説明

鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造

【課題】盗難防止性に優れた鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造を提供する。
【解決手段】バーハンドルを有し前輪3を操舵する操舵装置11と、操舵装置11に設けられ前輪3の上部に設けた泥除け21と、操舵装置11を操舵可能に遊挿した穴部41が前輪3に対向して設けられ、内部に空間35を有する前部ボディ31とを備えた自動二輪車1に用いる鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造において、空間35内に盗難対策装置本体60を収納すると共に、この盗難対策装置本体60は、バーハンドルの操舵ロック時に泥除け21の前部22が穴部41に近接する側に配置されている。これによりバーハンドルの操舵ロック時に泥除け21の前部22が穴部41を覆うから、ロックした側から穴部41に手が入らなくなり、盗難対策装置本体60を取り外したり無効にしたりすることができなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の車両が盗難される際に、例えば、エンジンを始動できないようにしたり、警報を発したり、あるいは盗難された車両を探し出すために、GPS(Global Positioning System)機能を利用して車両位置を測定し、得られた車両の位置情報を携帯電話等に送信することが可能な盗難対策装置が開発されている。
【0003】
そして、このような盗難対策装置を、ヘッドランプの上方に配置することや、メータ装置の前方斜め下方に配置することや、ヘッドランプの下方に配置することや、前記ヘッドランプの下面とフロントフェンダの上面とに挟んで配置することや、フロントカウリングの内側に配置すること(例えば特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−116127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、盗難対策装置を前輪の上方で操舵装置の前方に配置することにより、収納スペースや他の車体スペースを有効利用することができ、特に、フロントカウリングの内側に配置することにより、外部から視認されることがなく、いたずらなどを防止することができる。
【0006】
しかし、盗難対策装置の取付場所を知る者などが、工具を用いて盗難対策装置を取り外したり無効にしたりしようとする虞があり、さらに盗難防止性に優れた構造が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、盗難防止性に優れた鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造を提供することを目的とし、加えて車体スペースを有効利用し、装置の信頼性を確保することができる鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に関わる発明は、ハンドルを有し前輪を操舵する操舵装置と、前記操舵装置に設けられ前記前輪の上部に設けた泥除けと、前記操舵装置を操舵可能に遊挿した穴部が前記前輪に対向して設けられ、内部に空間を有する前部ボディと、を備えた鞍乗り型車両に用いる鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造において、前記空間内に盗難対策装置本体を収納すると共に、この盗難対策装置本体は、前記ハンドルの操舵ロック時に前記泥除けの前部が近接する側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記前部ボディは、前記操舵装置を操舵可能に遊挿した穴部が前記前輪に対向して設けられたインナーカバーと、このインナーカバーの後方に設けられたリアカバーと、それらインナーカバー及びリアカバーの側方に設けられたアウターカバーとを備え、それらインナーカバー,リアカバー及びアウターカバーの間に前記空間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記泥除けは前記操舵装置に備わる緩衝装置のバネ上側に固定され、前記泥除けが前記穴部の高さ位置にほぼ対応して設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記盗難対策装置本体は、前記空間に設けた前方膨出部に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、前記リアカバーの内面に前記盗難対策装置本体を固定したