説明

非移動性フロアマット

上部層に接着された基部層を有するマット。マットの基部層は基部層の底面に沿った複数の凹部を含んでおり、凹部の深さは基部層の深さを越えない。マット底面の凹部の配列は、マットの縁部に沿って凹部がより多く集中するようになっている。マットの上部層はカーペットタフト層であることが好ましい。使用中、いったん歩行または運搬具の行き来など最初の力がマットに加えられると、マットの凹部はマットをマットが置かれた面に吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に滑り防止マットに関し、特に、マット下面に吸引カップを有するマットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムで裏打ちされたフロアマットは、その上を歩行すると、木、コンクリートまたはタイルなどの面に沿って移動する傾向があることが知られている。この移動は最終的にはつまずきの危険を生じさせることがある。さらに、マットを適正位置に戻すため、余計な作業や時間を費やさねばならない。従って、こうした問題を克服するため、従来各種の滑り防止または滑り止め構成が用いられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歴史的に見ると、マットの底面に滑り止めを付加することで、マットが置かれた面を良好に把持することができるようにし、それによって移動を少なくしている。しかし、この方法は滑らかなフロア、特に行き来の多い場所やその上で荷物の移動がなされるフロアでのマットのずれを防止するものではなかった。このずれはマットに対する足や運搬具の行き来による力に起因するものであるが、圧縮された領域の周囲に変形を生じさせ、その後こうした力がなくなると、マットは別の位置に戻ることになる。
【0004】
マットの移動を減少または除去するため、フロアマットとともに留め具も用いられている。例えば、マットを特定面に固定するため、クリップが用いられている。さらに、マットを特定面に固定するため、フレームが用いられている。また、マットを面に固定するため、マット底部に沿って配置されたテープ、接着剤、フック、VELCRO(登録商標)などのループファスナーも用いられている。しかし、これらの方法はマットのコストばかりでなく、設置の困難さも増大させる。さらに、こうした装置はマットが固定される面を損傷させることがある。
【0005】
面に沿ったマットのずれを減少し除去するもう一つの従来方法は、マット底面に沿って吸引カップを付加することである。この方法は、浴室、シャワー室など行き来が少なく負荷の軽い場所での適用についてはまずまずの滑り防止を提供するが、こうした吸引カップは、食料品店などの行き来が多く負荷の高い場所での滑りや移動を防止するのに十分な滑り止め力を与えるものではない。さらに、従来の吸引カップは、結局は波状のマット面をもたらし、人や荷物の横断が一層困難になることがある。また、吸引カップは薄肉の縁部を有する傾向があり、マット使用中または洗浄中にマットから欠け落ちることがある。
【0006】
従って、それが置かれた面に沿ったマットの移動をなくするよう改良されたマット構成が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下は、本発明の態様に関する基本的知識を与えるための簡単な発明の要約を提示する。この要約は本発明の包括的な概要ではない。本発明の主要または重要な要素を特定したり、本発明の範囲を定めたりすることを意図するものではない。その唯一の目的は、後で述べる詳細な説明の前提として、簡潔な形で発明の概念を提示することである。
【0008】
簡潔に記載した主態様によれば、本発明は上部層に接着された基部層を有するマットである。マットの基部層は基部層の底面に沿った複数の凹部を含んでおり、凹部の深さは基部層の深さを越えない。マット底面の凹部の配列は、マット縁部に沿って凹部の密度が大きくなるようなものであろう。マットの上部層はカーペットタフト層であることが好ましい。使用中、いったん歩行または運搬具の行き来など最初の力がマットに加えられると、マットの凹部はマットをマットが置かれた面に吸引する。マットの基部層は、マット底面が滑らかになるように滑らかな成形型に積層することによって、柔軟かつ低デュロメータ硬さのゴムコンパウンドで形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一特徴は、マット底面に沿って複数の凹部を有するマットを用いることである。いったん最初の力が加えられると、これらの凹部は効果的にマットを面に固定する。さらに、凹部は、吸引カップを含む大半のマットのように、波状のマット面をもたらすことはない。凹部は大半の吸引カップのように薄肉の縁部を有さず、その代わりマット底部に成型されるので、凹部はその形状をよりよく保持することができ構造的にも堅固であり、それによってマットをより耐久性にする。
