説明

音響再生装置

【課題】ワイヤレス受信が正常に行われない場合であっても、ワイヤレス伝送に対応する音声信号がいずれのスピーカからも出力されなくなるといった虞れをなくすことを目的とする。
【解決手段】音声信号出力手段から出力されるNチャンネルの音声信号についてはワイヤード伝送し、Mチャンネルの音声信号についてはワイヤレス伝送する音響再生装置において、Mチャンネルの音声信号をワイヤレス送信する送信手段と、ワイヤレス送信された音声信号を受信する受信手段と、受信手段がMチャンネルの音声信号を受信したことを示す受信情報をワイヤレス送信する受信情報送信手段と、ワイヤレス送信された受信情報を受信する受信情報受信手段と、M+Nチャンネルの音声信号を合成してNチャンネルの合成音声信号を生成する音声信号合成手段とを備え、受信情報受信手段が受信情報を受信しなかった場合、音声信号合成手段で生成された合成音声信号をワイヤード伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチャンネルの音声信号を出力する音響再生装置に関し、特に少なくともその一部のチャンネルの音声信号を対応する各チャンネルのスピーカにワイヤレス伝送する音響再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のチャンネルの音声信号を出力する音響再生装置において、各チャンネルの音声信号に対応してスピーカが設けられ、各チャンネルのスピーカに対応するチャンネルの音声信号をワイヤレス伝送することが可能な音響再生装置が知られている。
このような音響再生装置では、例えば5.1チャンネル(5.1チャンネルはフロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル、サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネルである。尚、重低音スピーカに対応する重低音チャンネルは0.1チャンネルとする)の環境下において、複数の人の会話が記録された記憶媒体を再生する場合には、リスナー前方に位置するべき人の声をリスナー前方のスピーカから出力し、リスナー後方に位置するべき人の声をリスナー後方のスピーカから出力することにより、臨場感溢れる会話の場面をリスナーの周りに再現することが可能である。また、リスナー後方の2つのスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29)には音声信号をワイヤレス伝送することにより、音声信号を出力するメインユニットからこの2つのスピーカへ音声信号を伝達するケーブルを不要とすることができる。
【特許文献1】特開平6−125582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、音響再生装置本体の送信機から送信された音声信号のスピーカの受信機におけるワイヤレス受信が、例えば人の往来や電子レンジから発生する電磁波などで遮られることにより、ワイヤレス伝送に対応するチャンネルの音声信号がスピーカから出力されなくなることがある。すると、例えば、上述した複数の人の会話が記録された記憶媒体の再生中にワイヤレス受信が正常に行われなかった場合、リスナー前方に位置する人の声はリスナー前方のスピーカから出力されるが、リスナー後方に位置する人の声がリスナー後方のスピーカから出力されなくなってしまう。この場合、リスナー後方に位置する人の声の欠落によって、会話の内容が理解できなくなくなってしまう虞れがあった。
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、ワイヤレス受信が正常に行われない場合であっても、ワイヤレス伝送に対応する音声信号がいずれのスピーカからも出力されなくなるといった虞れをなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の音響再生装置は、M+N(M、Nは正の整数)チャンネルの音声信号を出力する音声信号出力手段を有し、当該音声信号出力手段から出力されるNチャンネルの音声信号についてはワイヤード伝送し、Mチャンネルの音声信号についてはワイヤレス伝送する音響再生装置において、
Mチャンネルの音声信号をワイヤレス送信する送信手段と、
前記ワイヤレス送信された音声信号を受信する受信手段と、
当該受信手段がMチャンネルの音声信号を受信したことを示す受信情報をワイヤレス送信する受信情報送信手段と、
前記ワイヤレス送信された受信情報を受信する受信情報受信手段と、
M+Nチャンネルの音声信号を合成してNチャンネルの合成音声信号を生成する音声信号合成手段とを備え、
前記受信情報受信手段が受信情報を受信しなかった場合、前記音声信号合成手段で生成された合成音声信号をワイヤード伝送することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の音響再生装置において、Nチャンネルの音声信号のワイヤード伝送をMチャンネルの音声信号のワイヤレス伝送に対して所定時間遅延させる遅延手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の音響再生装置において、前記所定時間は、前記音声信号合成手段がMチャンネルの音声信号とNチャンネルの音声信号を時間軸上の同じ位置で合成できる時間であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の音響再生装置において、前記所定時間は前記ワイヤード伝送に対して前記ワイヤレス伝送が遅れる時間に相当する時間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の音響再生装置によれば、受信情報受信手段が受信情報を受信しなかった場合、受信手段がワイヤレス伝送に対応するMチャンネルの音声信号を受信しなかったとして、音声信号合成手段ではM+Nチャンネルの音声信号が合成されNチャンネルの合成音声信号を生成する。そして、この合成されたNチャンネルの合成音声信号は、ワイヤード伝送され、ワイヤード伝送先に接続されるスピーカに音声出力される。これにより、ワイヤレス受信が人の往来や電波障害などで遮られることによりMチャンネルの音声信号のワイヤレス受信が正常に行われない場合であっても、このワイヤレス受信されるはずであったMチャンネルの音声信号に基づく音声も、合成音声信号がワイヤード伝送されて、Nチャンネルの音声信号に基づく音声と同時にワイヤード伝送先に接続されるスピーカから出力される。而して、ワイヤレス伝送に対応するMチャンネルの音声信号に基づく音声がいずれのスピーカからも出力されなくなるといった虞れをなくすことができる。
