説明

音制御装置、車両、ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体

【課題】エンジン車においてシフトチェンジの際に発生するエンジンの音をリアルに表現することが可能な、電動機によって走行可能な車両に備える音制御装置、電動機によって走行可能な車両、ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体を提供すること。
【解決手段】車両の走行情報と仮想エンジンのギア比とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算し、エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御し、ギア比を変化させる場合には、ギア比の変化に応じてエンジン回転数を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音制御装置、車両、ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン(燃料機関)を動力として走行する車両のエンジン音を模した仮想エンジン音(模擬エンジン音)を、発生させる音制御装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)しかし、従来の音制御装置は、エンジンを動力源として走行する車両(以下、「エンジン車」とする)においてシフトチェンジの際に発生するエンジンの音をリアルに表現することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−264332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エンジン車においてシフトチェンジの際に発生するエンジンの音をリアルに表現することが可能な音制御装置、車両、ゲームシステム、プログラム及び情報記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明は、電動機によって走行可能な車両に備える音制御装置であって、電動機によって走行可能な車両に備える音制御装置であって、前記車両の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部とを含み、前記エンジンシミュレーション部が、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、前記音制御部が、前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行う音制御装置に関する。
【0006】
また本発明は、上記各部として音制御装置を機能させるプログラムに関係する。また本発明は、音制御装置で読み取り可能な情報記憶媒体であって、上記各部として音制御装置を機能させるプログラムを記憶(記録)した情報記憶媒体に関係する。また、本発明は、上記各部を含む車両に関係する。
【0007】
本発明は、エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うので、実際の車両構成部材の動作によって発生する音を模したリアルな効果音を表現することができる。
【0008】
(2)また本発明の音制御装置、プログラム、情報記憶媒体及び車両は、前記音制御部が、前記仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて効果音を決定し、決定された効果音を付加する処理を行うようにしてもよい。
【0009】
本発明は、仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて効果音を決定するので、実際の運転を想定した現実に近いリアルな効果音を表現することができる。
【0010】
(3)また本発明の音制御装置、プログラム、情報記憶媒体及び車両は、前記音制御部が、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じて前記効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに前記効果音を付加する処理を行うようにしてもよい。
【0011】
本発明は、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じて効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに効果音を付加する処理ので、効果音が発するタイミングが自然であり、ドライバーはより現実に近いエンジン車の音を体感することができる。
【0012】
(4)また本発明の音制御装置、プログラム、情報記憶媒体及び車両は、前記音制御部が、前記仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて、前記効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに前記効果音を付加する処理を行うようにしてもよい。
【0013】
本発明は、仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて、効果音を付加するタイミングを決定するので、実際の運転を想定した現実に近いリアルなタイミングで効果音を発することができる。
【0014】
(5)本発明は、仮想空間において移動体を移動させるゲームシステムであって、前記移動体の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部と、前記仮想エンジン音を出力する音出力部とを含み、前記エンジンシミュレーション部が、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、前記音制御部が、前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うゲームシステムに関する。
【0015】
また本発明は、上記各部としてゲームシステムを機能させるプログラムに関係する。また本発明は、ゲームシステムで読み取り可能な情報記憶媒体であって、上記各部として音制御装置を機能させるプログラムを記憶(記録)した情報記憶媒体に関係する。また、本発明は、上記各部を含む車両に関係する。
【0016】
本発明は、エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うので、実際の車両構成部材の動作によって発生する音を模したリアルな効果音を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の音制御装置の機能ブロック図。
【図2】本実施形態の車両の説明図。
【図3】本実施形態の基本波形の説明図。
【図4】本実施形態の仮想エンジンの説明図。
【図5】本実施形態のフィルタリング処理の説明図。
【図6】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図7】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図8】図8(A)〜(C)はギア比の切り替えを説明するための図。
【図9】本実施形態の仮想運転の説明図。
【図10】図10(A)(B)は、本実施形態の仮想運転データの説明図。
【図11】本実施形態の仮想運転の説明図。
【図12】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図13】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図14】本実施形態のフローチャート図。
【図15】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図16】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図17】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図18】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図19】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図20】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図21】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【図22】本実施形態のフローチャート図。
【図23】図23(A)(B)(C)は、仮想エンジン音を制御する手法を説明するための図。
【図24】車両の位置を説明するための図。
【図25】図23(A)(B)(C)は、仮想エンジン音を制御する手法を説明するための図。
【図26】図23(A)(B)(C)は、仮想エンジン音を制御する手法を説明するための図。
【図27】本実施形態の音制御装置の機能ブロック図の一例。
【図28】本実施形態の音制御装置の機能ブロック図の一例。
【図29】本実施形態のフローチャート図。
【図30】本実施形態のフローチャート図。
【図31】本実施形態のフローチャート図。
【図32】本実施形態のエンジン回転数の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1.構成
図1に本実施形態の音制御装置(車両接近通報装置、エンジン模擬音発生装置)の機能ブロック図の例を示す。なお、本実施形態の端末は図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0020】
本実施形態の処理部10は、所与の情報に基づいて、音を制御する処理を行う。所与の情報とは、アクセルペダル61の踏み込み量(アクセル開度)を示すアクセル信号、ブレーキペダル62の踏み込み量(ブレーキ開度)を示すブレーキ信号、速度センサ63によって検出される車両の速度(電動機によって走行可能な車両の速度、車速)、位置検出センサ64(GPS:Global Positioning System)によって検出される車両の位置、緊急情報検出センサ65によって検出される緊急情報、交通情報受信装置66(カーナビゲーションシステム)によって受信した交通情報、時刻などである。また、所与の情報は、音に関するデータ(音波、基本波形データ、基本波形データを合成した波形データ)なども含む。
【0021】
また、本実施形態の処理部10は、エンジンシミュレーション部20、音制御部30、設定部40、受け付け部50を含む。
【0022】
エンジンシミュレーション部20は、仮想エンジンのエンジン回転数(1分間あたりの仮想エンジンの回転数(クランクシャフトの回転数))を演算する処理や、仮想エンジンのギア比を変化させる処理、仮想運転データを選択する処理、仮想速度を設定する処理などを行う。
【0023】
特に、本実施形態のエンジンシミュレーション部20は、車両の速度が所定条件を満たす場合に、車両の速度及びアクセル信号の少なくとも一方を含む走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から車両の速度とは異なる仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替える制御を行う。例えば、エンジンシミュレーション部20は、走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられた場合には、車両の速度よりも高速な仮想速度(車両の速度値よりも高い値である仮想速度)に基づいてエンジン回転数を演算する。また、エンジンシミュレーション部20は、走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられた場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられた時点からの時間経過に応じて仮想速度を高速にしてもよい。また、エンジンシミュレーション部20が、仮想速度を所定制限仮想速度以下に設定するようにしてもよい。
【0024】
また、エンジンシミュレーション部20は、車両の速度が所定速度以上である場合に、走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。また、エンジンシミュレーション部20は、車両の速度が所定速度以上である状態が継続した場合に、走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。
【0025】
また、エンジンシミュレーション部20は、車両の速度が減速した場合には、車両の速度の減速度合いに応じて仮想速度を減速させ、減速させた仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0026】
また、エンジンシミュレーション部20は、車両の速度が第2の所定速度以下になった場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。
【0027】
また、エンジンシミュレーション部20は、緊急情報検出センサ65が緊急情報を検出した場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるように制御してもよい。
【0028】
また、エンジンシミュレーション部20は、車両の速度が所定制限速度を超えた場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるように制御してもよい。
【0029】
また、エンジンシミュレーション部は、車両の速度及びアクセル信号の少なくとも一方を含む走行情報に基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行い、車両の速度が所定条件を満たす場合には、走行情報にかかわらず、エンジン回転数を上昇させる処理を行うようにしてもよい。かかる場合には、エンジン回転数に上限を設けるようにしてもよい。
【0030】
なお、車両の走行情報とは、車両の速度(速度)、アクセルペダルの踏み込み量を示すアクセル信号(アクセル開度)の少なくとも一方を含む情報である。車両の走行情報は、ブレーキの踏み込み量を示すブレーキ信号(ブレーキ開度)、加速度情報、前進或いは後退などの走行方向を含んでいてもよい。
【0031】
エンジンシミュレーション部20が、車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理と、車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理とを行うようにしてもよい。
【0032】