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、前記空間の下部に車載部品を収納し、前記空間の上部に前記盗難対策装置本体を配置したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、前記車載部品がラジエタであり、前記インナーカバーの下部に通気孔を設け、前記通気孔より上部に前記盗難対策装置本体を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、ハンドルの操舵ロック時に泥除け前部が穴部を覆い、ロックした側から穴部に手が入らなくなり、盗難対策装置本体を取り外したり無効にしたりすることができなくなる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、インナーカバー,リアカバー及びアウターカバーの間の空間を利用して盗難対策装置本体を装備することができ、その閉まった空間に盗難対策装置本体を収納することにより盗難防止性に優れたものとなる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、前部ボディに対して前輪を上下動しても泥除けと穴部の高さ位置が変わらないから、泥除けによる防犯性を確保できる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、前部ボディ内の空間を有効利用することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、リアカバーに盗難対策装置本体を固定し、そのリアカバーをアウターカバーに組み付けることにより、盗難対策装置本体の取付作業を簡便に行うことができる。
【0020】
また、本発明の請求項6に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、車載部品を収納した空間の下部を避けて上部に盗難対策装置本体を収納することにより、空間全体を有効利用することができる。
【0021】
また、本発明の請求項7に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造によれば、熱を発散するラジエタから離れた位置に盗難対策装置本体を配置することによりラジエタ側から熱を受けず、また、通気孔から入る雨風の影響を受けることがないため、盗難対策装置本体の動作の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施例の実施例1を示す正面図である。
【図2】同上、前輪を操舵ロックした状態の正面図である。
【図3】同上、車体前部の側面図である。
【図4】同上、前輪を操舵ロックした状態の車体前部の側面図である。
【図5】同上、車体前部の平断面図である。
【図6】同上、前輪を操舵ロックした状態の車体前部の平断面図である。
【図7】同上、センターハンドルカバーを外した車体前部の上部の斜視図である。
【図8】同上、車体前部の斜視図である。
【図9】同上、インナーカバー及びアウターカバーの内面の斜視図である。
【図10】同上、盗難対策装置のブロック図である。
【図11】同上、盗難対策装置本体と取付部材の分解斜視図である。
【図12】同上、盗難対策装置本体と取付部材の正面図である。
【図13】同上、盗難対策装置本体と取付部材の側面図である。
【図14】同上、盗難対策装置本体と取付部材の平面図である。
【図15】同上、リアカバーを外した状態の車体前部の斜視図である。
【図16】同上、盗難対策装置本体の取付方法を説明する斜視図である。
【図17】同上、車体前部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造の実施例1について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図17に示すように、スクータ型の自動二輪車(鞍乗り型車両)1は、車体2の前後に一つの前輪3と後輪を備え、燃料タンク内の燃料によりエンジンを駆動して走行する。
【0025】
前記車体2の前部には、操舵装置11が設けられ、フロントフォーク12と、このフロントフォーク12に連結されたハンドルたるバーハンドル13を含む前記操舵装置11が本体フレーム14(図9参照)のヘッドパイプ14Aにより操舵自在に支持されている。
【0026】
前記フロントフォーク12は、前記前輪3を下端部で軸支する円筒状のロアケース15及び該ロアケース15に嵌合される円筒状のアッパケース16をそれぞれ有して伸縮可能に構成され、前記一対のアッパケース16,16の上部間をステアリングステム17により連結し、このステアリングステム17の中心をステムパイプがヘッドパイプ14Aを貫通して上方に伸び、そのステムパイプの上端に前記バーハンドル13が連結されている。そして、前記ロアケース15及びアッパケース16は、バネ又はダンバ、あるいはその両方と合せて前輪3から本体フレーム14に加わる振動を緩衝する、緩衝装置を構成する。
