説明

面材保持構造体、建具、及び、面材保持方法

【課題】製造性に優れた面材保持構造体等を提供する。
【解決手段】複数枚の面材と、前記複数枚の面材を保持する枠部材と、を備えた面材保持構造体であって、前記複数枚の面材は、各々の前記面材間にスペーサーを介して互いに間隔を隔てて対面され、前記複数枚の面材のうちの、面外方向における一方側の端に配置される1枚の前記面材は、他の前記面材より面内方向において外方側に突出され、前記スペーサーは、前記他の面材の周縁部より内側に配置され、前記1枚の面材の前記他の面材より突出した突出部位と前記枠部材とが対面して形成される空間、及び、対面する前記面材間に介在された前記スペーサーと前記枠部材とが対面して形成される空間に、前記対面する前記面材同士、及び、前記面材と前記枠部材とを固定する固定剤が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の面材と、複数枚の面材を保持する枠部材と、を備えた面材保持構造体、建具、及び、面材保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の面材と、複数枚の面材を保持する保持枠と、を備えた面材保持構造体としては、例えば、接着機能を有するシール材により複層ガラスが保持枠に取り付けられている複層ガラス障子が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような複層ガラス障子の複層ガラスは、短寸板ガラスと長寸板ガラスとがそれらの周辺部にスペーサーと1次シールとを介して配置されて、短寸板ガラスと長寸板ガラスとの間に空気層が形成されている。そして、スペーサーよりガラス板の端縁側は、接着機能を有する2次シール材にてシールが施されるとともに接着されている。このとき、長寸板ガラスは、スペーサーの外部側に施された2次シール材より外側に、すなわち、短寸板ガラスより外側に突出するように構成されている。そして、複層ガラスの長寸板ガラスの突出している部分と、スペーサーの外周側に設けられた2次シール材と短寸板ガラスの端部により形成された段状をなす部位に保持枠の主たる部分が構造シールにより取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−228748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような複層ガラス障子は、短寸板ガラスと長寸板ガラスとの間にスペーサーと1次シールとが介在され、スペーサーの外周側に2次シールが設けられ、複層ガラスの周端部に形成された段状の部位と保持枠との間に構造シールが介在されて構成されている。そして、複層ガラス障子を形成する場合には、2次シールにて2枚のガラスを接着して複層ガラスを形成し、その後2枚のガラスが接着された複層ガラスと保持枠とを接着するというように、2度の接着工程を行わなければならない。このため、各々のシール材を使用する毎に、シール材を乾燥させなければならず、製造が煩雑であるとともに、製造時間が掛かるなど製造性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造性に優れた面材保持構造体、建具、及び、面材保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の面材保持構造体は、複数枚の面材と、前記複数枚の面材を保持する枠部材と、を備えた面材保持構造体であって、前記複数枚の面材は、各々の前記面材間にスペーサーを介して互いに間隔を隔てて対面され、前記複数枚の面材のうちの、面外方向における一方側の端に配置される1枚の前記面材は、他の前記面材より面内方向において外方側に突出され、前記スペーサーは、前記他の面材の周縁部より内側に配置され、前記1枚の面材の前記他の面材より突出した突出部位と前記枠部材とが対面して形成される空間、及び、対面する前記面材間に介在された前記スペーサーと前記枠部材とが対面して形成される空間に、前記対面する前記面材同士、及び、前記面材と前記枠部材とを固定する固定剤が充填されていることを特徴とする面材保持構造体である。
【0007】
