説明

面状発光装置およびその製造方法

【課題】輝度を高めることができる面状発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光源1と、光源1からの光が縁部から導入されて面方向に導かれるシート状のライトガイド2と、ライトガイド2の一方の面2c側に配置された検知センサ3と、を備えた面状発光装置10。検知センサ3は、基板6と、その一方の面6aに設けられたシート体8を有する。ライトガイド2の少なくとも外周部と検知センサ3のシート体8とが粘着材4で接着されている。粘着材4は、光源1からの光が導入されるライトガイド2の縁部2aから離間して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータなどに用いられる面状発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等には、操作キー等を照明する機能を有する面状発光装置が用いられる(例えば、特許文献1〜3参照)。面状発光装置としては、シート状のライトガイドの縁部に側面発光型の光源を設けた構造のものがある。
図9および図10は、面状発光装置の一例を用いたキースイッチモジュールを模式的に示すもので、ここに示す面状発光装置100は、光源101と、光源101からの光が導入されるシート状のライトガイド102と、シートスイッチ103とを備えている。
【0003】
シートスイッチ103は、基板106と、その一方の面に設けられたスイッチ素子107と、スイッチ素子107を覆うシート体108とを有する。
ライトガイド102とシートスイッチ103のシート体108は、粘着材104によって互いに接着されている。粘着材104は、少なくともライトガイド102の縁部102aを含む部分とシート体108の縁部108aを含む部分とを接着する。
面状発光装置100の上面側には、操作キー111を有するキーパッド112が設けられている。
【0004】
図10に示すように、光源101から出射して縁部102aからライトガイド102に入射した光は、ライトガイド102の両面で反射しながらライトガイド102の面方向に伝搬する。ライトガイド102内の光の一部は光取出部109で散乱して外部に出射し、これによって、例えば操作キー111に対応した位置が明るく表示される。
【0005】
面状発光装置100の製造にあたっては、ライトガイド102とシート体108は、粘着材で互いに接着されたライトガイド母材とシート体母材とを型抜きすることによって作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007ー53063号公報
【特許文献2】特開2007ー305313号公報
【特許文献3】特開2008ー60058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記面状発光装置では、ライトガイド102の縁部102aにおける損失などを原因として、光源101からライトガイド102への光の導入効率が不十分となって装置の輝度が低くなることがあった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、輝度を高めることができる面状発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の光導入効率の低下について鋭意検討を行い、粘着材を原因としてライトガイドの縁部における損失が生じている可能性があるとの認識に達し、さらに検討を重ねた結果、粘着材の形成位置の調整によって光導入効率を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、光源と、前記光源からの光が縁部から導入されて面方向に導かれるシート状のライトガイドと、前記ライトガイドの一方の面側に配置された検知センサと、を備え、前記検知センサが、基板と、その一方の面に設けられたシート体を有し、前記ライトガイドの少なくとも外周部と前記検知センサのシート体とが粘着材で接着され、前記粘着材は、前記光源からの光が導入される前記ライトガイドの縁部から離間して形成されている面状発光装置を提供する。
前記粘着材は、1層構造とされていることが好ましい。
前記粘着材は、前記ライトガイドの外周部のうち前記光源からの光が導入される部分以外の部分では、縁部を含む領域に形成されていることが好ましい。
前記ライトガイドのいずれか一方の面には、前記光源からの導入光を散乱させて出射させる光取出部が形成され、前記光取出部は、前記粘着材がない領域に形成されていることが好ましい。
