説明

非生物的ストレスに対する植物体の耐性を増大させるためのストロビルリン

本発明は非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための方法に関し、該方法は植物体が生育することになる種子を少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。本発明はさらに非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための方法に関し、該方法は植物体が生育することになる種子を少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。本発明はさらに非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非生物的ストレスは、植物体又は植物体の種子において、例えば、熱気、寒気のような極端な温度、温度の大きな変動、あるいは季節外れの温度、日照り、極端な湿気、高い塩分、放射(例えばオゾン層の減少の結果としての増大したUV放射)、土壌の近辺におけるオゾン量の増加、及び/又は有機物及び無機物による公害(例えば植物に有害な量の殺虫剤や、重金属を含む汚染物質の結果としての)によって引き起こされる。非生物的ストレスはストレスを受けた植物体及び植物体の果実の量及び/又は質の低下をもたらす。つまり、例えば、タンパク質の合成と蓄積は主に温度ストレスによって悪い影響を受け、生長とポリサッカリド合成は実質的に全てのストレス因子によって低下される。このことはバイオマスの消失をもたらし、植物体産物の栄養分含量の低下をもたらす。極端な温度、特に冷気と寒気は、その上、苗木の発芽と発生を遅らせ、植物体の高さ及びその根長を減少させる。遅れた発芽と発生は、多くの場合、植物体の全体としての遅れた発育、したがって例えば遅れた成熟につながる。植物体の根長の低下は、土壌からの栄養分の取り込みがより少なくなること及び将来の温度の極限(特に日照り)に対する耐性がより低くなることを意味する。
【0003】
より早期に播種・植え付けしようとする現在の風潮は、植物体及び種子が非生物的ストレス(特に寒さ)に曝露されるというリスクを高めるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、非生物的ストレスに対する植物体又は植物体種子の耐性を増大させる化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外にも、ストロビルリンがそのような耐性増強効果を有していることが見出された。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。
【0007】
第2の態様では、本発明は、非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるための先に定義した少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当然のこととして、用語「〜の種子」は、植物体が生育した又は生育することになる種子に関するものであって、植物体自体が産生する種子に関するものではない。
【0009】
用語「種子」は、あらゆるタイプの植物体繁殖用物質を表す。これには、実際の意味での種子、禾穀粒、果実、塊茎、根茎、胞子、切り枝、細長片、頂端分裂組織、個々の植物体細胞並びに植物完成体が生育し得るあらゆる形態の植物体組織が含まれる。好ましくは、これは、実際の意味での種子の形態を取る。
【0010】
「生育媒体」、「生長媒体」又は「生長基質」とは、土(例えば、ポット、花壇あるいは農場の)や人工培地のような、種子が播種されてその植物体が生育する又は生育するであろうあらゆるタイプの基質のことをいう。一般には、これは、土の形態を取る。
【0011】
後述する可変部の定義中に記載されている有機部分構造は、用語ハロゲンのように、集合用語であり、個々の基の構成員を個別に収載しているものである。前頭部分C〜Cは、各ケースにおいて、その基中にある炭素原子のあり得る数を表わしている。
【0012】
ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味するものとされ、好ましくはフルオロ、クロロ、及びブロモであり、特にはフルオロ及びクロロである。
【0013】
〜C−アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基である。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルがある。C〜C−アルキルは、1〜8個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基である。例には、C〜C−アルキルに対して言及したものに加えて、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2メチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル及びこれらの位置異性体がある。
【0014】
〜C−ハロアルキルは、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子によって置き換えられている、上記で定義した1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子(=C〜C−ハロアルキル))を有する線状又は分枝状アルキル基である。C〜C−ハロアルキルは、例えばクロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1−クロロエチル、1−ブロモエチル、1−フルオロエチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−クロロ−2−フルオロエチル、2−クロロ−2,2−ジフルオロエチル、2,2−ジクロロ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル等である。C〜C−ハロアルキルは、C〜C−ハロアルキルに対して言及した例に加えて、例えば2−フルオロプロピル、3−フルオロプロピル、2,2−ジフルオロプロピル、2,3−ジフルオロプロピル、2−クロロプロピル、3−クロロプロピル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブロモプロピル、3−ブロモプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3,3,3−トリクロロプロピル、CH〜C、CF〜C、1−(CHF)−2−フルオロエチル、1−(CHCl)−2−クロロエチル、1−(CHBr)−2−ブロモエチル、4−フルオロブチル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル又はノナフルオロブチルである。C〜C−ハロアルキルは、加えるものとしては、例えば、5−フルオロペンチル、5−クロロペンチル、5−ブロモペンチル、5−ヨードペンチル、ウンデカフルオロペンチル、6−フルオロヘキシル、6−クロロヘキシル、6−ブロモヘキシル、6−ヨードヘキシル又はドデカフルオロヘキシルである。
【0015】
〜C−ヒドロキシアルキルは、少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基によって置き換えられているC〜C−アルキル基を表わす。例には、ヒドロキシメチル、1−及び2−ヒドロキシエチル、1,2−ジヒドロキシエチル、1−、2−及び3−ヒドロキシプロピル、1,2−ジヒドロキシプロピル、1,3−ジヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1,2,3−トリヒドロキシプロピル、1−、2−、3−及び4−ヒドロキシブチル等がある。
【0016】
〜C−アルコキシは、酸素原子を介して結合されているC〜C−アルキル基を表わす。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ及びtert−ブトキシがある。C〜C−アルコキシは、酸素原子を介して結合されているC〜C−アルキル基を表わす。例には、C〜C−アルコキシに対して記載したものに加えて、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ及びこれらの位置異性体がある。
【0017】
〜C−ハロアルコキシは、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素によって(好ましくはフッ素によって)部分的又は完全に置換されている上記で言及したC〜C−アルコキシ基を表わす。C〜C−ハロアルコキシは、例えば、OCHF、OCHF、OCF、OCHCl、OCHCl、OCCl、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2−クロロエトキシ、2−ブロモエトキシ、2−ヨードエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2−クロロ2−フルオロエトキシ、2−クロロ−2,2−ジフルオロエトキシ、2,2−ジクロロ−2−フルオロエトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ又はOCである。C〜C−ハロアルコキシは、加えるものとしては、例えば、2−フルオロプロポキシ、3−フルオロプロポキシ、2,2−ジフルオロプロポキシ、2,3−ジフルオロプロポキシ、2−クロロプロポキシ、3−クロロプロポキシ、2,3−ジクロロプロポキシ、2−ブロモプロポキシ、3−ブロモプロポキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシ、3,3,3−トリクロロプロポキシ、OCH〜C、OCF〜C、1−(CHF)−2−フルオロエトキシ、1−(CHCl)−2−クロロエトキシ、1−(CHBr)−2−ブロモエトキシ、4−フルオロブトキシ、4−クロロブトキシ、4−ブロモブトキシ又はノナフルオロブトキシである。C〜C−ハロアルコキシは、加えるものとしては、例えば、5−フルオロペントキシ、5−クロロペントキシ、5−ブロモペントキシ、5−ヨードペントキシ、ウンデカフルオロペントキシ、6−フルオロヘキソキシ、6−クロロヘキソキシ、6−ブロモヘキソキシ、6−ヨードヘキソキシ又はドデカフルオロヘキソキシである。
【0018】
〜C−アルコキシ−C〜C−アルキルは、少なくとも1個の水素原子がC〜C−アルコキシ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基を表わす。例には、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、sec−ブトキシメチル、イソブトキシメチル、tert−ブトキシメチル、メトキシエチル、1−及び2−エトキシエチル、1−及び2−プロポキシエチル、1−及び2−イソプロポキシエチル、1−及び2−ブトキシエチル、1−及び2−sec−ブトキシエチル、1−及び2−イソブトキシエチル、1−及び2−tert−ブトキシエチル、1−、2−及び3−メトキシプロピル、1−、2−及び3−エトキシプロピル、1−、2−及び3−プロポキシプロピル、1−、2−及び3−イソプロポキシプロピル、1−、2−及び3−ブトキシプロピル、1−、2−及び3−sec−ブトキシプロピル、1−、2−及び3−イソブトキシプロピル、1−、2−及び3−tert−ブトキシプロピル等がある。
【0019】
ヒドロキシ−C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキルは、少なくとも1個の水素原子が少なくとも1個のC〜C−アルコキシ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基を表わすが、さらに、そのアルキル基又はそのアルコキシ基又はその双方中の少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基によって置き換えられているC〜C−アルキル基を表わす。例には、(2−ヒドロキシエトキシ)メチル、(2−及び3−ヒドロキシプロポキシ)メチル、(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(2−及び3−ヒドロキシプロポキシ)−1−エチル、(2−及び3−ヒドロキシプロポキシ)−2−エチル、2−エトキシ−1−ヒドロキシエチル等がある。
【0020】
〜C−アルキルチオは、イオウ原子を介して結合されている上記で定義したC〜C−アルキル基である。例には、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、イソブチルチオ及びtert−ブチルチオがある。C〜C−アルキルチオは、イオウ原子を介して結合されている上記で定義したC〜C−アルキル基である。例には、C〜C−アルキルチオに対して言及したものに加えるものとして、ペンチルチオ、1−メチルブチルチオ、2−メチルブチルチオ、3−メチルブチルチオ、2,2−ジメチルプロピルチオ、1−エチルプロピルチオ、1,1−ジメチルプロピルチオ、1,2−ジメチルプロピルチオ、ヘキシルチオ、1−メチルペンチルチオ、2−メチルペンチルチオ、3−メチルペンチルチオ、4−メチルペンチルチオ、1,1−ジメチルブチルチオ、1,2−ジメチルブチルチオ、1,3−ジメチルブチルチオ、2,2−ジメチルブチルチオ、2,3−ジメチルブチルチオ、3,3−ジメチルブチルチオ、1−エチルブチルチオ、2−エチルブチルチオ、1,1,2−トリメチルプロピルチオ、1,2,2−トリメチルプロピルチオ、1−エチル−1−メチルプロピルチオ、1−エチル−2−メチルプロピルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ及びこれらの位置異性体がある。
【0021】
〜C−ハロアルキルチオは、イオウ原子を介して結合されていて、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって(特にはフッ素又は塩素によって)置き換えられている、線状又は分枝状C〜C−アルキル基である。例には、クロロメチルチオ、ジクロロメチルチオ、トリクロロメチルチオ、フルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、ブロモメチルチオ、クロロフルオロメチルチオ、ジクロロフルオロメチルチオ、クロロジフルオロメチルチオ、1−クロロエチルチオ、1−ブロモエチルチオ、1−フルオロエチルチオ、2−クロロエチルチオ、2−ブロモエチルチオ、2−フルオロエチルチオ、2,2−ジフルオロエチルチオ、2−クロロ−2−フルオロエチルチオ、2,2−ジクロロエチルチオ、2,2,2−トリクロロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、ペンタクロロエチルチオ等がある。
【0022】
