説明

靴用中敷

【課題】靴本来の機能を十分に発揮させるとともに、指先部分の保護効果をもつ靴用中敷を提供する。
【解決手段】中敷2を、靴1の内側底面1fの形状に略合致した平面形状をもつ本体部21と該本体部21の先端部21aに位置し且つ上記靴1の爪先部1aの内面形状に略合致した外面形状をもち且つその後方側端部が足50の指先位置と所定量重合する指先当部22aとされた先端構成部22とを備えた構成とするとともに、これを低反発樹脂材の発泡成形により一体形成する。係る構成によれば、先端構成部22の指先当部22aに足50の指先が適度に押圧変形され、指先には先端構成部22の変形に伴う反発力が作用し、足50の指先と靴1の爪先内面との間に存在する隙間が先端構成部22によって充填された状態となる。この結果、足50には弾性反発力によって適度の拘束作用が働き、足50の滑りが可及的に防止され、指先部分での踏ん張りが効き、俊敏な動きとか、安定した動きが実現でき、延いては靴1の本来の機能が十二分に発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、靴の中底に敷設される靴用中敷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の中敷に関しては、従来から種々の構造が提案されている(特許文献1〜6参照)。
【0002−2】
特許文献1に開示されるものは、靴のフィッテイング機能や歩行支援機能を高めるために、足の所定部位を補助するパッド部を設けた中敷である。
【0003】
特許文献2に開示されるものは、足の蒸れ防止を目的として、中敷を、紙材からなるベースシートと、透湿性とか通気性等を有する長繊維不織布でなる上シートと、これらの間に配置したクッション材で構成したものである。
【0004】
特許文献3に開示されるものは、中敷に靴内送気構造を備え、靴内の空気を循環させることで通気性を向上させ、防湿、消臭効果を高めるものである。
【0005】
特許文献4に開示されるものは、外部からの衝撃及び圧迫に対してつま先を保護するために、中敷の先端部にドーム状の機械的強度が高い芯材を取付けたものである。
【0006】
特許文献5に開示されるものは、外反母趾の予防あるいはその痛みの軽減のために、土踏まず部近傍に隆起部を設けた中敷である。
【0007】
特許文献6に開示されるものは、子供の足の成長に合わせて靴の内部の長さ調節をするために、中敷のつま先部分に周壁を着脱可能に取付けたものである。
【0008】
【特許文献1】 特開2005−296604号公報
【特許文献2】 特開2001−258610号公報
【特許文献3】 特開2001−190302号公報
【特許文献4】 特開2001−238703号公報
【特許文献5】 特開平9−191904号公報
【特許文献6】 特開2004−283500号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、通常、靴の購入に際しては、自分の足の大きさに合わせたサイズの靴を選択するが、この場合、靴と足の間においてサイズ的な余裕が少ないと、例えば、靴の履用中、靴の内面との接触によって指先部とか踵部を傷めることが懸念されるため、通常は、足のサイズより少し大きめのサイズの靴を選択するのが一般的である。従って、靴の履用状態では、靴の爪先部分の内面と指先間に隙間が不可避的に存在することになる。
【0010】
一方、このような靴の爪先部分の内面と指先間の長さ方向における隙間の存在は、靴の履用時において靴の中で足が前後方向に滑りを生じ得ることを意味している。このため、かかる点を考慮し、靴の形状とか寸法の設計に際しては、足の甲の両側部分を靴の内面両側部によって外側から抱持してこれを拘束することで、足の前後方向への滑りを抑制し得るようにしている。
【0011】
しかし、この抱持作用による足の拘束は、靴の中での足の滑りの抑制という有用な効果を奏する反面、これが過度になると、足の甲部分が靴の内面両側部との接触によって傷められることも考えられるため、これらの利害得失を比較考量して、抱持作用による足の拘束程度を比較的低く抑えているのが実情である。
【0012】
この結果、特に、靴を履いての活動中、足の指先部分に比較的大きな前後あるいは左右方向への荷重が掛かる機会の多いスポーツ用靴等においては足の滑りが生じ易く、これに起因して、例えば、指先部分での踏ん張りが効かず、俊敏な動き、安定した動きがとれないとか、靴とのフィット性あるいは靴との一体感が損なわれ良好な履き心地が得られない、等の体感的な問題の他、足への継続的な過度の負担によって指先部分を傷めるとか外反母趾を誘発する等の身体的な問題を招来することも考えられる。
【0013】
また、靴を履いての歩行時における安全性は、足と靴との一体感が伴って初めて実現されるものであるところ、上述の如き上記隙間の存在に起因する足の滑りは、足と靴との一体感を損ねるものであって、例えば、高齢者とか身体障害者等の足の活動機能が低下した者にとっては歩行の障害ともなり得るものであり、このような歩行上の安全性の阻害は、高齢者社会の到来に鑑みれば、決して看過し得ない問題である。
