説明

音楽データ再生装置

【課題】階層化されたフォルダに格納された音楽データの再生に必要な操作を簡略化するとともに再生開始までの時間を短縮することができる音楽データ再生装置を提供すること。
【解決手段】オーディ装置1は、USBメモリ22に記録されて階層化されたフォルダのいずれかに格納された音楽データを再生するために、いずれかのフォルダを指定するフォルダ指定部12と、フォルダ指定部12によって指定されたフォルダに格納された下位のフォルダに格納された音楽データを抽出する音楽データ抽出部14と、音楽データ抽出部14によって抽出された音楽データを再生するオーディオ処理部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層化されたフォルダ構成を有する音楽データを読み出して再生する音楽データ再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、階層化されたフォルダに格納された音楽データを記憶媒体に記録しておいて、表示された各フォルダを指定することによりこのフォルダに含まれる音楽データの生成を行うようにしたデータ再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このデータ再生装置では、再生可能な音楽データが格納されていない未格納フォルダを、音楽データが格納されている他のフォルダと識別可能な状態で表示したり、フォルダを指定する際に未格納フォルダをスキップしたりしてデータの検索時間の増大を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−250036号公報(第3−8頁、図1−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示されたデータ再生装置では、未格納フォルダを指定することは回避することができるが、音楽データが格納されたフォルダを指定して音楽データを実際に特定して再生を行うまでの操作が煩雑であり再生までに時間がかかるという問題があった。例えば、複数階層のフォルダ構成を有し、最下層のフォルダに音楽データが格納されている場合には、上位階層から下位階層に向けて順番にフォルダを指定していって最終的に最下層の音楽データを特定して再生を行う必要があるため、音楽データを特定するまでの操作回数が多くなり、その分再生開始までの時間がかかることになる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、階層化されたフォルダに格納された音楽データの再生に必要な操作を簡略化するとともに再生開始までの時間を短縮することができる音楽データ再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の音楽データ再生装置は、記憶媒体に記録されて階層化されたフォルダのいずれかに格納された音楽データを再生する音楽データ再生装置において、いずれかのフォルダを指定するフォルダ指定手段と、フォルダ指定手段によって指定されたフォルダに格納された下位のフォルダに格納された音楽データを抽出する音楽データ抽出手段と、音楽データ抽出手段によって抽出された音楽データを再生する再生手段とを備えている。
【0007】
いずれかのフォルダが指定されたときに、この指定されたフォルダに格納された下位のフォルダについて音楽データが抽出されて再生が行われるため、下位のフォルダを特定して音楽データを探す必要がなく、階層化されたフォルダに格納された音楽データの再生に必要な操作を簡略化するとともに再生開始までの時間を短縮することができる。
【0008】
また、上述した音楽データ抽出手段は、フォルダ指定手段によって指定されたフォルダに格納された音楽データと、このフォルダに格納された下位のフォルダに格納された音楽データとを抽出し、再生手段は、音楽データ抽出手段によって抽出された音楽データを再生することが望ましい。これにより、一つのフォルダを指定するだけで、このフォルダより下位のフォルダ構成に応じた操作を行うことなくこのフォルダに格納された全ての音楽データを抽出して再生することが可能になり、操作の大幅な簡略化が可能となる。
【0009】
また、同一階層のフォルダおよびファイルが含まれる選択画面を表示する表示手段と、表示手段によって表示された選択画面に含まれる同一階層のフォルダおよびファイルの中からいずれかを選択する操作を行う操作手段とをさらに備え、フォルダ指定手段は、操作手段によってフォルダが選択されたときにこの選択されたフォルダを指定することが望ましい。これにより、表示されたフォルダを選択するだけで、このフォルダより下位のフォルダに格納された音楽データを特別な操作を行うことなく抽出して再生を行うことができる。
