説明

靴用通気性防水ソール

少なくとも2つの構造層である、靴底を形成するために支持構造を有する下部層(14)および水蒸気を透過できる上部層(15,215)を、少なくともソールの付加部分のために備える靴用防水通気性ソール。下部層(14)は上部層(15,215)へ開いた部分(14a,114a)を有する。防水加工のためのプラズマ堆積処理により得られる被膜(21,221)が上部層に備えられる。この態様において層は構造的機能と損傷に対する特性を獲得すると同時に防水性と通気性を獲得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴用通気性防水ソールに関する。
【背景技術】
【0002】
この発明はそのようなソールを備えるように製造された靴にも関する。
履物市場は、靴のエンドユーザーのために最高の心地よさを保証する技術的解決法を捜し求め、つきとめるために絶えず発展していることが知られている。
周知のように、靴の心地よさは、構造的に正確にフィットすることのみならず、いわゆる「濡れ足」現象を避けるために、靴の内側で発汗により生じた水蒸気を外部へ適正に透過することにも依存する。
しかしながら、この水蒸気透過は靴の防水に妥協するものであってはならず、そのためアッパーまたはソールへ透過させる解決法が研究されてきた。
足の汗の大半が足裏と靴底の間の接触面で発生する。そこで生ずる汗は蒸発できずに足置きのインソールで液化することは明白である。最小限の汗しかアッパーを通して蒸発しない。
プラスチックのソールを有する靴の場合、この問題は特に重要である。この場合ソールの透過は完全に遮られてしまう(レザーソールの場合は、その代わり少量の透過がある)。
問題への解決法は、足裏で発生する汗を適宜透過させる、通気性防水ソールにより提供される。
【0003】
これらの解決法の1つは、US−5044096およびEP−0382904に開示され、プラスチックソールを、貫通孔を有する2つの層に分割すること、および、防水通気性膜(例えば、ゴアテックスまたはこれに類似した材料で作られている)を挿入することにあるが、防水通気性膜は水を浸入させないように、周辺部が密封して2つの層に接合されている。
【0004】
この解決法により、靴の内部環境と外部環境間における熱と水蒸気の効果的な交換ならびに適正な透過が実現され、同時に外部の湿気や水に対する必要な不浸透性を保証される。
防水通気性膜を有するこれらの孔の開いたソールは、これまで利用可能なものにおいて、確かに相当の新規性を有している。
それでもなお、特に孔の占める面積に関連して、改善される面はまだある。
孔の全体面積が大きいほど通気性は良くなることは明白である。しかしながら他方では、膜が傷つけられ、または、膜に穴を開けられるまでに、靴底に設けられた孔の数およびそれらの直径は、尖った異物が孔に侵入し、貫通することを防ぐために、制限されなければならない。膜は実際にはフィルムであって十分な構造的特性に欠けるので、繊細である。
【0005】
そのような膜は、実際に足によって絶えず圧縮を受けやすいため、特に孔を貫通するほど尖っていない物体でさえ、それほどの困難を伴うことなく膜を傷つけるかもしれない。
採用された1つの解決法には、靴底と膜の間に、フェルトのような、通気性のある保護層を用いる方法がある。
さらに、泥やちりや小石が靴底の孔に入り込み、孔を塞ぐことによって通気性が制限されてしまうかもしれない。
構造的特性に欠ける防水通気性膜を用いた異なる解決法がUS−6508015に開示されている。
この特許は、水蒸気を透過できる弾力性のある上部層および支持および靴底としての役割をする、上部層の70%未満をカバーする下部層の2つの層を有する構造のソールを開示している。
ソールの浸透状態は上部層の微孔性構造および下部層の形態により確保される。
上部層の微孔性構造は、例えば焼結プラスチック材料により、または、合成繊維で作られた織布または不繊布構造により提供される。
【0006】
しかしながら、この層は厳密に言えば防水特性を備えているわけではない。このため特許は、例えば、高分子あるいは超高分子の重量状態において焼結ポリエチレンを扱うことにより、この層を疎水性にする可能性について言及している。
特許で開示された防水のための別の可能性は、上部層の上に防水膜で形成された追加層を加えることである。
この記載された解決法は、ソールの通気面積の問題を解決するが、ソールは大きく、それは前記ソールを防水する必要条件を十分に満たさない。
実際に焼結材料の疎水処理が、特に水が大量の場合、上部層を十分に防水できないことが分かった。
さらに、上部層の周辺に沿った浸水があり得るため、内部層に不浸透膜を結合するという考えは、それ自体では完全な水の遮断を保証するには十分とはいえない。
【0007】
このタイプのソールに関連する別の問題は、上部層がどのような場合においてもかなりの量の水を吸収する傾向があることである(スポンジ効果)。時間が経つにつれて歩くことにより表面の汚れが明白になってくる。