本発明の面状発光装置は、前記ライトガイドの他方の面と、前記光源とを跨ぐように、遮光性を有した遮光部材が設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明は、光源と、前記光源からの光が縁部から導入されて面方向に導かれるシート状のライトガイドと、前記ライトガイドの一方の面側に配置された検知センサと、を備え、前記検知センサが、基板と、その一方の面に設けられたシート体を有する面状発光装置を製造するにあたって、前記ライトガイドおよび前記シート体は、粘着材で互いに接着されたそれぞれの母材を同時に型抜きすることによって形成し、前記粘着材は、前記型抜きされたライトガイドの外周部のうち前記光源からの光が導入される縁部から離間して形成される面状発光装置の製造方法を提供する。
前記粘着材は、1層構造とされていることが好ましい。
前記粘着材は、原料液を前記ライトガイドに塗布し乾燥させることにより形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、粘着材がライトガイドの光が導入される縁部から離れて形成されているため、粘着材への光の吸収を少なくし、ライトガイドに対する導入効率を高めることができる。従って、面状発光装置の輝度を高めることができる。
また、前記ライトガイドの縁部から粘着材の外縁部までのライトガイドの面(一方の面)からライトガイド内への入射が可能となるため、ライトガイドへの光の導入効率をさらに高めることができる。
また、粘着材がライトガイドの前記縁部に達していると、この縁部において光が散乱されてしまい、面状発光装置の輝度が低くなるおそれがあるが、本発明では、粘着材がライトガイドの前記縁部に達していないため、ライトガイドの前記縁部における光散乱が抑制され、面状発光装置の輝度が向上する。
また、粘着材は高湿度環境下において吸湿し軟化して流動しやすくなることがあるが、本発明では粘着材がライトガイドの前記縁部から離れて形成されるため、粘着材が流動化してもライトガイドの前記縁部に及ぶことはない。このため、ライトガイドの端面に付着した粘着材によりライトガイドへの光の導入効率が低下するのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の製造方法によれば、粘着材がライトガイドの前記縁部から離れて形成されるため、金型を用いてライトガイド母材からライトガイドを型抜きする際に、粘着材料が金型によりライトガイドの前記縁部の端面に付着することはない。
従って、ライトガイドの端面に付着した粘着材料を原因としてライトガイドへの光の導入効率が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である面状発光装置を示す断面図である。
【図2】図1の面状発光装置の光源およびライトガイドの一部を示す平面図である。
【図3】ライトガイドの一例の概略構成を示す平面図である。
【図4】面状発光装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】前図に続く製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態である面状発光装置を示す断面図である。
【図7】実施例および比較例の輝度分布を示す図である。
【図8】本発明に使用可能なメンブレンスイッチの一例を示す断面図である。
【図9】従来の面状発光装置の一例を模式的に示す平面図である。
【図10】前図に示す面状発光装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る面状発光装置の実施形態について以下に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である面状発光装置10の一部を示す断面図である。図1は、図2に示すA1−A1断面図である。図2は、面状発光装置10の光源1およびライトガイド2の一部を示す平面図である。図3は、ライトガイド2の一例の全体の概略構成を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、面状発光装置10(センサ装置)は、光源1と、光源1からの光が導入されるシート状のライトガイド2(導光体)と、ライトガイド2の一方の面2c側に配置されたシートスイッチ3(検知センサ)とを備えている。
面状発光装置10の上面側には、複数の操作キー11を有するキーパッド12が設けられている。キーパッド12と面状発光装置10はキースイッチモジュールを構成する。
【0015】
