鞍乗型車両のスタンド構造
【課題】既存のハンドルを利用して前輪側にスタンドを形成する。
【解決手段】ハンドルグリップ7を一端に設けたハンドル軸6を長尺に形成してブリッジ部材3に支持する。ブリッジ部材3はヘッドパイプ2を支持するとともに、ハンドル軸6を上下動及び軸回りへ回動自在に支持する。ブリッジ部材3のロックレバー23を操作すると、ハンドル軸6が下降して接地部35が接地してスタンドになる。同時に軸回りに回動してハンドルグリップ7を後ろ向きに収納する。ハンドル軸6の上下動規制は、ブリッジ部材3に設けたハンドル軸支持部20の割り締め構造によりロックレバー23を操作して行う。このとき、ハンドル軸6の側面に形成された第1フラット面6b又は第2フラット面6cがハンドル軸支持部20のハンドル軸通し穴21を横切る締め付け軸25へ当接して回動規制される。
【解決手段】ハンドルグリップ7を一端に設けたハンドル軸6を長尺に形成してブリッジ部材3に支持する。ブリッジ部材3はヘッドパイプ2を支持するとともに、ハンドル軸6を上下動及び軸回りへ回動自在に支持する。ブリッジ部材3のロックレバー23を操作すると、ハンドル軸6が下降して接地部35が接地してスタンドになる。同時に軸回りに回動してハンドルグリップ7を後ろ向きに収納する。ハンドル軸6の上下動規制は、ブリッジ部材3に設けたハンドル軸支持部20の割り締め構造によりロックレバー23を操作して行う。このとき、ハンドル軸6の側面に形成された第1フラット面6b又は第2フラット面6cがハンドル軸支持部20のハンドル軸通し穴21を横切る締め付け軸25へ当接して回動規制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鞍乗型車両のスタンド構造に係り、特に、ハンドルをスタンドとして利用したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、自転車のハンドル軸前方へハンドル等と別部材として専用の車両支持部材を設け、これを車両が自立するように前輪の左右に接地させたスタンド機構が公知である(特許文献1参照)。
なお、本願において、前後・左右・上下とは車両を基準とするものとし、車両の左右方向は車幅方向と一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4123664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記、従来技術ではスタンド機構をハンドル等と別部材にした専用の支持部材で構成するため、スタンド機構の部品点数が増加してしまう。また、スタンド使用状態では、ハンドルは走行状態と代わらずにそのままの状態であるから、駐車時に車両をコンパクトな状態にすることができない。
このため、部品点数の増加を抑制しながら、コンパクトな駐車状態を実現する構造が求められることになる。そこで本願は係る要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鞍乗り型車両のスタンド構造に係る請求項1に記載した発明は、車体フレームの前端部へブリッジ部材を回動自在に支持し、このブリッジ部材へ前輪を回転自在に支持するフロントフォークを支持させてフロントフォークと車体フレームを操舵自在に連結するとともに、
ブリッジ部材に固定されて操舵用操作部材として機能するハンドルと、駐車時に車両を自立させるスタンドとを備えた鞍乗型車両において、
前記ハンドルは、その一部をなして上下方向へ延出し、前記ブリッジ部材により上下動自在に支持され、所定位置で固定されるハンドル軸を設け、
駐車時に、このハンドル軸を下方へ移動させて下端部(実施例の接地部35に相当する)を接地させるとともに、前記ブリッジ部材で固定することにより、車両を自立させるスタンドとすることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、前記ハンドル30が、その上部に形成され前記ハンドル軸の上端部に連結されるグリップ部と、
前記ハンドル軸の下端部に形成される接地部とを有し、
前記接地部は前記ハンドル軸に対し、略直交する方向に延出し、
走行状態で、前記グリップ部は車幅方向に延出し、前記接地部は車両前後方向に延出するとともに、
駐車状態で、前記グリップ部は前記ハンドル軸を中心に車両前後方向を向く位置へ回動し、前記接地部は車幅方向へ向く位置に回動することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は上記請求項2において、前記ハンドル軸は、前記フロントフォークの前方に配置されるとともに、
側面視にて、前記フロントフォークと平行に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は上記請求項3において、前記フロントフォークは、前記前輪を支持するアウターケースと、
前記ブリッジ部材に固定されるインナーケースとを備え、
前記アウターケースとインナーケースは摺動可能に形成されるとともに、
駐車時に前記ハンドル軸の下部を支持するハンドル軸支持部材を前記アウターケース4bと一体又は別体に形成することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は上記請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ハンドルは左右一対をなしてそれぞれ独立して前記ブリッジ部材へ固定されるとともに、
前記ブリッジ部材の上方で、前記ハンドルの各上部間を連結することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は上記請求項1〜5のいずれかにおいて、前記ハンドルに油圧ブレーキ操作子(実施例の操作レバー10に相当する)を設けるとともに、
この油圧ブレーキ操作子から延出する油圧配管の長さを調整する配管調整機構(実施例のリール12に相当する)を前記車体フレーム1の前部側面に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、ハンドルを利用してスタンド機構を構成したため、専用のスタンド部材を別体に設けた場合と比較して部品点数を削減すことができる。また、駐車状態でハンドル軸の下端が接地するようにブリッジ部材に対して下方に移動して固定されるため、ハンドル上端の位置が低くなるから、ハンドルの高さ方向をコンパクト化できる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、走行状態では、ハンドルのグリップ部を本来のグリップとして機能させながら、接地部を車両前後方向位置に延出させたので、接地部を車両内側へコンパクトに収容することができる。
駐車状態では、グリップ部をコンパクトに車両中心側へまとめた状態としながら、接地部をスタンド機構として成立するように車幅方向へ回動させることができる。
したがって、走行状態と駐車状態それぞれにおいて、部品点数を削減しつつも、ハンドル機能並びにスタンド機能を発揮させながら、車両のコンパクト化を実現できる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、フロントフォークと平行にハンドルパイプの軸部を配置するため、車両を大型化することなくスタンド機構を設けることができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、駐車時におけるハンドル軸下部に対する支持をアウターケースに設けられたハンドル軸支持部材で行うことができるため、ブリッジ部材に加わる荷重を低減して、ブリッジ部材の軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、左右一対で設けられたハンドルの各上部間を連結したので、ハンドル剛性を確保することができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、配管調整機構を設けたため、ハンドル軸の上下動に伴った配管長の調整が容易となり、駐車状態で配管の取り回しスペースが削減できるので、コンパクト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例(図1〜7)に係る走行時の状態を示す側面図
【図2】駐車時の状態を示す側面図
【図3】正面要部における走行時状態の斜視図
【図4】正面要部における駐車状態の斜視図
【図5】ハンドル軸を示す図
【図6】ブリッジ部材の上面視図
【図7】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図8】第2実施例(図8〜10)に係る車両前部における要部側面図
【図9】ブリッジ部材の上面視図
【図10】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図11】第3実施例(図11〜13)に係る車両前部における要部側面図
【図12】ブリッジ部材の上面図
【図13】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図14】第4実施例に係る車両前部における要部側面図
【図15】第5実施例に係る走行時状態の正面視図
【図16】第6実施例(図16・17)に係る走行時状態の正面視図
【図17】駐車時状態の正面視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。なお、以下の説明において、前後・左右・上下の各方向は、本願発明の適用される車両に基づくものとする。
図1〜図7は第1実施例に係り、図1は走行時の状態を示す側面視図、図2は駐車時の状態を示す側面視図、図3は正面視要部の拡大図、図4は側面視要部の拡大図、図5はブリッジ部材の上面視図、図6はハンドル軸を示す図、図7は上下及び回動規制機構の作動説明図である。
【0019】
まず、図1及び図2において全体構造を説明する。図1及び図2はそれぞれAに車両前部の正面図、Bに側面図を示してある。
車体フレーム1の前端部に設けられたヘッドパイプ2にブリッジ部材3が回動自在に取付けられている。このブリッジ部材3には、左右一対のフロントフォーク4の上端部が取付けられている。フロントフォーク4の下端には前輪5が支持されている。フロントフォーク4はインナーケース4aをアウターケース4bへ摺動自在に嵌合して伸縮自在にしたテレスコピック式であり、この例ではインナーケース4aの上端をブリッジ部材3へ取付け、アウターケース4bの下端で前輪5を支持する正立式である。但し、インナーケース4aとアウターケース4bを上下逆にした倒立式でもよい。
【0020】
ブリッジ部材3にはさらに左右一対のハンドル軸6が支持されている。
ハンドル軸6はフロントフォーク4と略平行にその前方を上下方向へ延びる長尺部材であり、好ましくは軽量化の観点からパイプ部材で構成されている。但し中実部材であってもよい。各ハンドル軸6の下端部は接地部35をなす。
