説明

音声処理装置、音声処理システム、音声処理方法およびプログラム

【課題】所定地点で出力音声の認識性を向上可能な、音声処理装置、音声処理システム、音声処理方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】出力音声SOを相異なる分割音声SDに帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り出力音声として認識されないように相異なる分割音声を生成し、複数のスピーカSに各々に供給する音声処理部120、220、320、420、520と、相異なる分割音声が所定地点Pを基準として相異なる方向に配置された複数のスピーカから出力され、所定地点に同時に伝播するように音声処理部を制御する制御部140、240、340、440、540とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理装置、音声処理システム、音声処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声を拡散させずに出力する指向性スピーカが知られている(下記特許文献1、2参照)。指向性スピーカでは、複数のスピーカを一箇所に配置し、スピーカの指向性を形成して、一定方向に音声が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−10491号公報
【特許文献2】特開2006−222669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指向性スピーカでは、指向性が形成された一定方向の線上に位置する任意の地点で出力音声の認識性が向上する。しかし、指向性が形成されている場合でも、指向性が形成された一定方向の線上に位置する所定の地点に限って出力音声の認識性を向上させることができなかった。また、指向性が形成されていない場合でも、スピーカ周辺の所定の地点に限って出力音声の認識性を向上させることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、所定地点で出力音声の認識性を向上可能な、音声処理装置、音声処理システム、音声処理方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り出力音声として認識されないように相異なる分割音声を生成し、複数の音源に各々に供給する音声処理部と、相異なる分割音声が所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源から出力され、所定地点に同時に伝播するように音声処理部を制御する制御部とを備える音声処理装置が提供される。
【0007】
かかる構成によれば、出力音声が帯域分割されて相異なる分割音声が生成される。そして、相異なる分割音声は、所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源から出力され、所定地点に同時に伝播される。ここで、相異なる分割音声は、同一地点に同時に伝播しない限り出力音声として認識されないように生成される。これにより、所定地点では、相異なる分割音声が合成されて出力音声が復元されるので、所定地点で出力音声の認識性を向上させることができる。
【0008】
一の音源と他の音源が所定地点から相異なる距離を隔てて配置される場合において、上記制御部は、各音源と所定地点の間の距離に応じて各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、各音源と所定地点の間の距離の差に応じて各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように、音声処理部を制御してもよい。
【0009】
相異なる所定地点について、所定地点毎に一の音源と他の音源が所定地点から相異なる距離を隔てて配置される場合において、上記音声処理部は、相異なる所定地点に各々に対応する出力音声について、出力音声毎に相異なる分割音声に帯域分割し、一の出力音声の分割音声に他の出力音声の分割音声を合成して複数の音源に各々に供給し、上記制御部は、出力音声毎に出力音声に対応する所定地点と各音源の間の距離に応じて各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、出力音声に対応する所定地点と各音源の間の距離の差に応じて各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように、音声処理部を制御してもよい。
【0010】
上記音声処理部は、相異なる分割音声にダミー音声を合成して複数の音源に各々に供給してもよい。
【0011】
上記音声処理装置は、移動対象の現在位置を特定または推定する位置特定部をさらに備え、上記制御部は、移動対象の現在位置と各音源の間の距離に応じて各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、移動対象の現在位置と各音源の間の距離の差に応じて各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように音声処理部を制御してもよい。