光源1としては、発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)などの発光素子、冷陰極管などの発光体が用いられる。光源1は、例えばケースの内部に発光素子チップを内蔵し、この発光素子チップからの出射光をケース側面の出射面1aから出射させる構成が可能である。図示例では、光源1は、出射面1aが側方(右方)に向けられ、ライトガイド2の導入縁部2aの端面2bに対面している。
光源1は、はんだ等によって、基板6の面6a(上面)(一方の面)に形成された電気回路(図示略)に接続されている。
【0016】
ライトガイド2を構成する材料は、光透過性を有し、かつ、変形可能なものであれば特に限定されないが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)のエラストマー、ウレタンアクリレートからなる群から選択されたいずれかが好ましい。
特に、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂は、弾性を有するため損傷を受けにくく、耐久性の点で優れている。
【0017】
ライトガイド2の平面視形状は特に限定されず、図3に示すように略矩形でもよいし、その他の形状であってもよい。ライトガイド2の厚みは特に限定されず、例えば0.01〜10mm、好ましくは0.1〜1mmとすることができる。
図1に示すように、ライトガイド2は、導入縁部2aの端面2bが光源1の出射面1aに近接して配置されている。
【0018】
シートスイッチ3は、基板6と、基板6の面6aに設けられた1または複数のスイッチ素子7と、スイッチ素子7を覆うシート体8とを有する。
基板6は、例えばPCB(Printed Circuit Board)、FPC(Flexible Printed Circuit)などのプリント配線基板である。
スイッチ素子7は、基板6の面6aに設けられた中央接点部21と、中央接点部21の外周側に設けられた周辺接点部22と、ドーム形状のメタルプレート23とを備えている。メタルプレート23は、その中央部が中央接点部21に対して接離可能であり、操作者による押圧によって中央部が下方に弾性変形して中央接点部21に当接し、中央接点部21と周辺接点部22とを導通させることができる。
【0019】
シート体8は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂材料等からなる。シート体8の下面8b側(基板6側の面)にはアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)などからなる粘着層17が形成されている。
粘着層17と基板6の面6aとの間には、PETなどの樹脂材料等からなるスペーサ18が介在している。スペーサ18の下面側にはアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)などからなる粘着層19が形成されている。スペーサ18は、スイッチ素子7に干渉しない位置に形成される。
シート体8は、粘着層17、19によって、スペーサ18を介して基板6の面6aに接着される。符号8aはシート体8の外縁部である。
【0020】
シートスイッチ3は、ライトガイド2の下面2c(一方の面)とシート体8の上面8cとの間に形成された粘着材4を介して、ライトガイド2に接着されている。
粘着材4は、ライトガイド2の下面2cとシート体8の上面8cとに接して、これらを互いに接着している。
粘着材4は、支持材としての透明樹脂基材の両面に粘着層を形成した3層構造のものを用いてもよいし、1層構造(単層構造)(均質構造)のものを用いてもよいが、1層構造(単層構造)のものが好ましい。
【0021】
1層構造(単層構造)の粘着材4は基材を使用しておらず、全体が粘着材料から形成されている。粘着材4は、1種類の粘着材料から均一に形成されていることが好ましい。
このような粘着材料としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤などが挙げられる。
【0022】
粘着材4を1層構造とすることによって、3層構造の粘着材を用いた場合に比べ、粘着材4における光の吸収を低減し、面状発光装置10の輝度を向上させることができる。また、光の吸収により粘着材4の輝度が局所的に高くなるのを抑えることができる。
また、粘着材4を1層構造とすると、塗布により形成可能となることから、粘着材を手作業で設置する場合に比べ、粘着材4の形成不良(位置ずれ、折れ等)が起こりにくい。従って、製造歩留まりを向上させ、製造コスト削減を図ることができる。また、基材を用いないため、粘着力を低下させずに薄く形成することが可能である。