〜C−アルキルチオ−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がC〜C−アルキルチオ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基である。したがって、C〜C−アルキルチオ−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がC〜C−アルキルチオ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基である。例には、メチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、メチルチオエチル、エチルチオエチル、プロピルチオエチル、メチルチオプロピル、エチルチオプロピル、プロピルチオプロピル等がある。
【0023】
〜C−ハロアルキルチオ−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がC〜C−ハロアルキルチオ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基である。したがって、C〜C−ハロアルキルチオ−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がC〜C−ハロアルキルチオ基によって置き換えられているC〜C−アルキル基である。例には、クロロメチルチオメチル、ジクロロメチルチオメチル、トリクロロメチルチオメチル、クロロエチルチオメチル、ジクロロエチルチオメチル、トリクロロエチルチオメチル、テトラクロロエチルチオメチル、ペンタクロロエチルチオメチル等がある。
【0024】
カルボキシルは、基−COOHである。
【0025】
〜C−アルキルカルボニルは、基−CO−R[式中、Rは、C〜C−アルキルである]である。
【0026】
〜C−アルキルオキシカルボニル(C〜C−アルコキシカルボニルとも呼ばれる)は、基−C(O)O−R[式中、Rは、C〜C−アルキルである]である。
【0027】
〜C−アルキルカルボニルオキシは、基−OC(O)−R[式中、Rは、C〜C−アルキルである]である。
【0028】
〜C−アルキルアミノカルボニルは、基−CO−NH−R[式中、Rは、C〜C−アルキルである]である。
【0029】
ジ(C〜C−アルキル)アミノカルボニルは、基−CO−N(RR’)[式中、R及びR’は、互いに独立して、C〜C−アルキルである]である。
【0030】
〜C−アルケニルは、2〜8個の炭素原子と任意の位置に1つの二重結合とを有する線状又は分枝状炭化水素である。例には、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、1−メチルエテニル、1−、2−及び3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−、2−、3−及び4−ペンテニル、1−、2−、3−、4−及び5−ヘキセニル、1−、2−、3−、4−、5−及び6−ヘプテニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−及び7−オクテニル及びこれらの構造異性体がある。
【0031】
〜C−アルケニルオキシは、酸素原子を介して結合されているC〜C−アルケニル基である。例には、エテニルオキシ、プロペニルオキシ等がある。
【0032】
〜C−アルケニルチオは、イオウ原子を介して結合されているC〜C−アルケニル基である。例には、エテニルチオ、プロペニルチオ等がある。
【0033】
〜C−アルケニルアミノは、基−NH−R[式中、Rは、C〜C−アルケニルである]である。
【0034】
N−C〜C−アルケニル−N−C〜C−アルキルアミノは、基−N(RR’)[式中、RはC〜C−アルケニルであり、R’はC〜C−アルキルである]である。
【0035】
〜C−アルキニルは、2〜8個の炭素原子と少なくとも1つの三重結合とを有する、線状又は分枝状炭化水素である。例には、エチニル、プロピニル、1−及び2−ブチニル等がある。
【0036】
〜C−アルキニルオキシは、酸素原子を介して結合されているC〜C−アルキニル基である。例には、プロピニルオキシ、ブチニルオキシ等がある。
【0037】
〜C−アルキニルチオは、イオウ原子を介して結合されているC〜C−アルキニル基である。例には、エチニルチオ、プロピニルチオ等がある。
【0038】
〜C−アルキニルアミノは、基−NH−R[式中、Rは、C〜C−アルケニルである]である。
【0039】
N−C〜C−アルキニル−N−C〜C−アルキルアミノは、基−N(RR’)[式中、RはC〜C−アルキニルであり、R’はC〜C−アルキルである]である。
【0040】
〜C−シクロアルキルは、単環式3−〜8−員の飽和シクロ脂肪族基である。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルがある。
【0041】
〜C−シクロアルキルオキシ(又はC〜C−シクロアルコキシ)は、酸素を介して結合されているC〜C−シクロアルキル基である。例には、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ及びシクロオクチルオキシがある。
【0042】
〜C−シクロアルキルチオは、イオウ原子を介して結合されているC〜C−シクロアルキル基である。例には、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、シクロヘプチルチオ及びシクロオクチルチオがある。
【0043】
〜C−シクロアルキルアミノは、基−NH−R[式中、Rは、C〜C−シクロアルキルである]である。
【0044】
N−C〜C−シクロアルキル−N−C〜C−アルキルアミノは、基−N(RR’)[式中、RはC〜C−シクロアルキルであり、R’はC〜C−アルキルである]である。
【0045】
〜C−シクロアルケニルは、少なくとも1つの二重結合を有する単環式の3〜8員不飽和シクロ脂肪族基である。例には、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクチル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル及びシクロオクタテトラエニルがある。
【0046】
〜C−シクロアルケニルオキシは、酸素を介して結合されているC〜C−シクロアルケニル基である。例には、シクロプロペニルオキシ、シクロブテニルオキシ、シクロペンテニルオキシ、シクロペンタジエニルオキシ、シクロヘキセニルオキシ、シクロヘキサジエニルオキシ、シクロヘプテニルオキシ、シクロヘプタジエニルオキシ、シクロオクテニルオキシ、シクロオクタジエニルオキシ、シクロオクタトリエニルオキシ及びシクロオクタテトラエニルオキシがある。
【0047】
〜C−アルキレンは、m〜n(例えば1〜8)個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキレン基である。したがって、C〜C−アルキレンは、例えば、メチレン、1,1−又は1,2−エチレン、1,1−、1,2−、2,2−又は1,3−プロピレンである。C〜C−アルキレンは、例えば、1,1−又は1,2−エチレン、1,1−、1,2−、2,2−又は1,3−プロピレン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンである。C〜C−アルキレンは、例えば、1,1−、1,2−、2,2−又は1,3−プロピレン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、2,2−ジメチル−1,2−エチレン、1,1−、1,2−、1,3−、1,4−又は1,5−ペンチレン等である。
【0048】
オキシ−C〜C−アルキレンは、基−O−R−[式中、Rは、C〜C−アルキレンである]である。したがって、オキシ−C〜C−アルキレンは、基−O−R−[式中、Rは、C〜C−アルキレンである]である。例は、オキシ−1,2−エチレン、オキシ−1,3−プロピレン等である。
【0049】
オキシ−C〜C−アルキレンオキシは、基−O−R−O−[式中、Rは、C〜C−アルキレンである]である。したがって、オキシ−C〜C−アルキレンオキシは、基−O−R−O−[式中、Rは、C〜C−アルキレンである]である。例は、オキシメチレンオキシ、オキシ−1,2−エチレンオキシ、オキシ−1,3−プロピレンオキシ等である。
【0050】
〜C−アルケニレンは、m〜n(例えば2〜8)個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルケニレン基である。したがって、C〜C−アルケニレンは、例えば、1,1−又は1,2−エテニレン、1,1−、1,2−又は1,3−プロペニレン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンである。C〜C−アルケニレンは、例えば、1,1−、1,2−又は1,3−プロペニレン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−ブテニレン、1,1−、1,2−、1,3−、1,4−又は1,5−ペンテニレン等である。
【0051】
オキシ−C〜C−アルケニレンは、基−O−R−[式中、Rは、C〜C−アルケニレンである]である。したがって、オキシ−C〜C−アルケニレンは、基−O−R−[式中、Rは、C〜C−アルケニレンである]である。例は、オキシ−1,2−エテニレン、オキシ−1,3−プロペニレン等である。
【0052】
オキシ−C〜C−アルケニレンオキシは、基−O−R−O−[式中、Rは、C〜C−アルケニレンである]である。したがって、オキシ−C〜C−アルケニレンオキシは、基−O−R−O−[式中、Rは、C〜C−アルケニレンである]である。例は、オキシ−1,2−エトニレンオキシ、オキシ−1,3−プロプニレンオキシ等である。
【0053】
アリールは、フェニル、ナフチル、アントラセニル又はフェナントレニルのような、6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素であって、特にはフェニルである。
【0054】
アリールオキシは、酸素原子を介して結合されているアリール基である。1つの例は、フェノキシである。
【0055】
アリールチオは、イオウ原子を介して結合されているアリール基である。1つの例は、フェニルチオである。
【0056】
アリール−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がアリール基によって置き換えられているC〜C−アルキル基である。例は、ベンジル及び2−フェニルエチルである。
【0057】
アリール−C〜C−アルケニルは、1個の水素原子がアリール基によって置き換えられているC〜C−アルケニル基である。1つの例は、2−フェニルエテニル(スチリル)である。
【0058】
アリール−C〜C−アルキニルは、1個の水素原子がアリール基によって置き換えられているC〜C−アルキニル基である。1つの例は、2−フェニルエチニルである。
【0059】
アリール−C〜C−アルコキシは、1個の水素原子がアリール基によって置き換えられているC〜C−アルコキシ基である。1つの例は、ベンジルオキシ(ベンゾキシ)である。
【0060】
ヘテロシクリルは、好ましくは3〜7個の環員を有する非芳香族飽和もしくは不飽和つまり芳香族(「ヘタリール」)ヘテロシクリル基である。この環員は、O、N及びSから選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子及び/又はSO、SO及びNR[式中、Rは、H又はC〜C−アルキルである]から選択されるヘテロ原子基を含み、さらには場合により1、2又は3個のカルボニル基も含む。非芳香族ヘテロシクリル基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピロリジンジオニル、ピラゾリニル、ピラゾリノニル、イミダゾリニル、イミダゾリノニル、イミダゾリンジオニル、ピロリニル、ピロリノニル、ピロリンジオニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、イミダゾリノニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、1,3−ジオキソラニル、ジオキソレニル、チオラニル、ジヒドロチエニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、オキサゾリニル、イソキサゾリニル、チアゾリニル、イソチアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサチオラニル、ピペリジニル、ピペリジノニル、ピペリジンジオニル、ピペラジニル、ピリジノニル、ピリジンジオニル、ピリダジノニル、ピリダジンジオニル、ピリミジノニル、ピリダジンジオニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、チオピラニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チアジニル等が挙げられる。芳香族ヘテロシクリル基(=ヘタリール)は、好ましくは、5−又は6−員である。例としては、ピロール、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びトリアジニルが挙げられる。
【0061】
ヘテロシクリルオキシ又はヘタリールオキシは、酸素原子を介して結合されているヘテロシクリル(又はヘタリール)である。
【0062】
ヘタリール−C〜C−アルキルは、1個の水素原子がヘタリール基によって置換されているC〜C−アルキル基である。例は、ピロールメチル、ピリジニルメチル等である。
【0063】
ヘタリール−C〜C−アルケニルは、1個の水素原子がヘタリール基によって置換されているC〜C−アルケニル基である。
【0064】
ヘタリール−C〜C−アルキニルは、1個の水素原子がヘタリール基によって置換されているC〜C−アルキニル基である。
【0065】
ヘタリール−C〜C−アルコキシは、1個の水素原子がヘタリール基によって置換されているC〜C−アルコキシ基である。
【0066】
ストロビルリンの好ましい実施形態及び本発明の他の特徴に関して以下に為される論評は、単独で、又は、好ましくは、相互の組み合わせで解釈されるべきである。
【0067】
ストロビルリンは、ストロビルルス属(genus Strobilurus;マツカサキノコ属)に属する菌によって産生される防御物質である、天然のストロビルリンから誘導される殺菌剤として有効な化合物である。その構造についてであるが、ストロビルリンは、一般に、1.)エノールエーテル、オキシムエーテル及びO−アルキルヒドロキシルアミン(群I)から選択される少なくとも1種の官能性基と、2.)少なくとも1種のカルボキシル誘導体又はケト基(群II)とを含んでいる。好ましいカルボキシル誘導体は、以下の官能性基:エステル、環状エステル、アミド、環状アミド、ヒドロキサム酸及び環状ヒドロキサム酸である。好ましくは、群I基と群II基は、互いに直に隣接している、すなわち、唯一つの結合を介して連結されている。一部のストロビルリンは、唯一つの群I又はIIの官能性基を含んでいる。
【0068】
好ましいストロビルリンは、式IA又はIB
【化1】

