音響再生装置
【課題】NC(ノイズキャンセリング)機能を有する音響再生装置において、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整を適正に行うことができるようにする。
【解決手段】ドライバユニットを有して音声出力(音響再生)を行う音声出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータを収納した構成において、コード上ハウジング部に対し、上記マイクロコンピュータとの間でデータ通信を行うための通信用端子を設ける。このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子を露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【解決手段】ドライバユニットを有して音声出力(音響再生)を行う音声出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータを収納した構成において、コード上ハウジング部に対し、上記マイクロコンピュータとの間でデータ通信を行うための通信用端子を設ける。このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子を露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノイズキャンセリング機能を有する音響再生装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2003−47083号公報
【背景技術】
【0003】
ノイズキャンセリング機能を有するイヤホン装置(以下、NCイヤホン装置とも表記する)が広く一般に普及している。
NCイヤホン装置は、ノイズキャンセリング処理をイヤホン装置自体が行うため、通常のオーディオプレーヤに接続して用いても使用者はノイズキャンセリング効果を享受することができる。
【0004】
図13は、従来のNCイヤホン装置100の外観図である。
この図13に示すNCイヤホン装置100は、いわゆる耳孔挿入型のイヤホン装置とされる。
ここで、耳孔挿入型のイヤホン装置とは、放音部が使用者の耳孔内に挿入されて聴取が行われるイヤホン装置を総称したものである。例えば、カナル型やインナーイヤ型のイヤホン装置は、当該耳孔挿入型のイヤホン装置に該当する。
この図13に示すNCイヤホン装置100は、カナル型のNCイヤホン装置とされる。
【0005】
図示するようにNCイヤホン装置100は、Lch(ch:チャンネル)出力部101L、Rch出力部101R、プラグ部102、及びコード上ハウジング部103を有する。
プラグ部102とコード上ハウジング部103の間、及びコード上ハウジング部103とLch出力部101L、Rch出力部101Rのそれぞれとの間は、図のようにコードで結ばれている。
【0006】
Lch出力部101L、Rch出力部101Rには、それぞれプラグ部102から入力される音声信号に応じた放音を行うドライバユニットと、ノイズキャンセリング機能の実現のため外部音を収音するためのマイクロフォンとがそれぞれ設けられている。
【0007】
コード上ハウジング部103の内部には、ノイズキャンセリング機能を実現するための電気回路部(ノイズキャンセリング処理部)が設けられている。
このノイズキャンセリング処理部は、プラグ部102から入力されるLch音声信号とLch出力部101L内のマイクロフォンからの収音信号とに基づきLch側ノイズキャンセリング信号を生成すると共に、同様にプラグ部102から入力されるRch音声信号とRch出力部101R内のマイクロフォンからの収音信号とに基づきRch側ノイズキャンセリング信号を生成する。そしてノイズキャンセリング処理部は、上記Lch側ノイズキャンセリング信号に基づきLch出力部101L内のドライバユニットを駆動すると共に、上記Rch側ノイズキャンセリング信号に基づきRch出力部101R内のドライバユニットを駆動する。これにより、当該NCイヤホン装置100の装着者にノイズがキャンセルされた音声を知覚させることができる。
【0008】
また、コード上ハウジング部103には、上記のようなノイズキャンセリング処理に必要とされる電力を供給するための電池が収納されるべき電池ボックス103Aが形成されている。
【0009】
ところで、NCイヤホン装置100については、工場出荷時などの所定のタイミングで、個体ごとのばらつき吸収のために、音響検査を行い、その結果に応じてノイズキャンセリング処理の設定値を調整するということが行われる。
具体的には、Lch出力部101L、Rch出力部101Rを所定の調整用治具にセットした状態にて音響再生を行い、その出力音を解析した結果からその個体に応じたノイズキャンセリング処理の設定値を求める。このように求めた設定値を、NCイヤホン装置100に指示して設定させる。
