説明

非生産的な手の動きを最小化するためのキーボード

非生産的な手の動きを最小化するために設けられたキーボードである。キーボードは、英数字の文字列を入力するための、従来のキーボードの配列に従って配置された複数のキーと、少なくとも一のモディファイキーとを備え、モディファイキーは、使用者のタイプする指の通常の静止位置の近くに配置されたキーのうちの前以て決められたキーに、よく使われるキーボードのファンクションを割り当てている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に英数字用のキーボードに関し、より具体的には非生産的な手の動きを最小化するための改良されたキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
何年にも亘って、一般的な使用者の利益対妥協点の認識に基づいて、コンピュータのキーボードは限られた数の標準的な型式に発展してきた。これらの一般的に入手可能な標準的なキーボードは、大多数の使用者の必要を一般的に満足する最低の共通の基準となっている。それにもかかわらず、キーボードの設計における研究は、既存の型式の最も重大な欠点を改良する試みにおいて継続している。
【0003】
特許文献1は、左側にスクロール用の回転部を有し、規格位置に編集用のキーを有する大衆向けのデスクトップ用キーボードを開示している。使用者は、必要に応じてホームキーの列(文字“a”からアポストロフィまで)から手を動かして編集キーにアクセスすることができる。また、キーボードは、数字パッド上にアクセス可能なナビゲーション機能を有している。しかし、これらの機能をロックするための“num lock”操作部が簡便にアクセス可能ではないので、ナビゲーション機能はほとんど使用されない。代わりに、使用者は手をカーソル/編集キーと数字パッドとの間を往復移動する傾向がある。
【0004】
特許文献2は、“マイクロソフトオフィスキーボード(Microsoft Office Keyboard)”として商業的に知られているキーボードを示している。このキーボードは、マイクロソフトオフィスの使用者の必要性に対処するように設計され、切り取り(cut)、コピー、貼り付け(paste)専用のキー、及びスクロール用の回転部を有している。便利ではあるが、これらの機構によってもまだ、使用者が切り取り、コピー、貼り付け専用のキー、及びスクロール用の回転部にアクセスするためにホームキーの列から手を動かすことを必要としている。また、これらの特別なキーの組み込み、及び一体化されたリストレストの結果として、キーボードは非常に大きく、標準的なキーボードより非常に多くの机上スペースを占有している。“マイクロソフトオフィスキーボード”のキーボード上の数字パッドナビゲーションは、特許文献1で説明されたキーボードと同じである。
【0005】
小型のキーボード上で選択されたキーを再配置するための追加的なモディファイキー(Fn)の使用の慣用は、業界では広く行われている。この技術によって、小さいキーボードを、大きさを対応するように増加させることなく、大きなキーボードの機能を再現することができる。
【0006】
特許文献3は、ラップトップコンピュータに一般に使用されているキーボードの設計の代表的な例を説明している。モディファイ(Fn)キーは、使用者がキーボードの右側を数字キーパッドに再配置することを可能としている。しかし、結果的な仮の数字パッドに対するホームの列の位置は文字列をタイプするためのホームの列の位置より1列上にあり、結果として、数字の入力と文字列の入力との間で交互に切り替えるために手の再配置が必要とされる。また、ナビゲーション機能及び編集機能は、ホームの列からの手の移動を必要とする。
【0007】
カリフォルニア州サンタクララのPFUシステムインコーポレーションによって製造された、市場で入手可能なHappy Hacking Keyboard(登録商標)は、Fnキー法を使用して右側にナビゲーション及び編集の機能を提供している。しかし、使用可能なFnキーは、ホームの列にはなく、結果的に不便な手の動きが必要となる場合がある。また、ナビゲーション及び編集のキーは、これらのキーを制御するための規格のホームの列の位置にうまく配置されない任意の位置にあり、よって特別な学習の時間/努力を使用者に強いてしまう一因となっている。
【0008】
特許文献4は、モディファイキーとして機能する非モディファイキーを使用するための複雑な機構を開示し、よってキーボードの配置の残りの部分を自由自在に再配置することを可能としている。この解決法には、いくつかの理由で問題がある。
(1)作業者の意図を検知するために、変換機として作用するキーを一定の時間押し続ける必要がある。この休止は使用者のペースを落とし、よって仕事の流れを妨害する。
(2)タイプの速度の遅い人は、無意図的に代替配置を始動させてしまい、結果として予想しないキーボードの動きを引き起こす。