【0014】
そこで、本願発明は、上記問題点に鑑み、靴本来の機能を十分に発揮させるとともに、指先部分の保護効果をもつ靴用中敷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明では、上記課題を解決するために以下のような構成を採用している。
【0016】
本願の第1の発明では、靴1の内側底面1fに敷設される中敷2において、該中敷2を、上記内側底面1fの形状に略合致した平面形状をもつ略平板状の本体部21と該本体部21の先端部21aに位置し且つ上記靴1の爪先部1aの内面形状に略合致した外面形状をもつとともにその後方側端部が上記靴1を履いた使用者の足50の指先位置と所定量重合する指先当部22aとされた先端構成部22とを低反発樹脂材の発泡成形により一体形成したことを特徴としている。
【0017】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る靴用中敷において、上記本体部21が、上記内側底面1fのうち少なくともその前半部の形状に略合致した平面形状及び大きさを有することを特徴としている。
【0018】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る靴用中敷において、上記指先当部22aを、上記使用者の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定したことを特徴としている。
【0019】
本願の第4の発明では、上記第1又は第2の発明に係る靴用中敷において、上記指先当部22aを、上記使用者の各指の指先形状に略合致するような平面視形状に設定したことを特徴としている。
【0020】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る靴用中敷において、上記本体部21を、上記靴1の内側底面1fの平面形状よりも所定量だけ大きな平面形状に設定したことを特徴としている。
【0021】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明において、上記本体部21のうち、使用者の足50の土踏まず部55に対応する部位に、該本体部21の表面から上方へ隆起する中間隆起部23を設けたことを特徴としている。
【0022】
本願の第7の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明において、上記本体部21の外周縁部分に、該本体部21の表面から上方へ隆起する外周隆起部24を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
(a)本願の第1の発明に係る靴用中敷では、靴1の内側底面1fの形状に略合致した平面形状をもつ略平板状の本体部21と該本体部21の先端部21aに位置し且つ上記靴1の爪先部1aの内面形状に略合致した外面形状をもつとともにその後方側端部が上記靴1を履いた使用者の足50の指先位置と所定量重合する指先当部22aとされた先端構成部22とを低反発樹脂材の発泡成形により一体形成している。従って、この発明に係る靴用中敷では以下のような特有の効果が得られる。
【0024】
(a−1) 上記中敷2を靴1の内側底面1fに敷設した状態で靴1を履くと、上記先端構成部22の指先当部22aに足50の指先が当接しこれが適度に押圧変形され、上記指先には上記先端構成部22の変形に伴う弾性反発力が作用することから、足50の指先と靴1の爪先内面との間に存在する隙間が上記先端構成部22によって充填された状態となり、上記足50には上記弾性反発力によって適度の拘束作用が働き、靴1と足50との一体性が促進される。従って、例えば、靴を履いての活動中に足の指先部分に比較的大きな前後あるいは左右方向への荷重が掛かったとしても、上記先端構成部22の弾性反発作用によって足50に滑りが生じるのが可及的に防止され、この結果、指先部分での踏ん張りが効き、俊敏な動きとか、安定した動きが実現でき、延いては靴1の本来の機能が十二分に発揮されることになる。
【0025】
(a−2) また、このような足の滑りの抑制は、靴1を履いた者にとっては、自分の足と靴1との一体感を高める効果をもたらすものであり、従って、係る足と靴との一体感が得られることで、例えば、高齢者とか身体障害者等の足の活動機能が低下した者が靴を履いて歩行する場合、その歩行の安全性が確保され、しかも係る効果が中敷2の敷設という簡易且つ安価な手段で確保されることから、高齢者社会において極めて高い有用性を有するものである。
【0026】