この問題は、材料の孔のサイズが増加するにしたがって、さらに明白になる。
すでに5μm以上の孔の寸法のために、汚れた水(汚いまたは石けんを含んだ水)の浸透がある。この場合における表面張力は一般的な水の値(73mN/mm)よりも低い。
【発明の開示】
【0008】
この発明の目的は、周知のソールで記される問題を解決する、靴用通気性防水ソールを提供することである。
この目的の範囲内において、この発明の1つの目的は、防水および通気性のある構造層を用いる靴用通気性防水ソールを提供すること、と同時に周知の靴よりも高い通気性を保証することである。
この発明の別の目的は、磨耗や損傷に耐える、靴用通気性防水ソールを提供することである。
この発明の別の目的は、周知のソールよりも少ない数の部材で構成される、靴用通気性防水ソールを提供することである。
この発明の別の目的は、周知のシステムや技術をもって製造可能な、靴用通気性防水ソールを提供することである。
この目的およびこれらおよび、以下によりさらに明らかになる他の目的は、少なくとも2つの構造層を、少なくともソールの付加部分のために備える靴用防水通気性ソールにより達成される。下部層は靴底を形成する支持構造をしており、微孔性の上部層は水蒸気を透過でき、前記下部層は前記上部層へ開いた部分を有し、前記ソールは、前記上部層の2つの表面のうち少なくとも1つが、防水加工用のプラズマ堆積処理による被膜を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の特徴および利点は、以下の添付図面の制限されない例により示される、いくつかの好ましいが限定的でない実施例の記載により、さらに明らかになる。
図1は、この発明によるソールを有する靴の部分横断面図である。
図2は、図1によるソールの細部の横断面図である。
図3は、図1で示されたソールのバリエーションの詳細図である。
図4は、図1のソールの平面図である。
図5は、図1のソールの別のバリエーションの平面図である。
図6は、先の図の実施例に関する代替の、この発明によるソールの1つの実施例を利用した靴の部分横断面図である。
図7は、この発明によるソールを有する靴の透視図である。
図8は、先の図の靴に関する代替の、この発明による別の靴の部分横断面図である。
図9は、先の図の靴に関する代替の、この発明による別の靴の部分横断面図である。
【0010】
発明を実施する方法
図を参照するにつき、この発明によるソールの第1の実施例は、一般に符号10で示される。
図1はソール10の部分に関連する靴の横断面図である。この図は、ソール10が、この実施例において、下部層14および水蒸気を透過できる上部層15のそれぞれにより構成される2つの層を備えることを明確に示している。
層14および15はともに構造的であり、そのため支持機能を有している。特に、下部層14はソールの靴底を形成するために支持構造を有しており、一方、上部層15は足を支持する基部を形成し、弾力性と柔軟性を有する。
上部層15の通気性を可能にするために、下部層14は上部層15へ開いた部分14aを有し、そのため、上部層は直接外部周辺に露出する。そのような開いた部分14aについて以下に、さらに詳細に記載する。
【0011】
上部層は微孔性であり、例えば焼結プラスチック材料で作られている。
都合のいいことに、プラスチック材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはポリエステルのいずれをも用いることが可能である。
任意に、上部層15は、合成繊維で作られたフェルト、フリース、ファブリックまたはメッシュにより構成可能である。
水蒸気の十分な透過性および上部層15のその後の表面処理(以下に記載)を可能にするために、孔の平均幅は3〜250μmの間で構成される。
望ましくは、孔の平均幅は3〜5μmの間で構成される。
下部層14は、例えばポリウレタンなどのプラスチックで作られている。
下部層14は、ソールの外端を構成する外辺縁16および、上部層15の支えとして作用する(さもないと上部層は外辺縁内でつぶれてしまう)接地部分17により構成される。
【0012】
下部層14の空間は、種々の接地部分17と、部分14aを形成する縁16との間で構成される。
この実施例において、外辺縁16は、層14と15の間の相互接触部分20を形成するために、上部層15の外辺輪郭19を包含する側面部分18を有している。
この側面部分18内で、上部層15および下部層14は、水の浸入を避けるためにそれらの周辺部に沿って密閉して接合される。
好ましくは、層14と15の結合は、上部層15に下部層14をオーバーモールドすることにより行われる。この場合において、密閉した完全な結合は、オーバーモールドによりもたらされる完全な接着により保証される。
代替手段として、例えば接着剤を用いた接着方法など、他の生産方法を用いることが可能である。しかしながら、この場合において上部層15の下部層14への結合は、相互接触部分20の周辺部分内において密閉剤で行う。
