説明

音楽再生装置および記録媒体

【課題】
従来の音楽再生装置の構成では、同一の記録媒体に音声と楽曲とを同じビットレートで保存しなければならないため、記録媒体の容量を多く消費するという問題があった。
【解決手段】
音声と伴奏入りの音楽データ20と、これよりビットレートを低くした音声のみの音声データ21とを同一の記録媒体2に保存しておく。再生手段10により音楽データを再生するのと同時にFS変換手段11により音声データ21のビットレートを伸長することで音声を再生し、再生された音楽より再生された音声を減算手段15により減算することにより、カラオケ用の楽曲データを再生する。音声は通常の音楽データやカラオケ用の楽曲データに比べて周波数帯域が狭いため、ビットレートを低くしても同レベルの音質を保つことが出来、カラオケ用のデータを記録するための記録媒体の容量を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽再生装置および音楽記録媒体に関するものであり、特に音声なしの楽曲(伴奏)のみの音を再生する、カラオケ用途に用いる音楽再生装置および記録媒体の改良を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラオケ用途に用いる音楽再生装置は、伴奏付きの音楽のデータである音楽データからこれに含まれる音声のデータである音声データ(以下、音声と称す)をキャンセルするために、その左チャンネル(以下、Lchと称す)データと右チャンネル(以下、Rchと称す)データの同相信号を検出し、その同相信号を前記Lch/Rchデータから減算することで音声をキャンセルするようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この同相信号には音声データだけではなく、音声以外の音楽(伴奏)データである楽曲データ(以下、楽曲と称す)も含む場合があり、また、ボーカルが複数名存在する場合などでは、音声が同相信号以外にも存在する場合があった。
【0004】
そのため、前述の従来の音楽再生装置では、音声を十分にキャンセルすることが出来なかったり、楽曲もキャンセルされてしまうことがある、という問題があった。
【0005】
そこで、従来から、通常の音楽(楽曲と音声)のデータだけでなく、これと同じ音楽の楽曲のみのデータを、通常の音楽データと合わせて同一の記録媒体(例えばCD)に保存し、カラオケに用いる場合には、楽曲のみのデータを再生する方法が取られてきた。
【0006】
このような、従来の音楽再生装置の一例を図10に示す。
従来の音楽再生装置は、各曲ごとに、音声と楽曲とを含む音楽データ20と、音声なしの楽曲データ25とが記録された記録媒体2から、音楽データ20および楽曲データ25のいずれか一方を選択出力するための選択手段31と、この選択手段31により選択されたデータを再生する再生手段10と、使用者の音声を入力するためのマイク(音声入力手段)3と、この音声入力手段3より入力された音声を加算手段16に出力するか否かを切り替えるスイッチ手段32と、再生手段10から出力される楽曲とスイッチ手段32を介して音声入力手段3により入力された音声とを加算する加算手段16と、加算手段16により使用者の音声が加算された楽曲を音として出力する音楽出力手段4とから構成される。
【0007】
次に、動作について説明する。
記録媒体2には、音楽データ20とこの音楽の伴奏部分(楽曲)だけを収録した楽曲データ25とが記録されている。
【0008】
記録媒体2に保存されている音楽データ20もしくは楽曲データ25は、そのいずれか一方が選択手段31により選択され、その選択されたデータが再生手段10により再生される。
【0009】
選択手段31が音楽データ20を選択した場合、スイッチ手段32はオフにされ、再生手段10から出力された信号が加算手段16により加算されることなく音楽出力手段4に出力される。
【0010】
また、選択手段31が楽曲データ25を選択した場合、スイッチ手段32はオンにされ、再生手段10から出力された信号と音声入力手段3から入力された信号とが加算手段16により加算され、音楽出力手段4に加算された信号が出力される。
【0011】
このため、この従来のシステムでは、音楽のみを聞く時は、音楽データ20を選択して音楽再生装置1に入力することにより、音楽出力手段4から通常の音楽を聞くことが出来る。
【0012】
また、カラオケを行う場合には、楽曲データ25を選択し、音声入力手段3から音声を入力することで、音楽出力手段4から、使用者の音声と楽曲とがミキシングされた音楽を聞くことが出来る。
【特許文献1】特開平7−92985号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の音楽再生装置は以上のように構成されており、音楽データと楽曲データとで同じ周波数帯域(〜20kHz)を必要とする。このため、楽曲データ中には音声データは含まれないにもかかわらず音楽データと同じビットレートのデータを用意する必要がある。従って、楽曲データを記録するための容量も音楽データと同じだけ必要とし、記録媒体に多数の曲を保存することが出来ない。