(a−3) さらに、たとえ上記足50が前後あるいは左右方向への突発的な荷重を受けて一過的な滑りを生じたとしても、この荷重が軽減あるいは消滅して上記足50が滑り状態から復帰すれば、これに伴って上記先端構成部22もゆっくりと初期状態に形状復帰し、上記足50の指先部分に対する弾性拘束作用を回復するため、上記先端構成部22による足50の保護機能が長期に亘って維持される。
【0027】
(a−4) 上記先端構成部22が、低反発樹脂材の発泡成形により形成されているので、該先端構成部22の変形に伴う弾性反発力が過大とならず適度に抑えられることから、靴1を長時間履いていても指先に過度の負担を掛けることがなく、例えば、指先部分を傷めるとか、外反母趾を誘発する等の問題の発生が防止され、靴1の履用上における安全性及び信頼性が高められる。
【0028】
(a−5) 上記本体部21と先端構成部22が、低反発樹脂材の発泡成形により一体形成されているので、上記本体部21はこれが対応する足裏部分の形状に沿って、また上記先端構成部22はこれが対応する指先部分の形状に沿って、それぞれ弾性変形することから、足50と靴1との間における高いフィット性が確保され、足裏部分及び指先部分に掛かる荷重が中敷2を介して分散支持され、上記靴1の足50に対する保護性能がさらに向上する。
【0029】
(b)本願の第2の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記本体部21を、上記内側底面1fのうち少なくともその前半部の形状に略合致した平面形状及び大きさとしているので、ヒール高さが高くその前傾角度が大きく、履用時に足50の指先部分に掛かる力が大きい等の履用特性をもつ靴、例えば、女性用のハイヒールに適用することで、指先部分の保護が確実となる。
【0030】
(c)本願の第3の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記指先当部22aを、使用者の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定しているので、上記先端構成部22の大きさが、足50の指先部分の保護機能を達成する上において必要最小限に設定され、中敷2の素材である低反発樹脂材の有効使用が実現され、延いては中敷2の機能確保と低コスト化の両立が促進される。
【0031】
(d)本願の第4の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記指先当部22aを、上記使用者の各指の指先形状に略合致するような平面視形状に設定しているので、靴1の履用状態において、足50の指先との当接によって変形される上記先端構成部22の変形量、延いては、変形に伴う弾性反発力が各指相互間で可及的に均等となり、上記先端構成部22による拘束感、及び靴1に対するフィット感が良好となる。
【0032】
(e)本願の第5の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記本体部21を、上記靴1の内側底面1fの平面形状よりも所定量だけ大きな平面形状に設定しているので、靴1の履用状態においては、足50の指先及び足裏部分のみならず、足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分においても、上記本体部21の周縁部分が該弧状面に沿って変形してこれにフィットすることから、足50に対する保護性能の更なる向上が期待できる。
【0033】
(f)本願の第6の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記本体部21のうち、使用者の足50の土踏まず部55に対応する部位に、該本体部21の表面から上方へ隆起する中間隆起部23を設けているので、靴1の履用状態において、上記中間隆起部23が足50の土踏まず部55からの押圧力を受けて変形し、その変形に伴う反発力が常時土踏まず部55に掛かることから、該土踏まず部55の形成作用が促進され、延いては偏平足の改善効果が期待できる。
【0034】
(g)本願の第7の発明に係る靴用中敷によれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記本体部21の外周縁部分に、該本体部21の表面から上方へ隆起する外周隆起部24を設けている。この場合、足50の足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分は靴1の側部と内側底面とのコーナ部分に対応し、該部分との間に、その周縁方向へ延びる隙間が生じ易い部位であるところ、上記本体部21の外周縁部分に上記外周隆起部24を設けることで、該外周隆起部24が足50側の面と靴1側の面との間で弾性変形して上記隙間が充填され、足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分におけるフィット性が確保され、靴1の履き心地が良好となり、延いては足50全体の保護促進が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0036】
A:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係る靴用の中敷2及びこれが適用される靴1を示している。また、図2には、上記靴1内に上記中敷2を敷設した状態を示している。
A−1:靴1
【0037】
上記靴1は、周知形体の男性用革靴であって、符号1aは爪先部、1bは踵部、1c及び1dは左右一対の側部、1eは土踏まず対応部、1fは内側底面1f、1gはインステップ部、1hは履口部、1jは後側部を示している。この靴1は、上記内側底面1f上に次述の中敷2を敷設することで、これが本来的に有する有効な機能を確実に発揮でき、その商品価値及び使用価値が向上するものである。
【0038】
尚、ここでは上記靴1として男性用革靴を示しているが、これは上記中敷2が適用される靴の一例として挙げたものであって、本願発明が適用され得る「靴」は、上記男性用革靴に限定されるものではなく、例えば、ゴルフシューズ、テニスシューズ等の競技用靴、スニーカとか運動靴等の布製靴、女性用ハイヒール等、多種多様の靴に適用し得るものである。
【0039】
A−2:中敷2
上記中敷2は、本願発明の要旨を成すものであって、その素材的な特性と特有の形体に特徴をもつものであって、略平板状の本体部21と、該本体部21の先端部21aに位置する先端構成部22を備える。
【0040】
上記本体部21は、図1〜図3に示すように、上記靴1の内側底面1fの形状に沿った平面形状をもつ所定厚さの平板体とされ、該内側底面1fの全域を覆うように敷設されるが、特にこの実施形態では、その平面視における外形寸法を、上記靴1の内側底面1fの外形寸法よりも所定寸法だけ大きく設定し、該内側底面1fへの敷設状態においてその周縁部分が該内側底面1fとこれに連続する側面部分とのコーナ部分にも対応し得るようにしている(図2、図8、図9参照)。
【0041】
そして、上記本体部21は、足50の指先部52に対応する先端部21aと、踵部54に対応する後端部21bと、甲部51の両側部に対応する側部21c、21dと、土踏まず部55に対応する土踏まず対応部21eの各部を備えるが、この実施形態でが、これら各部ともその厚さを略同等に設定している。この場合、本体部21の厚さとしては、5mm〜15mmの範囲内が好適である。厚さ5mm以下では変形後における弾性が確保しにくくなり、厚さ15mm以上では変形後の荷重支持形態に安定性を欠くためである。
【0042】
尚、他の実施形態においては、図1、図3に鎖線図示するように、上記土踏まず対応部21eを局部的に隆起させて中間隆起部23を設けることもできる。係る構成とした場合には、靴1の履用状態において、上記中間隆起部23が足50の上踏まず部55からの押圧力を受けて変形し、その変形に伴う反発力が常時土踏まず部55に掛かることから、該土踏まず部55の形成作用が促進され、延いては偏平足の改善効果が期待できる。
【0043】
上記先端構成部22は、上記本体部21の先端部21aにおいて該先端部21aから上方へ隆起するようにしてこれと一体的に形成されたものであって、図1〜図3に示すように、上記靴1の爪先部1aの内面形状に沿うような曲面体状の外周部22bをもつとともに、該外周部22bの後端面は指先当部22aを構成するものであって、足50の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定されている。
【0044】
この場合、上記指先当部22aの上記中敷2の前後方向における形成位置は、図5、図6に示すように、靴1に足50を差入れた靴の履用状態において、該足50の指先部52が上記指先当部22aに対応し、且つ各指52a〜52eの先端部分が上記指先当部22aを押圧してこれを前方側へ適度に変形させ得るような位置に設定されている。
【0045】
尚、上記中敷2は、上述のようにこれが適用される靴の種類、形状等が広範であることから、該中敷2の形状、寸法も適用対象に対応して複数用意することになる。特に、上記中敷2の先端構成部22は、靴1を履いたときに生じる靴1の爪先部1aの内面と足50の指先部52との間の隙間を充填する機能を必要とすることから、その形状設定に際しては、上記靴1の爪先部1aの内面形状に対応させることが必要である。
【0046】
ここで、上記中敷2は、ポリオールとポリイソシアネートを主成分とする低反発樹脂材を成形素材とし、これを発泡成形して得られる連通気泡性の発泡成形体であって、その特性としての低反発性(即ち、弾性と粘性を併せもち、高い衝撃吸収性と応力分散性、及び復元性に特徴をもつもの)に基づく諸性能により、中敷として好適な特性が付与されている。そして、係る特性を得る観点からして、上記低反発樹脂材としては、靴の使用条件(力の掛かり方、力の大きさ等)によって多少異なるものの、一般的な使用条件に照らせば、例えば、反発弾性率(JIS K 6400準拠)が15%以下で、硬度(JISK 6400に基づく25%硬度)が50〜150N程度のものが好適である。