左右のハンドル軸6の上端部6aにはハンドルバー7aが基部7bにて一体回動するように連結され、この基部7bと反対側のハンドルバー7a端部はハンドルグリップ7となっている。ハンドルグリップ7は図1のAに示す走行時状態にて、左右へ張り出すように設けられ、ここを乗員が握って走行するようになっている。
ハンドル軸6はハンドルグリップ7に加えられた操舵力をブリッジ部材3へ伝達し、フロントフォーク4を回動させて前輪5を操舵するための操舵系部材であり、ハンドル軸6とグリップ部7を含むハンドルバー7aとでハンドル30を構成する。ハンドル軸6はハンドル30における上下方向軸部でもある。
【0021】
8は前輪ブレーキの油圧配管であり、9はスロットルワイヤやハーネス等の配線である。但し、配線9は判りやすくするため、図1及び図2における各正面図(各図のA)にのみ例示し、各図のBについては省略してある。油圧配管8はハンドルグリップ7に設けられた操作レバー10の操作によって発生する油圧を前輪5の前輪ブレーキキャリパ11へ送るようになっており、正面視で車両前部を左上から右下へ向かって横切るように配管される。油圧配管8の中間部がリール12によって巻き取り可能になっている。
油圧配管8は配線9と比較したとき、より太くて硬く、曲がりにくいものである。操作レバー10は油圧ブレーキ操作子に相当する。
【0022】
ハンドル軸6はブリッジ部材3に対して上下動自在かつハンドル軸6の長さ方向の軸線(以下単に軸線という)の回りに回動自在に支持され、後述する上下及び回動規制機構にて走行時の上昇位置(図1参照)と、駐車時の下降位置(図2参照)に変更できる。
したがって、図1に示すように、ハンドル軸6を上昇位置にすると、ハンドル軸6全体が上方へ移動し、接地部35が接地面Gから離れて前輪5の側方へ上がり、かつハンドルグリップ7の位置が運転時の握りやすい位置になるので、ハンドルグリップ7を握ってハンドルバー7aを回動すると、ハンドル軸6とフロントフォーク4がブリッジ部材3により一体になってヘッドパイプ2に対して回動し、前輪5を操向できる。19はフロントフェンダである。
【0023】
また、図2に示すように、駐車時にハンドル軸6を下降位置にし、同時にハンドル軸6をその軸線回りに略90°回動させると、接地部35が接地面Gに接地するとともに、ハンドルグリップ7が水平面内にて略90°回動して後方へ延出するハンドル収納状態になる。
この状態でハンドル軸6の上下動及び回動を後述するように規制すると、ハンドル軸6はスタンドとして機能し、車両を直立状態等の自立した状態に保つことができる。
【0024】
しかも、ハンドルグリップ7を後方へ回動することにより、コンパクトに駐車できる。
また、駐車状態でハンドル軸6の下端が接地するようにブリッジ部材3に対して下方に移動して固定されるため、ハンドル30の上端位置が低くなるから、ハンドル30の高さ方向をコンパクト化できる。
【0025】
接地部35はパイプ部材もしくは中実丸棒や板状部材からなり、ハンドル軸6の軸直交方向へ延出し、図1の走行状態では前後方向を向き、図2の駐車時では左右方向を向くように設定されている。
これに対して、ハンドルグリップ7は走行状態で左右方向を向き、駐車時で前後方向へ向いている。すなわち、ハンドルグリップ7と接地部35が略90°向きを異にして設けられている。
【0026】
このようにすると、図1の走行状態では、ハンドルグリップ7が左右方向へ向いて乗員が握ることのできる状態になり、ハンドル30のグリップ部7を本来のグリップとして機能させるとともに、接地部35は前後方向を向いて走行の邪魔にならない配置になり、車両内側へコンパクトに収容される。
また、図2の駐車時にすると、ハンドルグリップ7を後方へ向けて収納することで、グリップ部7をコンパクトに車両中心側へまとめた状態にできるとともに、接地部35をスタンド機構として成立するように左右方向へ開き、左右の接地スパンを十分に大きくしてより確実なスタンドができるようになる。
したがって、走行状態と駐車状態それぞれにおいて、部品点数を削減しつつも、ハンドル機能並びにスタンド機能を発揮させながら、車両のコンパクト化を実現できる。
【0027】
このとき、左右の接地部35と前輪5が共に接地しているため、車両の荷重を左右の接地部35と前輪5で分担支持でき、左右のハンドル軸6にかかる分担荷重を低減できるので、左右のハンドル軸6をあまり大型化や重量化しないで済み、小型・軽量化が可能になる。
また、ハンドル30(そのハンドル軸6)を利用してスタンド機構を構成したため、専用のスタンド部材を別体に設けた場合と比較して部品点数を削減すことができる。
そのうえ、ハンドル軸6をフロントフォーク4と略平行に配置するため、車両を大型化することなくスタンド機構を設けることができる。
【0028】
また、アウターケース4bから前方へハンドル軸支持部材13が一体に突出しており、その先端部でハンドル軸6を上下方向へ摺動自在に支持している。
ハンドル軸支持部材13は、図1中の丸囲みした拡大部に示すように、剛性のある金属等の板材の長さ方向両端を略U字状に曲げ、それぞれをアウターケース4b及びハンドル軸6の外周へ外嵌して結合し、ハンドル軸6のブリッジ部材3よりも下方部分を支持したものである。
このため、ハンドル軸支持部材13によっても、駐車時におけるハンドル軸6を、剛性部材であるブリッジ部材3で支持すると同時に、その下方にてハンドル軸支持部材13を介して剛性のあるアウターケース4bにても支持するから、駐車時においてハンドル軸6よりブリッジ部材3へ加わる荷重を軽減でき、ブリッジ部材3の軽量化を図ることができる。なお、ハンドル軸支持部材13はアウターケース4bに対して一体又は別体に設けることができる。
【0029】
さらに、駐車時におけるハンドルの収納状態では、ハンドルグリップ7の下降により油圧配管8が大きく撓み、前方へ張り出すことになるので、これをリール12で巻き取ることにより、油圧配管8の前方張り出しを防いでコンパクトな収納状態を実現できる。
このようにすると、ハンドル軸6の上下動に伴った油圧配管8の配管長調整が容易となり、駐車状態で油圧配管8の取り回しスペースを削減できるので、コンパクト化を実現できる。
なお、配線9は曲がりやすいので、このような前方張り出しが少なく、リール12による巻き取りを不要にする。
【0030】
リール12はヘッドパイプ2の側方へ回転自在に取付けられており、手動等で回転させることによりリール12より上方側の油圧配管8を巻き取ることができる。油圧配管8の下部はリール12の中心部から下方へ延出し、途中をブリッジ部材3の側面に設けられたクリップ14に支持されながら、フロントフォーク4の後方に沿って下方へ配管され前輪ブレーキキャリパ11へ接続される。
15はステムパイプであり、下端部をブリッジ部材3と一体化されて上方へ突出し、ヘッドパイプ2へ回動自在に支持されている。
【0031】
次に、ハンドル軸6の上下及び回動規制機構を説明する。図3は走行状態における車両前部を車両の斜め前方からブリッジ部材3を中心にして示す斜視図であり、図4はハンドル収納状態における図3と同様の図、図5は左側のハンドル軸6の正面図、図6はブリッジ部材3の上面視図、図7はブリッジ部材3におけるハンドル軸支持部の断面図である。
【0032】
これらの図において、ブリッジ部材3は軽合金等の適宜剛性材料を鋳鍛造等して得られる部材であり、左右方向へ延びる本体部16の中央にステムパイプ15が取付けられ、左右端部にインナーケース4aの上端が固定される。
この固定は、例えば公知の割り締めによる。すなわち、図6に示すように、インナーケース4aを嵌合する貫通穴の一部を割り溝17で開放し、この割り溝17を横断するボルト18で締め付けることにより、インナーケース4aを締め付け固定するようになっている。但し、公知の他の固定方法であっても構わない。
本体部16の左右両端部前方にはハンドル軸支持部20が前方へ突出して一体に設けられている。ハンドル軸支持部20の各内側側部にはロックレバー23が配置され、ロックレバー23の操作で、走行時及び駐車時にハンドル軸6を拘束して上下動並びに回動規制したり、拘束を解放してハンドル軸6を上下動かつ回動自在にして走行時又は駐車時の状態に変化させるようになっている。
【0033】
図5は左側のハンドル軸6を示す。右側は対称に構成されている。この図に示すように、ハンドル軸6は上部が太径部をなし下部が細径部をなすパイプ部材で形成されている。但し、全長に亘って単一径としてもよい。また中実部材でもよい。なお、ハンドル軸6の断面については、表記を簡略化するため図5を除き中実断面として記載する。
ハンドル軸6の太径部は走行状態で大部分がブリッジ部材3よりも上方となる部分である。この走行状態で太径部の下端部がブリッジ部材3により支持される。ハンドル軸6の太径部のうち、ハンドルの基部7b(図1参照)と連結される部分は上端部6aをなす。この例では、上端部6a全体に基部7bが外嵌され、基部7bの下端がブリッジ部材3へ当接することにより、ハンドル軸6をスタンドとして機能させるときにおける下降時の位置決めになっている。
【0034】
ハンドル軸6の太径部における上端部6aより下方部分には円弧状断面部6bと、フラット面6cとが形成されている。フラット面6cは、ハンドル軸6の側面を部分的に切り欠いた状態で軸方向へ長く形成され、図中に示す回転断面において、ハンドル軸6の想定円6dの一部を横切る弦をなしている。想定円6dは円弧状断面部6bの曲率半径を有する円である。
フラット面6cの上下における円弧状断面部6bとの境界部近傍には、上スリット6eと下スリット6fが対角位置に形成されている。上スリット6e及び下スリット6fは、上下動及び回動規制部をなし、上スリット6eは駐車時、下スリット6fは走行時に用いられる。
上スリット6eと下スリット6fは、それぞれ横長に形成された溝状をなし、長さ方向両端部はフラット面6c及び円弧状断面部6bの内部へ入り込んでいる。溝幅は後述する締め付け軸25が係合可能な幅にされている。また、フラット面6cに対して互いに逆向きに傾斜し、その傾斜角θは略90°になっている。
【0035】
図6及び図7によりハンドル軸支持部20の構造を詳細に説明する。図6のハンドル軸支持部20はハンドル軸6が駐車時の状態を示す。図7は、右側におけるハンドル軸支持部20の断面を示し、Aに走行時のハンドル軸拘束状態、Bに走行時のハンドル軸解放状態、Cに駐車時のハンドル軸解放状態、Dに駐車時のハンドル軸拘束状態をそれぞれ示す。
なお、左側におけるハンドル軸支持部20も図7に示す構造と同様であり、右側と対称に構成されている。
【0036】
これらの図において、ハンドル軸支持部20には上下方向へ貫通するハンドル軸通し穴21が設けられ、その一部が半径方向前方へ向かってハンドル軸支持部20の前端まで形成された割り溝22によって開放されている。
ハンドル軸支持部20の各内側側部にはロックレバー23が配置され、支軸24によりハンドル軸支持部20を車幅方向へ横断する締め付け軸25の一端部へ回動自在に設けられている。締め付け軸25は割り溝22を横切っている。ロックレバー23にはカム部26が一体に設けられ、支軸24を中心にレバー23と一体にカム部26が回動することにより、割り溝22の幅を広狭変化させて、ハンドル軸通し穴21の穴径を変化させることにより、ハンドル軸6を解放して上下動自在かつ回動自在にしたり、ハンドル軸6の周囲へ密着して拘束することにより上下動並びに回動規制できる。
