説明

非糖質成分の粉末化方法及び粉末化基剤

非糖質成分の粉末化方法、粉末化方法により調製される粉末組成物及び非糖質成分の粉末化基剤を提供することを課題とし、非糖質成分に、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめて粉末化する粉末化方法を提供し、この方法により調製された粉末組成物及びこの糖質誘導体を有効成分として含有する非糖質成分のための粉末化基剤を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、香気、色調、混濁、特にフレーバーの保留性及び安定性に優れ、嗜好性の高い香味及び外観を有する非糖質成分の粉末組成物を調製するための粉末化方法に関し、詳細には、非糖質成分と、α,α−トレハロースの糖質誘導体とを含む混合物を粉末化することを特徴とする粉末化方法、その粉末化方法により調製された粉末組成物、及び、この粉末化方法に使用する非糖質成分のための粉末化基剤に関する。
【背景技術】
近年、液状やペースト状の各種非糖質成分を粉末化し、その水分の減少を図ることにより、運搬や貯蔵時の利便性を改善することが行われている。また、特に、食生活の向上と多様化にともない、飲食品にあっては、好ましいフレーバー、色調、水への溶解性、機能等を長期間安定に保持する目的で、これら飲食品の粉末化が行われている。一般に、これらの非糖質成分の粉末化には、その水溶液に植物性天然ガム質、澱粉、水溶性セルロース誘導体、デキストリン、低DEの水飴、麦芽糖などを粉末化基剤として添加し、噴霧乾燥する粉末化方法が用いられてきている(例えば、特公昭56−44695号公報及び特公平6−14848号公報参照)。また、油溶性の香料や機能性物質の粉末組成物を調製するために、これらの成分と、トレハロース、乳化剤及び水とを含む混合物を乾燥する方法も提案されている(例えば、特開平9−107911号公報及び特開平9−187249号公報参照)。
しかしながら、例えば、これらの方法により噴霧乾燥して得られる粉末組成物は、その風味や機能の安定性の点で必ずしも満足できるものばかりではない。また、粉末デキストリンや低DEの水飴では、粘度が高く、老化しやすいことや水への溶解性が低いという問題があり、ガム質なども、粘度や異臭の発生などの問題があるものがある(例えば、特公昭56−44695号公報及び特公平6−14848号公報参照)。高DEの水飴や麦芽糖などを使用した場合には、一般に吸湿しやすく、また、還元性が高いため、保存時に褐変が発生する場合がある。さらに、現代の多様化した食生活に対応するためには、食品の味、香り、色、食感などの低下をもたらすことなく、しかも、安全な粉末化基剤のさらなる開発が望まれている。
一方、本出願人は、先に、特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許登録第3182679号公報、特開2000−228980号公報などにおいて、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する組成物を開示した。しかしながら、これらの特許文献には、α,α−トレハロースの糖質誘導体が非糖質成分の粉末化基剤として好適であることや、この糖質を使用した非糖質成分の粉末化方法に関する具体的な記載や示唆はない。
【発明の開示】
本発明は、非糖質成分を粉末化して保存する際に、その組織、形状、味、香り、色、食感などをよく保持し、有効成分の失活、栄養成分の消失などの品質の劣化や機能の低下を抑制することができる、粉末化方法を提供することを第一の課題とし、この粉末化方法により得られた粉末組成物を提供することを第二の課題とし、この粉末化方法で使用する非糖質成分のための粉末化基剤を提供することを第三の課題とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決する目的で、糖質の利用に着目し、非糖質成分の粉末化方法について長年に渡り研究を進めてきた。その結果、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有させて粉末化した、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、農薬、化学工業品などの粉末組成物が、保水性に優れ、しかも、吸湿性がほとんどなく、それらの非糖質成分が乾燥前に有していた組織、形状、味、香り、色、食感などの風味の低下、有効成分の失活、栄養成分の消失などの品質の劣化、或いは、機能の低下などが抑制されるという優れた特性を有することを見出し、非糖質成分にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめ、これを乾燥、粉末化する非糖質成分の粉末化方法を確立するとともに、この粉末化方法により製造した粉末組成物を確立し、更に、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する非糖質成分のための粉末化基剤を確立して、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明でいう非糖質成分の粉末化方法とは、液状或いはペースト状の非糖質成分を粉末に加工する方法をいう。粉末化の方法に特に制限はなく、液状或いはペースト状の非糖質成分を、乾燥して、粉末化する方法であれば、何れでもよく、ドラムドライヤー、乾燥プレート、オーブン、圧縮造粒機などで乾燥したり、凍結乾燥して調製される固状物や造粒したものを、パワーミルなどを使用して粉末化する方法も、当然、本発明に含まれる。また、上記のような方法により調製した粉末に、さらにコーティングを行う粉末の製造方法もこれに含まれる。なかでも、噴霧乾燥は、乾燥と粉末化が同時行えることから、特に望ましい。
本発明でいう非糖質成分とは、糖質のみで構成された成分を除く、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、農薬、化学工業品から選ばれる疎水性或いは親水性の成分であって、これらの製造に利用される、原料、中間製品、或いは、原料に手を加えて、製造された製品であれば何れでもよい。また、その形態は、液状、ペースト状、或いは、溶媒を加えて、液状、ペースト状とすることができるものであればいずれでもよく、例えば、畜産、水産、或いは農産品加工品、香料、油脂、色素、乳化剤、機能性物質、有機溶媒、農薬乳剤などを挙げることができる。これらの成分が、精油、油脂、脂肪酸やなどのように水に不溶性乃至難溶性の疎水性の成分からなる場合には、これに、アルコールや有機溶媒を加えて、溶液或いはペースト状とするか、水又は水と乳化剤を加え、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザーなどを使用して予め乳化し、液状或いはペースト状とし、これらを粉末化することも随意である。この水に不溶性乃至難溶性の疎水性成分には、香料、色素、機能性物質なども、当然、含まれ。また、その一部が糖質により構成されている成分も、本発明の非糖質成分に含まれる。
本発明でいう畜産、水産、或いは農産品加工品には、特に制限はなく、液状、ペースト状、或いは、溶媒を加えて、液状、ペースト状となるものであれば、何れでもよく、例えば、野菜や果実のジュース、青汁、野菜エキス、豆乳、ペプチド、ゴマペースト、ナッツペースト、生餡、糊化澱粉ペースト、小麦グルテンなどの農産品、ウニペースト、カキエキス、イワシペーストなどの水産品、レシチン、乳清、生卵、卵白、卵黄、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、などの畜産品、味噌、醤油、酢、みりん、新みりん、マヨネーズ、ドレッシング、鰹エキス、ミートエキス、昆布エキス、チキンエキス、ビーフエキス、酵母エキス、きのこエキス、甘草エキス、ステビアエキス、これらの酵素処理物、漬物用調味液などの調味料、各種スープ、日本酒、ワイン、ブランディー、ウイスキー、薬用酒などの酒類、緑茶、抹茶、紅茶、コーヒーなどの嗜好飲料、ハッカ、ワサビ、ニンニク、カラシ、サンショウ、シナモン、セージ、ローレル、ペッパー、柑橘類などから抽出される含水香辛料、燻液、醗酵液などの保存料などを挙げることができる。
本発明でいう香料は、特に制限されるものでなく、天然香料であっても、合成香料であっても、それらの混合物であってもよい。例えば、『最新化粧品科学 改訂増補II』、株式会社薬事日報社(平成4年7月10日発行)、『最新化粧品学』、株式会社南山堂(平成14年1月18日発行)、『香料の辞典』、株式会社朝倉書店(昭和57年8月20日発行)などに記載されている香粧品香料や食品香料などであり、具体的には、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類精油;ホップ、サルビア、カモミール、マンネンロウ、ユーカリ、ペパーミント、各種スパイス、スペアミント、ハーブなどの植物の花や葉などに由来する精油;コーラナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、紅茶エキストラクト、ココアエキストラクト、スパイスエキストラクト、ワニラエキストラクトなどの油溶性又これらの水溶性のエキストラクト、オレオレジン、アブソリュート、レジノイド、チンキ又は浸液、さらには、香木、ジャ香の抽出物などの天然香料、メントール、シオネール、ピネン、リモネン、オイゲノールなどの合成香料化合物、油性調合香料組成物及びこれらの任意の混合物などが挙げることができる。
