説明

鞍乗型車両

【課題】鞍乗型車両について、温度上昇が抑えられるセンサの配置を提案する。
【解決手段】鞍乗型車両は、駆動ベルト20Aを介してパワーユニット40の動力が駆動輪に伝達される。パワーユニット40は、ケーシング41と、少なくとも一端が前記ケーシング41の外に配設された出力軸15とを備えている。パワーユニット40は、ケーシング41の外で出力軸15に組み付けられた駆動プーリ10と、駆動輪に動力伝達可能に連結された従動プーリとを備えている。そして、駆動プーリ10と従動プーリとに駆動ベルト20Aが巻き掛けられている。さらに、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20Aが巻き掛けられていない部位10Aに対して、検知部30Aを向けてセンサ30が配置されている。駆動プーリ10の回転速度は当該センサ30によって検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関し、特に、鞍乗型車両(例えば自動二輪車)の車速を検知し得るセンサの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示された鞍乗型車両では、車速を検知するセンサ(車速センサ)は、パワーユニットのトランスミッションの出力軸(ドライブ軸)に配設されたギヤの回転速度を読み取ることができるように取り付けられている。
【特許文献1】特開2002−67741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鞍乗型車両では、センサの配設位置には種々の制約がある。センサの配設位置の制約としては、例えば、外観上センサの配置が見えない、ECUなどに近くに配設できてセンサからの配線が容易、などがある。当該パワーユニットのケーシング内のトランスミッションの周りにはセンサを配置するスペースを確保でき、当然外観上センサを見えないようにでき、また、センサからECUへの配線もそれほど問題にならない。かかる理由から、例えば、車速センサは、パワーユニットのケーシング内で、トランスミッションの出力軸(ドライブ軸)に配設されたギヤの回転速度を読み取ることができるように配設されることが多い。
【0004】
ところで、鞍乗型車両は、配置やスペース上の制約から、エンジン、クラッチ、トランスミッションなどが一体的に構成されたパワーユニットが採用されることがある。当該パワーユニットでは、出力軸はエンジンの近くに配置されることが多い。また、エンジンを冷却する方法には、水冷方式と空冷方式とがある。水冷方式は、エンジンの周りにラジエターで冷やされた冷却水を循環させる方式であり、空冷方式は走行風によってエンジンを冷やす方式である。水冷方式ではラジエターが必要になるなど、スペースの制約や、重量増、コスト増になるため、空冷方式のパワーユニットが採用される場合がある。一般的に、空冷方式は、水冷方式に比べて、エンジンを冷却する性能が劣る。このため、空冷方式が採用される場合には、水冷方式が採用される場合に比べて、パワーユニットのトランスミッション周りは運転時に温度が上昇し易い。パワーユニットの構造などによっては、トランスミッション周りは、電子部品である車速センサを配置するのに適しない程度に温度が上昇する状況も生じうる。
【0005】
また、本発明者は、駆動ベルトを介してパワーユニットの動力が駆動輪に伝達される、いわゆるベルトドライブ機構を有する鞍乗型車両の開発を進めており、パワーユニットに空冷方式を採用することも検討している。本発明は、かかるベルトドライブ機構を有する鞍乗型車両について、パワーユニットに空冷方式が採用された場合でも温度上昇が抑えられるとともに、スペースの確保にも問題がない、全く新しい車速センサなどのセンサの配置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鞍乗型車両は、駆動ベルトを介してパワーユニットの動力が駆動輪に伝達される。パワーユニットは、ケーシングと、少なくとも一端が前記ケーシングの外に配設された出力軸とを備えている。さらに、駆動プーリが、ケーシングの外で出力軸に組み付けられ、従動プーリが駆動輪に動力伝達可能に連結され、駆動ベルトが駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられている。そして、駆動プーリの外周のうち駆動ベルトが巻き掛けられていない部位に対して、検知部を向けてセンサが配置されている。鞍乗型車両は、このセンサによって駆動プーリの回転速度が検知される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パワーユニットのケーシングの外で出力軸に組み付けられた駆動プーリの外周のうち駆動ベルトが巻き掛けられていない部位に対して、検知部を向けてセンサが配置されている。このため、当該センサが配置される周りは、パワーユニットのケーシングの外であり、センサの温度が上昇するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者は、鞍乗型車両においては、運転時のパワーユニットのケーシング内の温度上昇を考慮して、パワーユニットのケーシング外に車速センサを配置することを考えた。この場合、例えば、駆動輪の車軸周りに配置することが考えられる。しかし、駆動輪の車軸周りは、外観上、車速センサが目立つことや、ECUなどへの配線が複雑になるなど、単純にパワーユニットの外にセンサを配設するにしても、種々の解決すべき問題が発生する場合が多い。このため、パワーユニットのケーシング外に車速センサを配置するにしても、種々の工夫が必要である。