(3)モディファイキーとして作用するキーはオートリピートの能力を失う。このことは、スペースバー(Space bar)キーがモディファイキーとして使用される(特許のなかで説明される好ましい実施形態の一つ)場合には、特に問題となる場合がある。スペースバーキーは通常のタイピング中には非常に頻繁に使用されるので、その機能が損なわれるとタイピングの能力が大幅に落ちる場合がある。
(4)開示された配置は、カーソルをコントロールするために左手が充てられる配置を示し、標準的な慣例とは逆となっている。事実上全てのキーボードは右手にカーソルキーのコントロールをさせている。また、この配置は、既知の“逆T”型ポッド(pod)の指対キーの配置と矛盾している(例えば、人差し指でタイプされるキーと薬指でタイプされるキーが入れ替わっている)。これは、問題を生じる場合があり、また使用者を混乱させる。
(5)開示された実施形態は、小型のキーボードのみに限定されている。キーボードがどのようにマウス(または他のポインティングデバイス)と相互に作用するかについて、又は数字パッドの機能の拡張については何も言及されていない。さらに、特許文献4は、製造経費を削減する方法として、標準的な数字パッド及びナビゲーションキー全体を排除することを推奨している。
【0009】
特許文献5(米国特許第6198474号明細書)は、キーボードの大きさを削減するという同じ目的を有する(前述の)特許文献4に記載されたものと同様の技術を開示している。全ての標準的なモディファイキーは排除され、その機能は2つの部分に分けられたスペースバーによって置換されており、異なるモディファイ機能はスペースバーの半分部分のそれぞれに割り当てられている。しかし、失われた機能を再現するための手順は複雑であって、結果的な配置は非常に任意的であるとともに、いかなる標準的なキーボードの配置との類似点も有さない。このことによって、多くの使用者はこのキーボードを用いてタイプする方法を習得する努力を強いられ、特許文献4を参照して上述した多くの欠点を生じる可能性がある。
【0010】
特許文献6及び特許文献7は、手の動きを軽減するための同様の方法を開示している。これらの文献のそれぞれは中央部で分割されたキーボードを開示しており、追加的なキーが2つの側部間に配置されている。また、スペースバーの領域の下部に追加的なキーを配置することが意図されている。残念なことに、これらのキーボードの使用者は、追加的なキーを使用するためにまだ手を動かすことを必要とし、直感的に位置決めすることができない場合も生じる。両方のキーボードは規格の設計ではなく、高価な特注生産を必要とする。規格の配置からの逸脱はこれらのキーボードを保守的な消費者にとって魅力的ではないものとしている。
【0011】
特許文献8は、規格のキーボードのキーを配置されていない様々な領域に、スクロールバーセンサを追加することについて記載している。これらストリップに沿った指の動きによって、作業者は両方の手を使用して、(垂直方向に又は水平方向に)文書全体をスクロールすることができる。
【特許文献1】米国特許第6682235号明細書
【特許文献2】米国意匠特許第458258号
【特許文献3】米国意匠特許第354049号
【特許文献4】米国特許第5287526号明細書
【特許文献5】米国特許第6198474号明細書
【特許文献6】米国特許第4974183号明細書
【特許文献7】米国特許第4522518号明細書
【特許文献8】米国特許第6043809号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明によれば、上述した従来技術の型式より効果的に使用できる改良されたキーボードが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
具体的には、本発明のキーボードは、要所に配置された専用のモディファイキー(Fn)を組み込んでおり、使用者が標準的なコンピュータのキーボードのデザインに比較してほとんど無駄な手の動きをしないですむように、通常使用されるキーボードの機能を迅速かつ簡単にタイプされる位置に割り当てている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の詳細な説明は、添付の図面を参照して後述に説明されている。
【0015】
すべての図において、所定のキーは符号を付されていない(例えば、他のモディファイキー)。この技術分野の当業者は、これらのキーを図に示したキーと組み合わせて使用することができる、又は使用することができないことを理解できるであろう。
【0016】
本発明によれば、モディファイキー(Fn)はホームキーの列上に(又は容易に使用できる位置に)配置されている。好ましくは、図1に示すように、Fnキーはタブキーとシフトキーとの間のキーボードの左側に配置されている。この位置は大文字ロックキーのための規格の位置であり、大文字ロックキーはいずれかの使用可能な位置へ再配置する必要がある。
【0017】
Fnキーが押された(有効化された)場合、キーボードは、下記に詳述するように、代替的な配置へ再配置される。Fnキーが開放された(無効化された)場合、キーボードはその規格の配置へ戻る。