このような面材保持構造体によれば、固定剤は、2枚の面材の周端部側であって、スペーサーより外周側において2枚の面材が対面している部位、及び、1枚の面材の他の面材より突出した突出部位と枠部材とが対面している部位、に充填されているので、2枚の面材同士及び突出している突出部位を有する面材と枠部材とを、各々固定することが可能である。このため、1つの固定剤により2枚の面材同士及び面材と枠部材とを固定することが可能なので、固定する時間のみならず固定するために養生する時間も短縮され、容易にかつ短時間で製造することが可能な製造性に優れた面材保持構造体を提供することが可能である。
また、2枚の面材同士及び面材と枠部材とを単一の固定剤にて固定するので、固定剤の管理が簡単であるとともに、コストを低減することが可能である。
【0008】
かかる面材保持構造体であって、前記複数枚の面材は、前記他の面材と前記枠部材との間に配置部材が介在されて、前記枠部材との間に前記空間が形成されていることが望ましい。
このような面材保持構造体によれば、複数枚の面材は、他の面材と枠部材との間に配置部材が介在されて、枠部材との間に空間が形成されているので、固定剤を充填する空間を確実に設けることが可能である。
【0009】
かかる面材保持構造体であって、前記面材は透光性を有し、前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、前記固定剤と前記シール材とは同系色であることが望ましい。
このような面材保持構造体によれば、透光性を有する面材とスペーサーとの間に介在されるシール材と、2枚の面材間及び面材と枠部材間に充填される固定剤とが同系色なので、面材越しに、シール材及び固定剤が視認されたとしても、1種類のシール材のように見えるため美観に優れた面材保持構造体を実現することが可能である。ここで、シール材と固定剤とは、同色であっても構わない。
【0010】
かかる面材保持構造体であって、前記面材は透光性を有し、前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、前記固定剤と前記シール材とは互いに異なる色であることとしても良い。
このような面材保持構造体によれば、透光性を有する面材とスペーサーとの間に介在されるシール材と、2枚の面材間及び面材と枠部材間に充填される固定剤とが互いに異なる色なので、面材越しに、シール材及び固定剤が視認されたときに、異なる色合いの部位を並べて見せることによりデザイン性に優れた面材保持構造体を実現することが可能である。
【0011】
かかる面材保持構造体であって、前記面材は透光性を有し、前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、前記1枚の面材の、前記固定剤と前記シール材とが接触している部位またはその裏面が塗装されていることとしても良い。
このような面材保持構造体によれば、透光性を有する面材とスペーサーとの間に介在されるシール材と、2枚の面材間及び面材と枠部材間に充填される固定剤とは、1枚の面材の、固定剤とシール材とが接触している部位またはその裏面に施された塗装に隠されて視認されない。このため、固定剤とシール材との存在を意識させることがない意匠性に優れた面材保持構造体を実現することが可能である。
【0012】
また、面材保持構造体を障子とし、前記障子が取り付けられる枠部材を有することを特徴とする建具である。
このような建具によれば、製造性に優れた障子を備えた建具を提供することが可能である。
【0013】
また、複数枚の面材を対面させるとともに、前記複数枚の面材のうちの1枚の前記面材を他の前記面材より外方側に突出させ、前記他の面材の周縁部より内側にてスペーサーを介することにより互いに間隔を隔てて前記複数枚の面材を仮固定して面材仮ユニットを形成する面材仮ユニット生成工程と、前記面材仮ユニットが有する前記1枚の前記面材の前記他の面材より突出した突出部位、及び、対面する前記面材間に介在された前記スペーサーと、当該面材仮ユニットが保持される枠部材とを対面させ、前記スペーサーの枠部材側において各々の面材間に形成されるスペーサー側空間と、前記1枚の面材と前記枠部材とが対面する面材側空間とが形成されるように配置する配置工程と、前記スペーサー側空間と前記面材側空間とに固定剤を充填して、各々の前記面材と前記枠部材とを固定して前記面材を前記枠部材にて保持する面材保持工程と、を有することを特徴とする面材保持方法である。
【0014】
