説明

非線形光ループミラー及び光A/D変換器

【課題】時間幅の短い光パルスに対して動作し、多周期正弦波特性、特に四周期の正弦波特性を有する非線形光ループミラー、及び3ビット以上、特に4ビットの光A/D変換器を提供する。
【解決手段】ループ状の光ファイバ11と、入射ポート12Aから入力された入力光信号(プローブ光)を2分岐して光ファイバ11の両端に出力し、かつ、その両端から入力される光信号をそれぞれ入射ポート12A及び透過ポート12Dに分岐出力する光カプラ12と、コントロール光を光ファイバ11に出力するWDMカプラ13と、光ファイバ11の光路上に配置される正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16と、第1、第2偏波コントローラCR1、CR2とを有し、自己位相変調によって広がったコントロール光のスペクトルがプローブ光Aのスペクトルに干渉しない程度若しくはそれ以上に、コントロール光とプローブ光の波長に差が与えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた非線形光ループミラー及び光A/D変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログデジタル(AD)変換及びデジタルアナログ(DA)変換(以下、「A/D変換」と記載する)は、連続的に変化するアナログ信号と、信号処理、伝達、記録などに適したデジタル信号とを結ぶ技術として研究及び開発が行われている。近年の信号処理速度の向上に伴い、電子デバイスの動作制限を受けない、超高速動作可能な光A/D変換の開発が求められている。
【0003】
そこで、この光A/D変換の開発の一環として、例えば光信号の量子化及び符号化を一括して実現させるために、NOLMを用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この光符号化器100は、図10において、NOLM101と、2個の光カプラ102,103と、光アイソレータ104と、BPF(Band Pass Filter)105と、光ファイバ106とを備えている。
ここで、NOLM101は、後述する制御光(以下、「コントロール光」とよぶ)と信号光(以下、「プローブ光」とよぶ)に対してそれぞれ異なる群遅延特性(又は分散値)を有する所定長の複数本(少なくとも2本)の光ファイバを縦列接続してループを形成したものである。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているNOLM101を用いたA/D変換の技術について、これまで本発明に係る発明者らにより、10Gsample/sの標本化周波数における動作が原理的に確認されている。ところで、この標本化周波数を高くして高速動作させるためには、より時間幅の狭い光パルスを用いる必要があるが、このパルス時間を短くすると、所謂「ウォークオフ」の効果が顕著となって、所望の伝達関数(光ファイバ106より入力されるコントロール光のピークパワーの変化に応じて、BPF105を透過したプローブ光のピークパワーが変化する特性を与える関数)を実現することができない。
【0005】
なお、光ファイバの分散値が零であれば、コントロール光とプローブ光の間の群速度差はなくなり、ウォークオフの問題は生じないが、一方で特許文献1に開示されているように、コントロール光がポンプとして作用して、プローブ光に対するパラメトリック利得が発生し、やはり所望の伝達関数が得られないといった問題が生じる。
【0006】
そこで、時間幅の短い光パルスを用いてNOLMを動作させる際のウォークオフの問題を解決するために、NOLM内で分散値の異なるファイバを短い間隔で交互に接続し、局所分散値を零でない値とし、かつ累積分散値を小さく保つ「分散マネージメント」の構成が提案されている(例えば非特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−173530号公報
【特許文献2】特開2003−107541号公報
【非特許文献1】T.Yamamoto et al.,”Ultrafast nonlinear optical loop mirror for demultiplexing 640 Gbit/s TDM signals,” Electron. Lett. Vol.34 No.10, p.1013(1998)(T.ヤマモト、他著「640Gビット/秒のTDM信号の多重化解除のための超高速非線形光ループミラー」エレクトロニクス レターズ 第34巻、第10号、1013ページ(1998年))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの文献中で実施されているNOLMは、A/D変換ではない光信号処理を目的としており、高々半周期の伝達関数を必要とするものである。一方、特許文献1に開示されている方法によれば、NOLMを用いてNビットで量子化及び符号化するA/D変換を行う場合、詳細は実施形態で説明するが、所定の周期の正弦波伝達関数を持つNOLMが必要である。
【0008】
