非破壊検査用キャパシタンスセンサ
【課題】 簡便なLRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用キャパシタンスセンサを提供する。
【解決手段】 非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、電源と、この電源に接続されるLRC回路のコンデンサC2を測定対象物のプローブとする。
【解決手段】 非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、電源と、この電源に接続されるLRC回路のコンデンサC2を測定対象物のプローブとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査用キャパシタンスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査装置としては種々のものが開発されており、本願発明者は既に、低温容器内の配管のガス漏れ箇所を正確に、しかも迅速に測定することができる低温容器内の配管のガス漏れ箇所検査システムを提案している。
【特許文献1】特開2006−064601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した検査システムはコストが嵩み、簡便なセンサが求められているのが現状である。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、簡便なLRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用キャパシタンスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、電源と、この電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとすることを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記LRC回路が直列LRC回路又は並列LRC回路であることを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔2〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が直流電源であることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔2〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が交流電源であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物のプローブは、2個の並列接続されたコンデンサからなることを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管内の異物を検出することを特徴とする。
【0012】
〔8〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することを特徴とする。
【0013】
〔9〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0014】
〔10〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管内の異物を検出することを特徴とする。
【0015】
〔11〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0016】
〔12〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物内の異物を検出することを特徴とする。
【0017】
〔13〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0018】
〔14〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成した剥離を検出することを特徴とする。
【0019】
〔15〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記プローブを並列に複数個配置し、その複数個のプローブで前記測定対象物の測定を行うことを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便な構成で、コンデンサをプローブとしたキャパシタンスの変化をとらえることができ、金属・非金属の汎用的な測定対象物の測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の非破壊検査用キャパシタンスセンサは、電源と、この電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとする。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す直流方式の直列LRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用装置の回路図である。
【0024】
この図において、1は抵抗(R)、2はその抵抗1に直列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。3はセンサ部2に直列に接続されるインダクタンス(L)、4は抵抗(R)1とインダクタンス(L)3との間に接続される直流電源電圧(V)である。
【0025】
図1における回路の回路方程式は、C=C1+C2とすると、
L(di/dt)+Ri+(Q/C)=V …(1)
で表すことができ、dQ/dt=iなので、再度tで微分すると、
L(d2 i/dt2 )+R(di/dt)+i/C)=0 …(2)
となる。ここでC(静電容量),L(インダクタンス),R(抵抗),V(電源電圧),i(電流),t(時間)である。これを電流について解くと、
【0026】
【数1】
が得られる。ここでA,Bは定数である。境界条件はt→∞でQ/C→Vとi→0で表される。すなわち、コンデンサの静電容量CやコイルのインダクタンスLが変化すれば、上記(3)式で表される電流が変化する。変化量を検討する場合、上記(2)式のC→C′として、初期条件t=0でQ=CV,i=0を与えて解くことになる。
【0027】
図1の場合センサ部2をコンデンサとし、静電容量の変化により流れる電流をコイルの磁場変化として磁気検知部で検知している。
【0028】
また、C1をセンサとして考え、極板の空隙をたとえば10mm程度とした場合、回路がオープンとなりノイズが大となる。これを避けるため、センサ部2をコンデンサC1,C2の並列回路としている。
【0029】
次に、静電容量Cは、C=ε・(S/d)で表される。ここでは、εは物質の誘電率、Sはコンデンサ極板の面積、dは極板間距離である。
【0030】
次に、金属物の挿入について説明する。
【0031】
図2は本発明の実施例を示すセンサ部に金属物が挿入された場合を示す図である。
【0032】
この図に示すように、センサ部2の一部に金属物11が挿入された場合の等価回路は図3のように考えることができる。このとき、静電容量は、C=ε{(2d−δ)/(2d(d−δ)}Sに変化する。金属物11にクラックなど体積変化する部分が存在した場合にもそれに対応する等価回路を考えることができ、静電容量の変化を考えることができる。
【0033】
図4は本発明の実施例を示すセンサ部に誘電体が挿入された場合を示す図である。
【0034】
この図に示すように、センサ部2の一部に誘電体21が挿入された場合は、誘電率εも変化し、その等価回路は図5に示すようになる。誘電体の誘電率をε′とすると、静電容量は
【0035】
【数2】