【0012】
複数の音源が所定地点から同一の距離を隔てて配置されてもよい。
【0013】
また、本発明の別の観点によれば、上記複数の音声および上記音声処理装置からなる音声処理システムが提供される。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り出力音声として認識されないように相異なる分割音声を生成し、複数の音源に各々に供給するための音声処理を行うステップと、相異なる分割音声が所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源から出力され、所定地点に同時に伝播するように音声処理を制御するステップとを含む音声処理方法が提供される。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、上記音声処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。ここで、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体を用いて提供されてもよく、通信手段を介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、所定地点で出力音声の認識性を向上可能な、音声処理装置、音声処理システム、音声処理方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る音声処理システムの主要な機能構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る音声処理システムの動作を示す模式図である。
【図3】分割音声の生成を示す模式図である。
【図4】第2の実施形態に係る音声処理システムの主要な機能構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態に係る音声処理システムの動作を示す模式図である。
【図6】第3の実施形態に係る音声処理システムの主要な機能構成を示すブロック図である。
【図7】第3の実施形態に係る音声処理システムの動作を示す模式図である。
【図8】第4の実施形態に係る音声処理システムの主要な機能構成を示すブロック図である。
【図9】第4の実施形態に係る音声処理システムの動作を示す模式図である。
【図10】第5の実施形態に係る音声処理システムの主要な機能構成を示すブロック図である。
【図11】第5の実施形態に係る音声処理システムの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[1.第1の実施形態]
まず、図1〜図3を参照して、第1の実施形態に係る音声処理システム100について説明する。図1および図2には、音声処理システム100の構成および動作が各々に示されている。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、音声処理システム100は、音声処理装置110と複数のスピーカSからなる。音声処理装置110は、音声処理部120、設定部130、および制御部140からなる。音声処理部120は、複数の処理系列を有しており、各処理系列は、バンドパスフィルタ(BPフィルタ)121および音量調整部122からなる。
【0021】
音声処理部120には、所定地点Pで認識されるべき出力音声SOが供給される。所定地点Pとは、出力音声SOの認識性を向上させたい地点を意味する。音声処理部120では、出力音声SOがBPフィルタ121により帯域分割されて複数の分割音声SDが生成される。複数の分割音声SDは、音量調整部122により音量調整処理を施され、複数のスピーカSに供給されて別々に出力される。なお、BPフィルタ121と音量調整部122の配置は逆にされてもよい。
【0022】
設定部130には、複数のスピーカSと所定地点Pの位置関係、特に複数のスピーカSと所定地点Pの距離を示す設定情報が供給される。制御部140は、設定情報に基づき、音声処理部120を動作させるために必要な演算処理を行う。
【0023】
設定情報は、通常、スピーカSの配置および所定地点Pの位置に応じて、ユーザにより入力される。しかし、設定情報は、スピーカSおよび所定地点Pから送信される位置情報に基づき、音声処理装置110により生成されてもよい。
【0024】
なお、上記構成のうち少なくとも一部については、音声処理装置110上で動作するソフトウェア(プログラム)により実現されてもよく、ハードウェアにより実現されてもよい。また、ソフトウェアにより実現される場合には、プログラムが音声処理装置110上に予め格納されてもよく、外部から供給されてもよい。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、複数のスピーカSが所定地点Pから同一距離を隔てて配置される。図2に示す例では、4つのスピーカS1〜S4が所定地点Pを中心とする同一円周上に配置されている。
【0026】
