説明

非酸化型一剤式染毛剤

【課題】黒色401号を一定割合以上含み、染毛性が良くかつ皮膚着色の少ない非酸化型一剤式染毛剤の提供。
【解決手段】成分(A)〜(E)を含有し、pHが2〜5である非酸化型一剤式染毛剤。
(A)全酸性染料中18質量%以上の黒色401号を含み、橙色205号を黒色401号との質量比(橙色205号/黒色401号)が4以下となる範囲内で含んでもよい酸性染料成分 0.3〜3質量%
(B)ベンジルアルコール 1〜12質量%
(C)ジエチレングリコールモノアルキルエーテル 1〜7質量%
(D)エタノール 5〜15質量%
(E)有機カルボン酸又はその塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非酸化型一剤式染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非酸化型一剤式染毛剤は酸化型二剤式染毛剤と比べて、髪へのダメージが少ないという利点がある。一方で、直接染料を用いるものであることから、染毛性を高めようとすると皮膚着色が起りやすくなり、皮膚着色を抑えようとすると染毛性が低くなってしまうという問題がある。このように、染毛性が良く、かつ皮膚着色の少ない非酸化型一剤式染毛剤を得ることは困難であった。
【0003】
直接染料を用いた非酸化型一剤式染毛剤において染毛性の高さと皮膚着色性の低さを両立させる技術としては、直接染料と共に炭化水素油及びポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンを用いたもの(特許文献1)、酸性染料と共にラクトン化合物を用いたもの(特許文献2及び3)等が知られている。
【0004】
ここで、非酸化型一剤式染毛剤において、暗めの色への染毛を目的とする場合、直接染料として黒色401号や橙色205号がよく用いられ、これら2種の染料の量及び比率を調整して目的の色となるよう処方されている。しかし、この2つの染料は、染毛性、皮膚着色に関して性質が異なるため、両染料が種々の比率で併用される場合においても、染毛性の良さと皮膚着色の少なさの両者を同時に達成することは困難な作業であり、前記先行技術も、これを解決するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-205927号公報
【特許文献2】特開2002-241245号公報
【特許文献3】特開2002-241247号公報
【特許文献4】特開2000-128749号公報(比較例1)
【特許文献5】特開平5-58846号公報(本発明品1、4〜7)
【特許文献6】特開平3-141215号公報(発明品3、4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、酸性染料中の黒色401号の割合が多い、すなわち暗めの色に染毛するための非酸化型一剤式染毛剤において、染毛性が良くかつ皮膚着色の少ないものを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、黒色401号と橙色205号を一定の量比で使用した非酸化型一剤式染毛剤において、それぞれ一定量のベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びエタノールを併用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
なお、黒色401号、橙色205号と共に、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びエタノールを併用した非酸化型一剤式染毛剤の具体的処方は、例えば特許文献4〜6にも存在する。しかし、いずれの文献にも、染毛性に優れ、かつ皮膚着色の少ないものを提供するという本発明の課題については全く記載が無く、また各成分の比率も本発明とは異なり、実際その効果も劣るものである。
【0009】
本発明は、次の成分(A)〜(E)を含有し、pHが2〜5である非酸化型一剤式染毛剤を提供するものである。
(A)全酸性染料中18質量%以上の黒色401号を含み、橙色205号を黒色401号との質量比(橙色205号/黒色401号)が4以下となる範囲内で含んでもよい酸性染料成分 0.3〜3質量%
(B)ベンジルアルコール 1〜12質量%
(C)ジエチレングリコールモノアルキルエーテル 1〜7質量%
(D)エタノール 5〜15質量%
(E)有機カルボン酸又はその塩
【発明の効果】
【0010】