【0010】
本発明の別の特徴は、特定パターンの複数の凹部を有するマットを用いることである。このパターンは、マット縁部に沿ってより多く集中していることでマット縁部が捩れたりしわが寄るのを防ぐ。
【0011】
本発明のさらに別の特徴は、滑らかな底面を有するマットを用いることである。底面の滑らかさは、フロア面の接触が増大するので、より高い摩擦係数をもたらし、吸引を容易にする。従って、面に沿ったマットの移動が最小限になる。
【0012】
本発明のさらに別の特徴は、柔軟かつ低デュロメータ硬さのゴム材料で形成されたマットを用いることである。ゴムの柔軟性は、マットを面に固定するに際し、マットの凹部と滑らかな裏打ちの両方の効果を向上させる。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、図面とともに下記に提示した好適な実施例の詳細な説明を注意深く読むことで、当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1、図2に示したように、本発明は上面13、底面16を持つ基部層12を有するマット10である。マット10の底面16は複数の凹部14を含んでいる。好適な実施例において基部層12の上面3は、カーペットタフトなどの織物製の上部層18に積層または接着される。本発明によって意図されているのは、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン繊維を含む任意の種類の織物を上部層18に使用可能である点である。あるいは、マット10は織物製の上部層8をまったく含まない。上部層18がマット10に含まれる場合、上部層18の厚さは約0.100〜1.00インチであることが好ましい。
【0015】
基部層12はゴム製であることが好ましい。しかし、NORDEL(登録商標)の商標でデュポンから販売されているEPDM、またはPOLYSAR(登録商標)の商標でポリコーポレーションから販売されているSBR(スチレンブタジェン)など他のポリマーも使用可能である。基部層12は硬度が約20〜70デュロメータのゴム製であることがより好ましく、硬度が約30〜50デュロメータのゴム製であることが最も好ましい。
【0016】
前述のように、柔軟かつ低デュロメータ硬さのゴム材料製である基部層12を用いることが本発明の特徴である。ゴムの柔軟性は、マット10を面に固定するに際し、マットの凹部14の有効性を向上させる。
【0017】
凹部14は、格子配列をもたらす平行および垂直の列に配置することが好ましい。凹部14の大部分はマット10の底面16に沿って均等に間隔があいているが、マットの縁部に沿ってより多く集中して凹部14がある。凹部14の間隔の有効範囲は約3〜10インチである。最も好ましくは、間隔Aで示した、マット10の縁部に沿った最も外側の2列の凹部14間の間隔は約3インチであるのに対し、間隔Bで示した、残りの列の凹部14間の間隔は約6インチである。前述のように、この特定の配列が本発明の特徴であるが、と言うのは、マット10の縁部が捩れたりしわが寄り、それによってつまずきの危険を生じるのを防ぐのに役立つからである。凹部について、ランダムパターンを含む任意の好適なパターンをマット底部に使用可能である点を理解されたい。
【0018】
凹部14の形状および大きさはマット10の最終使用目的によって変わりうるが、凹部14は、直径C、マット10の基部層12の深さEより小さい深さDの円筒状またはくぼんだ円状に形成することが好ましい。直径Cは約1インチ、深さDは約0.125インチ、深さEは約0.140〜0.250インチであることが最も好ましい。最も好適な実施例において、凹部14は形状が円筒状であり、凹部の側壁20は、図2に示すように、基部層12の底部平面16に実質的に垂直である。しかし、凹部の形状がマット底面の平面の滑らかさを決して妨げたり乱したりすることがない限り、凹部を四角または菱形など他の形状に形成してもよい点を理解されたい。特に有用な凹部の一形状は錐台形である。錐台状凹部を用いた各実施例を図2A、図2Bに示す。図2Aにおいて、錐台状凹部は、錐台の基部がマット底面に近接配置されるように配向されている。逆に、図2Bは、錐台の頂部がマット底面に近接配置されるように配向された錐台状凹部を示している。
【0019】
