説明

音響再生装置

電気音響変換部と、複数チャンネルの音響信号に応じて電気音響変換器(10,11,12)を駆動するための変換器駆動部を含み、録音空間内の聴取者の耳の位置に存在するであろう局所的な音場を近似した音場を聴取者の場所に再生する目的で設計・構成されたフィルタ部


を含み、中間音響放射チャンネルを供する第一の音響放射手段(10)、左音響放射チャンネルを供する第二の音響放射手段(11)、右音響放射チャンネルを供する第三の音響放射手段(12)を含む電気音響変換手段からなる音の再生装置。第一の音響放射手段は、第二と第三の音響放射手段の間に位置しており、第一、第二、第三の音響放射手段はそれぞれ幅広い周波数帯域放射するようになっており、第二及び第三の音響放射手段の少なくとも一つにおいては異なる周波数が対応する異なる方位角位置から放射されるようになっており、高い周波数の音は主として第一の音響放射手段と近い位置から伝達され、低い周波数の音は主として第一の音響放射手段から遠い場所から伝達される。第一の音響放射手段は幅広い周波数が実質上方位角位置が同じ場所から放射されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は音響再生装置に関するものである。
この発明は、以下の内容に限定するわけではないが、とりわけ音の立体音響再生に関するものである。録音空間の複数地点、例えば頭の耳の位置において記録された信号が、聴取空間において三つのスピーカ・チャンネルを経て再現され、聴取空間の複数地点において録音空間の対応する地点で得られる聴覚上の効果を生成することを意図している。
1.序論
1.1 発明の背景
聴取者に仮想の音響環境を提供するためにバイノーラル技術[1]−[3]がよく用いられる。この技術の原理は、再現された音場が現実の音場に聴取者がいた場合に生じたであろう音場と符合するように聴取者の耳の位置における音場を制御することである。これを実現する一つの方法は、聴取空間内の異なる位置にある2つのスピーカ(電気音響変換器)を用い、信号処理の助けを借りて、妥当なバイノーラル信号が聴取者の耳の位置で得られるようにすることである[4]−[8]。
【0002】
バイノーラル再生に3チャンネルのスピーカを使うことも可能である。センターチャンネルの追加により、2チャンネルのバイノーラル再生装置で達成されるクロストーク抑制効果が向上することが何人かの研究者によって実験的に観測されている。例えばミヨシとコイズミ[9]は2つのスピーカの代わりに3つのスピーカが用いられたときのクロストーク抑制のためのフィルタ設計法を示している。
【0003】
この設計手法はその前にミヨシとカネダ[10]に示された室音響応答の逆変換手法に続くものである。3つのスピーカを用いた同様のアプローチは、適応フィルター設計法を用いたウトウら[11]に示された。最後にクーパーとバウク[12]も後になってスピーカ出力から聴取者の耳への伝達関数のムーア・ペンローズ擬似逆マトリクスという解析的周波数領域逆変換に基づく3チャンネルのフィルタ設計法を発表している。
【0004】
この後の第2節では、こうしたスピーカによるバイノーラル合成に関わるシステム逆変換に対するこれら従来のアプローチから生じる数々の問題点を議論する。自由音場伝達関数モデルによる基礎的な解析を用いてこうしたシステムが内包する根本的な問題点を浮き彫りにする。システム逆変換に要求される増幅は、ダイナミックレンジの損失につながる。得られた逆フィルタは、条件数の大きな周波数周辺において大きな誤差を含んでいる可能性が高い。実用的なフィルタを設計するためにレギュラライゼーションがよく用いられるが、これもまた制御効果の低さにつながる。再生段階の小さな誤差でさえ大きな性能低下につながる。最適分散音源法(OSD)は、可変周波数・変換機間隔の概念を導入することにより、以上の問題全てに対する解決策を提供した[13]。
1.2 発明の概要
電気音響変換手段、複数チャンネルの録音に呼応して電気音響変換手段を駆動するための変換機駆動手段、録音空間の聴取者の耳の位置近辺の音場の近似を、電気音響変換手段の特徴と聴取者の耳との位置関係を考慮して聴取者の位置に再現するよう設計されたフィルタ手段からなる変換機駆動手段、中間音響放射チャンネルを供する第一の音響放射手段、左音響放射チャンネルを供する第二の音響放射手段、右音響放射チャンネルを供する第三の音響放射手段を含む電気音響変換手段からなる音の再生装置。第一の音響放射手段は、第二及び第三の音響放射手段の間に位置しており、第二及び第三の音響放射手段においては高い周波数の音は主として第一の音響放射手段と近い位置から伝達され、低い周波数の音は主として第一の音響放射手段から遠い場所から伝達される。
【0005】
この発明の実施形態の一つは、聴取者の位置を基準としてそれぞれ異なる方位角領域に位置する3チャンネルの音響放射手段を提供する。そして、第二及び第三の音響放射手段の異なる方位角方向にある各部は、異なる周波数または周波数帯域の音を放射する。
【0006】
音響放射器は従来型のスピーカの形態に近い独立したユニットが横に並んでいる形態のものでもよい。例えばそれぞれの変換器ユニットは特徴的な周波数または周波数帯域の音を放射しても良いし、それぞれのユニットはそれぞれ特徴的な周波数または周波数帯域の音を放射する複数の変換器副次群から構成されていても良い。あるいはまた、音響放射器は引き伸ばされた形の変換器手段で構成されていても良い。したがって、引き伸ばされた形の変換器の放射部の位置は周波数に応じて連続的に変化するようになっていても良い。
【0007】
この発明は、一つ以上のサブ・ウーファ・ユニットやステレオ再生やサラウンド再生のための従来のスピーカなどの電気音響変換手段の付加的な使用を除外しないことを理解すべきである。
【0008】
左右チャンネル放射器の変換器の望ましい作用位置−周波数範囲は、次の式で規定される。
【数1】