このような面材保持方法によれば、2枚の面材の周端部側であって、スペーサーより外周側において2枚の面材が対面している部位、及び、1枚の面材の他の面材より突出した突出部位と枠部材とが対面している部位、に固定剤を充填するだけで、2枚の面材同士及び突出している突出部位を有する面材と枠部材とを、各々固定することが可能である。このため、1つの固定剤にて2枚の面材同士及び面材と枠部材とを固定するので、固定する時間のみならず固定するために養生する時間も短縮され、容易にかつ短時間で製造することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造性に優れた面材保持構造体、建具、及び、面材保持方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る建具の縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る建具の水平断面図である。
【図3】本実施形態に係る面材仮ユニットと保持框との接合部を示す断面図である。
【図4】本実施形態にかかる面材仮ユニットの保持方法を説明するフロー図である。
【図5】本実施形態にかかる面材仮ユニットの保持方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態として、面材保持構造体としての障子を備えた建具と、障子が備える面材としてのガラスの保持方法について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の建具1は、図1、図2に示すように、室内外を仕切る面材としての板ガラスが2枚仮固定されて構成される面材仮ユニット5が枠部材としての保持框9に保持された面材保持構造体としての障子10と、室内外を連通し障子10によって開閉される開口を形成する枠体3とを有する、辷り出し窓用の建具1である。
【0019】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具1を室内側から見たときに、枠体3及び障子10の上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、枠体3や障子10を構成する部材は、単体の状態であっても建具1が建物等に取り付けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0020】
枠体3は、建物の躯体(不図示)に固定されて矩形状をなすように、上下の横枠3a、3bと左右の縦枠3c、3dとが枠組みされた四方枠である。障子10は枠体3の内周側にて回動しつつ、その回動支点が上下の横枠3a、3bに沿って見付け方向に移動可能に取り付けられている。
【0021】
障子10は、面材仮ユニット5と面材仮ユニット5を保持する枠部材としての保持框9とを有し、面材仮ユニット5は、保持框9に取り付けられたブロック状をなす配置部材としてのセッティングブロック33を介して配置されて保持框9と固定されている。
【0022】
保持框9は、上下の横框12、15と左右の縦框18、21とが矩形状に枠組みされて連通口10aを形成し矩形状をなしている。
【0023】
上下の横框12、15は、ほぼ矩形状の中空部13a、16aを有し室内側に配置される横框本体13、16と、各横框本体13、16において保持框9の外周側となる部位から室外側に延出されて面材仮ユニット5を保持する保持部14、17と、を有している。
【0024】
上下の横框12、15は、同一の形状をなす押出成形部材であり、上の横框12と下の横框15とは、上下が反転した状態にて左右の縦框18、21と接合されている。
【0025】
左右の縦框18、21も、ほぼ矩形状の中空部19a、22aを有し室内側に配置される縦框本体19、22と、各縦框本体19、22において保持框9の外周側となる部位から室外側に延出されて面材仮ユニット5を保持する保持部20、23と、を有する、同一の形状をなす押出成形部材である。上下の横框12、15と左右の縦框18、21とは、縦框本体19、22に設けられたビスホールに、上下の横框12、15と左右の縦框18、21とを接合するためのビスが螺合されるため、中空部13a、16a、19a、22aの形状は互いに相違しているが、保持部14、17、20、23は同一形状をなしている。
【0026】
矩形状に形成された保持框9の上下の横框12、15と左右の縦框18、21との各中空部13a、16a、19a、22aの内周側には、保持框9の室内側の内周面を形成するカバー部材35が、各横框12、15及び各縦框18、21の全域に亘って嵌合されている。カバー部材35には、各横框12、15及び各縦框18、21に嵌合された状態にて、室外側に突出する突起35aが設けられている。
【0027】