【0010】
従って、複数の人の会話が記録された記憶媒体を再生する際に、ワイヤレス伝送が正常にされなかったとしても、人の声が欠落することはなく、会話の内容が理解できなくなってしまうという不都合が起こることはない。
【0011】
請求項2に記載の音響再生装置によれば、遅延手段によって、Nチャンネルの音声信号のワイヤード伝送をMチャンネルの音声信号のワイヤレス伝送に対して所定時間遅延させる遅延手段を備えているから、ワイヤード伝送先に接続されるスピーカとワイヤレス伝送先に接続されるスピーカ間における音声出力のタイミングを補正することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、上記所定時間は、音声信号合成手段がMチャンネルの音声信号とNチャンネルの音声信号を時間軸上の同じ位置で合成できる時間に設定される。これにより、送信手段及び受信手段におけるエンコード処理及びデコード処理などによりMチャンネルの音声信号のワイヤレス受信の試行にある程度の時間が必要である場合でも、ワイヤレス受信に失敗してワイヤード伝送に切り替えたMチャンネルの音声信号とワイヤード伝送に対応するNチャンネルの音声信号を時間軸上の同じ位置において同じタイミングで音声信号合成手段に入力することができる。従って、音声信号合成手段においてMチャンネルの音声信号とNチャンネルの音声信号を正しいタイミングで合成することができ、このワイヤレス受信されるはずであったMチャンネルの音声信号に基づく音声も、時間軸上の同じ位置にあるNチャンネルの音声信号に基づく音声と同時に同じスピーカから出力することができる。
【0013】
請求項4に記載の音響再生装置によれば、前記遅延手段は、ワイヤード伝送に対してワイヤレス伝送が遅れる時間に相当する時間分遅延させるので、ワイヤード伝送先に接続されるスピーカとワイヤレス伝送先に接続されるスピーカ間における音声の出力に時間差が生じることがない。
【実施例1】
【0014】
本実施例では、M+Nチャンネルの音声信号を出力する音声信号出力手段を有する音響再生装置として、M=3、N=4の場合を例に説明する。本実施例では6.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル、サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号を出力し、そのうちNチャンネルとしてフロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネルが該当し、Mチャンネルとしてサラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネルが該当する。この音響再生装置は、音声信号をリスナー前方の3つのスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26)と、重低音スピーカ27と、リスナー後方の3つのスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29、サラウンドバックスピーカ30)に出力する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例である音響再生装置の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施例に係る音響再生装置は、メインユニット1とフロントアンプユニット2とサラウンドンプユニット3の3つのユニットを基本構成としている。フロントアンプユニット2には、ワイヤード伝送先に接続されたスピーカとして、フロント左スピーカ24とフロント右スピーカ25とセンタースピーカ26と重低音スピーカ27の4つのスピーカがワイヤード接続される。また、サラウンドンプユニット3には、ワイヤレス伝送先に接続されたスピーカとして、サラウンド左スピーカ28とサラウンド右スピーカ29とサラウンドバックスピーカ30の3つのスピーカがワイヤード接続される。以下、これらの各ユニットの具体的構成について説明する。
【0017】
メインユニット1は、制御部4と音声信号発生部5と音声信号出力手段として機能する音声信号処理部6と入力部7と受信情報受信ユニット23から成る。制御部4は、本実施例に係る音響再生装置における各種制御を行う。音声信号発生部5は、DVDなどのソースから入力されたデジタル音声信号を音声信号処理部6に出力する。
【0018】
ここで、図2を用いて、図1に示すメインユニット1内の音声信号処理部6の概略構成を説明する。音声信号発生部5は、DVDなどのソースから、図3に示すようにフレーム分割された音声ストリームとして入力された5.1チャンネルのデジタル音声信号をオーディオDSP17に出力する。そしてオーディオDSP17中のオーディオデコーダ16は、5.1チャンネルのデジタル音声信号をデコードする。また、オーディオDSP17は、オーディオデコーダ16においてデコードされたデジタル音声信号を5.1チャンネルから6.1チャンネルにするサラウンド処理及び遅延手段として機能して後述する遅延処理を行い、これをD/Aコンバータ19に出力する。メモリ18は、オーディオDSP17から出力されたデジタル音声信号を一旦ストアし、オーディオDSP17に出力するものである。D/Aコンバータ19は、オーディオDSP17から出力されたデジタル音声信号のアナログ音声信号への変換を行い、これをボリュームIC20に出力する。ボリュームIC20は、D/Aコンバータ19から出力されたアナログ音声信号についての音声の減衰量をチャンネル毎に調整し、これをケーブルAに出力するものである。尚、本実施例においてはDVDから音声信号発生部5に入力されるデジタル音声信号は5.1チャンネルであるが、本発明においてはDVDから出力されるデジタル音声信号は5.1チャンネルに限られず、例えばDolby Digitalなどの6.1チャンネルの場合であってもよい。