のように変化する。誘電体にクラックなど体積変化する部分が存在した場合にもそれに対応する等価回路を考えることができ、静電容量の変化を考えることができる。
【0036】
次に、非破壊検査用装置への適用について説明する。
【0037】
図6に示すように、センサ部2に金属配管31をセットした状態で、上記した回路定数を調整すれば、内部クラック32や金属配管31内部の異物33の異物検知が可能になる。
【0038】
特に、渦電流検知方式では難しい厚肉配管においても、厚みの影響は受けないので本発明の方式は有利である。また、配管の磁性、非磁性にもよらない。
【0039】
なお、このセンサは、あらかじめ形状の分かっている誘電体の誘電率を測定する装置として適用することもできる。
【0040】
図7は本発明の応用例としてのセンサ部(プローブ)を多数配置した多センサ型非破壊検査装置を示す図である。
【0041】
この図に示すように、4つのコンデンサ41〜44が並列に配置されており、4つのコンデンサ41〜44がそれぞれ直流電源電圧45〜48に接続されている。4つのコンデンサ41〜44内では金属配管50内部の異物49の検出を行うことができる。
【0042】
図8は本発明の第2実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサ部をプローブとする回路図である。
【0043】
交流LRC回路の直列共振現象を利用した非破壊検査用キャパシタンスセンサについて説明する。
【0044】
図8において、51は抵抗(R)、52はその抵抗51に直列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。53はセンサ部52に直列に接続されるインダクタンス(L)、54は抵抗(R)51とインダクタンス(L)53との間に接続される交流電源電圧(V)である。
【0045】
図8に示すような交流LRC回路構成とした場合、適当なL,C,Rに対し、特定の交流周波数で回路が共振状態となる。
【0046】
共振回路の共振周波数は、
ω0 =1/√LC …(5)
で与えられる。
【0047】
図9は本発明に係る共振電圧に対する出力の周波数依存性を示す図である。
【0048】
ω=ω0 のとき、共振電圧となり、それ以外のωでは出力電圧は小さなものとなる。回路定数を適当に選んでやることにより、ピークは急峻となり、S/Nを向上することができる。
【0049】
ここで、センサ部52のコンデンサC2に非破壊検査用測定対象物を作用させることにより、上記(4)式においてCの値が変化したとすると、共振周波数ω0 がシフトし、共振しなくなる。逆に、測定対象物の物理量にあらかじめ共振条件を合わせておけば、センサが対象物をとらえた際に共振させることができる。
【0050】
図10は本発明の第3実施例を示す直流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【0051】
この図において、61は抵抗(R)、62はその抵抗61に並列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。63はセンサ部62に並列に接続されるインダクタンス(L)、64は抵抗(R)61とセンサ部62とインダクタンス(L)63との並列回路に接続される直流電源電圧(V)である。
【0052】
図11は本発明の第4実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【0053】
この図において、71は抵抗(R)、72はその抵抗71に並列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。73はセンサ部72に並列に接続されるインダクタンス(L)、74は抵抗(R)71とセンサ部72とインダクタンス(L)73との並列回路に接続される交流電源電圧(V)である。
【0054】
このように、並列LRC共振方式のコンデンサをプローブとすることができる。
【0055】
上記のように構成することにより、
(1)非破壊検査用装置として適用することができ、金属配管のクラックや金属配管内の異物などを検出することができる。
【0056】
(2)非破壊検査装置として適用することができ、金属配管やタンクなどに測定対象物が満たされているか否かの検知が可能である。
【0057】
(3)誘電率検知装置として適用することができ、コンデンサ部(センサ)を利用して測定対象物の誘電率の測定が可能である。
【0058】
(4)液面計として適用することができ、タンクなど満液(ガス)警報装置やガス漏れ検知装置として利用できる。
【0059】
更に、実施態様を具体的に示すと、
(5)測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することができる。
【0060】
(6)測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管に生成したクラックを検出することができる。
【0061】
(7)測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管内の異物を検出することができる。
【0062】
(8)測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物に生成したクラックを検出することができる。
【0063】
(9)測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物内の異物を検出することができる。
【0064】
(10)測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成したクラックを検出することができる。
【0065】
(11)測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成した剥離を検出することができる。
【0066】
上記したように種々の測定対象物を有し、それらの異常な態様を容易に検出することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の非破壊検査用キャパシタンスセンサは、液面計として適用することができ、タンクなど満液(ガス)警報装置やガス漏れ検知装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例を示す直流方式の直列LRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用装置の回路図である。
【図2】本発明の第1実施例を示すセンサ部に金属物が挿入された場合を示す図である。
【図3】本発明のプローブとしてのセンサ部に金属物が挿入された場合の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示すセンサ部に誘電体が挿入された場合を示す図である。
【図5】本発明のプローブとしてのセンサ部に誘電体が挿入された場合の等価回路を示す図である。
【図6】本発明の非破壊検査装置としてのクラックや異物検知例を示す模式図である。
【図7】本発明の応用例としてのセンサ部(プローブ)を多数配置した多センサ型非破壊検査装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【図9】本発明に係る共振電圧に対する出力の周波数依存性を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示す直流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【図11】本発明の第4実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【符号の説明】
【0070】
1,51,61,71 抵抗(R)