エンジンシミュレーション部20が、車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行う場合であって車両の速度が所定条件を満たす場合には、車両の速度に基づいて車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいて車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理に切り替え、車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行う場合は車両の速度が所定条件を満たす場合でも車両の速度に基づいて車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0033】
また、エンジンシミュレーション部20は、仮想車両構成部材の動作をシミュレートする処理(シミュレーション演算)を行う。例えば、エンジンシミュレーション部20は、仮想エンジン、仮想シフトレバー、仮想クラッチペダル、仮想アクセルペダルなどの仮想車両構成部材の動作をシミュレートする。特に、本実施形態では、仮想シフトレバーをシフトさせ、仮想クラッチペダル、仮想アクセルペダルなどの踏み込み動作をさせるシミュレーションを行い、仮想エンジン側の歯車と、仮想駆動輪側の歯車の組み合わせを変更するシミュレーション処理を行う(ギア比を変化する処理、ギア比を切り換える処理と同義である)。また、本実施形態では、仮想運転データに基づいて、仮想車両構成部材の動作をシミュレートする処理を行う。
【0034】
そして、エンジンシミュレーション部20は、車両の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するようにしてもよい。例えば、エンジンシミュレーション部20は、ギア比を変化させる場合には、ギア比の変化に応じてエンジン回転数を変化させるようにしてもよい。かかる場合には、エンジンシミュレーション部20は、車両の走行情報に基づいて、ギア比を変化させるか否かを判断するようにしてもよい。
【0035】
また、エンジンシミュレーション部20は、ギア比を変化させる場合には、当該ギア比の変化に対応する仮想運転データと車両の走行情報とに基づいてエンジン回転数を演算するようにしてもよい。例えば、エンジンシミュレーション部20は、ギア比を変化させる場合には、複数の仮想運転データのうちいずれかの仮想運転データに基づいてエンジン回転数を演算するようにしてもよい。また、エンジンシミュレーション部20は、複数の仮想運転データの中から、選択された仮想運転データと車両の走行情報とに基づいてエンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0036】
また、エンジンシミュレーション部20は、エンジン回転制御部21、ギア比制御部22、仮想運転制御部23、仮想速度制御部24とを含む。
【0037】
エンジン回転制御部21は、所与の情報に基づいて、エンジン回転数を制御する処理を行う。特に、本実施形態のエンジン回転制御部21は、車両の走行情報(アクセル信号、速度など)に基づいて、エンジン回転数を演算する処理を行う。例えば、車両の速度が増加するにしたがって、エンジン回転数を増加させるようにエンジン回転数を求めてもよい。
【0038】
ギア比制御部22は、仮想エンジンのギア比(変速比)を設定したり、ギア比を変化させる(切り替える)処理を行う。つまり、ギア比制御部22は、エンジン車で行うエンジン回転数をかえる変速を行うトランスミッション(変速機、ギアボックス)をシミュレーションする。つまり、本実施形態のギア比制御部22は、仮想的に、エンジン側の歯車と、駆動輪側の歯車の直径の比率(歯車比)をギア比とし、ギア比の設定、変更などの制御を行う。例えば、エンジン側の歯車と、駆動輪側の歯車の直径の比が4対1の場合は「1速」、3対1は「2速」、2対1は「3速」、1対1は「4速」としている。
【0039】
なお、ギア比制御部22は、無段階にギア比を変えるように制御してもよい。また、ギア比制御部22は、車両の速度が所定条件を満たす場合に、車両の走行情報ではなく、仮想的な速度に基づいてギア比を変化させる制御を行うようにしてもよい。
【0040】
仮想運転制御部23は、仮想エンジンのギア比を変化させる(シフトチェンジを行う)際に、仮想運転データ記憶部74に記憶されている複数の仮想運転データのうちいずれかの仮想運転データを選択する処理を行う。なお、エンジン回転制御部21が、選択された仮想運転データと車両の走行情報とに基づいてエンジン回転数を演算する処理を行う。
【0041】
仮想速度制御部24は、仮想速度の速度値を制御する処理を行う。例えば、仮想速度制御部24は、車両の速度が加速する場合には、車両の速度が加速度合いに基づいて、仮想速度の速度値を上げるようにしてもよい。また、仮想速度制御部24は、車両の速度が減速する場合には、車両の速度の減速度合いに基づいて、仮想速度の速度値を下げるようにしてもよい。
【0042】
音制御部30は、仮想エンジン音を制御する。例えば、音制御部30が行う仮想エンジン音の制御とは、仮想エンジン音を生成する処理(基本波形を合成することによって仮想エンジン音を生成する処理)や、仮想エンジン音の音量(音強、音圧)、音色(音質、波形)、音程(音高、周波数)の少なくとも1つを変更する処理等である。
【0043】
特に、本実施形態の音制御部30は、車内(車両の中、車室内)に発生させるための車内用仮想エンジン音と車外(車両の外、車室外)に発生させるための車外用仮想エンジン音とを生成し、所与の情報(アクセル信号、速度などの車両の走行情報、位置検出センサ64によって検出された車両の位置、時刻、緊急情報など)に基づいて、互いに異ならせて変更する制御を行う。つまり、所与の情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音量、音色、音程(音高)の少なくとも1つを互いに異ならせて変更する制御を行うようにする。
【0044】
また、音制御部30は、仮想エンジンの動作をシミュレーションして仮想エンジン音を生成し、当該仮想エンジン音に基づいて車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを制御する。例えば、音制御部30は、爆発音に対応する基本波形データ(所与の情報の一例)を含む複数の波形構成データに基づいて波形データを生成し、当該波形データに基づいて車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを制御する。
【0045】
音制御部30は、車両の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う。例としては、車両の速度が加速し時速80キロメートルになった場合に、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。また、車両の速度が減速し時速20キロメートルになった場合に、車内用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行う。
【0046】
また、音制御部30は、位置検出センサ64によって検出された車両の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。かかる場合には、交通情報受信装置66によって受信された交通情報と車両の位置とに基づいて、車両の位置が一般道、住宅街、高速道路のいずれの区域(いずれの種類の道路)にいるかを判断し、車両が属する区域に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを変更する制御を行うようにしてもよい。例えば、車両が一般道から高速道路に進入した場合に、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。
【0047】
また、音制御部30は、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。時刻は車両が属する国の時刻とすればよい。例えば、午前10時になった場合、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。
【0048】
また、音制御部30は、緊急情報検出センサ65によって緊急情報を検出された場合には、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0049】
また、音制御部30は、エンジンシミュレーション部20によって演算されたエンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を生成する処理を行うようにしてもよい。また、音制御部30は、車内用仮想エンジンのエンジン回転数に基づいて車内に発生させるための車内用仮想エンジン音を制御し、車外用仮想エンジンのエンジン回転数に基づいて車外に発生させるための車外用仮想エンジン音を制御するようにしてもよい。
【0050】
音制御部30は、エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果(例えば、ギア比の変化)に応じた効果音を付加する処理を行う。
【0051】
また、音制御部30は、仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて効果音を決定し、決定された効果音を付加する処理を行う。
【0052】
また、音制御部30は、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じて効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに効果音を付加する処理を行う。
【0053】
また、音制御部30は、仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて、効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに効果音を付加する処理を行う。
【0054】
また、音制御部30は、波形合成部31、音量制御部32、音色制御部33、音程制御部34を含む。
【0055】
波形合成部31は、エンジンシミュレーション部20によって演算されたエンジン回転数に基づいて基本波形(基本波形データ、音波)を合成する処理を行う。本実施形態の波形合成部31は、エンジン回転数と仮想エンジンの各気筒の点火タイミングに基づいて、基本波形を合成する時間間隔を求める。そして、求めた時間間隔に基づいて、基本波形(エンジンの混合気に火が点火される際の爆発音の音波)を合成する処理を行う。例えば、1気筒あたりの時間間隔が1/25秒であるとすると、1気筒あたり1/25秒周期で基本波形を合成する。なお、仮想エンジンが多気筒である場合には、各気筒において点火タイミングをずらし、エンジン回転数と各気筒の各点火タイミングにと基づいて、基本波形を合成する。
【0056】
また、波形合成部31は、爆発音に対応する基本波形(基本波形データ)を含む複数の波形構成データに基づいて波形データを生成(合成)する。例えば、波形構成データとは、波形データの構成要素となるデータであり、例えば、爆発音に対応する基本波形、点火タイミング、仮想エンジンの種類(気筒数、形状)、車両の種類(二輪車、四輪車、マフラーの性能等)である。本実施形態の波形合成部31は、爆発音に対応する基本波形データ、点火タイミング、仮想エンジンの種類、車両の種類を含む複数の波形構成データのうち、少なくとも基本波形を含む波形構成データに基づいて波形データを生成(合成)する。
【0057】
音量制御部32は、波形合成部31によって合成された合成波形データの音量(合成波形データの振幅の大きさ)を制御する処理を行う。
【0058】
音色制御部33は、合成波形データの音色を制御する処理を行う。例えば、音色制御部33は、波形合成部31によって合成された合成波形データにランダムノイズを付加する処理を行う。また、音色制御部33は、特定の周波数成分を追加、削除する処理を行うフィルタリング処理を行うようにしてもよい。
【0059】
音程制御部34は、合成波形データの基本周波数を変更すことによって音程(音程の高低)を制御する処理を行う。
【0060】
設定部40は、音制御データ設定部41と、仮想運転データ設定部42とを含む。
【0061】
音制御部データ設定部41は、仮想エンジン音を生成する際に用いられる基本波形を設定する処理を行う。例えば、音制御部データ記憶部73に、エンジンの種類や、車種に応じて複数の基本波形を予め格納しておき、複数の基本波形の中からいずれか1つの基本波形を設定する処理を行う。波形合成部31では、この設定された基本波形を合成する処理を行う。かかる場合、操作部95の操作情報に基づいて、基本波形の選択を受け付けて設定する処理を行うようにしてもよい。
【0062】
また、音制御部データ設定部41は、ノイズを付加するか否かの設定、合成波形データの音量を設定する処理、合成波形データの音色を設定する処理、合成波形データの音程を設定する処理を行うようにしてもよい。かかる場合、操作部95の操作情報に基づいて、設定する処理を行うようにしてもよい。
【0063】
仮想運転データ設定部42は、仮想エンジン音を生成する際に用いられる仮想運転データを設定する処理を行う。例えば、仮想運転データ記憶部74に、ドライバーの種類に応じて複数の仮想運転データを予め格納しておき、複数の仮想運転データの中からいずれか1つの仮想運転データを設定する処理を行う。
【0064】
受け付け部50は、操作部95からの操作情報を受け付ける処理を行う。例えば、受け付け部50は、操作部からの操作情報に基づいて、複数の仮想運転データのうちいずれかの仮想運転データの選択を受け付ける。
【0065】
アクセルペダル61(スロットルペダル)は、車両に備えられるアクセルペダル(アクセルボタン)である。本実施形態では、アクセルペダル61の踏み込み量(アクセル開度、スロットル開度)に基づいて、処理部10が処理を行う。
【0066】
ブレーキペダル62は、車両に備えられるブレーキペダルである。本実施形態では、ブレーキペダル62の踏み込み量に基づいて、処理部10が処理を行う。
【0067】
位置検出センサ64は、車両の位置を検出する。位置検出センサ64は、いわゆる全地球測位システム(Global Positioning System)であり、地球を周回する衛星からの電波を使って地球上における車両の位置を検出する。また、位置検出センサ64は、自律航法機能を有していてもよいし、ジャイロセンサーを備え方向を検出できるようにしてもよい。
【0068】
緊急情報検出センサ65は、緊急情報を検出する。例えば、緊急情報センサ65は、先進安全装置などによって緊急情報を検出するものである。例えば、緊急情報検出センサ65は、ブレーキアシスト機能としてもよい。つまり、ブレーキアシスト機能は、一時停止の注意喚起情報を緊急情報として検出するものである。また、緊急情報検出センサ65ドライバーモニターによって、ドライバーの居眠り運転を緊急情報として検出するものでもよい。また、緊急情報検出センサ65は、暗闇で走行する場合に、歩行者を確認することができる暗視装置(ナイトビジョン、ノクトビジョン)によって、歩行者を緊急情報として検出するものでもよい。また、緊急情報検出センサ65は、車線逸脱警報システムによって、車両が車線を逸脱したことを、緊急情報として検出するものでもよい。