また、光A/D変換を目的として、多周期の伝達関数を持つNOLMを実現する場合は、分散マネージメント構成を採用したとしても、従来知られていなかった問題が発生する。それは、コントロール光がプローブ光に相互位相変調(以下、「XPM;Cross Phase Modulation」とよぶ)の効果を及ぼす際、同時にコントロール光に発生する自己位相変調(以下、「SPM;Self Phase Modulation」とよぶ)により、コントロール光のスペクトルが大きく広がって、プローブ光の帯域に干渉を及ぼし、所望の伝達関数が得られないという問題である。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、時間幅の短い光パルスに対して動作し、多周期正弦波特性、特に四周期の正弦波特性を有する非線形光ループミラー、及びこの非線形光ループミラーを用いて3ビット以上、特に4ビットの光A/D変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明においては、上記目的を達成するため、ループ状の光ファイバの両端から入力された光信号のうち、いずれか一方の光信号の位相差を制御光信号のパワーで調節することによって、前記ループ状の光ファイバから出力される前記光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、前記ループ状の光ファイバと、前記光ファイバとは別に設けた前記光信号供給用の光ファイバから入力された前記光信号を2分岐して前記ループ状の光ファイバの両端に出力し、かつ、前記ループ状の光ファイバを周回して前記両端から入力される前記光信号を前記光信号供給用の光ファイバ及び光信号出力用の光ファイバに分岐出力するように接続された光カプラと、前記制御光信号を前記ループ状の光ファイバに入力させる制御光信号入力手段と、前記ループ状の光ファイバの光路上に配置される非線形媒体とを有し、前記制御光信号と前記光信号が前記非線形媒体を伝搬し終えた際、自己位相変調(SPM)によって広がった前記制御光信号のスペクトルが、前記光信号のスペクトルに干渉しない程度に、前記制御光信号と前記光信号との波長に差が与えられていることを特徴とする非線形光ループミラーを提案する。
好ましくは、前記制御光信号の入力ピークパワーの変化に対する前記光信号の出力ピークパワーの変化特性を示す伝達関数は、二分の一周期以上の正弦波形状を有することを特徴とする非線形光ループミラーを提案する。また、前記非線形媒質は、二つ以上の要素に分割されており、前記要素の間に各要素の分散を補償する媒体が挿入されていることが好ましい。
【0011】
また、前記制御光信号と前記光信号との間に、最大ウォークオフ時間の半分の逆符号である初期時間差が与えられていることが好ましい。
【0012】
本発明においては、上記目的を達成するため、上記のいずれかに記載の非線形光ループミラーを用いて量子化及び符号化を行うことを特徴とする光A/D変換器を提案する。好ましくは、伝達関数が四周期の正弦波形状を有し、四ビットの量子化及び符号化を行うことを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ループ状の光ファイバの両端から入力された光信号の位相差を制御光信号のパワーによって調節し、前記光ファイバの出力端から出力される前記光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、光ファイバと、光ファイバの出力端から入力された前記光信号を2分岐して前記光ファイバの両端に出力し、かつ、前記光ファイバの両端から入力される前記光信号をそれぞれ前記光ファイバの入力端及び出力端に分岐出力するように接続された光カプラと、前記制御光信号を前記光ファイバに入力させる制御光信号入力手段と、前記光ファイバの光路上に配置される非線形媒体とを有し、前記制御光信号と前記光信号が出力される際、SPMによって広がった前記制御光信号のスペクトルが、前記光信号のスペクトルに干渉しない程度に、前記制御光信号と前記光信号との波長に差が与えられているので、時間幅の短い光パルスに対して動作し、多周期正弦波特性、特に四周期の正弦波特性を有する非線形光ループミラー、及びこの非線形光ループミラーを用いて3ビット以上、特に4ビットの光A/D変換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る四ビットの量子化及び符号化を行う光A/D変換器に使用可能な非線形光ループミラー(NOLM)10を示すものであり、この非線形光ループミラー10は、ループ状の光ファイバ11と、3dBカプラ12と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ13と、BPF(Band Pass Filter)14と、第1、第2偏波コントローラCR1、CR2と、正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16とを備えており、光ファイバ11の両端(第1ポート12B、第2ポート12C)から入力された光信号(以下、「プローブ光」とよぶ)の位相差を後述する制御光信号(以下、「コントロール光」とよぶ)のパワーによって調節し、3dBカプラ12の出力端12Dから出力される出力光信号のパワーを制御するようになっている。
【0015】
光ファイバ11は、3dBカプラ12とWDMカプラ13との間、および正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16との間をつなぐプローブ光やコントロール光の伝搬手段であり、分散値の調整を正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16で精度よく調整するため、ここでは使用する波長の光信号に対して分散零として機能するファイバを用いている。
