説明

面境界アンチエイリアス回路

【課題】僅かなバッファ容量で高速にアンチエイリアスを行うことができるようにする。
【解決手段】面が交差する可能性のあるグリッドについて、z値と傾き、識別子、ポリゴンの輝度(色)を面交差情報バッファ40を設けて記憶し、面交差情報を含むグリッドに関し、複数のサンプリング点を設け、記憶された全てのポリゴンに関して、それぞれのサンプリング点におけるz値を計算する回路41を通して、視点に最も近いポリゴン識別子とz値を比較回路42およびセレクタ43のそれぞれで決定し、識別子およびz値をレジスタ44および45にそれぞれ記憶する手段と、サンプリング点でのポリゴン識別子を識別子計数回路46で計数した後、その数とポリゴンがもつそれぞれの輝度を乗算回路48で乗算し、さらにそれら輝度を加算器49で合成して、面境界線上のグリッドの輝度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
この発明は、コンピュータグラフィックスの描画技術に関し、ポリゴン面が互いに交差する境界線上のアンチエイリアス処理および前記アンチエイリアス処理のための論理回路、また前記回路を搭載した装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【002】
限られた容量のデジタル画像メモリシステムでは、映像にエイリアス(段階状波形)が発生する。このエイリアスを軽減するために、スーパーサンプリング、A−バッファ、マルチサンプリングまたバウンダリーエッジ法などのアンチエイリアス技術が過去20年程の間に実用化されたが、それぞれが性能対コストに関するトレードオフ問題を持つ。本発明は、特願2005−33612や特願2005−359568で提案されたポリゴン外郭線(シルエットライン)上のアンチエイリアス技術ではなく、複数の3次元面が交差する点(あるいは面が接する境界線)上に生じるエイリアスを軽減する技術で、シルエットラインのアンチエイリアスの技術と本発明の手段を組み合わせることで、フルシーンのアンチエイリアスを可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【003】
画素(以下グリッドという)内で複数の面が交差する場合エイリアスが発生する。グリッド内で面が交差するか否かを判断するには、それぞれのポリゴン面がもつxy軸に対するz方向の傾きを知る必要がある。グリッド原点(グリッドの中心あるいは左下隅など)における座標値は、外郭線補間後に続くスパン補間回路で得られる。また面のxおよびy座標の変化に対するz値の変化dzx=dz/dxとdzy=dz/dy(以下dzxとdzyをzスロープという)はポリゴンの3点法等で予め求めることができる。交差はグリッドの4頂点で2つの面のそれぞれのz座標値をそれぞれ差分し、符号が異なれば交差と判定できる。交差する場合は、交差線とグリッド辺からそれぞれの面の面積比を求め、それぞれの面が持つ輝度(色)をその比率に応じてブレンディングする。本発明では、グリッド内における面の交差判定のためのzスロープの生成と面交差情報のバッファリングの手段、またシルエットラインアンチエイリアス処理との回路実装上整合性を得ることをそれぞれ課題とし、それら手段によって、僅かなバッファ容量で高速にアンチエイリアスを行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【004】
本発明では、ポリゴンの塗りつぶしは、まず頂点間を結ぶ外郭線を線形補間し、その後、外郭線と交わる水平軸上の両端点をスパン(水平)方向に補間する。スパン補間をポリゴンの下から上に順次繰り返すことでポリゴン内部全体を塗りつぶす。外郭線は3次元直線であることから、補間値はx、y、z座標値を含む。外郭線とスパン補間とはパイプライン処理が可能であり、本発明では左右の外郭線を同時補間し、それぞれの外郭線上でy軸方向に1画素(グリッド)歩進するまでx軸方向の補間を独立して進め、もし、左右一方の外郭線が先にy軸方向に1つ歩進した場合は、他方が同様にy軸を1つ歩進するまで待つ。この結果、左右両外郭線の高さが揃った段階で、左右両端点の座標値をスパン補間回路に出力する。この結果y軸方向への歩進前と後で、xとy両軸の1画素分移動量に対するz座標の変移量も判明する。また、xあるいはy軸の単独の移動量に対するz値の移動量も外郭線補間段階で求まる(xyの傾きが1の場合はdzxとdzyは同一値と見なす)。以上から本発明では、ポリゴン頂点を用いた3点法ではなく、前記[003]のzスロープを、外郭線を補間する段階で得る。