本発明でいう色素は、特に制限されるものでなく、天然色素であっても、合成色素であっても、それらの混合物であってもよい。例えば、食品衛生法で食品添加物として認められている色素や『最新化粧品科学 改訂増補II』、株式会社薬事日報社(平成4年7月10日発行)、『最新化粧品学』、株式会社南山堂発行(平成14年1月18日発行)、『香料の辞典』、株式会社朝倉書店(昭和57年8月20日発行)などに記載されている飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品原料として使用が認められている色素などが挙げられる。具体的には、カロチノイド系、アントシアニン系、アントラキノン系、フラボノイド系、ポルフィリン系、ジケトン系、ベタシアニン系、フラビン系、キノン系の植物色素、感光素101号(プラトニン)、感光素201号(ピオニン)、感光素301号(タカナール)、感光素401号、プルラミン、ルミンなどの感光素、感光色素、食用色素、タール色素、三二酸化鉄、銅クロロフィリンナトリウム、さらには、セイヨウアカネ、ベニノキ、ウコン、パブリカ、レッドビート、ベニバナ、クチナシ、サフラン、紅麹菌などから抽出される色素などを挙げることができる。
本発明でいう機能性物質は、アミノ酸、ペプチド、蛋白質などのアミノ基を有する物質、インターフェロン−α、−β、−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキンIIなどのリンホカイン、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモンなどのホルモン、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物学的製剤、ペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生物質、チアミン、リボフラビン、L−アスコルビン酸、肝油、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェロールなどのビタミン、リパーゼ、エラスターゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼなどの酵素、高麗人参エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキス、プロポリスエキス、アガリクス、レイシ、メシマコブなどのキノコエキスなどのエキス、ウイルス、乳酸菌、酵母などの生菌、ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジン、ルチン、酵素処理ルチン、ナリンジン、酵素処理ナリンジン、プロアントシアニジンなどのフラボノイドやカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどのカテキンなどを含むポリフェノール、水溶性或いは脂溶性のビタミン、ミネラル、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHA及びEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸などの脂肪酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー、セージ、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油、キチン、キトサンなどをいう。また、前記以外の医薬品の有効成分や栄養機能食品用の原料、素材なども、当然、これに含まれる。
本発明でいう乳化剤とは、乳化作用を有する成分であれば何れでもよい。通常は、従来から、飲食品、医薬品、化粧品、化学工業品等に用いられている各種の乳化剤から、粉末化された組成物の用途に合わせて選択される。例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、レシチン、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、プルラン、サイクロデキストリン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、でん粉、澱粉の誘導体などを挙げることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、用いる乳化剤の種類等に応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、粉末化する組成物の1質量部に対し約0.01〜約50質量部、好ましくは約0.1〜約10質量部の範囲内が適当である。なお、乳化剤そのものを粉末化する場合には、この乳化剤と本発明の粉末化基剤のみを混合して粉末化することも随意である。
本発明の非糖質成分の粉末化方法において、粉末化基剤として使用するα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、何れでもよく、より具体的には、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合したものをいう。例えば、先に、本出願人が特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許登録第3182679号公報、特開2000−228980号公報などにおいて開示した、α−マルトシルα−グルコシド、α−イソマルトシルα−グルコシドなどのモノ−グルコシルα,α−トレハロースや、α−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコシド)、α−マルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−イソマルトシドなどのジ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−マルトテトラオシルα−グルコシド)、α−マルトシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトシドなどのトリ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース(別名α−マルトペンタオシルα−グルコシド)、α−マルトトリオシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトトリオシドなどのテトラ−グルコシルα,α−トレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよい。例えば、本出願人が、特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許登録第3182679号公報、特開2000−228980号公報などで開示した酵素法により澱粉や澱粉の部分加水分解物から直接製造してもよく、或いは、特開平7−143876号公報で開示したマルトテトラオース生成アミラーゼ、特公平7−14962号公報で開示したマルトペンタオースを高率に生成するα−アミラーゼ或いは特開平7−236478号公報で開示したマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼなどを使用して、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの特定のオリゴ糖の含量を高めた澱粉部分加水分解物とし、これに特開平7−143876号公報で開示した非還元性糖質生成酵素を作用させて製造することも随意である。また、澱粉、或いは、澱粉の部分解物とα,α−トレハロースとを含有する溶液にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどのグリコシル基の転移能を有する酵素を作用させて調製することも随意である。これらの方法により得られる反応液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質を含む溶液として、そのまま、又は、部分精製して、或いは、高純度に精製して使用することも随意である。また、これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率かつ安価にα,α−トレハロースの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に利用できる。