【0019】
入力部7は、ユーザによる図示しないキーやボタンの押下によって制御部4へ制御信号を出力することにより、ユーザが所望する音響再生装置の動作制御を可能にするものである。受信情報受信ユニット23は、受信情報受信手段として機能し、ワイヤレス受信ユニット14が3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号を受信したことを示す受信情報を受信情報送信ユニット22からワイヤレス受信する。
【0020】
フロントアンプユニット2は、3.1チャンネルアンプ部8と切替部F9とワイヤレス送信ユニット10とソケットF11とダウンミックス回路部21から成る。切替部F9は、ワイヤレス伝送する場合とワイヤード伝送する場合に各々対応して、音声信号処理部6からケーブルAを通ってワイヤレス送信ユニット10とソケットF11に出力されるアナログ音声信号の信号出力経路を選択的に切り替える。ワイヤレス送信ユニット10は、送信手段として機能し、切替部F9から入力された3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号のバッファリング処理及びRFエンコード処理を行い、その後、後述するワイヤレス受信ユニット14に向けてワイヤレス送信する。3.1チャンネルアンプ部8は、6.1チャンネルのアナログ音声信号のうち3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)のアナログ音声信号を増幅後、ワイヤード接続された各々対応するフロント左スピーカ24とフロント右スピーカ25とセンタースピーカ26と重低音スピーカ27に出力する。ソケットF11は、フロントアンプユニット2側にてケーブルBを接続するためのものである。ダウンミックス回路部21は、音声信号合成手段として機能し、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号が正常にワイヤレス受信されなかった場合、制御部4の制御によって、図4に示すようにダウンミックス回路部21の各々のスイッチをオンにし、このスイッチのオンによって、サラウンド左チャンネルの音声信号はフロント左チャンネルの音声信号と、サラウンド右チャンネルの音声信号はフロント右チャンネル音声信号と、サラウンドバックチャンネル音声信号はセンターチャンネル音声信号と合成される。
【0021】
サラウンドアンプユニット3は、3チャンネルアンプ12と、切替部R13と、ワイヤレス受信ユニット14と、ソケットR15と受信情報送信ユニット22とから成る。3チャンネルアンプ12は、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のアナログ音声信号が入力して増幅した後、ワイヤード接続された各々対応するサラウンド左スピーカ28とサラウンド右スピーカ29とサラウンドバックスピーカ30に出力する。切替部R13は、ワイヤレス伝送する場合とワイヤレス伝送しない場合に各々対応して、ワイヤレス受信ユニット14とソケットR15とから3チャンネルアンプ12へ出力されるアナログ音声信号の信号出力経路を選択的に切り替える。ワイヤレス受信ユニット14は、受信手段として機能し、ワイヤレス送信ユニット10からワイヤレス受信した3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号をバッファリング処理し、これらデジタル音声信号を切替部13に出力する。ソケットR15は、サラウンドアンプユニット3側にてケーブルBを接続するためのものである。受信情報送信ユニット22は、受信情報送信手段として機能し、ワイヤレス受信ユニット14が3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号を受信したことを示す受信情報を受信情報受信ユニット23にワイヤレス送信する。
【0022】
次に、6.1チャンネルの音声信号のうち3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号をワイヤレス伝送する場合の音声信号処理の流れについて、図5を用いて説明する。
【0023】
まず、DVDから5.1チャンネルのデジタル音声信号が音声信号発生部5に入力される(S1)。音声信号処理部6では、音声信号発生部5から入力された5.1チャンネルのデジタル音声信号の各種音声処理(デコード処理、5.1チャンネルから6.1チャンネルへのデジタル音声信号のサラウンド処理、後述する遅延処理、アナログ音声信号への変換、各チャンネルの音声信号毎の減衰処理)が行われる(S2)。音声信号処理部6から出力された6.1チャンネルのアナログ音声信号はケーブルAを通じてフロントアンプユニット2に入力される。このフロントアンプユニット2に入力された6.1チャンネルのアナログ音声信号のうち3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)のアナログ音声信号は(S4のN)、3.1チャンネルアンプ部8に入力されて各々増幅された後(S5)、各々対応するフロント左スピーカ24とフロント右スピーカ25とセンタースピーカ26と重低音スピーカ27に出力される(S6)。
【0024】