【0016】
3dBカプラ12は、光ファイバ17と接続される入射ポート12Aから入力した波長λの光パルス列であるプローブ光を2分岐して第1ポート(12B)及び第2ポート(12C)から光ファイバ11の両端に出力するようになっている。また、この3dBカプラ12は、光ファイバ11を周回した後に、光ファイバ11両端から出力される2つのプローブ光を第1ポート12B及び第2ポート12Cから入力して合波した後、入射ポート12Aから光ファイバ17及び透過ポート12Dから光ファイバ18にそれぞれ分岐出力する。本発明では、3dBのカプラを用いることで、入射ポート12Aから入力するプローブ光は、光ファイバ11両端へ出力する際に分岐比1:1で分岐出力されて、同一パワーのプローブ光が光ファイバ11中を時計回り方向(これを、「プローブ光A」とよぶ)及び反時計回り方向(これを、「プローブ光B」とよぶ)に伝搬するようになっている。なお、第2偏波コントローラCR2は、NOLM10が非線形光ループミラーとして適正に機能するように、プローブ光の偏波状態を調整するようになっている。
【0017】
本実施形態のプローブ光は、40Gsample/s以上の4ビット超高速光A/D変換が実施できるようにするため、パルス幅を0.5psとするとともに、後述する制御光信号のパルス幅を1psとするように構成しており、これによって四周期の正弦波伝達関数(図2参照)が得られるようになっている。
【0018】
光カプラ13は、光ファイバ19中を伝搬する制御光信号であるコントロール光を光ファイバに入力させる制御光信号入力手段として構成するようになっており、WDMカプラで構成されている。この光カプラ13は、非線形媒体光であるファイバ中の非線形効果によってコントロール光と(光ファイバ11中を時計周りに伝搬する)プローブ光Aとの間にXPMを発生させて、コントロール光のパワーに比例した位相シフトをプローブ光Aに与えるものである。なお、第1偏波コントローラCR1は、所望のXPMが得られるようにコントロール光の偏波状態を制御するものである。
【0019】
本実施形態のコントロール光は、プローブ光の波長λと所定の波長差Δλを有する波長λ(但し、λ<λ)の光パルス列であるが、サンプリングされたアナログ信号として用いているので、パルスごとに光パワーが変化している。なお、波長差Δλの大きさについては、コントロール光とプローブ光が出力される際、周波数領域において、SPMによって広がったコントロール光のスペクトルが、コントロール光とともに光ファイバ11中を時計周りに伝搬するプローブ光のスペクトルに干渉しない程度に、コントロール光とプローブ光との間に所要の波長差を与えるようになっている。即ち、プローブ光は、コントロール光との間で、所要の伝達関数が得られるような最小限の波長差Δλmin以上を確保するように、設定している。
【0020】
さらに、このコントロール光と前述するプローブ光Aとについては、時間領域でパルスの中心が一致するようにタイミングを合わせている。換言すれば、コントロール光をWDMカプラ13より入射してプローブ光Aと重ねる際の時間差を零にするために、例えば光ファイバ19中に図示しないが適宜手段、例えば時間遅延量調整手段を付設してある。なお、このコントロール光は、中心波長λが1530nmである近赤外光を用いている。一方、プローブ光の中心波長λとしては、前述したように、λ=λ+Δλのもの、つまりコントロール光の波長よりも長波長側のものであって、コントロール光の中心波長との間に大きな波長差Δλを有するものを用いている。即ち、本実施形態では、プローブ光の中心波長がコントロール光の中心波長よりも40nm程度、長波長側にあるものを用いている。また、本実施形態のコントロール光とプローブ光とについては、sech関数で示す波形のものが用いられているが、特にこの波形に限定されるものではない。
【0021】
BPF14は、12Dより出力されて光ファイバ18を伝搬するコントロール光とプローブ光のうち、プローブ光のスペクトルの帯域にある光のみを出力して、コントロール光のスペクトルの帯域にある光を遮断するものであり、本実施形態では3dB幅が0.5THzのガウス関数で与えられる特性のものが用いられている。
【0022】
正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16は、これらの正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16を1組とした単位で複数組設置している。例えば本実施形態では、8組設置するようになっており、コントロール光とプローブ光の間で発生する群遅延(ウォークオフ)を各組ごとに補償するようになっている。
【0023】
正常分散ファイバ15は、高非線形光ファイバ(以下、「HNLF;highly nonlinear fiber」とよぶ)で構成されている。本実施形態では、分散値が−0.5ps/nm/km、非線形定数は12/W/km、長さが25mのものが用いられており、プローブ光の方がコントロール光よりも長波長のものを用いているので、この正常分散ファイバ15中でのプローブ光は、コントロール光よりも速い群速度で進行する。
【0024】