【0023】
粘着材4は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。粘着材4は、無色であってもよいが、黒、白など、任意の色を呈するものを使用することもできる。
黒色を呈する粘着材4を使用すると、光を吸収しやすいが放出は少ないため、粘着材4形成部分の輝度が局所的に高くなる現象は起こりにくくなり、均一性の高い輝度分布が得られる。粘着材4を黒く着色するには、粘着材4に黒色の色素(顔料または染料)を含有させればよい。黒色色素としてはカーボンブラック等がある。
【0024】
均一な輝度分布を得るには、粘着材4に光反射機能、すなわち外部からの光を反射する機能を付与することも有効である。
例えば、前記粘着材料に、アルミニウム粉末、銀粉末等の金属を含むフィラーを添加することによって、粘着材4に光反射機能を付与することができる。粘着材4に光反射機能を付与することによって、粘着材4における光の吸収を低減でき、均一性の高い輝度分布が得られる。
【0025】
また、粘着材4の屈折率をライトガイド2の屈折率より低くすることによって、粘着材4における光の吸収を抑制し、輝度分布の均一性向上を図ることもできる。低屈折率の粘着材4の材料としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)などがある。
また、屈折率を低下させる作用を有する材料を粘着材料に添加することによって、粘着材4の屈折率を調整することもできる。屈折率を低下させる作用を有する材料としては、シリコーン系フィラー(シリコン系フィラー)等があり、これを前記粘着材料、例えばアクリル系樹脂に添加することによって粘着材4の屈折率を低くできる。
屈折率差(ライトガイドの屈折率から粘着材料の屈折率を減じた値)は0.05以上であることが好ましい。屈折率差をこの範囲とすることによって、光の吸収を防ぎ、より均一性の高い輝度分布が得られる。
また、前記光反射機能と、前記ライトガイド2よりも低い屈折率とを兼ね備えた粘着材料を使用することもできる。
【0026】
粘着材4の厚みは特に限定されないが、0.1mm以下とすると、面状発光装置10を薄型化する点で好適である。粘着材4の厚みは例えば0.01〜0.1mmとすることができる。
【0027】
図3に示すように、粘着材4は、ライトガイド2の少なくとも外周部13に形成することができる。例えば、図3に示す平面視矩形のライトガイド2の4つの辺部14(外周部13)に沿って、概略矩形枠状に形成することができる。粘着材4の幅(例えば図1のW2)は例えば0.5〜1mmとすることができる。
粘着材4は、外周部13だけでなく他の部分に形成してもよい。また、外周部13の一部にのみ形成してもよい。
【0028】
図2に示すライトガイド2の平面図において、ライトガイド2の外縁部2eには、内方に向けて凹状に形成された略U字形の凹状部16が形成され、光源1は凹状部16の内側に形成されている。
凹状部16の略U字形の内縁16aは、光源1からの光が導入される部分の縁部(導入縁部2a)である。なお、凹状部16の平面視形状は特に限定されず、矩形状、略V字状などであってもよい。
【0029】
図1および図2に示すように、粘着材4は、光源1からの光が導入される導入縁部2aから離間して形成されている。
すなわち、粘着材4は、ライトガイド2の導入縁部2aから距離W1だけ内方寄り(図1における右寄り。図2における下寄り。)に形成されている。粘着材4の導入縁部2aからの距離W1(導入縁部2aと粘着材4の外縁部4aとの距離)は、例えば0.1mm以上とすることができる。距離W1は0.5mm以下とすることができる。
粘着材4が導入縁部2aから離れて形成されているため、光源1からの出射光の粘着材4への吸収を少なくし、ライトガイド2に対する導入効率を高めることができる。
【0030】
粘着材4は、光源1からの光が導入される部分(導入縁部2a)以外の部分では、外縁部2eを含む平面視領域に形成することができる。例えば、図2に示すように、ライトガイド2の外周部のうち、光源1に対面していない部分(例えば図2の領域A2)では、粘着材4は外縁部2eに達して形成することができる。これによって、粘着材4の面積を確保し、十分な接着強度を得ることができる。また、粘着材4より内方側の領域を広く確保できるため、スペースの有効利用を図ることができる。
【0031】
図1に示すように、ライトガイド2の下面2c(シートスイッチ3側の面)には、例えば操作キー11に対応した所定の位置に、光取出部9が形成されている。なお、光取出部9は、ライトガイド2のいずれか一方または両方の面に形成することができる。