一方、この6.1チャンネルのアナログ音声信号のうち3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のアナログ音声信号は(S4のY)、ワイヤレス送信ユニット10に入力される。ワイヤレス送信ユニット10に入力された3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号は、RFエンコード処理及びバッファリング処理され(S8)、ワイヤレス受信ユニット14に向けてワイヤレス送信される(S9)。
【0025】
ここで、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号が正常にワイヤレス受信された場合(S10でY)、ワイヤレス受信ユニット14では3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号を受信した後、バッファリング処理及びRFデコード処理する(S11)。そして、アナログ音声信号に変換され(S12)、3チャンネルアンプ12に入力されて各々増幅された後(S13)、3チャンネルアンプ12に接続されたスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29、サラウンドバックスピーカ30)に出力される(S14)。
【0026】
反対に、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号が正常にワイヤレス受信されなかった場合(S10でN)、受信情報送信ユニット22から受信情報受信ユニット23に受信情報が送信されなかったとして、ダウンミックス回路部21にて前述した音声信号の合成が行われる(S15)。そして、合成された音声信号は3.1チャンネルアンプ8に入力されて各々増幅され(S16)、これらの音声信号に対応する音声が3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26)から出力される(S17)。
【0027】
一般には、例えば6.1チャンネルのスピーカ出力のあるマルチチャンネル環境では、スピーカの位置に応じて遅延時間の設定がされるが、単純に音声信号処理部6による遅延処理を行わない場合、ワイヤレス送信ユニット10におけるRFエンコードとバッファリング処理及びワイヤレス受信ユニット14におけるバッファリング及びデコード処理にはある程度の時間を要するため、ワイヤレス伝送によって、ワイヤレス伝送に対応するチャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号が音声信号処理部6から3チャンネルアンプ12に接続されるスピーカに入力されるタイミングは、ワイヤード伝送に対応するチャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号が音声信号処理部6から3.1チャンネルアンプ8に接続されるスピーカに入力されるタイミングに比べて一定時間遅延してしまう。
【0028】
例えば、図3はフレーム分割された音声ストリームが2フレーム分遅延する場合を示している。すると、3チャンネルアンプ12に接続されるスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29、サラウンドバックスピーカ30)からは3.1チャンネルアンプ8に接続されるスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26、重低音スピーカ27)より遅れて音声が出力されることになる。
【0029】
本実施例においては、ワイヤード伝送によって3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号が音声信号処理部6から3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26、重低音スピーカ27)へ入力されるタイミングに対して、ワイヤレス伝送によって3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号が音声信号処理部6から3チャンネルアンプ12に接続されたスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29、サラウンドバックスピーカ30)へ入力されるタイミングが遅れる時間に相当する時間分、3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号のワイヤード伝送を遅延させるように設定することによって、各スピーカから時間差が生じることがなく音声が出力される。
【0030】
遅延処理は、例えば次のように行われる。まず、制御部4の制御によりオーディオDSP17は、6.1チャンネルの音声信号のうち、ワイヤード伝送に対応する3.1チャンネル(フロント左チャンネル、センターチャンネル、フロント右チャンネル、重低音チャンネル)の音声信号を音声信号処理部6内のメモリ18に一旦ストアする。そして、音声信号処理部6における3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号の出力開始時から前述した遅延時間分経過した後、制御部4の制御によりオーディオDSP17は、音声信号処理部6内のメモリ18からストアされていた3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号を順次読み出し、これらの音声信号を、ケーブルA等を経由して3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26、重低音スピーカ27)に出力する。
【0031】
次に、ワイヤレス伝送が正常に行われた場合、及び正常に行われなかった場合の具体的な処理の流れについて、図6を用いて説明する。
【0032】