【0069】
交通情報受信装置66は、車両の周辺の交通情報を受信する。例えば、交通情報受信装置66は、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System)であり、道路の渋滞情報や工事箇所などを受信する。
【0070】
デジタル/アナログ変換機(D/Aコンバータ)90は、デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換する処理を行う。そして、アナログ電気信号に変換された音信号は、アンプ91によって増幅され、音出力部92(スピーカ)から出力される。
【0071】
2.仮想エンジン音を生成する手法
本実施形態の音制御装置は、図2に示すように、電動機(モーター)によって走行可能な車両である電気自動車に搭載される装置であり、エンジン(燃料機関)を動力源として走行するエンジン車から発せられるエンジン音を模した仮想エンジン音を生成して、音出力部(車内用音出力部、車外用音出力部)に仮想エンジン音を出力する装置である。
【0072】
つまり、本実施形態の音制御装置は、電気自動車が走行する場合に、仮想エンジン音を車内(車室内)、車外に出力させることによって、エンジン車が走行しているかのような音を表現できるようにしている。
【0073】
本実施形態の電気自動車は、充電池を電源とするプラグインEV(EVは、Electric Vehicleの略)、燃料電池を電源とする燃料電池自動車、太陽電池を電源とするソーラーカーを含む。また、本実施形態の電気自動車は、ハイブリッド車も含む。つまり、本実施形態の電気自動車は、エンジン回転停止状態、かつ、モーターのみによる走行が可能なハイブリッド車も含む。
【0074】
以下に、仮想エンジン音を生成する処理についてより詳しく説明する。本実施形態の音制御装置は、エンジンの動作をシミュレーションして仮想エンジン音を生成するものであるので、まずエンジン車について簡単に説明する。
【0075】
例えば、代表的な4ストロークエンジンのエンジン車は、シリンダーとピストンとによって構成される一気筒において、「吸気」、「圧縮」、「燃焼・膨張」、「排気」という4つの過程を経て動力を生み出している。つまり、4ストロークエンジンは、混合気を1回点火する度にピストンが上下2往復することによって、クランクシャフトが2回転する。また、4輪車のエンジンは、複数の気筒が使われる多気筒エンジンを用い、滑らかな走行を実現するために各気筒の点火タイミングをずらしている。
【0076】
本実施形態では、このようなエンジンの動力をシミュレーションして仮想エンジン音を生成している。つまり、アクセル開度を示すアクセル信号及び電気自動車の速度(車速)の少なくとも一方を含む走行情報に基づいて仮想エンジンのエンジン回転数(1分間あたりのエンジンの回転数(クランクシャフトの回転数))を演算する。例えば、本実施形態では、アクセル開度が変化している場合はアクセル開度に基づいて、エンジン回転数を演算し、アクセル開度が変化していない場合は、電気自動車の速度に基づいて、エンジン回転数を演算するようにしてもよい。また、電気自動車の速度のみに基づいて、エンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0077】
例えば、電気自動車のアクセル開度が0%のときはエンジン回転数を0rpm(rpmは1分間あたりの回転数)に演算し、アクセル開度が100%になるにつれて、エンジン回転数を4000rpmになるようにエンジン回転数を上げるようにしてもよい。つまり、電気自動車のアクセル開度とエンジン回転数とが比例の関係になるようにエンジン回転数を演算してもよい。
【0078】
また、例えば、図5に示すように、電気自動車の速度が時速0キロメートルのときはエンジン回転数を0rpmにし、電気自動車の速度が時速100キロメートルのときはエンジン回転数を4000rpmになるようにエンジン回転数を上げるようにしてもよい。つまり、電気自動車の速度値とエンジン回転数とが比例の関係になるようにエンジン回転数を演算してもよい。また、電気自動車の速度が一定速度を維持している際は、エンジン回転数の値を維持するようにする。また、電気自動車が減速している場合には、電気自動車が減速するにつれてエンジン回転数を下げるようにする。
【0079】
なお、電気自動車が停止している場合は、エンジン回転数を最小値に設定する。最小値は0にしてもよいし、エンジン車のアイドリング時のように、最小値を0より大きな数値(例えば600rpm)に設定してもよい。
【0080】
そして、本実施形態では、図3に示すようなエンジンの爆発音である基本波形(基本波形データ)を含む複数の波形構成データに基づいて波形データを生成(合成)する。例えば、波形構成データとは、波形データの構成要素となるデータであり、例えば、爆発音に対応する基本波形、点火タイミング、仮想エンジンの種類(気筒数、形状)、車両の種類(二輪車、四輪車、マフラーの性能等)である。
【0081】
例えば、本実施形態では、図3に示すようなエンジンの爆発音である基本波形を、エンジン回転数に基づいて算出される時間間隔で合成する処理を行う。つまり、基本波形は、1回の点火(爆発)に対応する波形である。例えば、エンジン回転数が3000rpmであり、エンジンが2回転する際に1回の点火が行われる場合には、1気筒において1/25秒間隔で点火されることになる。つまり、1気筒において1/25秒間隔で基本波形を合成する処理を行う。
【0082】
本実施形態では、音制御データ記憶部73に基本波形を予め記憶する。例えば、車種やエンジンの種類に対応する複数の基本波形を音制御データ記憶部73に記憶し、いずれか1つの基本波形を選択し、選択した基本波形を合成するようにしてもよい。また、基本波形は、エンジン車のエンジン音を録音したものでもよい。
【0083】
また、操作者が基本波形の波形を設定できるようにしてもよい。つまり、操作部の操作情報に基づいて基本波形を設定するようにしてもよい。また、音制御データ記憶部73に記憶されている複数の基本波形の中から操作部からの操作情報に基づいて1つの基本波形の選択を受け付け、受け付けた基本波形を合成するようにしてもよい。このようにすれば、運転者の好みの仮想エンジン音を生成することができる。
【0084】
また、本実施形態は、複数の気筒それぞれの点火タイミングを参照し、気筒間の点火タイミングをずらしながら、複数の気筒それぞれの点火タイミングにおいて基本波形を合成する処理を行う。
【0085】
例えば、図4は、ID=1〜4の4つの気筒を有効に設定した例が示されており、4つの各気筒の点火タイミングを0〜720の値域で設定する。つまり、4ストロークエンジンでは、1回の点火でクランクシャフトが2回転するので、0°〜720°の回転角がある。したがって、これをシミュレーションするために、各気筒それぞれが0〜720の値域で点火タイミングを設定している。図4の例では、ID=1の気筒、ID=2の気筒、ID=3の気筒、ID=4の気筒の順で繰り返し点火タイミングが到来する。本実施形態では、各気筒の各点火タイミングで基本波形を合成することによって、多気筒仮想エンジンの仮想エンジン音を生成することができる。
【0086】
このようにして、基本波形が合成された仮想エンジン音は時系列にサウンドバッファ72に先入れ先出し方式によって格納し、格納処理と並行して、サウンドバッファ72から仮想エンジン音を読み出して、D/Aコンバータ90によってアナログ信号に変換して、アンプ91で増幅させて音出力部92に出力させる。
【0087】
以上のように、本実施形態では、仮想エンジンの動作をシミュレーションして、仮想エンジン音を生成することによって、実際のエンジンの動作によって出力されるエンジン音に似たリアルな仮想エンジン音を生成することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、基本波形を合成した仮想エンジン音について、音量、音色(音質)、音程(音高)を制御するようにしてもよい。
【0089】
例えば、基本波形を合成した仮想エンジン音について音量(波形の振幅)を制御する場合には、電気自動車のアクセル信号に基づいて音量を制御するようにしてもよい。通常、ガソリン車はアクセルペダルをより多く踏み込むとエンジンの音量が増大する傾向にある。したがって、例えば、電気自動車のアクセル開度が大きくなるにつれて音量を大きくするように制御し、アクセル開度が小さくなるにつれて音量を小さくするように制御する。例えば、アクセル開度の大きさが10%のときは音量を65dB(dBはデジベルの略)にし、アクセル開度の大きさが100%のときは音量を70dBに設定する。
【0090】
また、基本波形を合成した仮想エンジン音について音色を制御する場合には、基本波形を合成した仮想エンジン音にランダムノイズを加える。つまり、ランダムノイズを加えることによって、機械的に生成したものではない自然な仮想エンジン音を生成することができる。
【0091】
また、本実施形態では、基本波形を合成した仮想エンジン音にフィルタを使って特定周波数成分を抽出することによって音色を制御するようにしてもよい。例えば、不快周波数成分を除去するフィルタを用いて基本波形を合成した仮想エンジン音をフィルタリングし、仮想エンジン音から不快周波数成分を除いた音を新たな仮想エンジン音としてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、FIRフィルタ(有限インパルス応答)を用いて基本波形を合成した仮想エンジン音をフィルタリングしてもよい。かかる場合には、FIRフィルタによって形成されているフィルタ係数を変更することによって、仮想エンジン音の周波数特性を変化させるように制御してもよい。図6は、仮想エンジン音の波形をフィルタに通す場合のフィルタ周波数特性(フィルタ特性)を示す。例えば、操作部95からの操作情報に基づいて、フィルタ周波数特性のA〜Gの各周波数帯域の信号レベルを設定する。そして、設定されたフィルタ周波数特性を音制御データ記憶部73に記憶させ、FIRフィルタによってフィルタリングを行う際は、音制御データ記憶部73に記憶されたフィルタ周波数特性に基づいてフィルタリングを行う。
【0093】
また、本実施形態では、基本波形を合成した仮想エンジン音の音程(ピッチ)を制御するようにしてもよい。例えば、人間が聴くことができる所定の周波数帯域になるように仮想エンジン音の基本周波数を制御するようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態では、マフラー(排気音を制御する装置)の有無を設定できるようにしてもよい。つまり、操作部の操作情報に基づいて、マフラーの有無を設定する。また、音実施形態では、複数のマフラーを選択できるようにしてもよい。つまり、操作部の操作情報に基づいて、複数のマフラーの中から1つのマフラーの選択を受け付け、選択を受け付けたマフラーに基づいて、仮想エンジン音の音を制御する。例えば、「消音マフラー」、「改造マフラー」、「競技用マフラー」など複数用意し、各マフラーにおいて、音量、音色、音程の制御を異ならせるようにしてもよい。
【0095】
例えば、「消音マフラー」有りで設定された場合には、仮想エンジン音の音量を下げるように制御する。また、「消音マフラー」有りで設定された場合には、仮想エンジン音について、マフラー用フィルタを用いてフィルタリングを行い、フィルタリングされた音を、新たな仮想エンジン音としてもよい。また、「消音マフラー」有りに設定された場合には、仮想エンジン音の音程をマフラー用の音程に設定するように制御してもよい。
【0096】
3.シフトチェンジ
通常、エンジン車ではシフトチェンジ(ギアチェンジ)する際に特有のエンジン音が生じる。本実施形態では、エンジン車がシフトチェンジする際に発生するエンジン音をリアルに表現するために、仮想エンジンにおいてギア比を変化させるシフトチェンジを行い、エンジン回転数を演算するシミュレーションを行っている。言い換えると、仮想エンジン側の歯車と、仮想駆動輪側の歯車の組み合わせを変更するシミュレーション処理を行う。
【0097】
本実施形態では、電気自動車のアクセル踏み込み量や、電気自動車の速度に基づいて仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行ってもよいが、仮想エンジン音は非常に単調なものになってしまう。また、従来の聞きなれたエンジン車の変速ショックのある音を聞くことができなくなってしまう。
【0098】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、仮想エンジンのギア比を変化させるシフトチェンジを行い、ギア比の変化に応じてエンジン回転数を演算している。そして、演算されたエンジン回転数に基づいて仮想エンジン音を生成する。
【0099】
通常、マニュアルトランスミッションのエンジン車(MT車)では、ドライバーがクラッチペダルを踏み、シフトレバーを操作することによってトランスミッション(変速機、ギアボックス)のギア比を切り替えるギアチェンジ(シフトチェンジ)を行う。本実施形態では、このようなMT車のエンジンの動きを模擬している。つまり、本実施形態では、仮想エンジンのギア比を切り替えて、仮想エンジンのエンジン回転速度を変速させるシミュレーション処理を行っている。つまり、エンジン回転速度を速くするシフトアップ(増速)や、仮想エンジンのエンジン回転速度を遅くするシフトダウン(減速)を行うシミュレーション処理を行っている。
【0100】
このようにすれば、電気自動車を運転する運転者は、まるでエンジン車のシフトチェンジを行っているかのような音を聞くことができるので、あたかもエンジン車を運転しているかのような臨場感を味わうことができる。また、車外にいる歩行者も、従来から聞き慣れている仮想エンジン音を聞くことができるので、電気自動車が歩行者に接近している状態でも、歩行者は電気自動車の存在をすぐに察知することができる。
【0101】
なお、本実施形態のギア比は、仮想的に、エンジン側の歯車と、駆動輪側の歯車の直径の比率(歯車比)としているが、言い換えると、仮想エンジン音を変化させるための段階(レベル)を示している。なお、ギア比の変化は、1速、2速、3速、4速、5速、6速のように、段階的に変化してもよいし、無段階に変化してもよい。
【0102】
本実施形態において、仮想エンジンにおいてギア比を変化させてエンジン回転数を演算する処理について、より詳細に説明する。図8(A)〜8(C)は、ギア比の切り替えと、電気自動車の速度との関係を示すシフトチェンジテーブルを示す。
【0103】