【0032】
光取出部9は、例えば印刷により形成された複数の微小ドット状のインク層(以下、単に微小ドットという)とすることができる。各微小ドットの平面視形状は円形、楕円形、多角形(矩形等)など任意としてよい。微小ドットはスクリーン印刷法などの印刷法により形成することができる。
微小ドットを構成するインクとしては、例えば顔料として酸化チタンを用いた白色インクが好適である。なお、光取出部は、ライトガイド2表面に形成された切り欠きでもよいし、サンドブラスト等によって形成した粗面部であってもよい。
ライトガイド2の面2d(他方の面)は、面状発光装置10の上面(表面、発光面)をなす。
【0033】
光取出部9は、粘着材4がない領域に形成することが好ましい。図1に示す例では、光取出部9は、粘着材4よりも右方に形成されている。
【0034】
光源1からの光が導入縁部2aの端面2bからライトガイド2に入射すると、入射光L1はライトガイド2の面2cと面2dの間で反射を繰り返しながらライトガイド2内を伝搬してゆく。ライトガイド2内の光L1の一部は、光取出部9で散乱し、散乱光L2として外部に漏れ出る。これにより、光取出部9を形成した領域、例えば操作キー11に対応した領域から外側に光を出射することができる。
【0035】
図1に示すように、面状発光装置10では、光源1の上面1b(基板6側とは反対の面)とライトガイド2の面2dにわたって、シート状の遮光部材20が設けられている。
遮光部材20は、遮光性を有する材料からなり、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコン系樹脂)、ポリスチレン系樹脂等の樹脂、各種金属からなる群から選択されたいずれかを用いることができる。
遮光性を高めるために、これらの材料に顔料を含有させたり、これらの材料からなるシートの表面に塗料を塗布することができる。
遮光部材20の色は、十分な遮光性を有するのであれば特に限定されず、白色等でもよいが、光の吸収力が高い黒色とするのが好ましい。
【0036】
遮光部材20には光反射機能を付与することもできる。この場合には、遮光部材20の表面に、例えばアルミニウムや銀などの金属を表面に蒸着したり塗布したりすることで反射層を形成することができる。また、遮光部材20をアルミニウム、銀等の金属で形成することで、遮光部材20に光反射機能を与えることもできる。
遮光部材20を設けることで、光源1とライトガイド2との隙間部分から漏光するのを防止することができ、面状発光装置10の輝度分布の均一化を図ることができる。
【0037】
次に、図1および図2に示す面状発光装置10の製造方法の一例について説明する。
(シートスイッチの作製)
図4に示すように、スイッチ素子7を形成した基板6上に、シート体8の母材8A(以下、シート体母材8Aという)を設置する。シート体母材8Aは、シート体8を型抜きできる大きさのシート材である(図5参照)。シート体母材8Aは、複数のシート体8を型抜きできる大きさのものが使用できる。符号18Aはスペーサ18の母材である。
【0038】
(ライトガイド母材への粘着材形成)
図4に示すように、ライトガイド2の母材(以下、ライトガイド母材2Aという)を用意する。ライトガイド母材2Aは、ライトガイド2を型抜きできる大きさのシート材である(図5参照)。ライトガイド母材2Aは、複数のライトガイド2を型抜きできる大きさのものが使用できる。
【0039】
粘着材4の形成に先だって、ライトガイド母材2Aをアニール処理することが好ましい。アニール処理工程の温度条件は、100℃を越える温度(例えば120℃を越える温度)とするのが好ましい。この温度は、140℃以下としてよい。アニール処理工程は、後述の乾燥工程における温度より高い温度で行われることが好ましい。ライトガイド母材2Aが熱収縮する性質のものである場合には、アニール処理によって熱収縮する。
【0040】
次いで、ライトガイド母材2Aの一方の面2cに、上述の印刷方法などにより光取出部9を形成する。
次いで、ライトガイド母材2Aの面2cに、粘着材4の原料液を塗布する。この原料液は、粘着材4の構成材料である前記粘着材料を含むものであり、例えば、前記粘着材料と溶媒とからなる溶液である。
溶媒としては、後述の乾燥工程において、120℃以下(好ましくは100℃以下)かつ10分以内(好ましくは5分以内)の条件で乾燥する低沸点溶媒が好ましい。低沸点溶媒としては、水、アルコール(エタノール、メタノール)を例示できる。特に、水は、低温でも乾燥しやすく、しかもライトガイド2に対する影響が小さいため好ましい。
【0041】