2,52,62,72 センサ部(コンデンサC1とC2との並列接続)
3,53,63,73 インダクタンス(L)
4,45〜48,64 直流電源電圧(V)
11 金属物
21 誘電体
31,50 金属配管
32 クラック
33,49 金属配管内部の異物
41〜44 4つのコンデンサ
54,74 交流電源電圧(V)
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査用キャパシタンスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査装置としては種々のものが開発されており、本願発明者は既に、低温容器内の配管のガス漏れ箇所を正確に、しかも迅速に測定することができる低温容器内の配管のガス漏れ箇所検査システムを提案している。
【特許文献1】特開2006−064601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した検査システムはコストが嵩み、簡便なセンサが求められているのが現状である。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、簡便なLRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用キャパシタンスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、電源と、この電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとすることを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記LRC回路が直列LRC回路又は並列LRC回路であることを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔2〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が直流電源であることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔2〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が交流電源であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物のプローブは、2個の並列接続されたコンデンサからなることを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管内の異物を検出することを特徴とする。
【0012】
〔8〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することを特徴とする。
【0013】
〔9〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0014】
〔10〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管内の異物を検出することを特徴とする。
【0015】
〔11〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0016】
〔12〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物内の異物を検出することを特徴とする。
【0017】
〔13〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする。
【0018】
〔14〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成した剥離を検出することを特徴とする。
【0019】
〔15〕上記〔3〕又は〔4〕記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記プローブを並列に複数個配置し、その複数個のプローブで前記測定対象物の測定を行うことを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便な構成で、コンデンサをプローブとしたキャパシタンスの変化をとらえることができ、金属・非金属の汎用的な測定対象物の測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の非破壊検査用キャパシタンスセンサは、電源と、この電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとする。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す直流方式の直列LRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用装置の回路図である。
【0024】
この図において、1は抵抗(R)、2はその抵抗1に直列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。3はセンサ部2に直列に接続されるインダクタンス(L)、4は抵抗(R)1とインダクタンス(L)3との間に接続される直流電源電圧(V)である。
【0025】
図1における回路の回路方程式は、C=C1+C2とすると、
L(di/dt)+Ri+(Q/C)=V …(1)
で表すことができ、dQ/dt=iなので、再度tで微分すると、
L(d2 i/dt2 )+R(di/dt)+i/C)=0 …(2)
となる。ここでC(静電容量),L(インダクタンス),R(抵抗),V(電源電圧),i(電流),t(時間)である。これを電流について解くと、
【0026】
【数1】
が得られる。ここでA,Bは定数である。境界条件はt→∞でQ/C→Vとi→0で表される。すなわち、コンデンサの静電容量CやコイルのインダクタンスLが変化すれば、上記(3)式で表される電流が変化する。変化量を検討する場合、上記(2)式のC→C′として、初期条件t=0でQ=CV,i=0を与えて解くことになる。
【0027】
図1の場合センサ部2をコンデンサとし、静電容量の変化により流れる電流をコイルの磁場変化として磁気検知部で検知している。
【0028】
また、C1をセンサとして考え、極板の空隙をたとえば10mm程度とした場合、回路がオープンとなりノイズが大となる。これを避けるため、センサ部2をコンデンサC1,C2の並列回路としている。
【0029】
次に、静電容量Cは、C=ε・(S/d)で表される。ここでは、εは物質の誘電率、Sはコンデンサ極板の面積、dは極板間距離である。
【0030】
次に、金属物の挿入について説明する。
【0031】
図2は本発明の実施例を示すセンサ部に金属物が挿入された場合を示す図である。
【0032】
この図に示すように、センサ部2の一部に金属物11が挿入された場合の等価回路は図3のように考えることができる。このとき、静電容量は、C=ε{(2d−δ)/(2d(d−δ)}Sに変化する。金属物11にクラックなど体積変化する部分が存在した場合にもそれに対応する等価回路を考えることができ、静電容量の変化を考えることができる。
【0033】
図4は本発明の実施例を示すセンサ部に誘電体が挿入された場合を示す図である。
【0034】
この図に示すように、センサ部2の一部に誘電体21が挿入された場合は、誘電率εも変化し、その等価回路は図5に示すようになる。誘電体の誘電率をε′とすると、静電容量は
【0035】
【数2】
のように変化する。誘電体にクラックなど体積変化する部分が存在した場合にもそれに対応する等価回路を考えることができ、静電容量の変化を考えることができる。
【0036】
次に、非破壊検査用装置への適用について説明する。
【0037】