本実施形態では、シフトチェンジテーブルを参照し、電気自動車の速度に基づいて、ギア比を切り替えるか否かを判断する。なお、本実施形態では、複数のシフトチェンジテーブルを用意し、いずれか1つのシフトチェンジテーブルを参照し、電気自動車の速度に基づいて、ギア比を切り替えるか否かを判断するようにしてもよい。
【0104】
例えば、図8(A)を用いて電気自動車が加速している際のギア比を切り替えるギアチェンジ(シフトアップ)について説明する。まず、電気自動車が発車した時に、ギア比を1速に設定する。そして、電気自動車が加速し、電気自動車の速度が時速10キロメートルに達すると、1速から2速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速20キロメートルに達すると、2速から3速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速40キロメートルに達すると、3速から4速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速60キロメートルに達すると4速から5速にギア比を切り替える処理を行い、時速80キロメートルの場合に達すると、5速から6速にギア比を切り替える処理を行う。つまり、本実施形態では、電気自動車が加速している場合であって、電気自動車の速度が所定の速度に達すると、仮想エンジンのギア比を切り替える処理(シフトアップ処理)を行う。
【0105】
そして、図8(A)を用いて電気自動車が減速している際にギア比を切り替える処理(シフトダウン処理)について説明する。まず、電気自動車が6速で時速80キロメートルよりも大きな速度値で走行している場合、ギア比を6速に設定する。そして、電気自動車が減速し、電気自動車の速度が時速80キロメートルに達すると、6速から5速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速60キロメートルに達すると、5速から4速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速40キロメートルに達すると、4速から3速にギア比を切り替える処理を行う。そして、電気自動車の速度が時速20キロメートルに達すると3速から2速にギア比を切り替える処理を行い、時速10キロメートルの場合に達すると、2速から1速にギア比を切り替える処理を行う。つまり、本実施形態では、電気自動車が減速している場合であって、電気自動車の速度が所定の速度に達すると、仮想エンジンのギア比を切り替える処理(シフトダウン処理)を行う。
【0106】
ところで、マニュアルトランスミッションのエンジン車(MT車)を運転する初級ドライバーは、クラッチペダルの踏み込むタイミング、アクセルペダルをはなすタイミングが悪く、エンジン回転数が極端に変動し、いわゆるエンジン回転数の変速ショックが大きい。一方、上級ドライバーになると、変速ショックが小さく、滑らかな走行になる傾向にある。
【0107】
このように、実際のMT車でシフトチェンジを行う際のエンジン回転数の変化態様は様々である。そこで、本実施形態では、仮想的にドライバーが運転する情報を、仮想運転データとして定義し、仮想運転データに基づいて効果音を決定し、決定された効果音を仮想エンジン音に付加する処理を行う。また、本実施形態では、仮想運転データに基づいてギア比を変化させると判断した時点を基準に、効果音を仮想エンジン音に付加するタイミングを決定する処理を行う。また、本実施形態では、仮想運転データと電気自動車のアクセル信号、速度の少なくとも一方を含む走行情報とに基づいて、ギア比の変化に応じて仮想エンジンのエンジン回転数を演算する。
【0108】
図9は、仮想運転データAの概念図を示す。例えば、図9に示すように、仮想運転データAは、t1時点で1速から2速にギア比を切り替えると判断されると、t1時点で、仮想クラッチペダルを踏み込み、t2時点で仮想アクセルペダルを離しはじめ、t3時点で仮想シフトレバーのギア比を1速から2速に切り替え、t4時点で仮想アクセルペダルを踏み込み、t5時点で仮想クラッチペダルを離すという一連の命令である。本実施形態では、このような仮想運転データに基づいて効果音を決定し、仮想運転データに基づいて効果音を仮想エンジン音に付加するタイミングを決定する。そして、電気自動車の走行情報と、仮想運転データAに示される命令とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算する。
【0109】
例えば、図10(A)に示すように、初級ドライバー、中級ドライバー、上級ドライバーに対応する仮想運転データA、B、Cが予め定義されているとすると、仮想運転データAに基づく効果音A、仮想運転データBに基づく効果音B、仮想運転データCに基づく効果音Cを予め記憶部に定義する。例えば、効果音Aは、初級ドライバーがギアチェンジを行う際に生じる音とし、効果音Bは、中級ドライバーがギアチェンジを行う際に生じる音、効果音Cは、上級ドライバーがギアチェンジを行う際に生じる音とする。
【0110】
また、本実施形態では、ギア比を切り替えると判断された時点を基準に、効果音を付加するタイミングを決定する処理を行う。例えば、図9に示すように、仮想運転データAに基づいて、効果音Aを付加するタイミングを決定する場合について説明すると、ギア比を切り替えると判断された時点t1から所定期間後のt3時点に効果音Aを付加すると決定する。つまり、仮想運転データAにおいて、仮想シフトレバーのギア比を1速から2速に切り替える命令時点(t3時点)に効果音Aを付加する処理を行う。
【0111】
また、本実施形態では、図10(B)に示すように、t1時点で1速から2速にギア比を切り替えると判断されると、例えば仮想運転データAに基づいて、エンジン回転数を減少させて増加させる変化特性に基づいてエンジン回転数を求める。
【0112】
例えば、仮想運転データAに基づいてギア比を1速から2速に切り替える処理を行う場合、仮想運転データAに含まれる仮想シフトレバーによってギア比が切り替えられる命令があるまで、仮想クラッチペダルを踏み込む命令、仮想アクセルペダルを離す命令に基づいて、電気自動車の走行情報に基づいて求められるエンジン回転数から所与の値を減算する。例えば、時間経過に応じて、電気自動車の走行情報に基づいて求められるエンジン回転数から減算される値を大きくする。そして、仮想運転データAに含まれる仮想シフトレバーによってギア比が切り替えられる命令があると、仮想アクセルペダルを踏む命令、仮想クラッチペダルを離す命令に基づいて、時間経過に応じてエンジン回転数を増加させて、電気自動車の走行情報に基づいて求められるエンジン回転数に戻すように制御する。
【0113】
特に、本実施形態では、仮想運転データ記憶部74に、複数の仮想運転データを記憶し、複数の仮想運転データの中のいずれか1つの仮想運転データに基づいて、ギア比を切り替える処理を行う。例えば、図10(A)に示すように、初級ドライバー、中級ドライバー、上級ドライバーに対応する仮想運転データA、B、Cが予め定義されているとすると、図10(B)に示すように、仮想運転データAでは、曲線ACに示すように、エンジン回転数が変化し、仮想運転データBでは、曲線BCに示すように、エンジン回転数が変化し、仮想運転データCでは、曲線CCに示すように、エンジン回転数が変化する。
【0114】
なお、本実施形態では、複数の仮想運転データA〜Cの中からランダムに1つの仮想運転データを選択し、選択された仮想運転データに基づいて、効果音、その効果音を付加するタイミング、仮想エンジンのエンジン回転数を演算してもよいし、走行前に運転者が選択した仮想運転データに基づいて、効果音、その効果音を付加するタイミング、仮想エンジンのエンジン回転数を演算してもよい。このようにすれば、運転者の好みのドライバーで効果音、仮想エンジン音を聞くことができる。
【0115】
なお、本実施形態では、仮想運転データと電気自動車の走行情報とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行う。
【0116】
また、本実施形態は、ギア比を切り替える場合に、選択中のギア比と次のギア比とに基づいて、エンジン回転数が変化する大きさを決めてもよい。例えば、1速から2速にギア比を切り替える場合は、エンジン回転数を1000rpmの差分で大きく変化させ、2速から3速にギア比を切り替える場合は、エンジン回転数を900rpmの差分で変化させるようにしてもよい。通常のエンジン車では、変速段数を上げるにしたがって、エンジン回転数の差分が少なくなる傾向にあるので、本実施形態でもギア比の変速段階が上がるにつれて、エンジン回転数が変化する差分を少なくなるように制御してもよい。このようにすれば、実際のエンジン車で生じるようなエンジン回転数の変化をリアルに再現することができる。
【0117】
なお、本実施形態では、減速する際も同様に仮想運転データと電気自動車の走行情報に基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を変化させる処理を行う。
【0118】
図11は、電気自動車が減速する際に用いる仮想運転データDの概念図を示す。例えば、図11に示すように、仮想運転データDは、t10時点で3速から2速にギア比を切り替えると判断されると、t10時点で仮想クラッチペダルが踏み込まれ、t11時点で仮想シフトレバーにおいてギア比を3速から2速に切り替え、t12時点で仮想クラッチペダルを離すという一連の命令である。
【0119】
本実施形態では、減速時においても、仮想運転データに基づいて減速時のシフトダウンの効果音を決定し、仮想運転データに基づいて効果音を仮想エンジン音に付加するタイミングを決定する処理を行う。
【0120】
例えば、図11に示すように、仮想運転データDに基づいて、仮想運転データDに対応する効果音Dを決定する。ギア比を切り替えると判断された時点を基準に、効果音Dを付加するタイミングを決定する処理を行う。より具体的には、ギア比を切り替えると判断された時点t10から所定期間後のt11時点に効果音を付加する。つまり、仮想運転データDにおいて、仮想シフトレバーのギア比を3速から2速に切り替える命令時点(t11時点)に効果音Dを付加する処理を行う。
【0121】
また、本実施形態では、電気自動車の走行情報とこの仮想運転データDとに基づいてエンジン回転数を演算する。例えば、図12に示すようにエンジン回転数が変化する。
【0122】
つまり、本実施形態では、t10時点で3速から2速にギア比を切り替えると判断されると、仮想運転データDに基づいて、エンジン回転数を増加させて減少させる変化特性に基づいてエンジン回転数を求める。
【0123】
例えば、仮想運転データDに基づいてギア比を3速から2速に切り替える処理を行う場合、仮想運転データDに含まれる仮想シフトレバーによってギア比が切り替えられる命令があるまで、仮想クラッチペダルを踏み込む命令に基づいて、電気自動車の走行情報に基づいて求められるエンジン回転数に所与の値を加算する。そして、仮想運転データDに含まれる仮想シフトレバーによってギア比が切り替えられる命令があると、仮想クラッチペダルを離す命令に基づいて、エンジン回転数を減少させる。そして、電気自動車の走行情報に基づいて求められるエンジン回転数に戻すように制御する。
【0124】
なお、本実施形態では、図13に示すように、電気自動車の速度が減速する場合には、速度が減速するにつれて、エンジン回転数を下げるように演算してもよい。つまり、ギア比を変化させることなく、電気自動車の走行情報に基づいて、エンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0125】
最後に、図14を用いて、シフトチェンジをシミュレーションする際の仮想エンジン音を生成する処理の流れを説明する。まず、ギア比を変化させるか否かを判断する(ステップS1)。次に、ギア比を変化させると判断された場合には(ステップS1のY)ギア比の変化に対応する仮想運転データと電気自動車の速度とに基づいてエンジン回転数を演算する(ステップS2)。一方、ギア比を変化させないと判断された場合には(ステップS1のN)、電気自動車の速度に基づいて、エンジン回転数を演算する(ステップS3)。そして、エンジン回転数に基づいて仮想エンジン音を生成する(ステップS4)。以上で処理が終了する。
【0126】
4.仮想的な速度に基づく仮想エンジン音生成手法
本実施形態では、電気自動車の速度及びアクセル信号の少なくとも一方を含む走行情報に基づいてエンジン回転数を演算しているが、電気自動車の速度が所定条件を満たす場合に、電気自動車の速度及びアクセル信号の少なくとも一方を含む走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から、電気自動車の速度とは異なる仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるように制御している。このようにすれば、実際の走行状況とは異なる走行状況を楽しむことができる。
【0127】
本実施形態では、電気自動車の速度が所定速度以上である場合に、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替える。そして、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられた場合には、電気自動車の速度よりも高速な仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理を行う。
【0128】
例えば、図15に示すように、電気自動車の及びアクセル信号を含む走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する場合、時速80キロメートルに制限された道路では、時速80キロメートルよりも速いスピード感を味わうことができない。つまり、t5時点からt6時点の間は、電気自動車の速度、アクセル信号も一定値が保たれるので、仮想エンジンのエンジン回転数は一定値が保たれることになり、結果として、仮想エンジン音で、時速80キロ以上のスピード感を表現することができない。
【0129】
そこで、本実施形態では、図16に示すように、所定速度を時速80キロメートルとし、電気自動車の速度が時速80キロメートル以上になると、時速80キロメートルよりも大きな値をとる仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理を行うように制御する。
【0130】
つまり、本実施形態では、t5時点で時速80キロメートルになると、t5時点以後、電気自動車が時速80キロメートル以上である場合には、時速80キロメートルよりも大きな値をとる仮想速度に基づいて、エンジン回転数を演算する処理を行う。
【0131】
例えば、t6時点では、時速180キロメートルで走行している際の仮想エンジン音を生成する。このようにすれば、運転手は、実際は時速80キロメートルで走行していたとしても、時速180キロメートルで走行しているような気分になり、スピード感を味わうことができる運転を楽しむことができる。