上下の横框12、15及び左右の縦框18、21の保持部14、17、20、23は、いずれも同形状なので、ここでは、下の横框(以下、下横框という)15の保持部17を例に挙げて、保持部14、17、20、23及び面材仮ユニット5の構成について説明する。このとき、下横框15の保持部17における上方は、矩形状をなす保持框9に囲まれた内側を示し、下横框15の保持部17における下方は、矩形状をなす保持框9に囲まれた外側を示している。
【0028】
下横框15の保持部17は、図3に示すように、下横框15の横框本体16にて中空部16aを形成する下板部16bが室外側に延出されてほぼ水平面を形成する内側延出部17aと、内側延出部17aの室外側の先端から下方に垂設された垂設壁部17bと、垂設壁部17bの下端から室外側に延出されてほぼ水平面を形成する外側延出部17cと、外側延出部17cの室外側の先端から下方に垂設された縁部17dと、を有している。すなわち、各横框12、15及び各縦框18、21の保持部14、17、20、23は、矩形状をなす保持框9に囲まれた領域が、室外側に向かって広がるような階段状をなしている。
【0029】
下横框15の保持部17の内側延出部17aにおける見込み方向の中央近傍には下方に垂設されて、垂設壁部17bとほぼ平行をなし、その下端が垂設壁部17b側に突出した突片17fを有する垂下壁部17eが設けられている。また、垂設壁部17bには、突片17fと対向するように室内側に向かって突出された突片17gが設けられており、突片17f、17gによりシール部材30を保持するように構成されている。このため、障子10の外周部には全周に亘ってシール部材30が設けられている。
【0030】
面材仮ユニット5は、面材としての板ガラス5a、5bが2枚と、対面する2枚の板ガラス5a、5bの間に介在されたスペーサー5cと、を有している。2枚の板ガラス5a、5bは、面外方向となる見込み方向に並べられ、室外側に配置される外板ガラス5aが、室内側に配置される内板ガラス5bより全周に亘って、面内方向において外方に突出するように構成されている。また、スペーサー5cは、内板ガラス5bの周縁部5eより僅かに内側に全周に亘って配置されている。このため、2枚の板ガラス5a、5bのスペーサー5cより外周側には、2枚の板ガラス5a、5bが対面するスペーサー側空間S1が形成されており、外板ガラス5aは、スペーサー側空間S1より外周側に突出している。
【0031】
スペーサー5cは、中空の部材であり、中空部分の内側には乾燥材が設けられている。スペーサー5cと2枚の板ガラス5a、5bとの間には、気密性を保持するための粘弾性を有するシール材32が設けられている。このシール材32は、恒久的には難しいが、短時間であればスペーサー5cと2枚の板ガラス5a、5bとを仮接合しておくことが可能である。
【0032】
下横框15に取り付けられたセッティングブロック33は、内側延出部17aに貼り付けられて、内板ガラス5bの室内側に位置するように、矩形状をなす保持框9の内側に向かって突出する内突部33aと、内板ガラス5bの室外側に位置するように、矩形状をなす保持框9の内側に向かって突出する外突部33bと、内突部33aと外突部33bとをそれらの外周側にて繋いで一体をなす連結部33cとを有している。内突部33aの室内側の部位は、下横框15の横框本体16に当接されており、内突部33aの室外側の部位は、上下の横框12、15と左右の縦框18、21に嵌合されたカバー部材35の突起35aの見込み方向の位置とほぼ同じになるように形成されている。このセッティングブロック33は、上下の横框12、15に取り付けられており、左右の縦框18、21には取り付けられていない。また、セッティングブロック33は、見付け方向における長さが上下の横框12、15の見付け方向の幅より十分に短く形成されており、例えば、上下の横框12、15にそれぞれ見付け方向において2つずつ取り付けられている。
【0033】
面材仮ユニット5は、セッティングブロック33を介して保持框9に配置されると、内板ガラス5bの周縁部5eと内側延出部17aとが、また、外板ガラス5aの周縁部5fと外側延出部17cとが間隔を隔てて対向する。そして、上下の横框12、15及び左右の縦框18、21のスペーサー5cより外周側には、保持部14、17、20、23との間に、2枚の板ガラス5a、5bが対面するスペーサー側空間S1及び外板ガラス5aの突出する突出部位5dと垂設壁部14b、17b、20b、23bとの間の面材側空間S2を含み、外板ガラス5aの周縁部5fと外側延出部17cとの間からスペーサー側空間S1まで繋がった空間S3に固定剤として接着機能を有するシリコンシーラント34が充填されている。