【0014】
この発明は、上記のような従来のものの問題点を解決するためになされたもので、音楽データとともにそのカラオケ用のデータを同一の媒体に記録した記録媒体を再生する際、その記録媒体の記録容量を削減でき、同一容量の記録媒体の場合、従来よりも多くの曲を収録することが可能な記録媒体を再生できる音楽再生装置および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る音楽再生装置は、記録媒体に記録されている、音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを再生する再生手段と、前記記録媒体に、さらに前記音楽データより低ビットレートで記録されている、前記音声のデータである音声データを伸長再生する伸長再生手段と、前記再生手段より再生された音楽データより、前記伸長再生手段より伸長再生された音声データを減算し、楽曲のみのデータである楽曲データを出力する減算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
このことにより、音楽データの再生と同時にビットレートを低くした音声データを伸長し音楽データから減算することで、楽曲のみのデータを再生することが出来る。
【0017】
また、本発明の請求項2に係る音楽再生装置は、記録媒体に記録されている、N人(Nは2以上の整数)の音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを再生する再生手段と、前記記録媒体に、さらに前記音楽データより低ビットレートで記録されている、前記N人の音声の音声データを伸長再生するN個の伸長再生手段と、前記再生手段より再生された音楽データより、前記N個の伸長再生手段より伸長再生されたN人の音声データを減算し、楽曲のみのデータである楽曲データを出力する減算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このことにより、音楽データの再生と同時にそれぞれビットレートを低くした複数の音声データを伸長し音楽データから減算することで、音楽に複数の歌手の音声が含まれる場合でもその楽曲のみのデータを再生することが出来る。
【0019】
また、本発明の請求項3に係る音楽再生装置は、請求項1または2に記載の音楽再生装置において、前記音声データは、そのサンプリング周波数が前記音楽データのサンプリング周波数よりも低い周波数で前記記録媒体に記録されており、前記伸長再生手段は、前記音声データのサンプリング周波数を前記音楽データのサンプリング周波数に変換することにより前記音声データを伸長再生する、ことを特徴とする。
【0020】
このことにより、請求項1または2の音声再生装置において楽曲データの生成に必要な音声データを得ることが可能となる。
【0021】
また、本発明の請求項4に係る音楽再生装置は、請求項1または2に記載の音楽再生装置において、前記音声データは、時間軸領域の音声データが周波数帯域に変換されて圧縮されて前記記録媒体に記録されており、前記伸長再生手段は、圧縮された前記音声データを時間軸領域の音声データに変換することにより前記音声データを伸長再生する、ことを特徴とする。
【0022】
このことにより、請求項1または2の音声再生装置において楽曲データの生成に必要な音声データを得ることが可能となる。
【0023】
さらに、本発明の請求項5に係る記録媒体は、音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを所定のビットレートで記録してなり、さらに、前記音声のデータである音声データを、前記音楽データよりも低ビットレートで記録してなる、ことを特徴とする。
【0024】
このことにより、カラオケ用のデータの容量を減少でき、多数の曲を記録することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
従来技術では、音楽データと同じビットレートで保存する必要があった楽曲データを記録媒体に保存するのに対して、本発明ではより低ビットレートで保存できる音声データを用いて楽曲を再生することが出来るので、同一の記録媒体により多くの曲を保存することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は次のような原理により音楽データとカラオケ用のデータとを記録した記録媒体の記録容量を削減することを可能としている。
【0027】
即ち、音声データの周波数帯域は約0〜4kHzである。このため、音声データのみの場合は音質を保ったまま、サンプリング周波数を低くしたり、音声データを周波数軸領域の信号に変換した後、音として人に聞こえない周波数部分(主に高域)のデータを間引く、などの処理を行うことにより、そのビットレートを低くすることが出来る。
【0028】
従って、カラオケ用のデータとして従来の楽曲データに代えて、ビットレートを低減した音声データを記録することで記録媒体の記録容量を減少できるとともに、音楽再生装置の側で、この再生した音楽データから再生した音声データを減算することで、楽曲データを生成でき、カラオケを楽しむことが可能となる。
