説明

靴、その靴を履いた人の歩行・走行動作評価支援装置

【課題】歩行者又は走者のステップの仕方に配慮して、歩行や走行動作の評価を支援する技術を提供する。
【解決手段】靴は、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサ22RF、22LFと、かかと側に配された第2の三軸のジャイロセンサ22RB、22LBとを有する。挙動解析装置50は、靴のつま先側のジャイロセンサの出力と、かかと側のジャイロセンサの出力とを用いて歩行・走行動作に関する評価情報を生成する評価情報生成手段と、評価情報生成手段で生成した評価情報を出力する出力手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の歩行や走行動作の評価を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力センサを取り付けた靴により、歩行に関するデータを取得可能に
した技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−14803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ウォーキングやランニングでは、適切なフォームでステップを踏むことが重
要である。すなわち、着地動作の検出のみからでは、歩行や走行動作の適切な評価は難し
い。
【0004】
本発明の目的は、歩行者又は走者のステップの仕方に配慮して、歩行や走行動作の評価
を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、靴であって、片方の靴の少なくとも
2ヶ所(例えば、つま先側とかかと側)に、三軸のジャイロセンサをそれぞれ備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、靴を履いた人の歩行・走行動作評価支援装置である。前記靴は
、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、かかと側に配された第2の三軸の
ジャイロセンサとを有する。そして、前記歩行・走行動作評価支援装置は、前記靴のつま
先側のジャイロセンサの出力と、かかと側のジャイロセンサの出力とを用いて歩行・走行
動作に関する評価情報を生成する評価情報生成手段と、前記評価情報生成手段で生成した
評価情報を出力する出力手段とを備える。
【0007】
前記歩行・走行動作評価支援装置は、予め記憶装置に、前記靴の歩行・走行時のつま先
側のジャイロセンサの出力及びかかと側のジャイロセンサの出力に対応させた歩行・走行
動作に関する評価情報を記憶する。前記評価情報生成手段は、前記記憶装置に記憶された
評価情報の中から、歩行・走行時の前記つま先側のジャイロセンサの出力及び前記かかと
側のジャイロセンサの出力が最も近似する評価情報を選択することにより、前記歩行・走
行動作に関する評価情報を生成する。
【0008】
また、前記評価情報は、速度、歩幅、消費カロリー、左右バランス、の少なくとも1つ
を含んでいてもよい。
【0009】
また、前記評価情報生成手段は、過去に記録した複数の歩行・走行時の前記各センサの
出力について評価情報を生成するとともに、生成した評価情報を比較する情報を生成して
もよい。
【0010】
また、前記歩行・走行動作評価支援装置は、予め記憶装置に、モデルデータ(例えば、
プロ選手のデータ)として、前記靴での歩行・走行時のつま先側のジャイロセンサの出力
及びかかと側のジャイロセンサの出力を記憶している。前記評価情報生成手段は、前記靴
での歩行・走行時のつま先側のジャイロセンサの出力及びかかと側のジャイロセンサの出
力を、前記モデルデータと比較して、評価情報を生成してもよい。
【0011】
また、前記評価情報生成手段は、前記モデルデータの中から、前記靴での歩行・走行時
のつま先側のジャイロセンサの出力及びかかと側のジャイロセンサの出力が最も近似する
モデルデータを抽出し、当該モデルデータの識別情報を含む評価情報を生成してもよい。
【0012】
前記靴は、左右の足用の靴のそれぞれに、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセ
ンサと、かかと側に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有している。前記評価情報
生成手段は、左足用の靴の前記各センサの出力と、右足用の靴の前記各センサの出力との
相違を用いて、左足と右足の歩行・走行時のバランスを含む評価情報を生成してもよい。