【0034】
本実施形態の障子10におけるガラスの保持方法は、図4、図5に示すように、まず、2枚の板ガラス5a、5bを、それらの間にスペーサー5cを介在させるとともに、スペーサー5cと内板ガラス5b及び外板ガラス5aとの間にシール材32を介して仮固定し面材仮ユニット5を形成しておく(面材仮ユニット生成工程STEP1)。
【0035】
次に、上下の横框12、15にシール部材30とセッティングブロック33とを取り付け、左右の縦框18、21にシール部材30を取り付け、下横框15と左右の縦框18、21とを組み立てて、コ字状をなす仮框体9aを形成する。
【0036】
次に、仮框体9aを、室内側が下方になるように、図示しない作業台等の上に載置し、上方から面材仮ユニット5の内板ガラス5bが下側になるような姿勢にて仮框体9aに近づけ、面材仮ユニット5の下横框15側の端部を、下横框15のセッティングブロック33の内突部33aと外突部33bとの間に挿入するとともに仮框体9aに載置する。その後、面材仮ユニット5の上の横框12側の端部を、上の横框12のセッティングブロック33の内突部33aと外突部33bとの間に挿入し、仮框体9aと上の横框12とを接合する(配置工程STEP2)。この状態にて、面材仮ユニット5が有する外板ガラス5aの内板ガラス5bより突出した突出部位5d、及び、内板ガラス5bと外板ガラス5aとの間に介在されたスペーサー5cと、面材仮ユニット5が保持される保持框9とが対面され、スペーサー側空間S1と面材側空間S2とが繋がった空間S3が形成される。
【0037】
最後に、外板ガラス5aの周縁部5fと外側延出部14c、17c、20c(図2)、23c(図2)との間から、スペーサー側空間S1まで繋がった空間S3にシリコンシーラント34を全周に亘って充填する(面材保持工程STEP3)。このとき、外板ガラス5a及び内板ガラス5bとスペーサー5cとの間に介在されるシール材32と空間S3に充填されるシリコンシーラント34とを同系色、例えば、黒色系に統一しておくと、室外側から外板ガラス5a越しに障子10を見たときにシール材32とシリコンシーラント34との境界が目立ち難い。
【0038】
本実施形態の障子10及び建具1によれば、接着機能を有するシリコンシーラント34が充填されている空間S3は、2枚の板ガラス5a、5bの周端部側であって、スペーサー5cより外周側において2枚の板ガラス5a、5bが対面している部位と、外板ガラス5aの内板ガラス5bより突出した突出部位5dと保持框9とが対面している部位とが繋がっているので、シリコンシーラント34により2枚の板ガラス5a、5b同士及び突出している突出部位5dを有する外板ガラス5aと保持框9とを、各々接着することにより固定することが可能である。このため、2枚の板ガラス5a、5b同士及び面材仮ユニット5と保持框9とを一度に接着して固定することが可能なので、接着する時間のみならず養生する時間も短縮され、容易にかつ短時間で製造することが可能な製造性に優れた障子を提供することが可能である。
【0039】
また、面材仮ユニット5は、保持框9に取り付けられたセッティングブロック33の内突部33a上に内板ガラス5bが載置されて、保持框9との間に空間S3が確保されているので、シリコンシーラント34を充填する空間S3を確実に設けることが可能である。
【0040】
また、面材が透光性を有するガラスであり、外板ガラス5a及び内板ガラス5bとスペーサー5cとの間に介在されるシール材32と空間S3に充填されるシリコンシーラント34とを黒色などの同系色に統一したので、外板ガラス5a越しに、シール材32及びシリコンシーラント34が見えたとしても、境界が視認しにくく、1種類のシール材のように見えるため、より美観に優れた障子10を実現することが可能である。さらに、面材を板ガラス5a、5bとしたので、複層のガラスを有する面材仮ユニット5を備え、製造性及び美観に優れた障子10を提供することが可能である。また、製造性及び美観に優れた障子10を備えた建具1を提供することも可能である。
【0041】