【0010】
また、上述した選択画面には、表示されているフォルダを選択するとともに、このフォルダに格納された音楽データと下位のフォルダに格納された音楽データの再生を指示する第1の領域と、このフォルダに格納された音楽データおよび下位のフォルダが含まれる選択画面の表示への切り替えを指示する第2の領域とが含まれており、表示手段は、操作手段によって第2の領域が選択されたときに、対応するフォルダに格納された音楽データおよび1階層下のフォルダが含まれる選択画面を表示することが望ましい。これにより、表示されたフォルダより下位のフォルダに格納された音楽データを特別な操作を行うことなく抽出して再生する動作と、フォルダを指定してその下位のフォルダを辿りながら音楽データを検索する従来の動作とを選択的に実行することが可能となり、利用者の好み等に対処して操作性を向上させることができる。
【0011】
また、上述した利用者の音声を集音するマイクロホンと、マイクロホンによって集音した音声に対して音声認識処理を行う音声認識手段とをさらに備え、フォルダ指定手段は、音声認識手段による音声認識処理によって特定された内容に基づいてフォルダを指定することが望ましい。特に、利用者によってフォルダの名称が読み上げられたときに、音声認識手段による音声認識処理によってこの名称が特定され、フォルダ指定手段は、特定された名称に対応するフォルダを指定することが望ましい。これにより、音声認識による音声操作を行う場合の操作の簡略化が可能になり、各階層のフォルダを音声で指定して下位フォルダの音楽データを指定する場合に比べて大幅な時間短縮が可能となる。
【0012】
また、上述した記憶媒体に記録されて階層化されたフォルダの名称およびこのフォルダに格納された音楽データを示すファイルの名称を抽出してこれらの名称に対応する音声認識辞書を作成する辞書作成手段をさらに備え、音声認識手段は、辞書作成手段によって作成された音声認識辞書を用いて音声認識処理を行うことが望ましい。これにより、音声認識処理の対象となるフォルダやファイルの名称を限定することができ、音声認識処理の精度を向上させるとともに、音声認識処理に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、上述した記憶媒体は挿抜可能であり、辞書作成手段は、記憶媒体が接続されたときに音声認識辞書を作成することが望ましい。記憶媒体を接続するたびにその都度処理に必要なだけの音声認識辞書が作成されるため、音声認識辞書を格納するための容量を低減することができる。
【0014】
また、上述した再生手段は、複数の音楽データの再生が一巡したときに、最初に再生した音楽データに戻って再度音楽データの再生を行うことが望ましい。これにより、車載のオーディオ装置等に本発明を適用した場合に、特別な操作を行うことなく音楽再生を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態のオーディオ装置の構成を示す図である。
【図2】階層化されたフォルダ構成の具体例を示す図である。
【図3】フォルダおよびファイルのそれぞれに付与されるIDの具体例を示す図である。
【図4】選択画面を用いて音楽再生を行う動作手順を示す流れ図である。
【図5】選択画面の具体例を示す図である。
【図6】エラー画面の表示例を示す図である。
【図7】音声認識辞書作成の動作手順を示す流れ図である。
【図8】音声認識処理を用いて音楽再生を行う動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の音楽データ再生装置を適用した一実施形態のオーディオ装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態のオーディオ装置の構成を示す図である。このオーディオ装置は、例えば車両に搭載されている。
【0017】
図1において、オーディオ装置1は、制御部10、USB(Universal Serial Bus)インタフェース部(USB I/F)20、音声認識処理部30、マイクロホン38、オーディオ処理部40、増幅器42、表示部50、操作部60を備えている。
【0018】