【0009】
次に続く数式は、自由音場モデルから得た、頭部の回折がある現実的な状況に周波数−方位角特性を合わせるための前の数式(a)、(b)、(c)、(d)に対する補正係数である。
【数2】

【0010】
作用周波数−方位角範囲を定義するための信号レベルは、変換器入力信号や出力信号ではなく、理想的には受聴位置で測定されるべきであることに注意しなくてはならない。これは、変換器の作用周波数範囲の外では、スピーカから聴取者への伝達関数行列の特性に
より打ち消され耳の位置では小さな信号レベルとなる、比較的大きな出力信号レベル(クロスオーバー・フィルタの無い場合と比べればはるかに小さいが、従来のシステム逆変換を用いないマルチ・ウェイ・ステレオ再生の場合と比べれば大きい可能性あり)が存在する可能性があるからである。
【0011】
前の数式(a)においては、

が実質的に2となることが理想であり、位置−周波数範囲を計算するときに例えば±2の「許容誤差」を与えることが出来る。したがって

を望ましい周波数範囲の中心周波数付近に割り当てることが出来る。
有利な実施形態の一つとして、

がある。
別の有利な実施形態には、

がある。
さらに別の有利な実施形態には、

がある。
さらなる有利な実施形態には、

がある。
【0012】
次からは2ウェイ・システムの例をもって説明する。ある音響放射器に対して適当な周波数範囲の信号を分配するためにクロスオーバー・フィルタを用いることが出来る。クロスオーバー・フィルタがその周波数範囲の逆フィルタ手段

の出力に応答するように配置することも出来る。あるいはまた、逆フィルタ手段

がその周波数範囲のクロスオーバー・フィルタの出力

に応答するように配置することも出来る。
逆フィルタは逆問題の最小ノーム解として設計することも出来る。
逆フィルタは、擬似逆フィルタとして設計することも出来る。
【0013】
逆フィルタは適応フィルタとして設計することも出来る。
逆フィルタは可聴範囲の低域端の周波数範囲において、ドライブの出力信号にレギュラライゼーションを適用することで設計することも出来る。
【0014】
可聴周波数範囲の超低域をカバーするため、サブ・ウーファを用いることが出来る。
音響放射器が引き伸ばされた形の変換器手段で構成されている場合、その引き伸ばされた形の変換器手段は、それぞれの引き伸ばされた音響放射面は基部と末端を持ち、左右チャンネルの変換器の基部がセンター・チャンネルと隣接しており、その要素の基部に駆動出力信号に応じて振動を伝達する加振手段が取り付けられており、その要素の振動伝達特性は、比較的高い周波数の振動が末端に向かう伝達は抑制され、その放射面の基部は末端と比べてより高い周波数で振動するようになっている引き伸ばされた形の音響放射要素で構成されていることが望ましい。
【0015】
この発明の別の側面は、中間音響放射チャンネルを供する第一の音響放射手段、左音響放射チャンネルを供する第二の音響放射手段、右音響放射チャンネルを供する第三の音響放射手段を含み、第一の音響放射手段は、第二及び第三の音響放射手段の間に位置しており、第二及び第三の音響放射手段の少なくとも一つは比較的高い周波数は主として第一の音響放射器に近いところから伝達され、比較的低い周波数は主として第一の音響放射器から遠い場所から伝達されるようになっている仕組みの電気音響変換器が存在することである。
【0016】
この発明のさらに別の側面は、複数チャンネルの録音に応答して電気音響変換器設備を駆動する変換器駆動部に関するものである。変換器駆動部は、録音空間の聴取者の耳の位置近辺の音場の近似を、電気音響変換手段の特徴と聴取者の耳との位置関係を考慮して聴取者の位置に再現するよう設計されたフィルタ装置で構成されている。変換器駆動部は、中間音響放射チャンネルを供する第一の音響放射手段、左音響放射チャンネルを供する第二の音響放射手段、右音響放射チャンネルを供する第三の音響放射手段を含む電気音響変換装置を用いるよう設計されている。第一の音響放射手段は、第二及び第三の音響放射手段の間に位置しており、第二及び第三の音響放射手段の少なくとも一つは比較的高い周波数は主として第一の音響放射器に近いところから伝達され、比較的低い周波数は主として第一の音響放射器から遠い場所から伝達されるようになっている。
【0017】
変換器駆動部が信号処理機で構成されている場合、変換器駆動部を適切に修正する機械読み取り可能な命令を用いてもよい。この命令は、CD、DVDなどのデータ媒体により提供しても良いし、信号やデータ配列の形でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
1.3 図面の簡単な説明
これ以降はこの発明がさらに、しかしあくまでも単なる一例として、添付図を引用しながら記述される。それらは、
【図1】システム逆変換をともなうスピーカによるバイノーラル再生のブロック図である。
【図2】解析を行う2音源2受音点システムの位置関係である。
【図3】方位角間隔の定義である。
【図4】
【0019】