図6に示すように、センサ部2に金属配管31をセットした状態で、上記した回路定数を調整すれば、内部クラック32や金属配管31内部の異物33の異物検知が可能になる。
【0038】
特に、渦電流検知方式では難しい厚肉配管においても、厚みの影響は受けないので本発明の方式は有利である。また、配管の磁性、非磁性にもよらない。
【0039】
なお、このセンサは、あらかじめ形状の分かっている誘電体の誘電率を測定する装置として適用することもできる。
【0040】
図7は本発明の応用例としてのセンサ部(プローブ)を多数配置した多センサ型非破壊検査装置を示す図である。
【0041】
この図に示すように、4つのコンデンサ41〜44が並列に配置されており、4つのコンデンサ41〜44がそれぞれ直流電源電圧45〜48に接続されている。4つのコンデンサ41〜44内では金属配管50内部の異物49の検出を行うことができる。
【0042】
図8は本発明の第2実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサ部をプローブとする回路図である。
【0043】
交流LRC回路の直列共振現象を利用した非破壊検査用キャパシタンスセンサについて説明する。
【0044】
図8において、51は抵抗(R)、52はその抵抗51に直列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。53はセンサ部52に直列に接続されるインダクタンス(L)、54は抵抗(R)51とインダクタンス(L)53との間に接続される交流電源電圧(V)である。
【0045】
図8に示すような交流LRC回路構成とした場合、適当なL,C,Rに対し、特定の交流周波数で回路が共振状態となる。
【0046】
共振回路の共振周波数は、
ω0 =1/√LC …(5)
で与えられる。
【0047】
図9は本発明に係る共振電圧に対する出力の周波数依存性を示す図である。
【0048】
ω=ω0 のとき、共振電圧となり、それ以外のωでは出力電圧は小さなものとなる。回路定数を適当に選んでやることにより、ピークは急峻となり、S/Nを向上することができる。
【0049】
ここで、センサ部52のコンデンサC2に非破壊検査用測定対象物を作用させることにより、上記(4)式においてCの値が変化したとすると、共振周波数ω0 がシフトし、共振しなくなる。逆に、測定対象物の物理量にあらかじめ共振条件を合わせておけば、センサが対象物をとらえた際に共振させることができる。
【0050】
図10は本発明の第3実施例を示す直流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【0051】
この図において、61は抵抗(R)、62はその抵抗61に並列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。63はセンサ部62に並列に接続されるインダクタンス(L)、64は抵抗(R)61とセンサ部62とインダクタンス(L)63との並列回路に接続される直流電源電圧(V)である。
【0052】
図11は本発明の第4実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【0053】
この図において、71は抵抗(R)、72はその抵抗71に並列に接続されるセンサ部であり、コンデンサC1とC2とが並列に接続されている。73はセンサ部72に並列に接続されるインダクタンス(L)、74は抵抗(R)71とセンサ部72とインダクタンス(L)73との並列回路に接続される交流電源電圧(V)である。
【0054】
このように、並列LRC共振方式のコンデンサをプローブとすることができる。
【0055】
上記のように構成することにより、
(1)非破壊検査用装置として適用することができ、金属配管のクラックや金属配管内の異物などを検出することができる。
【0056】
(2)非破壊検査装置として適用することができ、金属配管やタンクなどに測定対象物が満たされているか否かの検知が可能である。
【0057】
(3)誘電率検知装置として適用することができ、コンデンサ部(センサ)を利用して測定対象物の誘電率の測定が可能である。
【0058】
(4)液面計として適用することができ、タンクなど満液(ガス)警報装置やガス漏れ検知装置として利用できる。
【0059】
更に、実施態様を具体的に示すと、
(5)測定対象物が金属配管であり、この金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することができる。
【0060】
(6)測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管に生成したクラックを検出することができる。
【0061】
(7)測定対象物が非金属配管であり、この非金属配管内の異物を検出することができる。
【0062】
(8)測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物に生成したクラックを検出することができる。
【0063】
(9)測定対象物が金属建造物であり、この金属建造物内の異物を検出することができる。
【0064】
(10)測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成したクラックを検出することができる。
【0065】
(11)測定対象物が非金属建造物であり、この非金属建造物に生成した剥離を検出することができる。
【0066】
上記したように種々の測定対象物を有し、それらの異常な態様を容易に検出することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の非破壊検査用キャパシタンスセンサは、液面計として適用することができ、タンクなど満液(ガス)警報装置やガス漏れ検知装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例を示す直流方式の直列LRC回路のコンデンサをプローブとする非破壊検査用装置の回路図である。
【図2】本発明の第1実施例を示すセンサ部に金属物が挿入された場合を示す図である。
【図3】本発明のプローブとしてのセンサ部に金属物が挿入された場合の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示すセンサ部に誘電体が挿入された場合を示す図である。
【図5】本発明のプローブとしてのセンサ部に誘電体が挿入された場合の等価回路を示す図である。
【図6】本発明の非破壊検査装置としてのクラックや異物検知例を示す模式図である。
【図7】本発明の応用例としてのセンサ部(プローブ)を多数配置した多センサ型非破壊検査装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【図9】本発明に係る共振電圧に対する出力の周波数依存性を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示す直流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【図11】本発明の第4実施例を示す交流LRC共振方式のコンデンサをプローブとする回路図である。
【符号の説明】
【0070】
1,51,61,71 抵抗(R)
2,52,62,72 センサ部(コンデンサC1とC2との並列接続)
3,53,63,73 インダクタンス(L)
4,45〜48,64 直流電源電圧(V)
11 金属物
21 誘電体
31,50 金属配管
32 クラック
33,49 金属配管内部の異物
41〜44 4つのコンデンサ
54,74 交流電源電圧(V)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