【0047】
A−3:中敷2の作用効果
図2には、上記中敷2を上記靴1内に差し入れてこれを上記内側底面1f上に敷設した状態を示している。この状態では、上記中敷2の本体部21が上記靴1の内側底面1fの当接衝合し、また上記先端構成部22はその外周部22bが上記靴1の爪先部1aの内面に当接衝合している。
【0048】
図4〜図9には、図2に示す上記中敷2の敷設状態において、人が靴1内に足50を差し入れた履用状態を示している。この履用状態での側面視においては、図4に示すように、上記中敷2の本体部21は、足裏部53に掛かる押圧力で弾性変形するが、この場合、低反発樹脂材の特性で足裏部53の面形状に沿って柔軟に変形して足裏部53全域に密着し、足裏部53に掛かる力が足裏部53全域に分散して支持されている。
【0049】
係る密着性と力の分散支持性は、足50の踵部54部分(図4、図9参照)、甲部51の両側部(図7参照)及び土踏まず部55(図8参照)においても、同様に実現されている。この結果、足裏部53部分に過度の荷重が掛かることがなく、足裏部53部分の保護が図られる。
【0050】
さらに、靴1のコーナ部分においても、図7〜図10にそれぞれ示すように、上記中敷2の本体部21の周縁部分がコーナ形状に沿って密着状態で存在し、靴1に対して足50が前後左右方向へ滑ることが可及的に抑制されており、これによって安定した履き心地が確保されている。
【0051】
一方、上記中敷2の先端構成部22部分においては、図5及び図6に示すように、該先端構成部22の外周部22bが上記靴1の爪先部1aの内面に当接衝合しそれぞれの内面形状に沿って変形している。また、先端構成部22の上記指先当部22a側においては、該指先当部22a部分が上記足50の各指52a〜52eからの押圧力を受けて、該各指52a〜52eの先端形状に合致した形で前方側へ適度に変形している。
【0052】
従って、上記先端構成部22には、上記外周部22b側の変形と上記指先当部22a側の変形の相乗作用によって前後方向に適度の反発力を発生しており、しかも、上記靴1の爪先部1aの内面と足50の指先との間の隙間に上記先端構成部22が圧縮変形状態で存在し該隙間を充填していることから、これらの相乗作用によって、靴1と足50の一体感、フィット感が得られ、良好な履き心地が感得される。さらに、例え足50に前後方向への荷重が掛かったとしても、この荷重が上記先端構成部22において分散吸収されるとともに、該足50には上記先端構成部22の弾性変形による拘束作用は働くことから、該足50に大きな滑りが生じることはなく、安定した信頼感の高い履き心地が得られる。
【0053】
以上のような上記中敷2の上記本体部21側における足50の足裏部53及びその周縁部分に対する保護作用と拘束作用、及び上記先端構成部22における足50の指先部52に対する保護作用と拘束作用が、相互に協働し合うことで、例えば、靴を履いての活動中に足50の指先部分に比較的大きな前後あるいは左右方向への荷重が掛かったとしても、上記中敷2の先端構成部22の弾性反発作用によって足50に滑りが生じるのが可及的に防止され、この結果、指先部分での踏ん張りが効き、俊敏な動きとか、安定した動きが実現でき、延いては靴1の本来の機能が十二分に発揮されることになる。
【0054】
また、このように足の滑りが抑制されることで、靴1を履いた者にとって自分の足と靴1との一体感が高められることとなり、その結果、例えば、高齢者とか身体障害者等の足の活動機能が低下した者が靴を履いて歩行する場合、その歩行の安全性が確保され、しかも係る効果が中敷2の敷設という簡易且つ安価な手段で確保されることから、高齢者社会において極めて高い有用性を有するものである。
【0055】
また、例え足50が前後あるいは左右方向への突発的な荷重を受けて一過的な滑りを生じたとしても、この荷重が軽減あるいは消滅して上記足50が滑り状態から復帰すれば、これに伴って上記先端構成部22もゆっくりと初期状態に形状復帰し、上記足50の指先部分に対する弾性拘束作用を回復するため、上記先端構成部22による足50の保護機能が長期に亘って維持される。
【0056】
さらに、上記先端構成部22が、低反発樹脂材の発泡成形により形成されているので、該先端構成部22の変形に伴う弾性反発力が過大とならず適度に抑えられることから、靴1を長時間履いていても指先に過度の負担を掛けることがなく、例えば、指先部分を傷めるとか、外反母趾を誘発する等の問題の発生が防止され、靴1の履用上における安全性及び信頼性が高められる。
【0057】
また、上記本体部21と先端構成部22が、低反発樹脂材の発泡成形により一体形成されているので、上記本体部21はこれが対応する足裏部53の面形状に沿って、また上記先端構成部22はこれが対応する指先部52の形状に沿って、それぞれ弾性変形することから、足50と靴1との間における高いフィット性が確保され、足裏部53及び指先部52に掛かる荷重が上記中敷2を介して分散支持され、上記靴1の足50に対する保護性能がさらに向上する。