ワイヤレス受信ユニット14がワイヤレス伝送に対応する3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のフレーム分割された音声ストリームの1フレーム分の音声信号を受信したときは(S1でY)、受信情報送信ユニット22が受信情報受信ユニット23に受信情報を送信する(S2)。そして、受信情報の受信を確認した制御部4は、ワイヤレス受信が正常に行われたと判断し、3チャンネルアンプ12に接続されたスピーカ(サラウンド左スピーカ28、サラウンド右スピーカ29、サラウンドバックスピーカ30)から音声を出力するように制御する(S3)。
【0033】
一方、ワイヤレス受信ユニット14がワイヤレス伝送に対応する3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のフレーム分割された音声ストリームの1フレーム分の音声信号を受信できなかったときは(S1でN)、受信情報送信ユニット22は受信情報受信ユニット23に受信情報を送信しない。そして、受信情報の受信を確認できなかった制御部4は、音声データのうち次の所定単位部分(ワイヤレス伝送できなかった音声信号が1フレーム目である場合には、次の所定単位部分は2フレーム目)に対応する音声信号のワイヤレス伝送を行わないように制御する。同時に、制御部4は、これらのワイヤレス伝送に対応する3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号とワイヤード伝送に対応する3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号を時間軸上の同じ位置で合成できるようにダウンミックス回路部21に出力するように制御する(S4)。そして、ダウンミックス回路21で合成された合成音声信号がワイヤード伝送されて、ワイヤレス伝送に対応する3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号についても3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26)から音声が出力される(S5)。
【0034】
本実施例の音響再生装置によれば、受信情報受信ユニット23が受信情報を受信しなかった場合、ワイヤレス受信ユニット14がワイヤレス送信された3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号を受信しなかったとして、ダウンミックス回路部21は6チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号から3チャンネルの合成音声信号(サラウンド左チャンネルの音声信号はフロント左チャンネルの音声信号と、サラウンド右チャンネルの音声信号はフロント右チャンネルの音声信号と、サラウンドバックチャンネルの音声信号はセンターチャンネルの音声信号と合成される。)を生成し、この合成された3チャンネルの合成音声信号は3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26)に音声出力される。
【0035】
これによりワイヤレス受信が人などで遮られることによりワイヤレス受信が正常に行われない場合であっても、ワイヤレス伝送されるはずであった3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号に基づく音声も、3チャンネルの合成音声信号がワイヤード伝送されて、3.1チャンネルアンプ8に接続されるスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25、センタースピーカ26)から出力される。而して、ワイヤレス伝送に対応するチャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号がいずれのスピーカからも出力されなくなるといった虞れをなくすことができる。
【0036】
また、本実施例の音響再生装置によれば、音声信号処理部6内のオーディオDSP17が、3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号のワイヤード伝送を、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号のワイヤレス伝送に対して遅延させ、この遅延は前記ワイヤード伝送に対して前記ワイヤレス伝送が遅れる時間に相当する時間分の遅延に設定しているため、3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号が入力される3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカと、3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号が入力される3チャンネルアンプ12に接続されたスピーカ間における音声の出力に時間差が生じることがない。
【0037】
加えて、このように遅延時間を設定したので、ワイヤレス送信ユニット10におけるRFエンコードとバッファリング処理及びワイヤレス受信ユニット14におけるバッファリング及びデコード処理によりワイヤレス受信の試行にある程度の時間が必要であったとしても、ワイヤレス受信に失敗してワイヤード伝送に切り替えたワイヤレス伝送に対応する3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号とワイヤード伝送に対応する3.1チャンネル(フロント左チャンネルとフロント右チャンネルとセンターチャンネルと重低音チャンネル)の音声信号を、時間軸上の同じ位置(同じ番号のフレーム)において同じタイミングでダウンミックス回路21に入力することができる。
【0038】