【0013】
前記歩行・走行動作評価支援装置は、前記靴に内蔵されていてもよい。
【0014】
本発明の第3の態様は、靴を履いた人の歩行・走行動作評価支援装置の歩行・走行動作
評価支援方法である。前記靴は、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、か
かと側に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、前記歩行・走行動作評価支援装
置は、前記靴のつま先側のジャイロセンサの出力と、かかと側のジャイロセンサの出力と
を用いて歩行・走行動作に関する評価情報を生成する評価情報生成ステップと、前記評価
情報生成ステップで生成した評価情報を出力する出力ステップとを行う。
【0015】
また、前記靴は、左右の足用の靴のそれぞれに、つま先側に配された第1の三軸のジャ
イロセンサと、かかと側に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、前記評価情報
生成ステップは、左足用の靴の前記各センサの出力と、右足用の靴の前記各センサの出力
との相違を用いて、左足と右足の歩行・走行時のバランスを含む評価情報を生成してもよ
い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では
、特に断りがない限り、「走行」とは、歩行動作を含むものとする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態が適用された走行動作評価支援システムの概略構成図であ
る。
【0018】
図示するように、走行動作評価支援システムは、1足の靴10と、挙動解析装置50と
を備えて構成される。
【0019】
靴10は、本実施形態では、運動靴であるが、登山靴、ブーツ、サンダル、ハイヒール
などであってもよい。靴10は、その内部(例えば、靴底)に、靴10を履いた人の走行
時の挙動を検出するための挙動検出装置20を備えている。ただし、その外観、重さ、重
心などは、通常の靴と同等になるように設計されている。
【0020】
図2は、挙動検出装置20の構成図である。挙動検出装置20は、左足用の靴に配され
る構成と、右足用の靴に配される構成とに分かれる。
【0021】
挙動検出装置20の左足用の靴に配される構成は、様々な処理を行う中心的なユニット
である主制御部21と、2つのジャイロセンサ22LF、22LBと、右足用の靴の通信
IF23Rと情報の授受を仲介する通信IF23Lと、日時を生成する時計25と、入出
力IF(インタフェース)26と、スイッチ27と、記憶装置28などである。図1に示
すように、左足用の靴の靴底のつま先側にジャイロセンサ22LF、かかと側にジャイロ
センサ22LBが内蔵され、その他の構成12は、靴底の所定の位置に内蔵される。スイ
ッチ27は、使用者が操作しやすい位置、例えば、かかと表面に配される。
【0022】
入出力IF26は、外部の機器との情報の授受の仲介を行う。例えば、記憶装置28に
記憶されている情報(各センサの出力である挙動情報110)を、挙動解析装置50に送
る。
【0023】
挙動検出装置20の右足用の靴に配される構成は、2つのジャイロセンサ22RF、2
2RBと、左足用の靴の通信IF23Lと情報の授受を仲介する通信IF23Rなどであ
る。図1に示すように、左足用の靴と同様に、右足用の靴の靴底のつま先側にジャイロセ
ンサ22RF、かかと側にジャイロセンサ22RBが内蔵され、通信IF23Rは、靴底
の所定の位置に内蔵される。右足用の靴に内蔵された各センサ22RF,22RBは、通
信IF23R,23Lを介して、主制御部21により制御される。
【0024】
各ジャイロセンサ22LF、22LB、22RF、23RBは、三軸のジャイロセンサ
で、三軸(x,y,z)方向の角速度を検出する。ジャイロセンサ22h、22gは、例
えば、三軸の振動型マイクロジャイロセンサである。
【0025】
なお、つま先側とかかと側にそれぞれセンサを設置するのは、走行時の靴底の曲がり(
撓りや捩れ)に配慮したものである。ステップの仕方、重心のかけ方により、靴底は曲が
る。曲がりにより位置関係が変化する部位(つま先側とかかと側)に、それぞれセンサを
配することで、走行時の足の挙動をより精度よく検出することができる。したがって、靴
の種類、靴底の柔らかさやに応じて、つま先側とかかと側に限定されず、位置関係が変化
する部位に、ジャイロセンサを設置してもよい。
【0026】
このように構成される挙動検出装置20は、中央演算装置(CPU)、ワークエリアで