【0069】
[式中、
・・・は、二重結合又は一重結合であり;
は、−C[COCH]=CHOCH、−C[COCH]=NOCH、−C[CONHCH]=NOCH、−C[COCH]=CHCH、−C[COCH]=CHCHCH、−C[COCHCH]=NOCH、−C[C(=N−ORμ)ORν]=NOCH、−N(OCH)−COCH、−N(CH)−COCH又はN(CHCH)−COCHであり、式中のRμ及びRνは、独立して、H、メチルもしくはエチルであるか又は一緒になって基CHもしくはCHCHを形成しており;
は、直接か又は酸素原子、イオウ原子、アミノ基もしくはC〜C−アルキルアミノ基を介して結合されている有機基であり;又は
基X及び、R及びXが結合されている環Q又はTと一緒に、酸素、イオウ及び窒素から独立に選択される1、2又は3個のへテロ原子を、炭素環員に加えて含み得る置換されていてもよい二環式、部分もしくは完全不飽和系を形成しており;
は、−OC[COCH]=CHOCH、−OC[COCH]=CHCH、−OC[COCH]=CHCHCH、−SC[COCH]=CHOCH、−SC[COCH]=CHCH、−SC[COCH]=CHCHCH、−N(CH)C[COCH]=CHOCH、−N(CH)C[COCH]=NOCH、−CHC[COCH]=CHOCH、−CHC[COCH]=NOCH、−CHC[CONHCH]=NOCH又は−CHNRπ[COCH](ここで、Rπは、H、メチル又はメトキシである)であり;
は、酸素、イオウ、=CH−又は=N−であり;
nは、0、1、2又は3であり、ここで、n>1の場合は、基Xは同じ又は異なり得;
Xは、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ又はC〜C−アルキルチオであり、又は
Xは、n>1の場合は、Q又はT環の2つの隣接するC原子に結合された2つの基Xは、C〜C−アルキレン、C〜C−アルケニレン、オキシ−C〜C−アルキレン、オキシ−C〜C−アルキレンオキシ、オキシ−C〜C−アルケニレン、オキシ−C〜C−アルケニレンオキシ又はブタジエンジイル基でもあり得、これらの鎖には、さらに、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ及びC〜C−アルキルチオから互いに独立して選択される1〜3個の基が結合されていてもよく;
Yは、=C−又は−N−であり;
Qは、フェニル、ピロリル、チエニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、2−ピリドニル、ピリミジニル又はトリアジニルであり;
Tは、フェニル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル又はトリアジニルである]
で表される化合物である。
【0070】
Q又はTがアゾール又はピリジニル、ピリミジニルもしくはトリアジニル部分構造である化合物IA又はIB中にある塩基性窒素原子のため、そのような式IA及びIBの化合物は無機又は有機酸と又は金属イオンと塩又は付加生成物を形成することができる。そのようなものは、通常の方法で、例えばその化合物を該当の陰イオンの酸と反応させることによって形成させることができる。
【0071】
適する農薬として有用な塩は、特には、カチオンの塩又は酸の酸付加塩であるが、そのようなカチオン及びアニオンは本発明による化合物の作用に対して有害な影響を何ら及ぼさないものとする。適するカチオンは、特に、アルカリ金属(好ましくはリチウム、ナトリウム及びカリウム)のイオン、アルカリ土類金属(好ましくはカルシウム、マグネシウム及びバリウム)のイオン、及び遷移金属(好ましくはマンガン、銅、亜鉛及び鉄)のイオンであり、さらにはアンモニウム(NH)並びにその1〜4個の水素原子がC〜C−アルキル、C〜C−ヒドロキシアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、ヒドロキシ−C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、フェニル又はベンジルによって置き換えられている置換されたアンモニウムも適している。置換されたアンモニウムイオンの例としては、メチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム及びベンジルトリエチルアンモニウムが挙げられ、さらにホスホニウムイオン、スルホニウムイオン(好ましくはトリ(C〜C−アルキル)スルホニウム)、並びにスルホキソニウムイオン(好ましくはトリ(C〜C−アルキル)スルホキソニウム)も挙げられる。
【0072】
有用な酸付加塩のアニオンは、主として、クロリド、ブロミド、フルオリド、硫酸水素、スルファート、リン酸二水素、リン酸水素、ホスファート、ニトラート、炭酸水素、カルボナート、ヘキサフルオロシリカート、ヘキサフルオロホスファート、ベンゾアート、及びC〜C−アルカン酸のアニオン(好ましくはホルミアート、アセタート、プロピオナート及びブチラート)である。そのような塩は、式IA又はIBの化合物を対応するアニオンの酸、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸又は硝酸の酸と反応させることによって形成され得る。
【0073】
特には、置換基Rは、O、S、SO、SO、NR(R=H又はC〜C−アルキル)、CO、COO、OCO、CONH、NHCO及びNHCONHから選択される1又は複数個の基によって場合により分断されたC〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、アリール、ヘタリール、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、アリール−C〜C−アルキル、ヘタリール−C〜C−アルキル、アリール−C〜C−アルケニル、ヘタリール−C〜C−アルケニル、アリール−C〜C−アルキニルもしくはヘタリール−C〜C−アルキニル基の形態を取るか、又はRは、本明細書中以下で定義される式CHON=CRαβ、CHON=CRγCRδ=NORε又はC(Rη)=NOCHφで表される基である。これらの基(特にはアリール及びヘタリール部分構造)は、場合によっては、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、C〜C−ハロアルキル(特にはCF及びCHF)、ヘタリール、アリール、ヘタリールオキシ及びアリールオキシから互いに独立して選択される1又は複数(好ましくは1、2又は3)個の置換基も有している。最後に記載した4つの基中のヘタリール及びアリール部分構造は、同様に、ハロゲン、C〜C−ハロアルキル(特にはCF及びCHF)、フェニル、CN、フェノキシ、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ及びC〜C−ハロアルコキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を有していてもよい。
【0074】
そのような化合物は公知であり、例えば国際公開第97/10716号パンフレット中に、並びにそこで引用されている参考文献中に記載されている(これらは、本明細書中において、その全体が組み込まれる)。
【0075】
好ましいストロビルリンは、Rが、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、アリールオキシメチレン、ヘタリールオキシメチレン、アリールエテニレン又はヘタリールエテニレン(これらの基は、C〜C−アルキル、ハロゲン、CF、CHF、CN、C〜C−アルコキシ、フェニル、フェニルオキシ、ヘタリール及びヘタリールオキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を場合により有し、最後に記載した4つの基中のフェニル及びヘタリール部分構造は、同様に、ハロゲン、CF、CHF、フェニル、CN、フェノキシ、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ及びC〜C−ハロアルコキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を有していてもよい)である;
【0076】
又はRが、CHON=CRαβ又はCHON=CRγCRδ=NORε又はC(Rη)=NOCHφ
[ここで、
αは、C〜C−アルキルであり;
βは、フェニル、ピリジル又はピリミジルであり、場合によりC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲン、C〜C−ハロアルコキシ、CF及びCHFから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を有しており;
γは、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲン、C〜C−ハロアルキル又は水素であり;
δは、水素、シアノ、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、C〜C−アルケニルチオ、C〜C−アルケニルアミノ、N−C〜C−アルケニル−N−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキニル、C〜C−アルキニルオキシ、C〜C−アルキニルチオ、C〜C−アルキニルアミノ、N−C〜C−アルキニル−N−C〜C−アルキルアミノであり、これらの基の炭化水素基は部分的又は完全にハロゲン化されていてもよく、及び/又はそれらにシアノ、ニトロ、ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルケニルオキシ、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、アリール、アリールオキシ、アリール−C〜C−アルコキシ、ヘタリール、ヘタリールオキシ及びヘタリール−C〜C−アルコキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の基が結合されていてもよく、この環状基は、同様に、部分的又は完全にハロゲン化されていてもよく、及び/又はそれらにシアノ、ニトロ、ヒドロキシル、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルケニル及びC〜C−アルケニルオキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の基が結合されていてもよく;
又は
δは、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキルオキシ、C〜C−シクロアルキルチオ、C〜C−シクロアルキルアミノ、N−C〜C−シクロアルキル−N−C〜C−アルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロシクリルアミノ、N−ヘテロシクリル−N−C〜C−アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ、N−アリール−N−C〜C−アルキルアミノ、ヘタリール、ヘタリールオキシ、ヘタリールチオ、ヘタリールアミノ又はN−ヘタリール−N−C〜C−アルキルアミノであり、この環状基は部分的又は完全にハロゲン化されていてもよく、及び/又はそれらにシアノ、ニトロ、ヒドロキシル、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール及びヘタリールオキシから互いに独立して選択される1、2又は3個の基が結合されていてもよく、この芳香族基は同様に部分的又は完全にハロゲン化されていてもよく、及び/又はそれらに1、2又は3個の次の基:シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、ニトロが結合されていてもよく;
又は
δは、基CRκ=NORλ(ここで、Rκ及びRλは、互いに独立して、C〜C−アルキルである)であり;
εは、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル又はC〜C−アルキニルであり、これらの基は部分的又は完全にハロゲン化されていてもよく、及び/又はそれらに1、2又は3個の次の基:シアノ、C〜C−アルコキシ、C〜C−シクロアルキルが結合されていてもよく;
ηは、H又はCHであり;
φは、H、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル又はアリールであり、このアリールは1、2又は3個の次の基:ハロゲン、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ又はC〜C−ハロアルコキシを有していてもよい]
である、
式IA又はIBで表されるストロビルリンである。
【0077】
化合物IA及びIBにおいては、アリールは、好ましくはフェニルであり、ヘタリールは、好ましくはピリジル、ピリミジル、ピロール、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル又はチアゾリルであり、より好ましくはピリジル、ピリミジル又はピラゾリルである。
【0078】
式IA又はIBの特に好ましい化合物は、Rが、以下の意味:
a)フェニルオキシメチレン、ピリジニルオキシメチレン、ピリミジニルオキシメチレン又はピリゾリルオキシメチレン(この芳香族基は、C〜C−アルキル、ハロゲン、CF、CHF、−C(CH)=NOCH及びフェニル[これは1、2又は3個のハロゲン原子及び/又はC〜C−アルキル基によって場合により置換されている]から互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を場合により有している);
b)フェノキシ又はピリミジニルオキシ(これは、1、2又は3個のハロゲン原子によって、又はフェノキシ基[これはハロゲン又はシアノ置換基を場合により有している]によって場合により置換されている);
c)フェニルエテニレン又はピラゾリルエテニレン(このフェニル又はピラゾリル基は、ハロゲン、CF、CHF及びフェニルから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を場合により有している);
d)CHON=CRαβ
(ここで、
αは、C〜C−アルキルであり;
βは、C〜C−アルキル、ハロゲン、CF及びCHFから互いに独立して選択される1、2又は3個の置換基を場合により有しているフェニルであり、又は1又は2個のC〜C−アルコキシ基によって場合により置換されているピリミジニルである);
e)CHON=CRγCRδ=NORε(ここで、
γは、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はハロゲンであり;
δは、C〜C−アルキル、シアノ、ハロゲン、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルケニル、フェニル[これは1、2又は3個のハロゲン原子によって場合により置換されている]であり;又は基CRκ=NORλ(ここで、Rκ及びRλは、互いに独立して、C〜C−アルキルである)であり;
εは、C〜C−アルキルである);
のうちの一つを有している化合物である。
【0079】
式IAの好ましい化合物は、Qがフェニルであり、nが0である化合物である。
【0080】
化合物IA及びIBの中では、化合物IAが好ましい。
【0081】
特に好ましいストロビルリンは、一般名アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン及びトリフロキシストロビンで知られているストロビルリン、さらにはメチル(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバマート、メチル(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバマート、メチル2−オルト−[(2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル]−3−メトキシアクリラート、並びに式IA.1
【化2】