【0037】
ハンドル軸支持部20の前端部は、割り溝22により一対の分離部20a・20bが形成されている。図7のB・Cに示す規制解除にした解放時状態では、割り溝22が拡大し、その結果、ハンドル軸通し穴21も拡径し、その内側でハンドル軸6は非拘束の解放状態になって上下動及び回動可能になっている。
なお、左右の分離部20a・20b間には締め付け軸25が貫通して設けられ、一端部25aが拡大頭部をなして分離部20aの側面に当接され、他端部は分離部20bを貫通してハンドル軸支持部20の内側方にて支軸24に軸支されている。
また、締め付け軸25の長さ方向中間部は、ハンドル軸通し穴21の一部を横切り、図7のA・Dにおける規制時状態では、想定円6dの円弧の一部を横切る弦をなしている。
【0038】
図7のA・Dに示すように、ロックレバー23を図の反時計回り方向に回動して倒し、カム部26を一体に回動させて、割り溝22を狭くするようにカム部26で分離部20bの側面を押すと、ハンドル軸通し穴21が縮径して想定円6d(図5参照)よりやや小径になり、ハンドル軸通し穴21の内周面がハンドル軸6の周囲に密接してハンドル軸6を拘束する。同時に締め付け軸25の中間部が上スリット6e又は下スリット6fに係合してハンドル軸6を上下動及び回動不能に規制する。下スリット6fに係合した状態(A)が走行時の規制状態であり、上スリット6eに係合した状態(D)が駐車時の規制状態である。
【0039】
この規制状態において、ロックレバー23を図の時計回り方向へ回動して起こし、カム部26による分離部20bの側面に対する押圧を解くと、図7のB・Cに示すように、割り溝22が開くことにより、ハンドル軸通し穴21が拡径して想定円6dよりも大きくなり、円弧状部6bの回りに間隙が生じ、ハンドル軸6の拘束が解かれて軸線回りに矢示a又はb方向へ回動自在になるので、ハンドル軸6を矢示b方向へ回動させて締め付け軸25と下スリット6fの係合を解き(B)、さらにフラット面6cを締め付け軸25と平行にして締め付け軸25の側面をフラット面6cへ当接させることにより上下動可能にする(C)ことができる。
【0040】
次に、ハンドル軸6の移動規制を説明する。走行状態では、図1・3に示すように、ハンドル軸6を上昇位置とし、かつ図6及び図7のAに示すように、ロックレバー23を倒すことにより、ハンドル軸6を割り締めし、同時に下スリット6fを締め付け軸25へ係合することにより、上下動不能並びに回動不能に規制し、ハンドルバー7aを回動することにより前輪の操舵を可能にする。
【0041】
駐車するには、図7のBに示すように、ロックレバー23を起こして、割り溝22を開き、ハンドル軸6の拘束を解く。これにより、ハンドル軸6が回動可能になるので、b矢示方向へ略45°回動させて下スリット6fと締め付け軸25との係合を解く。
さらに回動させると、フラット面6cが締め付け軸25と平行になり、ハンドル軸6が上下動自在になる(C)。
そこで、フラット面6cを締め付け軸25の側面へ当接した状態で、ハンドル軸6を押し下げる。このとき、フラット面6cが締め付け軸25の側面へ当接することにより、ハンドル軸6は締め付け軸25に案内されて回動せずスムーズに下降する。
【0042】
ハンドル軸6が所定長さ下降すると、上スリット6eが締め付け軸25と同じ位置になる(C)。そこで、ハンドル軸6をさらにb矢示方向へ略45°回動させると、上スリット6eが締め付け軸25と係合する。この状態で、図7のDに示すように、ロックレバー23を倒すと、ハンドル軸通し穴21が縮径してハンドル軸6へ密着し、同時に上スリット6eが締め付け軸25と係合するので、ハンドル軸6を上下動不能並びに回動不能に規制する。これにより、ハンドル軸6の先端が接地してスタンドとして機能する(図2及び図4の状態)。このとき、ハンドル軸6は走行時の状態から略90°回動することになり、接地部35が横開き状に側方へ突出するので(図2)、安定して車両を支持できるスタンド状態になる。
【0043】
次に、図8〜10により第2実施例を説明する。図8は走行状態及び駐車状態の側面図、図9はブリッジ部材3の上面視図、図10は右側ハンドル軸支持部の断面図である。この例は、前実施例における上下動及び回動規制構造を変更したものである。したがって、共通部分については共通符号を用い、かつ重複説明を省略する(以下の実施例も同様)。
本実施例における上下動及び回動規制構造は、ハンドル軸6にフラット面を設けることに代えて、上下に段差部40,41を設けたものである。
段差部40,41は、第1細径部42及び第2細径部43を設けることにより、ハンドル軸6の一般径である太径部に対して形成される。
【0044】
上方の段差部40は駐車時のものであり、下方の段差部41は走行時のものである。図8のAに示すように、走行時はハンドル軸6を上昇させ、第2細径部43をハンドル軸支持部20で割り締めして上下動及び回動を規制する。また、駐車時には、図8のBに示すように、ハンドル軸6を下降させてスタンドとして機能させるとともに、第1細径部42をハンドル軸支持部20で割り締めして上下動及び回動を規制する。
【0045】
ハンドル軸6の回動規制は、爪44又は45を割り溝22へ入れ、分離部20aと分離部20bにより挟持することにより行われる。
爪44及び45は、それぞれ図8中に回転断面で示すように、段差部40及び41にて第1細径部42及び第2細径部43の各径方向外方へ突出して設けられている。爪44,45は、第1細径部42及び第2細径部43を挟んで対向位置に形成され、割り締め時の割り溝22の幅程度の幅を有し、爪44又は45は割り締め時に割り溝22内へ入り、分離部20aと分離部20bにより挟持される。
但し、爪44と爪45ハンドル軸6の周方向における形成位置は互いに異なり、周方向へ略90°ずれて形成されている。また、爪44,45はそれぞれ本願発明に分離して上下一対で設けられているが、これら上下部分を連続させてリブ状にしてもよい。
【0046】
ブリッジ部材3は、図9に示すように前実施例と同じく割り締め構造のハンドル軸支持部20を有する。この割り締め構造は前実施例と同様のものであり、左右のハンドル軸支持部20には割り締め構造が設けられ、それぞれレバー23の操作で締め付け及び締付解除が行われるようになっている。但し、第1細径部42及び第2細径部43を割り締めする点及び割り溝22にて爪44,45を挟む点で異なる。また、締め付け軸25がハンドル軸通し穴21を横切らない点も相違する。
【0047】
図10は右側のハンドル軸支持部20について詳細構造を示し、Aはハンドル軸6の上下動及び回動規制状態、Bは規制解除状態である。走行時には、図10のAに示すように、第2細径部43をハンドル軸支持部20に位置させ、ロックレバー23を倒して割り締めする。これにより、ハンドル軸通し穴21の内周面が第2細径部43の外周面に密接するとともに、ハンドル軸支持部20の上下端に段差部41が当接することにより上下動が規制される。
同時に爪45が割り溝22内へ入り、分離部20aと分離部20bにより挟持されることにより回動を規制される。
【0048】
駐車時には、割り締め部を弛め、ハンドル軸6を下げて第1細径部42をハンドル軸支持部20へ位置させ、ハンドル軸6を略90°回動させて爪44を割り溝22へ合わせてから割り締めする。これにより、ハンドル軸支持部20と段差部40の当接で上下動が規制され、爪44が割り溝22へ入って挟持されることにより回動規制され、ハンドル軸6がスタンドとして機能する。
このとき、爪44と爪45の形成位置を略90°ずらせておくことにより、駐車時の状態では爪44を挟持し、走行時の状態では爪45を挟持できる。
このようにすると、構造が簡単で使いやすい上下及び回動規制機構を得ることができる。
【0049】
次に、図11〜13により第3実施例を説明する。
この実施例は、上下・回動規制構造の別案に関するものであり、図11は走行状態及び駐車状態の側面図、図12はブリッジ部材3の上面視図、図13はアジャスタの断面図である。
この実施例では、ブリッジ部材3のハンドル軸支持部20に対して、全長が同径の丸パイプ状のハンドル軸6が支持されるが、ブリッジ部材3に設けられたアジャスタ50により、上下動及び回動が規制されるようになっている。
【0050】
図11はAに走行時状態、Bに駐車時状態を示す。図中に回転断面で示すように、上部と下部のそれぞれに、軸直交方向へ貫通して十字状に交差する係合穴54,55が形成されている。係合穴54,55は同径でハンドル軸6の側面へ軸回り方向にて略90°異なる位置に設けられている。係合穴54は駐車時にアジャスタ50に係合し、係合穴55は走行時にアジャスタ50に係合する。
但し、係合穴54,55は必ずしも十字状に形成される必要はなく、ハンドル軸6を軸直交方向へ貫通せず、側面へ軸回り方向にて略90°異なる位置に設けられた2つの穴であってもよい。
【0051】
図12に示すように、ブリッジ部材3は、割り締め構造のハンドル軸支持部20を有する。但し、本実施例におけるハンドル軸支持部20の割り締め構造は第1実施例と同様構造であるが、ハンドル軸6の上下動及び回動規制をせず、これらはアジャスタ50で行うようになっている。
また、締め付け軸25はハンドル軸通し穴21を横切らず、ハンドル軸通し穴21から離れた位置で割り溝22を横切っている。ロックレバー23を回動させてカム部26により割り溝22の幅を広狭変化させることは第1実施例と同じである。割り溝22の幅を狭くするとハンドル軸通し穴21が縮径してハンドル軸6を拘束し、割り溝22の幅を広げると、ハンドル軸6の拘束を解いて上下動並びに回動可能にする。
【0052】
図13はアジャスタ50の詳細構造を示し、Aは走行時状態におけるハンドル軸6の上下動及び回動規制状態、Bは規制解除状態である。アジャスタ50は指で回すつまみ部51とネジ部52を有し、ネジ部52の軸心部に小径の係合突起53が突出している。係合突起53は係合穴54,55へ係脱できる外径をなす。係合穴54は駐車時状態で係合突起53と係合可能位置へ移動し、係合穴55は走行時状態で係合突起53と係合可能位置へ移動する。
【0053】
ネジ部52はボス20cのネジ穴20dに締結されており、Aに示すように、つまみ部51をネジ部52の締め付け方向へ回すと係合突起53が係合穴54又は55へ係合し、ハンドル軸6の上下動及び回動が規制される。
逆の弛め方向へ回すと、Bに示すように、係合突起53が係合穴54又は55から脱し、規制解除してハンドル軸6の上下動及び回動が自由になる。
【0054】
そこで、走行時には、駐車状態においてロックレバー23を起こして割り締めによるハンドル軸6の拘束を解き、アジャスタ50を弛めることにより、係合突起53を係合穴55から抜き出して規制解除してからハンドル軸6を上方へ移動させ、かつハンドルグリップ7を左右へ開いた状態とし、下側に位置する係合穴55をブリッジ部材3と重なる位置へ移動させて係合突起53に向くように合わせ、再びアジャスタ50のつまみ部51を回してネジ部52を締め付けると、係合突起53が係合穴55へ係合する。その後、ロックレバー23を倒して割り締めによりハンドル軸6を締め付けて拘束する。これにより、ハンドル軸6の上下動及び回動を規制すると図11のAに示す走行時の状態となる。