前述のα,α−トレハロースの糖質誘導体のうち、とりわけ、グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロースなど、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が、低DEであるにも関わらず、粘度が低く、香気、香味などの保持能をはじめとする、粉末組成物の品質の保持能が特に高く、また、加工適正に優れていることから、本発明に有利に利用できる。この糖質の一例としては、特開平7−143876号公報に開示されたα−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコシド)を主成分として含有し、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース(別名α−マルトシルα−グルコシド)、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−マルトテトラオシルα−グルコシド)、α−グリコシルα,α−トレハロース(別名α−グリコシルα−グルコシド)から選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましく、とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で約30質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量%」を単に「%」と表記する。)以上、さらに望ましくは50%以上含有する糖質が望ましい。これらの糖質のDEは、約20以下、望ましくは16以下が、メーラード反応を起こしにくいなどの点から望ましい。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップの粘度は、噴霧乾燥などの際の加工適正やエネルギー効率の点から、濃度70%で、25℃の時、約10000mPa・s以下であればよく、好ましくは約3000mPa・s以下、とりわけ、約1500mPa・s以下が望ましい。
また、本発明の粉末化方法において使用する、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する粉末化基剤は、その形状を問わず、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、粉末などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して使用することも随意である。
また、本発明の粉末化方法は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を、対象とする、例えば、液状又はペースト状などの形態の非糖質成分に含有せしめて乾燥することにより、所期の効果を発揮することができる。従って、いずれの分野でも、本発明の粉末化方法において、有効成分として非糖質成分に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、対象とする非糖質成分の組成や使用目的を勘案して、原料の段階から乾燥する段階に至るまでの適宜の工程で利用することができる。
本発明の粉末化方法においては、有効成分のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、目的の非糖質成分を粉末化するまでの段階で、含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、被覆(コーティング)などの公知の方法が適宜に選ばれる。
本発明の有効成分としてα,α−トレハロースの糖質誘導体を、乾燥前の非糖質成分に含有せしめる量は、粉末化基剤としての機能を発揮できる量であればよく、特に制限はない。通常、粉末組成物の総質量に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、約5%以上、望ましくは、約10%以上を含有せしめるのが好適であり、約20%以上が特に望ましい。通常約1%未満では、粉末化基剤としての機能を発揮するには不充分である。α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有させる量の上限については、対象とする非糖質成分の機能或いは使用目的などの妨げとならない限り特に制限はない。
本発明のα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する粉末化基剤は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、総質量の約10%以上、望ましくは、約20%以上、更に望ましくは約30%以上含有するものが好適である。
本発明の粉末化基剤は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、例えば、α,α−トレハロースの糖質誘導体の製造工程において共存するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどの澱粉由来のα,α−トレハロースの糖質誘導体以外の糖質を含有していてもよい。更には、α,α−トレハロースの糖質誘導体とそれ以外の還元性糖質とを含む糖質を水素添加し、共存する還元性糖質を、その糖アルコールに変換したものであってもよい。
本発明の粉末化基剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、デキストリンや水飴などの還元性澱粉部分分解物と比較して、還元性が低く(低DE)、酸や熱に対して安定であり、他の素材、特にアミノ酸やオリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質などのアミノ酸やアミノ基を有する物質と混合、加工しても、着色や褐変することも、異味や異臭を発生することもなく、混合した他の素材の風味を損なうことも少ない。また、還元性澱粉部分加水分解物の場合とは違って、低粘度で、しかも、糊感のない滑らかな粘性を有し、デキストリンにみられる糊臭もなく、低吸湿性、易乾燥性、ベタ付き抑制、即溶性などの優れた機能を有している。また、その味質も、低甘味ながら、良質で上品な、きれのよい後味の甘味を有しており、そのままで、粉末化基剤として有利に使用することができる。必要ならば、分散性を高めたり、増量するなど、その使用目的に応じて、前記以外の還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール、高甘味度甘味料、水溶性多糖類、有機酸、無機酸、塩類、乳化剤、酸化防止剤、キレート作用を有する物質から選ばれる1種又は2種以上と併用することも随意である。更に必要であれば、公知の着色料、着香料、保存料、酸味料、旨味料、甘味料、安定剤、増量剤、アルコール類、水溶性高分子などの1種又は2種以上を適量併用することも随意である。
具体的には、例えば、粉飴、グルコース、マルトース、ショ糖(砂糖)、パラチノース、α,α−トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、異性化糖、蜂蜜、メープルシュガー、砂糖結合水飴、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロース、同じ出願人が国際公開WO 02/24832号明細書、国際公開WO 02/10361号明細書、国際公開WO 02/072594号明細書などにおいて開示した環状四糖及び/又は環状四糖の糖質誘導体などの還元性或いは非還元性の糖質、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パニトールなどの糖アルコール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムK、スクラロース、サッカリンなどの高甘味度甘味料やグリシン、アラニンなどのような他の甘味料、リン酸、ポリリン酸、或いは、それらの塩類など無機塩類の1種又は2種以上の適量と混合して使用してもよく、又、必要ならば、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。更に、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどのような有機酸やそれらの塩、サポニン、フラボノイド、茶カテキン、ブドウ種子抽出物などのポリフェノール類及び/又はエタノールなどのアルコール類、レバン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カゼイン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリデキストロースなどの水溶性高分子の1種又は2種以上と組み合わせて使用することも随意である。