【005】
本発明では、隠面消去を行うためのzバッファには、視点に最も近いポリゴンのグリッド原点のz座標値と共に、1組のzスロープをグリッド毎に記憶し、これと後発のポリゴンがもつグリッド原点のz値とzスロープからそれぞれのグリッド4頂点のz値を求め、レンダリング毎に差分比較する。差分符号に正負が含まれれば、2つの面が交わっていると判定する。ポリゴンがグリッド内で頂点あるいは外郭線を含む場合には、外郭線交差グリッドとして特願2005−359568の手段で外郭線情報を記憶し、別途アンチエイリアス処理されるため問題は生じない。本発明では、面交差と判定すれば、そのグリッドは外郭線交差グリッドと同様に、アンチエイリアス処理を行う。またzバッファとは別に交差面をもつそれぞれのグリッドに対してのみ面交差情報バッファを設け、面交差の有無を示す交差フラグ、先発および後発ポリゴンの色、面(ポリゴン)の識別子、zスロープをそれぞれ記憶する。特願2005−359568と異なる点は、外郭線情報にはポリゴンの左右辺情報や端点情報が含まれたが、面交差では、交差する面積比を求めることが目的であって、それらの情報を記憶する必要はない。本発明においても特願2005−359568のシルエットラインバッファ同様に交差しているグリッドだけが対象となり前記情報が記憶されるためバッファ容量は少なく構成できる。
【006】
zバッファに記憶されるz値は、視点に最も近いz座標値となるが、前記[005]ではそれに加え1組のzスロープをそれぞれ画素毎に記憶するとした。デフォルトでは最初にレンダリングされる面のグリッド原点z値とzスロープを記憶し、交差フラグはリセットする。その後、グリッド内で交差する面がレンダリングされた場合、本発明ではzバッファおよび面交差情報バッファに対して下記の処理を行う。
(1)後発の面のグリッド4頂点のz値がすべて、視点より遠方に位置した場合、すでに記憶されたzバッファの値は更新しない。
(2)後発の面のグリッド4頂点のz値がすべて、視点に近い場合は、zバッファを後発のグリッド原点z値、zスロープに置き換えて記憶する。同時に面交差情報バッファの交差フラグをリセットする。
(3)後発の面が先発の面と交差する場合:
(a)2つの面の場合:面交差情報バッファには、交差フラグを立て、2つのそれぞれの面の識別子、色、グリッド原点z値と、その面のzスロープを記憶する。またzバッファには最も視点に近い方のグリッド原点z値と、そのzスロープを記憶する。
(b)3番目以降のレンダリング面が交差する場合:面交差情報バッファには、3番目の面の識別子、色、グリッド原点z値と、そのzスロープを逐次記憶する。またzバッファには最も視点に近いグリッド原点z値とその面のzスロープを記憶する。
【007】
特願2005−359568では、シルエットラインバッファには外郭線の通過を示す外郭線フラグ、また外郭線情報として、外郭線有効フラグ、グリッド交差座標点、交差軸、傾き、左右辺、x軸符号、投影中心からの距離(z値)のそれぞれを記憶する。本発明では交差フラグ、識別子、グリッド原点z値、zスロープとし、2つ以上の面が交差する場合は、グリッド原点z値の視点に最も近いセットから順次配列して記憶する。また特願2005−359568では、全表示空間に対応する1ビット/画素からなる2次元メモリを設け、外郭線上の画素点に外郭線フラグ(1ビット)を記憶し、ビデオ走査段階においてこのフラグを検出すると、そのグリッドに対してアンチエイリアス処理を行った。本発明でも、外郭線通過画素に1ビットフラグを立てる2次元メモリを共有し、面交差が発生した画素点にフラグを立てる。そのグリッドが外郭線あるいは面交差かの区別は、その画素点のアドレスから求めるシルエットラインおよび面交差情報バッファに記憶されたそれぞれのフラグの有無を検出する。
【008】
複数の面が交差する場合、それぞれの面の面積を求める方法として、サンプリング点による面積近似計算は一般的によく知られた方法である。グリッド内にサンプリング点を複数設け、それぞれのサンプリング点毎に、視点に最も近い面の識別子とz値を記憶し、すべての面を検証した後、それぞれの面のサンプリング点数を計数し、その数に比例した面積と、その面がもつ輝度とをブレンディングする。あるいはサンプリング点のそれぞれに色情報を記憶し、面の描画後に、全ての色情報をブレンディングする手段もある。本発明ではすべてのレンダリングが終了し、画像メモリに記憶された映像をビデオ走査して読み出す時点で、面交差情報バッファを読み出し、面交差情報を基に面積を求め、アンチエイリアス処理を行う。従来のように、複数の2次元配列メモリを設けるスーパーサンプリングや、外郭線や面交差グリッド毎のサンプリング点分のフラグメント化をレンダリングの段階で行う構造ではなく、レンダリングの段階では、2次元画素配列情報ではなく、面交差グリッドに対してのみ、その情報(z、zスロープ、識別子、色)を面交差情報バッファに記憶し、ビデオ走査時点で、これら面交差情報を読み出す。