【0082】
[ここで、
Tは、CH又はNであり;
及びRは、互いに独立して、ハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−ハロアルキルであり;
xは、0、1又は2であり;
yは、0又は1である]
で表される化合物又はその農薬として許容される塩である。
【0083】
化合物IA.1においては、Rは、好ましくはC〜C−アルキルであり、特にはメチルである。
【0084】
は、好ましくはハロゲン(特にはCl)、C〜C−アルキル(特にはメチル)、又はC〜C−ハロアルキル(特にはCF)である。
【0085】
好ましい化合物IA.1を以下の表にまとめる。
【化3】

【表1】

【0086】

【0087】

【0088】
より好ましい化合物IA.1においては、TはCHである。
【0089】
より好ましい化合物IA.1においては、yは0である。
【0090】
より好ましい化合物においては、xは、0又は1である。特には、xは1である。
【0091】
特に好ましい化合物IA.1は、化合物I−12、I−23、I−32及びI−38である。さらにより好ましいのは化合物I−32であり、これは、ピラクロストロビンの一般名でも知られている。
【0092】
式IA.1の化合物及びその製造方法は一般に知られている。例えば、化合物I−1〜I−55及びその製造方法は、国際公開第96/01256号パンフレット及び欧州特許出願公開第0804421号明細書に記載されており、化合物I−56〜I−58及びその調製は国際公開第99/33812号パンフレットに記載されている(これらの記載内容をここに参照により全体を組み込む)。さらなる化合物IA.1は、上記参考文献に記載されている方法と類似の方法によって調製され得る。化合物IA.1は殺菌剤として広く知られている。
【0093】
特に好ましいストロビルリンは、式IA.1の化合物であるアゾキシストロビン及びトリフロキシストロビンから選択され、さらにより好ましくはピラクロストロビン、アゾキシストロビン及びトリフロキシストロビンから選択される。特には、ピラクロストロビンが用いられる。
【0094】
本発明による使用及び方法は、非生物的ストレスに対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるものである。
【0095】
非生物的ストレス効果はそれ自体様々に表出し得るものであり、特定の非生物的ストレス因子に曝露された、種子が本発明に従って処理されている植物体を、同じ特定の非生物的ストレス因子に曝露されてはいるが、種子が少なくとも1種のストロビルリンで処理されていない植物体と比較することによって認識され得るものである。当然、この比較は、病原因子が存在していない条件下で行われなければならないものであり、というのは、そうでなければ、処理されていない植物体が、感染の結果として、非生物的ストレス効果に対応する症状又はそれに似た症状を呈することがあり得るからである。
【0096】
非生物的ストレス効果は、それ自体、例えば、特定の非生物的ストレス因子に曝露されたことがある種子はより悪く発芽するということにより現れるものである。より悪い発芽とは、同じ特定の非生物的ストレス因子に曝露されていない種子と比較して、同じ数の種子が、より少ない苗木を生じることを意味する。
【0097】
別の形態としては、さらに、非生物的ストレス効果は、それ自体、発生の低下になって現れることもある。「発生」とは、苗木が土から出現すること(つまり、言い換えると、子葉鞘又は初生葉又は新芽又は葉が土表面から現れること)を意味すると理解する。発生の減少は、同じ特定の非生物的ストレス因子に曝露されていない種子と比較して、同じ数の種子から、より少ない苗木が土から出現することを意味する。
【0098】
一部の植物種では、発芽と発生は一致することがある、すなわち、第1初生葉がすでに土から出現している。しかしながら、これは、全ての植物体でそうでないので、発芽と発生は別個に述べられる。
【0099】
別の形態としては、さらに、非生物的ストレス効果は、それ自体、胚軸の発育低下になって現れることがある、すなわち、茎が期待した長さに生長せず、そして、おそらく、葉及び先端が地面に横たわることがある。一部の植物体では、この特徴は必ずしも不利なものではなく、というのは、ロッジングが減少又は防止されるからである。一部の植物種では、しかしながら、これはまったく望ましくないものである。
【0100】
別の形態としては、さらに、非生物的ストレス効果は、それ自体、植物体の根の長さの低下になって現れることがある。根長の減少は、土からのより少ない栄養分の取り込み及び温度極限(特に日照り)に対するより低い耐性を意味する。
【0101】
全体的には、非生物的ストレス効果は、それ自体、植物体の生命力(=植物体活力)の低下になって現れ得る。生命力の低下は、種子が同じ特定の非生物的ストレス因子に曝露されていない植物体と比較することによって確かめられ得る。植物体の生命力はそれ自体様々な因子として現れるものである。植物体の生命力が現れたものである因子の例は:
(a)目で見る全体的な外観;
(b)根の発育及び/又は根の生長;
(c)葉面積の大きさ;
(d)葉の緑色の着色強さ;
(e)地面の近辺における枯葉の数;
(f)植物体の高さ;
(g)植物体の重さ;
(h)生長の速度;
(i)果実の外観及び/又は数;
(j)果実の質;
(k)木立ち密度;
(l)発芽挙動;
(m)発生挙動;
(n)新芽の数;
(o)新芽のタイプ(質及び繁殖性);
(p)植物体の逞しさ(例えば生物的又は非生物的ストレスに対する耐性);
(q)壊死の有無;
(r)老化挙動;
である。
【0102】
したがって、非生物的ストレス効果は、それ自体、少なくとも1つの上記した因子の悪化になって現れ得るものであり、例えば、
(a)目で見るより悪い全体的な外観;
(b)より悪い根の発育及び/又はより悪い根の生長(本明細書中上記を参照されたい);
(c)葉面積の大きさの減少;
(d)葉の緑色のより低い着色強さ;
(e)地面の近辺におけるより多い枯葉の数;
(f)より低い植物体の高さ(植物体の「発育停止」、本明細書中上記も参照されたい);
(g)より軽い植物体の重さ;
(h)より遅い生長の速度;
(i)より悪い果実の外観及び/又はより少ない果実の数;
(j)果実の質の低下;
(k)より低い木立ち密度;
(l)より悪い発芽挙動(本明細書中上記を参照されたい);
(m)より悪い発生挙動(本明細書中上記を参照されたい);
(n)より少ない新芽の数;
(o)より低い新芽の質(例えば弱い新芽)、より低い新芽の繁殖力;
(p)植物体の逞しさの低下(例えば生物的又は非生物的ストレスに対する耐性の低下);
(q)壊死の有無;
(r)より悪い老化挙動(より早期の老化);
になって現れ得る。
【0103】
非生物的ストレスは、例えば、熱気、寒気のような極端な温度、温度の大きな変動、あるいは季節外れの温度、日照り、極端な湿気、高い塩分、放射(例えばオゾン層の減少の結果としての増大したUV放射)、土壌の近辺におけるオゾンの量の増加、及び/又は有機物及び無機物による公害(例えば植物に有害な量の殺虫剤や重金属を含む汚染物質の結果としての)によって引き起こされる。非生物的ストレスはストレスを受けた植物体並びにその果実の量及び/又は質の低下をもたらす。つまり、例えば、タンパク質の合成と蓄積は主に温度ストレスによって悪い影響を受け、生長とポリサッカリド合成は実質的に全てのストレス因子によって減少される。これはバイオマスの消失をもたらし、植物体産物の栄養分含量の低下をもたらす。極端な温度、特に冷たさと寒さは、その上、苗木の発芽と発生を遅らせ、植物体の高さ及びその根長を減少させる。遅れた発芽と発生は、多くの場合、植物体の全体としての遅れた発育及び例えば遅れた熟成につながる。植物体の根長の減少は土壌からの栄養分の取り込みがより少なくなること及びやって来る温度の極限(特に日照り)に対する耐性がより低くなることを意味する。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、温度の極限に対する、特に冷温度(寒さ)に対する及び/又は温度の大きな変動に対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるのに役立つ。つまり、本発明による使用は、好ましくは、温度極限、特に冷温度(寒さ)に対する及び/又は温度の大きな変動に対する植物体の又は植物体の種子の耐性を増大させるためのものである。
【0105】
冷温度は例えば植物体の生長を遅らせることがあり、例えば、発芽や開花や結実を妨げる又は遅らせることがある。一般には0℃以下である臨界温度(この固有の臨界温度はその特定の植物体の種やさらには植物体の品種によって並びにそれぞれの生育段階によっても左右される)以下に、温度が下がると、植物体の組織内部で氷の生成をもたらす冷ストレスは、不可逆的な生理挙動さえ引き起こすことがあり、これはその植物体の細胞の死や機能不全につながるものである。本発明によるストロビルリンの使用は、冷温度のいずれのタイプの負の影響(すなわち、遅れた生長及び枯れた又は傷害を受けた植物体組織)に対しても、植物体の耐性を増大させる。
【0106】
本発明の文脈における「冷温度」は、最高で15℃の、好ましくは最高で10℃の、より好ましくは最高で5℃の、さらにより好ましくは最高で0℃の、特には最高で−5℃の温度と一般に理解される。当然のこととして、植物体は、低温に対するその耐性が異なるので、用語「冷温度」の意味もそれぞれの植物体(品種)及び植物体が生育することになる種子によって並びにその生育段階によっても左右される。当業者なら、ある成育段階にあるある植物体がその生長に傷害又は妨害を受ける温度を知っている。単なる例として、発芽段階にあるハルコムギはおよそ−9℃以下で、開花段階ではおよそ−1℃以下で、結実段階ではおよそ−2℃以下で傷害を受け;発芽段階にあるトウモロコシはおよそ−2℃以下で、開花段階ではおよそ−1℃以下で、結実段階ではおよそ−2℃以下で傷害を受け;発芽段階にあるワタはおよそ−1℃以下で、開花段階ではおよそ−1℃以下で、結実段階ではおよそ−2℃以下で傷害を受ける等である。温度が15℃以下になると多くの植物体では発芽が遅れる。10℃又は5℃以下ではさらにもっと発芽は妨げられる。
【0107】
別の好ましい実施形態においては、本発明の方法は、非生物的ストレスに曝露される植物体の又は植物体の種子の生命力を高めるのに役立つ。より好ましくは、本発明の方法は、冷温度及び/又は温度の両極端(=温度の大きな変動)に曝露される植物体の又は植物体の種子の生命力を高めるのに役立つ。
【0108】
好ましくは、植物体は、BBCH拡張スケール(German Federal Biological Research Centre for Agriculture and Forestry;www.bba.de/veroeff/bbch/bbcheng.pdfを参照されたい)の生育段階01〜19、より好ましくは01〜13、さらにより好ましくは05〜13、特には08〜13にある間に非生物的ストレスに曝露される。
【0109】
一つの好ましい実施形態では、植物体活力(植物体生命力)の向上は、それ自体、発芽の改善になって現れる。したがって、より好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の発芽を改善させるための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を先に定義した少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。別のより好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の発芽を改善させるための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。発芽の改善とは、種子又はその種子から生育する植物体が各ケースで同じ非生物的ストレス因子に曝露されているとして、少なくとも1種のストロビルリンで処理されていない種子と比較して、同じ数の種子が、より多くの苗木を生じることを意味する。
【0110】
別の好ましい実施形態では、植物体活力の向上は、さらなる別の形態として、それ自体、発生の改善になって現れる。したがって、より好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の発生を改善するための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を先に定義した少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。別のより好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の発生を改善するための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。発生の改善とは、種子又はそれから生育する植物体が各ケースで同じ非生物的ストレス因子に曝露されているとして、少なくとも1種のストロビルリンで処理されていない種子と比較して、同じ数の種子から、より多くの苗木が土から出現することを意味する。
【0111】
別の好ましい実施形態では、植物体活力の向上は、さらなる別の形態として、それ自体、発育停止の減少、つまり、言い換えると、植物体高さの増大になって現れる。したがって、より好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の植物体高さを増大させるための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を先に定義した少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。別のより好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の植物体高さを増大させるための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。発育停止の減少つまり植物体高さの増大とは、同じ非生物的ストレス因子に曝露されてはいるが、少なくとも1種のストロビルリンで処理されていない植物体又はその植物体の種子の茎よりも、胚軸(すなわち茎)が、同じ時間点ではより高いことを意味する。
【0112】
別の好ましい実施形態では、植物体活力の向上は、さらなる別の形態として、それ自体、根長の増大になって現れる。したがって、より好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の根長を増大させるための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を先に定義した少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。別のより好ましい実施形態では、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の根長を増大させるための少なくとも1種のストロビルリンの使用に関する。根長の増大とは、同じ非生物的ストレス因子に曝露されてはいるが、少なくとも1種のストロビルリンで処理されていない植物体又はその植物体の種子の根よりも、根が、同じ時間点ではより長いことを意味する。
【0113】
特には、本発明は、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の植物体活力を高めるための、特には発芽及び/又は発生を改善する及び/又は植物体高さを増大させる及び/又は根長を増大させるための方法に関し、該方法は、植物体が生育することになる種子を先に定義した少なくとも1種のストロビルリンで処理することを含む。本発明は、特に、非生物的ストレスに、特には極限の温度に、特には冷温度又は大きな温度変化に曝露されたことがある又は曝露される植物体又はその植物体の種子の植物体活力を高めるための、特には発芽及び/又は発生を改善する及び/又は植物体高さを増大させる及び/又は根長を増大させるための先に定義した少なくとも1種のストロビルリンの使用にも関する。
【0114】
好ましくは、本発明が関係する植物体は、農作物として有用な植物体又はそうでなければ観葉植物体である。農作物として有用な植物体とは、植物体の一部分又は全体が、食料、餌用飼料、繊維(例えば、綿布、亜麻布)、燃料(例えば、木材、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオマス)あるいは他の化学化合物の原材料として役立つ作物植物のことである。例えば、コムギ(スペルトコムギ(spelt)、ヒトツブコムギ(einkorn)、フタツブコムギ(emmer)、カムットコムギ(kamut)、デュラムコムギ(durum)及びトリチカレコムギ(triticale)を含む)、ライムギ、オオムギ、オートムギ、イネ、野生イネ、トウモロコシ(コーン)、アワ、ソルガム及びテフ(teff)等のシリアル、アマランサス(amaranth)、キノア(quinoa)及びソバ(buckwheat)等の準穀類、インゲンマメ(bean)、野菜エンドウマメ(vegetable pea)、飼料エンドウマメ(fodder pea)、ヒヨコマメ、レンティル(lentil)、ダイズ及びラッカセイ等の農産物として使用されるマメ科植物、ナタネ(キャノーラ)、ヒマワリ、ワタ、サトウダイコン、核果、仁果類、柑橘類、バナナの木、イチゴ、ブルーベリーの木、アーモンドの木、ブドウの木、マンゴーの木、パパイヤ、ジャガイモ、トマト、トウガラシ(ピーマン(pepper))、キュウリ、カボチャ/スクワッシュ(squash)、メロン、スイカ、ニンニク、タマネギ、ニンジン、キャベツ、ルーサン(lucerne)、クローバー、亜麻、エレファントグラス(ミスカンザス)、牧草、レタス、サトウキビ、茶、タバコ及びコーヒーである。
【0115】
農作物として有用な好ましい植物体は、上記シリアル、マメ科植物、ヒマワリ、サトウキビ、サトウダイコン、ナタネ(キャノーラ)及びワタから選択され、より好ましくはダイズ、トウモロコシ(コーン)、コムギ、トリチカレ、オートムギ、ライムギ、オオムギ、ナタネ、アワ、ソルガム、イネ、ヒマワリ、サトウキビ、サトウダイコン及びワタから選択され、さらにより好ましくはダイズ、コムギ、トウモロコシ(コーン)、ナタネ(キャノーラ)、サトウダイコン及びワタから選択される。
【0116】
別の態様として、農作物として有用な好ましい植物体は、ジャガイモ、トマト、トウガラシ(ピーマン)、キュウリ、カボチャ/スクワッシュ、メロン、スイカ、ニンニク、タマネギ、ニンジン、キャベツ、インゲンマメ、野菜エンドウマメ、飼料エンドウマメ及びレタスから選択され、より好ましくはトマト、タマネギ、レタス及びエンドウマメから選択される。
【0117】
観葉植物の例は、数多くある観葉植物のうちのほんの2、3の例を言及すると、芝生、ゼラニウム、テンジクアオイ、ペチュニア、ベゴニア及びフクシアである。
【0118】
植物体は、形質が、非遺伝子組み換え又は遺伝子組み換えであり得る。
【0119】
