説明

面塗り材の製造方法

【課題】 仕上がり感を向上させた面塗り材及びこの面塗り材を用いた成型体を提供すること。
【解決手段】 本発明では、木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有する面塗り材において、接着剤の含有重量比率を10%以下としたことに特徴を有する。また、前記木竹粉として木竹材を破砕した後に所定範囲のサイズに分粒した木竹粒子を用いた点、前記接着剤として水溶性の接着剤を用い、前記溶剤として水を用いた点、前記木竹粉の原料となる木竹材と同一又は異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加した点、前記木竹粉と溶剤とを混合した後に前記接着剤を混合した点、前記木竹粉を前記接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒した点にも特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有する面塗り材、及び同面塗り材を成型した成型体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より壁面の仕上げを行う面塗り材として漆喰やモルタルが古くから広く使用されている。この漆喰は、粘土又は砂を主原料として消石灰や水を含有する面塗り材であり、また、モルタルは、セメントや砂を主原料として骨材や混和材と水を含有する面塗り材である。
【0003】
また、近年においては、植物などの有機物に接着剤と溶剤とを混合した面塗り材も開発されてきている。たとえば、特許文献1では、破砕した植物と接着剤と粘着剤と水とを混合した内装仕上材が開示されている。この内装仕上材においては、接着剤と粘着剤とが全体の含有重量比率で45%〜55%含有されていた。
【特許文献1】特開2001−12049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、古くから広く使用されている漆喰やモルタルは、無機質な面塗り材となっており、仕上がりの美観が損なわれてしまっていた。しかも、表面の美観を向上させるためには、壁紙を接着したり塗装をしたりする必要があり、施工に多大な労力や時間を要するとともに、シックハウス症候群の原因ともなりかねないおそれがあった。
【0005】
さらに、漆喰やモルタルは、比重の重い粘土やセメントや砂を多く含有していたために重量が重くなってしまい、施工場所への搬送費用が高くなり、また、作業者が作業中に手で保持できる量に限界があり、作業中に繰り返し何度も補給しなければならず、施工効率が悪いものであった。
【0006】
また、特許文献1に開示されているような有機物を含有する従来の面塗り材では、漆喰やモルタルなどに比べれば仕上がり感の向上は見られるものの、有機物以外に含有されている接着剤や粘着剤の含有重量比率が高く、施工後に表面に固化した接着剤や粘着剤が露出しており、有機物が有する自然な感触が得られず、有機物を含んでいながら人工的な面塗り材となってしまい、仕上がりの美観が損なわれてしまっていた。
【0007】
しかも、従来の有機物を含有する面塗り材では、接着剤や粘着剤の含有重量比率が高いことから、重量も重くなってしまい、漆喰やモルタルと同様に施工費用が高く、また、施工効率も悪いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有する面塗り材において、接着剤の含有重量比率を10%以下とすることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記木竹粉として、木竹材を破砕した後に所定範囲のサイズに分粒した木竹粒子を用いることにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記接着剤として、水溶性の接着剤を用い、前記溶剤として水を用いることにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記木竹粉の原料となる木竹材と同一種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加することにした。
【0012】
また、請求項5に係る本発明では、前記請求項1〜請求項4のいずれかに係る本発明において、前記木竹粉の原料となる木竹材と異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加することにした。
【0013】
また、請求項6に係る本発明では、前記請求項1〜請求項5のいずれかに係る本発明において、前記木竹粉と溶剤とを混合した後に前記接着剤を混合することにした。
【0014】
また、請求項7に係る本発明では、前記請求項1〜請求項6のいずれかに係る本発明において、前記木竹粉を前記接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒することにした。
【0015】
また、請求項8に係る本発明では、前記請求項1〜請求項7のいずれかに係る本発明において、前記木竹粉を前記接着剤及び溶剤に混合する前に難燃加工することにした。