【0029】
以下、本発明にかかる音楽再生装置の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本発明の実施の形態1の音楽再生装置は、音声と楽曲とを含む音楽データ20と、この音楽データの音声部分であり、この音楽データに比べて低いFS(サンプリング周波数)でサンプリングされた音声データ21とが記録された記録媒体2から、音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ21の両方、のいずれを取り出すかを選択する選択手段31a,31bと、この選択手段31aにより選択された音楽データ20を再生する再生手段10と、選択手段31bにより選択された音声データ21を音楽データと同様のFSとなるように変換することでその再生を行うFS変換手段11(伸長再生手段)と、再生手段10の出力からFS変換手段11の出力を減算する減算手段15と、使用者の音声を入力するためのマイク(音声入力手段)3と、この音声入力手段3より入力された音声を加算手段16に出力するか否かを切り替えるスイッチ手段32と、減算手段15から出力される楽曲とスイッチ手段32を介して音声入力手段3により入力された音声とを加算する加算手段16と、加算手段16により使用者の音声が加算された楽曲を音として出力する音楽出力手段4とから構成される。
【0031】
次に、動作について説明する。
記録媒体2には、音楽データ20と、これより低いサンプリング周波数でサンプリングされた音声データ21とが記録されている。
【0032】
この音声データ21は次のようにして生成される。即ち、音楽データ20はスタジオで楽曲と音声とをミキシングして生成するので、音楽データ20用の音声を取得し音楽データを生成する際に、これと平行して、音楽データ20よりも低いサンプリング周波数で音声を取得し音声データ21を生成する。
【0033】
記録媒体2に保存されている音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ21の両者、のいずれかが選択手段31aおよび31bにより選択される。
【0034】
音楽データ20のみが選択された場合は通常の音楽(音声+楽曲)を再生する場合であり、選択された音楽データ20が再生手段10により再生される。この時、FS変換手段11の出力は存在しないので、減算手段15による減算は行われない。また、スイッチ手段32もオフされるので、減算手段15を通過した音声は、音声入力手段3の出力信号が加算されることなく音楽出力手段4に出力される。従って、音声出力手段4は音楽データの再生音を発生する。
【0035】
一方、音楽データ20および音声データ21の両者が選択された場合は、カラオケの楽曲のみを再生する場合であり、音楽データ20が再生されるとともに、FS変換手段11により音声データ21が音楽データ20と同じサンプリング周波数に変換されることで音声データ21の伸長が行われる。
【0036】
再生手段10から出力された音楽データの再生信号は、減算手段15により、FS変換手段11から出力された音声データの再生信号が減算され、楽曲データのみの再生信号となる。
【0037】
減算手段15から出力された、楽曲のみの再生信号は、この時、スイッチ手段32がオンされるので、音声入力手段3から入力された使用者の音声信号と加算手段16により加算され、音楽出力手段4に出力される。
【0038】
このように構成することにより、音楽データから音声データを取り除くことで得られた楽曲データに、音声入力手段3から入力した音声データを加えて、音楽出力手段4から出力させることが出来る。従って、音楽出力手段4は、使用者の音声(歌)が加わった楽曲の再生音を発生し、カラオケを楽しむことができる。
【0039】
図2は、上述のような原理に基づき、同一の媒体に音楽データとそのカラオケ用のデータとを記録した記録媒体の記録容量を削減できる、本実施の形態1による音楽再生装置のより詳細な構成を示す。
【0040】
図において、200は音楽データ200aと音声データ200bとが記録された記録媒体であるCD(コンパクトディスク)、201はこのCD200に記録された情報を再生するピックアップ、202はピックアップ201により再生されたアナログ高周波信号を処理するFE(フロントエンド)処理部、203はDRAM204へのインタフェースであるメモリIF(インタフェース)、204aはDRAM204内の音楽データを記憶している音楽データ記録領域、204bはDRAM204内の音声データを記憶している音声データ記録領域、205は使用者の音声を入力するためのマイク、206はマイク205からのアナログ音声信号を音声データに変換するA/D変換手段、207はメモリIF203を介してDRAM204より出力された音楽データ,音声データおよびA/D変換手段206により出力された音声データを処理する信号処理部(再生手段,伸長再生手段,減算手段,加算手段)、208は信号処理部207が出力するデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換手段、209はD/A変換手段が出力するアナログ音声信号を音として発するスピーカである。