【0132】
また、本実施形態では、図16に示すように、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられた場合には、時間経過に応じて仮想速度を高速にするようにしている。
【0133】
つまり、本実施形態では、図16に示すように、t5時点で仮想速度を時速80キロメートルに設定し、時間が経過するにしたがって徐々に仮想速度値を上げる(加速する)処理を行う。言い換えると、電気自動車の速度が時速80キロメートルになった場合に、仮想エンジンのエンジン回転数を上昇させる。
【0134】
このようにすれば、一定速度を維持する単調な運転ではなく、スピード感のある運転を味わうことができる。なお、本実施形態では所定制限仮想速度を設定し、仮想速度が所定制限仮想速度まで達したらその速度を維持するように制御してもよい。つまり、所定制限仮想速度が時速320キロメートルであるとすると、仮想速度が時間経過に応じて加速し、時速320キロメートルに到達した場合には、仮想速度を時速320キロメートルに維持する処理を行う。或いは、仮想エンジンのエンジン回転数に制限を設けてもよい。例えば、エンジン回転数の最高値を6000rpmに制限するようにし、エンジン回転数が6000rpmに達したら意、6000rpmを維持するように制御してもよい。
【0135】
また、本実施形態では、図17に示すように、電気自動車の速度が所定速度(時速80キロメートル)以上である状態が継続した場合に、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。例えば、t5時点で電気自動車の速度が時速80キロメートルになった場合には、t5時点ではなく、t5時点から所与の期間経過した後(例えば10秒間経過後)のQ2時点で、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替える。そして、仮想速度に切り替えられたQ2時点から、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する。このようにすれば、例えば、時速80キロメートル以上を維持して走行する高速道路での走行状況時において運転者を楽しませるような仮想エンジン音を提供することができる。
【0136】
図18は、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する場合において、シフトチェンジを行う場合の例を示す。つまり、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する場合においても、単純にエンジン回転数を上げるだけでは面白みがない。また、特殊なエンジン車では、時速80キロメートルから加速して走行する場合、さらにシフトアップを行い、ギア比を切り替えることもある。
【0137】
そこで、本実施形態では、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する場合においても、ギア比を切り替えるシフトチェンジを行う。例えば、シフトチェンジテーブルでは、時速0キロメートルから所定制限仮想速度(例えば、時速320キロメートル)までの間で、ギア比を切り替える速度を予め決めておく。そして、シフトチェンジテーブルを参照し、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する場合においても、その仮想速度が、シフトチェンジを行う速度に達した場合、ギア比を次の段階に切り替える処理を行う。
【0138】
より具体的に説明すると、図18に示すように、速度が時速80キロメートルに達したt5時点において、ギア比を5速から6速に切り替える処理を行う。そして、仮想速度が時速140キロメートルに達したQ1時点で、ギア比を6速から7速に切り替えると判断されると、仮想速度に基づいて、ギア比を6速から7速に切り替える処理を行う。このようにすれば、仮想エンジン音によって、エンジン回転数が変速しながら上昇している様子を表現することができる。
【0139】
次に、電気自動車の速度が減速した場合について説明する。図19は、電気自動車が所定速度(時速80キロメートル)以下になった場合におけるエンジン回転数の変化示している。本実施形態では、図19に示すように、本実施形態では、所定速度(時速80キローメートル)以下になった場合、実際の電気自動車の速度に基づいて、エンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。例えば、時速180キロメートルの仮想速度に基づいて、エンジン回転数を演算している場合において、t6時点において仮想速度が時速80キロメートル以下になった場合、実際の電気自動車の走行情報に基づいて、エンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0140】
しかし、実際の電気自動車の速度のスピードは僅かな差であった場合に、音が高速な仮想エンジン音から、実際の速度に基づく仮想エンジン音に切り替えられた場合、仮想エンジン音の違いがあまりにもあり、運転者に違和感を感じさせるおそれがある。例えば、時速320キロメートルである仮想エンジン音を出力している場合に、時速80キロメートルの仮想エンジン音に変化した場合、その差があまりにも大きいので運転者に違和感を感じさせることになる。
【0141】
そこで本実施形態では、電気自動車の速度が減速した場合には、電気自動車の速度の減速度合いに応じて仮想速度を減速させ、減速させた仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する。つまり、図20、21に示すように、電気自動車の速度に近づくように仮想速度を下げて、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算し、電気自動車の速度に仮想速度が到達した場合に、仮想速度から電気自動車の速度に基づくエンジン回転数を演算する処理に切り替える処理を行う。
【0142】
例えば、図20、21に示すように、仮想速度をt6時点からt8時点にかけて、時速180キロメートルから時速80キロメートルに徐々に下げるようにし、さらに時速80キロメートルから電気自動車の速度に近づくように仮想速度を下げる。そして、仮想速度が電気自動車の速度に到達したt9時点で、仮想速度から電気自動車の速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理を行う。
【0143】
なお、図20に示すように、ギア比を切り替えるか否かの判断は、実際の電気自動車の速度とシフトチェンジテーブルとを照合して判断するようにしてもよい。
【0144】
また、図21に示すように、ギア比を切り替えることなく、徐々にエンジン回転数を下げるようにしてもよい。
【0145】
なお、本実施形態では、電気自動車の速度が第2の所定速度以下になった場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。例えば、電気自動車の速度が時速15キロメートル(第2の所定速度の一例)以下になった場合には、強制的に、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。
【0146】
また、本実施形態では、緊急情報を検出する緊急情報検出センサが緊急情報を検出した場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。緊急事態では、実際の電気自動車に基づいてエンジン音を発生した方が安全な運転になる可能性が高いからである。
【0147】
最後に、図22を用いて、本実施形態において仮想速度に基づいて仮想エンジン音を生成する処理の流れについて説明する。まず、電気自動車の速度が時速80キロメートル以上か否かを判断する(ステップS10)。そして、電気自動車の速度が時速80キロメートル以上である場合には(ステップS10のY)、仮想速度を決定する(ステップS11)。そして、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する(ステップS12)。そして、エンジン回転数に基づいて仮想エンジン音を生成する処理を行う(ステップS13)。
【0148】
一方、電気自動車の速度が時速80キロメートル以上でない場合には(ステップS10のN)、電気自動車の速度、アクセル信号に基づいてエンジン回転数を演算する処理を行う(ステップS14)。以上で処理が終了する。
【0149】
5.車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音
本実施形態では、電気自動車の車内と車外それぞれに適した音が出力されるように、所与の情報に基づいて、車内用音出力部に出力させるための車内用仮想エンジン音と、車外用音出力部に出力させるための車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う。
【0150】
車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御とは、(A)車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音について、「音量」を互いに異ならせて変更する制御を行うこと、(B)車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音について、「音色(音質)」を互いに異ならせて変更する制御を行うこと、(C)車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音について、「音程」を互いに異ならせて変更する制御を行うことの、少なくとも1つを含む。
【0151】
なお、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音は、走行情報に基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を求め、エンジン回転数に基づいて基本波形を合成して得られる音としてもよい。また、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音は、予め記憶部70に記憶されているエンジン音(例えば、エンジン車が走行する際に発せられる音を録音した音)としてもよい。
【0152】
5.1 電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う手法
本実施形態では、電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。例えば、電気自動車の速度に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにする。以下、詳細に説明する。
【0153】
5.1.1 走行情報に基づいて、音量を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の速度に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音量」と車外用仮想エンジン音の「音量」を互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0154】
例えば、図23(A)に示すように、電気自動車の速度Vが時速20キロメートルから時速80キロメートルの間(20≦V<80)で走行している場合は、車内用仮想エンジン音の音量を55dB(デシベル)に設定し、車外用仮想エンジン音の音量も同様に55dBに設定されているとする。
【0155】
そして、電気自動車の速度Vが減速し、電気自動車の速度Vが時速20キロメートル未満になり低速走行になると、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから50dBに変更すると共に、同時に車外用仮想エンジン音の音量を55dBから60dBに変更する。
【0156】
つまり、電気自動車の速度が減速した場合には、車内用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行う。
【0157】
一般的に、電気自動車が低速走行する場合、タイヤの摩擦音などの走行音の音量が少なく、歩行者にとって電気自動車の存在を確認できない危険な状態となる場合がある。したがって、本実施形態では、電気自動車が低速走行する場合には、車外に対しては音量を上げるように制御する。また、電気自動車が低速走行する場合、車内用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行い、音量を下げることによって、運転者にスピードが低下していることを示唆するようにしている。
【0158】
一方、電気自動車の速度Vが時速20キロメートルから時速80キロメートルの間(20≦V<80)で走行している状況から、電気自動車が加速し、電気自動車の速度Vが時速80キロメートルになり高速走行になると、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから60dBに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量を55dBから50dBに変更する制御を行う。
【0159】
つまり、電気自動車の速度が加速した場合には、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。
【0160】
一般的に、電気自動車が高速で走行する場合、走行音の音量が増加する傾向にある。したがって、本実施形態では、電気自動車の速度が時速80キロメートルになった場合には、騒音にならないように車外用仮想エンジン音の音量を下げるように制御する。また、本実施形態では、車外用仮想エンジン音の音量を下げると同時に、車内用仮想エンジン音の音量を上げるように制御する。つまり、車内に対しては、音量を上げることによって、運転者にスピード感を与えるようにしている。
【0161】
このように、走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音の音量と車外用仮想エンジン音の音量とを互いに異ならせて変更することによって、走行状況下に応じて車内は車内に適した音量で、車外には車外に適した音量で音を発することができる。
【0162】
5.1.2 走行情報に基づいて、音色を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音色」と車外用仮想エンジン音の「音色」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0163】
