説明

音響伝達特性測定装置および音響伝達特性測定方法

【課題】 広い周波数にわたって、高精度に音響管の伝達関数を測定することが可能な音響伝達特性測定装置を提供する。
【解決手段】 音響伝達特性測定装置1000は、中空の測定対象音響管18の一端側に対して送り込むための音波を生成するスピーカ14と、一様な径を有するガイド管16と、ガイド管内の第1および第2の点での音圧を検出するプローブマイク30,32とを備える。ガイド管16には、第1および第2の点の間隔を変更するための導入孔17が設けられる。さらに、プローブマイク40は、測定対象音響管18の放射端での放射端音圧を検出する。コンピュータ100は、放射端での音圧と第1および第2の音圧から求まる測定対象音響管18の一端での体積流とに基づき、測定対象音響管の音響伝達関数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響伝達特性測定装置および音響伝達特性測定方法に関し、特に、有限領域を形成する中空体としての音響管の音響伝達特性を測定するための音響伝達特性測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、発話時の発声器官の形態観測に広く用いられている。MRIを用いれば、非侵襲的にかつ被曝の問題なく発声器官の3次元構造を観測することができ、さらに3次元MR画像から声道領域を抽出することによって3次元声道形状を得ることが可能である(たとえば、非特許文献1を参照)。このようにして得られた3次元声道形状をもとにして、有限要素法(FEM:Finite Element Method)により声道の伝達関数を求める研究が行われている(たとえば、非特許文献2を参照)。
【0003】
一方で、声道断面積関数から伝達関数を求める方法としては、電気回路理論が古くから用いられている。この理論は音響管内を音波が平面波として伝播することを仮定している。しかし、実際の声道では必ずしも音波が平面波として伝播するとは限らない。それに対して、FEMは平面波伝播の仮定を必要としないため、3次元声道形状の伝達関数を求める有効な手法であるといえる。
【0004】
しかしながら、現状では、FEMにより求めた伝達関数が実測される特性に対してどの程度の精度を有しているかは、必ずしも明らかとは言えず、「MRI等を用いて正確な3次元声道形状が得られれば、その人の実音声のスペクトルをシミュレートできるのか」が明確ではない。
【0005】
ところで、FEMにより計算された伝達関数を実測値と比較するためには、逆に、与えられた音響管の伝達関数を高精度で測定する必要がある。このような音響管の伝達関数を測定する方法としては、たとえば、音響管の出口側から挿入された2つのプローブマイクロホン(M1,M2)で構成される二点音圧検出部で音響管内における測定点近傍の二点の音圧を検出し、測定点体積流演算部で測定点の体積流を演算し、マイクロホン(M3)で構成される放射端音圧検出部で放射端の音圧を検出し、放射端体積流演算部で放射端の体積流を演算し、音響伝達特性演算部が求められた測定点の体積流と求められた放射端の体積流との比を求めて、音響伝達特性を得るという方法が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような測定方法によって得られた音響管の伝達関数の測定精度については、必ずしも明確ではない。
【0006】
さらに、音響管の入口側に結合されたガイド管に挿入された2つのプローブマイクロホン(M1,M2)で構成される二点音圧検出部でガイド管内における測定点近傍の二点の音圧を検出し、マイクロホン(M3)で構成される放射端音圧検出部で音響管の放射端の音圧を検出する方法も提案されているが、広い周波数にわたって、精度よく音響管の伝達関数を測定することが困難である、という問題があった(たとえば、非特許文献3,4,5を参照)。
【特許文献1】特開平8−101061号公報明細書
【非特許文献1】Bear, Gore, Gracco and Nye, “Analysis of Vocal tract shape and dimensions using magnetic resonance imaging: Vowels,” Journal of the Acoustical Society of America, Vol.90, No.2, pp.799-828(1991)