本発明の方法で得られる粉末組成物は、これに含まれるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、香気、香味、色調などの優れた保持能を有していることに加えて、加熱、乾燥時や保存時の蛋白質の変性、糊化澱粉の老化、脂質の酸化や分解などをはじめとする品質の劣化を抑制するので、製造直後の風味や機能が長期間保持される。
本発明の方法で得られた粉末組成物は、その用途や分野により異なるものの、例えば、粉末農水畜産品、粉末油脂、粉末香料、粉末着色料、粉末乳化剤、粉末保存料、粉末生理活性物質及び/又は粉末機能性物質などは、粉末醤油、粉末味噌、粉末すし酢、粉末スープ、粉末鰹ダシ、粉末みりん、粉末新みりんなどの粉末調味料やふりかけとしてそのままで、或いは粉末調味料やふりかけの製造用の原料として利用できる。また、非糖質成分の用途によっては、本発明の粉末化方法の工程の途中で調製される、乾燥した固状や造粒された非糖質成分を粉末化することなく、そのままの形態で利用することも随意である。
また、これらは、例えば、せんべい、あられ、おこしなどの米菓類、求肥、もなか、餅、おはぎ、まんじゅう、かるかん、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、きんつば、スィートポテト、ゼリー、ハバロア、カステラ、飴玉などの各種和菓子、ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、ペストリー類などの焼き菓子、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、チョコレート、チューインガム、ヌガー、ゼリービーンズ、キャラメル、マシュマロをはじめとするソフトキャンデイ、ハードキャンディ、フォンダント、アイシングなどの洋菓子、スナック菓子、シリアル、センターリキッド菓子、メレンゲ菓子、食パン、ロールパン、アンパン、マフィンなどのパン類、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッドなどのペースト類、ジャム、マーマレード、プレザーブ、シロップ漬、糖果、カット果実などの果実の加工品類、もやし、アルファルファ、ブロッコリースプラウトなどの発芽野菜、青汁などの野菜ジュース、カット野菜、サラダ、野菜の煮物などの野菜の加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬、たくわん漬、白菜漬やそれらのつけものを製造するための浅漬けの素などの漬物の素類、白飯、おにぎり、おこわ、おかゆ、寿司飯、炊き込みご飯、α化米などの米飯類、豆乳、豆腐、高野豆腐、納豆などの豆の加工品類、うどん、和そば、ラーメン、パスタなどの麺類、お好み焼き、たこ焼き、鯛焼き、コロッケ、餃子、シュウマイ、春巻き、ハムやソーセージなどの畜肉加工品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、天ぷらなどの魚肉加工品類、ウニ、イカの塩辛、酢こんぶ、さきするめ、ふぐのみりん干し、いくら、味付け海苔などの各種珍味類、焼き肉、蒲焼き、団子、煎餅などの味付けに使用するたれ類、海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、こんぶ巻などの惣菜食品、卵、オムレツ、卵焼き、茶碗蒸しなどの卵加工品類、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品類、魚肉、畜肉、果実、野菜、あるいは、これら飲食品の冷凍品、冷蔵品、チルド品、レトルト品、乾燥品、凍結乾燥品、更には、野菜のビン詰類、缶詰類、プリンミックス、ホットケーキミックス、バッターミックスなどのミックス類、即席しるこ、即席スープなどの即席食品、離乳食、治療食、ペプチド食品、清酒、合成酒、リキュール、洋酒、ビール、発泡酒などの酒類、お茶、紅茶、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水など製造原料、中間製品として各種飲食品の製造に有利に利用できる。
さらには、家畜、家禽、ペット、その他蜜蜂、蚕、魚介類、エビ、カニなどの甲殻類、ウニ、なまこなどの棘皮動物、昆虫などの飼育動物の幼虫、幼体、成体のための飼料、餌料の製造原料として使用することも随意である。その他、タバコ、錠剤、トローチ、肝油ドロップ、口紅、リップクリーム、練歯磨、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤などの嗜好品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、農薬、化学工業品などの固状、ペースト状、液状などの製品の製造原料、中間製品としても利用できる。
これら、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、農薬及び化学工業品などに配合される本発明方法で得られる粉末組成物の使用量は、その製品の種類、形態などにより異なるが、一般的には、製品の総質量に対して、約0.001%〜約100%の範囲内で使用することができる。
以下、実験例に基づいて本発明の非糖質成分の粉末化方法についてより詳細に説明する。
実験例1
試験標品として、水567質量部に、後述する実施例A−2の方法に基づいて調製した粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体(無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−グルコシルα,α−トレハロース 4.1%を含有)225質量部及び5倍濃縮したレモン果汁(東京フードテクノ株式会社販売、ブリックス41%)183質量部を加えて溶解した。この溶液を、卓上型噴霧乾燥機(EYELA社製「SD−1」)を使用して、入口温度約140℃、出口温度約75℃にて噴霧乾燥し、レモン果汁粉末を調製した。対照品としてα,α−トレハロースの糖質誘導体に代えてデキストリン(株式会社林原商事販売、商品名「サンデック#180」)を同量使用した他は、同様に行いレモン果汁粉末を得た。これらの標品を、ポリ袋に入れて室温にて3ケ月間保存した。試験標品又は対照品30質量部を水170部に溶解した溶液を調製した。それぞれの溶液を、パネラー11名にて試飲し、レモン果汁の香気及び香味の官能評価を行った。その結果、パネラーの全員が、α,α−トレハロースの糖質誘導体を加えて粉末化したレモン果汁粉末の水溶液は、保存による劣化臭は認められず良好なレモン果汁の香気及び香味を保持していると評価した。これに対して、対照品は、保存による著しい劣化臭が認められると評価した。このことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、粉末果汁の保存安定性に優れた効果を発揮し、極めて有用であることが判明した。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、従来から、粉末化基剤として使用されているデキストリンよりも、粉末組成物の品質の低下を抑制し、その風味を保持する機能に優れた粉末化基剤であることが確認された。
実験例2
試験標品として、水130質量部に、後述する実施例A−1の方法に基づいて調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体60質量部(無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−グルコシルα,α−トレハロース 4.1%を含有、濃度70%)及びアラビアガム50質量部を加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱した。これを40℃に冷却し、ライムオイル10質量部を添加混合した後、ホモミキサーで乳化した。この液を実験1と同様に、卓上型噴霧乾燥機を使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、ライム粉末香料を調製した。対照品としてα,α−トレハロースの糖質誘導体に代えてショ糖を同量使用した以外は、試験標品と同様にしてライム粉末香料を調製した。この試験標品又は対照品の何れか0.1質量部を、グラニュー糖42.4質量部、グルコース24.0質量部、クエン酸2.0質量部、クエン酸ナトリウム1.0質量部、ビタミンC0.5質量部を混合して粉末飲料を調製した。調製した粉末飲料の50gをそれぞれポリ袋に入れ、37℃にて3ケ月間保存した。この粉末飲料7質量部を水100質量部で希釈し、パネラー11名にて試飲し、香気及び香味の官能評価を行った。その結果、パネラーの全員が、α,α−トレハロースの糖質誘導体を加えて粉末化したライムオイルを使用して調製した飲料は、保存による劣化臭は認められず良好な香気及び香味を保持していると評価した。これに対して、対照品は、保存による著しい劣化臭が認められると評価した。このことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、粉末香料の保存安定性に優れた効果を発揮し、香料の粉末化基剤として極めて有用であることが判明した。