【0016】
また、請求項9に係る本発明では、成型体において、前記請求項1〜請求項7に係る面塗り材を成型することにした。
【発明の効果】
【0017】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0018】
すなわち、請求項1に係る本発明では、木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有する面塗り材において、接着剤の含有重量比率を10%以下としているために、面塗り材の重量を軽減させることができ、搬送費用の低廉化や施工効率を向上させることができ、しかも、表面に接着剤が露出してしまうことがなくなり仕上がり状態の美観を向上させることができる。
【0019】
また、請求項2に係る本発明では、木竹粉として木竹材を破砕した後に所定範囲のサイズに分粒した木竹粒子を用いることにしているために、表面に露出する木竹粉のサイズを均一化することができるので、表面の平滑化を図ることができるとともに、仕上がり状態の美観をより一層向上させることができる。
【0020】
また、請求項3に係る本発明では、接着剤として水溶性の接着剤を用い、溶剤として水を用いることにしているために、有機溶剤の使用に起因する有害物質の揮発がなくなり、シックハウス症候群の発生を未然に防止することができる。
【0021】
また、請求項4に係る本発明では、木竹粉の原料となる木竹材と同一種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加することにしているために、原料となる木竹材が本来有する香りや色調や消臭・除虫などの機能を強調することができる。
【0022】
また、請求項5に係る本発明では、木竹粉の原料となる木竹材と異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加することにしているために、木竹粉の原料となる木竹材が本来有する香りや色調や消臭・除虫などの機能に加えて、木竹粉とは異なる木竹材が有する香りや色調や消臭・除虫などの機能を添加することができ、これらの相乗効果を得ることができる。
【0023】
また、請求項6に係る本発明では、木竹粉と溶剤とを混合した後に接着剤を混合することにしているために、木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に木竹粉の表面に接着剤が付着することになるので、木竹粉の内部に接着剤が浸透してしまうのを防止することができ、これにより、接着剤の使用量を低減することができ、面塗り材の重量を低減することができる。
【0024】
また、請求項7に係る本発明では、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒することにしているために、面塗り材の腐食を防止することができ、面塗り材の長寿命化を図ることができる。
【0025】
また、請求項8に係る本発明では、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に難燃加工することにしているために、面塗り材を塗布した構造物の焼損を防止することができる。
【0026】
また、請求項9に係る本発明では、成型体において、前記請求項1〜請求項8に係る面塗り材を成型することにしているために、上記した面塗り材が有する効果を保持した成型体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明では、木材又は竹材若しくはこれらが混在したものを木竹材と呼び、木材を破砕した木粉又は竹材を破砕した竹粉若しくはこれらが混在したものを木竹粉と呼び、木粉を所定範囲内のサイズに分粒したもの又は竹粉を所定範囲内のサイズに分粒したもの若しくはこれらが混在したものを木竹粒子と呼ぶ。
【0028】
本発明に係る面塗り材は、木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有するものであり、たとえば、木竹粉を100重量部、接着剤を8〜10重量部、溶剤を400〜600重量部として、接着剤の含有重量比率を10%以下、好ましくは1%〜2%としたものである。
【0029】
この接着剤の含有重量比率としては、10%以上とすると、全体の重量が重くなるとともに、施工後の表面に接着剤が多く露出してしまい、5%〜10%とすると、施工後の表面にほとんど接着剤が露出しなくなり、2%〜5%とすると、施工後の表面が木竹粉で覆われて接着剤が露出することがなくなって外観や手触りが良好となり、1%〜2%とすると、全体の重量が軽くなり、しかも、施工後の表面が完全に木竹粉で覆われることになって外観や手触りが木竹材に近似するようになり、また、1%以下とすると、接着強度が低下してしまうことが確認された。
【0030】
そのため、接着剤の含有重量比率を10%以下(好ましくは1%〜2%)とすることによって、木竹粉と比較して比重の重い接着剤の含有量が低減されることに伴って面塗り材の重量を軽減させている。
【0031】