【0055】
また、駐車するには、ロックレバー23を起こして割り締めによるハンドル軸6の拘束を解き、アジャスタ50のつまみ部51を回してネジ部52を弛めることにより、係合突起53を係合穴55から抜き出して規制解除し、ハンドル軸6を下げてかつ略90°軸回りへ回動させることにより、上側に位置する係合穴54を係合突起53に合わせ、再びアジャスタ50を回してネジ部52を締め付け、係合突起53を係合穴55へ係合させる。その後、ロックレバー23を倒して割り締めによりハンドル軸6を締め付けて拘束する。これにより、ハンドル軸6は上下動及び回動を規制され、グリップ7は図11のBに示す収納状態となり、ハンドル軸6はスタンドとして機能する。
【0056】
次に、図14及び15により第4実施例を説明する。図14は走行状態及び駐車状態の側面図、図15はハンドル部分の正面図である。
この例は、ハンドル剛性を高める構造に関するものであり、第1実施例における上下・回動規制構造に剛性アップ構造を適用している。但し、他の上下・回動規制構造に適用することは任意にできる。また、ハンドル軸6をスタンドとして用いること並びにそのための上下及び回動規制機構を有することは前各実施例と同じである(次の第5実施例も同様)。
本願発明におけるスタンドは、ハンドル軸6を利用するものであり、走行時には左右のハンドル軸6がブリッジ部材3より上方へ長く延出する。したがって、ハンドル剛性を高めることが求められる。本実施例はこの要請を実現するものである。
【0057】
この実施例では、左右のハンドル軸6の上端部6a近傍部間に補強ブリッジ部材60が架け渡されている。
補強ブリッジ部材60は、図15にその丸囲み部に上面視形状を拡大して示すように、上面視で左右方向へ長い棒状の本体部61と、その左右方向両端に設けられたリング部62とが一体に形成され、適宜金属等の剛性材料で構成されている。
【0058】
第2実施例におけるハンドル軸6の上端部6aのうち上部を細径化して第3細径部46としてあり、リング部62は第3細径部46の外径より若干大きく、ハンドル軸6をリング部62に対して回動自在にしている。第3細径部46とそれよりも下方の上端部6aとの間に段差47が形成され、この段差47によりリング部62の下降を阻止している。第3細径部46の上端にはハンドルの基部7bが嵌合され、この基部7bによりリング部62が上方へ抜けることを阻止する抜け止めになっている。
【0059】
したがって、まず第3細径部46に上方からリング部62を被せて貫通させ、さらにその上から基部7bを取付けると、リング部62は第3細径部46よりも太径の上端部6aと基部7bとの間に上下方向を固定される。
このようにすると、走行時にブリッジ部材3より上方へ長く延出した左右のハンドル軸6の上端部間を補強ブリッジ部材60で連結することにより、左右のハンドル軸6を上下の補強ブリッジ部材60とブリッジ部材3で支持して、左右一対で設けられたハンドル30の各上部間を剛性のある補強部材で連結することになるためハンドル剛性を高めることができる。しかも、第3細径部46はリング部62に対して回動自在に支持されているので、スタンド時にはリング部62に対してハンドル軸6を回動させることにより、ハンドルのコンパクト収納を可能にする。
【0060】
図16,17により第5実施例を説明する。図16は走行状態及び駐車状態の側面図、図17はハンドル部分の正面図である。この実施例は、剛性アップ構造としての別案を採用したものであり、上下動・回動規制構造は第1実施例のものである。但し、他の実施例の上下動・回動規制構造に適用できることは勿論である。
この例では、補強ブリッジ部材70が伸縮式となっている点で前実施例と相違がある。
すなわち、補強ブリッジ部材70は右側部材71と左側部材72とに左右分割され、右側部材71は筒状又二股状をなし、ここに左側部材72の内側端部(車体中心CL側の端部)を嵌合し、この嵌合部をアジャスター73で相対移動不能に連結している。
【0061】
アジャスター73は指でまわすつまみ部73aと回転軸部73bを有し、回転軸部73bの軸心部に小径のネジ軸73cが突出している。このネジ軸73cは右側部材71と左側部材72に設けられている通し穴71a及び内側通し穴75に差し込まれ、さらに右側部材71に設けられているネジ穴71bに締結されている。この状態で通し穴71a、内側通し穴75及びネジ穴71bはネジ軸73cの同軸上に位置する。
左側部材72には長さ方向へ間隔をもって内側通し穴75と外側通し穴76が設けられ、走行時状態では、内側通し穴75が通し穴71a及びネジ穴71bと一致し、駐車時状態では外側通し穴76が通し穴71a及びネジ穴71bと一致する。
【0062】
回転軸部73bは右側部材71に設けられたボス74の軸穴74aを軸方向へ摺動し、走行時状態ではネジ軸73cが通し穴71a及び内側通し穴75へ差し込まれ、ネジ穴71bへ締結される。ネジ軸73cは車体中心CL上に位置する。
右側部材71の外側端部はジョイント77により右側のハンドルバー7aへ回動自在に連結され、左側部材72の外側端部はジョイント78により左側のハンドルバー7aへ回動自在に連結される。
【0063】
走行時は、図16に示すように、ネジ軸73cが内側通し穴75と通し穴71a及びネジ穴71bへ通されることで右側部材71と左側部材72が一直線状をなし、相対的に伸縮不能となった伸長状態で固定される。これにより、補強ブリッジ部材70によるハンドル剛性のアップが可能になる。しかもハンドルバー7aは補強ブリッジ部材70に対して回動不能になるからハンドル剛性がより高くなる。
【0064】
一方、駐車時には、まずつまみ部73aを回してネジ軸73cをネジ穴71bから外し、さらに、内側通し穴75及び通し穴71aから抜き出す。これにより、右側部材71と左側部材72が相対的に伸縮自在になる。そこで、ハンドル軸6を軸線回りに回動させて左右のハンドルグリップ7が後方を向いて略平行する収納状態を可能とする。
【0065】
このとき、左右のハンドルバー7aが回動するに伴って、左右のハンドルバー7aの間隔が狭くなる。すると、右側部材71と左側部材72はジョイント77及び78により、ハンドルバー7aに対して回動しながら相対的に収縮し、ハンドルグリップ7の収納状態で外側通し穴76が通し穴71a及びネジ穴71bと一致する。そこで、再び、ネジ軸73cを通し穴71a及び外側通し穴76へ差し込み、ネジ穴71bへ締結すると、補強ブリッジ部材70が収縮状態で伸縮不能に固定される。
【0066】
このように、補強ブリッジ部材70を伸縮自在とすることで、ハンドルバー7aを走行時状態及び駐車時状態(収納状態)のいずれにも確実に固定でき、この状態を維持できる。特に、走行時の状態でも補強ブリッジ部材70は、ハンドルバー7aを回動不能にして強固に支持するから、ハンドルバー7aを回動可能状態に支持する前実施例と比べてハンドル剛性がより一層高くなる。
【0067】
なお、伸縮機構はこの例に限らず、種々可能であり、例えば、右側部材71としてパイプやレール等の使用が可能である。また、内側通し穴75及び外側通し穴76に代えてこれらを結ぶ長溝であってもよい。
さらに、このような伸縮機構に代えて、補強ブリッジ部材を2つ等に折りたたまれる折りたたみ式にしてもよい。
また、スタンドとする場合のハンドル軸6は必ずしも左右をそれぞれ接地させる必要はなく、いずれか片方を接地させることもできる。この場合の車両自立状態は、直立に限らず傾斜状態でもよい。
さらに、接地部35は実施例におけるようなハンドル軸6の軸部と直交して突出するものでなく、単にハンドル軸6の軸端部そのものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
2:ヘッドパイプ、3:ブリッジ部材、4:フロントフォーク、6:ハンドル軸、6b:第1フラット面、6c:第2フラット面、7:ハンドルグリップ、8:油圧配管、20:ハンドル軸支持部、21:ハンドル軸通し穴、22:割り溝、23:ロックレバー、25:締め付け軸、30:ハンドル、35:接地部、40:段差部、41:段差部、44・45:爪、50:アジャスタ、54・55:係合穴、60:補強ブリッジ部材、70:補強ブリッジ部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、鞍乗型車両のスタンド構造に係り、特に、ハンドルをスタンドとして利用したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、自転車のハンドル軸前方へハンドル等と別部材として専用の車両支持部材を設け、これを車両が自立するように前輪の左右に接地させたスタンド機構が公知である(特許文献1参照)。
なお、本願において、前後・左右・上下とは車両を基準とするものとし、車両の左右方向は車幅方向と一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4123664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記、従来技術ではスタンド機構をハンドル等と別部材にした専用の支持部材で構成するため、スタンド機構の部品点数が増加してしまう。また、スタンド使用状態では、ハンドルは走行状態と代わらずにそのままの状態であるから、駐車時に車両をコンパクトな状態にすることができない。
このため、部品点数の増加を抑制しながら、コンパクトな駐車状態を実現する構造が求められることになる。そこで本願は係る要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鞍乗り型車両のスタンド構造に係る請求項1に記載した発明は、車体フレームの前端部へブリッジ部材を回動自在に支持し、このブリッジ部材へ前輪を回転自在に支持するフロントフォークを支持させてフロントフォークと車体フレームを操舵自在に連結するとともに、
ブリッジ部材に固定されて操舵用操作部材として機能するハンドルと、駐車時に車両を自立させるスタンドとを備えた鞍乗型車両において、
前記ハンドルは、その一部をなして上下方向へ延出し、前記ブリッジ部材により上下動自在に支持され、所定位置で固定されるハンドル軸を設け、
駐車時に、このハンドル軸を下方へ移動させて下端部(実施例の接地部35に相当する)を接地させるとともに、前記ブリッジ部材で固定することにより、車両を自立させるスタンドとすることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、前記ハンドル30が、その上部に形成され前記ハンドル軸の上端部に連結されるグリップ部と、
前記ハンドル軸の下端部に形成される接地部とを有し、
前記接地部は前記ハンドル軸に対し、略直交する方向に延出し、
走行状態で、前記グリップ部は車幅方向に延出し、前記接地部は車両前後方向に延出するとともに、