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、通常の乗車姿勢で乗車している運転者から見た方向に従う。また、図中において、適宜、鞍乗型車両の前側を「Fr」、後側を「Rr」、左側を「L」、右側を「R」、上側を「U」、下側を「D」でそれぞれ示す。
【0010】
本実施形態に係る鞍乗型車両100は、図1および図2に示すように、駆動ベルト20を介してパワーユニット40の動力が駆動輪13に伝達される鞍乗型車両100である。パワーユニット40は、ケーシング41と、少なくとも一端がケーシング41の外に配設された出力軸とを備えている。駆動ベルト20は、パワーユニット40のケーシング41の外で出力軸15に組み付けられた駆動プーリ10と、駆動輪13に動力伝達可能に連結された従動プーリ11とに巻き掛けられている。そして、駆動プーリ10の外周のうち、駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対して検知部30Aを向けてセンサ30が配置されている。駆動プーリ10の回転速度(回転数)は、当該センサ30によって検知される。この鞍乗型車両100では、センサ30は、パワーユニット40のケーシング41の外に配設されているので、センサ30に不具合が生じる程度までに、パワーユニット40の温度上昇に伴ってセンサ30の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る鞍乗型車両100は、車体フレーム60と、前輪12と、後輪13と、燃料タンク21と、シート22と、パワーユニット40とを備えている。
【0012】
車体フレーム60は、図1に示すように、ヘッドパイプに挿通されたステアリングシャフトの上部に、ハンドル64が取り付けられ、ステアリングシャフトの下部に、フロントフォーク65が取り付けられている。前輪12の車軸は、フロントフォーク65の下端部に装着されている。
【0013】
車体フレーム60のヘッドパイプから後方には、燃料タンク21と、シート22と、パワーユニット40とが配設されている。この鞍乗型車両100では、シート22の前側に燃料タンク21が配設され、燃料タンク21の下にパワーユニット40が配設されている。
【0014】
この鞍乗型車両100では、車体フレーム60の後部には、スイングアーム23と、リアクッションユニット24とが取り付けられている。スイングアーム23は、車体フレーム60に対して揺動可能に取り付けられている。リアクッションユニット24は、シート22下の車体フレーム60に一端が取り付けられ、他端がスイングアーム23に連結されている。スイングアーム23は、当該リアクッションユニット24によって支持されている。後輪13(駆動輪)の車軸はスイングアーム23の後端部に装着されている。
【0015】
この鞍乗型車両100では、図2に示すように、パワーユニット40には、エンジン14などの駆動源が含まれており、エンジン14、クラッチ18、トランスミッション17が一体的に構成されている。また、パワーユニット40は、これらエンジン14、クラッチ18、トランスミッション17を覆うケーシング41を備えている。この実施形態では、パワーユニット40のケーシング41は、主としてエンジン14のクランクシャフト16を覆う第1ケーシング41aと、主としてクラッチ18を覆う第2ケーシング41b(クラッチケース)と、主としてトランスミッション17を覆う第3ケーシング41c(ミッションケース)とが組み合わされている。
【0016】
このパワーユニット40は、ケーシング41と、少なくとも一端がケーシング41の外に配設された出力軸15とを備えている。この実施形態では、パワーユニット40は、エンジン14のクランクシャフト16と、トランスミッション17のメインシャフト19および出力軸15(ドライブ軸)を車幅方向に向けて、車体フレーム60に配設されている。そして、出力軸15の左側の端部がパワーユニット40のケーシング41の外に突出している。
【0017】
さらに、パワーユニット40は、図1および図2に示すように、ケーシング41の外で出力軸15に組み付けられた駆動プーリ10と、駆動輪13に動力伝達可能に連結された従動プーリ11とを備えている。そして、駆動プーリ10と従動プーリ11とに駆動ベルト20が巻き掛けられている。また、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対して、検知部30Aを向けてセンサ30が配置されている。駆動プーリ10の回転速度は当該センサ30によって検知される。
【0018】
具体的には、この鞍乗型車両100は、図1に示すように、駆動ベルト20を介してパワーユニット40の動力が駆動輪(後輪13)に伝達される、いわゆるベルトドライブ機構を有している。ベルトドライブ機構は、駆動プーリ10と、従動プーリ11と、駆動ベルト20とを備えている。
【0019】