【0041】
次に動作について説明する。
CD200に記録されている音楽データ200aおよび音声データ200bはピックアップ201により読み出される。これらのデータはCD200が高速回転するためアナログ高周波信号となっており、FE処理部202によりデジタル信号に変換するための前処理が行われる。このデジタル信号はメモリIF203を介していったんDRAM204の音楽データ記憶領域204aおよび音声データ記憶領域204bにそれぞれ記憶される。
【0042】
次に、メモリIF203を介して読み出された音楽データおよび音声データは信号処理部207により、図1の再生手段10,FS変換手段11,減算手段15,加算手段16に相当する処理が行われる。
【0043】
即ち、音楽データ記憶領域204aから読み出された音楽データの再生、音声データ記憶領域204bから読み出された音声データのサンプリング周波数変換、前記再生された音楽データから前記サンプリング周波数変換された音声データの減算、この減算により生成された楽曲データとA/D変換手段206によりデジタル信号に変換されたマイク205音声との加算とが信号処理部207により行われる。この信号処理部207より出力された、楽曲データとマイク音声データとが加算されたデータがD/A変換手段208によりアナログ信号に変換され、スピーカ209により伴奏を伴ったカラオケ音声が音として出力される。
【0044】
このような処理を可能にするために、CD200からは倍速でデータを読み出し、DRAM204にデータを保存する。信号処理部207はハードウエアで実現してもよいし、DSPにより信号処理部207を構成し、ソフトウエアで上述のような機能を実現してもよい。また、カラオケとして使用しない場合は、音楽データのみを再生すればよい。その際、CDは倍速で再生しなくてもよい。
【0045】
図3は、本実施の形態1による音声再生装置の一例としてのCDプレーヤの全体構成を示す。
図において、301は標準のサンプリング周波数で収録された音楽データが記録された音楽トラックと、これより低いサンプリング周波数で収録された音声データが記録された音声トラックとを有するCD(記録媒体)、302はこのCD301を回転させるスピンドルモータ、303はCD301に記録された音楽トラック,音声トラックの情報を読み取る光ピックアップ、304は光ピックアップ303により得られた高周波(RF)信号を増幅しデジタル信号に変換するRFアンプ、305は光ピックアップ303をCD301の半径方向に移動させるトラバースモータ、308は光ピックアップ303のトラッキング制御およびトラバースモータ305のトラバース制御を行うサーボ回路、309はスピンドルモータ302を駆動するモータドライバ、310はRFアンプ304から出力されたCD301の記録情報を一時的に記憶するDRAM、311はRFアンプ304から出力されたデジタル信号のDRAM310への書き込み、読み出し制御を行うメモリコントローラであり、DRAM310から情報を読み出す読出制御回路310aと、DRAM310に情報を書き込む書込制御回路310bと、これら読出制御回路310aおよび書込制御回路310bを制御する制御回路311cとからなる。314はCDプレーヤを操作するための操作パネル、315はCDプレーヤ全体を操作パネル314の操作に応じて制御するシステムコントローラ、316はメモリコントローラ311より読み出されたデータにデジタル信号処理を行うデジタル信号処理回路(再生手段,伸長再生手段,減算手段,加算手段)、317はCD301がCLV(線速度一定)で回転するようにモータドライバ309を制御するCLV回路、318は使用者の音声を入力するマイク、319はマイク318からの音声信号をデジタル信号に変換しデジタル信号処理回路316に出力するA/D変換回路、323はメモリコントローラ311によりDRAM310から読み出されたデータをアナログ信号に変換し、図示しないスピーカ等に出力するD/Aコンバータである。
【0046】
次に、動作について説明する。
まず、使用者が操作パネル314の電源ボタンを操作することで、該操作パネルにはCD301に収録されている音楽トラックおよび音声トラック(のリスト)がその表示面に表示される。
【0047】
この時、音声のみが入った音声トラックについてはこれをそのまま「音声のみ」と表示してもよいが、この音声トラックはカラオケ用であるので、例えば、図4に示すように、トラック1.,3.,5.,・・・が音楽A,B,C(但し、A,B,Cは音楽のタイトル)であるとすると、これに対応する音声のみのトラック2.,4.,6.,・・・はそれぞれ、Aのカラオケ,Bのカラオケ,Cのカラオケ,・・・と表示してもよい。
【0048】