本発明の一実施形態では、植物体が遺伝子組み換えである場合、遺伝子組み換え植物体の組み換え修飾は、その植物体の形質がある種の病虫害防除剤に対して耐性を有しているようなものであるのが好ましい。例えば、遺伝子組み換え植物体は、除草剤グリホサートに対して耐性を有しているものであり得る。遺伝子組み換え植物体の例は、スルホニル尿素(例えば、欧州特許出願公開第0257993号明細書、米国特許第5,013,659号明細書を参照されたい)、イミダゾリノン群(例えば、米国特許第6,222,100号明細書、国際公開第01/82685号パンフレット、国際公開第00/26390号パンフレット、国際公開第97/41218号パンフレット、国際公開第98/02526号パンフレット、国際公開第98/02527号パンフレット、国際公開第04/106529号パンフレット、国際公開第05/20673号パンフレット、国際公開第03/14357号パンフレット、国際公開第03/13225号パンフレット、国際公開第03/14356号パンフレット、国際公開第04/16073号パンフレットを参照されたい)、グリホシナート型(例えば、欧州特許出願公開第0242236号明細書、欧州特許出願公開第242246号明細書を参照されたい)、又はグリホサート型(例えば、国際公開第92/00377号パンフレットを参照されたい)の群からの除草剤に対して耐性を有する植物体、あるいはシクロヘキサジエノン系/アリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤(例えば、米国特許第5,162,602号明細書、米国特許第5,290,696号明細書、米国特許第5,498,544号明細書、米国特許第5,428,001号明細書、米国特許第6,069,298号明細書、米国特許第6,268,550号明細書、米国特許第6,146,867号明細書、米国特許第6,222,099号明細書、米国特許第6,414,222号明細書を参照されたい)の群からの除草剤に対して耐性を有する植物体、又はバチルス・チューリンギエンシス毒素(Bt毒素)(これはある種の害虫に対して植物体を耐性に為し得る[例えば、欧州特許出願公開第0142924号明細書、欧州特許出願公開第0193259号明細書を参照されたい])を生成することができるワタのような遺伝子組み換え植物体である。
【0120】
しかしながら、植物体が遺伝子組み換え植物体である場合、植物体中に存在する遺伝子組み換え事象は、病虫害防除剤耐性をもたらすものに限定されるものでは決してなく、あらゆる遺伝子組み換え事象を含み得ることは理解されるべきである。実際、植物体中における「積み重ねられた」遺伝子組み換え事象を用いることも考えられる。
【0121】
先に記載したストロビルリンが用いられる方式及び量については、本発明による方法に関連して本明細書中以下に述べられていることが参考になる。
【0122】
植物体の種子の処理は、例えば、種子が、1種のストロビルリンで又は少なくとも2種の異なるストロビルリンで処理されるように行われ得る。2種以上のストロビルリンが用いられる場合はその異なる化合物は混合物として用いられ得る。別の態様として、種子は少なくとも2種のストロビルリンで別々の形で処理され得、個々の活性物質での処理が同時に又は順次に行われ得る。順次処理の場合は、その時間間隔は、数秒から数ヶ月まで(例えば、6ヶ月、8ヶ月あるいはさらに10ヶ月まで)であり得る。しかしながら、時間間隔は、所望の効果が生じることができるようなものでなければならない。好ましくは、処理と処理との間隔は比較的短いものにする、すなわち、異なるストロビルリンは、数秒から長くて1ヶ月までの、特に好ましくは1週間以内の、特には1日以内の時間間隔で施用される。
【0123】
種子は、本発明によれば、播種前、又はそうでなければ種子が播種される生育基土を介して、例えば鋤溝中施用と呼ばれる態様で播種している間に処理され得る。この施用の態様では、植物体防護剤は、基本的には、種子と同時に鋤溝中に配置される。
【0124】
好ましくは、種子は、播種前に処理される。原理的には、慣用されている全ての処理方法、特には種子コーティング(例えばペレッティング)及び種子水浸漬(例えばソーキング)のような種子ドレッシングが用いられ得る。具体的には、種子の処理は、種子が、本発明に従って用いられる活性化合物(=少なくとも1種のストロビルリン)を含んでいる具体的に望まれている量の調製物に曝露されるという手順に従う。この調製物は、そのまま施用される処方物又は前以ってそれを希釈(例えば水で)した後の処方物であり得る。例えば、種子処理用処方物を2〜10倍希釈して、そのまま施用できる組成物中の濃度を0.01〜60重量%(好ましくは0.1〜40重量%)の活性化合物濃度にするのが得策であり得る。
【0125】
一般には、この目的に適する装置、例えば固体又は固体/液体成分用のミキサーが使われ、調製物が均一に種子上に分散される。つまり、限定するものではないが、収容器(例えば、ボトル、バッグ又はタンブラー)中での混合、機械的な適用、タンブリング、スプレー、さらには浸漬を含めたいずれの標準的な種子処理方法によっても調製物は適用され得る。適切な場合は、この後に乾燥が続く。
【0126】
本発明の特定の実施形態としては、種子のコーティング及び水浸漬(例えばソーキング)が挙げられる。「コーティング」とは、種子の外側表面に非植物物質の層(一層又は多層)を部分的又は全体的に賦与するあらゆる方法を意味し、また「水浸漬(imbibition)」とは、種子及び/又は種子自体の葉鞘、(内部)殻、外皮、実殻、鞘及び/又は珠皮(integument)の発芽し得る部分に活性成分の浸透をもたらすあらゆる方法を意味する。本発明は、したがって、本発明に従って用いられる活性化合物を含んでいるコーティング材を種子に賦与することを含む種子の処理、さらには本発明に従って用いられる活性化合物で種子を水浸漬することを含む種子の処理にも関する。
【0127】
コーティングは、典型的に抵抗力がある菌病原体を処置するのに必要とされることがある高負荷活性化合物を賦与するのに特に効果的であり、また同時に過度の植物有害性も避けられる。
【0128】
コーティングは、流動床技術、ローラーミル法、回転式静的種子処理機(rotostatic seed treaters)、さらにはドラム式コーターのような通常のコーティング技術と機械を用いて種子に適用される。噴流床技術等の他の方法も有用であり得る。種子はコーティングの前に事前サイジングされてもよい。コーティングの後は、種子は、典型的には、乾燥され、そのあとサイジングのためにサイジング機械に移される。
【0129】
これらの技術は当技術分野では知られているものである。種子のコーティング及びそれを適用するための装置は、例えば、米国特許第5,918,413号明細書、米国特許第5,891,246号明細書、米国特許第5,554,445号明細書、米国特許第5,389,399号明細書、米国特許第5,107,787号明細書、米国特許第5,080,925号明細書、米国特許第4,759,945号明細書及び米国特許第4,465,017号明細書に開示されている。
【0130】
別の特定の実施形態では、本発明に従って用いられる活性化合物は、例えば固体微細粒子状物質処方物(例えば粉粒又は粉末)として種子と直接混合され得る。場合によっては、種子表面への固体物(例えば粉粒)の接着を支持するために固着剤が用いられ得る。例えば、ある量の種子が固着剤(これは種子の表面への粒子の接着を改善する)と混合され、場合によっては撹拌されて、固着剤による種子の均一なコーティングが促進され得る。例えば、種子を十分な量の固着剤と混合することによって、固着剤による種子の部分的又は全体的なコーティングがもたらされ得る。このようにして事前処理された種子は、このあと、本発明に従って用いられる活性化合物を含有している固体処方物と混合されて、材料種子の表面への固体処方物の接着が達成される。本発明に従って用いられる活性化合物の固体処方物と固着剤との接触を促進するために、混合物は、例えばタンブラーで回転することによって撹拌してもよく、これによって、本発明に従って用いられる活性化合物の種子への接着が引き起こされる。
【0131】
本発明に従って用いられる活性化合物で種子を処理するもう1つの特定の方法は、水浸漬である。例えば、種子を、例えば水等の溶媒中に約1重量%から約75重量%の活性化合物を含んでいる水溶液とある時間合わせることでもよい。好ましくは溶液の濃度は、約5重量%から約50重量%、より好ましくは約10重量%から約25重量%とする。種子が溶液と合わされている間、種子は、活性化合物の少なくとも一部を取り込む(吸収する)。場合によっては、種子と溶液との混合物は、例えば震盪、揺動、タンブラー回転、あるいは他の手段によって撹拌され得る。水浸漬工程の後、種子は、溶液から分離され得、場合によっては適当な方法で(例えば、はたくことによって又は空気乾燥させることによって)乾燥され得る。
【0132】
本発明のなおもう1つの特定の実施形態では、本発明に従って用いられる活性化合物は、ソリッド・マトリックス・プライミング(solid matrix priming;固体マトリックス浸漬)を用いることによって種子上又は種子中に導入され得る。例えば、ある量の活性化合物をソリッド・マトリックス材料と混合し、そうしてそのあと種子をこのソリッド・マトリックス材料とある期間接触させて置くことで、活性化合物を種子に導入することができる。種子は、このあと、場合よってはソリッド・マトリックス材料から分離されて、保存又は使用されるか、あるいは、好ましくは、ソリッド・マトリックス材料+種子の混合物は保存又は直接植え付け/播種され得る。
【0133】
活性物質は、そのまま施用できる調製物に、また懸濁、乳化もしくは溶解された形態に、一緒に又は別々に製剤化され得る。施用剤形はまったくその意図される目的によって左右されるものである。
【0134】
活性物質は、その処方物の形態又はそれから調製される施用剤形で、そのまま用いられ得、例えば、直接スプレー可能溶液、粉粒、懸濁液又はディスパージョンの形態で、さらには高度に濃縮された水性、油性あるいは他の懸濁液又はディスパージョンの形態で、エマルジョン、油性ディスパージョン、ペースト、粉末、トラッキング用粉粒又は顆粒の形態で用いられ得る。施用は、通常、スプレー、ミスト化、霧化、散布又は注液によって行われる。施用剤形及び施用方法はその意図される目的によって左右されるものである。いずれにしても、施用剤形及び施用方法は、活性物質の可能な限りの細かい分散を確実に行うものでなければならない。
【0135】
そのまま施用できる活性物質調製物が存在している提供体にもよるが、そのようなものは、1又は複数種の液体又は固体担体、場合によっては界面活性物質さらには場合によっては植物防護剤処方物に対して慣用的に用いられるさらなるアジュバント(補佐剤)を含んでいる。そのような処方物の組成は当業者にはよく知られている。
【0136】
水性の施用剤形は、例えば、エマルジョンコンセントレート、懸濁液、ペースト、湿潤性粉粒又は水分散性顆粒から出発して、水を加えることによって調製され得る。エマルジョン、ペースト又は油性ディスパージョンを調製するためには、活性物質は、そのままか又は油又は溶媒に溶解させて、湿潤剤、結着剤、分散剤又は乳化剤を用いて水にホモジナイズされ得る。しかしながら、活性物質、湿潤剤、結着剤、分散剤又は乳化剤さらには適切であれば溶媒又は油から構成されるコンセントレートを調製することも可能であり、そしてそのようなコンセントレートは水で希釈するのに適している。
【0137】
そのまま施用できる調製物中の活性物質の濃度は相当な幅の中で変えられ得る。一般には、そのような濃度は、0.0001〜10%(好ましくは0.01〜1%)である(%はそのまま施用できる調製物の全体重量を基準にした活性物質の全体含量の重量%)。
【0138】
活性物質は超低量(ULV:ultra-low-volume)法でもうまく用いられ得、95重量%を超える活性物質を含む処方物、あるいは実際添加剤なしの活性物質を施用することも可能である。
【0139】
活性物質には、各種の油、湿潤剤、アジュバント、除草剤、本発明に従って用いられる殺菌剤以外の殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤や、殺菌剤、殺藻剤、殺軟体動物剤、殺鼠剤等の他の病虫害防除剤、さらには鳥/獣忌避剤、毒性緩和剤、肥料及び/又は生長調節剤を、適切であれば単に施用直前に(タンクミックス)、加えることが可能である。これらのものは、本発明に従って用いられる活性物質に対して、1:100〜100:1(好ましくは1:10〜10:1)の重量比で混合され得る。
【0140】
アジュバントは、この意味においては、特には、有機変性ポリシロキサン、例えばBreak Thru S 240(登録商標);アルコールアルコキシラート、例えばAtplus 245(登録商標)、Atplus MBA 1303(登録商標)、Plurafac LF 300(登録商標)及びLutensol ON 30(登録商標);EO/PO ブロックポリマー、例えばPluronic RPE 2035(登録商標)及びGenapol B(登録商標);アルコールエトキシラート、例えばLutensol XP 80(登録商標);ナトリウムジオクチルスルホスクシナート、例えばLeophen RA(登録商標)である。
【0141】
効果のスペクトルを広げるために、活性成分は、種子処理で有用である他の活性成分と一緒にも用いられ得、例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺軟体動物剤、殺線虫剤、除草剤、殺藻剤、殺菌剤、殺鼠剤、鳥/獣忌避剤、生長調節剤、毒性緩和剤やさらには肥料とも一緒に用いられ得る。
【0142】
本発明に従って本活性成分と共に用いられ得る活性成分の以下の列挙は、考えられ得る組み合わせを例示するものであって、いかなる限定も加えるものではない。
【0143】
・殺菌剤:
(1.1)アミン誘導体系例えばグアザチン;
(1.2)アニリノピリミジン系例えばピリメトアニル、メパニピリム及びシプロジニル;
(1.3)アゾール系殺菌剤例えばビテルタノール、ブロモコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニトロコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキコナゾール、フルシラゾール、ヘキサコナゾール、イマザリル、メトコナゾール、ミクロブトアニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロクロラズ、プロチオコナゾール、テブコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリフルミゾール、トリチコナゾール、フルトリアホール;
(1.4)ジカルボキシミド系例えばイプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン;
(1.5)ジチオカルバマート系例えばマンコゼブ、メチラム及びチラム;
(1.6)ヘテロ環式化合物系例えばベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、ピコベンズアミド、ペンチオピラド、プロキンアジド、チアベンダゾール及びチオファナート−メチル;
(1.7)フェニルピロール系例えばフェンピクロニル及びフルジオキソニル;
(1.8)他の殺菌剤、例えばベンチアバリカルブ、シフルフェンアミド、ホセチル、ホセチル−アルミニウム、亜リン酸及びその塩、イプロバリカルブ及びメタフェノン;
(1.9)シンナミド系及び類似化合物例えばジメトモルフ、フルメトベル及びフルモルフ;
【0144】
・殺虫剤/殺ダニ剤:
(2.1)アセフェート、アザメチホス、アジンホス−メチル、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、クロルフェンビンホス、ジアジノン、ジクロルボス、ジクロトホス、ジメトアート、ジスルホトン、エチオン、フェニトロチオン、フェンチオン、イソキサチオン、マラチオン、メトアミドホス、メチダチオン、メチル−パラチオン、メビンホス、モノクロトホス、オキシデメトン−メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントアート、ホサロン、ホスメト、ホスフアミドン、ホラート、ホキシム、ピリミホス−メチル、プロフェノホス、プロチオホス、スルプロホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、トリアゾホス及びトリクロルホンから選択される有機(チオ)ホスフェート系;
(2.2)アラニカルブ、アルジカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、カルブアリール、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロポキスル、チオジカルブ及びトリアザメートから選択されるカルバマート系;
(2.3)アレトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アルファ−シペルメトリン、ベータ−シペルメトリン、ゼータ−シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレラート、エトフェンプロキス、フェンプロパトリン、フェンバレラート、フルシトリナート、イミプロトリン、ラムダ−シハロトリン、ガンマ−シハロトリン、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリンI及びII、レスメトリン、シラフルオフェン、タウ−フルバリナート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン及びプロフルトリン、ジメフルトリンから選択されるピレスロイド系;
(2.4)a)ベンゾイル尿素系ビストリフルロン、クロルフルアズロン、シラマジン、ジフルベンズロン、フルシクロキスロン、フルフェノキスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン;ブプロフェジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾキス、エトキサゾール及びクロフェンタジンから選択されるキチン合成阻害剤;b)ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド及びアザジラクチンから選択されるエクジソンアンタゴニスト;c)ピリプロキシフェン、メトプレン及びフェノキシカルブから選択されるジュベノイド;及びd)スピロジクロフェン、スピロメシフェン及びスピロテトラマトから選択される脂質生合成阻害剤;
から選択される成長調節剤;
(2.5)クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリドから選択されるニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物;
(2.6)アセトプロール、エンドスルファン、エチプロール、フィプロニル、バニリプロールから選択されるGABAアンタゴニスト化合物;
(2.7)アバメクチン、エマメクチン、ミルベメクチン、レピメクチン及びスピロサドから選択される大環状ラクトン環殺虫剤;
(2.8)フェナザキン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド及びフルフェネリムから選択されるMETI I化合物;
(2.9)アセキノシル、フルアシプリム及びヒドラメチルノンから選択されるMETI II及びIII化合物;
(2.10)脱共役化合物:クロルフェナピル;
(2.11)シヘキサチン、ジアフェンチウロン、フェンブタチンオキシド及びプロパルギットから選択される酸化的リン酸化阻害化合物;
(2.12)脱皮撹乱化合物:シロマジン;
(2.13)混合機能オキシダーゼ阻害化合物:ピペロニルブトキシド;
(2.14)メタフルミゾン及びインドキサカルブから選択されるナトリウムチャネルブロッカー化合物;
(2.15)ベンクロチアズ、ビフェナザート、カルタプ、フロニクアミド、ピリダリル、ピメトロジン、硫黄、チオシクラム、フルベンジアミド、シエノピラフェン、フルピラゾホス、シフルメトフェン、アミドフルメト、式Γ
【化4】

