説明

非透水性アスファルト舗装材

【課題】 非透水性アスファルト混合物の製造に要する加熱温度および舗装施工時の温度を低減することのできる非透水性アスファルト舗装材を提供すること。
【解決手段】 非透水性アスファルト舗装材を非透水性アスファルト混合物に、該混合物に対して0.30重量%以下の微量の、40℃での動粘度が20〜150cSt、引火点180℃以上の石油系炭化水素油、合成エステル系油、動植物系油などの難揮発性油を添加して構成する。これにより100〜110℃での敷き均しができるとともに、十分な強度を持つ舗装面が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非透水性アスファルト舗装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
元来非透水性アスファルト混合物を製造するに当たっては、アスファルト混合物を構成しているアスファルト、砕石、砂を予め加熱した後常温のフィラーを加え、混合して製造されている。製造の際の加熱温度は160℃〜170℃であって、それを道路にアスファルト舗装として施工する際には、アスファルト混合物の温度が少なくとも135℃までに保たれていなければ施工は困難とされていて、その限界難易度は125℃とされている。
【0003】
また、現場でのアスファルト混合物の温度を、施工がスムーズにできる135℃前後に保つためには時間的に限界があり、そのため運搬距離にも制限が加えられるのが現状である。その上アスファルト混合物を舗装道路として一般に共用させるには、加熱されたアスファルト混合物の温度を常温に下げる間の待ち時間が必要である。すなわちアスファルト舗装が一般に共用されるまでには、加熱して常温に戻すという二重の熱的時間的な浪費がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、非透水性アスファルト混合物の製造に要する加熱温度および舗装施工時の温度を低減することのできる非透水性アスファルト舗装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る非透水性アスファルト舗装材は、非透水性アスファルト混合物に、前記混合物に対して0.30重量%以下の微量の、40℃での動粘度が20〜150cSt、引火点180℃以上の難揮発性油を添加してなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
非透水性アスファルト混合物に、前記混合物に対して0.30重量%以下の微量の、40℃での動粘度が20〜150cSt、引火点180℃以上の難揮発性油を添加すると、非透水性アスファルト混合物の製造に要する加熱温度を135℃〜145℃に低減できるとともに、舗装施工時の温度を100℃〜110℃に低減することができる。これにより、消費エネルギーを低減することができ、また、常温に戻す時間を短くするので早く交通開放を行うことができ、さらには運搬距離を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
従来、敷き均し作業(レーキングと云う)の難易度の判断は、作業員の主観に頼っていた。このレーキングに要する力を客観的に計測するために、図1に示すレーキング力測定器を使用した。図1において、1は琺瑯製バット、2は熊手、3はバネ秤(秤量値2kg)、4は試験材料であり、熊手2の刃部(刃間1.5cm、刃幅0.5cm)を試験材料4内に挿入し、熊手2で試験材料4を掻き分けて掃引するのに要する力をバネ秤3で測定する。この測定では、最初に熊手2が動き始める時の荷重A(図1(a)の状態)と、掃引が進んで熊手2に試験材料4が絡んで掻き分けが困難となったとき時の荷重B(図1(b)の状態)とが測定される。
【0008】
まず、このレーキング力測定器で、通常の方法で製造された従来の非透水性アスファルト舗装材(密粒度舗装材料)を試験材料として、その試験材料6個で経時的に温度が低下する過程におけるレーキング力の変化を140〜90℃の範囲で測定した。その結果はつぎのとおりであった。
試験材料の温度140℃のとき、荷重Aは0.68kg、荷重Bは0.75kg
試験材料の温度130℃のとき、荷重Aは0.83kg、荷重Bは0.98kg
試験材料の温度120℃のとき、荷重Aは1.00kg、荷重Bは1.23kg
試験材料の温度110℃のとき、荷重Aは1.10kg、荷重Bは1.45kg
試験材料の温度100℃のとき、測定困難
試験材料の温度90℃のとき、測定困難
【0009】
一般に、非透水性舗装材(密粒度舗装材料)におけるレーキングの難易度は125℃を境とすると云われており、この経験値を基準にすると、レーキングが容易であることを保証する荷重Bは、130℃の値0.98kgと120℃の値1.23kgとの中間の約1.10kg以下であり、これを越えるとレーキングが困難になると言える。
【実施例1】
【0010】
そこで、上記の通常の方法で製造された従来の非透水性アスファルト舗装材(密粒度舗装材料)を145℃に加熱して、添加油を加えた。このときの添加油は混合中に蒸発しない引火点180℃の難揮発性の石油系炭化水素油(40℃の動粘度は46cSt(CGS系単位)、具体的には新日本石油社製無添加タービン油)を選び、非透水性アスファルト混合物に対して、0.02重量%添加(k1)、0.05重量%添加(k2)、0.10重量%添加(k3)、0.30重量%添加(k4)して非透水性アスファルト舗装材をそれぞれ作成した。なお、k0は無添加の非透水性アスファルト舗装材である。