の関数としての逆フィルタ行列

のノルムと特異値であり、a)線形軸であり、b)対数軸である。
【図5】システム逆変換によるダイナミック・レンジの損失である。
【図6】
【0020】


の関数としての条件数

である。
【図7】受音点方向(0dBと−∞dB)を基準とした制御変換器対による音の放射である。
【図8】OSDシステムの原理である。
【図9】幾つかの異なる奇数値
【0021】

に対する音源間隔と周波数との関係である。
【図10】
【0022】
周波数の関数としてのOSDの逆フィルタ行列

のノルムと特異値である。
【図11】受音点方向(0dBと−∞dB)を基準としたOSD変換器対による音の放射である。
【図12】
【0023】

の関数としての逆フィルタ行列

の特異値。2チャンネルOSDと3チャンネルOSDの最適値。
【図13】3チャンネルOSDシステムの原理である。
【図14】
【0024】
幾つかの異なる整数値

に対する音源間隔と周波数との関係である。
【図15】システム逆変換をともなう3個のスピーカによるバイノーラル再生のブロック図である。
【図16】解析を行う3音源2受音点システムの位置関係である。
【図17】
【0025】
3チャンネルの場合の

の関数としての逆フィルタ行列

のノルムと特異値であり、a)線形軸であり、b)対数軸である。
【図18】
【0026】
センター・チャンネルの感度を3dB上げた場合の、3チャンネルの場合の

の関数としての逆フィルタ行列

のノルムと特異値であり、a)線形軸であり、b)対数軸である。
【図19】
【0027】
周波数の関数としての3チャンネルOSDの逆フィルタ行列

のノルムと特異値である。
【図20】位置/周波数が変動する変換器である。
【図21】離散化した位置/周波数が変動する変換器である。
【図22】周波数/方位角領域及び離散化の例である。
【図23】
【0028】

の関数としての3チャンネルの場合の条件数

【0029】
である。
【図24】
【0030】
センター・チャンネルの感度を3dB上げた場合の、

の関数としての3チャンネルの場合の条件数

である。
【図25−33】3チャンネルOSDの概念に含まれる様々な音響再生装置の概念説明図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
2. スピーカによるバイノーラル再生の原理
2.1 既存の技術の原理
スピーカによる2チャンネルのバイノーラル再生を例として以下に記述するとともに図1に示す。このシステムの目的は、仮想音空間内の音源に関連する信号とともに、聴覚の空間情報を内包するバイノーラル信号を聴取者のそれぞれの耳に独立して送ることである。しかしながら、この目的のためにスピーカを用いた場合、スピーカはそれぞれ両方の耳に信号を供給してしまう。スピーカと聴取者の耳の間には行列状の音響経路が存在し、これは伝達関数行列として表現することができる(プラント行列)。(聴取者の両耳など)2点における(バイノーラル音響信号のような)2つの信号の独立制御は、変換器への入力信号をプラントの伝達関数行列の逆行列でフィルタリング(濾波)することにより、(スピーカのような)2つの電気音響変換器を用いて達成できる。この過程はシステム逆変換やクロストーク抑制とも呼ばれている。関連する信号と伝達関数を次のとおり定義する。2個のモノポール変換器(制御音源)が複素ベクトルの要素

で定義される音源の強さ(体積加速度)を持っている。これが両耳(制御点)でベクトルの要素

で与えられる音圧信号を生み出す。

をプラント行列(音源と制御点の間の伝達関数行列)とすると
【数3】

である。受音点にて合成したい2つの音響信号は複素ベクトルの要素

で定義される。オーディオへ応用する場合、通常これらの信号は両耳に独立して供給されたときに所望の仮想聴覚感覚を生み出すような信号である。これらは、例えば、録音頭(例えばダミーヘッド)を用いて音源信号

を空間特性とともに録音したり、合成バイノーラル・フィルタ行列

で信号

をフィルタリングしたりすることで得られる。従って、逆フィルタを含むフィルタ行列

(逆フィルタ行列)を

となるよう導入する。ここで、
【数4】

であり、すなわち
【数5】

である。ベクトル

がベクトル

をよく近似するように、適当な遅延を用いて逆フィルタ行列

を設計することができる[14][15]。2つの受音点における独立制御が完全であれば、

は単位行列

となる。逆フィルタ行列

はプラント行列

の擬似逆変換を用いて設計することもできる。逆フィルタ行列

は適応フィルタで構成されていても良い。
【0032】
しかしながら、ステム逆変換は、例えばダイナミック・レンジの損失や誤差に対する過敏性など、数多くの問題点を引き起こす。ここではまずはじめに自由音場下で2つのモノポール変換器(音源)を用いて2つのモノポール受音器を制御するような簡単な例を考える。システム逆変換に内在する根本的な問題点はこのような単純な事例を用いて説明することができる。制御音源と制御点の位置関係を図2に示す。θは方位角の差(方位角間隔)であり、実際の角度ではないことに注意が必要である(図3)。
【0033】
2.2 逆フィルタ行列のふるまい
自由音場内の場合、プラント伝達関数行列は以下のようにモデル化できる。
【数6】

である場合を考える。すなわち、それぞれもう一方の音源の妨害(クロストーク)なしに近いほうの単一の音源(それぞれ

または

)により生成される音圧信号が所望の信号であるという場合である。これにより解が因果律を満たすとともに、空間内の伝播に伴う球面減衰の影響と逆変換の影響を分離できる。逆フィルタ行列