【0058】
さらに、この実施形態では、上記指先当部22aを、使用者の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定しているので、上記先端構成部22の大きさが、足50の指先部52の保護機能を達成する上において必要最小限に設定され、上記中敷2の素材である低反発樹脂材の有効使用が実現され、延いては該中敷2の機能確保と低コスト化の両立が促進される。
【0059】
また、上記中敷2においては、上述のように、上記本体部21を、上記靴1の内側底面1fの平面形状よりも所定量だけ大きな平面形状に設定しているので、靴1の履用状態においては、足50の指先及び足裏部分のみならず、足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分においても、上記本体部21の周縁部分が該弧状面に沿って変形してこれにフィットすることから、足50に対する保護性能の更なる向上が期待できる。
【0060】
なお、図1に示すように、上記中敷2の上記本体部21のうち、使用者の足50の土踏まず部55に対応する部位に、該本体部21の表面から上方へ隆起する上記中間隆起部23を設ければ、上記靴1の履用状態において、上記中間隆起部23が足50の土踏まず部55からの押圧力を受けて変形し、その変形に伴う反発力が常時上踏まず部55に掛かることから、該土踏まず部55の形成作用が促進され、延いては偏平足の改善効果が期待できる。
【0061】
B:第2の実施形態
図10及び図11には、本願発明の第2の実施形態に係る靴用の中敷2及びこれが適用される靴1を示している。この実施形態の上記中敷2は、上記第1の実施形態におけるものとその基本構成を同じにし、これと異なる点は、上記第1の実施形態における上記中敷2においては、その先端構成部22の指先当部22aを、使用者の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定していたのに対して、この実施形態では上記先端構成部22の指先当部22aを、上記使用者の各指の指先形状に略合致するような平面視形状に設定した点である。
【0062】
このように上記先端構成部22の指先当部22aの形状を設定したことで、上記靴1の履用状態において、上記足50の指先との当接によって変形される上記先端構成部22の変形量、延いては、変形に伴う弾性反発力が各指相互間で可及的に均等となり、上記先端構成部22による上記足50の拘束感、及び靴1に対するフィット感がより一層良好となる。
【0063】
尚、これ以外の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、図10及び図11の各部材に、第1実施形態に係る各図に示した各部材に対応させてこれと同一符号を付して、該第1の実施形態における該当説明を援用することで、ここでの説明を省略する。
【0064】
C:第3の実施形態
図12及び図13には、本願発明の第3の実施形態に係る靴用の中敷2を示している。この実施形態の上記中敷2は、上記第1の実施形態におけるものとその基本構成を同じにし、これと異なる点は、上記第1の実施形態における上記中敷2においては、上記本体部22を略平板状に形成していたのに対して、この実施形態の中敷2においては、上記本体部22の外周縁部分に、該本体部21の表面から上方へ隆起する外周隆起部24を設けた点である。
【0065】
この場合、上記足50の足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分は靴1の側部と内側底面とのコーナ部分に対応し、該部分との間に、その周縁方向へ延びる隙間が生じ易い部位であるところ、この実施形態のように、上記本体部21の外周縁部分に上記外周隆起部24を設けることで、該外周隆起部24が足50側の面と靴1側の面との間で弾性変形して上記隙間が充填され、足裏周縁から足表側へかけての弧状面部分におけるフィット性が確保され、靴1の履き心地が良好となり、延いては足50全体の保護促進が期待できる。
【0066】
尚、これ以外の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、図12及び図13の各部材に、第1実施形態に係る各図に示した各部材に対応させてこれと同一符号を付して、該第1の実施形態における該当説明を援用することで、ここでの説明を省略する。
【0067】
C:第4の実施形態
図14及び図15には、本願発明の第4の実施形態に係る靴用の中敷2を示している。この実施形態の中敷2は、女性用のハイヒール構造の靴1に適用するに好適なものである。即ち、係る靴1は、ヒール高さが高くその前傾角度が大きく、履用時に足50の指先部分に掛かる力が大きいという履用特性をもつことから、係る履用特性を考慮して、本体部21と先端構成部22を備えて構成される中敷2において、上記本体部21を、上記靴1の内側底面1fのうち少なくともその前半部(即ち、体重が最も掛かる部位)の形状に略合致した平面形状及び大きさとするとともに、該本体部21の先端部分に上記各実施形態の場合と同様な先端構成部22を備えた構成としたものである。