【0145】
[式中、Rは−CHOCHCH又はHであり、RiiはCFCFCF又はCHC(CHである]で表されるアミノイソチアゾール化合物;
式Γ
【化5】

【0146】
[式中、Bは水素、CN又はClであり、BはBr又はCFであり、Rは水素、CH又はCH(CHである]で表されるアントラニルアミド化合物;
及び特開2002−284608号公報、国際公開第02/89579号パンフレット、国際公開第02/90320号パンフレット、国際公開第02/90321号パンフレット、国際公開第04/06677号パンフレット、国際公開第04/20399号パンフレット又は特開2004−99597号公報に記載されているマロニトリル化合物;
から選択される化合物。
【0147】
・殺軟体動物剤;
・殺線虫剤;
・除草剤、例えばイマゼタピル、イマザモキス、イマザピル及びイマザピック等のイミダゾリノン系除草剤や、ジメテンアミド−p;
・殺藻剤;
・殺菌剤;
・生物製剤;
・鳥/獣忌避剤;
・肥料;
・燻蒸剤;
・成長調節剤;
・殺鼠剤。
【0148】
殺軟体動物剤、殺線虫剤、除草剤、殺藻剤、殺菌剤、生物製剤、鳥/獣忌避剤、肥料、燻蒸剤、成長調節剤及び殺鼠剤は当業者には周知である。
【0149】
好ましい殺虫剤は、アセタミプリド、アルファ−シペルメトリン、ベータ−シペルメトリン、ビフェントリン、カルボフラン、カルボスルファン、クロチアニジン、シクロプロトリン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、ジフルベンズロン、ジノテフラン、エトフェンプロキス、フェンブタチン−オキシド、フェンプロパトリン、フィプロニル、フルシトリナート、イミダクロプリド、ラムダ−シハロトリン、ニテンピラム、フェロモネス、スピノサド、テフルベンズロン、テフルトリン、テルブホス、チアクロプリド、チアメトキサム、チオジカルブ、トラロメトリン、トリアザメート、ゼータ−シペルメトリン、スピロテトラマト、フルピラゾホス、トルフェンピラド、フルベンジアミド、ビストリフルロン、ベンクロチアズ、ピラフルプロール、ピリプロール、アミドフルメト、フルフェネリム、シフルメトフェン、シエノピラフェン、BがClであり、BがBrであり、RがCHである式Γで表されるアントラニルアミド化合物、さらにはBがCNであり、BがBrであり、RがCHである式Γで表されるアントラニルアミド化合物から選択される。
【0150】
より好ましい殺虫剤は、GABAアンタゴニスト化合物(この中で好ましいのはフィプロニルである)及びニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物(この中で好ましいのはクロチアニジン、イミダクロプリド及びチアメトキサムである)である。特に好ましい殺虫剤はフィプロニルである。
【0151】
本発明の特異的な実施形態においては、本発明に従って用いられるストロビルリンに加えてのさらなる殺菌剤はまったく用いられない。より特異的な実施形態においては、本発明の方法では、少なくとも1種のストロビルリン以外のさらなる活性化合物はまったく用いられない。
【0152】
本発明による活性成分を含有している処方物は公知の方法で、例えば、この活性物質を溶媒及び/又は担体で、望ましいなら界面活性物質(すなわち乳化剤及び分散剤)を用いて延展することによって調製される。適する溶媒/助剤は、基本的には、
−水、芳香族溶媒(例えばSolvesso製品、キシレン)、パラフィン(例えば鉱油留分)、アルコール類(例えばメタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えばシクロヘキサノン、メチルヒドロキシブチルケトン、ジアセトンアルコール、メシチルオキシド、イソホロン)、ラクトン類(例えばガンマ−ブチロラクトン)、ピロリドン類(ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、n−オクチルピロリドン)、アセタート類(グリコールジアセタート)、グリコール類、脂肪酸ジメチルアミド類、脂肪酸類及び脂肪酸エステル類(原理的には、溶媒混合物も用いられ得る);
−担体例えば粉砕天然無機物(例えば、カオリン、粘土、タルク、チョーク)及び粉砕合成無機物(例えば、高分散シリカ、珪酸塩);乳化剤例えば非イオン性及び陰イオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホナート及びアリールスルホナート)並びに分散剤例えばリグニン−スルフィット廃液及びメチルセルロース;
である。
【0153】
界面活性化合物としては、農薬活性物を処方するのに適する界面活性剤、特に本発明に従って用いられる活性成分を処方するのに適する界面活性剤は全てそうであり、そして界面活性剤は非イオン性、陽イオン性、陰イオン性又は両性であり得る。界面活性剤の効果に応じて、界面活性剤(「添加剤」と呼ばれることもある)は、湿潤剤、分散剤、乳化剤又は保護コロイドに分類され得るが、これらの特定の各群は互いに重なり合うことがあり、厳密には分類できないものである。
【0154】
湿潤剤としては、湿潤化を促進し、農薬活性成分を処方するのに慣用的に用いられている物質は全て適している。アルキルナフタレンスルホナート例えばジイソプロピル−又はジイソブチル−ナフタレンスルホナートが好ましく用いられ得る。
【0155】
分散剤及び/又は乳化剤としては、農薬活性成分を処方するのに慣用的に用いられている非イオン性、陰イオン性及び陽イオン性分散剤又は乳化剤は全て適している。以下のものが好ましく用いられ得る:非イオン性又は陰イオン性分散剤及び/又は乳化剤あるいは非イオン性又は陰イオン性分散剤及び/又は乳化剤の混合物。
【0156】
用いられ得る好適な非イオン性分散剤及び/又は乳化剤は、特には、エチレンオキシド/アルキレンオキシドブロックコポリマー、アルキルフェノールポリグリコールエーテル並びにトリスチリルフェノールポリグリコールエーテル類(例えばポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル)、アルキルアリールポリエーテルアルコール類、アルコールと脂肪アルコールエチレンオキシドの縮合物、エトキシル化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル類及びメチルセルロースである。
【0157】
用いられ得る好適な陰イオン性分散剤及び/又は乳化剤は、特には、リグニンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、アルキルアリールスルホナート類、アルキルスルフェート類、アルキルスルホナート類、脂肪アルコールスルフェート類、脂肪酸類並びに硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル類、さらにはアリールスルホナート/ホルムアルデヒド縮合物、例えばスルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、リグニンスルホナート類、リグニン−スルフィット廃液、メチルセルロースのリン酸化又は硫酸化誘導体、及びポリアクリル酸の塩である。
【0158】
保護コロイドは、典型的には、水可溶性、両親媒性のポリマーである。例としては、蛋白並びに変性蛋白(例えばカゼイン)、ポリサッカリド例えば水可溶性デンプン誘導体及びセルロース誘導体(特に疎水変性デンプン及びセルロース)、さらにはポリカルボキシラート例えばポリアクリル酸及びアクリル酸コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン及びポリアルキレンエーテルである。
【0159】
直接スプレー可能な溶液、エマルジョン、ペースト又は油性ディスパージョンを調製するのに適する物質は、中〜高沸点の鉱油留分、例えばケロシン又はディーゼルオイル、さらにはコールタール油並びに植物又は動物由来の油、脂肪族、環状及び芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン又はその誘導体)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メシチルオキシド、イソホロン、強極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ブチロラクトン及び水である。
【0160】
粉粒、散布用材料及び粉末は、活性物質を固体担体と混合することにより又は一緒に粉砕することにより調製され得る。
【0161】
顆粒、例えば被覆顆粒、含浸顆粒及び均質顆粒は、活性成分を固体担体に結着させることで調製され得る。固体担体の例は、鉱物土類(例えばシリカゲル、珪酸塩、タルク、カオリン、アッタクレイ、石灰岩、石灰、チョーク、ボール、レス、クレイ、ドロマイト、珪藻土)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕合成材料、肥料(例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等)、さらには植物由来の産物(例えば穀粒ミール(挽き割り)、樹皮ミール、木材ミール及び堅果ミール)、セルロース粉粒及び他の固体担体である。
【0162】
種子処理用処方物は、さらに、結着剤及び/又はゲル化剤及び適切であれば着色剤を含み得る。
【0163】
一般には、処方物は、活性物質を0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%、特には5〜50重量%含んでいる。活性物質は、純度が90%〜100%、好ましくは95%〜100%(NMRスペクトルによる)のものが用いられる。
【0164】
種子処理には、適切な処方物は、2〜10倍に希釈された後、0.01〜60重量%(好ましくは0.1〜40重量%)のそのまま施用できる調製物中活性物質濃度を与えるものである。
【0165】
以下は処方物の例である:
【0166】
1.水で希釈する製品
【0167】
I)液剤(Water-soluble concentrates;水可溶性コンセントレート)(SL、LS)
10重量部の活性物質を90重量部の水又は水可溶溶媒に溶解させる。別法としては、湿潤剤又は他のアジュバントを加える。活性物質は、水で希釈すると溶解する。これにより活性物質含量が10重量%の処方物が得られる。
【0168】
II)分散製剤(Dispersible concentrates;分散性コンセントレート)(DC)
20重量部の活性物質を10重量部の分散剤(例えばポリビニルピロリドン)が加えられた70重量部のシクロヘキサノンに溶解させる。活性物質含量は20重量%である。水で希釈するとディスパージョンが得られる。
【0169】
III)乳剤(Emulsifiable concentrate;乳化性コンセントレート)(EC)
15重量部の活性物質をドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとひまし油エトキシラートが(各ケースで5重量部)加えられた75重量部のキシレンに溶解させる。処方物の活性物質含量は15重量%である。水で希釈するとエマルジョンが得られる。
【0170】
IV)エマルジョン製剤(Emulsions)(EW、EO、ES)
25重量部の活性物質をドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとひまし油エトキシラートが(各ケースで5重量部)加えられた35重量部のキシレンに溶解させる。乳化装置(Ultraturrax)を用いてこの混合物を30重量部の水に導入し、均質なエマルジョンにする。処方物の活性物質含量は25重量%である。
【0171】
V)懸濁製剤(Suspensions)(SC、OD、FS)
撹拌ボールミル中で10重量部の分散剤及び70重量部の水又は有機溶媒を加えて20重量部の活性物質を粉砕して、微細な活性物質懸濁液を得る。処方物中の活性物質含量は20重量%である。水で希釈すると活性物質の安定な懸濁液が得られる。
【0172】
VI)顆粒水和剤及び顆粒水溶剤(Water-dispersible granules and water-soluble granules;水和性顆粒及び水溶性顆粒)(WG、SG)
専用の装置(例えば押出機、噴霧塔、流動床)を用いて50重量部の活性物質を50重量部の分散剤・湿潤剤を加えて細かく粉砕して、水和性又は水溶性の顆粒にする。処方物の活性物質含量は50重量%である。水で希釈すると活性物質の安定なディスパージョン又は溶液が得られる。
【0173】
VII)粉粒水和剤及び粉粒水溶剤(Water-dispersible powders and water-soluble powders;水和性粉粒及び水溶性粉粒)(WP、SP、SS、WS)
75重量部の活性物質をローター−ステイターミル中で25重量部の分散剤、湿潤剤及びシリカゲルを加えて粉砕する。処方物の活性物質含量は75重量%である。水で希釈すると活性物質の安定なディスパージョン又は溶液が得られる。
【0174】
VIII)ゲル剤(Gel formulations;ゲル処方物)(GF)
ボールミル中で20重量部の活性物質、10重量部の分散剤、1重量部のゲル化剤及び70重量部の水又は有機溶媒を混合して、微細な懸濁液を得る。
【0175】
2.希釈せずに施用する製剤(Products to be applied undiluted)
【0176】
IX)粉剤(Dusts)(DP、DS)
5重量部の活性物質を細かく粉砕し、95重量部の微粉砕カオリンと緊密に混合する。これにより5重量%の活性物質を含むトラッキング用粉剤が得られる。
【0177】
X)粒剤(Granules)(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の活性物質を細かく粉砕し、95重量部の担体と組み合わせる。現在一般に行われている方法は、押し出し法、スプレー乾燥法又は流動床法である。これにより活性物質含量が0.5重量%の希釈せずに施用される顆粒が得られる。
【0178】
XI)ULV溶液剤(ULV solutions)(UL)
10重量部の活性物質を90重量部の有機溶媒(例えばキシレン)に溶解させる。これにより活性物質含量が10重量%の希釈せずに施用される製剤が得られる。
【0179】
種子の処理に適する処方物は、例えば、
Iの液剤(LS)
IIIの乳剤(EC)
IVのエマルジョン製剤(ES)
Vの懸濁製剤(FS)
VIの顆粒水和剤(WG)及び顆粒水溶剤(SG)
VIIの粉粒水和剤及び粉粒水溶剤(WS、SS)
VIIIのゲル剤(GF)
IXの粉剤及び粉末様粉剤(DS)
である。
【0180】
種子の処理には、粉粒水和剤(water-dispersible powders)、粉粒水溶剤(water-soluble powders)及び粉粒散布剤(dustable powders)等の粉粒剤、粉剤、及び懸濁製剤が好ましい。さらには、ゲル剤も好ましい。また、液剤及びエマルジョン製剤も都合よく用いられ得る。
【0181】
次の処方物は種子処理に特に好ましい:流動性コンセントレート(flowable concentrates)(特にFS);溶液剤(solutions)(特にLS);無水処理粉粒剤(powders for dry treatment)(特にDS);スラリー処理用粉粒水和剤(water dispersible powders for slurry treatment)(特にWS);粉粒水溶剤(water-soluble powders)(特にSS)及びエマルジョン製剤(emulsions)(特にES)。またゲル剤(gel formulations)(特にGF)も好ましい。これらの処方物は種子に希釈して又は希釈せずに施用され得る。
【0182】
FS処方物を用いるのがさらにもっと好ましい。通常、そのような処方物は、1〜800g/lの活性物質、1〜200g/lの界面活性剤、0〜200g/lの凍結防止剤、0〜400g/lの結着剤、0〜200g/lの着色剤、及び溶媒(好ましくは水)を含む。
【0183】
種子を処理するための活性物質の好ましいFS処方物は、通常、0.5〜80%の活性物質、0.05〜5%の湿潤剤、0.5〜15%の分散剤、0.1〜5%の増粘剤、5〜20%の凍結防止剤、0.1〜2%の消泡剤、1〜20%の顔料及び/又は着色剤、0〜15%の接着剤又は固着剤、0〜75%のフィラー/ビヒクル、及び0.01〜1%の防腐剤を含む。
【0184】
一般には、種子処理処方物は、好ましくは、特に種子を処理するのに適する少なくとも1種の補助的な添加剤、すなわち、特には、活性成分の種子への接着及び/又は種子中への浸透を促進する、及び/又はそうでなければその組成物又はそれで処理される種子の安定性及び/又は管理可能性を向上させる補助的な添加剤を含んでいる。
【0185】
特には、種子処理用補助添加剤は、種子コーティング材料に適する添加剤、ソリッド・マトリックス・プライミング材料に適する添加剤、種子水吸収を促進するのに適する浸透強化剤、着色剤、凍結防止剤、及びゲル化剤からなる群から選択される。
【0186】
好ましい実施形態によれば、種子コーティング材料には結着剤(又は固着剤)が含まれている。場合によっては、コーティング材料は、フィラー及び可塑剤からなる群から選択される1又は複数種のさらなる種子処理用補助添加剤も含む。
【0187】
結着剤(又は固着剤)とは、種子処理用処方物に用いられ得るあらゆる慣用の結着剤(又は固着剤)のことである。本発明に有用である結着剤(又は固着剤)は、好ましくは、接着質ポリマーを含み、これは、天然又は部分もしくは完全合成物であってよく、またコートされる種子に対して植物有害作用がないものとする。好ましくは、結着剤(又は固着剤)は、生分解性とする。結着剤又は固着剤は、好ましくは、活性化合物にとってのマトリックスとして働くように選択される。
【0188】
結着剤(又は固着剤)は、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリ無水物、ポリエステルウレタン、ポリエステルアミド;ポリビニルアセタート;ポリビニルアセタート コポリマー;ポリビニルアルコール及びチルオース;ポリビニルアルコールコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリサッカリド(含:デンプン、変性デンプン及びデンプン誘導体)、デキストリン、マルトデキストリン、アルギナート、キトサン並びに(エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含めた)セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル及びセルロースエーテルエステル;脂類;油類;蛋白類(カゼイン、ゼラチン及びゼインを含めて);アラビアガム;シェラックス;ポリ塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンコポリマー;リグノスルホナート(特にリグノスルホン酸カルシウム);ポリアクリラート、ポリメタクリラート及びアクリルコポリマー;ポリビニルアクリラート;ポリエチレンオキシド;ポリブテン、ポリイソブテン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチルエンアミド;アクリルアミドポリマー及びコポリマー;ポリヒドロキシエチルアクリラート、メチルアクリルアミドモノマー;及びポリクロロプレンから選択され得る。ある特定の実施形態では、結着剤は、熱可塑性ポリマーである。
【0189】
本発明の特定の実施形態では、種子処理用処方物は少なくとも1種のポリエステルを含有しており、このポリエステルは、特に、ポリラクチド、部分芳香族ポリエステル(テレフタール酸、アジピン酸及び脂肪族ジオールコポリマー)、ポリグリコリド、ポリヒドロキシアルカノアート及びポリタルトラートから選択される。
【0190】
処方物中の結着剤(又は固着剤)の量はさまざまであり得るが、全体重量の約0.01〜約25%の範囲、より好ましくは約1〜約15%、そしてさらにもっと好ましくは約5%〜約10%の範囲内にあるものである。
【0191】
先に述べたように、コーティング材料は、場合によっては、フィラーも含んでいることがある。フィラーは、当技術分野で知られている吸収材又は不活性フィラーであってよく、木粉、穀粉、樹皮ミール、木材ミール及び堅果シェルミール、糖類(特にポリサッカリド)、活性炭、微粉砕無機固形物、シリカゲル、珪酸塩、クレイ、チョーク、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ得る。用いられ得るクレイ及び無機固形物としては、カルシウムベントナイト、カオリン、チャイナクレイ、タルク、パーライト、マイカ、バーミキュライト、珪酸塩、クオーツパウダー、モンモリロナイト、アタパルガイト、ボール、レス、石灰岩、石灰及びこれらの混合物が挙げられる。有用であり得る糖類としては、デキストリン及びマルトデキストリンが挙げられる。穀粉としては、小麦粉、オート麦粉及び大麦粉が挙げられる。フィラーは、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素及びこれらの混合物のような肥料物質も含み得る。
【0192】
フィラーは、種子に適切な微気候をもたらすように選択されるものであり、例えば、フィラーは、活性成分の負荷量を増やすために、また活性成分の制御放出を調節するためにも用いられる。フィラーは、種子コーティングの生産又は加工で役立ち得る。フィラーの量はさまざまであり得るが、一般には、フィラー成分の量は、全体重量の約0.05〜約75%、より好ましくは約0.1〜約50%、そしてさらにもっと好ましくは約0.5%〜15%の範囲内にあるものである。
【0193】
結着剤(又は固着剤)は、活性成分のためのマトリックスとして役立つことができるように選択されるのが好ましい。上記に開示されている結着剤は全てマトリックスとして有用であり得るが、1又は複数種の結着剤化合物の連続固体相が形成されて、その中全体に活性成分が不連続相として分散されているのが好ましい。場合によっては、マトリックス中にはフィラー及び/又は他の成分が存在していてもよい。用語「マトリックス」には、マトリックス系、リザーバー系又はマイクロカプセル系と視覚され得るものが含まれると理解すべきである。一般には、マトリックス系は、ポリマー中に均一に分散された活性成分とフィラーとから構成されているが、リザーバー系は、活性成分又はその塩を含んでいる独立の相と、それが物理的に分散されている、それを取り囲む、速度制限性の、高分子相とから構成されている。マイクロカプセル化には、小粒子又は液体液滴をコートすることのほかに、固体マトリックス中に分散させることも含まれる。