原料液としては、例えばアクリル系樹脂と水とを含むエマルジョンを使用できる。エマルジョンからなる原料液には、界面活性剤を含有させることによって樹脂の分散性を高めることができる。水を溶媒とするエマルジョンは、溶媒が水であるためライトガイド2が劣化せず、輝度の低下が生じない点で優れている。
また、原料液としては、アクリル系樹脂とアルコール(例えばエタノール)とを含むものを使用することもできる。
【0042】
なお、原料液としては、液状硬化型樹脂、例えば紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなど)、熱硬化型樹脂などを使用してもよい。液状硬化型樹脂は、ライトガイドに塗布した後、硬化(乾燥)させることで粘着材とすることができる。
【0043】
原料液の塗布は、印刷により行うことができる。塗布方法は転写、噴霧等でもよいが、原料液の塗布量や塗布位置の正確性などの点で印刷が最適である。印刷方法としては、特に限定されず、スクリーン印刷法、オフセット印刷などが採用できるが、なかでも特に、粘着材4の厚さ調整が容易なスクリーン印刷が好適である。
【0044】
次いで、塗布した原料液を乾燥させて溶媒を蒸散させ、前記粘着材料からなる粘着材4とする。
上述のように、すでに乾燥工程より高い温度でアニール処理が行われている場合には、乾燥工程はアニール処理より低温で行われるため、ライトガイド2に熱収縮などが起きることはない。
【0045】
図4に示すように、粘着材4の形成位置(原料液の塗布位置)は、後述する型抜き工程における型抜き位置C1から内方に離間した位置とする。図4では、粘着材4は、型抜き位置C1から右方に離れた位置に形成されている。
【0046】
(ライトガイド母材とシート体母材との接着)
図4に示すように、ライトガイド母材2Aの面2cを、粘着材4を介して上述のシート体母材8Aの上面8cに接着する。
【0047】
(型抜き)
図4および図5に示すように、ライトガイド2およびシート体8に即した形状の金型(図示略)を用いて、ライトガイド母材2Aおよびシート体母材8Aから、1つの面状発光装置10に相当する大きさのライトガイド2およびシート体8を同時に型抜きする。
すなわち、型抜き位置C1における型抜きによって、ライトガイド母材2Aからライトガイド2を型抜きするとともに、シート体母材8Aからシート体8を型抜きする。
ライトガイド2の導入縁部2aおよびシート体8の外縁部8aは、型抜きによって切り出された縁部である。
【0048】
次いで、光源1などの他の構成を設置することによって、図1および図2に示す面状発光装置10を得る。
【0049】
面状発光装置10では、粘着材4がライトガイド2の導入縁部2aから離れて形成されているため、光源1からの出射光の粘着材4への吸収を少なくし、ライトガイド2に対する導入効率を高めることができる。従って、面状発光装置10の輝度を高めることができる。
また、導入縁部2aから粘着材4の外縁部4aまでのライトガイド2の面2cの領域(図1の領域2f)からライトガイド2内への入射が可能となるため、ライトガイド2への光の導入効率をさらに高めることができる。
【0050】
また、粘着材4がライトガイド2の導入縁部2aに達していると、導入縁部2aにおいて光が散乱されてしまい、面状発光装置10の輝度が低くなるおそれがあるが、面状発光装置10では粘着材4が導入縁部2aに達していないため、導入縁部2aにおける光散乱が抑制され、面状発光装置10の輝度が向上する。
また、粘着材4は高湿度環境下において吸湿し軟化して流動しやすくなることがあるが、面状発光装置10では粘着材4が導入縁部2aから離れて形成されるため、粘着材4が流動化しても導入縁部2aに及ぶことはない。このため、端面2bに付着した粘着材4によりライトガイド2への光の導入効率が低下するのを防ぐことができる。
粘着剤4が水溶性材料を含む場合(特に粘着材4が1層構造である場合)には吸湿が起こりやすいため、本構造はより効果的である。
【0051】
面状発光装置10は、粘着材4がライトガイド2の導入縁部2aから離れて形成されるため、図4および図5に示すように、金型を用いてライトガイド母材2Aからライトガイド2を型抜きする際に、粘着材料が金型によりライトガイド2の導入縁部2aの端面2bに付着することはない。
従って、端面2bに付着した粘着材料を原因としてライトガイド2への光の導入効率が低下するのを防ぐことができる。
【0052】
型抜きの際に粘着材料がライトガイド2の端面2bに付着するという問題は、特に粘着材4が1層構造である場合に起こりやすいが、上記構成によれば、この粘着材料付着を防ぐことができるため、輝度低下を引き起こすことなく1層構造の粘着材4を採用でき、1層構造の粘着材4の利点(粘着材4での光吸収抑制など)を生かすことができる。