図23(B)に示すように、電気自動車の速度Vが時速0キロメートルから時速20キロメートルの間(0≦V<20)では、車内用仮想エンジン音の音色を「音色A」に設定し、車外用仮想エンジン音の音色を、「音色D」に設定する。例えば、「音色D」は「音色A」から、不快成分となる周波数を除去した音とする。このようにすれば、車外にいる歩行者にとって優しい音を提供できる。また、「音色D」は、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数としてもよいし、「音色D」は、「音色A」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。このようにすれば、車外にいる歩行者にとって優しい音を提供できる。
【0164】
そして、電気自動車の速度Vが時速20キロメートルになった場合に、車内用仮想エンジン音の音色を「音色A」から「音色B」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音色を「音色D」から「音色E」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音色になるようにしつつ、音色を変更する制御を行う。例えば、「音色B」は、歩行者等に聞き取りやすい周波数成分を多く含む音にする。また、歩行者が不快にならないように、「音色E」は、「音色B」から不快成分となる周波数を除去した音とする。また、「音色E」は、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数としてもよいし、「音色E」は、「音色B」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。
【0165】
そして、電気自動車がさらに加速し、電気自動車の速度Vが時速80キロメートルになると、車内用仮想エンジン音の音色を「音色B」から「音色C」に変更し、車外用仮想エンジン音の音色を「音色E」から「音色F」に変更する。例えば、「音色C」は、電気自動車が高速で移動している場合でも聞き取ることができる周波数成分を多く含む音にする。また、「音色F」は、「音色C」から不快成分となる周波数を除去した音とする。また、「音色F」は、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数としてもよいし、「音色F」は、「音色C」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。
【0166】
このように、走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音色を互いに異ならせて変更することによって、走行状況下に応じて車内は車内に適した音色で、車外には車外に適した音色で音を発することができる。
【0167】
5.1.3 走行情報に基づいて、音程を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音程」と車外用仮想エンジン音の「音程」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0168】
図23(C)に示すように、電気自動車の速度Vが時速0キロメートルから時速20キロメートルの間(0≦V<20)では、車内用仮想エンジン音の音程を「音程A」に設定し、車外用仮想エンジン音の音程を、「音程D」に設定する。
【0169】
そして、電気自動車の速度Vが時速20キロメートルになった場合に、車内用仮想エンジン音の音程を「音程A」から「音程B」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音程を「音程D」から「音程E」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音程になるようにしつつ、音程を変更する制御を行う。例えば、音程Bは、音程Aよりも基本周波数を上げ、音程Eも音程Dよりも基本周波数を上げる。このように音程が上がることによって、スピード感が増した感覚を運転者、歩行者等に与えることができる。
【0170】
そして、電気自動車がさらに加速し、電気自動車の速度Vが時速80キロメートルになると、車内用仮想エンジン音の音程を「音程B」から「音程C」に変更し、車外用仮想エンジン音の音程を「音程E」から「音程F」に変更する。例えば、音程Cは、音程Bよりも基本周波数を上げ、音程Fも音程Eよりも基本周波数を上げる。このようにさらに音程が上がることによって、高速で移動している感覚を運転者、歩行者等に与えることができる。
【0171】
このように、走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音程を互いに異ならせて変更することによって、走行状況下に応じて車内は車内に適した音程で、車外には車外に適した音程で音を発することができる。
【0172】
5.2 電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う手法
本実施形態の電気自動車は、地球上において当該電気自動車の位置(緯度、経度)を検出することができる位置検出センサ64(GPS)を備えている。また、本実施形態では地図データを記憶部70に記憶しているので、地図データと電気自動車の位置から、電気自動車が一般道、住宅街、高速道路のいずれにいるかをリアルタイムに検出できる。例えば、図24の例では、電気自動車C1は、一般道を走行していると判断でき、電気自動車C2は、住宅街の道路を走行している判断できる。
【0173】
本実施形態では、位置検出センサ64によって検出できる電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。例えば、電気自動車の位置が地図データ上のいずれの道路(一般道、高速道路、住宅街の道路)に属しているのかを判定し、電気自動車が位置する道路に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。このようにすれば、電気自動車の位置に応じて、車内、車外に適した仮想エンジン音を生成することができる。以下、詳細について説明する。
【0174】
5.2.1 電気自動車の位置に基づいて、音量を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音の音量と車外用仮想エンジン音の音量を互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0175】
例えば、図25(A)に示すように、電気自動車が「一般道」に位置している場合は、車内用仮想エンジン音の音量を55dB(デシベル)に設定し、車外用仮想エンジン音の音量を55dBに設定する。
【0176】
例えば、電気自動車が「一般道」から「高速道路」に位置変更された場合(第1の道路から第2の道路に進入した場合)、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから60dBに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量を55dBから45dBに変更する制御を行う。つまり、電気自動車の位置が変更した場合には、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。一般的に、「高速道路」は、歩行者の通行を禁止しているため、歩行者に注意を払う必要性が乏しい。むしろ、高速道路付近の住民に騒音とならないように音量を低下させることが望ましい。そこで、車外では音量を下げるように制御する。また、車内では運転者がスピード感を感じることができるために、音量を上げるように制御する。
【0177】
なお、例えば、電気自動車が「一般道」から「住宅街」に位置変更された場合(第1の道路から第3の道路に進入した場合)、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから50dBに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量も55dBから50dBに変更する。一般的に、「住宅街」は、住民が多くいるために、電気自動車から発する音が騒音ととらえられる可能性が高い。また、あまりにも音量が低すぎると、歩行者にとって危険な状態となる場合がある。したがって、本実施形態では、「住宅街」では、車内、車外ともに音量を下げるように変更する制御を行っている。このように、本実施形態では、電気自動車が位置変更することによって、車内、車外共に同じように音量が制御される場合もある。
【0178】
5.2.2 電気自動車の位置に基づいて、音色を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音色」と車外用仮想エンジン音の「音色」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0179】
図25(B)に示すように、電気自動車が「一般道」に位置している場合には、車内用仮想エンジン音の音色を「音色G」に設定し、車外用仮想エンジン音の音色を、「音色J」に設定する。例えば、「音色J」は、「音色G」から、不快成分となる周波数を除去した音とする。また、「音色J」は、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数としてもよいし、「音色J」は、「音色G」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。このようにすれば、車外にいる歩行者にとって優しい音を提供できる。
【0180】
そして、電気自動車が「一般道」から「住宅街」に位置変更した場合には、車内用仮想エンジン音の音色を「音色G」から「音色H」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音色を「音色J」から「音色K」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音色になるようにしつつ、音色を変更する制御を行う。
【0181】
一般的に、住宅街を走行する場合は、歩行者の飛び出し等がないか特に注意を払う必要がある。したがって、「音色H」は、集中力を高めることができるようノイズをカットした音、或いは、不快となる周波数成分を除去した音とする。また、住宅街は住民の騒音とならない音が好ましいので、「音色K」は、住民にとって心地よく感じる優しい音色にする。
【0182】
また、同様に、電気自動車が「一般道」から「高速道路」に位置変更した場合には、車内用仮想エンジン音の音色を「音色G」から「音色I」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音色を「音色J」から「音色L」に変更する。例えば、「音色I」は、スピード感を感じることができる音色にし、「音色L」は、高速道路周辺の住民に不快とならないような音色にする。
【0183】
このように、電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音色を互いに異ならせて変更することによって、位置に応じて車内は車内に適した音色で、車外には車外に適した音色で音を発することができる。
【0184】
5.2.3 電気自動車の位置に基づいて、音程を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音程」と車外用仮想エンジン音の「音程」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0185】
図25(C)に示すように、電気自動車が「一般道」に位置している場合には、車内用仮想エンジン音の音程を「音程G」に設定し、車外用仮想エンジン音の音程を、「音程J」に設定する。
【0186】
そして、電気自動車が「一般道」から「住宅街」に位置変更した場合には、車内用仮想エンジン音の音程を「音程G」から「音程H」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音程を「音程J」から「音程K」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音程になるようにしつつ、音程を変更する制御を行う。例えば、「音程H」は、運転者が集中力を高めるような音程とし、「音程K」は住民にとって不快とならない音程とする。
【0187】
また、同様に、電気自動車が「一般道」から「高速道路」に位置変更した場合には、車内用仮想エンジン音の音程を「音程G」から「音程I」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音程を「音程J」から「音程L」に変更する。例えば、「音程I」は、スピード感が増すよう高音程にし、「音程L」は、高速道路周辺の住民に不快とならないような音程にする。
【0188】
このように、電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音程を互いに異ならせて変更することによって、位置に応じて車内は車内に適した音程で、車外には車外に適した音程で音を発することができる。
【0189】
5.3 時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う手法
本実施形態の電気自動車は、時計を備えている。本実施形態の電気自動車は、走行している時刻(走行している時間帯)に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0190】
5.3.1 時刻に基づいて、音量を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音の音量と車外用仮想エンジン音の音量を互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0191】
例えば、図26(A)に示すように、電気自動車が朝の時間帯(6時〜10時までの時間帯)で走行している場合は、車内用仮想エンジン音の音量を55dB(デシベル)に設定し、車外用仮想エンジン音の音量を60dBに設定する。
【0192】
そして、例えば、時刻が10時を過ぎると、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから60dBに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量を60dBから55dBに変更する制御を行う。つまり、電気自動車の時刻が所定時刻になった場合には、車内用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行うと共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う。つまり、昼間(10時から18時まで)は、車内の音量を上げる一方、車外の音量を下げることによって電気自動車から発する音を騒音と感じる住民らの不満を減らすようにしている。
【0193】