【0194】
コーティングに用いられる活性成分が特に油性タイプの組成を有し、不活性フィラーがほとんど又はまったく存在していない場合は、その組成物を乾燥させることによって乾燥工程の速度を速めるのが有用であり得る。この場合による工程としては、当技術分野で周知の方法で行うことができ、炭酸カルシウム、カオリン又はベントナイトクレイ、パーライト、珪藻土、又は任意の吸収性物質を加えることが挙げられ得、これらは、好ましくは、その油又は過剰水分を吸収するために活性成分コーティング層と同時作業的に加えられる。乾燥コーティングを効率的にもたらすのに必要な吸収剤の量は、種子の重量の約0.5〜約10%の範囲にあるものである。
【0195】
場合によっては、コーティング材料には可塑剤が含まれている。可塑剤は、典型的には、コーティング層によって形成される膜をより柔軟にするために、接着及び広がりを改善するために、及び加工の速度を上げるために用いられる。膜の柔軟性の改善は、貯蔵、取り扱い又は播種工程の間の欠け、破損又は剥離を最小限にするために重要である。数多くの可塑剤が用いられ得るが、有用な可塑剤としては、ポリエチレングリコール、オリゴマーポリアルキレングリコール、グリセリン、アルキルベンジルフタラート(特にブチルベンジルフタラート)、安息香酸グリコール及び関連の化合物が挙げられる。コーティング層中の可塑剤の量は、約0.1重量%〜約20重量%の範囲内にあるものである。
【0196】
本発明で有用であるソリッド・マトリックス・プライミング材に適する添加剤としては、ポリアクリルアミド、デンプン、クレイ、シリカ、アルミナ、土、砂、ポリ尿素、ポリアクリラート、又は活性成分を一時吸収又は吸着してそれを種子中又は種子上に放出することができる任意の他の材料が挙げられる。活性成分とソリッド・マトリックス材とが互いに相溶性があるものであることを確実なものにすることが役立つ。例えば、ソリッド・マトリックス材は、活性成分を理に適った速度で、例えば、分、時、又は日の時間に亘って、放出することができるように選択されるべきである。
【0197】
種子水吸収を促進するのに適する浸透強化剤としては、農薬として許容される界面活性化合物が挙げられる。浸透強化剤の量は、処方物の全体重量を基準にして、通常20重量%を超えないものである。好ましくは、浸透強化剤の量は、2重量%〜20重量%の範囲内にあるものである。
【0198】
本発明によれば、着色剤は、全て、そのような目的のために慣用されている染料及び顔料である。この文脈での、水に僅かしか溶けない顔料、及び水に溶ける染料のいずれもが用いられ得る。言及してもよい例は、Rhodamin B、C.I.Pigment Red 112及びC.I.Solvent Red 1、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 80、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 13、Pigment Red 48:2、Pigment Red 48:1、Pigment Red 57:1、Pigment Red 53:1、Pigment Orange 43、Pigment Orange 34、Pigment Orange 5、Pigment Green 36、Pigment Green 7、Pigment White 6、Pigment Brown 25、Basic Violet 10、Basic Violet 49、Acid Red 51、Acid Red 52、Acid Red 14、Acid Blue 9、Acid Yellow 23、Basic Red 10、Basic Red 108の名称で知られている着色剤、染料及び顔料である。着色剤の量は、通常、処方物の20重量%を超えないものであり、好ましくは、処方物の全体重量を基準にして1〜15重量%の範囲内である。一般には、着色剤が、温血動物に対する忌避剤として活性であることも好ましい(例えば、酸化鉄、TiO、Prussian blue、アントラキノン染料、アゾ染料及び金属フタロシアニン染料)。
【0199】
特に水性処方物に対して用いられ得る凍結防止剤は、原理的には、水の融点降下をもたらす物質全てがそうである。適する凍結防止剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、グリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のようなアルコールが挙げられる。典型的には、凍結防止剤の量は20重量%を超えないものであり、多くの場合、処方物の全体重量を基準にして1〜15重量%の範囲内である。
【0200】
適するゲル化剤は、そのような目的のために農薬組成物中に用いられ得る全ての物質、例えばセルロース誘導体、ポリアクリル酸誘導体、キサンタン、変性クレイ、特には有機変性層状珪酸塩及び高分散珪酸塩が適している。特に適するゲル化剤は、カラギーナン(Satiagel(登録商標))である。通常、ゲル化剤の量は処方物の5重量%を超えないものであり、好ましくは、処方物の全体重量を基準にして0.5〜5重量%の範囲内である。
【0201】
種子処理用処方物中に存在していてもよいさらなる補助的な添加剤としては、溶剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、保護コロイド、消泡剤、及び防腐剤が挙げられる。
【0202】
適する溶剤の例は、水か、又は芳香族溶剤(例えばSolvesso(登録商標)製品、キシレン)、パラフィン(例えば鉱油留分)、アルコール(例えばメタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例えばシクロヘキサノン、ガンマ−ブチロラクトン)、ピロリドン(N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン)、アセタート(グリコールジアセタート)、グリコール、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸及び脂肪酸エステル等の有機溶剤である。原理的には、溶剤混合物も用いられ得る。とはいえ、特定の実施形態によれば、本発明の処方物は、10重量%未満、好ましくは6重量%未満のそのような有機溶剤を含有している。
【0203】
適する界面活性化合物(湿潤剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、保護コロイド)は先に定義したとおりである。
【0204】
用いられ得る消泡剤は、泡の発生を阻止し、農薬活性成分を処方するのに慣用的に用いられている全ての物質である。シリコーン消泡剤、すなわちシリコン水性エマルジョン(例えば、Wacker社提供のSilikon(登録商標)SRE、又はRhodia社提供のRhodorsil(登録商標))、長鎖アルコール、脂肪酸及びその塩、及びステアリン酸マグネシウムが特に適している。通常、消泡剤の量は、処方物の3重量%を超えるものではなく、好ましくは、処方物の全体重量を基準にして0.1〜2重量%の範囲内である。
【0205】
用いられ得る防腐剤は、そのような目的のために農薬組成物中に用いられる全ての防腐剤が用いられ得る。言及してもよい例は、ジクロロフェン、イソチアゾレン系及びイソチアゾロン系例えば1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン−ヒドロクロリド、5−クロロ−2−(4−クロロベンジル)−3(2H)−イソチアゾロン、5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン、5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン、5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン−ヒドロクロリド、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−2H−イソチアゾール−3−オン、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン−カルシウムクロリド錯体、2−オクチル−2H−イソチアゾール−3−オン及びベンジルアルコールヘミホルマールである。通常、防腐剤の量は処方物の2重量%を超えないものであり、好ましくは、処方物の全体重量を基準にして0.01〜1重量%の範囲内である。
【0206】
生育培地(特に土)を処理するのに適する処方物は、例えば、顆粒、スプレー塗布液である。
【0207】
種子を処理するための全体適用量(すなわち、本発明に従って用いられる活性物質の全体量)は、例えば、100kgの種子当たり0.01〜1000g、特に好ましくは0.1〜750g、より好ましくは0.51〜200g、さらにより好ましくは0.5〜150g、特には0.5〜50gである。
【0208】
本発明に従って用いられる複数活性物質は、一緒に、又は別々に処方され得る。
【0209】
本発明に従った使用、又は本発明に従った方法は、非生物的ストレス(特に温度ストレス)に曝露されたことがある植物体又はその植物体の種子の耐性の著しい向上をもたらす。
【0210】
ストロビルリンには殺菌作用があるので、ストロビルリンは植物体の非生物的ストレスに対する耐性を増大させるだけでなく、菌の攻撃に対する予防的な効果もある。
【0211】
ストロビルリンは、以下の植物病原性菌:
・ 野菜、ナタネ、サトウダイコン、果物、イネにつくアルテルナリア属の種(Alternaria species)、例えばジャガイモ、トマトにつくアルテルナリア・ソラニ(A. solani)やアルテルナリア・アルテルナタ(A. alternata)、
・ サトウダイコン、野菜につくアファノマイセス属の種(Aphanomyces species)、
・ トウモロコシ、シリアル、イネ、芝生につくビポラリス属の種(Bipolaris species)及びドレクスレラ属の種(Drechslera species)、例えばトウモロコシにつくドレクスレラ・マイジス(D. maydis)、
・ シリアルにつくブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(ウドンコ病[powderly mildew])、
・ イチゴ、野菜、草花、ブドウの木につくボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色かび病[gray mold])、
・ レタスにつくブルミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、
・ トウモロコシ、ダイズ、イネ、サトウダイコンにつくサーコスプラ属の種(Cercospora species)、
・ トウモロコシ、シリアル、イネにつくコクリオボルス属の種(Cochliobolus species)、例えばシリアルにつくコクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、イネにつくコクリオボルス・ミヤベアナス(Cochliobolus miyabeanus)、
・ ダイズ、ワタにつくコレトトリカム属の種(Colletotricum species)、
・ シリアル、イネ、芝生、トウモロコシにつくドレクスレラ属の種(Drechslera species)及びピレノホラ属の種(Pyrenophora species)、例えばオオムギにつくドレクスレラ・テレス(D. teres)やコムギにつくドレクスレラ・トリチシ-レペンチス(D. tritici-repentis)、
・ ファエオアクレモニウム・クラミドスポリウム(Phaeoacremonium chlamydosporium)、ファエオアクレモニウム・アレオヒルム(Phaeoacremonium Aleophilum)、ホルミチポラ・プンクタタ(Formitipora punctata)(別名フェリナス・プンクタタス(Phellinus punctatus))によって引き起こされる、ブドウの木のエスカ(Esca[黒色麻疹病])、
・ トウモロコシにつくエクセロヒルム属の種(Exserohilum species)、
・ウリ科植物につくエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)及びスファエロテカ・フリジネア(Sphaerotheca fuliginea)、
・ 様々な植物につくフサリウム属の種(Fusarium species)及びベルチシリウム属の種(Verticillium species)、例えばシリアルにつくフサリウム・グラミネアルム(F. graminearum)やフサリウム・クルモルム(F. culmorum)、トマト等の様々な植物につくフサリウム・オキシスポルム(F. Oxysporum)、
・ シリアルにつくガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumanomyces graminis)、
・ シリアル及びイネにつくギッベレラ属の種(Gibberella species)(例えばイネにつくギッベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、
・ イネのグレインステイニング・コンプレックス(Grainstaining complex:穀粒変色複合病原体)、
・ トウモロコシ及びイネにつくヘルミントスポリウム属の種(Helminthosporium species)、
・ シリアルにつくミクロドキウム・ニバレ(Michrodochium nivale)、
・ シリアル、バナナ及び落花生につくマイコスファエレラ属の種(Mycosphaerella species)、例えばコムギにつくマイコスファエレラ・グラミニコラ(M. graminicola)やバナナにつくマイコスファエレラ・フィジエンシス(M.fijiensis)等、
・ キャベツや球根植物につくペロノスポラ属の種(Peronospora species)、例えばキャベツにつくペロノスポラ・ブラシカエ(P. brassicae)やタマネギにつくペロノスポラ・ デスツルクトル(P. destructor)、
・ ダイズにつくファコプサラ・パキルヒジ(Phakopsara pachyrhizi)及びファコプサラ・メイボミアエ(Phakopsara meibomiae)、
・ ダイズやヒマワリにつくホモプシス属の種(Phomopsis species)、
・ ジャガイモ及びトマトにつくファイトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、
・ 様々な植物につくファイトフトラ属の種(Phytophthora species)、例えばピーマンにつくファイトフトラ・カプシシ(P. capsici)、
・ ブドウの木につくプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、
・ リンゴの木につくポドスフェラ・リコトリカ(Podosphaera leucotricha)、
・ シリアルにつくシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)、
・ 様々な植物につくシュードペロノスポラ属の種(Pseudoperonospora species)、例えばキューカンバにつくシュードペロノスポラ・クベンシス(P. cubensis)やホップにつくシュードペロノスポラ・フミリ(P. humili)等、
・ 様々な植物につくプッシニア属の種(Puccinia species)、例えばシリアルにつくプッシニア・トリチシナ(P. triticina)、プッシニア・ストリホルミンス(P. striformins)、プッシニア・ホルデイ(P. hordei)又はプッシニア・グラミニス(P.graminis)やアスパラガスにつくプッシニア・アスパラギ(P. asparagi)等、
・ シリアルにつくペレノホラ属の種(Pyrenophora species)、
・ イネにつくピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルチシウム・ササキイ(Corticium sasakii)、サロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)、サロクラジウム・アテヌアツム(S. attenuatum)、エンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae)、
・ 芝生やシリアルにつくピリクラリア・グリセア(Pyricularia grisea)、
・ 芝生、イネ、トウモロコシ、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜や他の植物にもつくピシウム属の種(Pythium spp.)、例えば様々な植物につくピシウム・ウルチウマム(P. ultiumum)、芝生につくピシウム・アファニデルマツム(P. aphanidermatum)等、
・ ワタ、イネ、ジャガイモ、芝生、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜や他の植物にもつくリゾクトニア属の種(Rhizoctonia species)、例えばダイコンや様々な植物につくリゾクトニア・ソラニ(R. solani)、
・ オオムギ、ライムギ及びライコムギにつくリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis)、
・ ナタネやヒマワリにつくスクレロチニア属の種(Sclerotinia species)、
・ コムギにつくセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)及びスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、
・ ブドウの木につくエリシフェ(Erysiphe)(別名ウンシヌラ(Uncinula))・ネカトール(necator)、
・ トウモロコシや芝生につくセトスパエリア属の種(Setospaeria species)、
・ トウモロコシにつくスファセロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia)、
・ ダイズやワタにつくチエバリオプシス属の種(Thievaliopsis species)、
・ シリアルにつくチレチア属の種(Tilletia species)、
・ シリアル、トウモロコシ及びサトウダイコンにつくウスチラゴ属の種(Ustilago species)、例えばトウモロコシにつくウスチラゴ・マイディス(U. maydis)、及び
・ リンゴの木及びナシの木につくベンチュリア属の種(Venturia species)(疥癬病[scab])、例えばリンゴの木につくベンチュリア・イナエクアリス(V. inaequalis)、
を防除するのに特に適している。
【0212】
本発明は、また、先に記載した方法によって処理されている種子も提供する。本発明はまた先に記載した方法によって得ることができる種子も提供する。
【0213】
なおさらには、本発明は、先に定義した活性成分を含んでいる種子(特に播種されていない種子)にも関する。
【0214】
一実施形態によれば、そのような種子は、先に定義した活性成分を含むコーティングを有している。さらなる実施形態によれば、そのような種子においては、発芽可能部分及び/又は種子自体の葉鞘、殻、鞘及び/又は珠皮が先に定義した活性成分を含んでいる。また、活性成分は、種子のコーティング中並びに種子の発芽可能部分及び/又は種子自体の葉鞘、殻、鞘及び/又は珠皮中のいずれに存在していてもよい。
【0215】
本発明に従って処理された種子は、その活性成分のコーティングを保護するために膜オーバーコートで覆われてもよい。そのようなオーバーコートは当技術分野では知られており、慣用の流動床技術、ドラム式膜コート技術を用いて適用され得る。
【0216】
本発明の種子は、植物体を繁殖させるのに用いられ得る。本種子は、貯蔵、取り扱い、植え付け/播種及び耕作され得る。
【0217】
特に断らない限り、重量%での量は、全て、組成物(又は処方物)全体の重量に対してである。
【0218】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0219】
処理による差を観測することができるように、全ての実施例においては、植物体に十分な傷害が生じるよう、曝露時間と温度を選択した。
【0220】
実施例1.トウモロコシの発芽挙動
トウモロコシ植物体の種子をピラクロストロビンで処理しておき、播種のあと冷温度及び変動する温度に曝露させたトウモロコシ植物体の発芽挙動をAssociation of Official Seed Analysts (AOSA, 2005)による発芽試験ガイドラインに従って研究した。この目的のために、トウモロコシ種子をピラクロストロビンで処理した(100kgの種子当たり5gの活性物質)。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をサンドトレイに播種した(トレイ当たり2×100個の種子)。サンドトレイをインキュベーターの中に入れ、次の温度レジメン:10℃で7日→24℃で4日→そのあと10℃に付した。播種9日後、10日後及び29日後(=DAP=days after planting;植え付け後日数)に、植物体に育った種子の数を数えた。結果を平均値として表1にまとめる。100%の値は、播種された種子は全て植物体に育ったことを意味する。
【0221】
表1:
【表2】