この実施形態では、駆動プーリ10は、図1および図2に示すように、ケーシング41の外に突出した出力軸15の左側の端部に装着されている。この実施形態では、駆動プーリ10は、歯付きプーリであり、いわゆる平歯車で構成されている。この駆動プーリ10は、円盤状のプーリの外周に、駆動ベルト20に噛み合う歯が軸方向に平行に形成されている。従動プーリ11は、駆動輪13(後輪)に動力伝達可能に連結されている。この実施形態では、従動プーリ11は、歯付きプーリであり、平歯車で構成されており、後輪13の車軸の左側に装着されている。駆動ベルト20は、駆動プーリ10と従動プーリ11とに巻き掛けられている。この実施形態では、駆動ベルト20は、駆動プーリ10と従動プーリ11とに噛み合う歯付きベルトで構成されており、この実施形態では、鞍乗型車両100の左側に配設されている。かかる構成によって、パワーユニット40の動力は、出力軸15から駆動プーリ10、駆動ベルト20、従動プーリ11を順に通じて、駆動輪(後輪13)に伝達される。なお、この実施形態では、駆動ベルト20は樹脂(例えば、NBR樹脂(アクリルニトリル・ブタジエンゴム)やナイロンなど)で構成されており、駆動プーリ10と従動プーリ11は金属(例えば、合金鋼鋼材)で作成されている。このため、長年の使用においても、駆動プーリ10と従動プーリ11はほとんど摩耗しない。
【0020】
次に、この実施形態では、鞍乗型車両100の車速センサ30は、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対して検知部30Aを向けて配置されている。
【0021】
詳しくは、この実施形態では、駆動プーリ10は、歯付きプーリであり、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aは、駆動ベルト20が噛み合っておらず、駆動プーリ10の歯が露出している。また、車速センサ30は、図2に示すように、検知部30Aと、出力部30Bとを備えている。検知部30Aは、非接触にて駆動プーリ10の回転に伴って通過する駆動プーリ10の歯の数を検知する部位である。この実施形態では、検知部30Aは、駆動プーリ10の回転に伴って通過する駆動プーリ10の歯の数を電気的信号として検出することができ、出力部30Bは、当該電気信号を出力する部位である。
【0022】
この実施形態では、車速センサ30は、図3および図4に示すように、駆動プーリ10と従動プーリ11の上部に掛け渡された上側の軌道を通る駆動ベルト20Aよりも下側に配設されている。そして、車速センサ30は、上方から見たときに当該駆動ベルト20Aに重なっている。また、この実施形態では、車速センサ30は、前記上側の軌道を通る駆動ベルト20Aの車幅方向外側の縁201よりも車幅方向内側に配設されている。さらに、この実施形態では、車速センサ30は、図5に示すように、駆動プーリ10の回転軸c10と従動プーリ11の回転軸c11とを含む平面wよりも上に配設されている。
【0023】
また、この実施形態では、車速センサ30は、図2に示すように、パワーユニット40のケーシング41に取り付けられたブラケット50によって支持されており、駆動プーリ10に対して上記の位置に固定的に配設されている。
【0024】
また、この実施形態では、鞍乗型車両100は、図1および図2に示すように、駆動プーリ10の車幅方向外側を覆うカバー70を備えている。当該カバー70は、駆動プーリ10よりも少し後方に延びており、車速センサ30の車幅方向外側を覆っている。
【0025】
この鞍乗型車両100は、図1および図2に示すように、パワーユニット40のケーシング41の外で出力軸15に組み付けられた駆動プーリ10の外周のうち、駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対して、検知部30Aを向けてセンサ30が配置されている。
【0026】
当該センサ30が配置されている位置は、たとえ空冷方式のパワーユニット40が採用されたとしても、パワーユニット40のケーシング41内に比べて格段に温度上昇が生じにくい。このため、当該位置に車速センサ30を配置した場合には、車速センサ30に不具合が生じる程度までに車速センサ30の温度が上昇することはない。また、当該車速センサ30が配置される位置は、駆動ベルト20の軌道の内側にあり、そのような位置に既存の部品が配置されることもほとんどない。このため当該位置に、車速センサ30を配置しても、鞍乗型車両100の部品配置スペース上、それに伴って新たに何らかの不都合が生じることもない。また、鞍乗型車両100のECU(図示省略)は、例えば、図1に示すように、車体フレーム60に設置される。この実施形態では、車速センサ30が配置される位置は、パワーユニット40にも比較的近い。車速センサ30からECUへの配線は、例えば、パワーユニット40のケーシング41に沿って敷設でき、車速センサ30からECUへの配線についても不具合は生じない。
【0027】
また、この実施形態では、車速センサ30は、図3および図4に示すように、駆動プーリ10と従動プーリ11の上部に掛け渡された上側の軌道を通る駆動ベルト20Aよりも下側に配設されている。そして、上方から見たときに当該駆動ベルト20Aに重なっている。鞍乗型車両100は、斜め上方から見られることが多く、このように車速センサ30を配設することによって、車速センサ30は、上側の軌道を通る駆動ベルト20Aに隠れ、外観上、見えにくくなる。