本発明の非酸化型一剤式染毛剤は、染毛性が良くかつ皮膚着色が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分(A)の酸性染料成分は、暗めの色に染毛するための非酸化型一剤式染毛剤を対象とするため、本成分全体(全酸性染料)中に黒色401号(C.I.20470)を18質量%以上含むものとし、好ましくは20質量%以上、特に25質量%以上含むものである。また、橙色205号(C.I.15510)を、黒色401号との質量比(橙色205号/黒色401号)が4以下、好ましくは3以下、特に2.5以下となる範囲内で含むことができる。
【0012】
成分(A)中には、黒色401号と橙色205号以外の酸性染料を含むことができ、例えば、赤色2号(C.I.16185)、赤色3号(C.I.45430)、赤色102号(C.I.16255)、赤色104号の(1)(C.I.45410)、赤色105号の(1)(C.I.45440)、赤色106号(C.I.45100)、黄色4号(C.I.19140)、黄色5号(C.I.15985)、緑色3号(C.I.42053)、青色1号(C.I.42090)、青色2号(C.I.73015)、赤色201号(C.I.15850)、赤色227号(C.I.17200)、赤色230号の(1)(C.I.45380)、赤色231号(C.I.45410)、赤色232号(C.I.45440)、橙色207号(C.I.45425)、黄色202号の(1)(C.I.45350)、黄色203号(C.I.47005)、緑色201号(C.I.61570)、緑色204号(C.I.59040)、緑色205号(C.I.42095)、青色202号(C.I.42052)、青色205号(C.I.42090)、かっ色201号(C.I.20170)、赤色401号(C.I.45190)、赤色502号(C.I.16155)、赤色503号(C.I.16150)、赤色504号(C.I.14700)、赤色506号(C.I.15620)、橙色402号(C.I.14600)、黄色402号(C.I.18950)、黄色403号の(1)(C.I.10316)、黄色406号(C.I.13065)、黄色407号(C.I.18820)、緑色401号(C.I.10020)、緑色402号(C.I.42085)、紫色401号(C.I.60730)、アシッドブラック52(C.I.15711)、アシッドブルー1(C.I.42045)、アシッドブルー3(C.I.42051)、アシッドブルー62(C.I.62045)、アシッドブラウン13(C.I.10410)、アシッドグリーン50(C.I.44090)、アシッドオレンジ3(C.I.10385)、アシッドオレンジ6(C.I.14270)、アシッドレッド14(C.I.14720)、アシッドレッド35(C.I.18065)、アシッドレッド73(C.I.27290)、アシッドレッド184(C.I.15685)、ブリリアントブラック1(C.I.28440)等が挙げられる。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0013】
これらの酸性染料は、良好な染毛性と皮膚着色の抑制を同時に満たす観点から、本発明の染毛剤中に0.3〜3質量%含有するものとし、更には0.35〜2質量%、特に0.4〜1.5質量%含有することが好ましい。
【0014】
成分(B)のベンジルアルコールは、成分(A)の毛髪内への浸透を促進して染毛性を高める機能を有するが、良好な染毛性と皮膚着色抑制を同時に満たす観点から、本発明の染毛剤中に1〜12質量%含有するものとし、好ましくは3〜11質量%、特に5〜10質量%含むものである。
【0015】
成分(C)のジエチレングリコールモノアルキルエーテルは、成分(B)のベンジルアルコールの溶解剤として働くと共に、黒色401号による皮膚着色を抑制する機能を有するものである。成分(C)としては、アルキル基の炭素数が1〜5であるものが好ましく、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノt-ブチルエーテル等が挙げられるが、なかでもジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0016】
成分(C)は、皮膚着色を有効に抑制すると共に、十分な染毛性を有するものとする観点から、本発明の染毛剤中に1〜7質量%含有するものとし、更には2〜7質量%、特に3〜6質量%含有することが好ましい。
【0017】
成分(D)のエタノールは、皮膚着色の抑制と、染毛剤の良好な保存安定性の観点から、本発明の染毛剤中に5〜15質量%含有するものとし、更には6〜14質量%、特に7〜13質量%含有することが好ましい。
【0018】
成分(C)と成分(D)の合計量に対する成分(B)の質量比(B)/〔(C)+(D)〕は、良好な染毛性と皮膚着色の抑制、染毛剤の保存安定性を同時に満たす観点から、0.1〜2、更には0.3〜0.8、特に0.4〜0.7が好ましい。