接地部分17は、ここで記載された実施例においては、縁16と分離しており、例えば上部層15の下部表面15aに直接オーバーモールドによって備えられる。それにより、実際に上部層15を支持する鋲17aを形成し、ソール10のグリップを保証する。
【0013】
図5の符号117に示される、接地部分のバリエーションは、縁116と一体の、連続した横断要素117aを提供する。
部分114aは、連続した横断要素117aと縁116の間に形成される。
正確な透過のために、下部層が上部層の最小可能範囲を覆うことが重要である。
例えば、下部層は30%〜70%の間で構成される上部層のパーセンテージを、都合よくカバーすることができる。
上部層15は、その上部表面15bに、プラズマ堆積処理により得られた被膜21を有し、それによって防水可能になる(および通気性が維持される)。
代替手段として、図3で示されるように、上部層215の下部表面215aにプラズマ堆積処理により得られる、被膜221を施すことが可能である。
上部層15、215の両表面にこのような被膜を施すことも任意に可能である。
【0014】
プラズマ堆積による被膜のアイデアは、周囲温度における高真空の下「コールドプラズマ」重合によって、微孔性の支持材料に超薄層を形成するのにシロキサン有機化合物の蒸気を用いることができるという、意外な実験による発見から生じた。このアイデアは、一般的特性および、特に支持材料の通気特性を変更することなく防水特性を提供する。
防水通気性膜は、例えば、微孔性の(例えばポリエチレンやポリスチレンで作られた)支持材料の上にポリマー(ポリシロキサン)の層を堆積することによるシロキサンベースのモノマーのプラズマ重合により、実際に作られ得る。
この堆積は、例えば、デュポンにより製造され商標名Zonylとして登録された、撥油性および撥水性のフルオロポリマーを用いることにより行われ得る。
【0015】
プラズマは到達温度によって高温および低温に分類され、また、周囲圧力プラズマと真空プラズマにも分類される。
この発明による被膜を得るためのプラズマ処理において、気体状あるいは蒸気状の前駆体化合物は、非常に低圧の(真空状態の)反応チャンバに導入される。
プラズマ状態は、反応チャンバ内で電界を発生させ、前駆体に電圧を印加することによって発生する。
結果は、反応チャンバに導入されたあらゆる基体の全表面に堆積される、超薄に結合されたポリマー層である。
プラズマ重合処理は、反応チャンバ内側に堆積した層となっている前駆体の分解を達成するために、電界により開始され、行われる。
一度分解が発生すると、イオンと反応種(reactive species)が構成され、原子および分子の反応を開始および促進して、やがて薄いフィルム構造となる。
【0016】
電界の様々な構成や異なる反応パラメータは、プラズマ重合により層を作ることに用いられてもよい。
層の厚さは、重合可能な最初の材料の選択、および、モノマー堆積時間、処理時間、反応が行われる電気周波数および使用される電力などの、反応状態の選択により調整される。
この発明において、プラズマ重合は真空状態において行われる。
一般的な圧力の範囲は、10-1mbrと10-5mbrとの間である。
前駆体は、通常純粋な状態において、例えばアルゴンのような重合できない不活性の気体を用いることにより反応する。そのような不活性の気体は、不活性の希釈として、および、前駆体の重合を促進する担体気体としての両方に用いられる。
用いることが可能な他の気体として酸素、ヘリウム、窒素、ネオン、キセノンおよびアンモニアがある。
前駆体は、適度の真空状態における蒸発作用を可能とするために十分な蒸気圧を有していなければならない。
【0017】
反応シーケンスは一般的に反応チャンバに被膜される支持材料を装填し、その後にチャンバを意図された真空圧にしていくことにより開始する。
放電を生じさせるプラズマが作り出され、蒸発した前駆体モノマーは反応チャンバに注入される。
モノマーの、イオンおよびプラズマ電子との衝突は、モノマーの重合を可能にする。
結果として生じたポリマーがチャンバ内側の露出表面上に堆積される。
フィルムの特性は、モノマー構造と関連して変化するだけではなく、放電周波数、使用電力、モノマーの流速および圧力とも関連して変化する。
多孔性の表面形態および透過性は反応状態に従って変化してもよい。
プラズマ重合反応における重要な変数とは、モノマーの流速により変更可能な、ポリマーの堆積の割合である。
堆積処理は、堆積される材料が意図された厚さに到達したときに終了する。
【0018】
上部層15が絶縁材料(例えば、ポリエチレンが最も絶縁性の高い材料の1つとして知られている)で作られているという事実のため、プラズマ状態を維持するためには、その処理に高周波発生器を利用することが必要となる。処理中の電界は、電界電力50〜700Wおよび、10-1mbarと10-5mbarとの間の真空度において、13.56MHz程度の周波数で発振する