【0027】
前記操舵装置11には、前輪3の上部を覆う泥除け21が設けられ、この合成樹脂製の泥除け21は、前記フロントフォーク12の前後に位置する前部22と後部23とを一体に有し、前部22が後部23より大きく形成され、後部が固定部24によりステアリングステム17に固定されている。
【0028】
このように泥除け21は、緩衝装置のバネ上側たるステアリングステム17に固定され、前輪3の上下動に関らず、後述する前部ボディとは高さ位置が変わらない。
【0029】
前記車体2の前部には、合成樹脂製の前部ボディ31が設けられ、この前部ボディ21は前記本体フレーム14に固定されている。前記前部ボディ31は、操舵装置11の中央上部と左右と下部を覆うアウターカバー32と、このアウターカバー32の前開口部32Fに設けるインナーカバー33と、前記アウターカバー32の後開口部32Fに設けるリアカバー34とからなり、それらインナーカバー33,アウターカバー32及びリアカバー34の間に、閉ざされた空間35を有する。
【0030】
前記アウターカバー32は、前側が低くなるように傾斜した上面部36と、この上面部36の左右外側に設けた左右側面部37,37と、これら左右側面部37,37の下部を連結する下面部38とを一体に有し、図1及び図5に示すように、前側に向かって縮小する形状をなし、その前部には縦長な前記前開口部32Fが形成され、この前開口部32Fを塞ぐようにして前記インナーカバー33が設けられている。
【0031】
前記インナーカバー33は、後側に凹むように湾曲形成され、その周縁が前記前開口部32Fに固着されている。前記インナーカバー33の上部には、前記操舵装置11の上部を挿通する穴部41が設けられ、この穴部41は前記操舵装置11が操舵可能な大きさを有する。
【0032】
図7に示すように、前記前部ボディ31の上部には、ハンドルカバー43が設けられ、このハンドルカバー43は、前記バーハンドル13を前後から覆う前ハンドルカバー43A及び後ハンドルカバー43Bと、これら前後ハンドルカバー43A,43Bの上部に設けるセンターハンドルカバー43Cからなる。また、前記アウターカバー32の前側上部には、前部フロントカバー44が設けられている。
【0033】
図8は、前記ハンドルカバー及びフロントカバー44を取り外した状態の車体2前部の斜視図であり、前記リアカバー34は、前記アウターカバー32の後開口部32Bを塞ぐと共に、下部がステップフロアー51の上部に固定される。前記リアカバー34の上部には前方が開口した挿通部52が形成され、この挿通部52に前記バーハンドル13の縦方向の基部が挿通される。また、前記後開口部32Bの縁部内側には、係止部たる係止爪53が設けられ、この係止爪53が係脱可能に係止する係止受け部54が前記リアカバー34の縁部内側に設けられている。そして、前記係止爪53及び係止受け部54は複数設けられ、これら係止爪53と係止受け部54を係止し、また、リアカバー34の透孔55に固定手段たるビス56を挿通し、このビス56をアウターカバー32に螺着することにより、アウターカバー32にリアカバー34を着脱可能に固定する。
【0034】
前記インナーカバー33の上部は、前記泥除け21の前部22の後側から後部23の上方を覆うように設けられ、インナーカバー33の下部は前輪3の下部側まで延設され、高さ方向中央から下部の左右に複数の通気孔57を有する。これら通気孔57の後部には、通気孔57の前方から入った空気などを下方に案内する板状の案内部58が設けられ、この案内部58は上側から下側に向かって通気孔57が離れるように斜設されている。そして、前記空間35の下部には、車載部品たるラジエタ59が収納され、走行時などに前記通気孔57から流れ込んだ空気がラジエタ59を冷却するように構成している。尚、前記通気孔57から流れ込んだ空気は前記ステップフロアー51の下方から排出される。また、図2及び図4では、通気孔57及び案内部58を図示省略している。
【0035】
図1,図3及び図5に示すように、前記前部ボディ31内の空間の左右には、前方に突出した前方膨出部39,39が設けられ、前記バーハンドル13が操舵ロック時に向く方向の左側の前方膨出部39に、盗難対策装置本体60の前部を収納している。すなわち空間35の左側は、バーハンドル13の操舵ロック時に泥除け21の前部22が穴部41に近接する側であり、空間35の左側に盗難対策装置本体60を収納し、この盗難対策装置本体60は空間35の上部に配置されている。
【0036】