駐車状態で、前記グリップ部は前記ハンドル軸を中心に車両前後方向を向く位置へ回動し、前記接地部は車幅方向へ向く位置に回動することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は上記請求項2において、前記ハンドル軸は、前記フロントフォークの前方に配置されるとともに、
側面視にて、前記フロントフォークと平行に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は上記請求項3において、前記フロントフォークは、前記前輪を支持するアウターケースと、
前記ブリッジ部材に固定されるインナーケースとを備え、
前記アウターケースとインナーケースは摺動可能に形成されるとともに、
駐車時に前記ハンドル軸の下部を支持するハンドル軸支持部材を前記アウターケース4bと一体又は別体に形成することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は上記請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ハンドルは左右一対をなしてそれぞれ独立して前記ブリッジ部材へ固定されるとともに、
前記ブリッジ部材の上方で、前記ハンドルの各上部間を連結することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は上記請求項1〜5のいずれかにおいて、前記ハンドルに油圧ブレーキ操作子(実施例の操作レバー10に相当する)を設けるとともに、
この油圧ブレーキ操作子から延出する油圧配管の長さを調整する配管調整機構(実施例のリール12に相当する)を前記車体フレーム1の前部側面に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、ハンドルを利用してスタンド機構を構成したため、専用のスタンド部材を別体に設けた場合と比較して部品点数を削減すことができる。また、駐車状態でハンドル軸の下端が接地するようにブリッジ部材に対して下方に移動して固定されるため、ハンドル上端の位置が低くなるから、ハンドルの高さ方向をコンパクト化できる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、走行状態では、ハンドルのグリップ部を本来のグリップとして機能させながら、接地部を車両前後方向位置に延出させたので、接地部を車両内側へコンパクトに収容することができる。
駐車状態では、グリップ部をコンパクトに車両中心側へまとめた状態としながら、接地部をスタンド機構として成立するように車幅方向へ回動させることができる。
したがって、走行状態と駐車状態それぞれにおいて、部品点数を削減しつつも、ハンドル機能並びにスタンド機能を発揮させながら、車両のコンパクト化を実現できる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、フロントフォークと平行にハンドルパイプの軸部を配置するため、車両を大型化することなくスタンド機構を設けることができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、駐車時におけるハンドル軸下部に対する支持をアウターケースに設けられたハンドル軸支持部材で行うことができるため、ブリッジ部材に加わる荷重を低減して、ブリッジ部材の軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、左右一対で設けられたハンドルの各上部間を連結したので、ハンドル剛性を確保することができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、配管調整機構を設けたため、ハンドル軸の上下動に伴った配管長の調整が容易となり、駐車状態で配管の取り回しスペースが削減できるので、コンパクト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例(図1〜7)に係る走行時の状態を示す側面図
【図2】駐車時の状態を示す側面図
【図3】正面要部における走行時状態の斜視図
【図4】正面要部における駐車状態の斜視図
【図5】ハンドル軸を示す図
【図6】ブリッジ部材の上面視図
【図7】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図8】第2実施例(図8〜10)に係る車両前部における要部側面図
【図9】ブリッジ部材の上面視図
【図10】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図11】第3実施例(図11〜13)に係る車両前部における要部側面図
【図12】ブリッジ部材の上面図
【図13】上下及び回動規制機構の作動説明図
【図14】第4実施例に係る車両前部における要部側面図
【図15】第5実施例に係る走行時状態の正面視図
【図16】第6実施例(図16・17)に係る走行時状態の正面視図
【図17】駐車時状態の正面視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。なお、以下の説明において、前後・左右・上下の各方向は、本願発明の適用される車両に基づくものとする。
図1〜図7は第1実施例に係り、図1は走行時の状態を示す側面視図、図2は駐車時の状態を示す側面視図、図3は正面視要部の拡大図、図4は側面視要部の拡大図、図5はブリッジ部材の上面視図、図6はハンドル軸を示す図、図7は上下及び回動規制機構の作動説明図である。
【0019】
まず、図1及び図2において全体構造を説明する。図1及び図2はそれぞれAに車両前部の正面図、Bに側面図を示してある。
車体フレーム1の前端部に設けられたヘッドパイプ2にブリッジ部材3が回動自在に取付けられている。このブリッジ部材3には、左右一対のフロントフォーク4の上端部が取付けられている。フロントフォーク4の下端には前輪5が支持されている。フロントフォーク4はインナーケース4aをアウターケース4bへ摺動自在に嵌合して伸縮自在にしたテレスコピック式であり、この例ではインナーケース4aの上端をブリッジ部材3へ取付け、アウターケース4bの下端で前輪5を支持する正立式である。但し、インナーケース4aとアウターケース4bを上下逆にした倒立式でもよい。
【0020】
ブリッジ部材3にはさらに左右一対のハンドル軸6が支持されている。
ハンドル軸6はフロントフォーク4と略平行にその前方を上下方向へ延びる長尺部材であり、好ましくは軽量化の観点からパイプ部材で構成されている。但し中実部材であってもよい。各ハンドル軸6の下端部は接地部35をなす。
左右のハンドル軸6の上端部6aにはハンドルバー7aが基部7bにて一体回動するように連結され、この基部7bと反対側のハンドルバー7a端部はハンドルグリップ7となっている。ハンドルグリップ7は図1のAに示す走行時状態にて、左右へ張り出すように設けられ、ここを乗員が握って走行するようになっている。
ハンドル軸6はハンドルグリップ7に加えられた操舵力をブリッジ部材3へ伝達し、フロントフォーク4を回動させて前輪5を操舵するための操舵系部材であり、ハンドル軸6とグリップ部7を含むハンドルバー7aとでハンドル30を構成する。ハンドル軸6はハンドル30における上下方向軸部でもある。
【0021】
8は前輪ブレーキの油圧配管であり、9はスロットルワイヤやハーネス等の配線である。但し、配線9は判りやすくするため、図1及び図2における各正面図(各図のA)にのみ例示し、各図のBについては省略してある。油圧配管8はハンドルグリップ7に設けられた操作レバー10の操作によって発生する油圧を前輪5の前輪ブレーキキャリパ11へ送るようになっており、正面視で車両前部を左上から右下へ向かって横切るように配管される。油圧配管8の中間部がリール12によって巻き取り可能になっている。
油圧配管8は配線9と比較したとき、より太くて硬く、曲がりにくいものである。操作レバー10は油圧ブレーキ操作子に相当する。
【0022】
ハンドル軸6はブリッジ部材3に対して上下動自在かつハンドル軸6の長さ方向の軸線(以下単に軸線という)の回りに回動自在に支持され、後述する上下及び回動規制機構にて走行時の上昇位置(図1参照)と、駐車時の下降位置(図2参照)に変更できる。
したがって、図1に示すように、ハンドル軸6を上昇位置にすると、ハンドル軸6全体が上方へ移動し、接地部35が接地面Gから離れて前輪5の側方へ上がり、かつハンドルグリップ7の位置が運転時の握りやすい位置になるので、ハンドルグリップ7を握ってハンドルバー7aを回動すると、ハンドル軸6とフロントフォーク4がブリッジ部材3により一体になってヘッドパイプ2に対して回動し、前輪5を操向できる。19はフロントフェンダである。
【0023】
また、図2に示すように、駐車時にハンドル軸6を下降位置にし、同時にハンドル軸6をその軸線回りに略90°回動させると、接地部35が接地面Gに接地するとともに、ハンドルグリップ7が水平面内にて略90°回動して後方へ延出するハンドル収納状態になる。
この状態でハンドル軸6の上下動及び回動を後述するように規制すると、ハンドル軸6はスタンドとして機能し、車両を直立状態等の自立した状態に保つことができる。
【0024】
しかも、ハンドルグリップ7を後方へ回動することにより、コンパクトに駐車できる。
また、駐車状態でハンドル軸6の下端が接地するようにブリッジ部材3に対して下方に移動して固定されるため、ハンドル30の上端位置が低くなるから、ハンドル30の高さ方向をコンパクト化できる。
【0025】
接地部35はパイプ部材もしくは中実丸棒や板状部材からなり、ハンドル軸6の軸直交方向へ延出し、図1の走行状態では前後方向を向き、図2の駐車時では左右方向を向くように設定されている。
これに対して、ハンドルグリップ7は走行状態で左右方向を向き、駐車時で前後方向へ向いている。すなわち、ハンドルグリップ7と接地部35が略90°向きを異にして設けられている。
【0026】
このようにすると、図1の走行状態では、ハンドルグリップ7が左右方向へ向いて乗員が握ることのできる状態になり、ハンドル30のグリップ部7を本来のグリップとして機能させるとともに、接地部35は前後方向を向いて走行の邪魔にならない配置になり、車両内側へコンパクトに収容される。
また、図2の駐車時にすると、ハンドルグリップ7を後方へ向けて収納することで、グリップ部7をコンパクトに車両中心側へまとめた状態にできるとともに、接地部35をスタンド機構として成立するように左右方向へ開き、左右の接地スパンを十分に大きくしてより確実なスタンドができるようになる。
したがって、走行状態と駐車状態それぞれにおいて、部品点数を削減しつつも、ハンドル機能並びにスタンド機能を発揮させながら、車両のコンパクト化を実現できる。
【0027】
このとき、左右の接地部35と前輪5が共に接地しているため、車両の荷重を左右の接地部35と前輪5で分担支持でき、左右のハンドル軸6にかかる分担荷重を低減できるので、左右のハンドル軸6をあまり大型化や重量化しないで済み、小型・軽量化が可能になる。
また、ハンドル30(そのハンドル軸6)を利用してスタンド機構を構成したため、専用のスタンド部材を別体に設けた場合と比較して部品点数を削減すことができる。