制御部10は、オーディオ装置1の全体を制御する。制御部10の詳細については後述する。USBインタフェース部20は、外部の記憶媒体としてのUSBメモリ22との間で信号の入出力を行うためのものであり、USBポートやUSBホストコントローラが含まれる。USBメモリ22には音楽データが記録されている。この音楽データの記録は、階層化されたフォルダを用いて行われる。例えば、利用者は、階層化された複数のフォルダ構成を任意に形成することができ、この中からいずれかのフォルダを指定して所望の音楽データを格納することができる。
【0019】
図2は、階層化されたフォルダ構成の具体例を示す図である。図2に示す例では、ルートフォルダであるフォルダ100の下に、第1階層の3つのフォルダ110、120、130が含まれる。フォルダ110の下には第2階層の1つのフォルダ111が含まれる。このフォルダ111には、音楽データとしての3つのファイル111a、111b、111cが格納されている。フォルダ120の下には第2階層の1つのフォルダ121が含まれ、その下には第3階層のフォルダ1210が含まれる。このフォルダ1210には、音楽データとしての3つのファイル1210a、1210b、1210cが格納されている。フォルダ130の下には第2階層の3つのフォルダ131、132、133と1つの音楽データとしてのファイル130aが含まれる。さらに、フォルダ131には、音楽データとしての3つのファイル131a、131b、131cが格納されている。また、フォルダ133には、音楽データとしての1つのファイル133aが格納されている。なお、音楽データのデータ形式は本実施形態のオーディオ装置1で再生可能なものであれば異なるデータ形式の音楽データが混在していてもよい。
【0020】
音声認識処理部30は、マイクロホン38によって集音した利用者の音声に対して音声認識処理を行うためのものであり、音声認識辞書作成部32、音声認識辞書34、音声認識部36を含んでいる。音声認識辞書作成部32は、USBメモリ22に記録された各フォルダの名称およびこのフォルダに格納された音楽データとしての各ファイルの名称を読み上げた音声に対応する音声認識辞書34を作成する。この音声認識辞書34の作成はUSBメモリ22をオーディオ装置1に接続した際(USBポートに差し込んだ際)に行われるが、使用者による指示に応じて作成を開始するようにしてもよい。
【0021】
音声認識部36は、作成された音声認識辞書34を用いて、マイクロホン38によって集音した利用者の音声に対して音声認識処理を行い、利用者が指定したフォルダあるいはファイルを特定する。
【0022】
オーディオ処理部40は、制御部10によってUSBメモリ22から読み出される音楽データを再生するためのものであり、データ形式毎の復号処理等を行ってオーディオ信号を出力する。このオーディオ信号は、増幅器42によって増幅され、スピーカ44から出力される。なお、実際には、2チャンネルあるいはそれ以上のチャンネル数のオーディオ信号が再生されて出力されるが、図1に示す例では、簡略化して1つの増幅器42と1つのスピーカ44が図示されている。
【0023】
表示部50は、音楽データの再生内容(曲名、アーティスト名、再生経過時間等の情報)を表示したり、再生対象となる音楽データを利用者が指定するための選択画面を表示する。
【0024】
操作部60は、利用者の再生開始/終了指示や音量、音質の設定指示などを受け付けるためのものであり、各種のスイッチや操作つまみ等が備わっている。また、本実施形態では、表示部50に選択画面が表示された時点で、この選択画面に含まれるフォルダ名やファイル名を利用者が指などで直接指し示すことにより、フォルダやファイルの特定、および特定したファイルの再生や特定したフォルダや下位のフォルダに格納されたファイルの再生を指示することができるようになっており、このような選択画面を用いた操作を可能とするために、指し示された指などの位置を検出するタッチパネルが、操作部60の一部として備わっている。なお、タッチパネルを用いる代わりに、リモートコントロールユニット等を用いて選択画面の一部を、利用者の指示に応じて選択するようにしてもよい。
【0025】
次に、制御部10について説明する。図1に示すように、制御部10は、フォルダ指定部12、音楽データ抽出部14、選択画面作成部16、ID管理部18を含んでいる。フォルダ指定部12は、USBメモリ22に含まれるいずれかのフォルダやファイルを指定する。この指定は、表示部50に表示された選択画面に含まれる1つあるいは複数のフォルダあるいはファイルの中から、操作部60を用いていずれか1つを選択することにより行われる。あるいは、この指定は、音声認識処理部30による音声認識処理によって特定された利用者の発話内容に基づいて1つのフォルダあるいはファイルを特定することにより(具体的には発話されたフォルダ名あるいはファイル名と一致するフォルダあるいはファイルを特定することにより)行われる。