一方、異常分散ファイバ16は、本実施形態では、分散値が16ps/nm/km、非線形定数は1.3/W/km、長さが0.78mのシングルモードファイバ(以下、「SMF;Single Mode Fiber」とよぶ)で構成されている。従って、この異常分散ファイバ16中を伝搬するプローブ光は、正常分散ファイバ15の場合とは逆に、コントロール光よりも遅い群速度で進行する。
【0025】
次に、本実施形態の作用について、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、3dBカプラ12から入射されたプローブ光は、パワーが同じプローブ光A及びプローブ光Bとして1:1に等分され、NOLM10中の光ファイバ11をそれぞれ時計回り及び反時計回りに伝搬する。
一方、コントロール光は、サンプリングされたアナログ信号に相当するため、図1に示すように、パワーが変化しながらWDMカプラ13から光ファイバ11に入射していき、光ファイバ11中を時計回りの方向のみに伝搬する。但し、コントロール光は、図示外の時間遅延量調整手段により入射タイミングが調整され、プローブ光Aと時間的に重なった状態で光ファイバ11に入射する。
【0026】
(I)ここで、このコントロール光が存在しないときには、NOLM10は単なるループミラーとして動作するため、光ファイバ11、正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16を伝搬し終えたプローブ光A及びBは、3dBカプラ12内部において所定の位相シフトの条件下で干渉し、全てのプローブ光が入力ポート12Aから光ファイバ17へ出射され、透過ポート12Dから光ファイバ18へ出射されることはない。
【0027】
(II)一方、コントロール光が存在するときには、WDM光カプラ13のところで、時計回りで伝搬するプローブ光Aとコントロール光とが同期して重ね合わされる。そして、特に正常分散ファイバ15中の非線形効果によって、コントロール光とプローブ光Aとの間でXPMの作用が発生し、プローブ光Aに対してコントロール光のパワーに比例した位相シフトが付与される。従って、その後、光ファイバ11を伝搬し終えたプローブ光A及びBは、3dBカプラ12内で干渉されるが、XPMによってプローブ光Aに付加された位相シフトの条件によって、一部ないしは全部のプローブ光が透過ポート12Dへ出力され得る。この透過ポート12Dへ出力されるプローブ光のパワーは、図2に示すように、コントロール光の入力パワーに対して正弦波特性となる。換言すれば、本実施形態の非線形光ループミラー10によれば、二分の一周期以上、特に四周期の正弦波形状の伝達関数Fが得られるようになる。
【0028】
ところで、本実施形態では、プローブ光Aの中心波長がコントロール光の中心波長よりも40nm程度長波長側にあるものを用いており、そのため正常分散ファイバ15では、プローブ光Aの群速度(v)がコントロール光の群速度よりも速くなる。例えば、コントロール光とプローブ光の波長差をΔλ=λ−λ=−40nmとし、それらのタイミングを完全に一致させて光ファイバ11に入射した場合、分散値がD=−0.5ps/nm/kmであり、長さがL=25m(=0.025km)である正常分散ファイバ15中を両者が伝搬すると、分散効果によってプローブ光に対して、Δt=DΔλL=−0.5×(−40)×0.025=0.5psの群遅延が発生する。これは、言い換えると、分散効果によってコントロール光がプローブ光から0.5ps遅延することを意味している。ここで、プローブ光から見たコントロール光の遅延時間を相対時間差と定義し、正の値はコントロール光がプローブ光より遅延していることを意味するものとする。また、ファイバの分散によって発生する最大の相対時間差を最大ウォークオフ時間Tと定義する。もしNOLM10内に異常分散ファイバ16を備えていなければ、最大ウォークオフ時間Tは正常分散ファイバ15の総長に比例して大きくなり、プローブ光とコントロール光は時間的に完全に分離してしまい、両者の間でXPMが発生しなくなる。
【0029】
一方、正常分散ファイバ15を伝搬した直後のプローブ光Aは、その直後には異常分散ファイバ16に進行する。プローブ光Aは、コントロール光よりも長波長側のものを用いているので、異常分散ファイバ16中では、正常分散ファイバ15の場合とは逆に、群速度がコントロール光よりも遅くなる。ここで、異常分散ファイバ16の長さは、正常分散ファイバ15で発生した分散効果を補償するように決められている。その結果、プローブ光Aとコントロール光の間で発生した時間遅延は打ち消され、両者の時間差は正常分散ファイバ15に入射したときの値に戻る。
【0030】
このようにして、正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16からなる8組のものを伝搬後には、コントロール光とプローブ光の相対時間差が、最大ウォークオフ時間以上に大きくなることなく、両者の間で継続的にXPMが発生し、プローブ光Aに対してコントロール光のパワーに応じた位相差を与えることができる。また、コントロール光のスペクトルはSPMの効果により周波数領域で大きく広がるが、コントロール光とプローブ光の波長差Δλを大きく取っているため、プローブ光の帯域に干渉することはない。その結果、3dBカプラ12からはBPF14を透過可能な波長λを有する出力プローブ光のみが出力され、コントロール光が出力されることはない。なお、第2偏波コントローラCR2は、NOLM10が非線形ループミラーとして適正に機能するように調整される。
【0031】