そのうえ、ハンドル軸6をフロントフォーク4と略平行に配置するため、車両を大型化することなくスタンド機構を設けることができる。
【0028】
また、アウターケース4bから前方へハンドル軸支持部材13が一体に突出しており、その先端部でハンドル軸6を上下方向へ摺動自在に支持している。
ハンドル軸支持部材13は、図1中の丸囲みした拡大部に示すように、剛性のある金属等の板材の長さ方向両端を略U字状に曲げ、それぞれをアウターケース4b及びハンドル軸6の外周へ外嵌して結合し、ハンドル軸6のブリッジ部材3よりも下方部分を支持したものである。
このため、ハンドル軸支持部材13によっても、駐車時におけるハンドル軸6を、剛性部材であるブリッジ部材3で支持すると同時に、その下方にてハンドル軸支持部材13を介して剛性のあるアウターケース4bにても支持するから、駐車時においてハンドル軸6よりブリッジ部材3へ加わる荷重を軽減でき、ブリッジ部材3の軽量化を図ることができる。なお、ハンドル軸支持部材13はアウターケース4bに対して一体又は別体に設けることができる。
【0029】
さらに、駐車時におけるハンドルの収納状態では、ハンドルグリップ7の下降により油圧配管8が大きく撓み、前方へ張り出すことになるので、これをリール12で巻き取ることにより、油圧配管8の前方張り出しを防いでコンパクトな収納状態を実現できる。
このようにすると、ハンドル軸6の上下動に伴った油圧配管8の配管長調整が容易となり、駐車状態で油圧配管8の取り回しスペースを削減できるので、コンパクト化を実現できる。
なお、配線9は曲がりやすいので、このような前方張り出しが少なく、リール12による巻き取りを不要にする。
【0030】
リール12はヘッドパイプ2の側方へ回転自在に取付けられており、手動等で回転させることによりリール12より上方側の油圧配管8を巻き取ることができる。油圧配管8の下部はリール12の中心部から下方へ延出し、途中をブリッジ部材3の側面に設けられたクリップ14に支持されながら、フロントフォーク4の後方に沿って下方へ配管され前輪ブレーキキャリパ11へ接続される。
15はステムパイプであり、下端部をブリッジ部材3と一体化されて上方へ突出し、ヘッドパイプ2へ回動自在に支持されている。
【0031】
次に、ハンドル軸6の上下及び回動規制機構を説明する。図3は走行状態における車両前部を車両の斜め前方からブリッジ部材3を中心にして示す斜視図であり、図4はハンドル収納状態における図3と同様の図、図5は左側のハンドル軸6の正面図、図6はブリッジ部材3の上面視図、図7はブリッジ部材3におけるハンドル軸支持部の断面図である。
【0032】
これらの図において、ブリッジ部材3は軽合金等の適宜剛性材料を鋳鍛造等して得られる部材であり、左右方向へ延びる本体部16の中央にステムパイプ15が取付けられ、左右端部にインナーケース4aの上端が固定される。
この固定は、例えば公知の割り締めによる。すなわち、図6に示すように、インナーケース4aを嵌合する貫通穴の一部を割り溝17で開放し、この割り溝17を横断するボルト18で締め付けることにより、インナーケース4aを締め付け固定するようになっている。但し、公知の他の固定方法であっても構わない。
本体部16の左右両端部前方にはハンドル軸支持部20が前方へ突出して一体に設けられている。ハンドル軸支持部20の各内側側部にはロックレバー23が配置され、ロックレバー23の操作で、走行時及び駐車時にハンドル軸6を拘束して上下動並びに回動規制したり、拘束を解放してハンドル軸6を上下動かつ回動自在にして走行時又は駐車時の状態に変化させるようになっている。
【0033】
図5は左側のハンドル軸6を示す。右側は対称に構成されている。この図に示すように、ハンドル軸6は上部が太径部をなし下部が細径部をなすパイプ部材で形成されている。但し、全長に亘って単一径としてもよい。また中実部材でもよい。なお、ハンドル軸6の断面については、表記を簡略化するため図5を除き中実断面として記載する。
ハンドル軸6の太径部は走行状態で大部分がブリッジ部材3よりも上方となる部分である。この走行状態で太径部の下端部がブリッジ部材3により支持される。ハンドル軸6の太径部のうち、ハンドルの基部7b(図1参照)と連結される部分は上端部6aをなす。この例では、上端部6a全体に基部7bが外嵌され、基部7bの下端がブリッジ部材3へ当接することにより、ハンドル軸6をスタンドとして機能させるときにおける下降時の位置決めになっている。
【0034】
ハンドル軸6の太径部における上端部6aより下方部分には円弧状断面部6bと、フラット面6cとが形成されている。フラット面6cは、ハンドル軸6の側面を部分的に切り欠いた状態で軸方向へ長く形成され、図中に示す回転断面において、ハンドル軸6の想定円6dの一部を横切る弦をなしている。想定円6dは円弧状断面部6bの曲率半径を有する円である。
フラット面6cの上下における円弧状断面部6bとの境界部近傍には、上スリット6eと下スリット6fが対角位置に形成されている。上スリット6e及び下スリット6fは、上下動及び回動規制部をなし、上スリット6eは駐車時、下スリット6fは走行時に用いられる。
上スリット6eと下スリット6fは、それぞれ横長に形成された溝状をなし、長さ方向両端部はフラット面6c及び円弧状断面部6bの内部へ入り込んでいる。溝幅は後述する締め付け軸25が係合可能な幅にされている。また、フラット面6cに対して互いに逆向きに傾斜し、その傾斜角θは略90°になっている。
【0035】
図6及び図7によりハンドル軸支持部20の構造を詳細に説明する。図6のハンドル軸支持部20はハンドル軸6が駐車時の状態を示す。図7は、右側におけるハンドル軸支持部20の断面を示し、Aに走行時のハンドル軸拘束状態、Bに走行時のハンドル軸解放状態、Cに駐車時のハンドル軸解放状態、Dに駐車時のハンドル軸拘束状態をそれぞれ示す。
なお、左側におけるハンドル軸支持部20も図7に示す構造と同様であり、右側と対称に構成されている。
【0036】
これらの図において、ハンドル軸支持部20には上下方向へ貫通するハンドル軸通し穴21が設けられ、その一部が半径方向前方へ向かってハンドル軸支持部20の前端まで形成された割り溝22によって開放されている。
ハンドル軸支持部20の各内側側部にはロックレバー23が配置され、支軸24によりハンドル軸支持部20を車幅方向へ横断する締め付け軸25の一端部へ回動自在に設けられている。締め付け軸25は割り溝22を横切っている。ロックレバー23にはカム部26が一体に設けられ、支軸24を中心にレバー23と一体にカム部26が回動することにより、割り溝22の幅を広狭変化させて、ハンドル軸通し穴21の穴径を変化させることにより、ハンドル軸6を解放して上下動自在かつ回動自在にしたり、ハンドル軸6の周囲へ密着して拘束することにより上下動並びに回動規制できる。
【0037】
ハンドル軸支持部20の前端部は、割り溝22により一対の分離部20a・20bが形成されている。図7のB・Cに示す規制解除にした解放時状態では、割り溝22が拡大し、その結果、ハンドル軸通し穴21も拡径し、その内側でハンドル軸6は非拘束の解放状態になって上下動及び回動可能になっている。
なお、左右の分離部20a・20b間には締め付け軸25が貫通して設けられ、一端部25aが拡大頭部をなして分離部20aの側面に当接され、他端部は分離部20bを貫通してハンドル軸支持部20の内側方にて支軸24に軸支されている。
また、締め付け軸25の長さ方向中間部は、ハンドル軸通し穴21の一部を横切り、図7のA・Dにおける規制時状態では、想定円6dの円弧の一部を横切る弦をなしている。
【0038】
図7のA・Dに示すように、ロックレバー23を図の反時計回り方向に回動して倒し、カム部26を一体に回動させて、割り溝22を狭くするようにカム部26で分離部20bの側面を押すと、ハンドル軸通し穴21が縮径して想定円6d(図5参照)よりやや小径になり、ハンドル軸通し穴21の内周面がハンドル軸6の周囲に密接してハンドル軸6を拘束する。同時に締め付け軸25の中間部が上スリット6e又は下スリット6fに係合してハンドル軸6を上下動及び回動不能に規制する。下スリット6fに係合した状態(A)が走行時の規制状態であり、上スリット6eに係合した状態(D)が駐車時の規制状態である。
【0039】
この規制状態において、ロックレバー23を図の時計回り方向へ回動して起こし、カム部26による分離部20bの側面に対する押圧を解くと、図7のB・Cに示すように、割り溝22が開くことにより、ハンドル軸通し穴21が拡径して想定円6dよりも大きくなり、円弧状部6bの回りに間隙が生じ、ハンドル軸6の拘束が解かれて軸線回りに矢示a又はb方向へ回動自在になるので、ハンドル軸6を矢示b方向へ回動させて締め付け軸25と下スリット6fの係合を解き(B)、さらにフラット面6cを締め付け軸25と平行にして締め付け軸25の側面をフラット面6cへ当接させることにより上下動可能にする(C)ことができる。
【0040】
次に、ハンドル軸6の移動規制を説明する。走行状態では、図1・3に示すように、ハンドル軸6を上昇位置とし、かつ図6及び図7のAに示すように、ロックレバー23を倒すことにより、ハンドル軸6を割り締めし、同時に下スリット6fを締め付け軸25へ係合することにより、上下動不能並びに回動不能に規制し、ハンドルバー7aを回動することにより前輪の操舵を可能にする。
【0041】
駐車するには、図7のBに示すように、ロックレバー23を起こして、割り溝22を開き、ハンドル軸6の拘束を解く。これにより、ハンドル軸6が回動可能になるので、b矢示方向へ略45°回動させて下スリット6fと締め付け軸25との係合を解く。
さらに回動させると、フラット面6cが締め付け軸25と平行になり、ハンドル軸6が上下動自在になる(C)。
そこで、フラット面6cを締め付け軸25の側面へ当接した状態で、ハンドル軸6を押し下げる。このとき、フラット面6cが締め付け軸25の側面へ当接することにより、ハンドル軸6は締め付け軸25に案内されて回動せずスムーズに下降する。
【0042】
ハンドル軸6が所定長さ下降すると、上スリット6eが締め付け軸25と同じ位置になる(C)。そこで、ハンドル軸6をさらにb矢示方向へ略45°回動させると、上スリット6eが締め付け軸25と係合する。この状態で、図7のDに示すように、ロックレバー23を倒すと、ハンドル軸通し穴21が縮径してハンドル軸6へ密着し、同時に上スリット6eが締め付け軸25と係合するので、ハンドル軸6を上下動不能並びに回動不能に規制する。これにより、ハンドル軸6の先端が接地してスタンドとして機能する(図2及び図4の状態)。このとき、ハンドル軸6は走行時の状態から略90°回動することになり、接地部35が横開き状に側方へ突出するので(図2)、安定して車両を支持できるスタンド状態になる。
【0043】
次に、図8〜10により第2実施例を説明する。図8は走行状態及び駐車状態の側面図、図9はブリッジ部材3の上面視図、図10は右側ハンドル軸支持部の断面図である。この例は、前実施例における上下動及び回動規制構造を変更したものである。したがって、共通部分については共通符号を用い、かつ重複説明を省略する(以下の実施例も同様)。