【0026】
音楽データ抽出部14は、フォルダ指定部12によってフォルダが指定されたときに、この指定されたフォルダに格納されたファイルや、このフォルダよりも下位のフォルダに格納されたファイルを検索し、各ファイルの音楽データを抽出する。
【0027】
選択画面作成部16は、操作部60を用いてフォルダ指定を行う際に用いられる選択画面を作成する。この選択画面が表示部50に表示される。ID管理部18は、USBメモリ22に記録されたフォルダおよびファイルのそれぞれに対して、フォルダ構造に対応するIDを付与する。
【0028】
図3は、フォルダおよびファイルのそれぞれに付与されるIDの具体例を示す図である。図3に示すように、IDには「属性」、「ファイル/フォルダ有無」、「階層識別ID」、「ファイル/フォルダID」が含まれる。「属性」は、IDが付与された対象がファイルであるいかフォルダであるかを示す。「ファイル/フォルダ有無」は、ID付与の対象がフォルダである場合にこのフォルダにファイルあるいは下位のフォルダが存在するか否かを示す。「階層識別ID」は、ID付与の対象となるファイルあるいはフォルダの階層を示す。「ファイル/フォルダID」は、ファイルあるいはフォルダに対応する識別子である。
【0029】
上述したフォルダ指定部12がフォルダ指定手段に、音楽データ抽出部14が音楽データ抽出手段に、オーディオ処理部40が再生手段に、表示部50が表示手段に、操作部60が操作手段に、音声認識部36が音声認識手段に、音声認識辞書作成部32が辞書作成手段にそれぞれ対応する。
【0030】
オーディオ装置1はこのような構成を有し、次にその動作を説明する。本実施形態のオーディオ装置では、利用者がフォルダやファイルを指定して音楽データを再生を指示する方法として、(1)表示された選択画面を用いてフォルダやファイルを指定して音楽再生を行う方法と、(2)利用者がフォルダ名やファイル名を音声で指示して音楽再生を行う方法の2種類がある。以下、それぞれの方法について説明する。
【0031】
(1)表示された選択画面を用いてフォルダやファイルを指定して音楽再生を行う場合
図4は、選択画面を用いて音楽再生を行う動作手順を示す流れ図である。なお、この動作に先立ってUSBメモリ22がオーディオ装置1に接続された際に、ID管理部18によってUSBメモリ22に記録されたフォルダおよびファイルのそれぞれにID(図3)が付与されており、このIDを参照しながら、階層化された下位のフォルダや各フォルダに格納されたファイルの検索等が行われる。
【0032】
まず、選択画面作成部16は、同一階層のフォルダおよびファイルが含まれる選択画面を作成し、表示部50に表示する(ステップ100)。例えば、USBメモリ22が接続された直後の初期状態では、図2に示すルートフォルダとしてフォルダ100に格納された第1階層のフォルダおよびファイルが含まれる選択画面が作成され、表示される。
【0033】
図5は、選択画面の具体例を示す図である。この選択画面には、図2に示す第1階層に対応する3つのフォルダ110、120、130の名称を含むフォルダ名称領域200、202、204と、それぞれのフォルダに含まれるファイルおよび下位のフォルダに含まれるファイルを検索して各ファイルの音楽データの再生を指示するための再生指示領域210、212、214とが含まれている。また、各フォルダ名称領域200、202、204には、1つ下位(この場合には第2階層)のフォルダ名/ファイル名を含む選択画面への表示の切り替えを指示する下位切替指示領域220、222、224が含まれている。上述した再生指示領域210、212、214が第1の領域に、下位切替指示領域220、222、224が第2の領域にそれぞれ対応する。
【0034】
なお、図2に示す例では第1階層にはファイルが含まれないため、選択画面にファイル名が表示されないが、例えば、フォルダ130に格納された第2階層に対応した選択画面の場合には1つ(ファイルが複数ある場合にはその数に対応して数)のファイル名称領域230が選択画面に含まれる。また、図5に示す選択画面に含まれるフォルダ名称領域200等は、このフォルダあるいは下位のフォルダに音楽データのファイルが格納されている場合に限り表示する場合と、ファイルの有無に関係なく表示する場合が考えられる。
【0035】