以下に、本発明の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する粉末化基剤の具体的な例を実施例Aで、この粉末化基剤を含有せしめて調製した粉末組成物の例を実施例Bで具体的に挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例A 粉末化基剤
以下の実施例に示す、粉末化基剤は、いずれも、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、日用品、雑貨、農薬、化学工業品をはじめとする非糖質成分に含有させて、これを粉末化することにより、粉末組成物の品質の劣化を抑制し、粉末組成物の味、香り、色、食感などの風味や機能を良好に保持することができる。
実施例A−1
濃度20%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.5に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製造、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、pHを5.8に調整後、澱粉グラム当たり特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を5単位と、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を500単位となるように加え、48時間反応させ、これにα−アミラーゼ(上田化学株式会社製造、商品名「α−アミラーゼ2A」)を澱粉グラム当たり30単位加え、更に、65℃で4時間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで45℃に冷却し、特公昭56−44695号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズ Q36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、48時間反応させた。その反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度70%のシラップ状の粉末化基剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE 13.7で、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、α−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコース)52.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース(別名α−マルトシルα−グルコース)4.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−テトラオシルα−グルコース)1.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有していた。本品は、砂糖の甘味の約30%の甘味を有する糖質で、糊感のない滑らかな粘性の糖質である。
実施例A−2
実施例1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤を、常法により噴霧乾燥して非晶質粉末品を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、粉末化基剤として有利に利用できる。
実施例A−3
実施例A−1の方法で調製した糖化液を、塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名「ダウエックス50W−X4」、Mg++型)を用いたカラム分画を行った。樹脂を内径5.4cmのジャケット付ステンレス製カラム4本に充填し、直列につなぎ樹脂層全長20mとした。カラム内温度を55℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに55℃の温水をSV0.13で流して分画し、グルコース及びマルトース高含有画分を除去し、α,α−トレハロースの糖質誘導体高含有画分を集め、更に精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体高含有粉末化基剤を調製した。本品は、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体としてα−マルトシルα,α−トレハロース70.2%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース 6.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース 2.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース4.1%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。
実施例A−4
馬鈴薯澱粉1質量部に水6質量部を加え、更に、澱粉当たり0.01%の割合になるようにα−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名「ネオスピターゼ」)を加えて撹拌混合し、pH6.0に調整後、この懸濁液を85乃至90℃に保ち、糊化と液化を同時に起こさせ、直ちに120℃に5分間加熱して、DE1.0未満にとどめ、これを55℃に急冷し、pH7.0に調整し、これに株式会社林原生物化学研究所製造、商品名「プルラナーゼ」(EC 3.2.1.41)及び特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼを、それぞれ澱粉グラム当たり150単位及び8単位の割合で加え、pH7.0、50℃で36時間反応させた。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで、53℃まで冷却し、特開平9−187249号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、噴霧乾燥して非晶質状粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末化基剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE 11.4で、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース 62.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース 2.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース 0.8%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.5%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。
実施例A−5