本実施形態の面材保持方法によれば、シリコンシーラント34が充填される空間S3は、2枚の板ガラス5a、5bの周端部側であって、スペーサー5cより外周側において2枚の板ガラス5a、5bが対面している部位と、外板ガラス5aの内板ガラス5bより突出した突出部位5dと保持框9とが対面している部位とが繋がっているので、この空間S3にシリコンシーラント34を充填することにより、2枚の板ガラス5a、5b同士及び突出している突出部位5dを有する外板ガラス5aと保持框9とを、各々接着することが可能である。このため、2枚の板ガラス5a、5b同士及び面材仮ユニット5と保持框9とを一度に接着することが可能なので、接着する時間のみならず養生する時間も短縮され、容易にかつ短時間で製造することが可能である。
【0042】
また、2枚の板ガラス5a、5b同士及び面材仮ユニット5と保持框9とを単一のシリコンシーラント34にて接着するので、シリコンシーラント34の管理が簡単であるとともに、コストを低減することが可能である。
【0043】
上記実施形態においては、外板ガラス5a及び内板ガラス5bとスペーサー5cとの間に介在されるシール材32と空間S3に充填されるシリコンシーラント34とを同系色としたが、互いに異なる色としてもよい。この場合には、外板ガラス5a越しに、シール材32及びシリコンシーラント34が視認されたときに、異なる色合いの部位を並べて見せることによりデザイン性に優れた障子10を実現することが可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、外板ガラス5a及び内板ガラス5bとスペーサー5cとの間に介在されるシール材32と空間S3に充填されるシリコンシーラント34とが外板ガラス5a越しに視認可能な例について説明したが、外板ガラス5aの、シール材32とシリコンシーラント34とが接触している部位、または、その室外側の面(裏面)が塗装されていることとしても良い。この場合には、シール材32及びシリコンシーラント34が外板ガラス5aの面に施された塗装に隠されて視認されない。このため、シリコンシーラント34とシール材32との存在を意識させることがない意匠性に優れた障子10及び建具1を実現することが可能である。
【0045】
上記実施形態においては、建具1としての外開き窓用の建具を例示したが、本発明の建具1は、外開き窓に限らず、引き違い窓や片引き窓など、面材仮ユニットと枠部材とを備えた構成であれば、壁材やカーテンウォールであっても構わない。また、面材はガラスに限らず、外装材または内装材等であっても構わない。
【0046】
また、上記実施形態においては、面材仮ユニットを2枚の板ガラスにて構成した例について説明したが、これに限るものではなく、3枚以上であっても構わない。このとき、面材仮ユニットは、面外方向における一方側の端に配置される1枚の板ガラスが、他の板ガラスより面内方向において外方側に突出され、他の板ガラスのうちの少なくとも1枚がセッティングブロックに係合していればよい。
【0047】
上記実施形態においては、上下の横框12、15にセッティングブロック33を取り付け、下横框15と左右の縦框18、21とを組み立てたコ字状をなす仮框体9aの下横框15に取り付けられたセッティングブロック33の内突部33aと外突部33bとの間に面材仮ユニット5の下横框15側の端部を挿入した後に、面材仮ユニット5の上横框12側の端部を、上横框12に取り付けられたセッティングブロック33の内突部33aと外突部33bとの間に挿入して、仮框体9aと上横框12とを接合した例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、面材仮ユニット5の上横框12側の端部及び下横框15側の端部にセッティングブロック33を取り付けておき、矩形状に形成された保持框9に、セッティングブロック33が取り付けられた面材仮ユニット5を取り付けても構わない。
【0048】
また、上記実施形態においては、内突部33aと外突部33bとを有するセッティングブロック33を用いた例について説明したが、内突部33aと外突部33bは、必ずしも設けられていなくともよい。セッティングブロックに内突部が設けられていない場合には、内板ガラスと保持框とが直接接触することを避けるために、保持框に面材仮ユニットを仮固定する両面テープやシール材等を、内板ガラスと保持框との間に介在させてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、外板ガラスの周縁部と外側延出部との間からスペーサー側空間S1まで繋がった空間S3に充填する固定剤をシリコンシーラント34としたが、これに限るものではなく、水密性と粘弾性とを有し、面材同士および面材と框とを固定可能な部材であれば構わない。