の要素は

の逆行列そのものから得られ、

の各要素の振幅



に含まれるそれぞれの逆フィルタにより要求される所望の信号の必要増幅量を表す。音源の強さの最大増幅量は

の2ノルム(

と表す)により求めることができ、これは

の特異値のうち最大のもので、これらの特異値は



で表す[13]。よって
【数7】

である。

は所望の信号の逆相成分の増幅係数であり、

は所望の信号の同相成分の増幅係数である。

の関数としての



を図4に示す。図4からわかる通り、

は周期的に振幅を大きく変え、

とθが次の関係を偶数値

で満たすところでピークを持っている。
【数8】

特異値

はシステムが所望の信号の逆相成分を再生することが困難な

でピークを持ち、特異値

はシステムが所望の信号の同相成分を再生することが困難な

でピークを持っている。これらの周波数の周辺では、制御音源から来た音の信号は破壊的に干渉する。別の言い方をすれば、信号はお互いに打ち消しあう。したがって、逆変換の解、すなわちそれぞれの受音点において所望の音圧を生み出すために必要な増幅量は非常に大きくなる。
【0034】
3. 最適分散音源法以前の既存のシステムの根本的な問題点
3.1 ダイナミック・レンジの損失
現実には

で与えられる音響出力の最大値は、クリッピングを避けるために装置全体の能力内でなくてはならない。従って図5に見られるように、要求される増幅量はそのままダイナミック・レンジの損失となる。音源の出力信号のレベル

とその結果としての聴取者の耳における音圧のレベル

が、システムの最大出力レベルとダイナミック・レンジが同じであると仮定して示されている。

が大きい周波数では変換器が非常に大きなレベルの音を放出し、そのほとんどは打ち消されてしまう。結果として聴取者の耳で合成されるバイノーラル信号は、打ち消しあいの無い場合に比べてはるかに小さいものとなる。装置全体のダイナミック・レンジはシステム逆変換と、バイノーラル聴覚空間合成、そして最も重要ともいえる音源信号そのものに使われる残りのダイナミック・レンジに分配されることになる。したがって信号

の信号/ノイズ比は低くなる。また

が大きい周波数では、耳に普通に通常の音圧レベルを生み出すときよりはるかに厳しく働くので、非線形ひずみはより顕著となって聴き取れることも多い。既存の駆動ユニットはこうした条件で使われるように設計されておらず、疲労破壊が容易に発生する。
【0035】
3.2 プラントや逆フィルタに内在する誤差に対するロバスト性
式(1)は、プラント

(測定によって得られることが多く小さな誤差は避けがたい)の条件数

が大きい場合に、想定された

に内在する小さな誤差にシステム逆変換

が非常に影響されやすいということを暗示している。それに加えて、

が大きい場合に、合成信号

はプラント行列

の小さな誤差に弱い。
行列

の条件数を図6に示す。図6に見られるように、

は式(7)が偶数値

で満たされるところでピークを持っている。

のピークを与える周波数は

のピークを与える周波数と同じである。
計算された逆フィルタ行列

は、

に内在する小さな誤差に起因する大きな誤差を含んでいることが多く、受音点で合成された信号

に大きな誤差が含まれることになる。これは、こうした誤差は逆フィルタによって増幅されるがプラントによって打ち消されること無く残るからである。仮に

が全く誤差を含んでいないとしても、受音点での信号再生はプラント行列

内の小さな誤差に過敏すぎて実用的ではない。
こうした誤差には、HRTFsの個人差[16]−[18]、頭とスピーカの位置関係のずれ[19]、逆フィルタの近似や実用的なフィルタを設計するために小さな誤差を意図的に導入することで行列の条件を良くするレギュラライゼーション[20]などがある。

が大きい場合には、これらの誤差は小さいと思われても、実際には大きすぎるのである。
これとは逆に、式(7)が奇数値

で満たされる周波数の周辺では

が小さい。この周波数の周辺では、実用的で理想に近い逆フィルタ行列

を容易に得ることができ、所望の音信号の正確な再生が可能である。
【0036】
3.3 聴取者方向以外への音響放射
図7に受音点方向を基準とした制御変換器によるファーフィールド音響放射の例

を示す。水平軸は音源軸であり、受音点(耳)は垂直軸の方向近くに存在する。この例のように、式(7)が奇数値

で満たされない周波数では、受音点方向の音響放射(0dBと−∞dB)より、それ以外の方向への音響放射がはるかに大きい(+30dB〜40dBが一般的)。普通の環境は無響でないので、その場合は明らかに激しい反射音につながる。周辺の物体(例えば家具、壁、床、天井など)からの反射音は制御効果に影響する。先行音効果などの音の方向知覚に関する見地は、この種のシステムの性能はある程度保持されることを示唆するが[21]、聴取者の耳に直接到着する制御された音よりはるかに音量の大きなレベルの反射音は正確な知覚を妨げる。加えて、これらの受音点以外の方向への放射音は、逆フィルタ行列

の特性によるピーキーな周波数特性を持っており、通常激しい音色の変質につながる。これは音色のおかしい残響にも寄与し、一点の最適聴取位置以外での聴取を実用的で無くしてしまう。
【0037】
3.4 最適分散音源法の原理
式(7)は音源方位角間隔