【009】
本発明においては、グリッド内にサンプリング点(例えば水平軸5点、垂直軸5点の計25点)を想定し、ビデオ走査段階で、面交差情報バッファから読み出したグリッド原点z値、zスロープから、25点それぞれのz座標値を数値展開で求め、これら座標値を25個のレジスタに記憶する。1例としてサンプリング点を1/2に分割した位置に想定すれば、z値のシフト・ダウン処理で、容易にサンプリング点位置のz値が求まる。2番目の面のグリッド原点z値、zスロープを次に読み出し、これを前記同様に展開した後、25点それぞれのサンプリング点における前記レジスタのz値と比較し、視点に最も近いz値とその面の識別子をレジスタに記憶する。レジスタはz値と面の識別子を記憶する容量を持つ。よって本発明では1例として25点のz値を計算する回路と25個のレジスタのみを持ち、グリッド毎のサンプリングバッファ(あるいはサブピクセルバッファ)は設けない。すべての面の処理後、レジスタに残った識別子の数を求め、次にそれぞれの識別子がもつ色(色は前記レジスタ以外に色を記憶する面の識別子とレジスタを設ける)と、識別子数を乗算して、所定の面の色を決定し、さらにそれらをブレンディング(加算)してグリッド全体の色とする。この結果、交差面の数に関らず、z値算定回路、比較回路およびレジスタはグリッド1組分のみで構成する。
【010】
ビデオ走査段階でグリッド毎の上記の処理を完了するには、例えば120MHzのビデオ走査周波数で、LSI回路で可能な動作周波数を500M−1GMHzとすると、約4−8クロックサイクル/画素の演算サイクルとなり、並列度を16−8回路(サンプリング点が16であれば4−2回路)のパイプラインでビデオ走査速度に対応できる。一方、面交差情報バッファからの読み出しは、グリッド原点z値、zスロープを同時に読み出し可能なメモリ構成とすれば、4−8面を、またメモリをバンク構造として、2面同時読出しが可能となれば(メモリ内蔵構造であれば可能)、1演算サイクル内に8面以上が読み出し可能となる。よって、面交差情報バッファは、グリッド内に交差する面の数を、視点に最も近いものから順に所定の数まで記憶する構造とすることによって効率的な処理が可能となる。
【011】
以上から本発明では、サンプリング点のz値算定、面積計算および輝度決定に下記の(1)−(7)の処理を行う。
(1)ビデオ走査段階で外郭線2次元メモリを読み出し、外郭線フラグの有無をテスト。フラグがあれば、そのアドレスから面交差情報バッファをアクセスし、さらに交差フラグをテスト。交差フラグが立っていれば、面交差情報バッファから識別子、グリッド原点z値、zスロープを読み出す。
(2)グリッド原点z値、zスロープから、想定したサンプリング点それぞれのz値を求め、z値とその面の識別子をレジスタにそれぞれ記憶する(識別子は交差面の上限を4とすれば2ビットの表現でよい)。また色レジスタを面の数だけ設け、面の色をレジスタに記憶する。
(3)面交差情報バッファから、2番目の面のグリッド原点のz値、zスロープを読み出す。
(4)(2)と同様にサンプリング点のz値を求め、先に求めたz値との比較を行う。視点に近いz値の方と、その識別子を前記レジスタに書き込む。2番目の面の色は最初の面の記憶された前記色レジスタに追加記憶する。
(5)(3)と(4)を所定の面の数、あるいは交差面の数だけ繰り返す。色レジスタは面毎に追加記憶する。例えば2つの面が交差する場合は(1)から(4)までの処理で面交差情報バッファからの読み出しは終了となる。
(6)レジスタを検索し、同じ識別子をもつレジスタ数を計数する。また色レジスタから面の色を読み出し、この色と対応する前記レジスタ数を乗算し、この値にサンプリング点数で正規化する。すべての面に対して色が求まれば、これら全てを加算して、求めるグリッドの色とする。
(7)以上の処理を並列パイプラインで、ビデオ周波数のクロックサイクル内で行い、ビデオ画素信号としてモニターに出力する。