微孔性の上部層15は、3μmと250μmとの間の平均孔幅を有していなければならない。
処理時間として、シロキサンモノマーなどの前駆体にとっての最適な時間は、実質的に160秒〜600秒の間からなることが研究されており、特に、最適時間は420秒程度であることが分かっている。
プラズマ堆積処理にもかかわらず、例えば、高分子または超高分子の重量状態において焼結ポリエチレンを処理することにより、上部層15を疎水性にすることがさらに可能である。
【0019】
図6は、防水膜321を用いた、符合300に示される代替的なソールの実施例による靴の部分図である。
実際に、前述の場合のように、ソール300は、靴底を形成するために支持構造を有する下部構造層314、および、水蒸気を透過できる微孔性の上部構造層315からなり、下部層14には通気性を可能にするために、上部層315へ開いた部分314aが備えられている。
防水膜321は上部構造層315の上方部分に結合されている。
上部層315は足を支持するための構造的機能をおよび防水膜321を保護するための機能を有している。
しかしながらこの場合において、水の浸入を防ぐために、上部層315および防水膜321は、それらの周辺部に沿って密閉して結合されなければならない。
既に知られているように、防水膜321は(通気性に妥協することなく加水分解に耐えるために)合成繊維で作られたサポートメッシュ(周知の部材であるため図示せず)と任意に結合され得る。
【0020】
膜321は、例えばラミネーションにより直接上部層315に固定され得る。または、周知の方法による接着剤により後で固定され得る。
先述のように、下部層314と、膜321が結合されている上部層315との結合は、上部層315と膜321で構成されるアセンブリへ、下部層314がオーバーモールディングにより行われることが好ましい。この場合において、オーバーモールディングによる完全な接着により密閉した結合が保証される。
代替手段として、例えば接着剤の接着技術などの他の製造方法を用いることが可能である。しかしながら、この場合において、膜が重複した層に直接接触する周辺部に沿って、密閉剤が供給される。
【0021】
図7は、アッパー12とインソール13による、先の例で記載されたソール10、300で構成される靴11を示す。
図8は通気性のある防水靴411を示し、足の挿入部分を袋のように包むアセンブリ401を備え、防水膜421が下側部分に結合される、通気性のあるアッパー412により構成される。
ソール400はアセンブリ401の下部に結合され、先に記載したソールの例のように、下部層414および微孔性の水蒸気を透過できる上部層415の、2つの層により構成される。
前記の層414および415は構造的であるので、支持機能を有している。特に下部層414はソール400の靴底を形成するための支持構造を有しており、一方、下部層415は足を支持する基部を形成し、弾力性および柔軟性を有している。
上部層415の通気性を可能にするために、下部層414は前記上部層415へ開いた部分414aを有しており、これにより上部層は外部周辺に直接露出される。
【0022】
この実施例においてアセンブリ401は、アッパー412と、通気性のまたは穴の開いたインソール413とから構成されており、インソールは袋を形成するために周知の「シュトローベル(strobel)」または「イデアルウェルト(ideal welt)」構造でステッチ402によって結合される。
この実施例において、防水膜421はインソール413のみに付着しており、例えば、インソールがアッパー412に縫い付けられる前に、防水膜はインソールに直接ラミネーションされ得る。または、その後にスポット接着され得る。
水が浸透する問題を避けるために、アセンブリ401は防水膜421の周辺部に沿って、縫いとじられた継ぎ目402と、上部層415に広がる前記膜421とをまたがる封止範囲421aを備えている。
【0023】
靴411の代替実施例は図9で記載され、符号511として示されている。
靴411の実施例との違いは、符号501で示されるアセンブリに関連する部分のみに実質的に関連する。そのアセンブリは、袋状の態様で足の挿入部分を囲み、前述した下部層514と上部層515で構成されるソール500が下部に接合されている。
このような袋は公知の技術により封止および防水処理がされている。
アセンブリ501はアッパー512で構成される。そのアッパーは、外部でその下端512aによりソール500に結合され、内部で防水膜521に結合されており、足の挿入部分を包むために袋形状をしている。
防水膜521は、例えばスポット接着によりアッパー512に固定され、前記アッパーの通気性に係る妥協を回避する。
ファブリックの内部シート521aは、防水膜521と靴の内側で結合されており、前記膜とともに靴のインナーライニングを形成する。