音声処理部120では、図3に示すように、出力音声SOがBPフィルタ121により帯域分割されて、例えば4つの分割音声SD1〜SD4が生成される。出力音声SOは、一定帯域毎に分割されてもよく、メル周期で分割されてもよく、櫛形フィルタにより分割されてもよい。ここで、分割音声SD1〜SD4は、全ての分割音声SD1〜SD4が同一地点に同時に伝播しない限り出力音声SOとして認識されないように生成される。
【0027】
分割音声SD1〜SD4は、音量調整部122により設定情報に基づき音量調整処理を施された後、スピーカS1〜S4から別々に出力される。分割音声SD1〜SD4は、スピーカS1〜S4から所定地点Pまで伝播し、かつ、所定地点Pを大きく超えて伝播しないように音量調整される。本実施形態では、分割音声SD1〜SD4の音量は、設定情報および減衰率に基づき、略同一の値に調整される。なお、スピーカS1〜S4と所定地点Pの間の距離が固定されている場合、音量調整処理が省略されてもよい。
【0028】
前述したように、スピーカS1〜S4は、所定地点Pから同一距離を隔てて配置されている。このため、音声処理システム100では、分割音声SD1〜SD4がスピーカS1〜S4から略同一の音量で同時に出力される。
【0029】
図2には、スピーカS1〜S4から所定地点Pに至る分割音声SD1〜SD4の伝播範囲A1〜A4が示されている。図2に示すように、所定地点Pでは、分割音声SD1〜SD4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SD1〜SD4が合成されて出力音声SOが復元される。これにより、所定地点Pでは、出力音声SOの認識性が向上する。一方、所定地点P以外では、分割音声SD1〜SD4が同時に伝播せず、出力音声SOが復元されないので、出力音声SOが認識され難くなる。
【0030】
[2.第2の実施形態]
つぎに、図4、図5を参照して、第2の実施形態に係る音声処理システム200について説明する。図4および図5には、音声処理システム200の構成および動作が各々に示されている。なお、以下では、第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、音声処理装置210は、音声処理部220、設定部230、および制御部240からなる、音声処理部220は、複数の処理系列を有しており、各処理系列は、BPフィルタ221、音量調整部222、およびミキサ224からなる。
【0032】
複数の分割音声SDは、音量調整部222により音量調整処理を施され、ミキサ224に供給される。複数の分割音声SDは、ミキサ224に供給されるダミー音声SD´と合成され、複数のスピーカSに供給されて別々に出力される。なお、ダミー音声SD´は、分割音声SD毎に同一の音声でもよく、相異なる音声でもよい。また、一部の分割音声SDのみがダミー音声SD´と合成されてもよい。
【0033】
本実施形態では、図5に示すように、4つのスピーカS1〜S4が所定地点Pから同一距離を隔てて配置されている。このため、音声処理システム200では、4つの分割音声SD1〜SD4がダミー音声SD1´〜SD4´と合成されてスピーカS1〜S4から略同一の音量で同時に出力される。
【0034】
図5には、スピーカS1〜S4から所定地点Pに至る分割音声SD1〜SD4の伝播状況が示されている。図5に示すように、所定地点Pでは、分割音声SD1〜SD4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SD1〜SD4が合成されて出力音声SOが復元される。また、ダミー音声SD1´〜SD4´は、分割音声SD1〜SD4の伝播範囲A1〜A4を各々にカバーするように伝播する。
【0035】
これにより、所定地点Pでは、出力音声SOの認識性が向上する。一方、所定地点P以外では、分割音声SD1〜SD4が同時に伝播せず、出力音声SOが復元されず、かつ、分割音声SD1〜SD4とともにダミー音声SD1´〜SD4´が認識されるので、出力音声SOがさらに認識され難くなる。
【0036】
[3.第3の実施形態]
つぎに、図6、図7を参照して、第3の実施形態に係る音声処理システム300について説明する。図6および図7には、音声処理システム300の構成および動作が各々に示されている。なお、以下では、第1または第2の実施形態と重複する説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、音声処理装置310は、音声処理部320、設定部330、および制御部340からなる。音声処理部320は、複数の処理系列を有しており、各処理系列は、BPフィルタ321、音量調整部322、出力遅延部323からなる。なお、音量調整部322と出力遅延部323は、逆方向に配置されてもよい。
【0038】
複数の分割音声SDは、音量調整部322および出力遅延部323により音量調整および出力遅延処理を施され、複数のスピーカSに供給されて別々に出力される。制御部340は、設定情報に基づき、音量調整および出力遅延処理を行うために必要な演算処理を行う。
【0039】
本実施形態では、図7に示すように、4つのスピーカS1〜S4が相異なる距離を隔てて所定地点Pを囲むように配置されている。このため、音声処理システム300では、4つの分割音声SD1〜SD4がスピーカS1〜S4から相異なる音量で相異なる時点に出力される。なお、全てのスピーカS1〜S4で、所定地点Pまでの距離が相異なる必要はない。