図10に示すように、前記盗難対策装置本体60は、自動二輪車1の車体2に加えられた振動を検知する加速度センサ61と、複数の人工衛星から軌道情報を受信することにより車両の現在位置を計測するGPS(Global Positioning System)62と、加速度センサ61からの加速度信号SA及びGPS62からの位置情報JPを受けて盗難防止対策を指令する制御部65と、制御部65からの交信指令SCに基づいて携帯電話基地局71へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部66と、制御部65からのエンジン制御信号SECに基づきエンジンの点火装置72に点火停止信号SSSを送って点火装置72の作動を停止させる、即ち、エンジンを停止させるエンジン制御部67と、制御部65からの警報制御信号SACに基づき警報装置73(ヘッドランプ、ウインカ、テールランプ等の灯火器、ホーン)に警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報発生部68と、GPS62、制御部65、携帯電話通信部66、エンジン制御部67及び警報発生部68へ電力を供給するバッテリ69とからなり、GPS62、制御部65、携帯電話通信部66、エンジン制御部67及び警報発生部68は、車体2側のバッテリ(図示せず)からも電力供給が可能である。GPS62及び携帯電話通信部66は、それぞれ通信用のアンテナを備え、これらのアンテナを含め、上記の盗難対策装置本体50の各構成が1つのケース80に収納されている。尚、上記したエンジン制御部67は、自動二輪車1に備えるエンジンコントロールユニットを介して点火装置72を制御するようにしてもよい。
【0037】
図10〜図14などに示すように、前記盗難対策装置本体60のケース80は、略箱型をなし、金属製板材からなる取付部材91により前記リアカバー34の内面に固定される。前記ケース80は、取付状態において、左右側面81L,81R間の左右寸法が、上下面82U,82B間の上下寸法及び前後面83F,83B間の前後寸法より小さく、上下寸法が前後寸法より大きく形成され、前記下面82Bに車載電源などに接続するハーネス85が設けられ、また、前記左右側面81L,81Rの一方である左側面81には、その前後に雄螺子84,84が突出されている。尚、前記ハーネス85はコネクタ86により装置本体60に電気的に接続される。
【0038】
前記取付部材91は、前記後面83Bと略平行に配置する後面部92と、前記両雄螺子84,84を挿通する透孔93を有すると共に前記左側面81Lに沿って配置する本体用取付片94と、前記後面部92と第1〜第3の折曲げ部95A,95B,95Cにより連結された第1〜第3のボディ用取付片96A,96B,96Cとを一体に備える。前記第1の折曲げ部95Aは前記上面82Uに沿い、その第1の折曲げ部95Aの前縁を上方に折り曲げて前記第1の取付片96Aが形成され、また、前記第2の折曲げ部95Bは段部状をなし、その第2の折曲げ部95により前記後面部92の後側に前記第2の取付片96B(図14参照)が形成され、この第2の取付片96Bは前記後面部92とほぼ平行に形成され、また、前記第3の折曲げ部95Cは前記左側面81Lに沿い、その第2の折曲げ部95Cの前縁を左側に折り曲げて前記第3の取付片96Cが形成され、それら第1〜第3の取付片96A,96B,96Cには、それぞれ第1〜第3の透孔97A,97B,97Cが穿設され、図12に示すように、ケース80の上部に第1の透孔97A、ケース80の右側で高さ方向中央に第2の透孔97B、この第2の透孔97Bより下方でケース80の左側に第3の透孔97Cが配置されている。
【0039】
図11及び図16に示すように、前記透孔93に挿通した雄螺子84に、鍔付ナット98を螺合することにより、ケース80に取付部材91を固定する。また、前記リアカバー34の内面には、前記第1〜第3の透孔97A,97B,97Cに対応して、取付受け部たる第1〜第3のボス部101A,101B,101Cが突設されており、前記第1〜第3の透孔97A,97B,97Cに固定手段たるビス102を挿通し、このビス102を前記第1〜第3のボス部101A,101B,101Cに螺着することにより、リアカバー34の内面に盗難対策装置本体60が固定される。この固定状態で、図2に示すように、正面視で、インナーカバー33とアウターカバー32の側面部37に隠れる位置に盗難対策装置本体60が位置し、盗難対策装置本体60の上部は穴部41の高さ位置にある。また、盗難対策装置本体60はインナーカバー33の高さ中央位置より上部に位置し、最上部の前記通風孔57より上部に位置する。
【0040】
前記前輪3を左側に操舵した位置でバーハンドル13による操舵をロックするロック機構(図示せず)を備え、このロック機構は、バーハンドル13を機械的に固定し、車体2側に設けたロック操作部を、キー操作により作動したり、赤外線信号を用いたリモコンロック操作することにおりロックとその解除を行うことができる。