次に、フォルダ指定部12は、操作部60を用いて利用者による選択指示がなされたか否かを判定する(ステップ102)。選択画面に含まれるどの領域に対しても選択指示がなされない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。
【0036】
また、選択画面に含まれるいずれかの領域に対して選択指示がなされるとステップ102の判定において肯定判断が行われる。次に、フォルダ指定部12は、選択指示によってファイルが選択されたか否かを判定する(ステップ104)。ファイルの選択は、図5に示すファイル名称領域230を利用者が指などで直接指し示すことにより行われる。ファイルが選択された場合にはステップ104の判定において肯定判断が行われる。この場合には、この選択されたファイルに対応する音楽データが音楽データ抽出部14によって抽出され、オーディオ処理部40によって音楽再生処理が行われる(ステップ106)。
【0037】
一方、ファイル選択が行われない場合にはステップ104において否定判断が行われる。次に、フォルダ指定部12は、下位フォルダが選択されたか否かを判定する(ステップ108)。下位フォルダの選択は、下位切替指示領域220等を利用者が指などで直接指し示すことにより行われる。下位フォルダが選択された場合にはステップ108の判定において肯定判断が行われる。例えば、下位切替指示領域224が指し示された場合には、ステップ100に戻って、フォルダ130に格納された3つのフォルダ131、132、133および1つのファイル130aに対応する新たな選択画面が作成、表示され、ステップ102の判定動作以降が繰り返される。
【0038】
また、下位フォルダの選択操作ではなく、再生指示領域210、212、214のいずれかが指し示された場合にはステップ108の判定において否定判断が行われる。この場合には、音楽データ抽出部14は、再生指示領域210等で名称が示されたフォルダに格納されたファイルあるいはさらに下位のフォルダに格納されたファイルの検索を行って音楽データを抽出する(ステップ110)。例えば、図5に示す再生指示領域214が指し示された場合には、フォルダ130の1つ下位の第2階層に格納されたファイル130aと、フォルダ131に格納された第3階層の3つのファイル131a、131b、131cと、フォルダ133に格納された第3階層の1つのファイル133aが検索によって特定され、これらの各ファイルの音楽データが抽出される。
【0039】
次に、このようにして1つあるいは複数の音楽データが音楽データ抽出部14によって抽出されると、オーディオ処理部40は、所定の順番で各音楽データに対して音楽再生処理を行う(ステップ112)。
【0040】
なお、図5に示した選択画面において、音楽データのファイルの有無に関係なくフォルダ名称領域200等を表示する場合には、再生指示領域210等を利用者が指し示しても、対応するフォルダおよび下位のフォルダに音楽データのファイルが格納されていない場合がある。このような場合には、図6に示すようなエラー画面が表示され、利用者によって「OK」領域が指し示された後、ステップ100に戻って選択画面表示以降の動作が繰り返される。
【0041】
このように、本実施形態のオーディオ装置1では、いずれかのフォルダが指定されたときに、この指定されたフォルダだけでなく、このフォルダに格納された下位のフォルダについても音楽データが抽出されて音楽再生処理が行われるため、下位のフォルダを特定して音楽データを探す必要がなく、階層化されたフォルダに格納された音楽データの再生に必要な操作を簡略化するとともに再生開始までの時間を短縮することができる。特に、一つのフォルダを指定するだけで、このフォルダより下位のフォルダ構成に応じた操作を行うことなくこのフォルダに格納された全ての音楽データを抽出して再生することが可能になり、操作の大幅な簡略化が可能となる。
【0042】
また、選択画面に含まれるフォルダに対応する再生指示領域を指し示すだけで、このフォルダより下位のフォルダに格納された音楽データを特別な操作を行うことなく抽出して再生を行うことができるため、操作回数の低減による操作性向上が可能となる。
【0043】
また、フォルダを指定した音楽再生指示だけでなく、フォルダを指定してこのフォルダに格納されたファイルや下位のフォルダを含む選択画面に切り替えることができるため、フォルダを指定してその下位のフォルダを辿りながら音楽データを検索する従来の操作を選択することもでき、利用者の好み等に対処して操作性を向上させることができる。
【0044】