マット10の基部層12は、図3に示すように、ゴムなどの材料を成形型30に積層することによって形成される。成形型30は、凹部14の形成に用いられる複数の突起部32を有する滑らかな平板であることが好ましい。平板は、鋼、アルミニウム、セラミックスなどの材料、またはパターン状に成型または機械加工可能であり滑らかな表面を有する任意の他の材料からなるものでよい。アルミニウム平板を用いると有利であるが、と言うのは、アルミニウムは容易に熱を伝達し、急速に加熱・冷却するからである。また、他の金属より軽く、他の材料より容易に成型、機械加工、形成可能である点でもアルミニウムは好ましい。得られる基部層12は滑らかなまたはすべすべした底面16を伴って形成される。上述のように、滑らかな底面16を有することは、マット10の摩擦係数を増大するとともに、フロア面に対する吸引作用を容易にする。従って、面に沿ったマット10の移動は減少し最小限になる。基部層12が形成されたなら、次に織物製の上部層18に積層または接着される。
【0020】
使用中、歩行または運搬具の行き来など最初の力が加えられてから、マット10はフロア面に吸引されるようになる。こうした力が加えられた後、マット10の凹部14は変形し、凹部14に含まれていた空気の少なくとも一部は排出され、凹部14内に低圧領域または近真空を生じさせることによって吸引力を生じさせる。滑らかな底面16および柔軟かつ低デュロメータ硬さのゴムを用いることに加えて、マット10を面に吸引する凹部14を用いることで、面に沿ったマット10の移動が最小限になる。組み合わせて用いると、こうした構成は、吸引面に沿ったマット10のゼロ移動をもたらす。本明細書において用いられる限りでは、「ゼロ移動」はKexウォークテストに基づくマット移動の計算(単位:インチ)のことをいう。Kexウォークテストでは、テープなどのマーカをマット10の各角部の下に置き、マット10の初期位置を指定する。その後、人がマット10上で歩いたり買物カートを押したりする。マット10が置かれたフロア面がどのような種類であるかに関して変動がありうる。一定数の通行が完了すると、マット10の初期位置とマット10の最終位置間の差(単位:インチ)が測定される。
【実施例】
【0021】
本発明をさらに説明するため、以下の非限定的な例を示す。この例は単に本発明の好適な実施例を例示するためにのみ提供され、どのような意味でも本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【0022】
例1
マットサイズ3フィート×10フィート、重さ約21ポンド、かつ織物製の上部層に接着されたゴム製の基部層と、滑らかな底面と、直径約1インチで深さ約0.125インチの複数の凹部とを含む上記構成を有する第1マットを、上記Kexウォークテストにかけた。まず、マットを140°Fで非イオン洗浄剤を用いて洗浄した。その後、マットを硬質タイルフロア面のテープマーカ上に置いた。次に、歩行者が、カートの総重量が100ポンドになるように物を載せた買物カートを押しながら、マット上を50回通行した。
【0023】
比較として、マットサイズ3フィート×10フィート、重さ約12ポンドの第2マットを、同様のKexウォークテストにかけた。第2マットも織物製の上部層に接着されたゴム製の基部層を含んでいる。しかし、第2マットは滑らかな底面と複数の凹部とを含んでいない。特に、第2マットはマットの底面に滑り止めを設けている。このマットも140°Fで非イオン洗浄剤を用いて洗浄した。その後、マットを硬質タイルフロア面のテープマーカ上に置いた。次に、歩行者が、カートの総重量が100ポンドになるように物を載せた買物カートを押しながら、マット上を50回通行した。
【0024】
歩行者と買物カートの通行が完了した後、通行前後の第1、第2マットの各位置間の差を比較することによって、各マットの移動を測定した。結果は次の通りである。
【0025】
【表1】

【0026】
従って、この例は、この技術分野において周知の他のマットに対して、本発明のマット10の滑り防止構成が有効であることを立証している。
【0027】
最終的には、特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれると意図される、本発明の代替実施例および変形例が数多くある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好適な実施例によるマットの下面の斜視図である。
【図2】本発明の好適な実施例による2−2線に沿ったマットの横断面図である。
【図2A】2−2線に沿ったマットの代替実施例の横断面図である。
【図2B】2−2線に沿ったマットの別の代替実施例の横断面図である。
【図3】本発明の好適な実施例によるマット成形型の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マットであって:
上面と、底面と、深さEとを有する基部層を備え、前記底面は複数の凹部を含み、前記複数の凹部の少なくとも1つの凹部は深さDを有し、前記深さDは前記基部層の深さEより小さく、空気の少なくとも一部が前記複数の凹部内から排出されかつ前記マットが面に係合する時、前記複数の凹部は吸引力を提供するマット。