本実施例における上下動及び回動規制構造は、ハンドル軸6にフラット面を設けることに代えて、上下に段差部40,41を設けたものである。
段差部40,41は、第1細径部42及び第2細径部43を設けることにより、ハンドル軸6の一般径である太径部に対して形成される。
【0044】
上方の段差部40は駐車時のものであり、下方の段差部41は走行時のものである。図8のAに示すように、走行時はハンドル軸6を上昇させ、第2細径部43をハンドル軸支持部20で割り締めして上下動及び回動を規制する。また、駐車時には、図8のBに示すように、ハンドル軸6を下降させてスタンドとして機能させるとともに、第1細径部42をハンドル軸支持部20で割り締めして上下動及び回動を規制する。
【0045】
ハンドル軸6の回動規制は、爪44又は45を割り溝22へ入れ、分離部20aと分離部20bにより挟持することにより行われる。
爪44及び45は、それぞれ図8中に回転断面で示すように、段差部40及び41にて第1細径部42及び第2細径部43の各径方向外方へ突出して設けられている。爪44,45は、第1細径部42及び第2細径部43を挟んで対向位置に形成され、割り締め時の割り溝22の幅程度の幅を有し、爪44又は45は割り締め時に割り溝22内へ入り、分離部20aと分離部20bにより挟持される。
但し、爪44と爪45ハンドル軸6の周方向における形成位置は互いに異なり、周方向へ略90°ずれて形成されている。また、爪44,45はそれぞれ本願発明に分離して上下一対で設けられているが、これら上下部分を連続させてリブ状にしてもよい。
【0046】
ブリッジ部材3は、図9に示すように前実施例と同じく割り締め構造のハンドル軸支持部20を有する。この割り締め構造は前実施例と同様のものであり、左右のハンドル軸支持部20には割り締め構造が設けられ、それぞれレバー23の操作で締め付け及び締付解除が行われるようになっている。但し、第1細径部42及び第2細径部43を割り締めする点及び割り溝22にて爪44,45を挟む点で異なる。また、締め付け軸25がハンドル軸通し穴21を横切らない点も相違する。
【0047】
図10は右側のハンドル軸支持部20について詳細構造を示し、Aはハンドル軸6の上下動及び回動規制状態、Bは規制解除状態である。走行時には、図10のAに示すように、第2細径部43をハンドル軸支持部20に位置させ、ロックレバー23を倒して割り締めする。これにより、ハンドル軸通し穴21の内周面が第2細径部43の外周面に密接するとともに、ハンドル軸支持部20の上下端に段差部41が当接することにより上下動が規制される。
同時に爪45が割り溝22内へ入り、分離部20aと分離部20bにより挟持されることにより回動を規制される。
【0048】
駐車時には、割り締め部を弛め、ハンドル軸6を下げて第1細径部42をハンドル軸支持部20へ位置させ、ハンドル軸6を略90°回動させて爪44を割り溝22へ合わせてから割り締めする。これにより、ハンドル軸支持部20と段差部40の当接で上下動が規制され、爪44が割り溝22へ入って挟持されることにより回動規制され、ハンドル軸6がスタンドとして機能する。
このとき、爪44と爪45の形成位置を略90°ずらせておくことにより、駐車時の状態では爪44を挟持し、走行時の状態では爪45を挟持できる。
このようにすると、構造が簡単で使いやすい上下及び回動規制機構を得ることができる。
【0049】
次に、図11〜13により第3実施例を説明する。
この実施例は、上下・回動規制構造の別案に関するものであり、図11は走行状態及び駐車状態の側面図、図12はブリッジ部材3の上面視図、図13はアジャスタの断面図である。
この実施例では、ブリッジ部材3のハンドル軸支持部20に対して、全長が同径の丸パイプ状のハンドル軸6が支持されるが、ブリッジ部材3に設けられたアジャスタ50により、上下動及び回動が規制されるようになっている。
【0050】
図11はAに走行時状態、Bに駐車時状態を示す。図中に回転断面で示すように、上部と下部のそれぞれに、軸直交方向へ貫通して十字状に交差する係合穴54,55が形成されている。係合穴54,55は同径でハンドル軸6の側面へ軸回り方向にて略90°異なる位置に設けられている。係合穴54は駐車時にアジャスタ50に係合し、係合穴55は走行時にアジャスタ50に係合する。
但し、係合穴54,55は必ずしも十字状に形成される必要はなく、ハンドル軸6を軸直交方向へ貫通せず、側面へ軸回り方向にて略90°異なる位置に設けられた2つの穴であってもよい。
【0051】
図12に示すように、ブリッジ部材3は、割り締め構造のハンドル軸支持部20を有する。但し、本実施例におけるハンドル軸支持部20の割り締め構造は第1実施例と同様構造であるが、ハンドル軸6の上下動及び回動規制をせず、これらはアジャスタ50で行うようになっている。
また、締め付け軸25はハンドル軸通し穴21を横切らず、ハンドル軸通し穴21から離れた位置で割り溝22を横切っている。ロックレバー23を回動させてカム部26により割り溝22の幅を広狭変化させることは第1実施例と同じである。割り溝22の幅を狭くするとハンドル軸通し穴21が縮径してハンドル軸6を拘束し、割り溝22の幅を広げると、ハンドル軸6の拘束を解いて上下動並びに回動可能にする。
【0052】
図13はアジャスタ50の詳細構造を示し、Aは走行時状態におけるハンドル軸6の上下動及び回動規制状態、Bは規制解除状態である。アジャスタ50は指で回すつまみ部51とネジ部52を有し、ネジ部52の軸心部に小径の係合突起53が突出している。係合突起53は係合穴54,55へ係脱できる外径をなす。係合穴54は駐車時状態で係合突起53と係合可能位置へ移動し、係合穴55は走行時状態で係合突起53と係合可能位置へ移動する。
【0053】
ネジ部52はボス20cのネジ穴20dに締結されており、Aに示すように、つまみ部51をネジ部52の締め付け方向へ回すと係合突起53が係合穴54又は55へ係合し、ハンドル軸6の上下動及び回動が規制される。
逆の弛め方向へ回すと、Bに示すように、係合突起53が係合穴54又は55から脱し、規制解除してハンドル軸6の上下動及び回動が自由になる。
【0054】
そこで、走行時には、駐車状態においてロックレバー23を起こして割り締めによるハンドル軸6の拘束を解き、アジャスタ50を弛めることにより、係合突起53を係合穴55から抜き出して規制解除してからハンドル軸6を上方へ移動させ、かつハンドルグリップ7を左右へ開いた状態とし、下側に位置する係合穴55をブリッジ部材3と重なる位置へ移動させて係合突起53に向くように合わせ、再びアジャスタ50のつまみ部51を回してネジ部52を締め付けると、係合突起53が係合穴55へ係合する。その後、ロックレバー23を倒して割り締めによりハンドル軸6を締め付けて拘束する。これにより、ハンドル軸6の上下動及び回動を規制すると図11のAに示す走行時の状態となる。
【0055】
また、駐車するには、ロックレバー23を起こして割り締めによるハンドル軸6の拘束を解き、アジャスタ50のつまみ部51を回してネジ部52を弛めることにより、係合突起53を係合穴55から抜き出して規制解除し、ハンドル軸6を下げてかつ略90°軸回りへ回動させることにより、上側に位置する係合穴54を係合突起53に合わせ、再びアジャスタ50を回してネジ部52を締め付け、係合突起53を係合穴55へ係合させる。その後、ロックレバー23を倒して割り締めによりハンドル軸6を締め付けて拘束する。これにより、ハンドル軸6は上下動及び回動を規制され、グリップ7は図11のBに示す収納状態となり、ハンドル軸6はスタンドとして機能する。
【0056】
次に、図14及び15により第4実施例を説明する。図14は走行状態及び駐車状態の側面図、図15はハンドル部分の正面図である。
この例は、ハンドル剛性を高める構造に関するものであり、第1実施例における上下・回動規制構造に剛性アップ構造を適用している。但し、他の上下・回動規制構造に適用することは任意にできる。また、ハンドル軸6をスタンドとして用いること並びにそのための上下及び回動規制機構を有することは前各実施例と同じである(次の第5実施例も同様)。
本願発明におけるスタンドは、ハンドル軸6を利用するものであり、走行時には左右のハンドル軸6がブリッジ部材3より上方へ長く延出する。したがって、ハンドル剛性を高めることが求められる。本実施例はこの要請を実現するものである。
【0057】
この実施例では、左右のハンドル軸6の上端部6a近傍部間に補強ブリッジ部材60が架け渡されている。
補強ブリッジ部材60は、図15にその丸囲み部に上面視形状を拡大して示すように、上面視で左右方向へ長い棒状の本体部61と、その左右方向両端に設けられたリング部62とが一体に形成され、適宜金属等の剛性材料で構成されている。
【0058】
第2実施例におけるハンドル軸6の上端部6aのうち上部を細径化して第3細径部46としてあり、リング部62は第3細径部46の外径より若干大きく、ハンドル軸6をリング部62に対して回動自在にしている。第3細径部46とそれよりも下方の上端部6aとの間に段差47が形成され、この段差47によりリング部62の下降を阻止している。第3細径部46の上端にはハンドルの基部7bが嵌合され、この基部7bによりリング部62が上方へ抜けることを阻止する抜け止めになっている。
【0059】
したがって、まず第3細径部46に上方からリング部62を被せて貫通させ、さらにその上から基部7bを取付けると、リング部62は第3細径部46よりも太径の上端部6aと基部7bとの間に上下方向を固定される。
このようにすると、走行時にブリッジ部材3より上方へ長く延出した左右のハンドル軸6の上端部間を補強ブリッジ部材60で連結することにより、左右のハンドル軸6を上下の補強ブリッジ部材60とブリッジ部材3で支持して、左右一対で設けられたハンドル30の各上部間を剛性のある補強部材で連結することになるためハンドル剛性を高めることができる。しかも、第3細径部46はリング部62に対して回動自在に支持されているので、スタンド時にはリング部62に対してハンドル軸6を回動させることにより、ハンドルのコンパクト収納を可能にする。
【0060】
図16,17により第5実施例を説明する。図16は走行状態及び駐車状態の側面図、図17はハンドル部分の正面図である。この実施例は、剛性アップ構造としての別案を採用したものであり、上下動・回動規制構造は第1実施例のものである。但し、他の実施例の上下動・回動規制構造に適用できることは勿論である。
この例では、補強ブリッジ部材70が伸縮式となっている点で前実施例と相違がある。
すなわち、補強ブリッジ部材70は右側部材71と左側部材72とに左右分割され、右側部材71は筒状又二股状をなし、ここに左側部材72の内側端部(車体中心CL側の端部)を嵌合し、この嵌合部をアジャスター73で相対移動不能に連結している。
【0061】