次に、カーソルボタン等の操作により例えばトラック2.のAのカラオケが選択され、再生ボタンが押されたとすると、これはトラック1,2を見かけ上同時に再生することをCDプレーヤに指示したことになる。この再生が指示されることにより、システムコントローラ315によりサーボ回路308が制御され、各種サーボ動作が行われる。即ち、サーボ回路308により、光ピックアップ303が目的のトラック1,2に交互にジャンプするようトラバースモータ305および光ピックアップ303が制御される。これと同時に、スピンドルモータ302によりCD301が倍速、例えば標準の再生状態の2倍の回転数で回転される。
【0049】
このとき、光ピックアップ303,RFアンプ304においても標準状態の2倍の速度で動作が行われ、例えば図5に示すように、標準状態の2倍の速度でトラック1のデータ(例えば1フレーム分)が読み出され、再生されたデータがDRAM310に書き込まれる。その後、標準状態の2倍の速度でトラック2のデータ(例えば1フレーム分)が読み出され、再生されたデータがDRAM310に書き込まれ、トラック1,2のデータがDRAM310内で揃う。その後、トラック1の音楽データおよびトラック2の音声データがDRAM310より読み出され、トラック1の音楽データの再生処理ならびにトラック2の音声データの伸長処理がデジタル信号処理回路316により行われる。また、この信号処理がなされた音楽データから信号処理がなされた音声データを減算し、楽曲データ(例えば1フレーム分)を生成し、これにさらにA/D変換器319により得られた、マイク318の音声データを加算する処理もデジタル信号処理回路316により実行される。デジタル信号処理回路316から出力される、マイク音声が重畳した楽曲データはD/A変換器323によりアナログ信号に変換される。これら一連の処理が各フレーム毎に繰り返されることにより、図示しないスピーカより伴奏を伴った使用者の歌が音として発せられる。
【0050】
また、図6の左側に示すように、CDには、カラオケ用のデータとして圧縮した音声データを記録すればよいので、図6の右側に示す従来のCDのように、音声と楽曲とを記録した音楽データと同じビットレートで楽曲データを記録したものよりも、1曲あたりの容量が少なくて済み、同じ容量のCDであれば、より多くの曲を収録できる。
【0051】
このように、本実施の形態1によれば、トラック1の音楽データ、およびこの音楽データより低いサンプリング周波数で収録されたトラック2の音声データ、を倍速で読み出し高速に信号処理を行い、再生された音楽データから再生された音声データを減算する処理を行って楽曲データを得て、これにマイクからの音声データを加算する処理を、通常の音声トラックの音声データの読み出しおよびその信号処理と同じ時間内で終了するように実行することで、従来技術では、音楽データと同じビットレートで楽曲データを記録媒体に保存する必要があったのに対し、カラオケ用データである音声データ21については、音楽データ20より小容量で記録でき、このようにして記録容量の削減を図った記録媒体を再生し、カラオケを楽しむことができる。
【0052】
また、カラオケ用データとして低ビットレートの音声データを記録すればよいので、同じ容量の記録媒体であればより多くの曲を収録,保存できる。
【0053】
なお、記録媒体2は、CDやDVDなどの光ディスクやHDDなどの磁気ディスク、SDメモリやUSBメモリのような半導体メモリなどで構成する事が出来るが、これ以外の記憶媒体でも同様に実現する事が出来る。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図である。
図7において、本発明の実施の形態2の音楽再生装置は、音声と楽曲とを含む音楽データ20と、音楽の音声が周波数軸領域に変換され、不要周波数成分を除去することにより圧縮された音声データ22とが記録された記録媒体2から、音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ22の両方、のいずれを取り出すかを選択する選択手段31a,31bと、選択手段31aにより選択された音楽データ20を再生する再生手段10と、選択手段31bにより選択された音声データ22を時間軸領域のデータに変換することでその再生を行う周波数時間軸変換手段(伸長再生手段)12と、再生手段10の出力から周波数時間軸変換手段12の出力を減算する減算手段15と、使用者の音声を入力するための音声入力手段3と、この音声入力手段3より入力された音声を加算手段16に出力するか否かを切り替えるスイッチ手段32と、減算手段15から出力される楽曲とスイッチ手段32を介して音声入力手段3により入力された音声とを加算する加算手段16と、加算手段16により使用者の音声が加算された楽曲を音として出力する音楽出力手段4とから構成される。
【0055】
即ち、実施の形態1ではカラオケ用のデータとして低サンプリング周波数で記録した音声データ21を記録媒体2に記録していたが、この実施の形態2では、音声信号を周波数軸領域に変換し、信号の存在しない部分についてはこれをカットすることで情報を圧縮した音声データ(例えば、mp3等)を用いている。また、これに対応して、実施の形態1のFS変換手段に代えて周波数時間軸変換手段を用いている点が相違するのみである。
【0056】
次に、動作について説明する。