【0068】
係る構成の中敷2によれば、上記各実施形態における場合と同様の作用効果が得られるのに加えて、上記本体部21と上記先端構成部22の双方において、足50に掛かる荷重(主として体重)を効果的に分散支持することができ、これによって指先部52部分の保護がより一層確実となる。
【0069】
尚、これ以外の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、図14及び図15の各部材に、第1実施形態に係る各図に示した各部材に対応させてこれと同一符号を付して、該第1の実施形態における該当説明を援用することで、ここでの説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】 本願発明の第1の実施形態に係る靴用中敷を示す斜視図である。
【図2】 図1に示した靴用中敷を靴内に敷設した状態を示す断面図である。
【図3】 図1に示した靴用中敷の平面図である。
【図4】 靴用中敷が付設された靴に足を入れた状態を示す断面図である。
【図5】 図4のV矢視図である。
【図6】 図5のVI−VI断面図である。
【図7】 図5のVII−VII断面図である。
【図8】 図5のVIII−VIII断面図である。
【図9】 図5のIX−IX断面図である。
【図10】 本願発明の第2の実施形態に係る靴用中敷を示す斜視図である。
【図11】 図10に示した靴用中敷の平面図である。
【図12】 本願発明の第3の実施形態に係る靴用中敷を示す斜視図である。
【図13】 図12に示した靴用中敷の平面図である。
【図14】 本願発明の第4の実施形態に係る靴用中敷を敷設した状態を示す側面図である。
【図15】 図14のXV矢視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ・・靴
2 ・・中敷
21 ・・本体部
22 ・・先端構成部
23 ・・中間隆起部
24 ・・外周隆起部
50 ・・足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴(1)の内側底面(1f)に敷設される中敷(2)であって、
上記内側底面(1f)の形状に略合致した平面形状をもつ略平板状の本体部(21)と該本体部(21)の先端部(21a)に位置し且つ上記靴(1)の爪先部(1a)の内面形状に略合致した外面形状をもつとともにその後方側端部が上記靴(1)を履いた使用者の足(50)の指先位置と所定量重合する指先当部(22a)とされた先端構成部(22)とを低反発樹脂材の発泡成形により一体形成したことを特徴とする靴用中敷。
【請求項2】
請求項1において、
上記本体部(21)が、上記内側底面(1f)のうち少なくともその前半部の形状に略合致した平面形状及び大きさを有することを特徴とする靴用中敷。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記指先当部(22a)が、上記使用者の各指の指先位置を連ねた指先連続線の形状に略合致した平面視形状に設定されていることを特徴とする靴用中敷。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記指先当部(22a)が、上記使用者の各指の指先形状に略合致するような平面視形状に設定されていることを特徴とする靴用中敷。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4において、
上記本体部(21)が、上記靴(1)の内側底面(1f)の平面形状よりも所定量だけ大きな平面形状を有していることを特徴とする靴用中敷。
【請求項6】
請求項1,2,3、4又は5において、
上記本体部(21)のうち、使用者の足(50)の土踏まず部(55)に対応する部位には該本体部(21)の表面から上方へ隆起した中間隆起部(23)が設けられていることを特徴とする靴用中敷。
【請求項7】
請求項1,2,3、4又は5において、
上記本体部(21)の外周縁部分に、該本体部(21)の表面から上方へ隆起する外周隆起部(24)が設けられていることを特徴とする靴用中敷。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−307352(P2008−307352A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183719(P2007−183719)
【出願日】平成19年6月16日(2007.6.16)
【出願人】(507217453)多和砕石工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】