あるメモリ、プログラムを格納したROM、通信インタフェース、などからなるコンピュ
ータを備えて構成される。主制御部21の機能は、CPUがメモリにロードしたプログラ
ムを実行することで達成される。ただし、主制御部21の機能は、ハードウエア的に実現
されてもよい。記憶装置28は、メモリカードやICカードなどの着脱可能な可搬性の記
録媒体あってもよい。また、各種設定は、無線通信可能なリモコンを介して行われるよう
にしてもよい。
【0027】
図1に示すように、靴10は、さらに、挙動検出装置20の入出力IF26に接続する
表示装置13やスピーカ14を備えていてもよい。これらについては、後述する。
【0028】
挙動解析装置50は、挙動検出装置20が収集した情報に基づいて、靴10の走行時の
挙動を解析し、評価する処理を行う。
【0029】
図3は、挙動解析装置50の機能構成図である。挙動解析装置50は、主制御部51と
、挙動評価部52と、入出力IF54とを有する。主制御部51は、様々な処理を行う中
心的なユニットである。例えば、ユーザから入力装置を介して各種の要求を受け付けると
、要求に応じた処理が行われるように、他の機能部に命令する。
【0030】
挙動評価部52は、履歴情報55に格納された挙動情報110を評価する処理を行う。
例えば、後述するモデル挙動データ150を用いて、走行時の速度や予想歩幅を求める。
また、複数の走行時の挙動データを比較して、その相違を求めて出力する。また、履歴情
報55に格納されている挙動データと、プロ選手の挙動データを比較して、その相違を求
めて出力する。
【0031】
入出力IF54は、外部の機器との情報の授受を仲介する。例えば、靴10の挙動検出
装置20から、挙動検出装置20が収集した挙動情報110(各センサの出力情報)を取
得する。また、挙動評価部52が出力した評価結果を、表示装置に出力する。入出力IF
54は、無線通信装置を備え、挙動検出装置20との情報の授受を、無線で行うことがで
きる。また、入出力IF54は、挙動検出装置20の記憶装置28がICカードやメモリ
カードなどの可搬性の記録媒体の場合、これらの読取装置を備えている。
【0032】
挙動解析装置50は、CPU、ワークエリアとなるメモリ、各種プログラムやデータを
記憶するROMやHDD、外部機器との通信を行う通信インタフェース、これらを接続す
るバスを備えた汎用のパーソナルコンピュータにより構成できる。挙動解析装置50は、
キーボード、マウスなどの入力装置、表示装置などの出力装置と接続している。上記の挙
動解析装置50の各構成要素及び機能は、CPUがメモリにロードした所定のプログラム
を実行することにより達成される。
【0033】
<動作の説明> 次に、上記のように構成される走行動作評価支援システムの動作につ
いて説明する。まず、靴10の挙動検出装置20の挙動情報110の収集処理について、
図4のフロー図により説明する。
【0034】
挙動検出装置20の主制御部21は、使用者によりスイッチ27がONされると、4つ
のジャイロセンサ22LF、22LB、22RF、22RBでの測定を開始する(S12
)。そして、測定を行いながら、スイッチのOFFを監視し、OFFされた場合(S13
でY)、測定を終了し、それまで測定した結果を、記憶装置28に記憶し(S14)、図
4のフローを終了する。
【0035】
図5は、挙動検出装置20の記憶装置28に蓄積される、挙動情報110を示す。主制
御部21は、図4のS14において、挙動情報110にレコード111を追加し、追加し
たレコード111に、レコードを識別するコード(レコードID)112と、靴を識別す
るコード(靴ID113)と、時計25で取得した記録日時114と、各センサからの出
力からなる挙動データ115とを格納する。
【0036】
挙動データ115には、図6に示すように、測定時間(スイッチ27のONからOFF
までの間)における、経過時間122ごとの、左足用の靴のジャイロセンサ22LF,2
2LBの各三軸の検出結果123、124と、右足用の靴のジャイロセンサ22RF,2
2RBの各三軸の検出結果125、126とが格納される。
【0037】
こうして、スイッチ27のスイッチがON/OFFされ、走行動作があるたびに、挙動
情報110には、レコード111追加されていく。
【0038】
次に、挙動解析装置50の動作について説明する。
【0039】
挙動解析装置50の入出力IF54は、無線装置を介して、靴10の挙動検出装置20
から、蓄積された挙動情報110を取得し、履歴情報55に格納する。
【0040】
次に、ユーザから走行動作の評価要求を受け付けた場合について説明する。挙動評価部