【0041】
次に、前記構成につき、その作用を説明する。図2及び図4に示すように、前輪2を左側に向け、操舵をロックした時、穴部41の装置本体60側が泥除け21の前部22により塞がれる。泥除け21の外面(上面)と穴部41との間に隙間はあるが、この隙間から装置本体60を視認することはできず、また、隙間から前部ボディ31内に手を入れることができなくなる。さらに、前記隙間から器具を挿入しても、装置本体60やハーネス85に接触できず、穴部41から器具を使って装置本体10が外される虞がない。
【0042】
このように本実施例では、請求項1に対応して、ハンドルたるバーハンドル13を有し前輪3を操舵する操舵装置11と、操舵装置11に設けられ前輪3の上部に設けた泥除け21と、操舵装置11を操舵可能に遊挿した穴部41が前輪3に対向して設けられ、内部に空間35を有する前部ボディ31と、を備えた鞍乗り型車両たる自動二輪車1に用いる鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造において、空間35内に盗難対策装置本体60を収納すると共に、この盗難対策装置本体60は、バーハンドル13の操舵ロック時に泥除け21の前部22が穴部41に近接する側に配置されているから、バーハンドル13の操舵ロック時に泥除け21の前部22が穴部41を覆い、ロックした側から穴部41に手が入らなくなり、盗難対策装置本体60を取り外したり無効にしたりすることができなくなる。このように、行動走行する鞍乗り型車両ならほとんどが備える基本の防犯装置であるハンドルロック機構を利用して、盗難対策装置本体60が、より外部から手の届かない取付け構造が得られる。
【0043】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、前部ボディ31は、操舵装置11を操舵可能に遊挿した穴部41が前輪3に対向して設けられたインナーカバー33と、このインナーカバー33の後方に設けられたリアカバー34と、それらインナーカバー32及びリアカバー34の側方に設けられたアウターカバー32とを備え、それらインナーカバー33,リアカバー34及びアウターカバー32の間に前記空間35が形成されているから、インナーカバー33,リアカバー34及びアウターカバー32の間の空間35を利用して盗難対策装置本体60を装備することができ、その閉まった空間35に盗難対策装置本体60を収納することにより盗難防止性に優れたものとなる。
【0044】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、泥除け21は操舵装置11に備わる緩衝装置のバネ上側であるステアリングステム17に固定され、泥除け21が穴部41の高さ位置にほぼ対応して設けられているから、前部ボディ31に対して前輪3を上下動しても泥除け21と穴部41の高さ位置が変わらないから、泥除け21による防犯性を確保できる。
【0045】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、盗難対策装置本体60は、空間35に設けた前方膨出部39に配置されているから、前部ボディ31内の空間35を有効利用することができる。
【0046】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、アウターカバー32にリアカバー34を着脱可能に取り付け、リアカバー34の内面に盗難対策装置本体60を固定したから、リアカバー34に盗難対策装置本体60を固定し、そのリアカバー34をアウターカバー32に組み付けることにより、盗難対策装置本体60の取付作業を簡便に行うことができる。
【0047】
また、このように本実施例では、請求項6に対応して、空間35の下部に車載部品たるラジエタ59を収納し、空間35の上部に盗難対策装置本体60を配置したから、ラジエタ59を収納した空間35の下部を避けて上部に盗難対策装置本体60を収納することにより、空間35全体を有効利用を図ることができる。
【0048】
また、このように本実施例では、請求項7に対応して、車載部品がラジエタ59であり、インナーカバー33の下部に通気孔57を設け、通気孔57の位置より上部に盗難対策装置本体60を配置したから、熱を発散するラジエタ59から離れた位置に盗難対策装置本体60を配置することによりラジエタ59側から熱を受けず、また、通気孔57から入る雨風の影響を受けることがないため、盗難対策装置本体60の動作の信頼性を確保することができる。
【0049】