これにより、本発明では、面塗り材の搬送費用を低廉化することができ、また、施工時に作業者が保持できる面塗り材の量(体積)を増大させることができるので、施工時の面塗り材の補給回数を減らすことができて、施工効率を向上させることができる。
【0032】
しかも、本発明では、接着剤の含有重量比率を10%以下(好ましくは1%〜2%)とすることによって、施工後の表面に接着剤が露出してしまうのを防止することができるので、施工後の表面が木竹粉だけで覆われることになり、面塗り材の仕上がり状態の美観を向上させることができる。
【0033】
なお、本発明に係る面塗り材に含有する木竹粉は、1種類の木竹材を原料とするものであってもよく、また、複数種類の木竹材を原料とするものを混合したものであってもよい。
【0034】
また、本発明では、面塗り材に含有させる木竹粉として、木竹材を破砕した後に所定範囲のサイズに分粒した木竹粒子を用いることもできる。
【0035】
このように、木竹粒子を用いた場合には、木竹粉と接着剤との混合が良好に行えるとともに、施工後の表面に露出する木竹粉のサイズを均一化することができるので、表面の平滑化を図ることができるとともに、仕上がり状態の美観をより一層向上させることができる。
【0036】
また、本発明では、接着剤として水溶性の接着剤を用い、溶剤として水を用いることもできる。
【0037】
このように、水溶性の接着剤と水とを用いた場合には、有機溶剤を使用する必要がなくなり、面塗り材の製造コストを低減することができるとともに、有機溶剤の使用に起因する有害物質の揮発がなくなってシックハウス症候群の発生を未然に防止することができる。
【0038】
また、本発明では、木竹粉の原料となる木竹材と同一種類の木竹材から抽出した木竹材エキス(樹液)を添加することもできる。
【0039】
このように、木竹粉の原料となる木竹材と同一種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加した場合には、原料となる木竹材が本来有する香りや色調や消臭・除虫などの機能を木竹粉だけを用いた場合よりも強調することができる。なお、添加する木竹材エキスが木竹粉同士を接着できる程の粘性(接着力)を有する場合には、接着剤の使用量を低減することができる。
【0040】
また、本発明では、木竹粉の原料となる木竹材と異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキス(樹液)を添加することもできる。
【0041】
このように、木竹粉の原料となる木竹材と異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加した場合には、木竹粉の原料となる木竹材が本来有する香りや色調や消臭・除虫などの機能に加えて、木竹粉とは異なる木竹材が有する香りや色調や消臭・除虫などの機能を添加することができ、これらの相乗効果を得ることができる。なお、添加する木竹材エキスが木竹粉同士を接着できる程の粘性(接着力)を有する場合には、接着剤の使用量を低減することができる。
【0042】
また、本発明では、木竹粉と溶剤とを混合した後に接着剤を混合することによって面塗り材を製造することもできる。
【0043】
このように、木竹粉と溶剤とを混合した後に接着剤を混合した場合には、木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に木竹粉の表面に接着剤が付着することになるので、木竹粉の内部に接着剤が浸透してしまうのを防止することができ、これにより、接着剤の使用量を低減することができ、面塗り材の重量を低減することができる。
【0044】
なお、面塗り材に木竹材エキスを添加する場合には、木竹粉と木竹材エキスとを混合した後に溶剤を混合し、その後、接着剤を混合すると、木竹材エキスを木竹粉の内部に浸透させることができて木竹材エキスの有する香りや消臭などの機能を長期間にわたって発揮させることができるとともに、溶剤や接着剤の使用量を低減することができる。
【0045】
また、本発明では、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒することもできる。
【0046】
このように、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒した場合には、木竹粉の原料となる木竹材の状態で殺菌消毒するよりも良好に殺菌消毒がなされることになるとともに、面塗り材の腐食を防止することができ、面塗り材の長寿命化を図ることができる。
【0047】
また、本発明では、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に難燃加工することもできる。
【0048】
このように、木竹粉を接着剤及び溶剤に混合する前に難燃加工した場合には、木竹粉の原料となる木竹材の状態で難燃加工するよりも良好に難燃加工がなされることになるとともに、面塗り材を塗布した構造物の焼損を防止することができる。
【0049】
また、本発明では、上記した面塗り材をタイル状やブロック状などの様々な形態に成型することもできる。
【0050】
このようにして成型した成型体は、上記した面塗り材が有する効果を保持した成型体とすることができる。
【0051】