【非特許文献2】松崎、基樹、幹、“3次元有限要素法による分岐および口唇形状を考慮した声道モデルの音響解析,” 日本音響学会講演論文集(春) pp.285−286(2003)
【非特許文献3】北村、西本、藤田、本多、「音響計測およびシミュレーションによる声道模型の伝達特性の比較」、日本音響学会講演論文集(春) pp.283−284(2003)
【非特許文献4】北村、西本、藤田、本多、「音響計測、電気回路理論およびFEMにより求めた声道模型の伝達関数の比較」、電子情報通信学会、信学技報 EA2003−7,SP2003−7,pp.37−42(2003)
【非特許文献5】北村、藤田、本多、西本、「円筒管の連結で表される声道模型の伝達関数の音響計測」、日本音響学会講演論文集(秋) pp.307−308(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、広い周波数にわたって、高精度に音響管の伝達関数を測定することが可能な音響伝達特性測定装置および音響伝達特性測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の1つの局面にしたがうと、音響伝達特性測定装置であって、中空の測定対象音響管の一端側に対して送り込むための音波を生成する音波駆動手段と、前記駆動手段と前記測定対象音響管の一端側との間に設けられる一様な径を有するガイド管と、前記測定対象音響管の一端から前記ガイド管内の前記音波が平面波となる距離以上離れた第1の点での音圧を検出する第1の音圧検出手段と、前記ガイド管内の第2の点での音圧を検出する第2の音圧検出手段と、前記第1および第2の点の間隔を変更するための間隔変更手段と、前記測定対象音響管の他端である放射端での放射端音圧を検出する放射端音圧検出手段と、前記第1および第2の点の中間点の音圧と体積流とを演算する音圧体積流演算手段と、前記音圧体積流演算手段によって得られた前記中間点の音圧と体積流ならびに前記放射音圧を周波数領域にフーリエ変換する変換手段と、前記変換手段によって得られた周波数領域の中間点の音圧と体積流とから前記測定対象音響管の一端での体積流を求める入力端体積流演算手段と、前記変換手段で変換された前記放射端での音圧と前記測定対象音響管の一端での体積流とに基づいて、前記測定対象音響管の音響伝達関数を求める音響伝達特性演算手段とをさらに備える。
【0009】
好ましくは、前記所定距離は、前記ガイド管の直径の1.5倍以上である。
【0010】
この発明の他の局面にしたがうと、音響伝達特性測定方法であって、中空の測定対象音響管の一端側に設けられる一様な径を有するガイド管を介して、前記測定対象音響管の前記一端側に対して音波を送り込むステップと、前記測定対象音響管の一端から前記ガイド管内の前記音波が平面波となる距離以上離れた第1の点と、前記ガイド管内の第2の点での音圧を検出するステップと、前記音波の周波数に応じて、前記第1および前記第2の点の間隔を変更するステップと、前記測定対象音響管の他端である放射端での放射端音圧を検出するステップと、前記第1および第2の点の中間点の音圧と体積流とを演算するステップと、演算により得られた前記中間点の音圧と体積流ならびに前記放射音圧を周波数領域にフーリエ変換するステップと、前記変換手段によって得られた周波数領域の中間点の音圧と体積流とから前記測定対象音響管の入力側の一端での体積流を求めるステップと、変換された前記放射端での音圧と変換された前記測定対象音響管の前記一端での体積流とに基づいて、前記測定対象音響管の音響伝達関数を求めるステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る音響伝達特性測定装置および音響伝達特性測定方法によれば、広い周波数にわたって、高精度に音響管の伝達関数を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(音響計測に関する理論)
図1は、本発明において採用する音響計測の原理を説明するための概念図である。
【0014】
以下では、本発明の音響伝達特性測定装置および音響伝達特性測定方法を説明するにあたり、その前提となる音響計測に関する理論を簡単に説明しておく。
【0015】