【0040】
制御部340は、スピーカS1〜S4から所定地点Pまでの距離に基づく分割音声SD1〜SD4の減衰率等を考慮して、分割音声SD1〜SD4の音量調整パラメータを算出し、音量調整部323に供給する。音量調整パラメータは、分割音声SD1〜SD4がスピーカS1〜S4から所定地点Pまで伝播し、かつ、所定地点Pを大きく超えて伝播しない値として算出される。
【0041】
制御部340は、スピーカS1〜S4から所定地点Pまでの距離の差に基づく分割音声SD1〜SD4の伝播時間差を考慮して、分割音声SD1〜SD4の出力遅延パラメータを算出し、出力遅延部323に供給する。出力遅延パラメータは、スピーカS1〜S4から所定地点Pまでの最短距離を基準とし、スピーカS1〜S4から出力された分割音声SD1〜SD4が所定地点Pに同時に伝播する値として算出される。
【0042】
そして、音量調整部322および出力遅延部323では、音量調整パラメータおよび出力遅延パラメータに基づき、分割音声SD1〜SD4に音量調整および出力遅延処理が施される。
【0043】
図7には、スピーカS1〜S4から所定地点Pに至る分割音声SD1〜SD4の伝播範囲A1〜A4が示されている。図7では、伝播範囲A1〜A4の大きさがスピーカS1〜S4から出力される分割音声SD1〜SD4の音量を表し、矢印SD1〜SD4の長さがスピーカS1〜S4から所定地点Pに至る分割音声SD1〜SD4の伝播時間を表している。ここで、伝播範囲A1〜A4が大きいほどスピーカS1〜S4からの出力音量が大きく、矢印SD1〜SD4の長さが短いほど出力遅延が大きいことを意味している。
【0044】
図7に示すように、所定地点Pでは、分割音声SD1〜SD4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SD1〜SD4が合成されて出力音声SOが復元される。これにより、所定地点Pでは、出力音声SOの認識性が向上する。一方、所定地点P以外では、分割音声SD1〜SD4が同時に伝播せず、出力音声SOが復元されないので、出力音声SOが認識され難くなる。
【0045】
[4.第4の実施形態]
つぎに、図8、図9を参照して、第4の実施形態に係る音声処理システム400について説明する。図8および図9には、音声処理システム400の構成および動作が各々に示されている。なお、以下では、第1〜第3の実施形態と重複する説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、図8に示すように、音声処理装置410は、音声処理部420、設定部430、および制御部440からなる。音声処理部420は、複数の処理系列を有しており、各処理系列は、2つのBPフィルタ421a、421b、2つの音量調整部422a、422b、2つの出力遅延部423a、423b、および1つのミキサ424からなる。
【0047】
音声処理部420には、2つの出力音声SOa、SObが供給される。出力音声SOa、SObは、相異なる所定地点Pa、Pbで各々に認識されるべき音声を意味する。音声処理部420では、出力音声SOa、SObが各々にBPフィルタ421a、421bにより帯域分割されて複数の分割音声SDa、SDbが生成される。
【0048】
なお、出力音声SOa、SObは、同一方法で分割されてもよく、相異なる方法で分割されてもよい。また、出力音声SOは、2つ以上でもよく、同一の音声でもよい。また、分割音声SDa、SDbの数は、同一でもよく、相異なってもよい。
【0049】
複数の分割音声SDa、SDbは、出力音声SOa、SOb毎に音量調整部422a、422bおよび出力遅延部423a、423bにより音量調整および出力遅延処理を施され、ミキサ424に供給される。
【0050】
ここで、出力音声SOaの分割音声SDaについては、複数の分割音声SDaが所定地点Paに略同一の音量で同時に伝播するように、音量調整および出力遅延処理を施される。出力音声SObの分割音声SDbについても、同様に処理が施される。
【0051】
そして、出力音声SOaの分割音声SDaは、出力音声SObの分割音声SDbと合成され、分割音声組SDa、SDbとして複数のスピーカSに供給されて別々に出力される。
【0052】
本実施形態では、図9に示すように、4つのスピーカS1〜S4が相異なる距離を隔てて所定地点Pa、Pbを囲むように配置されている。このため、音声処理システム400では、4つの分割音声組SDa、SDbがスピーカS1〜S4から相異なる音量で相異なる時点に出力される。
【0053】
図9には、スピーカS1〜S4から所定地点Pa、Pbに至る分割音声組SDa、SDbの伝播状況が示されている。図9には、分割音声組SDa、SDbの伝播範囲が示されていないが、分割音声組SDa、SDbは、所定地点Pa、Pbまで伝播し、かつ、所定地点Pa、Pbを大きく超えて伝播しないように音量調整される。なお、出力音声SOおよび所定地点Pの数は、3つ以上でもよい。
【0054】
図9に示すように、所定地点Paでは、出力音声SOaの分割音声SDa1〜SDa4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SDa1〜SDa4が合成されて出力音声SOaが復元される。同様に、所定地点Pbでは、出力音声SObの分割音声SDb1〜SDb4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SDb1〜SDb4が合成されて出力音声SObが復元される。