従って、本実施形態によれば、コントロール光がプローブ光AにXPMの効果を及ぼすのと同時に、そのコントロール光のスペクトルがSPMの作用で広がるようになるが、双方の中心波長の間に所定の波長差Δλ、つまり40nmの波長差を設けてあるため、周波数領域でプローブ光の帯域にまで達することがない。その結果、四周期の正弦波形状の伝達関数Fが得られるようになる。
【0032】
因みに、NOLMを用いてNビットで量子化及び符号化するA/D変換を行う場合、一般に、最大で2N−2周期の正弦波伝達関数を持つNOLMが必要であることが知られている。従って、例えば、3ビットの場合、二周期の正弦波伝達関数を持つNOLMが必要であり、4ビットの場合は四周期の正弦波伝達関数が必要であることとなる。上述したように、本実施例によれば、このようなNOLMが実現可能となるわけである。
【0033】
また、従来、電子回路の熱雑音、標本化のアパチャのジッタ、比較器の曖昧性、さらには、ハイゼンベルグの不確定性原理などの物理的な限界などの事情から、標本化周波数は高々数10GHz程度が限界とされていた。ところが、本実施形態によれば、より高速での処理を実現することができるようになる。このため、特に高速大容量化の要求が強い通信分野において、その効果が大きく期待できる。

【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る四ビットの量子化及び符号化を行う光A/D変換器に使用可能な非線形光ループミラー(NOLM)20を示すものであり、この非線形光ループミラー20には、時間遅延量調整手段21を付加している。
【0035】
時間遅延量調整手段21は、図6(B)に示すように、コントロール光とプローブ光に最大ウォークオフ時間(T;図6(A)参照)の半分の逆符号である初期時間差(−T/2)を与えている。
【0036】
図6(A)のように初期相対時間差が零の場合、コントロール光とプローブ光の時間的な重なりは、コントロール光は主に左半分(時間軸で負の方向)のみ、プローブ光は主に右半分(時間軸で正の方向)のみというように、非対称な形になる。パルスどうしの重なりが非対称の場合、発生するXPMも非対称になる。このとき、XPMによる位相シフトがプローブ光のパルス全体に均一に及ばなくなり、3dBカプラ12における干渉によるスイッチングの特性が劣化し、図2に示すように、正弦波の山と谷の比が小さくなる結果となって、好ましくない。一方、図6(B)のように最大ウォークオフ時間の半分の逆符号である初期相対時間差(−T/2)が与えられている場合は、コントロール光とプローブ光の重なりは時間的に対称になるため、XPMによる位相シフトはプローブ光のパルス全体に均一に及ぶこととなり、3dBカプラ12における干渉によるスイッチングの特性が向上し、結果的に図7に示す伝達関数のように、正弦波特性の山と谷の比が大きくなる。よって、初期相対時間差として−T/2を与えることは、伝達関数の特性向上に対して非常に有効である。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
3dBカプラ12から入射されたプローブ光は、パワーが同じプローブ光A及びプローブ光Bに1:1に等分され、NOLM10中の光ファイバ11をそれぞれ時計回り及び反時計回りに伝搬する。一方、コントロール光は、時間遅延量調整手段21によりプローブ光よりも所定時間だけ先に、即ち時計回りで伝搬するプローブ光Aの方がコントロール光よりも最大ウォークオフ時間(T;図6(A)参照)の半分の逆符号である初期時間差(−T/2)だけ時間的に先行するように、WDMカプラ13へ出力される。
【0038】
コントロール光は、サンプリングされたアナログ信号に相当するため、パルスごとにパワーが変化しながらWDMカプラ13から光ファイバ11に入射していき、光ファイバ11中を時計回りの方向のみに伝搬する。
【0039】
(I)ここで、このコントロール光が存在しないときには、第1の実施形態と同様にして、途中で正常分散ファイバ15及び異常分散ファイバ16を通過し、光ファイバ11を伝搬し終えたプローブ光A及びBは、3dBカプラ12内部で干渉し、入力ポート12Aから光ファイバ17に全て出射され、透過ポート12Dから光ファイバ18へ出射することはない。
【0040】
(II)一方、コントロール光が存在するときには、光カプラ13のところで、時計回りで伝搬するプローブ光Aとコントロール光が初期時間差(−T/2)だけずれて搬送される。そして、正常分散ファイバ15において、群速度の速いプローブ光Aが群速度の遅いコントロール光に追いついて追い越す際に、双方が重なり合うが、そのとき、正常分散ファイバ15中の非線形効果によって、コントロール光とプローブ光Aとの間にXPMの作用が発生し、プローブ光Aに対してコントロール光のパワーに比例した位相シフトが付与される。
【0041】
その後、異常分散ファイバ16において、群速度の遅いプローブ光Aは、群速度の速いコントロール光に追いつかれる(追い越される)が、本実施形態では、非線形定数値が正常分散ファイバ15に比べて小さいので、異常分散ファイバ16中では非線形効果が殆ど発生することはない。
【0042】
このようにして、主に正常分散ファイバ15において、XPM作用が都合8回発生し、コントロール光のパワー、つまり標本化されたアナログ信号の振幅に比例した位相シフトが付与される。