この場合においても、アセンブリ501のソール500への結合は、例えば、ソールへの直接オーバーモールディングや接着剤接合などの、周知の技術により行われる。
【0024】
記載されたすべての実施例(構造上の理由から他の材料が明白に必要な場合を除く)において、水蒸気を透過できる微孔のある上部層(15,215,315,415,515)は、有利に、革で作られることが可能である。
実際には、このように記載された発明が、靴用ソールの周知の問題点を解決することが観察されてきた。特にこの発明は、構造部材を有する通気性防水ソールを提供するものであり、上部層は、足を支持する機能を果たすことに加え、直接外部環境にさらされるので、通気性と防水を実現するように設計される。
防水は、プラズマ処理により得られる、上部層の被膜により保証される。
この態様において、防水は、通気特性を有したソール(上部層)の構造部品と関連がある。
構造的特性および上部層の強さは、尖った異物が貫通して、損傷させ穴を開けることを防止し、それによって防水が実質的に機能しなくなることを防止する。
この態様において、ソールの通気性のために、靴内で水蒸気が液化する可能性をかなり減少させる、大きな表面(下部層によりカバーされていない上部層の部分)を実現できる。
【0025】
プラズマ堆積を用いることにより、薄いフィルムを支持物に一致させて付着させるという問題が解決される。ポリマーは通常の拡散より長時間支持物に接着するからである(通常、一般的に用いられる防水膜は分離して製造され、スポット接着やラミネートまたは拡散により直接に支持物に接着される)。
このプラズマ堆積により、支持材料上に、100オングストローム程度の寸法の極薄の堆積層を作り出すことさえ可能である。
前記上部層に供給される、焼結プラスチック材料の選択により、さらにソールの必要な柔軟性を可能とし、靴底を最適な態様でオーバーモールドできるようになる。
記載された1つの実施例において、プラズマ堆積による被膜の代わりに通気性のある上部層に結合される防水膜を用いる選択が与えられる。
この場合において、この発明により、防水膜と通気性のある上部層とを、周辺部で密閉して結合することにより、そのようなソール構造を用いる周知の靴の問題を解決する。
【0026】
記載された最後の3つの実施例において、この発明により、支持ソール構造は有利に結合する。この支持ソール構造は蒸気を地面の方へ透過させるための大きな範囲を有し、完全に(横方向と下方向の両方に)通気性があり、少なくともソールの方向には不浸透性の足挿入部のための袋を形成するアセンブリを備える。特に符号500および600で示される靴において完全に通気性のある不浸透性の、足挿入のための袋が達成される。
上述の膜を備えたすべての実施例において、上部層は膜保護機能と同様に、構造支持機能を有し続ける。
このように考えられた発明は多数の改良や変更が可能であり、これらのすべてはクレームに付加された範囲内にある。細部のすべてはさらに、技術上同等の他の構成部分と取り替えられてもよい。
実際には、用いられる材料は、寸法と同様に、特定の使用において互換性がある限り、要件および最新技術に応じたいかなるものであってもよい。
この出願クレームの優先権の、イタリアの特許出願no.PD2003A000312における開示は、ここに言及する法人である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明によるソールを有する靴の部分横断面図である。
【図2】図1によるソールの細部の横断面図である。
【図3】図1で示されたソールのバリエーションの詳細図である。
【図4】図1のソールの平面図である。
【図5】図1のソールの別のバリエーションの平面図である。
【図6】先の図の実施例に関する代替の、この発明によるソールの1つの実施例を利用した靴の部分横断面図である。
【図7】この発明によるソールを有する靴の透視図である。
【図8】先の図の靴に関する代替の、この発明による別の靴の部分横断面図である。
【図9】先の図の靴に関する代替の、この発明による別の靴の部分横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10,300,500・・・ソール
11,411,511・・・靴
12,412,512・・・アッパー
13,413・・・インソール
14,314,414,514・・・下部層
14a,314a,414a,514a・・・開いた部分
15,215,315,415,515・・・上部層
15a,215a・・・上部層の下部表面
15b・・・上部層の上部表面
16,116・・・外辺縁
17,117・・・接地部分
17a・・・鋲
18・・・側面部分
19・・・外辺輪郭
20・・・相互接触部分
21,221・・・被膜
117a・・・横断要素
314・・・下部構造層
321,421・・・防水膜
401,501・・・アセンブリ