2は、要求の種類に応じて、例えば、以下の処理を行う。
【0041】
(1)特定のレコードの走行動作の表示
図7は、かかる場合の処理フローを示す。挙動評価部53は、まず、ユーザに、履歴情
報55に格納されている挙動情報110の中から、評価対象となるレコード111を選択
させる(S20)。このとき、記録日時114をキーとして候補を絞ることができる。例
えば、ユーザから記録日時の範囲の指示を受け付けると、指示された範囲に記録日時11
4があるレコード111を抽出して、候補として表示する。そして候補の中から選択を受
け付ける。
【0042】
次に、挙動評価部52は、選択されたレコード111の挙動データ115について、最
も近似するモデルを特定する(S21)。ここで、モデル挙動データ150には、図8に
示すように、モデルID151ごとに、走行動作の挙動データ152が格納されている。
挙動データ152は、図6で示した挙動データ115と同様の構成である。モデル挙動デ
ータ150は、実験的に採取されたデータで、靴10を用いて様々な走行動作をしたとき
の各センサの出力を、1種類の走行動作につき1モデルとして格納されたものである。挙
動評価部52は、モデル挙動データ150の中から、評価対象の挙動データ115と最も
近似する挙動データ152を抽出する。
【0043】
ところで、モデル挙動データ150の各モデルの挙動データ152には、長時間におけ
るデータが格納されている必要はなく、そのモデルの走行動作における1周期(例えば、
右足が地面から離れた後、地面に着地し、再び離れるまで)分の平均的なデータが格納さ
れていればよい。一方、各レコード111の挙動データ115は、測定時間内における複
数周期に渡るデータである。そこで、挙動評価部52は、挙動データ115の複数の周期
の各センサの値を平均するなどして、1周期分の各センサの出力を求める。もしくは、ユ
ーザから評価する時間帯の指定、すなわち経過時間の範囲の選択を受け付けて、その範囲
内の周期における各センサの出力の平均値を求めて、1周期分の各センサの出力としても
より。1周期に相当する時間は、例えば、ジャイロセンサのいずれかの軸の出力に着目し
、周期性を求め、求めた周期性の1周期の時間とする。
【0044】
そして、挙動評価部52は、評価対象のレコード111について、1周期分(例えば、
右足が地面から離れた後、地面に着地し、再び離れるまで)の各センサの各軸の出力を求
める。
【0045】
続いて、挙動評価部52は、モデルごとに、モデルの挙動データ152と、評価対象の
挙動データ115との、1周期分のデータについて、同一の経過時間における、各センサ
の各軸の値の差を全て求め、全ての差が所定の範囲内となるモデルID151を特定する
。なお、複数のモデルが特定された場合、差分の合計が最小となるモデルID151をさ
らに特定する。こうして、評価対象の挙動データ115に最も近似するモデルが特定され
る。
【0046】
次に、挙動評価部52は、評価用モデルデータ160の中から、S21で特定したモデ
ルIDに対応する評価用データを取得する。ここで、評価用データ160は、図9に示す
ように、モデルID161(モデルID151に対応する)ごとに、速度162、歩幅1
63、描画データ164、消費カロリー165、コメント166などを含んでいる。評価
用データ160は、各モデルにおける走行時の速度、歩幅、消費カロリーを実際に測定し
て作成されたものである。描画データ164は、走行動作の様子を示す画像である。コメ
ント166には、左右の足のバランスに関するメッセージや、重心移動に関するコメント
、より良い走行動作のためにどうすれば良いかなどのメッセージが格納さている。
【0047】
次に、挙動評価部52は、図10で示すように、表示装置の画面510に、S22で選
択した評価用データを用いて、各種の情報を表示する。例えば、走行動作画像521とし
て、描画データ164を用いて、走行動作の様子をアニメーションなどにより表示する。
早送りや巻き戻し、クイック再生やスロー再生を受け付け、実行してもよい。また、走行
の速度162や歩幅163、消費カロリー165、コメント166を付加情報530とし
て表示する。このとき、選択されているレコード111の識別情報520として、評価対
象のレコード111の靴ID113や記録日時114を表示してもよい。
【0048】
(2)複数の挙動データの比較
かかる場合、挙動評価部52は、履歴情報55に蓄積されている挙動情報110の中か
ら、複数(例えば、2つ)のレコード111をユーザに選択させる。そして、選択された
レコード111についてそれぞれ、上述した評価用データの選択を行う。さらに、図11