光ファイバ11を伝搬し終えたプローブ光A及びBは、3dBカプラ12内で干渉する際に、XPMによって発生した位相シフトの条件によって、透過ポート12Dへプローブ光が出力される。この透過ポート12Dへ出力されるプローブ光のパワーは、第1の実施形態と同じく、コントロール光の入力パワーに対して正弦波特性となる。換言すれば、本実施形態の非線形光ループミラー10によれば、二分の一周期以上、特に四周期の正弦波形状の高品質な伝達関数Fが得られるようになる。
【0043】
ところで、本実施形態でも、コントロール光はプローブ光Aに対してXPMの効果を発生すると同時に、SPMによってそのスペクトルが広がる。しかしながら、コントロール光とプローブ光の波長差Δλを大きく設定してあるため、周波数領域でコントロール光のスペクトルがプローブ光の帯域に及んで、BPF14を通過することなく、所望の周期、特に四周期の正弦波特性を持つ伝達関数Fが得られるようになる。
【実施例1】
【0044】
図1に示す非線形光ループミラー10において、40Gsample/s以上の4ビット超高速光A/D変換を実施するため、コントロール光のパルス幅を1ps、プローブ光のパルス幅を0.5psとしてNOLM動作の検証を数値計算により行った。これにより、四周期の正弦波伝達関数が得られたことの検証結果について、具体的な数値計算結果数値計算を用いて、以下に定量的に説明する。
【0045】
第1の実施形態で説明したように、正常分散ファイバ15は、分散値が−0.5ps/nm/km、非線形定数は12/W/km、長さが25mのHNLFで構成している。一方、異常分散ファイバ16は、分散値が16ps/nm/km、非線形定数は1.3/W/km、長さが0.78mのSMFで構成しており、これらのファイバを交互に8組接続させて組み合わせたもので、NOLM内の非線形媒体を構成している。
【0046】
また、第1の実施形態で説明したように、BPF14に、3dB幅が0.5THzのガウシアンフィルタを用い、中心波長はプローブ光の波長と一致させてあり、また、入力パルス条件として、コントロール光とプローブ光には、共にsech関数の波形を用いている。
NOLMに入射する前のプローブ光のピークパワーPは50mWとし、コントロール光のピークパワーPは0から7Wまで変化させるようにした。さらに、コントロール光をWDMカプラ13から入射してプローブ光Aと重ねる際の時間差を零とした。
【0047】
さらに、コントロール光とプローブ光の波長差Δλを30、40、及び50nmとしたときの、入力プローブ光と出力プローブ光とのパルスピークパワーの相関性を示すグラフ、つまりNOLMの伝達関数を図2に示す。但し、第1の実施形態で説明したように、コントロール光の波長λは1530nmであり、プローブ光の波長は波長差に応じてコントロール光より長波長側に設定している。
【0048】
ここで、例えば波長差がΔλ=30nmのときには、即ちプローブ光の波長をλ=1560nmに設定した場合には、伝達関数の形が正弦波としてみなせる周期が3周期未満である。一方、波長差をΔλ=40nmあるいは50nmに設定すると、四周期の正弦波特性が実現されていることがわかる。
【0049】
ここで、Δλ=30,40,50nmの場合について、コントロール光のピークパワーP=4Wとした際の、NOLM透過ポート12Dを出射直後のコントロール光及びプローブ光のスペクトル波形を、それぞれ図3(A)から(C)に示す。同様に、P=5Wとしたときのスペクトル波形をそれぞれ図4(A)から(C)に示す。なお、同図において、点線はNOLM入力時のコントロール光とプローブ光Aのスペクトルを示している。
【0050】
図3と図4の各図を比較すると、Pc=4Wの場合と比較してPc=5Wの場合には、コントロール光のスペクトルがSPMによってより大きく広がっている。特に、両図(A)よりΔλ=30nmの場合、広がったコントロール光のスペクトルがプローブ光の波長領域(1560nm)に著しく及んでいることがわかる。その結果、BPF14を透過できるプローブ光の波長帯において、本来、コントロール光は通過できず、プローブ光成分のみがXPMによる位相シフトに応じた出力パワーで得られるはずであるが、SPMによって広がったコントロール光のスペクトルがBPFを透過してしまい、結果的に伝達関数は正弦波的な特性を満たさなくなる。一方、両図(B)および(C)より、Δλを40nm以上に設定した場合は、SPMによって広がったコントロール光のスペクトルがプローブ光の帯域に十分に及んでいるとは言えない。結果的に、Δλを40nmあるいは50nmに設定することで、図2に示すように四周期の正弦波特性が得られている。
【0051】
従って、三周期以上の正弦波特性を実現するためには、SPMによるコントロール光のスペクトルの広がりの程度を考慮した上で、コントロール光とプローブ光に40nm以上の波長差を与えればよいことがわかる。SPMによるコントロール光のスペクトルの広がりを考慮し、コントロール光とプローブ光に大きな波長差を設けることは、半周期のNOLM伝達特性を実現する際には不要であり、従来は考えられていなかった構成であるが、本実施例1により、多ビットAD変換を実現するために多周期正弦波特性を伝達関数として実現しなければならないNOLMにおいては、このような構成が必要であるとの知見が得られた。
【実施例2】
【0052】
図5に示す非線形光ループミラー20において、第1の実施例と同様、40Gsample/s以上の4ビット超高速光A/D変換を実施するため、コントロール光のパルス幅を1ps、プローブ光のパルス幅を0.5psとしてNOLM動作の検証を数値計算により行った。これにより、本実施例でも、四周期の正弦波伝達関数が得られたことの検証結果について、具体的な数値計算結果を用いて、以下に定量的に説明する。