【0222】
*DAP=植え付け後日数
【0223】
実施例2.植物体高さ(茎長)及び根長
播種後(実施例1を参照されたい)23日に植物体の茎長(=土線から頂端分裂組織までの長さ)及び根長を測定した。結果を平均値として以下の表2にまとめる。
【0224】
表2
【表3】

【0225】
実施例3.凍結条件下での挙動
処理による差を観測することができるように、植物体に十分な傷害が生じるよう、曝露時間と温度を選択した。
【0226】
トウモロコシ種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で、又はアゾキシストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理1日後に、種子をローム性砂質土が入ったポットに播種した。播種10日後に一部のトウモロコシ植物体を−5℃に3時間曝露し、そして残りの植物体を播種11日後に曝露した。各ケースで、枯れた植物体の数を凍結曝露の1日後に数えた。結果は平均パーセント値(凍結温度への曝露前の生きていた植物体100%に対して)として以下の表3にまとめる。
【0227】
表3
【表4】

【0228】
実施例4.サトウダイコンの発芽挙動
サトウダイコンの種子をピラクロストロビンで処理しておき、播種のあと冷温度に曝露させたサトウダイコン植物体の発芽挙動をAssociation of Official Seed Analysts (AOSA, 2005)による発芽試験ガイドラインに従って研究した。この目的のために、サトウダイコン種子をピラクロストロビンで処理した(100kgの種子当たり30gの活性物質)。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をローム性砂質土/砂混合物の入ったポットに播種した(2:1体積/体積;ポット当たり種子2個)。ポットをインキュベーターの中に入れ、10℃に維持した。播種13、15、16、17及び20日後(=DAP=days after planting;植え付け後日数)に、植物体に育った種子の数を数えた。結果は平均値として表4にまとめる。100%の値は、播種した種子は全て植物体に育ったことを意味する。
【0229】
表4:
【表5】

【0230】
*DAP=days after planting(植え付け後日数)
【0231】
実施例5.凍結条件下での挙動
サトウダイコン種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり30gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をローム性砂質土/砂混合物の入ったポットに播種した(2:1体積/体積;ポット当たり種子2個)。種子がBBCH生育段階10にあった時に一部のサトウダイコン植物体を−5℃に3時間曝露し、そして残りの植物体をそれらがBBCH生育段階11にあった時に曝露した。各ケースで、枯れた植物体の数を凍結曝露の3日後に数えた。結果は平均パーセント値(凍結温への曝露前の生きていた植物体100%に対しての)として以下の表5にまとめる。
【0232】
表5
【表6】

【0233】
実施例6.凍結条件下での挙動−ダイズ
ダイズ種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をポットに播種した。ダイズ植物体がBBCH生育段階9にあった時、−7℃に3.5時間曝露した。凍結曝露の3日後に、枯れた植物体の数を数えた。結果は平均パーセント値(凍結温度への曝露前の生きていた植物体100%に対して)として以下の表6にまとめる。
【0234】
表6
【表7】

【0235】
実施例7.凍結条件下での挙動−ハルコムギ
ハルコムギ種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をポットに播種した。ハルコムギ植物体がBBCH生育段階11にあった時、−10℃に2時間曝露した。凍結曝露の3日後に、枯れた植物体の数を数えた。結果は平均パーセント値(凍結温度への曝露前の生きていた植物体100%に対して)として以下の表7にまとめる。
【0236】
表7
【表8】

【0237】
実施例8.凍結条件下での挙動−ワタ
ワタ種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり20gの活性物質)で又はアゾキシストロビン(種子100kg当たり19gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をポットに播種した。ワタ植物体がBBCH生育段階10にあった時、−5℃に4時間曝露した。凍結曝露の3日後に、枯れた植物体の数を数えた。結果は平均パーセント値(凍結温度への曝露前の生きていた植物体100%に対して)として以下の表8にまとめる。
【0238】
表8
【表9】

【0239】
実施例9.凍結条件下での挙動−キャノーラ
キャノーラ(アブラナ)種子をピラクロストロビン(種子100kg当たり10gの活性物質)又はトリフロキシストロビン(種子100kg当たり10gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。処理の後、種子をポットに播種した。キャノーラ植物体がBBCH生育段階10にあった時、−10℃に1時間曝露した。凍結曝露の3日後に、枯れた植物体の数を数えた。結果は平均パーセント値(凍結温度への曝露前の生きていた植物体100%に対して)として以下の表9にまとめる。
【0240】
表9
【表10】

【0241】
野外試行:
【0242】
実施例10.Burrus Seed Farmsにおける野外試行での挙動−トウモロコシ
特に冷温度下では誤解を招きかねない試験結果を与えることがある菌ストレス試験の結果を避けるため、全てのトウモロコシ種子をMaxim XL(フルジオキソニル;種子100kg当たり3.5gの活性物質)及びApron XL(メフェノキサム;種子100kg当たり1gの活性物質)で処理した。種子の一部をさらにピラクロストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。2007年9月26日に、種子をBurrus Seed Farms(ブルス種子農場;合衆国イリノイ州)に播種した。播種35日後(=DAP=days after planting;植え付け後日数)に、無傷の植物体、傷害を受けた植物体、及び枯れた植物体の数を評価した。結果は平均パーセント値(植物体の全体数=100%に対して)として以下の表10にまとめる。
【0243】
表10
【表11】

【0244】
実施例11.Beaver Crossingにおける野外試行での霜害条件下での挙動−トウモロコシ
特に冷温度下では誤解を招きかねない試験結果を与えることがある菌ストレス試験の結果を避けるため、全てのトウモロコシ種子をMaxim XL(フルジオキソニル;種子100kg当たり3.5gの活性物質)及びApron XL(メフェノキサム;種子100kg当たり1gの活性物質)で処理した。種子の一部をさらにピラクロストロビン(種子100kg当たり5gの活性物質)で処理した。処理は、HEGE 11種子処理装置を用いて行った。2007年9月6日から開始して5日置きに種子をBeaver Crossing(ビーバークロッシング;合衆国ネブラスカ州)の汚染されていない耕された土の1.75インチ深さに播種した。霜害は、2007年10月22/23日(−0.1℃で1時間)、2007年10月23/24日(−0.1℃で1時間)及び2007年10月24/25日(0℃で1時間、−1.1℃で1.5時間、及び0℃で1時間)に起こった。播種47日後(=DAP;days after planting;植え付け後日数)に、出現した植物体の数とその高さを評価した。50 DAPに、枯れた組織の程度を評価した。結果は平均値として以下の表11にまとめる。
【0245】
表11
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体が生育する種子を、少なくとも1種のストロビルリン系殺菌剤で処理することを含む、非生物的ストレスに対する植物体又は植物体の種子の耐性を増大させるための方法。
【請求項2】
ストロビルリン系殺菌剤が、式IA又はIB
【化1】

[式中、
・・・は、二重結合又は一重結合であり;
は、−C[COCH]=CHOCH、−C[COCH]=NOCH、−C[CONHCH]=NOCH、−C[COCH]=CHCH、−C[COCH]=CHCHCH、−C[COCHCH]=NOCH、−C[C(=N−ORμ)ORν]=NOCH、−N(OCH)−COCH、−N(CH)−COCH又は−N(CHCH)−COCHであり、式中のRμ及びRνは、独立して、H、メチルもしくはエチルであるか又は一緒になって基CHもしくはCHCHを形成しており;
は、直接、又は酸素原子、イオウ原子、アミノ基もしくはC〜C−アルキルアミノ基を介して結合されている有機基であり;又は
は、基X、及び、R及びXが結合されている環Q又はTと一緒に、酸素、イオウ及び窒素から独立に選択される1、2又は3個のへテロ原子を炭素環員に加えて含み得る、置換されていてもよい二環式の、部分もしくは完全不飽和系を形成しており;
は、−OC[COCH]=CHOCH、−OC[COCH]=CHCH、−OC[COCH]=CHCHCH、−SC[COCH]=CHOCH、−SC[COCH]=CHCH、−SC[COCH]=CHCHCH、−N(CH)C[COCH]=CHOCH、−N(CH)C[COCH]=NOCH、−CHC[COCH]=CHOCH、−CHC[COCH]=NOCH、−CHC[CONHCH]=NOCH又は−CHNRπ[COCH](ここで、Rπは、H、メチル又はメトキシである)であり;
は、酸素、イオウ、=CH−又は=N−であり;
nは、0、1、2又は3であり、ここで、n>1の場合は、基Xは同一又は異なることができ;
Xは、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ又はC〜C−アルキルチオであり、又は
n>1の場合は、Q又はT環の2つの隣接するC原子に結合された2つの基Xは、C〜C−アルキレン、C〜C−アルケニレン、オキシ−C〜C−アルキレン、オキシ−C〜C−アルキレンオキシ、オキシ−C〜C−アルケニレン、オキシ−C〜C−アルケニレンオキシ又はブタジエンジイル基であることもでき、これらの鎖には、順次、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ及びC〜C−アルキルチオから互いに独立して選択される1〜3個の基が結合されていてもよく;
Yは、=C−又は−N−であり;
Qは、フェニル、ピロリル、チエニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、2−ピリドニル、ピリミジニル又はトリアジニルであり;
Tは、フェニル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル又はトリアジニルである]
で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストロビルリン系殺菌剤が、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシムメチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、トリフロキシストロビン、メチル(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバマート、メチル(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバマート、メチル2−オルト−[(2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル]−3−メトキシアクリラート、及び式IA.1
【化2】

[式中、
Tは、CH又はNであり;
及びRは、互いに独立して、ハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−ハロアルキルであり;
xは、0、1又は2であり;
yは、0又は1である]
で表される化合物又はその農薬として許容される塩から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Tが、CHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
が、C〜C−アルキルであり、Rが、ハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−ハロアルキルである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
yが0である、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
xが0又は1である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
式IA.1の化合物が、ピラクロストロビンである、請求項3〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
冷温度及び/又は温度の両極端に対する植物体又は植物体の種子の耐性を増大させるための、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
拡張BBCHスケールの生育段階01〜19にある間に冷温度及び/又は温度の両極端に曝露される植物体又は植物体の種子の活力を高めるための、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
発芽及び/又は発生を改善し、及び/又は植物体の高さを増大させ、及び/又は植物体の根長を増大させるための、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非生物的ストレスに対する植物体又は植物体の種子の耐性を増大させるための、請求項1〜8のいずれかに定義されている少なくとも1種の式Iの化合物の使用。
【請求項13】
冷温度及び/又は温度の両極端に対する植物体又は種子の耐性を増大させるための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
拡張BBCHスケールの生育段階01〜19にある間に冷温度及び/又は温度の両極端に曝露される植物体又は植物体の種子の活力を高めるための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
発芽及び/又は発生を改善し、及び/又は植物体の高さを増大させ、及び/又は植物体の根長を増大させるための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
植物体が、シリアル、マメ科植物、ナタネ(キャノーラ)、ヒマワリ、ワタ、サトウダイコン、核果、仁果類、柑橘類、バナナ、イチゴ、ブルーベリー、アーモンド、ブドウ、マンゴー、パパイヤ、ジャガイモ、トマト、トウガラシ(ピーマン)、キュウリ、カボチャ/スクワッシュ、メロン、スイカ、ニンニク、タマネギ、ニンジン、キャベツ、ルーサン、クローバー、亜麻、エレファントグラス(ミスカンザス)、牧草、レタス、サトウキビ、茶、タバコ及びコーヒーから選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項17】
植物体が、コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、イネ、野生イネ、トウモロコシ(コーン)、アワ、ソルガム、テフ、インゲンマメ、エンドウマメ、ヒヨコマメ、レンティル、ダイズ、ナタネ(キャノーラ)、サトウダイコン、ワタ及びラッカセイから選択される、請求項16に記載の方法又は使用。
【請求項18】
植物体が、コムギ、コーン、ダイズ、ナタネ(キャノーラ)、サトウダイコン及びワタから選択される、請求項17に記載の方法又は使用。
【請求項19】
冷温度が、最高で15℃の温度である、請求項9〜18のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項20】
冷温度が、最高で10℃の温度である、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項21】
冷温度が、最高で0℃の温度である、請求項20に記載の方法又は使用。

【公表番号】特表2010−531844(P2010−531844A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513944(P2010−513944)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058304
【国際公開番号】WO2009/003953
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】