このとき、設定値の指示入力は、予め設定値を入力するための通信用端子をコード上ハウジング部103に設けておき、当該通信用端子を通じて行うようにされている。このような通信用端子は、コード上ハウジング部103の一部を剥離するなどして外部に露出するようにされており、使用者(エンドユーザ)による使用は想定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記説明からも理解されるように、従来のNCイヤホン装置100では、コード上ハウジング部103内にノイズキャンセリング処理や各種設定制御を行うための電気回路が形成されている。具体的には、ノイズキャンセリング処理等を実行するマイクロコンピュータが実装されている。
【0011】
このようなマイクロコンピュータが実装されることから、コード上ハウジング部103にはこれに対する給電を行う電池を収納するための電池ボックス103Aも形成されている。これらの点より、従来のNCイヤホン装置100は、コード上ハウジング部103のサイズや重量が大きくなってしまう。
【0012】
コード上ハウジング部103が重くなることによると、使用者に装着されたLch出力部101L、Rch出力部101Rが下方に引っ張られ易くなり、結果、装着感が損なわれてしまうという問題がある。
なお、この対策として従来では、胸ポケットの縁部等の適当な場所にコード上ハウジング部103を係止するためのクリップ等を設けて、コード上ハウジング部103の重量による出力部101の引っ張りを防止し装着感の安定性向上を図るようにしたものもある。しかしながらこの構成ではそもそもクリップの形成が必要であるし、また使用者にクリップ止めの手間を強いるという問題もある。
【0013】
そこで、Lch出力部101L、Rch出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理のためのマイクロコンピュータや電池を収納するという構成が考えられる。これにより、コード上ハウジング部103を大幅に小型・軽量化でき、上記の問題点を解消することができる。
【0014】
しかしながら、出力部101L,101Rにノイズキャンセリング用のマイクロコンピュータを搭載する構成としてしまうと、以下のような問題が生じる。
すなわち、従来においては、音響検査時に用いる通信用端子を、マイクロコンピュータが搭載されるハウジング部に対して設けるという構成を採っているが、出力部101L,101Rにノイズキャンセリング用のマイクロコンピュータを搭載する場合において、このような構成を踏襲してしまうと、音響検査時に通信用端子を露出させるために、出力部101L,101Rのハウジングの一部をそれぞれ分解しなければならないこととなる。
このように出力部101L,101Rの一部を分解した状態としてしまうと、実際の使用時と音響特性が異なるものとなってしまい、結果、調整処理において正しい設定値を求めることができなくなってしまう。すなわち、ノイズキャンセリング処理の設定値を正しく調整することができないものとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術では上記の問題点を解消すべく、音響再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本技術の音響再生装置は、Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部を備える。
また、上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部を備える。
また、上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部を備える。
また、上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部を備える。
そして、上記コード上ハウジング部に、上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられているものである。
【0016】
上記のように本技術では、ドライバユニットを有して音声出力(音響再生)を行う音声出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータを収納した構成を採っている。そして、このような構成を採った上で、コード上ハウジング部に対し、上記マイクロコンピュータとの間でデータ通信を行うための通信用端子を設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子を露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本技術によれば、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整を適正に行うことのできる音響再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態のNCイヤホン装置の外観図である。