に示すように、選択されたレコード111のそれぞれの識別情報520a、520bと、
走行動作画像521a、521bを表示する。さらに、差分(速度の差、歩幅の差)を求
め、差分情報531として表示してもよい。なお、挙動評価部52は、複数の走行動作画
像を、並べて表示してもよいし、所定の部位(例えば、頭や腰の位置)が重なるようにし
て表示してもよい。
【0049】
(3)プロ選手の走行動作との比較
挙動評価部52は、プロ選手データ170を用いて、図12に示すように、評価対象の
走行動作と、プロ選手の走行動作との比較を表示することもできる。プロ選手データ17
0は、図13に示すように、選手ID171ごとに、プロフィール172と、モデルID
173とを含む。プロフィール172には、そのプロ選手の名前、実績などの他、身長、
体重などの体格に関する情報も含んでいる。モデルID173は、モデル挙動データ15
0のモデルID151及び評価用データ160のモデルID161に対応している。
【0050】
挙動評価部52は、挙動情報110の中から、評価対象のレコード111をユーザに選
択させる。そして、選択されたレコード111について、上述した評価用データの選択を
行い、上記(1)と同様に、図12に示すように、識別情報520、走行動作画像521
、付加情報530の表示を行う。また、ユーザに、プロ選手データ170の中から、プロ
フィール172の名前をキーとして、プロ選手ID171の選択をさせる。そして、評価
用データ160の中から、モデルID161(モデルID173)をキーとして、選択さ
れたプロ選手ID171に対応する評価用データを特定する。そして、特定した評価用デ
ータの描画データ164を用いて、プロ選手の走行動作画像522を表示する。また、評
価対象のレコード111の評価用データと、指定されたプロ選手の評価用データの差分(
速度の差、歩幅の差)を求め、差分情報531として表示してもよい。なお、挙動評価部
52は、二つの走行動作画像を、並べて表示してもよいし、所定の部位(例えば、頭や腰
の位置)が重なるようにして表示してもよい。
【0051】
(4)近似したプロ選手の特定
また、最も近似した走行動作をするプロ選手を特定し表示することもできる。例えば、
挙動評価部52は、プロ選手データ170を用いて、モデル挙動データ150の中の、プ
ロ選手の挙動データ152を抽出し、上記(1)と同様に、抽出した挙動データ152の
中から、評価対象の挙動データ115に最も近似するものを特定する。そして、プロ選手
データ170の中から、特定した挙動データ152のモデルID151に対応するプロ選
手ID171を特定する。そして、図12に示すように、近時したプロ選手を示す情報5
35を表示する。このとき、プロ選手のプロフィール172を表示してもよい。そうすれ
ば、ユーザは、自分との体格差などを知ることができる。
【0052】
以上、挙動評価部52のいくつかの処理について説明したが、これらの他にも、ユーザ
からの要求に応じて、挙動データ115を様々な観点から評価、解析することができる。
また、評価、解析に用いるデータは、モデル挙動データ150、評価表データ160、プ
ロ選手データ170に限定されない。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0054】
上記実施形態によれば、歩行・走行時のステップの仕方を詳細に検知し、歩行・走行動
作を知ることができる。靴は、その靴底の材質に応じて撓りや捩れが生じるため、
歩行・走行において、適切なフォームを確立するためには、歩行・走行時のつま先やか
かとの位置が重要となるが、本実施形態によれば、つま先側とかかと側にセンサが設置さ
れているので、靴底の撓りや捩れに関らず、より正確に、歩行・走行動作を検出し、評価
することができる。
【0055】
本発明は、上記実施形態に制限されない。以下に、上記実施形態の変形例を説明する。
【0056】
<変形例:測定タイミング>
上記の実施形態では、各センサでの測定期間を、スイッチ27のONからOFFまでの
期間としたが、これに限定されない。例えば、スイッチ27がONされてから所定期間を
測定時間としてもよい。
【0057】
また、挙動検出装置20の主制御部21は、各センサで測定を常時行いつつ、レコード
に記録する範囲を定めるようにしてもよい。例えば、走行動作が行われたときに、1レコ
ードとして記憶する時間範囲を定めて、その時間範囲で測定されたセンサの出力を、1走
行動作としてレコード111に格納する。記録時間の範囲は、上述の測定時間と同様に設
定することができる。
【0058】