【0053】
第1の実施例では、コントロール光をWDMカプラより入射してプローブ光Aと重ね合わせる際の時間差を零と設定したが、この条件ではコントロール光とプローブ光との間で発生する「ウォークオフ」により、それぞれのパルスが時間的に重なる度合いが時間的に非対称になる。このときの、ファイバ長手方向の距離に対するコントロール光とプローブ光Aの相対時間差の模式図を、図6(A)に示す。パルスどうしの重なり度合いが非対称になると、XPMによる位相シフトがプローブ光Aのパルス全体に均一でないため、干渉によるスイッチングの特性が劣化し、伝達関数の正弦波特性の品質が劣化する。ここで、「正弦波特性の品質が良い」ということは、「正弦波の山と谷の差が大きく保たれている」ことである。一方、時間遅延量調整手段21によりプローブ光Aにコントロール光と最大ウォークオフ時間(T)の半分の逆符号である初期時間差(−T/2)を与えた場合、パルスが時間的に重なる度合いが時間的に対称になる。このときの、ファイバ長手方向の距離に対するコントロール光とプローブ光Aの相対時間差の模式図を、図6(B)に示す。このとき、XPMによる位相シフトがプローブ光Aのパルス全体に均一になるため、伝達関数の正弦波特性の品質が良化する。
【0054】
なお第1の実施例では、Δλ=30、40、50nmの場合について、正常分散ファイバ15であるHNLFを伝搬後にプローブ光Aとコントロール光の間で生じる最大の相対時間差(最大ウォークオフ時間T)はそれぞれ、T=0.375、0.5、0.625psであった。プローブ光のパルス幅は0.5psであるので、最大ウォークオフ時間Tが無視できない値であることが分かる。
【0055】
一方、本実施例の場合には、プローブ光Aとコントロール光との間には、予め、−T/2の初期時間差を設けてあるので、最大ウォークオフ時間は第1の実施例の半分となる。
【0056】
図5に示す非線形光ループミラー20において、時間遅延量調整手段21によりプローブ光Aにコントロール光と最大ウォークオフ時間(T)の半分の逆符号である初期時間差(−T/2)を与えた場合(本実施例)について、プローブ光Aと同期をとってWDMカプラからのコントロール光を出射させる場合(第1の実施例)と同様の検証を行う。時間遅延量調整手段21によりコントロール光とプローブ光Aの間に初期時間差を与えること以外の条件は、第1の実施例と同様である。
【0057】
次に、時間遅延量調整手段21によりプローブ光Aにコントロール光と最大ウォークオフ時間(T)の半分の逆符号である初期時間差(−T/2)が与えている本実施例の場合において、NOLMの伝達関数を図7に示す。また、コントロール光のピークパワーPが4W及び5Wの場合の、NOLM20の透過ポート12Dを透過直後のコントロール光およびプローブ光のスペクトルを、それぞれ図8及び図9に示す。
【0058】
これによれば、第1の実施例と同様、プローブ光Aとコントロール光との波長差がΔλ=30nm(つまり、プローブ光の波長λ=1560nm)の場合、伝達関数の正弦波特性は三周期に及んでいないが、Δλ=40、50nm(つまり、プローブ光の波長λ=1570nm、1580nm)の場合は、正弦波特性の周期が四周期に達していることがわかる。一方、図2に示す伝達関数と比較すると、伝達関数の正弦波特性の品質が改善されていることが分かる。これは、コントロール光とプローブ光Aの間に最大ウォークオフ時間(T)の半分の逆符号である初期時間差を与えたことで、プローブ光Aのパルス全体にコントロール光からのXPMによる位相シフトが均一に作用した結果、3dBカプラ12における干渉によるプローブ光のスイッチングが良好に動作した結果である。
【0059】
なお、本発明は特にこれらの実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が適用可能である。即ち、第1の実施形態において、正常分散ファイバと異常分散ファイバとをこの順番で配置させるのではなく、逆の順番で配置させるとともに時計回りで伝搬するプローブ光Aの方がコントロール光よりも中心波長が短波長側にあるものを用いるようにしてもよい。さらに、この正常分散ファイバと異常分散ファイバとを8組設置したが、特にこの組数に限定されるものではない。
【0060】
同様に、第2の実施形態において、正常分散ファイバと異常分散ファイバとをこの順番で配置させるのではなく、逆の順番で配置させるとともに時計回りで伝搬するプローブ光Aの方がコントロール光よりも最大ウォークオフ時間の半分の逆符号である初期時間差(+T/2)だけ進ませる構成であってもよい。
【0061】
また、これらの実施形態では、正常分散特性を有するHNLFである正常分散ファイバ15と、異常分散特性を有するSMFである異常分散ファイバ16とを交互に接続させたものでNOLMを構成したが、正常分散特性を有するHNLFと、異常分散特性を有するHNLFとを交互に接続させることで、NOLMを構成するようにしてもよい。このように構成すれば、ファイバ長を短縮でき小型化するのに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、コントロール光とプローブ光の時間幅がそれぞれ極めて狭く、超高速標本化周波数にも対応し得る条件下で、NOLMの伝達特性として高品質な多周期正弦波特性、特に四周期の正弦波特性を実現することができる。従って、ここで得られる四周期NOLMを用いることにより、超高速標本化周波数のもとで4ビットの光A/D変換動作が実現可能な光A/D変換器を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るNOLMを示す構成図である。