以下に、本発明に係る面塗り材の製造方法について具体的に説明する(図1参照。)。
【0052】
まず、原料となる杉や檜や竹などの木竹材をロータリーカッターを用いて破砕して、粒径が3mm以下の木竹粉を生成する。なお、単に木竹材をロータリーカッターで破砕しただけでは、粒径が3mm以下の様々な粒径の木竹粉が混在した状態となっている。
【0053】
次に、木竹粉を篩によって所定サイズ毎に分粒し、所定範囲のサイズ(たとえば、粒径が1mm以上2mm以下)の木竹粒子を生成する。
【0054】
次に、紫外線やオゾンや薬液を用いて木竹粒子を殺菌消毒する。
【0055】
次に、ミョウバンなどの難燃剤に木竹粒子を浸漬することによって木竹粒子を難燃加工する。
【0056】
次に、混合容器の内部に木竹粒子を投入し、これに、木竹材から抽出しておいた木竹材エキスを混合する。これにより、木竹材エキスが木竹粒子の内部に浸透することになる。
【0057】
次に、混合容器の内部に溶剤としての水を投入して混合する。これにより、水の一部が木竹粒子の内部に浸透し、残りの水によって流動状態となる。
【0058】
最後に、混合容器の内部にコーン粉やふのりなどの植物系接着剤や乳粉などの動物系接着剤や酢酸ビニール系接着剤などの接着剤を投入して混合する。これにより、木竹粒子の表面に接着剤が付着してペースト状態の面塗り材となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る面塗り材の製造方法を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木竹材を破砕した木竹粉と接着剤と溶剤とを含有する面塗り材であって、接着剤の含有重量比率を10%以下としたことを特徴とする面塗り材。
【請求項2】
前記木竹粉として、木竹材を破砕した後に所定範囲のサイズに分粒した木竹粒子を用いることを特徴とする請求項1に記載の面塗り材。
【請求項3】
前記接着剤として、水溶性の接着剤を用い、前記溶剤として水を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面塗り材。
【請求項4】
前記木竹粉の原料となる木竹材と同一種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の面塗り材。
【請求項5】
前記木竹粉の原料となる木竹材と異なる種類の木竹材から抽出した木竹材エキスを添加したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の面塗り材。
【請求項6】
前記木竹粉と溶剤とを混合した後に前記接着剤を混合したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の面塗り材。
【請求項7】
前記木竹粉を前記接着剤及び溶剤に混合する前に殺菌消毒したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の面塗り材。
【請求項8】
前記木竹粉を前記接着剤及び溶剤に混合する前に難燃加工したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の面塗り材。
【請求項9】
前記請求項1〜請求項8に記載の面塗り材を成型したことを特徴とする成型体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木竹材を破砕した木竹粉と溶剤とを混合して木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に接着剤を混合することによって接着剤の含有重量比率を10%以下とした面塗り材の製造方法。
【請求項2】
木竹材を破砕した木竹粉と木竹材から抽出した木竹材エキスとを混合し、木竹粉の内部に木竹材エキスが浸透した後に溶剤を混合し、木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に接着剤を混合することによって接着剤の含有重量比率を10%以下とした面塗り材の製造方法。
【請求項3】
木竹材を破砕した木竹粉を難燃剤に浸漬した後に溶剤を混合し、木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に接着剤を混合することによって接着剤の含有重量比率を10%以下とした面塗り材の製造方法。
【請求項4】
木竹材を破砕した木竹粉を難燃剤に浸漬した後に木竹材から抽出した木竹材エキスを混合し、木竹粉の内部に木竹材エキスが浸透した後に溶剤を混合し、木竹粉の内部に溶剤が浸透した後に接着剤を混合することによって接着剤の含有重量比率を10%以下とした面塗り材の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−342596(P2006−342596A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169814(P2005−169814)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503453484)有限会社紅屋 (6)
【Fターム(参考)】