また、走行動作が所定時間行われたときに、記録時間を設定してもよい。例えば、ジャ
イロセンサが出力する値が継続的に変化した場合、走行中と判定して、記録開始時間を定
める。また、ジャイロセンサが出力する値が継続的に変化しない場合、走行停止と判定し
、記録終了時間を設定する。
【0059】
<変形例:出力装置を備える靴>
図14に示すように、挙動検出装置20が、上述の挙動解析装置50の機能を備えてい
てもよい。すなわち、挙動検出装置20は、主制御部21と、ジャイロセンサ22LF,
22LB,22RF,22RBと、時計25と、入出力IF(インタフェース)26と、
記憶装置28と、挙動評価部52とを備えている。また、記憶装置28に、履歴情報55
と、モデル挙動データ150と、評価用データ160と、プロ選手データ170とを記憶
している。各機能部が行う処理は、上述の実施形態と同様である。ただし、靴10は、パ
ーソナルコンピュータが備えるようなディスプレイを持つことができない。
【0060】
そこで、靴10は、出力装置として、図1に示すように、例えばつま先側の上面に、小
型表示装置13と、スピーカ14とを備えている。小型表示装置13は、文字表示可能な
ものでもよいし、例えば、LED(レーザ発光ダイオードである)などの発光素子であっ
てもよい。
【0061】
挙動検出装置20の各種設定は、無線のリモコンにより行われるようにしてもよい。例
えば、リモコンは、更新されたモデル挙動データ150やプロ選手データ170を自身の
記憶装置に保持し、ユーザからの要求に応じて、挙動検出装置20の入出力IF26に送
信する。主制御部21は、受信した情報を記憶装置28に記憶する。
【0062】
図15は、走行動作が行われたときの挙動検出装置20の動作のフロー図である。
【0063】
主制御部21は、図4のフローと同様にして、挙動情報の記憶処理を行う(S31)。
これにより、図5に示したように、挙動情報110にレコード111が追加され、挙動デ
ータ115が格納される。
【0064】
次に、挙動評価部52は、上記の方法と同様にして、S31で得られた挙動データ11
5を評価する(S31、S33)。そして、出力装置13、14を介して、評価結果を出
力する(S34)。ここでの評価の仕方、評価の出力の仕方は、設定のされ方により異な
る。
【0065】
(1)評価情報の出力
かかる場合、挙動評価部52は、上述の方法で、評価対象である挙動データ115の評
価用データを求めて、速度162、歩幅163、消費カロリー165、コメント166な
どを出力装置で出力する。例えば、スピーカ14で音声により発声する。もしくは、小型
表示装置13に表示する。小型表示装置19が発光素子の場合は、出力内容に応じて予め
定めた態様(色や点滅回数)で点灯する。
【0066】
(2)過去の走行動作と比較
挙動評価部52は、走行動作が行われ、新たに挙動データ115が生成されると、履歴
情報55に格納されている過去の挙動データ115と比較する。例えば、最も記録日時1
14が新しい他のレコード111を検索し、両者について、評価用データを求めて、速度
162や歩幅163の相違度(差分)を求める。そして、相違度に応じて、予め定めたメ
ッセージをスピーカ14で音声により発声する。例えば、今回のものが遅い場合、「速度
が遅くなりました」などと発声する。もしくは、小型表示装置13で表示する。或いは、
出力内容に応じて予め定めた態様(色や点滅回数)で点灯させる。
【0067】
(3)プロ選手の走行動作と比較
挙動評価部52は、走行動作が行われ、新たに挙動データ115が生成されると、プロ
選手データ170に登録されているプロ選手の挙動データ152と比較する。なお、複数
のプロ選手の挙動データ152が存在する場合、ユーザにより予め選択されているものと
比較する。例えば、新たに生成された挙動データ115と、プロ選手の挙動データ152
とについて、それぞれ評価用データを求めて、速度162や歩幅163の相違度(差分)
を求める。そして、相違度に応じて、予め定めたメッセージをスピーカ14で音声により
発声する。例えば、速度が早い場合、「プロ選手***の速度より早いです」などと発声
する。もしくは、小型表示装置13で表示する。若しくは、出力内容に応じて予め定めた
態様(色や点滅回数)で点灯させる。
【0068】
(4)近似した走行動作のプロ選手を特定
挙動評価部52は、走行動作が行われ、新たに挙動データ115が生成されると、上記
の方法と同様にして、最も近似した挙動データ152に対応するプロ選手の選手IDを特
定する。そして、プロ選手データ170を参照して、プロフィール172から名前を取得