記録媒体2に保存されている音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ22の両者、のいずれかが選択手段31aおよび31bにより選択される。
【0057】
音楽データ20のみが選択された場合は通常の音楽(音声+楽曲)を再生する場合であり、選択された音楽データ20が再生手段10により再生される。この場合、周波数時間軸変換手段12の出力は存在しないので、減算手段15による減算は行われない。また、スイッチ手段32もオフとなるので、減算手段15を通過した音声は、音声入力手段3の出力信号が加算されることなく音楽出力手段4に出力される。
【0058】
一方、音楽データ20および音声データ22の両者が選択された場合は、楽曲のみを再生する場合であり、音楽データ20が再生されるとともに、周波数時間軸変換手段12により音声データ22が音楽データ20と同じ時間軸領域のデータに変換されることで音声データ22の再生が行われる。
【0059】
再生手段10から出力された音楽データの再生信号は、減算手段15により、周波数時間軸変換手段12から出力された音声データの再生信号が減算され、楽曲データのみの再生信号となる。
【0060】
減算手段15から出力された、楽曲のみの再生信号は、スイッチ手段32がオンとなるので、音声入力手段3から入力された使用者の音声信号と加算手段16により加算され、音楽出力手段4に出力される。
【0061】
このように構成することにより、音楽データから音声データを取り除くことで得られた楽曲データに、音声入力手段3から入力した音声データを加えて、音楽出力手段4から出力させることが出来る。
【0062】
なお、この実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、FS変換の代わりに周波数時間軸変換を行うようにした点のみであるので、より詳細な構成およびCDプレーヤの全体構成については説明を省略する。
【0063】
このように、本実施の形態2によれば、音楽データ、および周波数軸領域に変換され人に聞こえない周波数成分を除去することで圧縮された音声データ、を倍速で読み出し高速に信号処理を行い、再生された音楽データから再生された音声データを減算する処理を行って楽曲データを得て、これにマイクからの音声データを加算する処理を、通常の音声トラックの音声データの読み出しおよびその信号処理と同じ時間内で終了するように実行することで、従来技術では、音楽データと同じビットレートで楽曲データを記録媒体に保存する必要があったのに対し、カラオケ用データである音声データ22については、音楽データ20より小容量で記録でき、このようにして記録容量の削減を図った記録媒体を再生し、カラオケを楽しむことができる。
【0064】
また、カラオケ用データとして低ビットレートの音声データを記録すればよいので、同じ容量の記録媒体であればより多くの曲を収録,保存できる。
【0065】
なお、記録媒体2は、CDやDVDなどの光ディスクやHDDなどの磁気ディスク、SDやUSBメモリのような半導体メモリなどで構成する事が出来るが、これ以外の記憶媒体でも同様に実現する事が出来る。
【0066】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図である。
図8において、本発明の実施の形態3の音楽再生装置は、音声と楽曲とを含む音楽データ20と、音楽データに比べて低いFS(サンプリング周波数)でサンプリングされた音声データ23a,23b,・・・とが記録された記録媒体2から、音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ23a,23b,・・・の全て、あるいは音楽データ20および一部の音声データ23a,23b,・・・、のいずれを取り出すかを選択する選択手段31a,31b,31c,・・・と、選択手段31aにより選択された音楽データ20を再生する再生手段10と、選択手段31b,31c,・・・により選択された音声データ23a,23b,・・・を音楽データと同様のFSとなるように変換することでその再生を行うFS変換手段13a,13b,・・・と、再生手段10の出力からFS変換手段13a,13b,・・・のワイヤードOR出力を減算する減算手段15と、使用者の音声を入力するための音声入力手段3と、この音声入力手段3より入力された音声を加算手段16に出力するか否かを切り替えるスイッチ手段32と、減算手段15から出力される楽曲とスイッチ手段32を介して音声入力手段3により入力された音声とを加算する加算手段16と、加算手段16により使用者の音声が加算された楽曲を音として出力する音楽出力手段4とから構成される。
【0067】
次に動作について説明する。
記録媒体2には、音楽データ20と第1の音声データ23a,第2の音声データ23b,・・・ が記録されている。
【0068】
記録媒体2に保存されている音楽データ20のみ、あるいは音楽データ20および音声データ23a,23b,・・・、の全て、あるいは音楽データ20および一部の音声データ23a,23b,・・・のいずれかが選択手段31aおよび31b,31c,・・・により選択される。