これらの処理が時間内に対応できない場合は、読み出し画像メモリをダブルバッファとし、前記処理部とビデオ走査部とは非同期にした構造であれば、色決定までの処理時間に制約はなくなる。
以上から本発明では、複数の面が交差する境界線上のアンチエイリアスを、シングルパスのレンダリングシステムにおいて実装することができ、本発明の手段と、例えば特願2005−359568で提案されたシルエットラインアンチエイリアス手法とを組み合わせることにより全画面のアンチエイリアスを可能にする。これら技術をLSIに実装し、コンピュータグラフィックスまた画像処理回路に組み込むことで、高品質な映像装置が得られることになる。
【発明の効果】
【012】
本発明により、面境界線上でジャギーのない高品質なCG画質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【013】
本発明の技術はLSI、プログラマブル論理回路等への実装あるいはIP(Intelligent Property)の形態で実施され、コンピュータグラフィックスプロセッサに応用される。
【実施例】
【014】
図1には本発明に係わる面交差状態のポリゴンを示す。図1において2つの面10と11が交差(境界)線12をもって交差している。本発明は、この交差線上に発生するエイリアスを滑らかに見せるための手段を実現することである。交差線上の1画素分(以下グリッドという)13を拡大したものを右図に示す。グリッドを正方形と定義し、それぞれの辺の長さは1とする。グリッド13に交差線12が横断し、交差線の左上はポリゴン10が、右下はポリゴン11の領域となる。グリッドの色は、それぞれのポリゴンがもつ色と、それぞれが占める面積比に応じた配分とし、それらを加算することによってアンチエイリアス効果を得ることができる。
【015】
図2は本発明に係わるポリゴン外郭線の左右辺のシルエットライン補間画素を示す。ポリゴンはまずその外郭線が左右辺を頂点間で線形に補間し、次に左右両外郭線上の画素を水平方向に補間する。図2において、外郭線補間回路は例えば、右辺ではR0からR2、左辺ではL0からL2の方向に歩進する。図2ではそれぞれの辺がx軸を長軸とする(x軸方向に傾いた)線を示す。R0からR1へはx方向の距離は1となり、R0とR1でのそれぞれのz値の差分が前記[003]のdzxとなる。またR1からR2へはxおよびy軸が同時に変化しており、この時点でxyの同時1移動量に対するz値が求まり、先のdzxと合わせて、dzxとdzyを得ることができる。水平補間では左右辺がR1からR2、およびL1からL2に変化し、両辺の高さが揃った時点でR1とL1の座標値や色情報を含む画素情報をスパン回路に出力する。すなわち外郭線補間回路から、最初のスパン回路へのデータ転送時に、dzxとdzyを求め、このzスロープを引き渡すことができるため、ポリゴンのxあるいはy軸方向のz値の変化量を、予め求めておく必要はない。
【016】
図3は本発明に係わるグリッド内のサンプリング点の1例を示す。前記手段によってzスロープが得られ、またスパン補間によってそれぞれのグリッド原点のz座標値が出力されると、グリッド内の任意の点のz値を求めることができる。図3ではグリッド頂点を含む25点のサンプリング点を1例として示しているが、図3に示すようにグリッドの分割間隔を1/2に(n>=1)することが、z値のシフト処理によって計算可能なことで有利となる。また図3では3つの面が交差している状態を示している。グリッドコーナーP40を含む面は13点、P44は5点、P04では7点のサンプリング点が含まれている。このサンプリング点の数で面積比率(13:5:7)を決定する。本発明では、グリッド原点座標値とzスロープとから、それぞれのサンプリング点Pij(図3の例ではi=0−4,j=0−4)のz値を求め一時的にそれらを記憶する。次に読み出される面のz情報から、再びそれぞれのサンプリング点のz値を求め、これらとレジスタに記憶された面のz値を比較し、サンプリング点毎に始点に最も近いz値にレジスタを置き換える。本発明はこれらの処理はレンダリング(スパン補間)段階では行わない。この計算はビデオ走査読み出し段階で、交差面を含むグリッドだけを対象とし、レンダリング段階での画素毎の処理は、原点座標値とzスロープとから面の交差有無と隠面消去のみを検証する。これは図3に示すグリッド頂点P00、P04、P44、P40に対しz値比較を行うことである。レンダリング段階において、4グリッド頂点に対し、zバッファに記憶された面のz値と比較し、もしこれら4点のいずれかが正負を含む場合はzバッファに記憶された面と交差したものと見なし、z値、zスロープおよび識別子を面交差情報バッファに記憶する。よって図1に示す面交差の場合、面交差情報バッファには、ポリゴン10と11のそれぞれのグリッド原点座標値(zcとする)、zスロープ、識別子および面輝度(カラー)が記憶される。交差面が3つ以上では、新規の面のzc、zスロープ、識別子また面輝度を追加記憶する。zバッファは常に視点に近い面のzcと、その面が持つzスロープを更新記憶(置き換え)する。