(2)音声でフォルダ名やファイル名を指示して音楽再生を行う場合
音声認識処理を用いてフォルダ名やファイル名を特定する処理の精度を向上させるとともに処理時間を短縮するために、本実施形態では、USBメモリ22が接続された際にこのUSBメモリ22に対応する音声認識辞書34が作成される。
【0045】
図7は、音声認識辞書34作成の動作手順を示す流れ図である。音声認識辞書作成部30は、USBメモリ22が接続されたか否かを判定しており(ステップ200)、接続されるまで否定判断を行ってこの判定を繰り返す。また、USBメモリ22が接続されるとステップ200の判定において肯定判断が行われ、次に、音声認識辞書作成部32は、USBメモリ22に記録された全てのフォルダおよびファイルの名称を抽出し(ステップ202)、これらの名称を読み上げる音声を特定するために用いる音声認識辞書を作成する(ステップ204)。
【0046】
なお、この段階では話者が特定されていないため、各名称に対応して女性の音声に対応する音声認識辞書と男性の音声に対応する音声認識辞書を同時に作成する等の工夫をして音声認識精度を上げることが望ましい。また、ステップ202のフォルダ名およびファイル名の抽出処理は、ID管理部18によるIDの付与動作と一部重複するため(例えば、フォルダやファイルの検索動作)、ステップ202の動作の後あるいは前にID管理部18によるID付与動作を実施するようにしてもよい。
【0047】
図8は、音声認識処理を用いて音楽再生を行う動作手順を示す流れ図である。フォルダ名あるいはファイル名を読み上げるための利用者による発話があると(ステップ300)、音声認識部36は、マイクロホン38から取り込んだ発話音声に対して音声認識処理を行って、発話内容であるフォルダ名あるいはファイル名を特定する(ステップ302)。なお、実際の音声認識処理を用いた操作では、発話音声には、フォルダ名やファイル名以外の操作音声や指示音声も含まれるが、説明を簡単にするために、フォルダ名およびファイル名のいずれかが音声によって指示される場合を考えるものとする。また、選択画面を用いたフォルダ等の指示と異なり、利用者は、図2に示したフォルダ構造の任意の階層に含まれるフォルダ名あるいはファイル名を直接音声によって指示することができるものとする。
【0048】
次に、フォルダ指定部12は、音楽データに対応するファイルが選択されたか否かを判定する(ステップ304)。ステップ302の音声認識処理によってファイル名が特定された場合には肯定判断が行われる。この場合には、この選択されたファイルに対応する音楽データが音楽データ抽出部14によって抽出され、オーディオ処理部40によって音楽再生処理が行われる(ステップ306)。
【0049】
一方、ステップ302の音声認識処理によってフォルダ名が特定された場合にはステップ304の判定において否定判断が行われる。このようにファイル選択ではなくフォルダ選択が行われた場合には、次に、音楽データ抽出部14は、選択されたフォルダに格納されたファイルあるいはさらに下位のフォルダに格納されたファイルの検索を行って音楽データを抽出する(ステップ308)。例えば、図2に示す階層構造のフォルダ130が特定された場合には、このフォルダ130の1つ下位の第2階層に格納されたファイル130aと、フォルダ131に格納された第3階層の3つのファイル131a、131b、131cと、フォルダ133に格納された第3階層の1つのファイル133aが特定され、これらの各ファイルの音楽データが抽出される。
【0050】
次に、このようにして1つあるいは複数の音楽データが音楽データ抽出部14によって抽出されると、オーディオ処理部40は、所定の順番で各音楽データに対して音楽再生処理を行う(ステップ310)。
【0051】
なお、音楽データが格納されていないフォルダを利用者が発話によって指定した場合には、「このフォルダには音楽データははありませんので、他のフォルダを指定して下さい」等のエラーメッセージをスピーカ44から出力した後(例えば、このエラーメッセージが音楽データ抽出部14やID管理部18によって作成される)、ステップ300に戻って利用者による発話以降の動作が繰り返される。また、ステップ308において下位のフォルダに含まれるファイルを検索する際に、下位のフォルダが複数存在する場合には、その旨を音声メッセージで利用者に知らせて、その中から一つを音声で選択させるようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施形態のオーディオ装置1では、いずれかのフォルダ名を音声で指示するだけで、その下位のフォルダに格納された音楽データを抽出して音楽生成を行うことができるため、音声認識による音声操作を行う場合の操作の簡略化が可能になり、各階層のフォルダを音声で指定して下位フォルダの音楽データを指定する場合に比べて大幅な時間短縮が可能となる。