【0019】
また、成分(C)と成分(D)の合計量は、良好な染毛性と皮膚着色の抑制、染毛剤の保存安定性を同時に満たす観点から、本発明の染毛剤中の6〜20質量%、更には8〜18質量%、特に10〜16質量%が好ましい。
【0020】
成分(E)の有機カルボン酸としては、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましい。具体的には、ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が、ジカルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸等が、トリカルボン酸としては、クエン酸等が挙げられ、酸性アミノ酸としてはグルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。これらのうち、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸が好ましく、なかでも乳酸が好ましい。また、これら有機カルボン酸の塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、有機アミン化合物との塩が挙げられる。
【0021】
これら成分(E)は2種以上を併用してもよく、必要に応じ用いられる他のpH調整剤との組合せで染毛剤のpHを2〜5とする量使用されるが、具体的含有量としては、本発明の染毛剤中の0.01〜10質量%、更には0.1〜7質量%、特に1〜5質量%が好ましい。
【0022】
更に本発明の染毛剤には、施術時における染毛剤の垂れ落ちを防ぐため、成分(F)としてキサンタンガム又はその誘導体を含有させることができる。成分(F)としては、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガムが挙げられる。
【0023】
成分(F)の含有量は、本発明の染毛剤中の0.1〜5質量%、更には0.3〜4質量%、特に0.5〜3質量%が好ましい。
【0024】
更に、本発明の染毛剤には、前記成分のほか、通常の化粧品等に使用し得る成分、例えば界面活性剤、成分(F)以外の増粘剤、成分(B)及び(D)以外の溶剤、油性成分、シリコーン誘導体、成分(E)以外のpH調整剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、噴射剤等を、目的に応じて適宜配合することができ、残部を水として、通常の方法に従って製造することができる。
【0025】
本発明の染毛剤のpHは、十分な染毛性の点から2〜5に調整されるものとし、更には2〜4.5、特に2.5〜4に調整されるのが好ましい。pHの調整には、前記成分(E)の有機カルボン酸又はその塩、その他のpH調整剤を用いることができる。
【0026】
本発明の染毛剤を用いて染毛処理を行うには、染毛剤を頭髪に適用し、1〜60分、好ましくは2〜40分放置後、洗い流せばよい。本発明の染毛剤は、この放置の際、加熱せずとも良好に染毛することができ、これにより髪へのダメージを防ぎ、手間なく染めることもできるので、加熱を伴うことなく放置することがより好ましい。
【0027】
本発明の染毛剤を頭髪に適用後、この染毛剤が付着した皮膚の着色部分に、皮膚着色除去用組成物(リムーバー)を適用することにより、染毛後の皮膚着色をより一層抑制することができる。このような皮膚着色除去用組成物としては、下記成分(X)〜(Z)を含有しpHが9〜12である組成物を好適に使用することができる。
【0028】
成分(X):アルキルポリグルコシド 1〜10質量%
成分(Y):有機アルカリ剤 0.1〜5質量%
成分(Z):水 85質量%以上
【0029】
成分(X)のアルキルポリグルコシドとしては、アルキル部分が炭素数6〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、グルコシドの縮合度が1〜5であるものが好ましい。成分(X)の含有量は、皮膚着色除去用組成物中の1.5〜9、特に2〜8質量%が好ましい。
【0030】
成分(Y)の有機アルカリとしては、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミンが挙げられる。成分(Y)の含有量は、皮膚着色除去用組成物中の0.1〜5、特に0.2〜3質量%が好ましい。
【0031】