試薬級のマルトテトラオース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)の20%溶液をpH7.0に調整後、特公昭56−44695号公報に開示された非還元性糖質生成酵素を、無水物換算で、糖質グラム当たり2単位となるように加えて、46℃で、48時間、糖化して、無水物換算で、79.8%のα−マルトシルα,α−トレハロースを含有する溶液を得た。この溶液を、pH6.0に調整後、無水物換算で、糖質グラム当たり10単位となるようにβ−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)を加えて、50℃で48時間反応させて、マルトテトラオースを分解した。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、冷却した後、ろ過して得られる溶液を、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社製造、「XT−1016」、Na型、架橋度4%)を用いて分画し、α−マルトシルα,α−トレハロース高含有画分を集め、精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質状粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース高含有粉末化基剤を調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを98.1%含有しており、ソモジネルソン法による測定での還元力測定では、還元力は検出限界以下であった。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。また、本品は還元性がないため、アミノ酸やアミノ基を有する化合物のようなメーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品等の粉末化基剤として好適である。
この標品を、再度水に溶解し、活性炭処理して、パイロジェンを除去し、噴霧乾燥して、非晶質粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース高含有粉末化基剤を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。また、パイロジェンを除去しているので、特に医薬品用の粉末化基剤として好適である。
実施例A−6
実施例A−1の方法で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップに水を加えて、濃度約60%に調製して、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約8.5%添加し、攪拌しながら温度を128℃に上げ、水素圧を80kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップ状の粉末化基剤を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の粉末化基剤として好適である。
実施例A−7
実施例A−2の方法で調製した非晶質状態のα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する粉末を水に溶解し、濃度約60%水溶液にし、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約9%添加し、撹拌しながら温度を130℃に上げ、水素圧を75kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップ状の粉末化基剤を調製した。更に、このシラップ状の粉末化基剤を、常法により噴霧乾燥して、非晶質粉末状の粉末化基剤を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の粉末化基剤として好適である。
実施例A−8
水65質量部に、実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、登録商標『マビット』)を40質量部を混合溶解し、これを、常法により噴霧乾燥して、粉末化基剤を調製した。
実施例A−9
水50質量部に対して、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤70質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)2質量部、及び、酵素処理ルチン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGルチン」)を混合、溶解し、常法により、これを常法により噴霧乾燥して、粉末化基剤を調製した。
実施例A−10
水60質量部に対して、実施例A−6の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤100質量部、水溶性多糖類のアラビアガム2質量部、水溶性ヘミセルロース0.5質量部を混合、溶解し、これを常法により噴霧乾燥して、粉末化基剤を調製した。
実施例A−11
実施例A−2の方法で調製した粉末化基剤50質量部と、市販の含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)10質量部とを混合し、粉末化基剤を調製した。
実施例B 粉末化基剤を含有せしめた粉末組成物
実施例B−1 テーブルシュガー
実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤50質量部に対して、無水結晶マルチトール46質量部、糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売)1質量部を200質量部の水に溶解し、常法により、噴霧乾燥して粉末甘味料を調製した。本品は、本発明の粉末化基剤により、吸湿が抑制され、ケーキングなどの発生しない、流動性に優れた粉末甘味料である。また、この粉末化基剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体及び糖転移ヘスペリジンがスクラロースの後味を改善することから、コーヒー、紅茶用のテーブルシュガーをはじめ、各種飲食品、医薬部外品、医薬品などの甘味料として好適である。
実施例B−2 粉末鰹節調味エキス
新鮮な本鰹を使用し、その魚肉を煮熟する際に、実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤を18%となるように溶解した水溶液を使用する以外は、常法により鰹節を製造した。鰹節削り器で削り、その100質量部に対して水500質量部を加えて加熱し、5分間沸騰させた後、冷却して鰹節エキスを調製した。この鰹節エキスを10倍に濃縮後、その9質量部に対して、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤1質量部を添加して撹拌、溶解したものを、常法により噴霧乾燥して粉末ダシを調製した。本品は、鰹節の好ましい、味、香りを有する、コクのある粉末ダシであり、ケーキングすることもなく、製造直後の流動性を保つなど、保存安定性に優れていることから、単独で、或いは、他のエキス類と併用して、粉末、液状、固状、ペースト状のダシや調味料を製造するための原料として好適である。
実施例B−3 粉末醤油
実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤1.5質量部を醤油3質量部に溶解し、常法により噴霧乾燥して、粉末醤油を調製した。本品は、長期保存後も、吸湿もなく、醤油の味や香りをよく保持しており、即席ラーメンや即席吸物などの調味料として有利に利用できる。
実施例B−4 粉末牛乳
生鮮牛乳100質量部に対して実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤1.5質量部を溶解後、約50℃に加温し、牛乳の固形分が約30%となるまで減圧濃縮し、常法により噴霧乾燥して、粉末ミルクを調製した。本品は、長期保存後も、吸湿もなく、変色もなく、ミルクの好ましい味や香りをよく保持しており、水や湯に速やかに溶解するので、各種飲食品の原料やコーヒー用の粉末ミルクとして有利に利用できる。
実施例B−5 粉末卵黄
生卵から調製した卵黄を、プレート式加熱殺菌機で60乃至64℃で殺菌し、得られる液状卵黄1質量部に対して、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤4質量部の割合で混合した後、ドラムドライヤーで乾燥し、これを常法により、粉末化して粉末卵黄を調製した。本品は、プレミックス、冷菓、乳化剤などの製菓用材料としてのみならず、経口流動食、経管流動食などの離乳食、治療用栄養剤などとしても有利に利用できる。
実施例B−6 粉末大豆
水に膨潤させた後、外皮を除去した大豆1質量部に水5質量部と実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤3質量部を加えて破砕し、大豆の懸濁液を調製した。この懸濁液を、常法により噴霧乾燥して、粉末大豆を調製した。本品は、大豆のビタミンやイソフラボンなどが長期間安定に保持される。また、プレミックス、冷菓などの製菓用材料としてのみならず、健康補助食品、経口流動食、経管流動食などの離乳食、治療用栄養剤などとして利用することも随意である。
実施例B−7 粉末ヨーグルト