従って、ダウンミックス回路部21において3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号と3チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル)の音声信号を正しいタイミングで合成することができ、このワイヤレス受信されるはずであった3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号に基づく音声も、時間軸上の同じ位置にある3.1チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、センターチャンネル、重低音チャンネル)の音声信号に基づく音声と同時に3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカから出力することができる。
【0039】
尚、本実施例においては、M+Nチャンネルの音声信号を出力する音声再生装置において、M=3、N=4であるが、本発明においてはM、Nはこれら限られず、M=2、N=3など様々な正の整数を採用することができる。
尚、本実施例においては、M+Nチャンネルの音声信号を出力する音声再生装置において、M=3、N=4であるが、本発明においてはM、Nはこれに限られず、例えばM=2、N=4など様々な正の整数を採用することができる。
【0040】
例えば、M=2、N=4を採用した場合にあっては(5.1チャンネルの音声信号を出力する場合)、ワイヤレス受信ユニット14がワイヤレス送信された2チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル)の音声信号を受信しなかったとき、ダウンミックス回路部21は4チャンネル(フロント左チャンネル、フロント右チャンネル、サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル)の音声信号から2チャンネルの合成音声信号(サラウンド左チャンネルの音声信号はフロント左チャンネルの音声信号と、サラウンド右チャンネルの音声信号はフロント右チャンネルの音声信号と合成される。)を生成し、この合成された2チャンネルの合成音声信号は3.1チャンネルアンプ8に接続されたスピーカ(フロント左スピーカ24、フロント右スピーカ25)に音声出力される(尚、センターチャンネルの音声信号と重低音チャンネルの音声信号は、音声信号の合成に関与せず、ダウンミックス回路部21をそのまま通過し、3.1チャンネルアンプ部8を経て、それぞれセンタースピーカと重低音スピーカに音声出力される)。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例である音響再生装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すメインユニット1の音声信号処理部6の概略構成を示すブロック図である。
【図3】3チャンネル(サラウンド左チャネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)のデジタル音声信号(フレーム分割された音声信号ストリーム)の遅延を示す概略構成図である。
【図4】ダウンミックス回路部21の概略配線図である。
【図5】ワイヤレス受信が正常に行われた場合、及び正常に行われなかった場合の具体的な処理の流れを示す図である。
【図6】6.1チャンネルの音声信号のうち3チャンネル(サラウンド左チャンネル、サラウンド右チャンネル、サラウンドバックチャンネル)の音声信号をワイヤレス伝送する場合の音声信号処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0042】
6 音声信号処理部
10 ワイヤレス送信ユニット
14 ワイヤレス受信ユニット
17 オーディオDSP
21 ダウンミックス回路部
22 受信情報送信ユニット
23 受信情報受信ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
M+N(M、Nは正の整数)チャンネルの音声信号を出力する音声信号出力手段を有し、当該音声信号出力手段から出力されるNチャンネルの音声信号についてはワイヤード伝送し、Mチャンネルの音声信号についてはワイヤレス伝送する音響再生装置において、
Mチャンネルの音声信号をワイヤレス送信する送信手段と、
前記ワイヤレス送信された音声信号を受信する受信手段と、
当該受信手段がMチャンネルの音声信号を受信したことを示す受信情報をワイヤレス送信する受信情報送信手段と、
前記ワイヤレス送信された受信情報を受信する受信情報受信手段と、
M+Nチャンネルの音声信号を合成してNチャンネルの合成音声信号を生成する音声信号合成手段とを備え、
前記受信情報受信手段が受信情報を受信しなかった場合、前記音声信号合成手段で生成された合成音声信号をワイヤード伝送することを特徴とする音響再生装置。
【請求項2】
Nチャンネルの音声信号のワイヤード伝送をMチャンネルの音声信号のワイヤレス伝送に対して所定時間遅延させる遅延手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
前記所定時間は、前記音声信号合成手段がMチャンネルの音声信号とNチャンネルの音声信号を時間軸上の同じ位置で合成できる時間であることを特徴とする請求項2に記載の音響再生装置。
【請求項4】
前記所定時間は前記ワイヤード伝送に対して前記ワイヤレス伝送が遅れる時間に相当する時間であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の音響再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−101081(P2006−101081A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283550(P2004−283550)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(397016699)三洋テクノ・サウンド株式会社 (16)
【Fターム(参考)】