におよそ相当する約75℃の固定試験温度tに保持される。試料のデンプン組成物を、ダイ温度に予備加熱することができ、レオメーターの容器中に実質的に容器を充填するまで導入することができる。導入後に表面に気泡がある場合には、試験を実行する前に、圧縮を用いて溶融された試料から取り込まれた空気を取り除くことができる。ピストンは、容器から双曲線ダイを通って選択された速度で試料を押すようにプログラムされることができる。試料が容器から開口ダイを通る時に、試料は圧力低下を経験する。見かけの伸長粘度が、ダイを通る試料の圧力低下及び流速から、次の等式に従って計算されることができる:
見かけの伸長粘度=(ΔP/伸長速度/E)x10
ここで、見かけの伸長粘度、即ち剪断粘度の影響について補正されない伸長粘度はパスカル・秒(Pa・s)によるものであり、ΔPはバールによる圧力低下であり、伸長速度は、秒−1の単位によるダイを通る試料の流速であり、Eは無次元のヘンキー(Hencky)ひずみである。ヘンキー(Hencky)ひずみは、時間又は過程に依存するひずみである。非ニュートン流体中の流体要素により経験されるひずみは、その運動学的過程に依存し、即ち次のようである
【0098】
【数3】

このダイ設計のヘンキー(Hencky)ひずみEは5.99であり、次の等式で定義される;
=ln[(D初期/D最終
見かけの伸長粘度は、90秒−1における伸長速度の関数として、指数法則の関係を用いて報告することができる。半双曲線ダイを用いた伸長粘度の測定の詳細な開示は、米国特許第5,357,784号(1994年10月25日にコリアー(Collier)に発行)に見出すことができ、この開示は伸長粘度の測定を記述する限定的目的のために、本明細書に参考として組み込まれる。
【0099】
(E)分子量
非熱可塑性デンプンの重量平均分子量(Mw)は、混床式のカラムを用いるゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。高性能液体クロマトグラフ(HPLC)の構成要素は次の通りである:
【0100】
【表2】

デンプン試料は、デンプンを移動相中に、通常はデンプン3mg/移動相1mLで溶解することにより調製され得る。この試料に蓋をし、次いで約5分間磁性撹拌器を用いて撹拌することができる。この試料は次に85℃の対流式オーブン中に約60分間にわたって設置され得る。この試料は次にそのまま放置され室温まで冷却され得る。この試料は次に5μmのシリンジフィルタ(例えば5μmのナイロン膜、種類スパルタン(Spartan)−25(米国、ニューハンプシャー州キーンのシュライヒャー・アンド・シェル(Schleicher & Schuell)により製造)を通して5ミリリットル(mL)のオートサンプラーバイアル瓶中に、5mLシリンジを用いて濾過され得る。
【0101】
測定された各組の試料について、溶媒の空試料がカラム上に注入され得る。次に照合用試料が、上記の試料に関連した方法と同様の方法で調製され得る。照合用試料は、47,300g/モルの重量平均分子量を有するプルラン(pullulan)(ポリマー研究所(Polymer Laboratories))の2mg/mLを含む。試料の各組を分析する前に、照合用試料を分析することができる。空試料、照合用試料、及び非熱可塑性デンプン試験試料への試験を、二重に実行することができる。最終実行は、空試料の三度目の実行であり得る。光散乱検出器及び示差屈折計を、「ドーンEOS光散乱機器ハードウェアマニュアル(Dawn EOS Light Scattering Instrument Hardware Manual)」及び「オプティラブ(Optilab(登録商標))DSP干渉屈折計ハードウェアマニュアル(Optilab(登録商標)DSP Interferometric Refractometer Hardware Manual)」に従って実行することができ、両方ともに、米国、カリフォルニア州サンタバーバラのワイアット・テクノロジー社(Wyatt Technology Corp.)により製造され、及び両方ともに本明細書に参考として組み込まれる。
【0102】
試料の重量平均分子量を、ワイアット・テクノロジー社(Wyatt Technology Corp.)により製造された、アストラ(Astra(登録商標))ソフトウェアを用いて計算する。0.066のdn/dc(濃度による屈折率の差違)値を用いる。レーザー光線検出器及び屈折率検出器の基線は補正されて、検出器の暗電流及び溶媒散乱からの寄与を取り除く。レーザー光線検出器信号が飽和するか、又は過剰な騒音を示す場合には、分子量の計算には用いられない。分子量の特徴付けについての領域は、レーザー光散乱及び屈折率の90°の検出器の両方の信号が、それらのそれぞれの基線の騒音レベルの三倍より大きいように選択される。典型的には、クロマトグラムの高分子量側は、屈折率信号により限定され、低分子量側は、レーザー光線信号により限定される。
【0103】
重量平均分子量は、アストラ(Astra(登録商標))ソフトウェアに定義されたような「一次ジムプロット」を用いて計算することができる。試料の重量平均分子量が、1,000,000g/モルより大きい場合、一次及び二次ジムプロットの両方が計算され、回帰適合から最小のエラーを有する結果を用いて分子量が計算される。報告された重量平均分子量は、試料の二回の実行の平均である。
【0104】
(F)相対湿度