【0053】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態である面状発光装置40の一部を示す断面図である。
面状発光装置40は、シートスイッチ3に代えてタッチパッド30(検知センサ)が用いられている点で図1に示す面状発光装置10と異なる。
タッチパッド30は、入力センサ31と、その一方の面に形成されたレジスト層32(被覆樹脂層)とを備えている。
入力センサ31は、人間の手指等の被検出体の近接または接触を検出するセンサである。ここでは、入力センサ31は静電容量式の入力センサであって、基材33の一方の面に配線層34が設けられた構成である。静電容量式の入力センサ31は、1枚の基材33と配線層34からなる単純な構造であるため、薄型化が可能である。
【0054】
基材33は、例えばPETなどの樹脂で形成された板材である。基材33は、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド等からなるフレキシブル基板や、ガラスエポキシ樹脂等からなるリジッド基板であってもよい。
【0055】
配線層34は、例えば複数の電極34aを有する。人間の手指等の被検出体が近づくと、被検出体と電極34aとの間には静電容量が形成され、この静電容量は被検出体と電極34aとの間の対向面積や離間距離によって変化する。このため、被検出体と電極34aは可変容量部を形成する。
可変容量部の静電容量の変化は検出手段(図示略)で検出され、その検出値に基づいて制御部(図示略)で被検出体による入力操作、その位置等が把握される。
【0056】
配線層34は、例えば、銀粒子を含む銀ペーストを基材33上にスクリーン印刷した後に加熱することで形成することができる。配線層34は、基材33に積層した銅箔をエッチングすることにより形成してもよい。
レジスト層32は、配線層34間の電気絶縁性を確保するとともに酸化を防止するもので、入力センサ31の一方の面(導光体12側の面)側に、基材33および配線層34を覆って形成される。レジスト層32としては、例えば汎用のソルダレジストを使用できる。
【0057】
(第3実施形態)
本発明では、シートスイッチ3に代えて、感圧式のメンブレンスイッチ(検知センサ)を使用することもできる。
図7は、メンブレンスイッチの一例を示すもので、このメンブレンスイッチ50は、対向面51aに上部電極53が形成された上部基板51と、対向面52aに下部電極54が形成された下部基板52と、基板51、52を互いに隔てるスペーサ55とを備えている。
基板51、52およびスペーサ55は例えばPETなどの樹脂からなる。電極53、54は例えば銀ペーストなどにより形成することができる。
下部基板52は検知センサの基板に相当し、上部基板51はシート体に相当する。上部基板51の上面51bは粘着材(図示略)によってライトガイド(図示略)に接着される。
メンブレンスイッチ50では、被検出体(人間の手指等)による押圧によって上部基板51が撓むと、上部電極53が下部電極54に当接し、これらが導通して入力操作等が検出される。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
図1に示すように、粘着材4が導入縁部2aから離れた位置にある面状発光装置10を次のようにして作製した。
図4に示すように、スイッチ素子7を形成した基板6上にシート体母材8Aを設置した。
ライトガイド母材2Aの面2cに、白色インクを用いた印刷により微小ドット状の光取出部9を形成するとともに、粘着材4(アクリル系樹脂)の原料液を印刷により塗布し、乾燥させて1層構造の粘着材4とした。
粘着材4の形成位置(原料液の塗布位置)は、導入縁部2aとなる型抜き位置C1から内方に0.3mm離れた位置とした。
ライトガイド母材2Aの面2c側を、粘着材4を介してシート体母材8Aに接着した。
【0059】
図4および図5に示すように、金型(図示略)を用いて、ライトガイド母材2Aおよびシート体母材8Aから、型抜き位置C1においてライトガイド2およびシート体8を同時に型抜きした。
図8(a)は、実施例1の面状発光装置10についての輝度分布を示す図である。輝度の最大値、最小値、平均値、および最小値と最大値の比を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
粘着材4が導入縁部2aから離れていない面状発光装置を次のようにして作製した(図9参照)。