【図2】図1のNOLMにおける伝達関数を示すグラフである。
【図3】(A)から(C)は図1のNOLMにおいてコントロール光のパワーが4Wのときに出力される、コントロール光およびプローブ光のスペクトルを示すグラフである。
【図4】(A)から(C)は図1のNOLMにおいてコントロール光のパワーが5Wのときに出力される、コントロール光およびプローブ光のスペクトルを示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るNOLMを示す構成図である。
【図6】(A)は図5のNOLMでのコントロール光とプローブ光でのWDMカプラ出射時の相対時間差を零とした場合の相対時間差の変化を示すグラフ、(B)はコントロール光とプローブ光でのWDMカプラ出射時の相対時間差をT/2とした場合の相対時間差の変化を示すグラフである。
【図7】図5のNOLMにおける伝達関数を示すグラフである。
【図8】(A)から(C)は図5のNOLMにおいてコントロール光のパワーが4Wのときに出力される、コントロール光およびプローブ光のスペクトルを示すグラフである。
【図9】(A)から(C)は図5のNOLMにおいてコントロール光のパワーが5Wのときに出力される、コントロール光およびプローブ光のスペクトルを示すグラフである。
【図10】従来のNOLMを示す構成図である。
【符号の説明】
【0064】
10・・・非線形光ループミラー(NOLM)
11・・・光ファイバ
12・・・3dBカプラ
12A・・・入射ポート(入力端)
12B・・・第1ポート
12C・・・第2ポート
12D・・・透過ポート(出力端)
13・・・WDMカプラ(コントロール光入力手段)
14・・・BPF(Band Pass Filter)
15・・・正常分散ファイバ(非線形媒体)
16・・・異常分散ファイバ
17・・・(光信号供給用)光ファイバ
18・・・(光信号出力用)光ファイバ
19・・・(コントロール光供給用)光ファイバ
20・・・非線形光ループミラー(NOLM)
21・・・時間遅延量調整手段
λp・・・(プローブ光の)波長
λc・・・(コントロール光の)波長
A・・・プローブ光A(光信号)
B・・・プローブ光B(光信号)
CR1、CR2・・・第1、第2偏波コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状の光ファイバの両端から入力された光信号のうち、いずれか一方の光信号の位相差を制御光信号のパワーで調節することによって、前記ループ状の光ファイバから出力される前記光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
前記ループ状の光ファイバと、
前記光ファイバとは別に設けた前記光信号供給用の光ファイバから入力された前記光信号を2分岐して前記ループ状の光ファイバの両端に出力し、かつ、前記ループ状の光ファイバを周回して前記両端から入力される前記光信号を前記光信号供給用の光ファイバ及び光信号出力用の光ファイバに分岐出力するように接続された光カプラと、
前記制御光信号を前記ループ状の光ファイバに入力させる制御光信号入力手段と、
前記ループ状の光ファイバの光路上に配置される非線形媒体と
を有し、
前記制御光信号と前記光信号が前記非線形媒体を伝搬し終えた際、自己位相変調(SPM)によって広がった前記制御光信号のスペクトルが、前記光信号のスペクトルに干渉しない程度に、前記制御光信号と前記光信号との波長に差が与えられていることを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項2】
前記制御光信号の入力ピークパワーの変化に対する前記光信号の出力ピークパワーの変化特性を示す伝達関数は、二分の一周期以上の正弦波形状を有することを特徴とする請求項1に記載の非線形光ループミラー。
【請求項3】
前記非線形媒体は、二つ以上の要素に分割されており、前記要素の間に各要素の分散を補償する媒体が挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非線形光ループミラー。
【請求項4】
前記制御光信号と前記光信号との間に、最大ウォークオフ時間の半分の逆符号である初期時間差が与えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非線形光ループミラー。
【請求項5】
上記1〜4のいずれか1項に記載の非線形光ループミラーを用いて量子化及び符号化を行うことを特徴とする光A/D変換器。
【請求項6】
伝達関数は四周期の正弦波形状を有し、四ビットの量子化及び符号化を行うことを特徴とする請求項5に記載の光A/D変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−209775(P2008−209775A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47732(P2007−47732)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】