【図2】実施の形態のLch出力部の分解斜視図である。
【図3】ハウジング内に収納されたマイクロフォン、ドライバユニット、電池の位置関係を表した図である。
【図4】実施の形態のNCイヤホン装置の内部構成を示したブロック図である。
【図5】通信用端子の具体的な形成態様について説明するための図である。
【図6】通信用端子を利用してユーザ側で各種設定を行うとしたときの具体的な接続態様を例示した図である。
【図7】Lch側マイクロコンピュータ、Rch側マイクロコンピュータが有する各種機能について説明するための図である。
【図8】NCモード同期制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図9】異常検知・制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図10】LR同時オフ制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図11】残量確認後同時オン制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】残量表示制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図13】従来のNCイヤホン装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態としての装置構造>
<2.実施の形態としての装置内部構成>
<3.外部装置との通信について>
<4.各種機能>
<5.処理手順>
<6.まとめ>
<7.変形例>
【0020】
<1.実施の形態としての装置構造>
図1は、本技術の一実施形態としてのNCイヤホン装置1(NC:ノイズキャンセリング)の外観図である。
ここで、NCイヤホン装置とは、NC機能を有するイヤホン装置を意味するものである。NCイヤホン装置は、ノイズキャンセリング処理をイヤホン装置自体が行うため、通常のオーディオプレーヤに接続して用いても使用者はNC効果を享受することができる。
【0021】
本実施の形態のNCイヤホン装置1は、いわゆる耳孔挿入型のイヤホン装置とされる。
「耳孔挿入型」のイヤホン装置とは、放音部が使用者の耳孔内に挿入されて聴取が行われるイヤホン装置を総称したものである。例えば、カナル型やインナーイヤ型のイヤホン装置は、耳孔挿入型のイヤホン装置に該当する。
図1に示すNCイヤホン装置1は、カナル型のイヤホン装置とされる。
【0022】
図示するようにNCイヤホン装置1は、プラグ部2、Lch(ch:チャンネル)出力部3L、Rch出力部3R、及びコード上ハウジング部4を有する。また、プラグ部2とコード上ハウジング部4の間を結ぶ入力側コードCiと、コード上ハウジング部4とLch出力部3Lとの間を結ぶLch側コードClと、コード上ハウジング部4とRch出力部3Rとの間を結ぶRch側コードCrとを有する。
【0023】
プラグ部2は、当該NCイヤホン装置1が接続されたオーディオプレーヤからの出力音声信号を入力するために設けられる。本例におけるプラグ部2にはLch、Rch、GND(グランド)の3端子が形成されており、入力側コードCi内にはこれらLch、Rch、GNDの各端子に対応する3つの配線が形成されている。
【0024】
Lch出力部3Lは、プラグ部2を介して入力されるLch信号(音声信号)に基づく音声を出力するための部位であり、またRch出力部3Rは、同様にプラグ部2を介して入力されるRch信号に基づく音声を出力するための部位となる。
Lch出力部3Lは、筐体としてのハウジング3Lhと、これに着脱可能に装着されたイヤーピース3Lpとを有して成る。同様にRch出力部3Rは、筐体としてのハウジング3Rhと、これに着脱可能に装着されたイヤーピース3Rpとを有して成る。
Lch出力部3Lについてはイヤーピース3Lpが、Rch出力部3Rについてはイヤーピース3Rpがそれぞれ使用者の対応する側の耳孔に挿入され、その状態にて出力音の聴取が行われる。
【0025】
ここで、ノイズキャンセリング機能の実現にあたっては、外部音(外部ノイズ音)を収音することが要請される。このため、Lch出力部3L、Rch出力部3Rのそれぞれには、外部音を収音するためのマイクロフォン(後述するマイクロフォン11l,11r)が設けられる。
【0026】