音響管の伝達関数H(ω)は、入力端の体積速度Uin(ω)と出力端の音圧Pout(ω)の比として、以下の式(1)で与えられる。
【0016】
【数1】

【0017】
ここでωは周波数である。体積速度を直接計測することは困難であるため、音圧から求めることを考える。
【0018】
まず、入力端の体積速度Uin(ω)について考える。図1に示すように、伝達関数の計測対象である音響管の入力端に半径rが既知の音響管であるガイド管を接続して音を入力する。ガイド管の半径rは、一様であるものとする。
【0019】
そして、このガイド管の中で近接した2点の音圧p1(t),p2(t)を計測する。
【0020】
音波が音響管内を平面波として伝播すると仮定すれば、この2点の中間地点(図1中のC点)における粒子速度vc(t)と音圧pc(t)を以下の式(2)および式(3)により近似的に求めることができる。
【0021】
【数2】

【0022】
ここでρは空気の密度、dは2つの測定点間の距離である。ここで、距離dは、正確に測定できる周波数fの上限を与えるので、周波数fまでが測定対象の場合、以下の式が満たされる必要がある。
【0023】
【数3】

【0024】
ここで、cは、音速である。
【0025】
図1中のC点から入力端までの部分の長さlおよび断面積が既知であれば、その区間の伝達行列(transmission matrix)を用いることによって、入力端における音圧Pin(ω)および粒子速度Vin(ω)を、以下の式(5)のように得ることができる。
【0026】
【数4】

【0027】
ここで、γはC点から入力端までの部分の伝播定数であり、ZおよびYは、それぞれ、特性インピーダンスおよび特性アドミッタンスである。さらに、Pc(ω)および粒子速度Vc(ω)は、音圧pc(t)と粒子速度vc(t)とを周波数領域にフーリエ変換したものである。
【0028】
音響管の入力端の体積速度Uin(ω)は、ガイド管の半径rを用いると以下の式(6)で求められる。
【0029】
【数5】

【0030】
[装置構成]
図2は、本発明の音響伝達特性測定装置1000の構成を示すブロック図である。
【0031】
図2を参照して、音響伝達特性測定装置1000は、たとえば100Hz〜6000Hzであって300msecのサイン波を順次生成するサイン波発生器10と、サイン波発生器10の出力を増幅するアンプ12と、アンプ12の出力を音に変換するスピーカ14とを備える。このスピーカ14が、音響伝達測定におけるホーンドライバーユニットとして機能する。
【0032】
スピーカ14の上端には、たとえば、半径5mmの導管を開けたアクリル製ブロックであるガイド管16が取り付けられている。スピーカ14から出力された音声信号はこのガイド管16を通して計測対象の中空の音響管18に伝わる。ガイド管16の側壁には、一列に所定の間隔でプローブマイク30,32の導入孔17が複数個開けられている。導入孔17は、ガイド管の導波方向とは垂直に開けられており、プローブマイク30および32の先端はガイド管の中心にくるように挿入される。また、このような導入孔へプローブマイクを差し替えることにより、プローブマイク30と32との間隔dを、特に限定されないが、たとえば、10mm、20mm、30mmに可変とすることができる。図2においては、ガイド管の入口(スピーカ14側)から50mmであって、測定対象音響管18の入口から80mmのところにプローブマイク32が挿入されている。プローブマイク30については、測定対象音響管18までの距離を、50mm〜70mmで10mmごとに可変であるものとする。
【0033】
プローブマイク30および32の出力は、音圧p1(t),p2(t)にそれぞれ相当し、アンプ34で増幅された後、ハイパスフィルタ36により80Hz以下n雑音成分がカットオフされて、A/D変換器38により、たとえば、標本化周波数100kHz、量子化15ビットにてデジタルデータに変換されて、コンピュータ100中の記憶装置(図示せず)に格納される。
【0034】
計測対象音響管18の出口側には、出口の周りにはめ込まれたバッフル板20が設けられ、計測対象音響管18の出口での音圧がプローブマイク40により測定され、プローブマイク40の出力もアンプ42により増幅された後、A/D変換器38によりデジタルデータに変換されて、コンピュータ100中の上記記憶装置に格納される。
【0035】