【請求項2】
請求項1記載のマットであって、前記基部層の上面に接着された上部層をさらに備えるマット。
【請求項3】
請求項2記載のマットであって、前記上部層は織物製であるマット。
【請求項4】
請求項2記載のマットであって、前記上部層は厚さが約0.100〜1.00インチであるマット。
【請求項5】
請求項1記載のマットであって、前記基部層はゴム製であるマット。
【請求項6】
請求項5記載のマットであって、前記ゴムは硬度が約20〜70デュロメータであるマット。
【請求項7】
請求項1記載のマットであって、前記基部層はEPDMおよびSBRからなる群より選択される材料製であるマット。
【請求項8】
請求項1記載のマットであって、前記底面は滑らかであるマット。
【請求項9】
請求項1記載のマットであって、前記深さEは約0.140〜0.250インチであるマット。
【請求項10】
請求項1記載のマットであって、前記深さDは約0.125インチであるマット。
【請求項11】
請求項1記載のマットであって、前記複数の凹部の各凹部は円筒状であり、直径が約1インチであるマット。
【請求項12】
請求項1記載のマットであって、前記複数の凹部の各凹部は複数の列状に配置されるマット。
【請求項13】
請求項12記載のマットであって、前記複数の凹部は前記列の最も外側の2列間で間隔A、前記列の残りの列間で間隔Bを有するマット。
【請求項14】
請求項13記載のマットであって、前記間隔Aは約3インチであるマット。
【請求項15】
請求項13記載のマットであって、前記間隔Bは約6インチであるマット。
【請求項16】
マットであって:
上面と底面とを有する基部層を備え、前記底面は少なくとも1つの凹部を含む滑らかな平面であり;
空気の少なくとも一部が前記凹部内から排出されかつ前記マットが面に係合する時、前記凹部は吸引力を与えるマット。
【請求項17】
請求項16記載のマットであって、前記凹部は前記滑らかな平面の底面に対し実質的に垂直な関係で伸長する複数の側壁をさらに含むマット。
【請求項18】
請求項16記載のマットであって、前記凹部はほぼ円筒状に形成されるマット。
【請求項19】
請求項16記載のマットであって、前記基部層の底面は複数の前記凹部を含むマット。
【請求項20】
請求項19記載のマットであって、前記凹部はパターンを形成するマット。
【請求項21】
請求項16記載のマットであって、前記基部層の上面に接着された上部層をさらに含むマット。
【請求項22】
請求項21記載のマットであって、前記上部層は厚さが約0.100〜1.00インチであるマット。
【請求項23】
請求項16記載のマットであって、前記基部層はゴム製であるマット。
【請求項24】
請求項23記載のマットであって、前記ゴムは硬度が約20〜70デュロメータであるマット。
【請求項25】
請求項16記載のマットであって、前記基部層はEPDMおよびSBRからなる群より選択される材料製であるマット。
【請求項26】
請求項16記載のマットであって、前記基部層は深さEが約0.140〜0.250インチであるマット。
【請求項27】
請求項16記載のマットであって、前記凹部は深さDが約0.125インチであるマット。
【請求項28】
請求項19記載のマットであって、前記複数の凹部の各凹部は円筒状であり、直径Cが約1インチであるマット。
【請求項29】
請求項19記載のマットであって、前記複数の凹部の各凹部は複数の列状に配置されるマット。
【請求項30】
請求項29記載のマットであって、前記複数の凹部は前記列の最も外側の2列間で間隔A、前記列の残りの列間で間隔Bを有するマット。
【請求項31】
請求項30記載のマットであって、前記間隔Aは約3インチであるマット。
【請求項32】
請求項30記載のマットであって、前記間隔Bは約6インチであるマット。
【請求項33】
請求項16記載のマットであって、前記凹部は錐台状に形成されるマット。
【請求項34】
請求項33記載のマットであって、前記錐台状凹部は、前記錐台の基部が前記マットの底面に近接するように配設されるマット。
【請求項35】
請求項33記載のマットであって、前記錐台状凹部は、前記錐台の頂部が前記マットの底面に近接するように配設されるマット。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−502145(P2007−502145A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523186(P2006−523186)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021789
【国際公開番号】WO2005/018992
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】