【0011】
この非透水性アスファルト舗装材k0〜k4について、図1に示すレーキング力測定器で荷重Aと荷重Bを測定した。その結果をつぎに示す。なお、荷重の単位は(kg キログラム)である。
【0012】
140℃のとき
無添加舗装材k0は、 荷重A0.68 荷重B0.75
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A0.68 荷重B0.74
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A0.68 荷重B0.70
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A0.62 荷重B0.65
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.58 荷重B0.60
130℃のとき
無添加舗装材k0は、 荷重A0.83 荷重B0.98
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A0.70 荷重B0.79
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A0.70 荷重B0.77
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A0.68 荷重B0.72
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.61 荷重B0.67
【0013】
120℃のとき
無添加舗装材k0は、 荷重A1.00 荷重B1.23
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A0.78 荷重B0.87
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A0.70 荷重B0.85
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A0.70 荷重B0.80
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.65 荷重B0.74
110℃のとき
無添加舗装材k0は、 荷重A1.10 荷重B1.45
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A0.88 荷重B0.97
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A0.85 荷重B0.95
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A0.79 荷重B0.87
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.75 荷重B0.82
【0014】
100℃のとき
無添加舗装材k0は、 測定不能
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A0.96 荷重B1.08
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A0.95 荷重B1.05
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A0.88 荷重B0.97
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.86 荷重B0.92
90℃のとき
無添加舗装材k0は、 測定不能
0.02重量%添加舗装材k1は 荷重A1.17 荷重B1.25
0.05重量%添加舗装材k2は 荷重A1.15 荷重B1.20
0.10重量%添加舗装材k3は 荷重A1.12 荷重B1.12
0.30重量%添加舗装材k4は 荷重A0.90 荷重B1.03
【0015】
この測定結果から添加油を0.02重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k1)では、荷重Bが100℃で1.08kgであり、また、添加油を0.30重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k4)では、荷重Bが100℃で0.92kgであり、添加前の非透水性アスファルト舗装材(k0)では120℃で1.23kgと、120℃でレーキングが困難であるのに比し、添加油を0.02重量%添加するだけで、荷重Bが100℃で1.08kgを呈し、この100℃の低い温度でもレーキングが容易であることが分かる。すなわち、少なくとも添加油を0.02重量%以上添加すれば100℃の低い温度でレーキングが容易であることが分かる。
【0016】
図2は、上記の各測定結果の荷重Bを纏めてグラフで示すレーキング特性図で、図中k0は無添加非透水性アスファルト舗装材、k1は添加油を0.02重量%添加した非透水性アスファルト舗装材、k2は添加油を0.05重量%添加した非透水性アスファルト舗装材、k3は添加油を0.10重量%添加した非透水性アスファルト舗装材、k4は添加油を0.30重量%添加した非透水性アスファルト舗装材をそれぞれ示している。この図からも推量できるように、添加量を多くすればより低い温度でレーキングは容易となるように見られる。しかし、添加量を多くすればレーキングは容易となるということは、舗装後における舗装面の機械的強度を低くすることに繋がると推量される。