コード上ハウジング部4は、本例の場合、ノイズキャンセリング機能のオン/オフ(NCイヤホン装置1の電源オン/オフ)操作を可能とするための操作部として設けられたものとなる。
具体的に、コード上ハウジング部4には、図のように操作ボタン4Aが設けられ、使用者は当該操作ボタン4Aを通じてNCイヤホン装置1にオン/オフ指示を行うことができる。本例の場合、操作ボタン4Aの押圧によりオン/オフ指示が実現されるように構成されている。オフ状態での押圧はオン指示、オン状態での押圧はオフ指示となる。
【0027】
また本例の場合、コード上ハウジング部4において、配線がLch側とRch側に分岐するようにされている。
具体的に、コード上ハウジング部4内においては、入力側コードCiに含まれるLch、Rch、GNDの配線が、Lch・GNDの組とRch・GNDの組とに分けられ、前者の組がLch側コードClを通じてLch出力部3Lまで到達し、後者の組がRch側コードCrを通じてRch出力部3Rに到達するようにされている。
なお、Lch側コードCl内、Rch側コードCr内に含まれる配線の詳細については後述する。
【0028】
続いて、図2及び図3により、本実施の形態のLch出力部3L、Rch出力部3Rのハウジング内の構造について説明する。
図2は、Lch出力部3Lの分解斜視図を示している。
ここで、Rch出力部3Rの構造に関しては、Lch出力部3Lの構造を左右反転させたものとなる(但しRch出力部3RにはLED15が設けられる点は異なる)ことから、図示による説明は省略する。
図2においては、Lch出力部3Lと共にLch側コードClも併せて示されている。
なお、Rch出力部3Rに設けられるLED15(図4を参照)は、NCイヤホン装置1のオン/オフ状態や電池残量を表すインジケータとして機能するものである。
【0029】
図示するようにLch出力部3Lは、図1に示したハウジング3Lhを構成するハウジングフロントピース3Lh-f及びハウジングリアピース3Lh-rと、同じく図1に示したイヤーピース3Lpと、Lch側コードCl内の配線をハウジング3Lh内部に導くためのスリーブ20とを有する。
【0030】
そして、本実施の形態のLch出力部3Lにおいては、ハウジングフロントピース3Lh-fとハウジングリアピース3Lh-rとで構成されるハウジング3Lhの内部空間に、マイクロフォン11l、ドライバユニット12l、回路基板21、及び電池13lが収納される。
【0031】
マイクロフォン11lは、外部音を収音するために設けられる。カナル型の場合、ノイズキャンセリング方式としていわゆるFF方式(フィードフォワード方式)が採用されるため、マイクロフォン11lは、ハウジング外部の音を収音すべく、その収音面がドライバユニット12lの放音方向とは逆側を向くように配置される。本例の場合、マイクロフォン11lはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォンとされる。
【0032】
回路基板21は、ノイズキャンセリング機能や後述する各種機能を実現するための電気回路部が形成された基板となる。後述するLch側マイクロコンピュータ10l(Rch出力部3RにおいてはRch側マイクロコンピュータ10r)は、当該回路基板21上に形成される。
【0033】
電池13lは、回路基板21上に形成された電気回路部の動作電源として設けられたものである。本例の場合、ボタン型の二次電池が採用される。
【0034】
ドライバユニット12lは、音声信号に基づく放音(音響再生)を行う。本例の場合、ドライバユニット12lとしてはBA型(BA:バランスド・アーマチュア)のものを用いるものとしている。
【0035】
なお、本例の場合、イヤーピース3Lpは、ハウジングフロントピース3Lh-fに形成されている筒上部(その先端に放音口を有する)に対してその穴部が嵌合されることで、ハウジング3Lhに対して装着される。
【0036】
確認のため、図3に、ハウジング3Lh内に収納されたマイクロフォン11l、ドライバユニット12l、電池13lの位置関係を表す。図3A、図3B、図3CはLch出力部3Lの透視図であり、それぞれ斜視図、正面図、上面図である。
【0037】
ここで、図2や図3を参照して分かるように、本例においては、ドライバユニット12lが収納される空間とは別に、略円柱状の空間が形成されるようにハウジング3Lhを設計している。そしてこの略円柱状の空間に、回路基板21やボタン型の電池13lを収納するように設計している。
このような設計としたことで、耳孔挿入型のイヤホン装置としての、音声出力部のハウジングサイズを比較的小型とすることが要請されるイヤホン装置において、ハウジング3Lh内に電池13l等を効率的に収納することができる。
【0038】
また本例では、マイクロフォン11lとしてMEMSマイクロフォンを用いるものとしている。MEMSマイクロフォンは小型であるため、ハウジング3Lh内に電池13l等を収納する設計の容易性を増すことができる。或いは、設計の自由度を増すことができる。