コンピュータ100内のCPU(Central Processing Unit)の演算処理により、計測した音圧データは、波形が安定した100msecの区間を切り出される。そして、予めピストンホンを用いてプローブマイクごとに校正を行なっておき、単位を圧力[Pa]に変換する。CPUは、上述した音響計測に関する理論にもとづいて伝達関数を計算する。
【0036】
図3は、音響伝達特性測定装置1000を機能ブロック図として示す図である。図3中で、点線で囲んだ部分が、コンピュータ100中のCPUで行なわれる処理に相当する。
【0037】
また、図4は、音響伝達特性測定装置1000の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【0038】
図3および図4を参照して、まず、音響伝達特性測定装置1000では、ガイド管内の2点の音圧信号がプローブマイク30および32により測定され、測定対象音響管18の出口(放射端)の放射端音圧信号が、プローブマイク40により測定される(ステップS100)。プローブマイク30および32の出力とプローブマイク40の出力とは、増幅器34,42により増幅され、A/D変換器38によりデジタルデータに変換される。
【0039】
続いて、平均部1002により、2点の音圧が平均されて、式(3)にしたがって、中間位置Cでの音圧pc(t)を近似する(ステップS102)。
【0040】
さらに、減算部1004により、2点の音圧の差が計算され、さらに積分部1006により積分されて、中間位置Cでの粒子速度vc(t)を式(2)にしたがって近似する(ステップS104)。
【0041】
FFT分析部1008により、音圧pc(t)と粒子速度vc(t)とを周波数領域に高速フーリエ変換して、Pc(ω)およびVc(ω)を求める。さらに、入力端粒子速度演算部1010では、式(5)にしたがって、音響管18の入力端の粒子速度Vin(ω)を求める(ステップS106)。
【0042】
入力端体積速度演算部1012では、式(6)にしたがって、音響管18の入力端の粒子速度Uin(ω)を求める(ステップS108)。
【0043】
一方、プローブマイク40により測定された放射端の音圧Pout(t)は、FFT分析部1008により、周波数領域に高速フーリエ変換されて、音圧Pout(ω)が求められる。音響伝達特性演算部1014では、放射端の音圧Pout(ω)と、入力端の粒子速度Uin(ω)から、式(1)にしたがって、伝達関数H(ω)を求める(ステップS110)。
【0044】
[測定結果およびシミュレーション結果]
図5は、測定対象音響管18が、長さ300mm、内部直径16.8mm、管厚1.6mmの一様音響管である場合の共鳴周波数の測定結果を示す図である。
【0045】
図5において、n番目の共鳴周波数は、“Fn”で示されている。
【0046】
プローブマイク30および32の間隔を、10mm、20mm、30mmと変化させた場合に、実測された共鳴周波数の電気回路モデルにより得られる計算値に対する誤差を各測定値の横のかっこ内に示す。
【0047】
なお、一様音響管では、電気回路モデルがその特性をよく表現できていると考えられ、電気回路モデルでの放射インピーダンスZRは、文献:Causse, R., Kergomard, J., and Lurton, X., “Input impedance of brass musical instruments - comparison between experiment and numerical models,” J. Acoust. Soc. Am., Vol.75, No.1, pp.241-254, 1984によれば、以下の式(7)で表される。
【0048】
【数6】

【0049】
ここで、z=krであり、kは波数、rは放射端の半径である。この式(7)は、kr<1.5の周波数範囲で正確である。
【0050】
図5により、少なくとも周波数500Hz未満では、d=20mmとし、500Hz以上では、d=10mmとすれば、測定精度は2.6%以下を確保できることが分かる。
【0051】
図6は、図5で説明した一様音響管を測定対象とした場合の伝達関数の周波数依存性を実測値をモデル計算値とを対比して示す図である。縦軸は、伝達関数を相対値で示す。
【0052】
図6では、周波数500Hz未満では、d=20mmとし、500Hz以上では、d=10mmとして測定している。