に関して以下のように書き換えることができる。
【数9】

前記の解析からわかるように、式(8)の

が奇数である音源間隔を持つ周波数が最高の制御効果とロバスト性を与える。最適分散音源法(OSD)は、式(8)の

が奇数であるという必要条件を満たしながら(図9)(超低周波数以外の)全周波数帯域に渡って周波数が変化するにつれて連続的に間隔が変化するモノポール変換器対という概念を導入した[15]。この関係は



が平衡する関係であり、周波数が高くなるにつれて音源間隔が小さくなる。この概念を導入することにより、逆フィルタの周波数特性は図10に示すように全周波数にわたって平坦となる。従って、システム逆変換を行わない場合と比べてもダイナミック・レンジの損失はない。このことはシステムが良好な信号/ノイズ比を持ち、非線形ひずみ・変換器の疲労に関して有利であることを意味する。逆フィルタの周波数特性は平坦であるため、聴取空間のどの場所においても(制御範囲外でも)音色は変質しない。聴取者が所望の聴取位置から遠く離れているときには、知覚される空間情報は理想的ではないかもしれない。しかしながら音の信号のスペクトラムは逆フィルタによって変化しない。したがって、聴取者は残っている空間性、特にスペクトラル情報が重要な空間性と合わせて自然な音の再生を楽しむことができる。図11に示すように、変換器対による聴取空間への音響放射は、全方向に渡って受音点方向に対する放射より常に小さい。これは耳に同一受音レベルを生みだす単一のモノポール変換器による音響放射より小さい。図7の場合と対称的に、システムは全方向にわたって過大に音を放射しないので、反射性の環境でも反射音に対してロバストである。また、これらの小さな反射音には反射材料に起因するもの以外には音色の変化はない。またすべての周波数において

となり、これは条件数のとりうる最小の値である[13]。逆フィルタの計算に起因する誤差は小さく、システムは再生信号に対して非常に良好な制御効果を持っている。またプラント行列の変化に対して非常にロバストであることも示している。
4 発明に合致するシステムの一例
上記にて議論したとおり、2チャンネルOSDは基本的に、従来のスピーカによるバイノーラル再生の基本的な問題点を克服するために、バイノーラル再生過程の同位相と逆位相成分を代表する二つの特異値が平衡する周波数・間隔領域を利用している。しかしながら、これをさらに改善する目的のシステムが次に提案される。便宜上、今後は「2チャンネルOSD」と呼ぶことにする以前のOSDと区別するため、この新しいシステムを「3チャンネルOSD」システムと呼ぶことにする。
【0038】
4.1 提案するシステムの原理
今、二つの特異値が−3dBで平衡するところ(図12のA点)ではなく、二つの特異値それぞれの最小値(−6dB、図12のB点)を利用することを考える。二つの変換器の方位角間隔が0となるとき、特異値

の最小値が得られる。言い方を変えれば、正中面に一つの変換器があるということになる(図13)。このことは事実上スピーカによるバイノーラル再生に3つ目の変換器を加えると見なすことができる。聴取者の正中面付近に三つ目の変換器が付け加えられたとき、これは事実上全周波数帯域に渡って最低の特異値を与えるので、同位相成分の状態を大幅に緩和することを発見した。図13を用いて説明すると、センター・チャンネルを提供する第一の変換器10があり、左チャンネルを提供する第二の変換器11と右チャンネルを提供する第三の変換器がある。図13に概念が示されている通り、第二及び第三のそれぞれの変換器は特定の方位角方向に展開しており、第一の変換器10に近い位置ほど主として高い周波数成分が放射されている。したがって、基部11aからは主として高い周波数成分が放射されているのに対し末端部11bにおいては主として低い周波数成分が放射されている。聴取者の視点から見れば、第一の変換器10は第二の変換器11と第三の変換器12との間に位置している。
【0039】
今同位相成分の状態が緩和されたので、



の妥協(平衡)点、すなわち2チャンネルOSDの特異値の最適な組み合わせではなく、特異値

、逆位相成分、に対する最適の値(図12のB点)を利用することができる。

の最小値は

で得られる。したがって、3チャンネルOSDはB点の一つを利用し、式(8)の

という必要条件を満たしながら(図14)超低周波数以外の全周波数帯域に渡って周波数の関数として連続的に位置が変化する概念上のモノポール変換器という考え方を導入することで、その点を高周波側に向かって全周波数範囲に引き伸ばす。これに対して、2チャンネルOSDではA点の一つ

が全周波数範囲にわたって引き伸ばされている。
【0040】
4.2 分析
この追加した変換器の効果を見るために、再び2.2節と同様にバイノーラル再生にモノポール変換器を用いたシンプルな例を考えるが、今回はもう一つの変換器が正中面に追加されている。ブロック図と位置関係を図15と図16とに示す。数式(4)は、
【数10】

このシステムは不定形であり、誤差の全く無い無数の逆フィルタ行列が存在することに注意しなくてはならない[22][23]。その中で、最小ノルム解がもっともわかりやすい選択肢であるだけでなく、3.1節〜3.3節で述べた根本的な問題点に関して最高の性能を与える。
【0041】