また、実施例上の効果として、アウターカバー32には、係止部とこの係止部が係脱自在は係止受け部の一方である係止爪53を複数設け、他方である係止受け部54をリアカバー34に複数設け、さらに、リアカバー34をアウターカバー32に固定する固定手段たるビス56を備えるから、アウターカバー32からリアカバー34を外し、後付けで装置本体60を簡便に装備することができる。
【0050】
前記取付部材91は、第1〜第3のボディ用取付片96A,96B,96Cとを一体に備え、これら取付片96A,96B,96Cを三角形の頂点の位置に配置し、前記リアカバー34の内面に取付受け部たる第1〜第3のボス部101A,101B,101Cを突設したから、装置本体60をリアカバー34に安定して取り付けることができる。また、固定状態で装置本体60は正面視で、インナーカバー33とアウターカバー32の側面部37に隠れる位置にあるから、穴部41に雨などが侵入しても影響が少ないと共に、防犯性に優れたものとなる。また、盗難対策装置本体60はインナーカバー33の高さ中央位置より上部に位置するから、空間35の下部スペースを有効利用できる。
【0051】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、別体のインナーカバーとアウターカバーとを一体化してもよいし、インナーカバーとアウターカバーは一体成形したものでもよい。また、バネ上側はステアリングステムに限らず、泥除けを操舵装置の他の部材に固定してもよい。さらに、空間の下部に設ける車載部品はラジエタに限らず、他の車載部品でもよい。また、請求項1においては、盗難対策装置本体を図1の前部ボディの縦方向の中心線(図示せず)から図1中右側(車体左側)に配置すればよく、特に、実施例のように上部に配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 車体
3 前輪
11 操舵装置
17 ステアリングステム(バネ上側)
21 泥除け
22 前部
31 前部ボディ
32 アウターカバー
32F 前開口部
32B 後開口部
33 インナーカバー
34 リアカバー
35 空間
39 前方膨出部
41 穴部
57 通気孔
59 ラジエタ(車載部品)
60 盗難対策装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルを有し前輪を操舵する操舵装置と、
前記操舵装置に設けられ前記前輪の上部に設けた泥除けと、
前記操舵装置を操舵可能に遊挿した穴部が前記前輪に対向して設けられ、内部に空間を有する前部ボディと、
を備えた鞍乗り型車両に用いる鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造において、
前記空間内に盗難対策装置本体を収納すると共に、この盗難対策装置本体は、前記ハンドルの操舵ロック時に前記泥除けの前部が近接する側に配置されていることを特徴とする鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項2】
前記前部ボディは、前記操舵装置を操舵可能に遊挿した穴部が前記前輪に対向して設けられたインナーカバーと、このインナーカバーの後方に設けられたリアカバーと、それらインナーカバー及びリアカバーの側方に設けられたアウターカバーとを備え、それらインナーカバー,リアカバー及びアウターカバーの間に前記空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項3】
前記泥除けは前記操舵装置に備わる緩衝装置のバネ上側に固定され、前記泥除けが前記穴部の高さ位置にほぼ対応して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項4】
前記盗難対策装置本体は、前記空間に設けた前方膨出部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項5】
前記リアカバーの内面に前記盗難対策装置本体を固定したことを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項6】
前記空間の下部に車載部品を収納し、前記空間の上部に前記盗難対策装置本体を配置したことを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。
【請求項7】
前記車載部品がラジエタであり、前記インナーカバーの下部に通気孔を設け、前記通気孔より上部に前記盗難対策装置本体を配置したことを特徴とする請求項6記載の鞍乗り型車両の盗難対策装置の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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