なお、本実施形態では、時刻が18時を過ぎると、車内用仮想エンジン音の音量を55dBから50dBに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量も55dBから50dBに変更する。一般的に、夜間(18時から翌朝6時まで)は、電気自動車から発する音が騒音ととらえられる可能性が高い。したがって、本実施形態では、夜間では、車内、車外ともに音量を下げるように変更する制御を行っている。このように、本実施形態では、時刻が変更した場合に、車内、車外共に同じように音量が制御される場合もある。
【0194】
5.3.2 時刻に基づいて、音色を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音色」と車外用仮想エンジン音の「音色」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0195】
図26(B)に示すように、電気自動車が朝の時間帯(6時〜10時まで)の時刻で走行している場合には、車内用仮想エンジン音の音色を「音色M」に設定し、車外用仮想エンジン音の音色を、「音色P」に設定する。たとえば、朝は眠気がある場合を想定し、「音色M」は、目覚めに適した音色にする。また、「音色P」は、「音色M」から不快成分を除去した音にしてもよいし、「音色P」は、「音色M」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。このようにすれば、車外にいる歩行者にとって優しい音を提供できる。
【0196】
そして、時刻が10時になると、車内用仮想エンジン音の音色を「音色M」から「音色N」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音色を「音色P」から「音色Q」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音色になるようにしつつ、音色を変更する制御を行う。例えば、「音色N」は通常使う音色にする。「音色Q」は、「音色N」から不快成分を除去した音にしてもよいし、「音色Q」は、「音色N」に、人にとって快適に聞こえる成分となる周波数を付加した音としてもよい。なお、通常使う音色は運転者の好みで決めるようにしてもよい。
【0197】
また、同様に、時刻が18時を過ぎると、車内用仮想エンジン音の音色を「音色N」から「音色O」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音色を「音色Q」から「音色R」に変更する。夜間は注意が必要となるので、例えば、「音色O」は、運転者にとって不快とならない音色にする。また、「音色R」は、夜間において騒音とならないよう周波数成分の低い音を除去した音色にする。
【0198】
また、10時から18時までは、車内用仮想エンジン音については「改造マフラー」で音色を決め、車外用仮想エンジン音については「消音マフラー」で音色を制御し、時刻が18時から翌朝6時までは、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音ともに、「消音マフラー」で音色を制御するようにしてもよい。
【0199】
このように、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音色を互いに異ならせて変更することによって、時刻に応じて車内は車内に適した音色で、車外には車外に適した音色で音を発することができる。
【0200】
5.3.3 時刻に基づいて、音程を互いに異ならせて変更する制御
本実施形態では、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音の「音程」と車外用仮想エンジン音の「音程」とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0201】
図26(C)に示すように、電気自動車が朝の時間帯(6時〜10時まで)の時刻で走行している場合には、車内用仮想エンジン音の音程を「音程M」に設定し、車外用仮想エンジン音の音程を、「音程P」に設定する。例えば、「音程M」は、運転者にとって聞き取りやすい音程にする。また、「音程P」は、通学、通勤中の歩行者にとって聞き取りやすい音程にする。
【0202】
そして、時刻が10時になると、車内用仮想エンジン音の音程を「音程M」から「音程N」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音程を「音程P」から「音程Q」に変更する。つまり、車内用、車外用それぞれ異なる音程になるようにしつつ、音程を変更する制御を行う。例えば、「音程N」は、通常使う車内用の音程とし、「音程Q」も通常使う車外用の音程とする。通常使う音程は運転者の好みで決めるようにしてもよい。
【0203】
また、同様に、時刻が18時を過ぎると、車内用仮想エンジン音の音程を「音程N」から「音程O」に変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音程を「音程Q」から「音程R」に変更する。例えば、夜間は特に注意が必要となるので、「音程N」は、運転者にとって運転の注意を促す最適な音程とし、また、夜間は低音が騒音と感じられることがあるので、「音程R」は高めの音程とする。
【0204】
このように、時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音との音程を互いに異ならせて変更することによって、時刻に応じて車内は車内に適した音程で、車外には車外に適した音程で音を発することができる。
【0205】
5.4 緊急情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う手法
本実施形態では、緊急情報検出センサ64を備えている。緊急情報検出センサ64から緊急情報を検出した場合には、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音の音量を互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0206】
例えば、緊急情報を検出した場合には、車内用仮想エンジン音の音量を、最低音量(例えば、10dB)あるいはオフに変更すると共に、車外用仮想エンジン音の音量を最大音量(例えば70dB)に変更する。なお、本実施形態では、緊急情報を検出した場合には、車外用仮想エンジン音の音色を警告音になるように制御してもよい。このようにすれば、歩行者、運転者ともに注意を促すことができる。
【0207】
5.5 他の情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行う手法
本実施形態では、天候が変化した場合に車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0208】
例えば、晴(曇)から雨天になった場合(例えば、電気自動車のワイパーの発動信号を検知したとき)には、車内用仮想エンジン音の音量を、最低音量(例えば、10dB)あるいはオフに変更するとともに、車外用仮想エンジン音の音量を最大音量(例えば65dB)に変更する。また、晴(曇)から雨天になった場合には、車外用仮想エンジン音について、雨音を打ち消すような音色になるように音色を変更する制御を行うようにしてもよい。このようにすれば、歩行者、運転者ともに注意を促すことができる。なお、交通情報センターなどから天候情報を受信して、天候が変化したことを検知することもできる。
【0209】
5.6 音制御を行うための情報を選択する処理
上述したように、本実施形態では、上記の所与の情報の組み合わせに基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御を行うようにしてもよい。
【0210】
例えば、緊急情報と走行情報とに基づいて音制御を行う場合には、緊急情報を優先順で1番目とし、走行情報を優先順位の2番目とし、緊急情報を検知した場合は、緊急情報によって車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音量、音色、音程を制御し、緊急情報を検知されない場合には、電気自動車の速度に基づいて、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音それぞれの音量、音色、音程を決めて音制御を行うようにしてもよい。
【0211】
5.7 車内用仮想エンジン、車外用仮想エンジンの説明
本実施形態では、図27に示すように、アクセルペダル61の踏み込み量(アクセル開度)を示すアクセル信号、ブレーキペダル62の踏み込み量(ブレーキ開度)を示すブレーキ信号、速度センサ63によって検出される電気自動車の速度(車速)、位置検出センサ64によって検出される電気自動車の位置、緊急情報検出センサ65によって検出される緊急情報、交通情報受信装置66(カーナビゲーションシステム)によって受信した交通情報を少なくとも1つを含む情報に基づいて、車内用発音ジェネレータが車内用仮想エンジン音を生成し、車外用発音ジェネレータが車外用仮想エンジン音を生成する。
【0212】
すなわち、本実施形態では、アクセル信号、速度などの情報に基づいて、車内用エンジンシミュレーション部201が車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算し、車内用音制御部301が車内用仮想エンジンのエンジン回転数に基づいて車内に発生させるための車内用仮想エンジン音を制御し、車内用音出力部が車内用仮想エンジン音を出力する。また、同じように、本実施形態では、アクセル信号、速度などの情報に基づいて、車外用エンジンシミュレーション部202が車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算し、車外用音制御部203が車外用仮想エンジンのエンジン回転数に基づいて車外に発生させるための車外用仮想エンジン音を制御し、車外用音出力部が車外用仮想エンジン音を出力する。
【0213】
したがって、本実施形態において車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御とは、車内用エンジンシミュレーション部201、車外用エンジンシミュレーション部202において、共通のアクセル信号、速度などの情報に基づいてエンジン回転数を互いに異ならせて変更する制御を行う場合、車内用音制御部301、車外用音制御部302において音量、音色、音程を制御する段階で、それぞれ互いに異ならせて変更する制御を行う場合の両方を含む。
【0214】
例えば、車内用エンジンシミュレーション部201において演算されたエンジン回転数と、車外用エンジンシミュレーション部202において演算されたエンジン回転数とが異なると、結果的に基本波形を合成する時間間隔が異なるようになるので、車内用仮想エンジン音と、車外用仮想エンジン音とはそれぞれ異なる音になる。
【0215】
また、本実施形態では、車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行う場合には、所定条件を満たす場合に、電気自動車の速度に基づいて車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいて車内用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。一方、車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算する処理を行う場合は、電気自動車の速度が所定条件を満たす場合でも電気自動車の速度に基づいて車外用仮想エンジンのエンジン回転数を演算するようにしてもよい。つまり、仮想速度に基づいて仮想エンジン音を生成する場合には、車内用の仮想エンジン音を生成する場合に限るようにしてもよい。車外に仮想エンジン音を発生させる場合には、現実の電気自動車の速度に基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算し、このエンジン回転数に基づいて仮想エンジンを生成して出力した方が、歩行者などは仮想エンジン音を聞いたときに、実際の電気自動車の速度をイメージすることができ安全を期することができる可能性が高まるからである。
【0216】
5.8 複数の発音ジェネレータ
本実施形態では、複数の発音ジェネレータによって構成されるものであってもよい。例えば、図28に示すように、音制御装置は、「第1の発音ジェネレータ」、「第2の発音ジェネレータ」、「第3の発音ジェネレータ」によって構成されるものであってもよい。かかる場合、第1、第2、第3の発音ジェネレータで音を生成し、セレクターが第1、第2、第3の発音ジェネレータで生成された音のうち、いずれの音を車内用音出力部に出力させるのか、また、いずれの音を車外用音出力部に出力させるのかを選択する制御を行う。
【0217】
例えば、「第1の発音ジェネレータ」を車内用仮想エンジン音を生成するための発音ジェネレータとし、「第2の発音ジェネレータ」を車外用仮想エンジン音を生成するための発音ジェネレータとし、「第3の発音ジェネレータ」を緊急用の音を生成するための発音ジェネレータとする。
【0218】
そして、通常時は、セレクターが第1、第2、第3の発音ジェネレータで生成された音のうち、第1の発音ジェネレータで生成された音を車内用音出力部に出力させるように選択制御を行い、第2の発音ジェネレータで生成された音を車外用音出力部に出力させるように選択制御を行う。一方、緊急情報を検知した場合には、セレクターが、第1、第2、第3の発音ジェネレータで生成された音のうち、第3の発音ジェネレータで生成された音を車内用音出力部と、車外用音出力部とに出力させるように選択制御を行う。このようにすれば、効率よく車内、車外に適切な音を出力させることができる。
【0219】
5.9 設定
本実施形態では、走行情報に基づいて音量を制御する場合において、図23(A)に示す、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音量のIDに対応する音量の値を設定するようにしてもよい。例えば、操作部からの操作情報に基づいて車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音それぞれについて、音量の値を設定するようにしてもよい。同様に、車両の位置に基づいて音量を制御する場合、時刻に基づいて音量を制御する場合についても、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音量のIDに対応する音量の値を設定するようにしてもよい。
【0220】