の2ノルム

と2つの特異値





の関数として図17に示す。図4と比べると、同位相成分の再生を困難にする

にあった特異値

のピークは図17ではほとんど消えてしまっている。

における特異値



との間の約3dBのレベル差は、バイノーラル信号の逆位相成分を再生するために2つの変換器が働いているのに対し、同位相成分のためには1つの変換器しかないという事実のためである。
【0042】
2点の再生のために3つ目の変換器を持つということは(すなわち数学的には不定形の場合)、センターチャンネルの変換器の感度を左右チャンネルの変換器に対して相対的に変化させることで、2つの特異値



との間のバランスを独立して変化させることができるということである。これは2チャンネルOSDには無い、3チャンネルOSDのもつ重要な側面である。仮にセンター・チャンネル変換器の感度を

倍にすると、

で2つの特異値



は等しくなり、これは図18に示されている。
3つの変換器全てが同位相成分に寄与できる

における特異値

は常に

のそれより小さい。3チャンネルOSDの

の2ノルム

と2つの特異値



を周波数の関数として示したものが図19である。
【0043】
4.3 3チャンネルOSDのための変換器
3チャンネルOSDには、左右チャンネルの伝達のために、2チャンネルOSDの場合と同様の周波数が変化するにつれてほぼ連続的に位置が変化するモノポール型変換器が必要である。これは、例えば長さ方向に沿ってその幅が変化するような三角形の板を加振することで実現できるかもしれない。こうした変換器に要求されるのは、ある周波数の音がある特定の位置から主として放射されるように、その周波数またはその周波数帯域の振動がある幅を持つ特定の位置を中心に励起されることである(図20)。センター・チャンネルは音の全ての周波数成分を一点から放射するような従来のモノポール変換器でも良い。あるいは、左右チャンネルと同じタイプの変換器をセンター・チャンネルに用いても良い。
【0044】
4.3 3チャンネルOSDの様々な特徴
図14を見ればわかるとおり、ある周波数帯域に対するおおよその音源の方向は式(7)により与えられる。同じ周波数に対しては、

の値が小さいほうが小さな方位角を与える。したがって、高周波限界を同じとすると、最小の方位角は

で与えられ、二つの耳の間隔(KEMARダミーヘッドの場合は約0.13m)で隔てられた2点の音場を20kHzの周波数まで制御するための最小方位角は±4°となる。
また式(7)は周波数を与える関数として次のように書くことができる。
【数11】

となる。すなわち物理的に可能な最大の音源方位角であるθL=θR=90°がこの原理に伴う低周波限界、

を与える。小さな値の

ほどより低い低周波限界を与えるので、

で与えられるシステムの中で、

で与えられるシステムが通常最も有用である。人間の平均的な両耳間の距離で隔てられた音場内の2点を制御するために設計されたシステムで

で与えられる低周波限界はおよそ

であり、約350Hzの2チャンネルOSDより高い。3チャンネルOSDの低域限界より低い周波数では2チャンネルOSDの性能に次第に近づいて行き、2チャンネルOSDの低域限界より下では全く同じ性能となる。
【0045】
図17及び図18では、理想的な周波数/方位角関係周辺の特異値のグラフの傾きは、2チャンネルの場合より圧倒的に浅く、図4に示した2チャンネルのV字谷ではなくU字谷を形成している。このことは、3チャンネルOSDは2チャンネルOSDよりはるかに誤差に強いことを示している。
【0046】
2チャンネルOSDの場合と同じく、頭部伝達関数などの他の様々なより現実的な場合でも基本的な振る舞いは同様である。
4.4 離散化
最適音源制御法の離散化は、3チャンネルの場合でも2チャンネルの場合と同様にして用いることができる。実際には周波数によって位置が連続的に変化するような概念的なモノポール変換器を手に入れるのは容易ではないが、変換器間隔を離散化することにより、この原理に基く実用的なシステムを実現することができる。ある変換器間隔において、増幅量が比較的小さくプラント行列

の性質がよい周波数領域は、最適周波数の周辺に比較的広く広がっている。したがって、

にある幅

を持たせることにより、システムの制御効果とロバスト性がまだかなり良い周波数範囲をある変換器位置に対して割り当てることができる(図22)。結果として、連続的に変化する変換器間隔を有限個の不連続の変換器間隔に離散化することができ、それぞれの位置に変換器ユニットを配置できる。図21に関しては、離散化配置の一つの実現可能性を示しており、変換器111、112、113、114は左チャンネルを提供し、変換器120、121、122は右チャンネルを提供し、変換器100、101は中間チャンネルを提供する。左チャンネルを構成しているそれぞれの変換器は、中間チャンネルを形成している変換器に近いほど周波数が高くなるように、主要な周波数または周波数帯域を放射する。右チャンネルを構成しているそれぞれの変換器は同様に配置されている。図21より明らかなように、この発明を実施する場合、必ずしも左右チャンネルに同じ数の変換器を要求するものではない。
【0047】
理想的な周波数/位置関係周辺の傾きの差は、数多くの面で有利である。

の許容誤差がある値のとき、誤差は2チャンネルOSDのそれよりはるかに小さくなる。したがって、同等の離散化の場合、3チャンネルOSDのほうが理想的な場合をより良く近似する。同等の近似レベルの場合、離散化は粗くても良く、したがって資源を節約でき
る。

の最大幅、すなわち

の最大許容量は2チャンネルの場合と比べて2倍、すなわち

となる。全体として、図17と図18の谷がV字型ではなくU字型をしているので、離散化された3チャンネルOSDの性能ははるかに良い。
図17及び図18の場合に対応する条件数をそれぞれ図23及び図24に示す。理想的な周波数/方位角領域の周辺では、図23より図24のほうが条件数が小さい。一方で、