【0069】
音楽データ20のみが選択された場合は通常の音楽(音声+楽曲)を再生する場合であり、選択された音楽データ20が再生手段10により再生される。この場合、FS変換手段13a,13b,・・・の出力は存在しないので、減算手段15による減算は行われない。また、スイッチ手段32もオフとなるので、減算手段15を通過した音声は、音声入力手段3の出力信号が加算されることなく音楽出力手段4に出力される。
【0070】
一方、音楽データ20および音声データ23a,23b,・・・の全てが選択された場合は、楽曲のみを再生する場合であり、音楽データ20が再生されるとともに、FS変換手段13a,13b,・・・により音声データ23a,23b,・・・が音楽データ20と同じサンプリング周波数に変換されることで音声データ23a,23b,・・・の全ての伸長が行われる。
【0071】
これらFS変換手段13a,13b,・・・の出力はワイヤードOR接続されているので、減算手段15により再生された音楽データからこの音楽に含まれる全ての歌手の音声データが減算され、楽曲のみの再生信号となる。
【0072】
減算手段15から出力された、楽曲のみの再生信号は、スイッチ手段32がオンとなるので、音声入力手段3から入力された使用者の音声信号と加算手段16により加算され、音楽出力手段4に出力される。
【0073】
このように構成することにより、複数名の歌手(例えば歌手X,歌手Y,歌手Zの3名)が参加している音楽の音楽データから複数名の音声データ全てを取り除くことで得られた楽曲に、音声入力手段3から入力した使用者の音声を加えて、音楽出力手段4から出力させることが出来る。
【0074】
また、使用者が楽曲および特定の歌手(例えば上記3名の歌手中の歌手Yのみ)の音声をバックに歌いたい場合は、選択手段31b,31c,・・・のうち特定の歌手の音声に対応する選択手段のみをオフにしそれ以外の音声に対応する選択手段を全てオンにすることで、複数名の歌手が参加している音楽データから、特定の歌手以外の全ての歌手(歌手X,歌手Zの2名)の音声データが除去され、楽曲データに特定の歌手(歌手Y)の音声データのみが残ったデータが生成される。これに音声入力手段3から入力した音を加えて音楽出力手段4から出力させることが出来る。この構成では複数人の音声が記録された音楽でも特定の人物の音声のみを残すことが出来、コーラス等から一緒に歌いたい人物(歌手Y)の音声のみを残してカラオケを楽しむことが可能となる。
【0075】
なお、この実施の形態3が実施の形態1と異なるのは、FS変換を同時に複数行うようにした点のみであるので、より詳細な構成およびCDプレーヤの全体構成については説明を省略する。
【0076】
このように、本実施の形態3によれば、音楽データ、およびこの音楽データより低いサンプリング周波数で収録された複数の音声データ、を倍速で読み出し高速に信号処理を行い、再生された音楽データから再生された複数の音声データを減算する処理を行って楽曲データを得て、これにマイクからの音声データを加算する処理を、通常の音声トラックの音声データの読み出しおよびその信号処理と同じ時間内で終了するように実行することで、音楽データに複数名の音声データが含まれる場合であっても全ての音声データを消去した楽曲データを得ることができ、カラオケを楽しむことができる。
【0077】
また、実施の形態3では、複数名の音声が記録されている音楽データの一部の音声のみを消すことが出来る。即ち、歌手が複数名の場合に特定の歌手以外の音声を取り除くことができ、楽曲と希望する歌手の音声をバックにカラオケを行うこともできる。
【0078】
なお、記録媒体2は、CDやDVDなどの光ディスクやHDDなどの磁気ディスク、SDやUSBメモリのような半導体メモリなどで構成する事が出来るが、これ以外の記憶媒体でも同様に実現する事が出来る。
【0079】
また、音声データ23a,23b,・・・は音楽データ20よりも低ビットレートであれば、互いに異なるビットレートでもよい。
【0080】
さらに、FS変換手段を複数設ける代わりに、図9に示すように周波数時間軸変換手段を複数設けるようにしてもよく、同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる音楽再生装置および記録媒体は、音楽再生装置にカラオケ機能を付加し、通常の音楽の再生と共にカラオケを再生する音楽再生装置を実現する場合に、記録媒体に多数の曲を記録,保存することが出来るものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置のより具体的な構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置の一例としてのCDプレーヤの全体構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置の一例としてのCDプレーヤの操作部の表示の一例を示す図
【図5】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置の一例としてのCDプレーヤの処理の時間的経過の一例を示す図