【0055】
これにより、所定地点Pa、Pbでは、出力音声SOa、SObの認識性が各々に向上する。一方、所定地点Pa、Pb以外では、出力音声SOa、SOb毎の分割音声SDa1〜SDa4、SDb1〜SDb4が同時に伝播せず、出力音声SOa、SObが復元されないので、出力音声SOa、SObが認識され難くなる。
【0056】
[5.第5の実施形態]
つぎに、図10、図11を参照して、第5の実施形態に係る音声処理システム500について説明する。図10および図11には、音声処理システム500の構成および動作が各々に示されている。なお、以下では、第1〜第4の実施形態と重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態では、図10に示すように、音声処理装置510は、音声処理部520、設定部530、制御部540、および位置特定部550からなる。音声処理部520は、複数の処理系列を有しており、各処理系列は、BPフィルタ521、音量調整部522、出力遅延部523からなる。
【0058】
位置特定部550には、移動対象の現在位置Pを示すセンサ値が供給される。位置特定部550は、センサ値に基づき、移動対象の現在位置Pを特定し、位置情報として制御部540に供給する。
【0059】
センサ値は、カメラによる映像情報、マイクによる音声情報、床面センサによる接触情報等を用いて捉えられた移動対象の現在位置Pを示している。なお、位置特定部550は、移動対象の位置情報の変化に基づき、移動対象の将来位置を予測してもよい。
【0060】
複数の分割音声SDは、音量調整部522および出力遅延部523により音量調整および出力遅延処理を施され、複数のスピーカSに供給されて別々に出力される。制御部540は、移動対象の位置情報を位置特定部550から供給され、スピーカSと移動対象の位置関係を算出する。そして、制御部540は、スピーカSと移動対象の位置関係に基づき、音量調整および出力遅延処理を行うために必要な演算処理を行う。
【0061】
本実施形態では、図11に示すように、4つのスピーカS1〜S4が相異なる距離を隔てて移動対象の位置Pa、Pbを囲むように配置されている。このため、音声処理システム500では、4つの分割音声SD1〜SD4がスピーカS1〜S4から相異なる音量で相異なる時点に出力される。
【0062】
図11には、スピーカS1〜S4から移動対象の位置Pa、Pbに至る分割音声SDa1〜SDa4、SDb1〜SDb4の伝播状況が示されている。図11に示すように、移動対象の移動前の位置Paには、分割音声SDa1〜SDa4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SDa1〜SDa4が合成されて出力音声SOaが復元される。また、移動対象が移動すると、移動後の位置Pbにも、分割音声SDb1〜SDb4が略同一の音量で同時に伝播し、分割音声SDb1〜SDb4が合成されて出力音声SObが復元される。
【0063】
つまり、移動対象の移動に応じて、出力音声SOa、SObが認識されるべき移動対象の位置Pa、Pbを移動させることができる。
【0064】
これにより、移動対象の現在位置Pa、Pbでは、出力音声SOa、SObの認識性が向上する。一方、移動対象の現在位置Pa、Pb以外では、分割音声SDa1〜SDa4、SDb1〜SDb4が同時に伝播せず、出力音声SOa、SObが復元されないので、出力音声SOa、SObが認識され難くなる。
【0065】
[6.まとめ]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る音声処理システム100、200、300、400、500によれば、出力音声SOが帯域分割されて相異なる分割音声SDが生成される。そして、相異なる分割音声SDは、所定地点Pを基準として相異なる方向に配置された複数のスピーカSから出力され、所定地点Pに同時に伝播される。ここで、相異なる分割音声SDは、同一地点に同時に伝播しない限り出力音声SOとして認識されないように生成される。これにより、所定地点Pでは、相異なる分割音声SDが合成されて出力音声SOが復元されるので、所定地点で出力音声SOの認識性を向上させることができる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0067】
例えば、上記説明では、複数の音源Sが4つのスピーカS1〜S4からなる場合について説明したが、音源Sの数は、2つ、3つ、5つ以上でもよい。また、第2の実施形態は、第3〜第5の実施形態と組合されてもよい。同様に、第4の実施形態は、第5の実施形態と組合されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100、200、300、400、500 音声処理システム
110、210、310、410、510 音声処理装置
120、220、320、420、520 音声処理部
130、230、330、430、530 設定部