【0028】
また、この実施形態では、車速センサ30は、上側の軌道を通る駆動ベルト20Aの車幅方向外側の縁201よりも車幅方向内側に配設されている。さらに、この実施形態では、車速センサ30は、図5に示すように、駆動プーリ10の回転軸c10と従動プーリ11の回転軸c11とを含む平面wよりも上に配設されている。これにより、カバー70がない状態においても、鞍乗型車両100を斜め上方から見た場合に、車速センサ30は、上側の軌道を通る駆動ベルト20Aにより隠れた状態であり、外観上、より見えにくくなる。
【0029】
また、この実施形態では、鞍乗型車両100は、図1および図2に示すように、駆動プーリ10の車幅方向外側を覆うカバー70を備えており、当該カバー70は、駆動プーリ10よりも少し後方に延びており、車速センサ30の車幅方向外側を覆っている。ベルトドライブ機構が採用される鞍乗型車両100では、駆動ベルト20や駆動プーリ10などの回転部品を保護するため、駆動プーリ10にカバー70が設けられることが多い。車速センサ30を当該カバー70で覆うことによって、部品点数を増やすことなく、外観上、より確実に、車速センサ30を見えなくすることができる。
【0030】
さらに、この実施形態では、図2に示すように、パワーユニット40のケーシング41にブラケット50が取り付けられており、車速センサ30は、当該ブラケット50によって支持されている。これによって、駆動プーリ10に対する車速センサ30の位置ずれなどを防止し、車速センサ30の検知精度を高精度に確保することができる。なお、車速センサ30を支持するブラケットは、パワーユニット40のケーシング41に取り付けられることを例示したが、当該ブラケットは、鞍乗型車両100の車体フレーム60に取り付けてもよい。この場合でも、駆動プーリ10に対する車速センサ30の位置ずれなどを防止し、車速センサ30の検知精度を高精度に確保することができる。また、この実施形態では、駆動プーリ10と従動プーリ11は金属製の歯付きプーリであり、駆動ベルト20は樹脂製のベルトである。このため、長年の使用においても、駆動プーリ10と従動プーリ11はほとんど摩耗しない。車速センサ30は、当該駆動プーリ10の回転に伴って通過する駆動プーリ10の歯の数をカウントするが、長年の使用においても、駆動プーリ10がほとんど摩耗しないので、経年的にも安定して使用できる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を説明したが、本発明に係る鞍乗型車両は、上述した実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。
【0032】
例えば、センサ30は、車速センサ30としているが、駆動プーリ10の回転速度を検知するものであり、必ずしも車速センサ30として利用されるセンサである必要はない。
また、センサ30が、駆動プーリ10と従動プーリ11の上部に掛け渡された上側の軌道を通る駆動ベルト20Aよりも下側に配設されており、上方から見たときに当該駆動ベルト20Aに完全に重なっている形態を例示した。本発明においては、これに限らず、図6に示すように、上方から見たときにセンサ30の一部が、当該上側の軌道を通る駆動ベルト20Aからはみ出ていてもよい。図6に示す例では、上方から見たときに、センサ30の一部(図示例では、基端部)が、上側の軌道を通る駆動ベルト20Aの車幅方向内側の縁202よりも車幅方向内側にはみ出ている。
【0033】
例えば、図7に示すように、車体フレーム601にブラケット501を設け、かかるブラケット501によってセンサ30を支持してもよい。図7に示す例では、車体フレーム601の一部が、パワーユニット40のケーシング41の後側に配設されている。そして、車体フレーム601の当該部位にブラケット501が取り付けられている。さらに、ブラケット501は、車体フレーム601の当該部位から駆動ベルト20に当たらないように、駆動ベルト20の周回軌道の内側に配設されている。そして、ブラケット501の先端部501aは、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対向するように延在している。そして、当該ブラケット501の先端部501aに検知部30Aを向けて、センサ30が取り付けられている。この場合、センサ30が、車体フレーム601に取り付けられたブラケット501によって支持されているので、駆動プーリ10に対してセンサ30の位置がずれるのが防止される。これによって、センサ30の検知(上述した実施形態では、駆動プーリ10の回転速度の検知)を高精度に確保することができる。
【0034】
また、例えば、図8に示すように、車体フレーム601に対して揺動可能に支持される支持部23aを有するスイングアーム23を備えている場合は、当該スイングアーム23にブラケット502を設けてもよい。この場合、図1に示すように、スイングアーム23の後端部には、従動プーリ11が取り付けられており、駆動ベルト20は、スイングアーム23の揺動に応じて揺動する。
【0035】