【017】
図4は本発明のビデオ走査段階で面交差グリッド毎の輝度を決定する回路を示す。図4において面交差情報バッファ40には、それぞれの交差する面毎に、それぞれグリッド原点(グリッドの中心あるいは左下コーナー)座標値zc、dzx、dzy、識別子およびカラー値を記憶する。この内、原点座標値zc、zスロープは所定のサンプリング点でのz値を計算するため回路41に出力し、一方、識別子とカラー値はセレクタ43に出力する。サンプリング点z値計算回路41では、例えば25点のサンプリング点が設定されている場合では、25組のz値を比較回路42に出力する。比較回路42の他方は、原点座標値が視点に最も近い面のz値を記憶したz値レジスタ45の出力が入力する。初期設定では最初に面交差情報バッファ40から読み出された面の、サンプリング点毎のz値を、サンプリング点z値計算回路41を通してレジスタ45に記憶する。比較器42では、レジスタ45に記憶したz値と、新しく面交差情報バッファ40から読み出しサンプリング点z値計算回路41で求めたz値とを、それぞれサンプリング点毎に比較し、その結果をセレクタ43に出力する。セレクタ43には、z値計算回路41からのz値とz値レジスタからのz値が加わっており、比較結果の信号により、サンプリング点毎に最も視点に近い方のz値を選択してレジスタ45のそれぞれを更新する。一方、サンプリング点毎に、識別子を記憶するレジスタ44を設け、z値の更新に合わせて、これら識別子もセレクタ43を通して更新記憶する。このようにして、面交差情報バッファ40に記憶された面情報を逐次読み出して、z値をサンプリング点毎に比較し、最も視点に近い値z値をレジスタ45に、またその識別子をレジスタ44にそれぞれ選択記憶する。すべての交差面情報の読出しが完了した時点で識別子レジスタ44には、サンプリング点毎のそれぞれの面の視点に最も近い識別子が残る。次に、サンプリング25点のなかで同一識別子の数を識別子計数回路46で数え、これを面交差情報バッファから読み出した識別子毎の輝度情報を記憶した輝度レジスタ47と乗算回路48にて乗算を行う。グリッド内で交差する面の数の上限を、zc座標値が視点に近い順に、例えば4面まで面交差情報バッファに記憶すると、識別子は最大4つまでであり、輝度(カラー)レジスタ47、識別子レジスタ44も4セット分を記憶するレジスタとなる。また識別子はこの処理段階においては、面交差情報バッファから読み出した順に0から3まで番号化すれば、識別子レジスタの面当たりの容量は2ビットでよい。一方、交差があるグリッドの同一識別子の最大数は24、最小は0となるが、輝度(カラー値)との乗算は、乗算回路48において、輝度レジスタ47からの色の3原色(赤、緑、青)のそれぞれと乗算し、乗算結果にさらに1/25を乗算して正規化した後、加算器49で面毎の輝度(色)を加算する。加算結果は赤、緑、青それぞれの合成された値をグリッドの輝度として出力し、アンチエイリアス処理が完了する。
【018】
実時間処理を最優先に考えた場合、交差面数、サンプリング点の数と、図4の回路の並列度との関係が決まる。グリッド内で交差する面の数を視点に近い順に、例えば4面までとし、サンプリング点を25点、回路の並列度を8とすれば、現在のLSIの動作周波数において100MHz以上のビデオ走査速度に対応できる。またサンプリング点数を9点とすれば、面数の増加あるいは並列度を下げるかいずれも可能となる。本発明では以上に示したように、グリッド内のサンプリング点における可視面の計算では、バッファは1グリッド分に相当する回路およびバッファ以外は持たず、ビデオ走査に同期して逐次処理を行う。もし、ビデオ周波数が高く、且つ交差面数を多く考慮する必要がある場合には、読み出し画像メモリをダブルバッファとし、走査しながらアンチエイリアスを行って画像メモリに一時的にアンチエイリアス後の映像を描画し、終了すると、これをビデオ走査に同期してモニターに出力する方法がある。この場合は、アンチエイリアス処理はビデオ走査とは非同期となる。いずれの構造を用いるかは、ハードウエアコストと画質との関係で決定される。