が1より大きい場合、図23の場合のほうが作動周波数/方位角範囲の条件数の最大値が小さい場合がありえる。3チャンネルOSDの離散化を行うときにはこうした特徴を考慮すると良い。
4.5 3チャンネルOSDのさらなる実施形態
3チャンネルOSD法を具体化するさらに様々な実現方法を示す図25から図32を参照する。
【0048】
まず最初に図25を見ると、図21を実現するための配置の一方法が示されている。ここでは、それぞれのチャンネル設備200、201、202のそれぞれの変換器が対応するクロスオーバー・フィルタ設備210、211、212の対応するクロスオーバー・フィルタに接続されている。
【0049】
図26は図25に示した実施形態の変形で、センター・チャンネル200’が単一のフルレンジ変換器として供給されている。さらに、左チャンネル202’の変換器の数が少なく(2個に)なっている。しかしながら、左と右のチャンネルにはそれぞれ幾つ変換器が含まれていても良いことがわかるであろう。
【0050】
図27は3チャンネルOSD法において、それぞれの周波数帯域の

に逆フィルタ行列

が備えられている。この例では、左チャンネル、右チャンネル、センター・チャンネルのそれぞれに高周波数帯の変換器と低周波数帯の変換器が備えられている。
図28は図27に示された実施形態の変形で、クロスオーバー・フィルタリングが、逆フィルタリングの前に行われている。
【0051】
図29の方法は既知の2チャンネルOSDと3チャンネルOSDとの組み合わせと見ることができ、それぞれの周波数帯域間で異なるチャンネル数をもつシステムとなっている。
【0052】
図30は図29の方法の変形で、クロスオーバー・フィルタリングが、逆フィルタリングの前に行われている。
図31は図29とよく似た方法で、3つの高周波帯変換器と2つの低周波数帯変換器が備えられている。
【0053】
図32は図31に示された実施形態の変形で、クロスオーバー・フィルタリングが、逆フィルタリングの前に行われている。
図33に関しては、センター・チャンネルと、右チャンネルの変換器がそれぞれ全周波数帯域をほぼ(比較的)同じ位置から放射している、更なる実施形態が示されている。左チャンネルについてはしかしながら、比較的高周波数はセンター・チャンネルにより近い位置から放射され、比較的低周波数はセンター・チャンネルの変換器からより遠い場所から放射されている。
5. まとめ
3チャンネルの周波数により位置が変化する変換器を用いることで、システム逆変換に起因する根本的な問題点を解決する新しいバイノーラル再生システムを説明した。
【0054】
このシステムは、理論上の連続的に変化する方位角を離散化する(マルチ・ウェイ音場制御システムとなる)ことによって、最も容易に現実のものとして実現することが可能である。
【0055】
3チャンネルOSDは数多くの分野、とくに家庭用オーディオの分野に適用先を見出せる。携帯電話や携帯ゲーム機などの携帯メディア機器用の変換器の場面で特に便利な手段を提供し、それによって放射される音の臨場感を高める。(MP3プレーヤなどの)携帯メディア機器は、別のスピーカ装置(ドッキング・ステーションと知られているものもある)とつなぐことができる。こうしたスピーカ装置は、3チャンネルOSD方式を採用することで利益を受けることができる。
[参考文献]

【0056】

【0057】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響再生システムであって、
電気音響変換手段と、
複数チャンネルの録音に応じて電気音響変換手段を駆動するための変換器駆動手段と
を備え、
前記変換器駆動手段は、録音空間内の聴取者の耳の位置に対する前記電気音響変換手段の特性及び所望の位置を考慮して、前記聴取者の耳の位置に存在するであろう局所的な音場を近似した音場を前記聴取者の位置に再生するように構成されたフィルタ手段を備え、
前記電気音響変換手段は、
中間音響放射チャンネルを提供する第一の音響放射手段と、
左音響放射チャンネルを提供する第二の音響放射手段と、
右音響放射チャンネルを提供する第三の音響放射手段と
を備え、
前記第一の音響放射手段は、第二及び第三の音響放射手段の間に位置し、
前記第二及び第三の音響放射手段のうちの少なくとも一つは、高い周波数を主として第一の音響放射手段の近くに伝達し、低い周波数を主として第一の音響放射手段から離れるように伝達するようになっている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項2】
請求項1に記載の音響再生システムであって、
前記第二及び第三の音響放射手段のうちの少なくとも一つは、それぞれの方位角間隔または領域上に配置され、(i)前記第二の放射手段と(ii)前記第三の放射手段とのうちの少なくとも一つの、異なる方位の部分は、異なる周波数の音、または異なる周波数帯域の音を主として放射する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の音響再生システムであって、
前記第二及び第三の音響放射手段のうちの少なくとも一つは、実質的に弓形に配置されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項4】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第二及び第三の音響放射手段のうちの少なくとも一つは、複数の異なる位置にある音響放射器を備え、使用時にはそれぞれの音響放射器が、各々の特徴のある周波数または特徴のある周波数範囲の音を放射する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項5】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第一の音響放射手段は、前記第二及び第三の音響放射手段の実質的な中間に設けられている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項6】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第一の音響放射手段は、前記第二及び第三の音響放射手段の後方に位置している
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項7】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第一の音響放射手段は、該第一の音響放射手段の空間的な広がりに関して実質的に周波数が変化しない出力を供給する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項8】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第二の音響放射手段と前記第三の音響放射手段とのうち一つは、該第二及び第三の音響放射手段の空間的な広がりに関して実質的に周波数が変化しない出力を供給する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項9】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
聴取者の頭部伝達関数が考慮されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項10】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
変換器の動作周波数/方位角範囲が次の式で定義されていることを特徴とする音響再生システム。
【数12】