相対湿度は、乾湿球温度測定及び関連する精神測定表を用いて測定することができる。湿球温度測定は、綿の靴下を温度計の球の周囲に設置することにより行われる。次に、綿の靴下で覆われた温度計を、水温が予想された湿球の温度より高くなるまで、より具体的には約82℃(約180°F)より高くなるまで、温水中に設置する。温度計を細長化空気流中に、押出成形ノズルチップから約3ミリメートル(約1/8インチ)のところに設置する。温度は、最初に水が靴下から蒸発する時に低下する。温度は、湿球温度のところで横ばいになり、次いで靴下がその残りの水を失うと上昇し始める。横ばいの温度が湿球温度である。温度が低下しない場合は、その時は水をより高温に加熱しなければならない。乾球温度は、押出成形ノズルチップから約3mm下流のところに設置された1.6mm直径のJ型の熱電対を用いて測定される。
【0105】
標準の大気精神測定表又は例えばケミカロジック社(ChemicaLogic Corporation)により製造された「モイストエア・タブ(MoistAirTab)」のようなエクセル(Excel)のプラグインに基づいて、相対湿度を決定することができる。相対湿度は、乾湿球温度に基づいて、表から読み取ることができる。
【0106】
(G)空気速度
標準的ピトー管を用いて空気速度を測定することができる。ピトー管は、空気流の中に向けられ、関連した圧力計からの動的圧力の読みを生成する。動的圧力の読みは乾球温度の読みに加えて、標準式により空気速度を出すために用いられる。1.24mm(0.049インチ)のピトー管(米国、ニューハンプシャー州アマーストのユナイテッド・センサー社(United Sensor Company)により製造)は、手持ち式デジタル式差圧計(圧力計)に、速度測定のために接続することができる。
【0107】
(H)繊維直径
繊維直径は、次の手順に従って測定することができる。非熱可塑性デンプン繊維から製造されたウェブから長方形の試料が切断される。試料は顕微鏡のスライドグラスに適合する大きさに切断され、それぞれが約6.35ミリメートル(約0.25インチ)×約25.4ミリメートル(約1インチ)の大きさを有し、二枚のスライドの間にはさまれる。二枚のスライドが、結合クリップで固定され、試料を平らにする。試料及びスライドが顕微鏡台に設置され、10倍の対物レンズを配置される。オリンパス(Olympus(登録商標))BHS顕微鏡(米国、オハイオ州シンシナティのフライアー社(Fryer Company)より市販されている)を用いることができる。顕微鏡の光のコリメータレンズは、対物レンズから可能な限リ遠くに離す。スライドの写真は、例えばニコン(Nikon(登録商標))D1デジタルカメラのようなデジタルカメラに撮影することができ、得られたTIFFフォーマットファイルは、例えばニコン(Nikon(登録商標))撮影ソフトウェア(Capture Software)、バージョン1.1を用いて、コンピュータに転送することができる。TIFFファイルは、画像解析ソフトウェアパッケージ、オプティマス(Optimus(登録商標))、バージョン6.5(米国、メリーランド州シルバースプリングのメディア・サイバネティックス社(Media Cybernetics Inc.)により製造)中にロードすることができる。指定された顕微鏡及び対象について、適当な補正ファイルが選択される。オプティマス(Optimus(登録商標))ソフトウェアが用いられ、繊維の直径を手動で選択し測定する。コンピュータ画面上に示される少なくとも30本の、好ましくは絡み合っていない繊維が、オプティマス(Optimus(登録商標))において長さ測定ツールを用いて測定される。これらの繊維直径は、次に平均されて、所与の試料の平均繊維直径を出すことができる。この分析の前に、当業者は認識するように、繊維直径を得るために、適当なスケーリング及び単位により空間補正をすることができる。
【0108】
下の表に記載される実施例は、本明細書の上の図1及び2に記載される装置を用いて生成された。ピュアリティーガム(Purity Gum(登録商標))59(米国、ニュージャージー州ブリッジウォーターのナショナルスターチ・アンド・ケミカル社(National Starch & Chemical Company)より)溶液と水が、押出成形機内に調製され、ダイに供給された。溶液は、約65%のデンプン及び35%の水を含有した。
【0109】
一対の乾燥ダクトが各場合に用いられた。乾燥ダクトが、紡糸繊維の進路の周囲に対称に位置付けられた。乾燥ダクトは、乾燥空気流が繊維の流れに作用するような角度に曲げられた。
【0110】
【表3】

実施例Aは、約14ミクロンの平均等価直径を有する繊維を生成した。実施例Bは、非熱可塑性溶液流速において、より低い値への変化を伴った。この条件は、約8ミクロンのより小さい平均繊維等価直径を生成した。実施例Cは第二の高速細長化空気を伴った。実施例Cにおいて、ウインドジェット(Windjet(登録商標))、モデルY727−AL、空気ノズル(米国、イリノイ州ホイートンの噴霧システム社(Spraying System Co.)より)が用いられ、乾燥空気がより高い空気速度を生ずるようになされた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の方法の概略的側面図。
【図2】細長化領域を示す本発明の方法の概略的部分側面図。
【図3】図2の直線3−3に沿って取られた概略平面図であり、非熱可塑性デンプン繊維を準備するために配置される複数個の押出成形ノズルの1つの可能性のある配置。
【図4】図3の図に類似した図であり、細長化領域の周囲に境界空気を準備するための開口部の1つの可能性のある配置。
【図5】図3の図に類似した図であり、細長化領域の周囲に境界空気を準備するための開口部の別の可能性のある配置。
【図6】図3の図に類似した図であり、細長化領域の周囲に境界空気を準備するための開口部の更に別の可能性のある配置。
【図7】物理的壁により囲まれる細長化領域の概略的側面図。
【図8】図6の直線8−8に沿って取られた概略的側面図。
【図9】本発明の方法の概略的部分側面図。