スイングアーム23の支持部23aは、この実施形態では、車体フレーム601に取り付けられた、揺動軸23bに揺動可能に装着されたボス23a1で構成されている。そして、揺動軸23bに装着され、止め部材23cで揺動軸23bから抜けないように止められている。かかる支持部23aの位置は、図1中、×印で示す位置にあり、スイングアーム23は、かかる位置を揺動支点として揺動する。この実施形態では、かかる支持部23aは、図8に示すように、パワーユニット40のケーシング41の後側に配設されている。
【0036】
センサ30を取り付けるブラケット502は、図8に示すように、スイングアーム23に取り付けてもよい。この場合、ブラケット502は、スイングアーム23の揺動によって揺動する駆動ベルト20の内側(駆動ベルト20の周回軌道の内側)に配置するとよい。これによって、スイングアーム23の揺動によって揺動する駆動ベルト20に、ブラケット502が当たるのを防止できる。
【0037】
また、この場合、図8に示すように、ブラケット502は、スイングアーム23の揺動を支持する支持部23aの近傍部に配置されているとよい。この場合、スイングアーム23の揺動によってブラケット502が揺れ動くが、ブラケット502の揺動を小さく抑えることができ、ブラケット502が駆動ベルト20に当たるのを防止し易い構成にできる。すなわち、ここで、「近傍部」とは、スイングアーム23の揺動を支持する支持部23aの近い範囲であって、ブラケット502は、ブラケット502が駆動ベルト20に当たるのを防止し得る程度にブラケット502の揺動が小さく抑えられる領域である。
【0038】
図8に示す実施形態では、ブラケット502の先端部502aは、駆動プーリ10の外周のうち駆動ベルト20が巻き掛けられていない部位10Aに対向するように延在している。そして、当該ブラケット502の先端部502aに検知部30Aを向けて、センサ30が取り付けられている。この場合でも、駆動プーリ10に対してセンサ30の検知部30Aを向けて配設することができ、センサ30の検知精度を高精度に確保することができる。また、ブラケット502は、スイングアーム23の揺動を支持する支持部23aの近傍部において、スイングアーム23の揺動に対して駆動ベルト20に当たらないように取り付けられている。具体的には、この実施形態では、ブラケット502の基端部502bが、スイングアーム23の揺動を支持する支持部23aに近い部位に取り付けられている。ブラケット502の基端部502bを、スイングアーム23の揺動支点23aに近い部位に取り付けることによって、ブラケット502の揺れを小さく抑えることができる。これによって、スイングアーム23の揺動によって、ブラケット502が駆動ベルト20に当たるのが防止されている。また、図示は省略するが、ブラケット502は、スイングアーム23の揺動支点23aに配設してもよい。この場合は、ブラケット502の揺れをより確実に抑えることができ、駆動プーリ10に対するセンサ30の位置ずれなどを防止し、センサ30の検知精度を高精度に確保することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、駆動プーリおよび従動プーリとして、歯付きプーリを例示し、駆動ベルトに歯付きベルトを例示したが、駆動プーリ、従動プーリ、駆動ベルトはそれぞれ歯付きの部材に限定されない。駆動プーリ、従動プーリ、駆動ベルトは、それぞれ動力を適切に伝達できる構成であればよく、歯の付いていない部材でもよい。この場合、センサ30は、非接触にて駆動プーリ10の回転速度(回転数)を検知できればよく、例えば、駆動プーリ10に非検知部を取り付け、駆動プーリ10の回転に伴って当該非検知部の通過をカウントする構成でもよい。具体的には、駆動プーリ10に非検知部としての磁石を取り付け、センサ30は、駆動プーリ10の回転に伴って当該磁石の通過を電気的にカウントする構成でもよい。従って、駆動ベルトについては、Vベルトでもよく、駆動プーリ、従動プーリは、当該ベルトに対応した種々のプーリを採用することができる。
【0040】
また、本発明は、駆動ベルトを介してパワーユニットの動力が駆動輪に伝達される種々の鞍乗型車両に適用できる。ここで、「鞍乗型車両」には、種々の自動二輪車、例えば、スクータ型の自動二輪車、原動機付自転車(モーターバイク)が含まれる。また、「鞍乗型車両」は、二輪車に限定されず、三輪以上、例えば、前輪および後輪の少なくとも一方を二輪以上にしてもよい。また、自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルなども、ここでいう鞍乗型車両に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のパワーユニットの構造を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の駆動プーリを示す斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のセンサ(車速センサ)の配置を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のセンサ(車速センサ)の配置を示す図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る鞍乗型車両のセンサ(車速センサ)の配置を示す図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る鞍乗型車両のセンサ(車速センサ)の取付構造を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る鞍乗型車両のセンサ(車速センサ)の取付構造を示す図。