【0053】
また、USBメモリ22に記録されたフォルダ名およびファイル名を抽出してこれらの名称に対応する音声認識辞書を作成しているため、音声認識処理の対象となるフォルダやファイルの名称を限定することができ、音声認識処理の精度を向上させるとともに、音声認識処理に要する時間を短縮することができる。特に、USBメモリ22を接続するたびにその都度処理に必要なだけの音声認識辞書が作成されるため、音声認識辞書を格納するための容量を低減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、抽出された音楽データを用いた音楽再生(図4のステップ106、112、図8のステップ306、310)が終了した後に一連の処理を終了したが、これらの音楽再生をエンドレスで繰り返すようにしてもよい。例えば、複数のファイルが検索されて複数の音楽データに対応する音楽再生が終了した後、最初に再生した音楽データに戻って再度音楽データの再生を行うようにしてもよい。これにより、車載のオーディオ装置1について、特別な操作を行うことなく音楽再生を継続することが可能となる。
【0055】
また、上述した実施形態では、USBメモリ22に音楽データが記録されている場合について説明したが、他の記憶媒体、例えばSDメモリ等の半導体メモリやCD、DVD等等の他の記憶媒体、あるいは、挿抜不可能なハードディスク装置等の記憶媒体に音楽データが記録されている場合にも本発明を適用することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、いずれかの階層に対応したフォルダやファイルが含まれる選択画面を表示してフォルダ等の選択を行う場合について説明したが、表示部50の表示画面が大きい場合には、図2に示すフォルダの階層化構造をそのまま選択画面として画面上に表示するようにしてもよい。この場合には、利用者は、操作部60を用いて、任意のフォルダあるいはファイルを選択するようにしてもよい。フォルダが選択された場合には、音声によってフォルダが選択された場合と同様にして、この選択されたフォルダに格納されたファイルおよびこのフォルダの下位のフォルダに格納されたファイルを選択して音楽データを抽出し、これらの音楽データに対する音楽再生を行えばよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、階層化されたフォルダのいずれかを指定してファイルを検索し、音楽データを再生するようにしたが、同様の階層化された仮想的な構造を有するプレイリスト(再生リスト)に本発明を適用してもよい。例えば、プレイリストの中で各ジャンルを設定し、その下にアーティスト名、さらにその下に各アーティストのアルバム名を設定し、アルバム名の下に実際のファイル(音楽データ)を対応づける場合を考えると、「プレイリスト」−「ジャンル」−「アーティスト」−「アルバム」の階層構造が形成されれる。これらの各階層が仮想的なフォルダであり、本発明をそのまま適用することができる。図2に示す例では、例えば、フォルダ130を「プレイリスト」に置き換える場合を考えると、第2階層のフォルダが各ジャンルに、第3階層のフォルダが各アーディスに、第4階層のフォルダが各アルバムにそれぞれ対応する。また、この場合には、図5に示した選択画面において、フォルダ名称領域204に「プレイリスト」と表示される。
【0058】
また、上述した実施形態では、選択画面を用いたフォルダ等の指定と、音声認識処理を用いたフォルダ等の指定の両方を行うことができるオーディオ装置1について説明したが、いずれか一方の指定方法のみを選択的に行うようにしてもよい。この場合には、選択されなかった指定方法のみに必要な構成は、省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上述したように、本発明によれば、いずれかのフォルダが指定されたときに、この指定されたフォルダに格納された下位のフォルダについて音楽データが抽出されて再生が行われるため、下位のフォルダを特定して音楽データを探す必要がなく、階層化されたフォルダに格納された音楽データの再生に必要な操作を簡略化するとともに再生開始までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 オーディオ装置