【図6】本発明の実施の形態1にかかる音楽再生装置において使用する記録媒体のトラック容量の一例を従来の音楽再生装置において使用する記録媒体のトラック容量と対比して示す図
【図7】本発明の実施の形態2にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態3にかかる音楽再生装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態3にかかる音楽再生装置の変形例の構成を示すブロック図
【図10】従来例の音楽再生装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0083】
2 記録媒体
3 音声入力手段
4 音楽出力手段
10 再生手段
11,13a,13b FS変換手段
12,14a,14b 周波数時間軸変換手段
15 減算器
16 加算器
20 音楽データ
21 低サンプリングレートの音声データ
22 周波数軸の音声データ
23a 第1の低サンプリングレートの音声データ
23b 第2の低サンプリングレートの音声データ
24a 第1の周波数軸の音声データ
24b 第2の周波数軸の音声データ
25 楽曲データ
31a,31b,31c 選択手段
32 スイッチ手段
200,301 CD
200a 音楽データ
200b 音声データ
201 ピックアップ
202 FE処理部
203 メモリIF
204,310 DRAM
204a 音楽データ記憶領域
204b 音声データ記憶領域
205,318 マイク
206,319 A/D変換手段
207 信号処理部
208,323 D/A変換手段
209 スピーカ
302 スピンドルモータ
303 光ピックアップ
304 RFアンプ
305 トラバースモータ
308 サーボ回路
309 モータドライバ
311 メモリコントローラ
311a 読出制御回路
311b 書込制御回路
311c 制御回路
314 操作パネル
315 システムコントローラ
316 デジタル信号処理回路
317 CLV回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録されている、音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを再生する再生手段と、
前記記録媒体に、さらに前記音楽データより低ビットレートで記録されている、前記音声のデータである音声データを伸長再生する伸長再生手段と、
前記再生手段より再生された音楽データより、前記伸長再生手段より伸長再生された音声データを減算し、楽曲のみのデータである楽曲データを出力する減算手段と、
を備えたことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項2】
記録媒体に記録されている、N人(Nは2以上の整数)の音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを再生する再生手段と、
前記記録媒体に、さらに前記音楽データより低ビットレートで記録されている、前記N人の音声の音声データを伸長再生するN個の伸長再生手段と、
前記再生手段より再生された音楽データより、前記N個の伸長再生手段より伸長再生されたN人の音声データを減算し、楽曲のみのデータである楽曲データを出力する減算手段と、
を備えたことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の音楽再生装置において、
前記音声データは、そのサンプリング周波数が前記音楽データのサンプリング周波数よりも低い周波数で前記記録媒体に記録されており、
前記伸長再生手段は、前記音声データのサンプリング周波数を前記音楽データのサンプリング周波数に変換することにより前記音声データを伸長再生する、
ことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の音楽再生装置において、
前記音声データは、時間軸領域の音声データが周波数帯域に変換されて圧縮されて前記記録媒体に記録されており、
前記伸長再生手段は、圧縮された前記音声データを時間軸領域の音声データに変換することにより前記音声データを伸長再生する、
ことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項5】
音声と楽曲とを含んだ音楽のデータである音楽データを所定のビットレートで記録してなり、
さらに、
前記音声のデータである音声データを、前記音楽データよりも低ビットレートで記録してなる、
ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−203389(P2008−203389A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37429(P2007−37429)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】