この皮膚着色除去用組成物を皮膚着色の除去に用いるには、例えば、これを脱脂綿、ティッシュペーパー等に含浸させた後、本発明の染毛剤が付着し着色した部分の皮膚に対し、軽くこするように又は湿布して適用すればよい。その後、皮膚着色除去用組成物は、洗い流すことが好ましい。また、皮膚着色防止をより一層確実にする観点から、皮膚着色除去用組成物は、染毛後のできるだけ早い段階で用いることが好ましく、染毛剤を適用した後、染毛剤をすすぎ落とすまでの間に用いて、染毛剤と共にすすぎ落とすことがより好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例1〜8,比較例1〜10
表1〜4に示す非酸化型一剤式染毛剤を調製し、以下の試験を行った。
【0033】
(試験方法)
・「染毛性」
染毛剤組成物1gを白髪トレス(1g)に均一に塗布した後、30℃で15分間放置した。その後お湯で水洗し、シャンプーで2回洗浄し、リンス処理を1回行った後、乾燥させた。このトレスについて、20名の評価者により白髪への染毛性を評価し、以下の基準で判定した。
【0034】
《判定基準》
◎ :白髪への染毛性が良いと評価した者が16名以上
○ :白髪への染毛性が良いと評価した者が12〜15名
○△:白髪への染毛性が良いと評価した者が8〜11名
△ :白髪への染毛性が良いと評価した者が4〜7名
× :白髪への染毛性が良いと評価した者が3名以下
【0035】
・「皮膚着色」、「リムーバー処理後の皮膚着色」
ヒト前腕部1cm2あたり1gの染毛剤組成物を均一に塗布した後、30℃で15分間放置した。その後お湯で水洗し、表面に付着した染毛剤組成物を充分に除去した後、乾燥させた。この前腕部の着色性について、下記基準で判定した。
またこの前腕部について、更に、この前腕部を下記処方のリムーバー組成物1gを含浸させたコットンで拭き取った後、乾燥させ、同様にその着色性について、下記基準で判定した。
【0036】
リムーバー処方
アルキルポリグルコシド(花王社製,AG10LK) 5質量%
アミノメチルプロパノール 1質量%
クエン酸 pHを10.5にする量
水 残量
【0037】
《判定基準》
◎ :ほぼ完全に除去できた
○ :かなり除去できたが、わずかに着色が残っている
○△:除去できたが、やや着色が残っている
△ :着色が残っている
× :かなり着色が残っている
【0038】
・「保存安定性」
東京硝子器械の広口規格びん(No.6)に50mLの染毛剤組成物を入れ、50℃の恒温下に1ヵ月保存した。その後、25℃の恒温槽に1時間放置し、スパーテルで組成物の液性を確認し、以下の基準で判定した。
【0039】
《判定基準》
○:保存前と同等
△:やや増粘しているが、使用上問題ない
×:ゲル化し、使用不可
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E)を含有し、pHが2〜5である非酸化型一剤式染毛剤。
(A)全酸性染料中18質量%以上の黒色401号を含み、橙色205号を黒色401号との質量比(橙色205号/黒色401号)が4以下となる範囲内で含んでもよい酸性染料成分 0.3〜3質量%
(B)ベンジルアルコール 1〜12質量%
(C)ジエチレングリコールモノアルキルエーテル 1〜7質量%
(D)エタノール 5〜15質量%
(E)有機カルボン酸又はその塩
【請求項2】
成分(C)がジエチレングリコールモノエチルエーテルである請求項1記載の非酸化型一剤式染毛剤。
【請求項3】
成分(C)と成分(D)の合計量に対する成分(B)の質量比(B)/〔(C)+(D)〕が、0.1〜2である請求項1又は2記載の非酸化型一剤式染毛剤。
【請求項4】
成分(C)と成分(D)の合計量が6〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の非酸化型一剤式染毛剤。
【請求項5】
成分(E)として、乳酸又はその塩を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の非酸化型一剤式染毛剤。
【請求項6】
更に成分(F)キサンタンガム又はその誘導体を0.1〜5質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の非酸化型一剤式染毛剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の非酸化型一剤式染毛剤を頭髪に適用し、1〜60分放置後、洗い流す染毛方法。
【請求項8】
放置が、加熱を伴わないものである請求項7記載の染毛方法。

【公開番号】特開2010−270025(P2010−270025A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121770(P2009−121770)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】