【符号の説明】
【0042】
10 駆動プーリ
10A 駆動プーリに駆動ベルトが巻き掛けられていない部位(噛み合っていない部位)11 従動プーリ
12 前輪
13 後輪(駆動輪)
14 エンジン
15 出力軸
16 クランクシャフト
17 トランスミッション
18 クラッチ
19 メインシャフト
20 駆動ベルト
20A 上側の軌道を通る駆動ベルト
21 燃料タンク
22 シート
23 スイングアーム
23a スイングアームの揺動を支持する支持部
23a1 ボス
23b 揺動軸
23c 止め部材
24 リアクッションユニット
30 車速センサ(センサ)
30A 検知部
30B 出力部
40 パワーユニット
41 ケーシング
50、501、502 ブラケット
60、601 車体フレーム
64 ハンドル
65 フロントフォーク
70 カバー
100 鞍乗型車両
201 駆動ベルトの車幅方向外側の縁
202 駆動ベルトの車幅方向内側の縁
c10 動プーリの回転軸
c11 従動プーリの回転軸
w 駆動プーリの回転軸と従動プーリの回転軸とを含む平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ベルトを介してパワーユニットの動力が駆動輪に伝達される鞍乗型車両であって、
前記パワーユニットは、
ケーシングと;
少なくとも一端が前記ケーシングの外に配設された出力軸と;
前記ケーシングの外で前記出力軸に組み付けられた駆動プーリと;
前記駆動輪に動力伝達可能に連結された従動プーリと;
前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻き掛けられた駆動ベルトと;
前記駆動プーリの外周のうち前記駆動ベルトが巻き掛けられていない部位に対して、検知部を向けて配置されたセンサと;
を備え、
前記センサによって前記駆動プーリの回転速度が検知される、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記駆動プーリの回転軸と前記従動プーリの回転軸とは、それぞれ前記鞍乗型車両の車幅方向に向けて配設されており、
前記センサの少なくとも一部は、前記駆動プーリと前記従動プーリの上部に掛け渡された上側の軌道を通る前記駆動ベルトよりも下側にあり、上方から見たときに当該駆動ベルトに重なっている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記センサは、前記上側の軌道を通る駆動ベルトの車幅方向外側の縁よりも車幅方向内側に配設されている、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記センサは、前記駆動プーリの回転軸と前記従動プーリの回転軸とを含む平面よりも上に配設されている、
請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
さらに、前記パワーユニットの前記ケーシングに取り付けられたブラケットを備え、
前記センサは、前記ブラケットによって支持されている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
さらに、車体フレームと;
前記車体フレームに取り付けられたブラケットと;
を備え、
前記センサは、前記ブラケットによって支持されている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
さらに、車体フレームと;
前記車体フレームに対して揺動可能に支持される支持部を有するスイングアームと;
前記スイングアームに設けられたブラケットと;
を備え、
前記従動プーリは前記スイングアームの後端部に装着されており、
前記センサは、前記ブラケットによって支持されている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記ブラケットは、前記スイングアームの揺動を支持する支持部の近傍部に配置されている、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記ブラケットは、前記スイングアームの揺動によって揺動する前記駆動ベルトの内側に配置されている、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
さらに、前記駆動プーリの車幅方向外側を覆うカバーを備え、
前記カバーは、前記センサの車幅方向外側を覆っている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−30578(P2010−30578A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262655(P2008−262655)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)