【0053】
実測値とモデル計算の値とは、ピーク周波数の値および形状とも良い一致を示していることがわかる。
【0054】
次に、測定対象音響管が2段の半径を有する場合の実測値とモデルとの対比について説明する。
【0055】
図7は、測定対象となる2段音響管の形状を示す概念図である。
【0056】
入力端側の一段目は、長さ100mm、直径27.0mmであり、放射端側の2段目は、長さ100mm、直径16.8mmである。
【0057】
図8は、図7で説明した2段音響管を測定対象とした場合の伝達関数の周波数依存性を実測値をモデル計算値とを対比して示す図である。縦軸は、伝達関数を相対値で示す。
【0058】
図6では、d=10mm固定として測定している。
【0059】
実測値とモデル計算の値とは、ピーク周波数の値および形状とも良い一致を示しており、音響伝達特性測定装置1000により、ステップ形状を有するような音響管についても、正確な測定が可能であることが分かる。
【0060】
[測定精度に関するシミュレーション]
以上説明したとおり、音響伝達特性測定装置1000においては、以下のような構成となっていることが特徴的である。
【0061】
1)測定周波数にあわせて、マイク間距離を変えることが可能な構成となっている。
【0062】
2)ガイド管の接続部での波面の乱れの問題に対して
2−1)プローブマイク30または32から、スピーカ14または測定対象音響管18とガイド管16の接続部までの距離を十分にとっている。
【0063】
2−2)ガイド管の穴の径が十分に細くなっている。
【0064】
すなわち、本手法では、音波の等圧面は平面波で伝搬することが前提となっている。しかし、スピーカ14とガイド管16の接続部、およびガイド管16と測定対象音響管18との接続部では、断面積が大きく変化するため音波の等圧面は一般には平面波とならない。
【0065】
そこで、2−1)における「十分な距離」とはどの程度かを調べるために有限要素法によるシミュレーションを行った結果について以下に説明する。
【0066】
(ガイド管の直径 10mm、音波の周波数6000Hzの場合)
図9は、ガイド管の直径10mm、音波の周波数6000Hzの場合に、シミュレーションにより得られた音波の等圧面を示すであり、図10はスピーカとの接続部分の音波の等圧面を拡大して示す図である。
【0067】
ガイド管の接続部から約15mmの範囲では音波の等圧面が平面となっていない。従って、マイク32はガイド管の接続部から最低でも15mm以上離す必要がある。実際には余裕を見て15mmの数倍以上離すことになる。
【0068】
等圧面の乱れは、高い周波数ほどより大きくなる。従って、測定対象音響管の伝達特性を10kHzまで計測しようとすれば、15mmよりさらに長く距離をとる必要がある。なお、マイク間隔を5mm程度にすることによって10kHz程度まで計測できる。
【0069】
(ガイド管の直径 5mm、音波の周波数6000Hzの場合)
図11は、ガイド管の直径5mm、音波の周波数6000Hzの場合に、シミュレーションにより得られた音波の等圧面を示す図であり、図12はスピーカとの接続部分の音波の等圧面を拡大して示す図である。
【0070】
ガイド管の接続部から約7mmの範囲では音波の等圧面が平面となっていない。従って、マイク32はガイド管の接続部から最低でも7mm以上離す必要がある。実際には余裕を見て7mmの数倍以上離すことになる。
【0071】
すなわち、図9〜図12の結果によれば、少なくともスピーカ14とガイド管16の接続部から、プローブマイク32は、少なくともガイド管の直径の1.5倍以上、好ましくは、3〜4.5倍以上離しておくことが望ましい。
【0072】
また、測定周波数が、6kHz程度までであれば、ガイド管の直径は、5mm程度が望ましい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明において採用する音響計測の原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明の音響伝達特性測定装置1000の構成を示すブロック図である。
【図3】音響伝達特性測定装置1000を機能ブロック図として示す図である。