10 制御部
12 フォルダ指定部
14 音楽データ抽出部
16 選択画面作成部
18 ID管理部
20 USBインタフェース部(USB I/F)
30 音声認識処理部
32 音声認識辞書作成部
34 音声認識辞書
36 音声認識部
38 マイクロホン
40 オーディオ処理部
42 増幅器
50 表示部
60 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体に記録されて階層化されたフォルダのいずれかに格納された音楽データを再生する音楽データ再生装置において、
いずれかのフォルダを指定するフォルダ指定手段と、
前記フォルダ指定手段によって指定されたフォルダに格納された下位のフォルダに格納された音楽データを抽出する音楽データ抽出手段と、
前記音楽データ抽出手段によって抽出された音楽データを再生する再生手段と、
を備えることを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記音楽データ抽出手段は、前記フォルダ指定手段によって指定されたフォルダに格納された音楽データと、このフォルダに格納された下位のフォルダに格納された音楽データとを抽出し、
前記再生手段は、前記音楽データ抽出手段によって抽出された音楽データを再生することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
同一階層のフォルダおよびファイルが含まれる選択画面を表示する表示手段と、
前記表示手段によって表示された選択画面に含まれる同一階層のフォルダおよびファイルの中からいずれかを選択する操作を行う操作手段と、
をさらに備え、前記フォルダ指定手段は、前記操作手段によってフォルダが選択されたときにこの選択されたフォルダを指定することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記選択画面には、表示されているフォルダを選択するとともに、このフォルダに格納された音楽データと下位のフォルダに格納された音楽データの再生を指示する第1の領域と、このフォルダに格納された音楽データおよび下位のフォルダが含まれる前記選択画面の表示への切り替えを指示する第2の領域とが含まれており、
前記表示手段は、前記操作手段によって前記第2の領域が選択されたときに、対応するフォルダに格納された音楽データおよび1階層下のフォルダが含まれる前記選択画面を表示することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
利用者の音声を集音するマイクロホンと、
前記マイクロホンによって集音した音声に対して音声認識処理を行う音声認識手段と、
をさらに備え、前記フォルダ指定手段は、前記音声認識手段による音声認識処理によって特定された内容に基づいてフォルダを指定することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項6】
請求項5において、
利用者によってフォルダの名称が読み上げられたときに、前記音声認識手段による音声認識処理によってこの名称が特定され、
前記フォルダ指定手段は、特定された名称に対応するフォルダを指定することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項7】
請求項5または6において、
記憶媒体に記録されて階層化されたフォルダの名称およびこのフォルダに格納された音楽データを示すファイルの名称を抽出してこれらの名称に対応する音声認識辞書を作成する辞書作成手段をさらに備え、
前記音声認識手段は、前記辞書作成手段によって作成された音声認識辞書を用いて音声認識処理を行うことを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記記憶媒体は挿抜可能であり、
前記辞書作成手段は、前記記憶媒体が接続されたときに前記音声認識辞書を作成することを特徴とする音楽データ再生装置。
【請求項9】
請求項2において、
前記再生手段は、複数の前記音楽データの再生が一巡したときに、最初に再生した音楽データに戻って再度音楽データの再生を行うことを特徴とする音楽データ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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