し、例えば、スピーカ14を介して、「プロ選手**の走行動作に近いです」などと発声
する。もしくは、小型表示装置13で表示する。こうすれば、プレイヤーは、走行動作す
るたびに、近似するプロ選手を知ることができる。
【0069】
<変形例:左右のバランスの算出>
挙動評価部52は、左右の足のステップのバランスを、左右のジャイロセンサの出力の
差異を利用して求めることができる。
【0070】
左右の足は、その動作が、半周期ずれる。例えば、歩行の場合、右足が着地すると、左
足が地面から離れ、左足が着地すると、右足が地面から離れる。左右の足のステップのバ
ランスが良いと、右足の靴のジャイロセンサの出力と、左足のジャイロセンサの出力は、
半周期のずれで前後方向及び左右対称方向に一致するはずである。かかる原理を利用すべ
く、左右の対応するジャイロセンサは、三軸がそれぞれ左右対象になるように配置されて
いる。
【0071】
挙動評価部52は、左右のバランスを評価するように要求されると、評価対象のレコー
ド111の挙動データ115から、左側の各ジャイロセンサの各軸の出力と、半周期分ず
らした右側の各ジャイロの各軸の出力との差分の平均を求める。そして、その平均値を、
バランスレベルとして出力する。ここでは、バランスレベルが小さいほど、バランスがよ
いことになる。
【0072】
以上、いくつかの変形例について説明した。
【0073】
なお、上記実施形態および変形例の靴は、つま先とかかとに、2つの三軸のジャイロセ
ンサを備えているが、さらに他の部位にジャイロセンサを備えていてもよい。また、加速
度センサ(例えば、三軸の加速度センサ)を備えていてもよい。加速度センサの出力も、
挙動データ115に含ませ、挙動の評価に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】走行動作評価支援システムの概略構成図。
【図2】挙動検出装置の概略構成図。
【図3】挙動解析装置の概略構成図。
【図4】挙動情報記憶処理のフロー図。
【図5】挙動情報の構成図。
【図6】挙動データの構成図。
【図7】画面表示のための処理のフロー図。
【図8】モデル挙動データの構成図。
【図9】評価用データの構成図。
【図10】画面の表示例。
【図11】画面の表示例。
【図12】画面の表示例。
【図13】プロ選手データの構成図。
【図14】挙動検出装置の概略構成図。
【図15】靴の情報出力の処理のフロー図。
【符号の説明】
【0075】
10…靴、
20…挙動検出装置、21…主制御部、
22LF,22LR,22RF,22RB…ジャイロセンサ、
23R…通信IF
25…時計、26…入出力IF、28…記憶装置
50…挙動解析装置、51…主制御部、52…挙動評価部、54…入出力IF、
55…履歴情報、150…モデル挙動データ、160…評価用データ、170…プロ選手
データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴であって、
片方の靴の少なくとも2ヶ所に、三軸のジャイロセンサをそれぞれ備える
ことを特徴とする靴。
【請求項2】
靴であって、
つま先側とかかと側に三軸のジャイロセンサをそれぞれ備える
ことを特徴とする靴。
【請求項3】
靴を履いた人の歩行・走行動作評価支援装置であって、
前記靴は、
つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、かかと側に配された第2の三軸の
ジャイロセンサとを有し、
前記歩行・走行動作評価支援装置は、
前記靴のつま先側のジャイロセンサの出力と、かかと側のジャイロセンサの出力とを用
いて歩行・走行動作に関する評価情報を生成する評価情報生成手段と、
前記評価情報生成手段で生成した評価情報を出力する出力手段とを備える
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
予め記憶装置に、前記靴の歩行・走行時のつま先側のジャイロセンサの出力及びかかと
側のジャイロセンサの出力に対応させた歩行・走行動作に関する評価情報を記憶し、
前記評価情報生成手段は、
前記記憶装置に記憶された評価情報の中から、歩行・走行時の前記つま先側のジャイロ
センサの出力及び前記かかと側のジャイロセンサの出力が最も近似する評価情報を選択す
ることにより、前記歩行・走行動作に関する評価情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項5】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
前記評価情報は、