【0050】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 建具、3 枠体、5 面材仮ユニット、5a 外板ガラス、
5b 内板ガラス、5c スペーサー、5d 突出部位、
5e 内板ガラスの周縁部、5f 外板ガラスの周縁部、
9 保持框、10 障子、12 上の横框、13 横框本体、
14 保持部、15 下の横框(下横框)、16 横框本体、
17 保持部、17a 内側延出部、17b 垂設壁部、17c 外側延出部、
18 左の縦框、19 縦框本体、20 保持部、
30 シール部材、32 シール材、33 セッティングブロック、
33a 内突部、33b 外突部、34 シリコンシーラント、
S1 スペーサー側空間、S2 面材側空間、S3 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の面材と、
前記複数枚の面材を保持する枠部材と、
を備えた面材保持構造体であって、
前記複数枚の面材は、各々の前記面材間にスペーサーを介して互いに間隔を隔てて対面され、前記複数枚の面材のうちの、面外方向における一方側の端に配置される1枚の前記面材は、他の前記面材より面内方向において外方側に突出され、
前記スペーサーは、前記他の面材の周縁部より内側に配置され、
前記1枚の面材の前記他の面材より突出した突出部位と前記枠部材とが対面して形成される空間、及び、対面する前記面材間に介在された前記スペーサーと前記枠部材とが対面して形成される空間に、前記対面する前記面材同士、及び、前記面材と前記枠部材とを固定する固定剤が充填されていることを特徴とする面材保持構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の面材保持構造体であって、
前記複数枚の面材は、前記他の面材と前記枠部材との間に配置部材が介在されて、前記枠部材との間に前記空間が形成されていることを特徴とする面材保持構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の面材保持構造体であって、
前記面材は透光性を有し、
前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、
前記固定剤と前記シール材とは同系色であることを特徴とする面材保持構造体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の面材保持構造体であって、
前記面材は透光性を有し、
前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、
前記固定剤と前記シール材とは互いに異なる色であることを特徴とする面材保持構造体。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の面材保持構造体であって、
前記面材は透光性を有し、
前記面材と前記スペーサーとの間にはシール材が介在されており、
前記1枚の面材の、前記固定剤と前記シール材とが接触している部位またはその裏面が塗装されていることを特徴とする面材保持構造体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の面材保持構造体を障子とし、前記障子が取り付けられる枠部材を有することを特徴とする建具。
【請求項7】
複数枚の面材を対面させるとともに、前記複数枚の面材のうちの1枚の前記面材を他の前記面材より外方側に突出させ、前記他の面材の周縁部より内側にてスペーサーを介することにより互いに間隔を隔てて前記複数枚の面材を仮固定して面材仮ユニットを形成する面材仮ユニット生成工程と、
前記面材仮ユニットが有する前記1枚の前記面材の前記他の面材より突出した突出部位、及び、対面する前記面材間に介在された前記スペーサーと、当該面材仮ユニットが保持される枠部材とを対面させ、前記スペーサーの枠部材側において各々の面材間に形成されるスペーサー側空間と、前記1枚の面材と前記枠部材とが対面する面材側空間とが形成されるように配置する配置工程と、
前記スペーサー側空間と前記面材側空間とに固定剤を充填して、各々の前記面材と前記枠部材とを固定して前記面材を前記枠部材にて保持する面材保持工程と、
を有することを特徴とする面材保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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