【0018】
図2は、数字キーパッドとともに使用するために最適化された実施形態を示している。図1の左側のFnキーを単に押す又は解放することによって、使用者は右手を使用して数字のタイプ(図2a)と文書のナビゲート(図2b)との間をほとんど瞬間的に切り替えることができる。
【0019】
図3は、マウス(又は他のポインティングデバイス)とともに使用するように最適化された実施形態を示している。複数の切り取り、コピー、及び貼り付けキーが余分に設けられ、よって、このような機能を有効化するときに、どの指を、Fnキーを押すのに使用するかに関して、使用者に誤操作に対する大きなマージンと、大きな柔軟性とを許容している。また、Backキー及びForwardキーが、ウェブ及びファイルブラウザのナビゲーションのために設けられている。
【0020】
図4は、文字列を入力するときに使用するように最適化された実施形態を示している。特に、編集機能キーの配置によって、使用者はタイプ、文書のナビゲーション、及び編集の間を、ホームの列から手を動かすことなく迅速に切り替えることができる。
【0021】
図1〜4に関して上述した、いずれかの、若しくはすべての実施形態は、同じキーボードに実施することができるということに注意すべきである。
【0022】
図5は、独立した(stand−alone)数字キーパッドのための2つの実施形態(図5a及び図b)を示している。それぞれの実施形態において、Fnキーは使用者の右手の親指によって有効化される。Fnキーの大きさ、形状、及び位置は異なる用途及び使用者の好みで異なっていても良い。
【0023】
要約すると、本発明によるキーボードの配置によって、一般的に使用者の手がほとんどのタイプの仕事に対してホーム位置に維持されることを可能とし、よって様々なデバイス/仕事に対するホーム位置間の非生産的な手の動きを最小化している。他のキーの機能へのキーの再配置は通常、再配置されるキーに対するホーム位置の列を変化させずに行われる。このことは、使用者がすでに規格のキーの位置を使用して得ているスキルを移転することができるので、使用者の学習の速度を速め、混乱を最小化する。例えば、図6は、タイプすることができるすべての異なる位置にあるカーソルキーに対して同一である、人差し指、中指及び薬指のキーの配置(それぞれ四角形状、三角形状、及び円状)を示している。図6中の灰色の箱は、それぞれの場合における人差し指に対する標準的なホーム位置を示している。
【0024】
本発明のキーボードのレイアウトは、経費のかかる物理的な変形を必要としないで(例えば、追加的なキーが必要とされること無く)、規格のキーボードの中に十分に統合され、キーボードの標準的な働きを邪魔することは無い。Fnキーが有効化されたとき、キーボードの機能は規格のキーボードと全く同じである。
【0025】
好ましい実施形態においては、シフトキー及びFnキーは互いに隣り合って配置され、よって一本の指だけを用いて同時に押すことができる。このことは大変重要な利点であって、使用者は、カーソルキー及びシフトキーを組み合わせて使用することによって、迅速に、かつ楽に選択をすることができる。使用者は、この解決法を使用して、文字、単語、行、文節全体でさえも選択することができる。
【0026】
本発明の多くの特徴及び利点は詳細な明細書によって明らかであり、よって、本発明の形態及び技術範囲内に入る本発明のこのようなすべての特徴及び利点を含むことが請求の範囲によって意図されている。他の実施形態又は変形が、本発明の形態及び技術的範囲内で可能である。例えば、上記で説明した実施形態は1つのモディファイ(Fn)キーを組み込んでいるが、追加的な(余分な)FNキーをキーボードに組み込むこともできる。また、前述の実施形態はモディファイキーとしてのFnキーの使用を示しているが、別のモディファイキーがFnキーの機能を行うことも考えられ、この場合Fnキーは、前述のモディファイキーがすでに行っている別の機能と矛盾することは無いように設けられる。さらに、好ましい実施形態に関して説明されていない数字のFnキーの組み合わせが、当業者には理解できるであろう。これらは、限定されるわけではないが、Mac OSXのExpose機能、音量コントロール機能、媒体アクセスキーなどを含んでいる。数字の変形及び変更は当業者には容易であるので、本発明を、図示され、説明されたとおりの構造及び操作に限ることは望ましくなく、よってすべての好適な変形及び予備分類されるであろう同等のものは、本発明の技術範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】最適な使用のための要所に配置されたモディファイ(Fn)キーを有する、本発明によるキーボードの配置を示した図である。
【図2】図2a及び図2bからなり、従来の数字キーパッドのキーボード配置を示す図(図2a)及び、図1のFnが押され、押した状態で保持された場合に有効になる代替的な配置を示す図(図2b)である。
【図3】マウス(又は他のポインティングデバイス)とともに使用するように最適化された、本発明によるキーボードの配置の実施形態を示す図である。