512a・・・下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの構造層である、靴底を形成するために支持構造を有する下部層(14)および水蒸気を透過できる微孔性の上部層(15,215)を、少なくともソールの付加部分のために備え、前記下部層(14)は上部層(15,215)へ開いた部分(14a,114a)を有し、前記ソールは、前記上部層(15,215)の2つの表面(15a,15b)の少なくとも1つが、防水加工用のプラズマ堆積処理によって得られる被膜(21,221)を有していることを特徴とする靴用防水通気性ソール。
【請求項2】
前記被膜(21,221)が前記上部層(15,215)の上部表面(15b)に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項3】
前記被膜(21,221)が前記上部層(15,215)の下部表面(15a,215a)に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項4】
前記被膜(21,221)が前記上部層(15,215)の下部表面(15a,215a)および上部表面(15b)の両方に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項5】
前記上部層(15,215)および前記下部層(14)は、水の浸入を避けるために、それらの周辺部に沿って密閉して結合されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項6】
前記上部層(15,215)が焼結プラスチック材料で作られることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項7】
前記の焼結プラスチック材料とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはポリエステルであることを特徴とする請求項6に記載のソール。
【請求項8】
前記上部層(15,215)が合成繊維で作られるフェルト、フリース、ファブリックまたはメッシュのいずれかの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項9】
前記上部層(15,215)が3〜250μmの間からなる平均孔幅を有することを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項10】
前記上部層(15,215)が疎水性にされていることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項11】
前記下部層(14)が前記ソール(10)外端を構成する外辺縁(16)および前記上部層(15,215)を支持するために設計される接地部分(17)により構成され、前記下部層(14)の空間は、前記接地部分(17)のいずれか1つと前記縁(16)との間で構成され、前記部分(14a,114a)を形成することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項12】
前記プラズマ堆積処理は、高真空のコールドプラズマ状態での加工により得られることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項13】
前記プラズマ堆積処理は、処理中の電界が実質的に13MHzと14MHzとの間で構成される周波数で発信する、高周波発生器を用いることにより得られることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項14】
前記プラズマ堆積処理は、処理中の電界が好ましくは13.56MHz程度の周波数で発信する、高周波発生器を用いることにより得られることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項15】
前記プラズマ堆積処理は、実質的に50〜700Wの間からなる、処理中に供給される電界電力を用いることにより得られることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項16】
シロキサンベースのモノマーのための前記プラズマ堆積処理時間が、160秒〜600秒の間で構成されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項17】
シロキサンベースのモノマーのための前記プラズマ堆積処理時間は実質的に420秒に等しいことを特徴とする請求項16に記載のソール。
【請求項18】
前記プラズマ堆積処理の真空レベルは実質的に10-1mbarと10-5mbarとの間で構成されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項19】