速度、歩幅、消費カロリー、左右バランス、の少なくとも1つを含んでいる
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項6】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
前記評価情報生成手段は、
過去に記録した複数の歩行・走行時の前記各センサの出力について評価情報を生成する
とともに、生成した評価情報を比較する情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項7】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
予め記憶装置に、モデルデータとして、前記靴での歩行・走行時のつま先側のジャイロ
センサの出力及びかかと側のジャイロセンサの出力を記憶し、
前記評価情報生成手段は、
前記靴での歩行・走行時のつま先側のジャイロセンサの出力及びかかと側のジャイロセ
ンサの出力を、前記モデルデータと比較して、評価情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項8】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
予め記憶装置に、モデルデータとして、前記靴での歩行・走行時のつま先側のジャイロ
センサの出力及びかかと側のジャイロセンサの出力を記憶し、
前記評価情報生成手段は、
前記モデルデータの中から、前記靴での歩行・走行時のつま先側のジャイロセンサの出
力及びかかと側のジャイロセンサの出力が最も近似するモデルデータを抽出し、当該モデ
ルデータの識別情報を含む評価情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項9】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
前記靴は、
左右の足用の靴のそれぞれに、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、か
かと側に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、
前記評価情報生成手段は、
左足用の靴の前記各センサの出力と、右足用の靴の前記各センサの出力との相違を用い
て、左足と右足の歩行・走行時のバランスを含む評価情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項10】
請求項3に記載の歩行・走行動作評価支援装置であって、
前記靴に内蔵されている
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置。
【請求項11】
靴を履いた人の歩行・走行動作評価支援装置の歩行・走行動作評価支援方法であって、
前記靴は、
つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、かかと側に配された第2の三軸の
ジャイロセンサとを有し、
前記歩行・走行動作評価支援装置は、
前記靴のつま先側のジャイロセンサの出力と、かかと側のジャイロセンサの出力とを用
いて歩行・走行動作に関する評価情報を生成する評価情報生成ステップと、
前記評価情報生成ステップで生成した評価情報を出力する出力ステップとを行う
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置の歩行・走行動作評価支援方法。
【請求項12】
請求項11に記載の歩行・走行動作評価支援装置の歩行・走行動作評価支援方法であっ
て、
前記靴は、
左右の足用の靴のそれぞれに、つま先側に配された第1の三軸のジャイロセンサと、か
かと側に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、
前記評価情報生成ステップは、
左足用の靴の前記各センサの出力と、右足用の靴の前記各センサの出力との相違を用い
て、左足と右足の歩行・走行時のバランスを含む評価情報を生成する
ことを特徴とする歩行・走行動作評価支援装置の歩行・走行動作評価支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−73285(P2008−73285A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256863(P2006−256863)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】