ライトガイド母材2Aにおける粘着材4の形成位置を、型抜き位置C1を含む位置とすること以外は実施例1と同様にしてライトガイド母材2Aおよびシート体母材8Aからライトガイド2およびシート体8を同時に型抜きした。この際、粘着材4も型抜き位置C1で型抜きされた。それ以外は実施例1と同様にして面状発光装置を作製した。
図8(b)は、比較例1の面状発光装置についての輝度分布を示す図である。輝度の最大値、最小値、平均値、および最小値と最大値の比を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
図8および表1に示すように、粘着材4をライトガイド2の導入縁部2aから離して形成した実施例1では、高い輝度が得られたことが確認された。
これに対し、粘着材4が導入縁部2aから離れていない比較例1では、輝度が低くなった。比較例1の輝度が低くなったのは、型抜きの際に粘着材料がライトガイド2の導入縁部2aの端面2bに付着したために光の導入効率が低くなったことが原因の一つである可能性がある。
【符号の説明】
【0063】
1・・・光源、2・・・ライトガイド、2a・・・導入縁部(光源からの光が導入される部分のライトガイドの縁部)、2c・・・ライトガイドの一方の面、2e・・・ライトガイドの外縁部、2A・・・ライトガイド母材、3・・・シートスイッチ(検知センサ)、4・・・粘着材、6・・・基板、8・・・シート体、8A・・・シート体母材、9・・・光取出部、10、40・・・面状発光装置、13・・・ライトガイドの外周部、20・・・遮光部材、30・・・タッチパッド(検知センサ)、50・・・メンブレンスイッチ(検知センサ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光が縁部から導入されて面方向に導かれるシート状のライトガイドと、
前記ライトガイドの一方の面側に配置された検知センサと、を備え、
前記検知センサが、基板と、その一方の面に設けられたシート体を有し、
前記ライトガイドの少なくとも外周部と前記検知センサのシート体とが粘着材で接着され、
前記粘着材は、前記光源からの光が導入される前記ライトガイドの縁部から離間して形成されていることを特徴とする面状発光装置。
【請求項2】
前記粘着材は、1層構造とされていることを特徴とする請求項1記載の面状発光装置。
【請求項3】
前記粘着材は、前記ライトガイドの外周部のうち前記光源からの光が導入される部分以外の部分では、縁部を含む領域に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の面状発光装置。
【請求項4】
前記ライトガイドのいずれか一方の面には、前記光源からの導入光を散乱させて出射させる光取出部が形成され、
前記光取出部は、前記粘着材がない領域に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の面状発光装置。
【請求項5】
前記ライトガイドの他方の面と、前記光源とを跨ぐように、遮光性を有した遮光部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の面状発光装置。
【請求項6】
光源と、前記光源からの光が縁部から導入されて面方向に導かれるシート状のライトガイドと、前記ライトガイドの一方の面側に配置された検知センサと、を備え、前記検知センサが、基板と、その一方の面に設けられたシート体を有する面状発光装置を製造するにあたって、
前記ライトガイドおよび前記シート体は、粘着材で互いに接着されたそれぞれの母材を同時に型抜きすることによって形成し、
前記粘着材は、前記型抜きされたライトガイドの外周部のうち前記光源からの光が導入される縁部から離間して形成されることを特徴とする面状発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記粘着材は、1層構造とされていることを特徴とする請求項6記載の面状発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記粘着材は、原料液を前記ライトガイドに塗布し乾燥させることにより形成することを特徴とする請求項6または7記載の面状発光装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−26134(P2013−26134A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162084(P2011−162084)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】