【図4】文字列を入力するときに使用するように最適化された、本発明によるキーボードの配置の実施形態を示す図である。
【図5a】自己充足型数字キーパッド上で使用するように最適化された、本発明によるキーボードの配置の代替的な実施形態を示す図であり、左の図は標準的な数字キーパッドの配置を示し、右の図はFnキーが有効であるときの代替的な配置を示している。
【図5b】自己充足型数字キーパッド上で使用するように最適化された、本発明によるキーボードの配置のさらなる代替的な実施形態を示す図であり、左の図は規格の数字キーパッドの配置を示し、右の図はFnキーが有効であるときの代替的な配置を示している。
【図6】3つの異なるホームポジションのためのカーソルキーの配置を有する、本発明によるキーボードの配置の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)英数字を入力するための複数のキーであって、従来のキーボードのレイアウトに従って配置されたキーと、
b)少なくとも1つのモディファイキーであって、前記従来のキーボードのレイアウトによる、使用者のタイプする指の通常の静止位置の近傍に配置された前以って決められた前記キーに、よく使用される機能を割り当て、よって英数字の文字列の入力と、前記よく使用されるキーボードの機能との間での非生産的な動きを最小化するモディファイキーと、
を備える、非生産的な手の動きを最小化するためのタイピングキーボード。
【請求項2】
前記モディファイキーもまた、前記従来のキーボードのレイアウトによる使用者のタイプする指の前記通常の静止位置の近傍に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のタイピングキーボード。
【請求項3】
前記モディファイキーは、前記従来のキーボードレイアウトのタブキーとシフトキーとの間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のタイピングキーボード。
【請求項4】
前記複数のキーは、数字キーパッドを形成し、前記よく使用されるキーボードの機能は文書をナビゲートするためのキーを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイピングキーボード。
【請求項5】
前記キーのうちの前以って決められたキーは、前記従来のキーボードのレイアウトのホームキーの列の近傍に配置され、前記よく使用されるキーボードの機能は文書を編集するためのキーを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイピングキーボード。
【請求項6】
前記よく使用されるキーボードの機能は、切り取り、コピー、及び貼り付けのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載のタイピングキーボード。
【請求項7】
前記よく使用されるキーボードの機能は、バック及びフォワードのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のタイピングキーボード。
【請求項8】
前記よく使用されるキーボードの機能のそれぞれは、予備のための前記キーのうちの複数のキーに割り当てられていることを特徴とする請求項1に記載のタイピングキーボード。
【請求項9】
前記よく使用されるキーボードの機能は、Pgrph↑、Home、PgUp、←Word、Word→、Pgrph↓、End、PgDn、←、↑、→、↓のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のタイピングキーボード。
【請求項10】
前記少なくとも1つのモディファイキーは、Fnであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のタイピングキーボード。
【請求項11】
前記少なくとも1つのモディファイキーは、使用者の右の親指の通常の静止位置の近傍に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のタイピングキーボード。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−509460(P2008−509460A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524149(P2007−524149)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001215
【国際公開番号】WO2006/012749
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507038722)マティアス・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】