前記プラズマ堆積処理は、高真空のコールドプラズマ状態での加工により得られ、および、処理中の電界が13.56MHz程度の周波数で発信し、供給される電界電力が50〜700Wに等しい高周波発生器を用いることにより得られ、真空レベルが10-1mbarと10-5mbarとの間で構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のソール。
【請求項20】
プラズマ堆積の前駆体材料がシロキサンベースのモノマーであることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項21】
プラズマ堆積の前駆体材料が撥油性および撥水性のフルオロポリマーであることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のソール。
【請求項22】
前記被膜(21,221)の材料がポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項23】
前記被膜(21,221)の材料が撥油性および撥水性のフルオロポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のソール。
【請求項24】
前記フルオロポリマーは商標名Zonylにより商業上知られており、デュポンにより製造されていることを特徴とする請求項23に記載のソール。
【請求項25】
少なくとも2つの構造層(314,315)である、靴底を形成するために支持構造を有する下部層(314)および水蒸気を透過できる微孔性の上部層(315)を、少なくともソールの付加部分のために備え、前記上部層(315)の上には防水膜(321)が備えられ、前記下部層(314)には前記上部層(315)へ開いた部分(314a)が備えられ、前記ソール(300)は、前記上部層(315)および前記防水膜(321)が水の浸入を避けるために、それらの周辺部に沿って密閉して結合されていることを特徴とする、靴用通気性防水ソール。
【請求項26】
前述の請求項のいずれか1つに記載のソールを備えることを特徴とする、防水通気性靴。
【請求項27】
構成部分の次の組合せ、
袋状の態様をして足挿入部を囲み、少なくとも下方部で結合される防水膜(421,521)を有する通気性アッパー(412,512)を備えるアセンブリ(401,501)、および、
前記アセンブリ(401,501)の下に結合され、少なくとも2つの構造層(414,514,415,515)である、靴底を形成するために支持構造を有する下部層(414,514)および微孔のある水蒸気を透過できる上部層(415,515)を、少なくともソールの付加部分のために備え、前記下部層(414,514)は上部層(415,515)へ開いた部分(414a,514a)を有するソール(400,500)
からなることを特徴とする防水通気性靴。
【請求項28】
前記アセンブリ(401)がアッパー(412)および通気性または穴のあるインソール(413)から構成され、
インソールは前記アッパー(412)の端に、周知の「シュトローベル(strobel)」や「イデアルウェルト(ideal welt)」構造で袋を形成するようにステッチ(402)により結合され、
前記防水膜(421)は通気性または穴のある前記インソール(413)に接着し、
前記アセンブリ(401)は前記防水膜(421)の周辺部に沿った、前記縫いとじられた継ぎ目(402)と前記防水膜(421)をまたがる封止範囲(421a)を含むことを特徴とする請求項27に記載の靴。
【請求項29】
前記アセンブリ(501)はアッパー(512)により構成されており、アッパーは外部でその下端(512a)により前記ソール(500)に結合され、内部で足の挿入部分を包むために袋形状をしている防水膜(521)に結合されていることを特徴とする請求項27に記載の靴。
【請求項30】
水蒸気を透過できる微孔性の前記上部層(15,215,315,415,515)が革で作られていることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−516758(P2007−516758A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546085(P2006−546085)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014717
【国際公開番号】WO2005/063069
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(502346105)ジェオックス エス.ピー.エー. (27)
【氏名又は名称原語表記】GEOX S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Feltrina Centro 16,31044 MONTEBELLUNA(Treviso),Localita Biadene,ITALY
【Fターム(参考)】