【産業上の利用可能性】
【019】
【020】
本発明の回路をIP(Intelligent Property)として、あるいはグラフィックスプロセッサLSIチップに実装することによって映像製作、CGゲーム等のシステムにおいて高品質な実時間描画を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【021】
【図1】「本発明に係わる面交差図を示す。」
【図2】「本発明に係わるポリゴン外郭線補間を示す。」
【図3】「本発明に係わるグリッド内サンプリング点を示す。」
【図4】「本発明のグリッド輝度決定回路を示す。」
【符号の説明】
図1
10 ポリゴン面
11 ポリゴン面
12 面交差線
13 グリッド
図2
20 画素
R0−R2 右外郭線画素
L0−L2 左外郭線画素
図3
30 グリッド
Pij サンプリング点
図4
40 面交差情報バッファ
41 サンプリング点z値計算回路
42 比較回路
43 セレクタ
44 識別子レジスタ
45 z値レジスタ
46 識別子計数回路
47 輝度レジスタ
48 乗算回路
49 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元面が交差する境界線上で発生するエイリアスを軽減するためのコンピュータグラフィッスアンチエイリアス技術に関し、隠面消去を用いてポリゴンを内挿補間する際、zバッファには前記内挿補間したz値を記憶すると共に、ポリゴン外郭線を補間する段階において、xおよびy軸に対するzの変移量(以下zスロープという)を求めて、前記zスロープを前記zバッファに記憶する手段と、外郭線左右両端点間をスパン補間する段階で、補間処理で得るz値とzスロープと、すでに前記zバッファに記憶したz値とzスロープから、画素を正方形(以下グリッドという)と見なした4頂点におけるz値をそれぞれ求めて頂点毎に差分し、前記4頂点いずれかの符号が変化する場合、すでに描画されたポリゴン面と、描画中のポリゴン面がグリッド内で交差するものとし、交差情報バッファを設け、前記交差情報バッファにはそれぞれの面の識別子、z値、zスロープおよび色を記憶する手段と、zバッファは、視点に最も近い面のz値とzスロープに更新する手段と、ビデオ出力のための画像メモリ走査読み出し段階において、面の交差があるグリッドを検出して前記交差情報バッファから、面のz値、zスロープ、色、識別子を読み出すと共に、グリッド内空間にサンプリング点を設け、前記交差情報バッファに記憶された面について、z値とzスロープから全てのサンプリング点上でのz値を求める手段と、サンプリング点分のレジスタを設けて、前記レジスタにはz値と識別子を記憶する手段と、それぞれの面についてサンプリング点でのz値を比較して、最も視点に近いz値とその識別子に前記レジスタを更新記憶する手段と、グリッド内の全ての面のz値比較が終了した時点で、前記レジスタに記憶され識別子数を計数する手段と、前記識別子数とその面が持つ色とをそれぞれ乗算し、さらに前記乗算した色を、全ての面について加算したものをグリッドの輝度とするそれぞれの手段からなる面境界アンチエイリアス回路。
【請求項2】
請求項1の回路において、交差情報バッファへのz値、zスロープ、識別子の記憶はポリゴンのスパン内挿補間段階で行い、一方、面交差の有無と、交差情報バッファに記憶された情報を読み出し、これら情報からグリッド輝度を決定するまでの処理を並列回路を用いてビデオ走査速度に同期して画素毎に行うことで、シングルパスのアンチエイリアスを可能にする面境界アンチエイリアス回路。
【請求項3】
請求項1の回路において、交差バッファでは面当たりのz値、zスロープ、識別子及び色は同時読出しが可能なメモリ構造とする面境界アンチエイリアス回路。
【請求項4】
請求項1から3までに記載の面境界アンチエイリアス回路を用いたコンピュータグラフィックス画像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−152741(P2008−152741A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357290(P2006−357290)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(505050935)有限会社カーディックコーポレイション (18)
【Fターム(参考)】