【図4】音響伝達特性測定装置1000の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【図5】測定対象音響管18が、長さ300mm、内部直径16.8mm、管厚1.6mmの一様音響管である場合の共鳴周波数の測定結果を示す図である。
【図6】図5で説明した一様音響管を測定対象とした場合の伝達関数の周波数依存性を実測値をモデル計算値とを対比して示す図である。
【図7】測定対象となる2段音響管の形状を示す概念図である。
【図8】図7で説明した2段音響管を測定対象とした場合の伝達関数の周波数依存性を実測値をモデル計算値とを対比して示す図である。
【図9】ガイド管の直径10mm、音波の周波数6000Hzの場合に、シミュレーションにより得られた音波の等圧面を示す図である。
【図10】スピーカとの接続部分の音波の等圧面を拡大して示す図である。
【図11】ガイド管の直径5mm、音波の周波数6000Hzの場合に、シミュレーションにより得られた音波の等圧面を示す図である。
【図12】スピーカとの接続部分の音波の等圧面を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 サイン波発生器、12 アンプ、14 スピーカ、16 ガイド管、17 導入孔、18 計測対象音響管、30,32,40 プローブマイク、34,42 アンプ、36 ハイパスフィルタ、38 A/D変換器、100 コンピュータ、1000 音響伝達特性測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の測定対象音響管の一端側に対して送り込むための音波を生成する音波駆動手段と、
前記駆動手段と前記測定対象音響管の一端側との間に設けられる一様な径を有するガイド管と、
前記測定対象音響管の一端から前記ガイド管内の前記音波が平面波となる距離以上離れた第1の点での音圧を検出する第1の音圧検出手段と、
前記ガイド管内の第2の点での音圧を検出する第2の音圧検出手段と、
前記第1および第2の点の間隔を変更するための間隔変更手段と、
前記測定対象音響管の他端である放射端での放射端音圧を検出する放射端音圧検出手段と、
前記第1および第2の点の中間点の音圧と体積流とを演算する音圧体積流演算手段と、
前記音圧体積流演算手段によって得られた前記中間点の音圧と体積流ならびに前記放射音圧を周波数領域にフーリエ変換する変換手段と、
前記変換手段によって得られた周波数領域の中間点の音圧と体積流とから前記測定対象音響管の一端での体積流を求める入力端体積流演算手段と、
前記変換手段で変換された前記放射端での音圧と前記測定対象音響管の一端での体積流とに基づいて、前記測定対象音響管の音響伝達関数を求める音響伝達特性演算手段とをさらに備える、音響伝達特性測定装置。
【請求項2】
前記所定距離は、前記ガイド管の直径の1.5倍以上である、請求項1記載の音響伝達特性測定装置。
【請求項3】
中空の測定対象音響管の一端側に設けられる一様な径を有するガイド管を介して、前記測定対象音響管の前記一端側に対して音波を送り込むステップと、
前記測定対象音響管の一端から前記ガイド管内の前記音波が平面波となる距離以上離れた第1の点と、前記ガイド管内の第2の点での音圧を検出するステップと、
前記音波の周波数に応じて、前記第1および前記第2の点の間隔を変更するステップと、
前記測定対象音響管の他端である放射端での放射端音圧を検出するステップと、
前記第1および第2の点の中間点の音圧と体積流とを演算するステップと、
演算により得られた前記中間点の音圧と体積流ならびに前記放射音圧を周波数領域にフーリエ変換するステップと、
前記変換手段によって得られた周波数領域の中間点の音圧と体積流とから前記測定対象音響管の入力側の一端での体積流を求めるステップと、
変換された前記放射端での音圧と変換された前記測定対象音響管の前記一端での体積流とに基づいて、前記測定対象音響管の音響伝達関数を求めるステップとを備える、音響伝達特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−105683(P2006−105683A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290336(P2004−290336)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】