140、240、340、440、540 制御部
550 位置特定部
121、221、321、421a、421b、521 BPフィルタ
122、222、322、422a、422b、522 音量調整部
123、223、323、423a、423b、523 出力遅延部
224、424 出力遅延部
S、S1〜S4 スピーカ
SO、SOa、SOb 出力音声
SD、SDa、SDb、SDa1〜SDa4、SDb1〜SDb4 分割音声
P、Pa、Pb 所定地点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り前記出力音声として認識されないように前記相異なる分割音声を生成し、複数の音源に各々に供給する音声処理部と、
前記相異なる分割音声が所定地点を基準として相異なる方向に配置された前記複数の音源から出力され、前記所定地点に同時に伝播するように前記音声処理部を制御する制御部と
を備える音声処理装置。
【請求項2】
一の音源と他の音源が前記所定地点から相異なる距離を隔てて配置される場合において、
前記制御部は、各音源と前記所定地点の間の距離に応じて前記各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、前記各音源と前記所定地点の間の距離の差に応じて前記各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように、前記音声処理部を制御する、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
相異なる所定地点について、前記所定地点毎に一の音源と他の音源が前記所定地点から相異なる距離を隔てて配置される場合において、
前記音声処理部は、前記相異なる所定地点に各々に対応する出力音声について、前記出力音声毎に前記相異なる分割音声に帯域分割し、一の出力音声の分割音声に他の出力音声の分割音声を合成して前記複数の音源に各々に供給し、
前記制御部は、前記出力音声毎に前記出力音声に対応する所定地点と各音源の間の距離に応じて前記各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、前記出力音声に対応する所定地点と前記各音源の間の距離の差に応じて前記各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように、前記音声処理部を制御する、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記音声処理部は、前記相異なる分割音声にダミー音声を合成して前記複数の音源に各々に供給する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の音声処理装置。
【請求項5】
移動対象の現在位置を特定または推定する位置特定部をさらに備え、
前記制御部は、前記移動対象の現在位置と各音源の間の距離に応じて前記各音源に供給する分割音声の音量を調整し、かつ、前記移動対象の現在位置と前記各音源の間の距離の差に応じて前記各音源に供給する分割音声の出力を遅延するように、前記音声処理部を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の音声処理装置。
【請求項6】
前記複数の音源が前記所定地点から同一の距離を隔てて配置される、請求項1または4に記載の音声処理装置。
【請求項7】
音声処理装置と、
所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源とを有し、
前記音声処理装置は、
出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り前記出力音声として認識されないように前記相異なる分割音声を生成し、前記複数の音源に各々に供給する音声処理部と、
前記相異なる分割音声が前記複数の音源から出力され、前記所定地点に同時に伝播するように前記音声処理部を制御する制御部と
を備える音声処理システム。
【請求項8】
出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り前記出力音声として認識されないように前記相異なる分割音声を生成し、複数の音源に各々に供給するための音声処理を行うステップと、
相異なる分割音声が所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源から出力され、所定地点に同時に伝播するように、前記音声処理を制御するステップと
を含む音声処理方法。
【請求項9】
出力音声を相異なる分割音声に帯域分割し、同一地点に同時に伝播しない限り前記出力音声として認識されないように前記相異なる分割音声を生成し、複数の音源に各々に供給するための音声処理を行うステップと、
相異なる分割音声が所定地点を基準として相異なる方向に配置された複数の音源から出力され、所定地点に同時に伝播するように、前記音声処理を制御するステップと
を含む音声処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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