アジャスター73は指でまわすつまみ部73aと回転軸部73bを有し、回転軸部73bの軸心部に小径のネジ軸73cが突出している。このネジ軸73cは右側部材71と左側部材72に設けられている通し穴71a及び内側通し穴75に差し込まれ、さらに右側部材71に設けられているネジ穴71bに締結されている。この状態で通し穴71a、内側通し穴75及びネジ穴71bはネジ軸73cの同軸上に位置する。
左側部材72には長さ方向へ間隔をもって内側通し穴75と外側通し穴76が設けられ、走行時状態では、内側通し穴75が通し穴71a及びネジ穴71bと一致し、駐車時状態では外側通し穴76が通し穴71a及びネジ穴71bと一致する。
【0062】
回転軸部73bは右側部材71に設けられたボス74の軸穴74aを軸方向へ摺動し、走行時状態ではネジ軸73cが通し穴71a及び内側通し穴75へ差し込まれ、ネジ穴71bへ締結される。ネジ軸73cは車体中心CL上に位置する。
右側部材71の外側端部はジョイント77により右側のハンドルバー7aへ回動自在に連結され、左側部材72の外側端部はジョイント78により左側のハンドルバー7aへ回動自在に連結される。
【0063】
走行時は、図16に示すように、ネジ軸73cが内側通し穴75と通し穴71a及びネジ穴71bへ通されることで右側部材71と左側部材72が一直線状をなし、相対的に伸縮不能となった伸長状態で固定される。これにより、補強ブリッジ部材70によるハンドル剛性のアップが可能になる。しかもハンドルバー7aは補強ブリッジ部材70に対して回動不能になるからハンドル剛性がより高くなる。
【0064】
一方、駐車時には、まずつまみ部73aを回してネジ軸73cをネジ穴71bから外し、さらに、内側通し穴75及び通し穴71aから抜き出す。これにより、右側部材71と左側部材72が相対的に伸縮自在になる。そこで、ハンドル軸6を軸線回りに回動させて左右のハンドルグリップ7が後方を向いて略平行する収納状態を可能とする。
【0065】
このとき、左右のハンドルバー7aが回動するに伴って、左右のハンドルバー7aの間隔が狭くなる。すると、右側部材71と左側部材72はジョイント77及び78により、ハンドルバー7aに対して回動しながら相対的に収縮し、ハンドルグリップ7の収納状態で外側通し穴76が通し穴71a及びネジ穴71bと一致する。そこで、再び、ネジ軸73cを通し穴71a及び外側通し穴76へ差し込み、ネジ穴71bへ締結すると、補強ブリッジ部材70が収縮状態で伸縮不能に固定される。
【0066】
このように、補強ブリッジ部材70を伸縮自在とすることで、ハンドルバー7aを走行時状態及び駐車時状態(収納状態)のいずれにも確実に固定でき、この状態を維持できる。特に、走行時の状態でも補強ブリッジ部材70は、ハンドルバー7aを回動不能にして強固に支持するから、ハンドルバー7aを回動可能状態に支持する前実施例と比べてハンドル剛性がより一層高くなる。
【0067】
なお、伸縮機構はこの例に限らず、種々可能であり、例えば、右側部材71としてパイプやレール等の使用が可能である。また、内側通し穴75及び外側通し穴76に代えてこれらを結ぶ長溝であってもよい。
さらに、このような伸縮機構に代えて、補強ブリッジ部材を2つ等に折りたたまれる折りたたみ式にしてもよい。
また、スタンドとする場合のハンドル軸6は必ずしも左右をそれぞれ接地させる必要はなく、いずれか片方を接地させることもできる。この場合の車両自立状態は、直立に限らず傾斜状態でもよい。
さらに、接地部35は実施例におけるようなハンドル軸6の軸部と直交して突出するものでなく、単にハンドル軸6の軸端部そのものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
2:ヘッドパイプ、3:ブリッジ部材、4:フロントフォーク、6:ハンドル軸、6b:第1フラット面、6c:第2フラット面、7:ハンドルグリップ、8:油圧配管、20:ハンドル軸支持部、21:ハンドル軸通し穴、22:割り溝、23:ロックレバー、25:締め付け軸、30:ハンドル、35:接地部、40:段差部、41:段差部、44・45:爪、50:アジャスタ、54・55:係合穴、60:補強ブリッジ部材、70:補強ブリッジ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(1)の前端部へブリッジ部材(3)を回動自在に支持し、このブリッジ部材(3)へ前輪(5)を回転自在に支持するフロントフォーク(4)を支持させてフロントフォーク(4)と車体フレーム(1)を操舵自在に連結するとともに、
ブリッジ部材(3)に固定されて操舵用操作部材として機能するハンドル(30)と、駐車時に車両を自立させるスタンドとを備えた鞍乗型車両において、
前記ハンドル(30)は、その一部をなして上下方向へ延出し、前記ブリッジ部材(3)により上下動自在に支持され、所定位置で固定されるハンドル軸(6)を設け、
駐車時に、このハンドル軸(6)を下方へ移動させて下端部を接地させるとともに、前記ブリッジ部材(3)で固定することにより、車両を自立させるスタンドとすることを特徴とする鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項2】
前記ハンドル(30)は、その上部に形成され前記ハンドル軸(6)の上端部(6a)に連結されるグリップ部(7)と、
前記ハンドル軸(6)の下端部に形成される接地部(35)とを有し、
前記接地部(35)は前記ハンドル軸(6)に対し、略直交する方向に延出し、
走行状態で、前記グリップ部(7)は車幅方向に延出し、前記接地部(35)は車両前後方向に延出するとともに、
駐車状態で、前記グリップ部(7)は前記ハンドル軸(6)を中心に車両前後方向を向く位置へ回動し、前記接地部(35)は車幅方向へ向く位置に回動することを特徴とする請求項1に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項3】
前記ハンドル軸(6)は、前記フロントフォーク(4)の前方に配置されるとともに、
側面視にて、前記フロントフォーク(4)と平行に配置されることを特徴とする請求項2に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項4】
前記フロントフォーク(4)は、前記前輪(5)を支持するアウターケース(4b)と、
前記ブリッジ部材(3)に固定されるインナーケース(4a)とを備え、
前記アウターケース(4b)とインナーケース(4a)は摺動可能に形成されるとともに、
駐車時に前記ハンドル軸(6)の下部を支持するハンドル軸支持部材(13)を前記アウターケース(4b)と一体又は別体に形成することを特徴とする請求項3に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項5】
前記ハンドル(30)は左右一対をなしてそれぞれ独立して前記ブリッジ部材(3)へ固定されるとともに、
前記ブリッジ部材(3)の上方で、前記ハンドル(30)の各上部間を連結することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項6】
前記ハンドル(30)に油圧ブレーキ操作子(10)を設けるとともに、
この油圧ブレーキ操作子(10)から延出する油圧配管(8)の長さを調整する配管調整機構(12)を前記車体フレーム(1)の前部側面に設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項1】
車体フレーム(1)の前端部へブリッジ部材(3)を回動自在に支持し、このブリッジ部材(3)へ前輪(5)を回転自在に支持するフロントフォーク(4)を支持させてフロントフォーク(4)と車体フレーム(1)を操舵自在に連結するとともに、
ブリッジ部材(3)に固定されて操舵用操作部材として機能するハンドル(30)と、駐車時に車両を自立させるスタンドとを備えた鞍乗型車両において、
前記ハンドル(30)は、その一部をなして上下方向へ延出し、前記ブリッジ部材(3)により上下動自在に支持され、所定位置で固定されるハンドル軸(6)を設け、
駐車時に、このハンドル軸(6)を下方へ移動させて下端部を接地させるとともに、前記ブリッジ部材(3)で固定することにより、車両を自立させるスタンドとすることを特徴とする鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項2】
前記ハンドル(30)は、その上部に形成され前記ハンドル軸(6)の上端部(6a)に連結されるグリップ部(7)と、
前記ハンドル軸(6)の下端部に形成される接地部(35)とを有し、
前記接地部(35)は前記ハンドル軸(6)に対し、略直交する方向に延出し、
走行状態で、前記グリップ部(7)は車幅方向に延出し、前記接地部(35)は車両前後方向に延出するとともに、
駐車状態で、前記グリップ部(7)は前記ハンドル軸(6)を中心に車両前後方向を向く位置へ回動し、前記接地部(35)は車幅方向へ向く位置に回動することを特徴とする請求項1に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項3】
前記ハンドル軸(6)は、前記フロントフォーク(4)の前方に配置されるとともに、
側面視にて、前記フロントフォーク(4)と平行に配置されることを特徴とする請求項2に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項4】
前記フロントフォーク(4)は、前記前輪(5)を支持するアウターケース(4b)と、
前記ブリッジ部材(3)に固定されるインナーケース(4a)とを備え、
前記アウターケース(4b)とインナーケース(4a)は摺動可能に形成されるとともに、
駐車時に前記ハンドル軸(6)の下部を支持するハンドル軸支持部材(13)を前記アウターケース(4b)と一体又は別体に形成することを特徴とする請求項3に記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項5】
前記ハンドル(30)は左右一対をなしてそれぞれ独立して前記ブリッジ部材(3)へ固定されるとともに、
前記ブリッジ部材(3)の上方で、前記ハンドル(30)の各上部間を連結することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【請求項6】
前記ハンドル(30)に油圧ブレーキ操作子(10)を設けるとともに、
この油圧ブレーキ操作子(10)から延出する油圧配管(8)の長さを調整する配管調整機構(12)を前記車体フレーム(1)の前部側面に設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した鞍乗り型車両のスタンド構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−179981(P2012−179981A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43088(P2011−43088)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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