プレーンヨーグルト2質量部に実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤1質量部と実施例A−6の方法で調製した粉末状の粉末化基剤1質量部とを混合した後、粉末化して粉末ヨーグルトを調製した。本品は、風味良好であるだけでなく、乳酸菌を生きたまま長期に安定化し得る。また、プレミックス、冷菓、乳化剤などの製菓用材料としてのみならず、経口流動食、経管流動食などの離乳食、治療用栄養剤などとして、更には、例えば、マーガリン、ホィップクリーム、スプレッド、チーズケーキ、ゼリーなどに含有せしめヨーグルト風味の製品にするなどの用途に有利に利用できる。さらに本粉末を顆粒成型機、打錠機などで成型して乳酸菌製剤とし、整腸剤などとして利用することも随意である。
実施例B−8 粉末野菜ジュース
ケール、ブロッコリー、パセリ、セロリ、ニンジンのスライスを混合したものを95℃で20分間ブランチングし、これに実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤を3%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加した後、破砕して野菜汁を調製した。この野菜汁を5倍に濃縮後、その4質量部に対して、実施例A−3の方法で調製した粉末状の粉末化基剤1質量部を更に添加して溶解し、クエン酸を加えてpHを4.2に調製した後、常法により噴霧乾燥して粉末野菜ジュースを調製した。本品を、密封した容器に入れて室温で90日間保存したところ、退色、褐変や吸湿もなく良好な粉末の状態が維持されていた。
実施例B−9 野菜ジュース入り錠剤
実施例B−3で調製した野菜ジュース粉末に、適量のビタミンB及びビタミンB粉末を撹拌混合し、これを打錠機にて打錠し、野菜ジュースの錠剤を調製した。本品は、退色や吸湿もなく、ビタミンB補給用の飲みやすい錠剤である。
実施例B−10 粉末緑茶
常法により、緑茶葉から緑茶を抽出し、実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤を0.5%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加して茶飲料を調製した。これを20倍に濃縮後、常法により噴霧乾燥して粉末緑茶を調製した。本品を、密封した容器に入れて室温で120日間保存したところ、吸湿や退色、褐変もなく、流動性も良好な粉末の状態が維持されていた。本品は、各種飲食品の原料として有利に利用できる。
実施例B−11 粉末高麗ニンジンエキス
高麗ニンジンエキス1質量部を5倍濃縮したもの1質量部に対して、実施例A−8の方法で調製した粉末状の粉末化基剤6質量部を添加して撹拌溶解したものを、常法により噴霧乾燥して高麗ニンジンエキス粉末を調製した。本品は、吸湿もなく、長期間保存可能な粉末であり、健康補助食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として好適である。
実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤10質量部、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)10質量部に、水180質量部を加えて攪拌し、コーティング液を調製した。上記高麗ニンジンエキス粉末1質量部に対して、このコーティング液0.75質量部を使用して、常法により、コーティング高麗ニンジン粉末を調製した。このコーティング高麗ニンジン粉末は、酸化安定性が高く、吸湿もなく、長期間保存可能な粉末であり、そのままで、造粒、或いは、打錠するなどして健康食品やその他の飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として使用することも随意である。
実施例B−12 粉末ローヤルゼリー
ローヤルゼリー(水分含量65%)1質量部に対して実施例A−2の方法で調製した粉末状の粉末化基剤5質量部を添加し撹拌溶解後、常法により、噴霧乾燥してローヤルゼリー粉末を調製した。本品は、長期に保存しても、品質の劣化が抑制され、しかも、ローヤルゼリー特有の刺激臭などの不快味及び/又は不快臭が低減されており、又、水溶解性も高いことから、そのままで、或いは、打錠するなどして健康食品やその他の飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として使用することも随意である。
この粉末ローヤルゼリーに少量のエタノールを加えて、混錬し、押し出し造粒法により、粒状のローヤルゼリーを調製した。さらに、プルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPF−20」)1質量部、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤10質量部、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)90質量部に、水180質量部を加えて攪拌し、コーティング液を調製した。上記の顆粒状のローヤルゼリー1質量部に対して、このコーティング液0.25質量部を使用して、ワースターコーティング方式を用いて、コーティングローヤルゼリー顆粒を調製した。このローヤルゼリー顆粒やコーティングローヤルゼリー顆粒は、酸化安定性が高く、吸湿もなく、長期間保存可能であり、そのままで、或いは、打錠するなどして健康食品やその他の飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として使用することも随意である。
実施例B−13 粉末ライムオイル
水90質量部にHLB15のショ糖脂肪酸エステル5質量部、DE10のデキストリン45質量部及び実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤50質量部を加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却後、ホモミキサーで撹拌しながらライムオイル20質量部を添加混合して乳化液を調製した。また、この液を常法により噴霧乾燥して、保存安定性に優れたライムオイル粉末香料を得た。この乳化液及び粉末は、各種飲食品、化粧品、医薬品などの香料として有利に利用できる。
実施例B−14 粉末香料
アラビアガム(固形分30%)280質量部、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤40質量部、メントールフレーバー80質量部を攪拌混合し、常法により噴霧乾燥して、粉末化し、平均粒径100μmのメントールフレーバー含有粉末香料を調製した。酵母細胞壁画分(キリンビール株式会社販売、商品名「イーストラップ」)190質量部(固形分換算)とプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPF−20」)10質量部、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤20質量部に、水を加えて1780質量部を加えて攪拌し、コーティング液を調製した。このコーティング溶液を使用して、常法により、上記メントールフレーバー含有粉末香料のコーティングを行った。コーティングは、芯物質であるメントールフレーバー含有粉末香料1質量部に対し、上記コーティング溶液5質量部を使用して、また給気温度を70℃、排気温度を40℃とする条件で行い、コーティングされたメントールフレーバー含有粉末香料を製造した。本品は、吸湿やケーキングすることもなく、メントールの香りの保存安定性に優れていた。なお、コーティングを行う前のメントール含有粉末香料を、そのまま、香料として各種飲食品や、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、雑貨などの香り付けに利用することも随意である。
ガムベース20質量部、粉糖66質量部および実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤14質量部からなるチューインガム生地に対して、本品を、チューインガム生地に対しメントールの配合量が1.0%になるように添加し、約40℃で10分間混練し、板ガムを調製した。この板ガムは、適度なメントールの香りが、チューインガムの糖分溶出に伴いバランス良く発現する、美味しいチューインガムである。
実施例B−15 粉末香料
実施例A−2の方法により調製した粉末化基剤330質量部、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)360質量部、加工澱粉20質量部に、200質量部の精製水を加えて混合し、攪拌しながら、135℃まで加熱して溶融し、さらに、これにオレンジオイル75質量部を攪拌しながら添加し、20分間乳化を行った。この乳化香料を、−25℃のイソプロピルアルコールを入れた冷却槽中に加圧射出し、攪拌しながら粉砕した。得られた粉砕物を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧乾燥することにより、粒子表面のイソプロピルアルコールを除去した。乾燥後の粉末組成物を、20メッシュの篩(目開き840μm)を通過し、60メッシュの篩(目開き250μm)上に残る画分を回収して、オレンジ香料の粉末480gを得た。本品は、吸湿やケーキングすることもなく、オレンジの香りの保存安定性に優れていた。また、粉砕する前の乳化香料は、そのまま、香料として各種飲食品や、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、雑貨などの香り付けに利用することも随意である。