該電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとすることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記LRC回路が直列LRC回路又は並列LRC回路であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項3】
請求項2記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が直流電源であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項4】
請求項2記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が交流電源であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項5】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物のプローブは、2個の並列接続されたコンデンサからなることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項6】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項7】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項8】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項9】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、該非金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項10】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、該非金属配管内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項11】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、該金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項12】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、該金属建造物内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項13】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、該非金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項14】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、該非金属建造物に生成した剥離を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項15】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記プローブを並列に複数個配置し、その複数個のプローブで前記測定対象物の測定を行うことを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項1】
電源と、
該電源に接続される、LRC回路のコンデンサを測定対象物のプローブとすることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記LRC回路が直列LRC回路又は並列LRC回路であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項3】
請求項2記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が直流電源であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項4】
請求項2記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記電源が交流電源であることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項5】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物のプローブは、2個の並列接続されたコンデンサからなることを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項6】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項7】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項8】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属配管であり、該金属配管に生成した析出物(酸化物)を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項9】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、該非金属配管に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項10】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属配管であり、該非金属配管内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項11】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、該金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項12】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が金属建造物であり、該金属建造物内の異物を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項13】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、該非金属建造物に生成したクラックを検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項14】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記測定対象物が非金属建造物であり、該非金属建造物に生成した剥離を検出することを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【請求項15】
請求項3又は4記載の非破壊検査用キャパシタンスセンサにおいて、前記プローブを並列に複数個配置し、その複数個のプローブで前記測定対象物の測定を行うことを特徴とする非破壊検査用キャパシタンスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−224409(P2008−224409A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62930(P2007−62930)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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