【図10】本発明による繊維の湿潤引張応力を測定するために用いられ得るクーポンの概略的平面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.2メガパスカル(MPa)を超える、好ましくは0.5MPaを超える、より好ましくは1.0MPaを超える、より好ましくは2.0MPaを超える、更により好ましくは3.0MPaを超える、湿潤引張応力の見かけのピークを有する非熱可塑性デンプン繊維であって、前記非熱可塑性デンプン繊維が全体として融点を有しない非熱可塑性デンプン繊維。
【請求項2】
前記繊維が、変性デンプン及び架橋剤を含む組成物から製造される、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記繊維が、20ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは6ミクロン未満の平均等価直径を有する、請求項1及び2のいずれか1項に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維が、1グラムの繊維当たり2グラム未満の食塩水、好ましくは1グラムの繊維当たり1グラム未満の食塩水、より好ましくは1グラムの繊維当たり0.5グラム未満の食塩水の食塩水吸収能力を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維。
【請求項5】
非熱可塑性デンプン繊維を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)50重量%〜75重量%の変性デンプン及び25重量%〜50重量%の水を含み、且つ所定の加工温度及び3,000秒−1の剪断速度において1Pa・s〜80Pa・sの剪断粘度を有する非熱可塑性デンプン組成物を準備する工程と;
(b)前記非熱可塑性デンプン組成物を、それぞれがノズルチップを末端とする複数個の押出成形ノズルを通して押し出し加工することにより、複数個の初期デンプン繊維を成形する工程と、ここで、前記複数個のノズルが、多重列に配列されて、前記非熱可塑性デンプン組成物の流れの全般的方向において前記ノズルチップから細長化距離まで伸びる細長化領域を形成し、その一方で好ましくは前記細長化領域中の相対湿度を50%を超えて保持し;
(c)前記ノズルチップにおいて測定した場合に、50%を超える相対湿度を有する細長化空気を準備する工程と;
(d)前記ノズルチップにおいて30m/秒を超える速度を有する前記細長化空気により前記複数個の初期繊維を細長化することにより、20ミクロン未満の個々の平均等価直径を有する複数個の非熱可塑性デンプン繊維を製造する工程と;
(e)前記非熱可塑性デンプン繊維を、70重量%〜99重量%の濃度に脱水する工程とを含む方法。
【請求項6】
前記細長化領域中の前記相対湿度を保持する前記工程が、前記細長化領域の物理的囲いを準備することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細長化領域中の前記相対湿度を保持する前記工程が、好ましくは50を超える湿度及び前記細長化空気の前記速度と等しい速度を有する、境界空気を準備することを含む、請求項5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細長化空気の下流に配置された、少なくとも1つの第二の細長化空気ノズルを通して、第二の細長化空気を提供し、前記第二の細長化空気が、前記第二の細長化空気ノズルの出口において好ましくは30m/秒〜500m/秒の速度を有する工程を更に含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
非熱可塑性デンプン組成物を準備する前記工程において、前記非熱可塑性デンプン組成物が、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒド、グリオキサール尿素樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メチル化グリオキサールエチレン尿素樹脂(methylated ethylene urea glyoxal resin)、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から好ましくは選択される、0.1重量%〜10重量%のアルデヒド系架橋剤;並びに二価又は三価の金属イオンの塩、天然ポリカチオン性ポリマー、合成ポリカチオン性ポリマー、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から好ましくは選択される0.1重量%〜15重量%のポリカチオン性化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
非熱可塑性デンプン組成物を準備する前記工程において、前記非熱可塑性デンプン組成物が、酸触媒を、前記組成物のpHを1.5〜5.0の範囲で備えるのに十分な量で含み、ここで、前記酸触媒が、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から好ましくは選択される、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−503988(P2006−503988A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−566281(P2003−566281)
【出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/002724
【国際公開番号】WO2003/066942
【国際公開日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】