ガムベース20質量部、粉糖66質量部および実施例A−1の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤14質量部、本品0.4質量部を、約40℃で10分間混練し、板ガムを調製した。この板ガムは、適度なオレンジの香りが、チューインガムの糖分溶出に伴いバランス良く発現する、美味しいチューインガムである。
実施例B−16 粉末DHA
水100質量部にα化でん粉20質量部、デキストリン50質量部及び実施例A−11の方法で調製した粉末状の粉末化基剤20質量部を加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、DHA含有精製魚油10質量部を添加混合した後、ホモミキサーで乳化し乳化液を調製した。この乳化液をスプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、DHA含有精製魚油粉末製剤を調製した。この乳化液及び粉末は、健康補助食品をはじめとする各種飲食品の原料として有利に利用できる。
実施例B−17 粉末γ−リノレン酸
水100質量部にHLB15のショ糖脂肪酸エステル5質量部、DE10のデキストリン45質量部及び実施例A−6の方法で調製したシラップ状の粉末化基剤40質量部を加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却後、ホモミキサーで撹拌しながらγ−リノレン酸20質量部を添加混合して乳化液を調製した。この乳化液を常法によりスプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して粉末γ−リノレン酸を得た。この乳化液及び粉末は、健康補助食品をはじめとする各種飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として有利に利用できる。
実施例B−18 粉末油脂
オリーブオイル25質量部と実施例A−2の方法により調製した粉末状の粉末化基剤75質量部をミキサーで混合し、圧縮造粒機で板状に圧延したものを、常法により粉砕して、粉末オリーブオイルを調製した。本品は、吸湿もなく、エクストラバージンの香りがよく保持されていた。また、脂質の酸化や分解が抑制されており、その風味が長期間保持された。本品は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの原料として好適である。
実施例B−19 粉末プロポリス
プロポリスエキス(林原商事販売)25質量部と実施例A−11の方法により調製した粉末状の粉末化基剤75質量部を混合し、常法により噴霧乾燥して、粉末プロポリスを調製した。本品は、吸湿もなく、プロポリスの不快臭が抑制されていた。本品は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの原料として好適である。
【産業上の利用可能性】
以上説明したとおり、本発明は、非糖質成分と、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する粉末化基剤とを混合して、粉末化することにより、長期保存しても風味や機能の保持された粉末組成物を調製する方法に関するものである。しかも、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、安全で、且つ、非常に安定であることから、この糖質誘導体を有効成分として含有する粉末化基剤としても有用であり、その利用分野は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品など多岐に渡る。本発明は、この様に顕著な効果を奏する発明であり、産業上の貢献は誠に大きく、意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非糖質成分とα,α−トレハロースの糖質誘導体とを含む混合物を粉末化することを特徴とする非糖質成分の粉末化方法。
【請求項2】
非糖質成分が疎水性物質又は親水性物質であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項3】
疎水性物質が、畜産、水産、或いは農産加工品、香料、色素、油脂、乳化剤、機能性物質、有機溶媒及び農薬乳剤から選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第2項記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項4】
親水性物質が、畜産、水産、或いは農産加工品、香料、色素、機能性物質から選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第2項記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項5】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、又は、ジ−グルコースから選ばれる何れかが結合しているものであることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項6】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、分子の末端にトレハロース構造を有する糖質であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第5項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項7】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、非晶質状態であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第6項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項8】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、粉末組成物の総質量に対して、5質量%以上含有せしめることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項9】
粉末化方法が噴霧乾燥法であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第8項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項10】
非糖質成分と共に、乳化剤及び水を含む乳化混合物を粉末化することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第9項の何れかに記載の非糖質成分の粉末化方法。
【請求項11】
得られる粉末組成物が、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、農薬及び化学工業品、これらの原料及び中間製品から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の非糖質成分の粉末方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の方法により製造された非糖質成分の粉末組成物。
【請求項13】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有することを特徴とする非糖質成分のための粉末化基剤。
【請求項14】
非糖質成分と請求項13記載の粉末化基剤とを含む混合物を粉末化することを特徴とする非糖質成分の粉末化方法。

【国際公開番号】WO2004/084650
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504063(P2005−504063)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003953
【国際出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】