【0017】
そこで、無添加非透水性アスファルト舗装材(k0)、添加油を0.02重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k1)、添加油を0.05重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k2)、添加油を0.10重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k3)、添加油を0.30重量%添加した非透水性アスファルト舗装材(k4)を定法(145℃で突き固め、60℃で測定)にしたがってMarshall安定度の試験を行った。そのMarshall安定度の試験の結果をつぎに示す。なお、単位は、安定度は(kg/cm2)、フロー値は(0.01cm)である。
【0018】
無添加舗装材k0は 安定度8.55 フロー値30
0.02重量%添加舗装材k1は安定度8.20 フロー値30
0.05重量%添加舗装材k2は安定度7.75 フロー値33
0.10重量%添加舗装材k3は安定度7.33 フロー値36
0.30重量%添加舗装材k4は安定度5.15 フロー値40
【0019】
この試験結果から、非透水性アスファルト舗装材では、添加油の量を多くするにしたがって安定度は低下することが分かるが、添加量が0.02重量%〜0.1重量%ではいずれも実用上十分なものとされる値であり、添加量を0.30重量%にすると機械的強度の低下が進み、この0.30重量%の添加量が機械的強度の面から見て、非透水性アスファルト舗装材ではほぼ限界値であることが分かる。
【0020】
すなわち、このMarshall安定度の試験の結果と前記レーキング力測定結果とを総合すると、難揮発性の石油系炭化水素油(引火点180℃、40℃の動粘度95cSt)を、非透水性アスファル混合物に対して0.02重量%〜0.30重量%、好ましくは非透水性アスファルト混合物に対して0.02重量%〜0.1重量%の微量の添加油を添加するだけで、100℃程度の低温での敷き均しが可能となり、かつ、舗装面の機械的強度の低下も抑制される。
【0021】
ところで、一般に非透水性アスファルト舗装材は、新規非透水性アスファルト舗装材に道路から回収された非透水性アスファルト舗装廃材を混入して使われることも多い。このような場合においても、非透水性アスファルト混合物に微量の難揮発性油を添加して、非透水性アスファルト舗装材の製造および施工温度を下げる効果を享受することができる。
【0022】
なお、実施例では、非透水性アスファルト混合物に添加する添加油は、引火点180℃の難揮発性で40℃の動粘度46cStの石油系炭化水素油を用いているが、引火点については180℃以上、40℃の動粘度については、20〜150cSt、好ましくは30〜70cSt、添加油材については、合成エステル系油並びに動植物系油であってよく、いずれも実施例と同様の作用効果を享受することができる。また、微量の難揮発性油の添加は、加熱掘り起こし回収する非透水性アスファルト舗装面に予め塗着するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーキング力測定器の模式図である。
【図2】舗装材のレーキング特性図である。
【符号の説明】
【0024】
1 琺瑯製バット
2 熊手(rake)
3 バネ秤
4 試験材料
k0 無添加非透水性アスファルト舗装材
k1 添加油を0.02重量%添加した非透水性アスファルト舗装材
k2 添加油を0.05重量%添加した非透水性アスファルト舗装材
k3 添加油を0.10重量%添加した非透水性アスファルト舗装材
k4 添加油を0.30重量%添加した非透水性アスファルト舗装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透水性アスファルト混合物に、前記混合物に対して0.30重量%以下の微量の、40℃での動粘度が20〜150cSt、引火点180℃以上の難揮発性油を添加してなることを特徴とする非透水性アスファルト舗装材。
【請求項2】
請求項1に記載の非透水性アスファルト混合物は新たな非透水性アスファルト混合物であることを特徴とする非透水性アスファルト舗装材。
【請求項3】
請求項1に記載の非透水性アスファルト混合物は非透水性アスファルト舗装から回収した廃アスファルト混合物であることを特徴とする非透水性アスファルト舗装材。
【請求項4】
請求項1に記載の非透水性アスファルト混合物は、非透水性アスファルト舗装から回収した廃アスファルト混合物に新たな非透水性アスファルト舗装材を添加したものであることを特徴とする非透水性アスファルト舗装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−131861(P2006−131861A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361151(P2004−361151)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(399090318)光工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】