【請求項11】
請求項3に記載の音響再生システムであって、
両耳間の等価間隔に次の式を用いて頭部の回折補正係数が適用されたことを特徴とする音響再生システム。
【数13】

【請求項12】
請求項9に記載の音響再生システムであって、

であることを特徴とする音響再生システム。
【請求項13】
請求項9に記載の音響再生システムであって、

であることを特徴とする音響再生システム。
【請求項14】
請求項9に記載の音響再生システムであって、

であることを特徴とする音響再生システム。
【請求項15】
請求項9に記載の音響再生システムであって、

であることを特徴とする音響再生システム。
【請求項16】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第二及び第三の音響放射手段のうちの少なくとも一つは、引き伸ばされた形の変換器手段の領域部分で構成されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項17】
請求項15に記載の音響再生システムであって、
前記引き伸ばされた形の変換器手段は、
複数の細長い音響放射部材であって、各部材の音響放射面が、近位端と遠位端とを有し、前記第二及び第三の音響放射手段の前記近位端が、正中面に近い、複数の細長い音響放射部材と、
前記遠位端に隣接する前記部材に取り付けられた、前記駆動出力信号に応じて、前記部材に振動を与えるための加振手段と
を備え、
高い周波数の振動が前記部材に沿って前記遠位端に向かって伝播することが抑制されることで、前記面の前記近位端が前記遠位端よりも高い周波数で振動するような、前記部材の振動伝達特性が選択されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項18】
請求項15または請求項16に記載の音響再生システムであって、
前記引き伸ばされた形の変換器の放射部の位置は、周波数に応じて連続的に変化するように配置されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項19】
請求項1から15のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記変換器駆動手段は、適当な周波数帯域の信号を適当な音響放射器に分配するためのクロスオーバー・フィルタを備え、
前記クロスオーバー・フィルタは、前記フィルタ手段の逆フィルタ手段

の出力に応答する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記変換器駆動手段は、適当な周波数帯域の信号を適当な音響放射器に分配するためのクロスオーバー・フィルタを備え、
前記フィルタ手段の逆フィルタ手段

は、前記クロスオーバー・フィルタの出力

に応答する
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項21】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記フィルタ手段は、逆問題の最小ノーム解として設計され得る
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項22】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記フィルタ手段は、擬似逆フィルタ手段として構成されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項23】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記フィルタ手段は、適応フィルタを備えるように構成されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項24】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記フィルタ手段は、いずれかの周波数範囲において、前記駆動出力信号にレギュラライゼーションを適用するように構成されている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項25】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
可聴周波数範囲の超低域をカバーするためのサブ・ウーファを備えている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項26】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第一の音響放射手段と、前記第二の音響放射手段と、前記第三の音響放射手段とのための放射器の数は、互いに異なる、音響放射器の数を含んでいる
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項27】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
前記第一の音響放射手段は、クロスオーバー・フィルタなしに単一の音響放射器を備えている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項28】
先の請求項のいずれかに記載の音響再生システムであって、
従来の方法で音を再生する従来のスピーカを備えている
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項29】
電気音響変換器設備であって、
中間音響放射チャンネルを提供する第一の音響放射器と、
左音響放射チャンネルを提供する第二の音響放射器と、
右音響放射チャンネルを提供する第三の音響放射器と
を備え、
前記第一の音響放射器は、前記第二及び第三の音響放射器の間に位置し、
前記第二及び第三の音響放射器のうちの少なくとも一つは、高い周波数を主として前記第一の音響放射器の近くに伝達し、低い周波数を主として前記第一の音響放射器から離れるように伝達するようになっている
ことを特徴とする電気音響変換器設備。
【請求項30】
複数チャンネルの録音に応答して電気音響変換器設備を駆動する変換器駆動部であって、
前記変換器駆動部は、録音空間内の聴取者の耳の位置に対する前記電気音響変換器設備の特性及び所望の位置を考慮して、前記録音空間の前記聴取者の耳の位置に存在するであろう局所的な音場を近似した音場を前記聴取者の位置に再現するように構成されたフィルタ装置を備え、
前記変換器駆動部は、中間音響放射チャンネルを提供する第一の音響放射器と、左音響放射チャンネルを提供する第二の音響放射器と、右音響放射チャンネルを提供する第三の音響放射器とを備える前記電気音響変換設備を用いるように構成され、
前記第一の音響放射器は、前記第二及び第三の音響放射器の間に位置し、
前記第二及び第三の音響放射器のうちの少なくとも一つは、高い周波数を主として前記第一の音響放射器の近くに伝達し、低い周波数を主として前記第一の音響放射器から離れるように伝達するようになっている
ことを特徴とする変換器駆動部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図7】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−532614(P2010−532614A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514126(P2010−514126)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002310
【国際公開番号】WO2009/004352
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(307021863)アダプティブ オーディオ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】