また、本実施形態では、図25(B)に示す車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音色のIDに対応する音色を設定できるようにしてもよい。例えば、操作部からの操作情報に基づいて、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音それぞれについて、音制御データ記憶部73に記憶されている複数の音色の中から1つの音色の選択を受け付け、受け付けた音色を設定するようにしてもよい。同様に、車両の位置に基づいて音色を制御する場合、時刻に基づいて音色を制御する場合についても、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音量のIDに対応する音量の値を設定するようにしてもよい。
【0221】
また、本実施形態では、図25(C)に示す車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音程のIDに対応する音程を設定できるようにしてもよい。例えば、操作部からの操作情報に基づいて車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音それぞれについて、音程(基本周波数)を設定するようにしてもよい。同様に、車両の位置に基づいて音程を制御する場合、時刻に基づいて音程を制御する場合についても、車内用仮想エンジン音、車外用仮想エンジン音の音量のIDに対応する音量の値を設定するようにしてもよい。
【0222】
5.10 フローチャート
5.10.1 処理例1
電気自動車の走行情報に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御の場合の処理の流れの一例について図29を用いて説明する。例えば、電気自動車が時速20キロメートル以上、時速80キロメートル未満で走行している場合であるとする。
【0223】
まず、電気自動車が時速80キロメートルになったか否かを判断する(ステップS20)。電気自動車が時速80キロメートルになったと判断されると(ステップS20のY)、車内用仮想エンジン音の音量を上げると共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う(ステップS21)。一方、電気自動車が時速80キロメートルになったと判断されない場合(ステップS20のN)、電気自動車が時速20キロメートル未満になったか否かを判断する(ステップS22)。電気自動車が時速20キロメートル未満になったと判断されると(ステップS22のY)、車内用仮想エンジン音の音量を下げると共に、車外用仮想エンジン音の音量を上げる制御を行う(ステップS21)。一方、電気自動車が時速20キロメートル未満になったと判断されない場合(ステップS22のN)、処理を終了する。以上で処理が終了する。
【0224】
5.10.2 処理例2
電気自動車の位置に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御の場合の処理の流れの一例について図30を用いて説明する。例えば、電気自動車が一般道を走行している場合であるとする。
【0225】
まず、電気自動車が高速道路に入ったか否かを判断する(ステップS30)。そして、電気自動車が高速道路に入ったと判断されると(ステップS30のY)、車内用仮想エンジン音の音量を上げると共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う(ステップS31)。一方、電気自動車が高速道路に入ったと判断されない場合(ステップS22のN)、処理を終了する。以上で処理が終了する。
【0226】
5.10.3 処理例3
時刻に基づいて、車内用仮想エンジン音と車外用仮想エンジン音とを互いに異ならせて変更する制御の場合の処理の流れの一例について図31を用いて説明する。例えば、電気自動車が、午前10時前に走行している場合であるとする。
【0227】
まず、時刻が午前10時になったか否かを判断する(ステップS40)。そして、時刻が午前10時になったと判断されると(ステップS40のY)、車内用仮想エンジン音の音量を上げると共に、車外用仮想エンジン音の音量を下げる制御を行う(ステップS31)。一方、時刻が午前10時になっていない場合(ステップS40のN)、処理を終了する。以上で処理が終了する。
【0228】
6.応用例
6.1 ゲームシステムへの応用例
本実施形態では、ゲームシステムにおいて応用してもよい。例えば、仮想空間において移動体を移動させるシミュレーションゲームのためのゲームシステムにおいて、本実施形態の仮想エンジン音を制御する手法を用いるようにしてもよい。
【0229】
例えば、仮想空間(オブジェクト空間、仮想3次元空間)において、移動体(車、オートバイ)がレースを行うレースゲームのゲームシステムにおいて、移動体のアクセル開度を示すアクセル情報、移動体の速度の少なくとも一方を含む走行情報と、仮想エンジンのギア比とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算する。そして、演算されたエンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を生成し、仮想エンジン音を音出力部に出力するようにする。かかる場合、移動体の走行情報(アクセル情報、速度)に基づいて、ギア比を変化させるか否かを判断し、ギア比を変化させる場合には、ギア比の変化に応じてエンジン回転数を変化させる。なお、アクセル情報は、操作部(コントローラ)から検出される操作信号(ボタン信号)でもよい。
【0230】
また、ギア比を変化させる場合には、ギア比の変化に対応する仮想運転データと移動体の走行情報とに基づいてエンジン回転数を演算する。例えば、操作部からの操作情報に基づいて、複数の仮想運転データのうちいずれかの仮想運転データの選択を受け付け、選択された仮想運転データに基づいてエンジン回転数を演算するようにしてもよい。
【0231】
ゲームシステムは、家庭用のテレビゲーム用ゲーム機であってもよいし、ゲームセンターに設置されるような業務用のアーケードゲーム機であってもよい。
【0232】
6.2 仮想的な速度に基づく仮想エンジン音生成手法の応用例
本実施形態では、電気自動車の速度が所定制限速度を超えた場合には、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えるようにしてもよい。
【0233】
例えば、所定制限速度が時速100キロメートルである場合には次のように処理を行う。つまり、図32に示すように、t5時点において電気自動車の速度が時速80キロメートルに達し、電気自動車の走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理から仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えられる。その後、電気自動車が時速80〜100キロメートルの間で走行している場合は、走行継続時間に応じて仮想速度が上昇する。
【0234】
そして、本実施形態では、電気自動車の速度が時速100キロメートルを超えた場合(R1時点)に、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替える処理を行う。電気自動車の速度が所定制限速度を超えた場合には、仮想的な状況ではなく現実の走行情報に応じた仮想エンジン音を生成した方が、運転者及び歩行者等の安全に期するからである。
【0235】
なお、本実施形態では、電気自動車の速度が時速100キロメートルを超えた場合(R1時点)に、仮想速度に基づいてエンジン回転数を演算する処理から走行情報に基づいてエンジン回転数を演算する処理に切り替えると判断された場合には、仮想的なシフトダウンが強制的に行うように制御する。つまり、仮想エンジンのエンジン回転数が著しく低下するように制御する。このようにすれば、更に、運転者に所定制限速度内での安全な運転を促すことができるからである。
【0236】
そして、電気自動車の速度が時速80〜100キロメートルの範囲内に戻った場合(R2時点)では、R2時点から走行維持継続時間に応じて仮想速度を速める処理(エンジン回転数を上昇させる処理)を行う。
【0237】
このようにすれば、仮想速度の上昇を一定速度状態(例えば、時速80〜100キロメートル)に限定し、それ以上の速度は強制的な仮想シフトダウンにより、仮想エンジンのエンジン回転数を著しく低下させるように制御することで、ドライバーに制限速度内での運転を促すことができる。これにより、ドライバーは、実際の電気自動車の安全な速度を保ちながら、ドライバーの好みの仮想エンジン音によるドライブを体感させることができる。
【符号の説明】
【0238】
処理部 10、エンジンシミュレーション部 20、エンジン回転制御部 21、
ギア比制御部 22、仮想運転制御部 23、仮想速度制御部 24、
音制御部 30、波形合成部 31、音量制御部 32、音色制御部 33、
音程制御部 34、設定部 40、音制御データ設定部 41、
仮想運転データ設定部 42、受け付け部 50、アクセルペダル 61、
ブレーキペダル 62、速度センサ 63、位置検出センサ 64、
緊急情報検出センサ 65、交通情報受信装置 66、記憶部 70、
主記憶部 71、サウンドバッファ 72、音制御データ記憶部 73、
仮想運転データ記憶部 74、情報記憶媒体 80、D/A 90、
アンプ 91、音出力部 92、操作部 95

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機によって走行可能な車両に備える音制御装置であって、
前記車両の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、
前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部とを含み、
前記エンジンシミュレーション部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、
前記音制御部が、
前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うことを特徴とする音制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記音制御部が、
前記仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて効果音を決定し、決定された効果音を付加する処理を行うことを特徴とする音制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記音制御部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じて前記効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに前記効果音を付加する処理を行うことを特徴とする音制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記音制御部が、
前記仮想車両構成部材の動作のシミュレーションに用いられる仮想運転データに基づいて、前記効果音を付加するタイミングを決定し、決定されたタイミングに前記効果音を付加する処理を行うことを特徴とする音制御装置。
【請求項5】
電動機によって走行可能な車両であって、
前記車両の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、
前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部と、
前記仮想エンジン音を出力する音出力部とを含み、
前記エンジンシミュレーション部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、
前記音制御部が、
前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うことを特徴とする車両。
【請求項6】
仮想空間において移動体を移動させるゲームシステムであって、
前記移動体の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、
前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部と、
前記仮想エンジン音を出力する音出力部とを含み、
前記エンジンシミュレーション部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、
前記音制御部が、
前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うことを特徴とするゲームシステム。
【請求項7】
電動機によって走行可能な車両に備える音制御装置のためのプログラムであって、
前記車両の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、
前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部として、コンピュータを機能させ、
前記エンジンシミュレーション部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、
前記音制御部が、
前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
仮想空間において移動体を移動させるゲームシステムのためのプログラムであって、
前記移動体の走行情報と、仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果とに基づいて、仮想エンジンのエンジン回転数を演算するエンジンシミュレーション部と、
前記エンジン回転数に基づいて、仮想エンジン音を制御する音制御部として、コンピュータを機能させ、
前記エンジンシミュレーション部が、
前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に基づいて、エンジン回転数を変化させると共に、
前記音制御部が、
前記エンジン回転数に基づいて制御された仮想エンジン音に、前記仮想車両構成部材の動作をシミュレートした結果に応じた効果音を付加する処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
コンピュータにより読取可能な情報記憶媒体であって、請求項7又は8に記載のプログラムを記憶することを特徴とする情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−215437(P2011−215437A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84652(P2010−84652)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000134855)株式会社バンダイナムコゲームス (1,157)
【Fターム(参考)】