【0039】
また本例では、ドライバユニット12lとしてBA型のものを用いるものとしているが、BA型のドライバユニットはダイナミック型などと比較して小型であるので、この点においても、電池13l等を収納するためのハウジング3Lhの設計が容易となり、又は設計の自由度を増すことができる。
【0040】
ここで、上記により説明したNCイヤホン装置1によれば、ノイズキャンセリング機能の実現のために必要とされる電池13がLch/Rchの双方のハウジング部内に収納されるので、従来のNCイヤホン装置100のようにコード上ハウジング部103に対して電池ボックス103Aを設ける必要がなくなる。これにより、コード上ハウジング部4を大幅に小型・軽量化でき、コード上ハウジング部4の重量によりLch/Rchの音声出力部の装着感が損なわれるといった問題を解消することができる。
【0041】
また、本実施の形態のNCイヤホン装置1は、Lch/Rchの音声出力部を左右対称構造としている(除くLED15)。この結果、左右の重量バランスが良く装着感に優れるイヤホン装置を実現できる。
【0042】
また、左右対称構造とすれば、Lch/Rchのハウジング部内の空き容積が同じになるため、音響特性が左右で同じとなり、結果、自然な聞き心地を実現できる。
【0043】
なお確認のために述べておくと、LED15は極めて小型・軽量であるため、その有無による重量・音響特性の差は極めて微小である。
【0044】
また、電池13の収納位置をコード上ハウジング部4以外とする構成としては、電池13をLch/Rchの何れか一方のハウジング部に移設する構成も考えられるが、そのような片チャンネル寄せの構成とすると、左右でハウジング部の設計を別々に行わなければならなくなる。これに対し、左右対称構造とする本実施の形態によれば、Lch/Rchの音声出力部の設計は片チャンネル側のみを行うことで、他方のチャンネル側の設計はこれを反転させればよいものとなり、この点で設計の容易性を格段に増すことができる。
【0045】
また、片チャンネル寄せの構成とせず、左右に分散させた構成としたことで、音声出力部のサイズを左右で均等とできる。
【0046】
<2.実施の形態としての装置内部構成>
図4は、NCイヤホン装置1の内部構成を示したブロック図である。
なお図4ではプラグ部2に形成される各端子(Lch、Rch、GND)の図示は省略している。
【0047】
先ず、プラグ部2を介して入力されたLch信号、Rch信号は、それぞれコード上ハウジング部4を介して、ハウジング3Lh、ハウジング3Rhの内部に入力される。
ハウジング3Lh内において、Lch信号は、Lch側マイクロコンピュータ10l、及び充電部14lに供給される。本例の場合、Lch側マイクロコンピュータ10lには、Lch信号としてコンデンサCclを介した信号と介さない信号との2系統が入力される。
同様に、ハウジング3Rh内においては、Rch信号がRch側マイクロコンピュータ10r、及び充電部14rに供給される。そしてRch側マイクロコンピュータ10rには、Rch信号としてコンデンサCcrを介した信号と介さない信号との2系統が入力される。
コンデンサCcl、Ccrは、直流成分カットのために設けられたものである。コンデンサCclを介したLch信号、コンデンサCcrを介したRch信号は、それぞれマイクロコンピュータ10によるノイズキャンセリング処理(或いはNC機能がオフ時はドライバユニット12の駆動のため)に用いられることになる。
【0048】
ここで、本例において、各マイクロコンピュータ10にコンデンサCcを介さない信号(直流カット無しの信号)も併せて入力するようにしているのは、本例では電池13に対する充電をLch、Rchの配線を介して行うことを前提としているためである。
この場合、充電時には、Lch、Rchの配線を介して直流電流が供給されることになるが、各マイクロコンピュータ10は、コンデンサCcを介さない側の配線の信号をモニタし、直流電流が供給されているか否かを判定する。そして、直流電流が供給された場合には、充電部14に指示を出し、電池13に対する充電が行われるようにする(後述する充電制御機能部Fn4)。
なお図から明らかなように、充電部14lは、当該充電部14lに接続されるLchの配線を介して供給される直流電流を電池13lに供給して充電を行う。同様に、充電部14rは、当該充電部14rに接続されるRchの配線を介して供給される直流電流を電池13rに供給して充電を行う。
【0049】
各マイクロコンピュータ10は、それぞれ後述する各機能部Fn(図7)としての処理を実行する。
例えば、ノイズキャンセリング機能を実現するための処理を実行する(後述するノイズキャンセリング処理機能部Fn1)。
具体的に、Lch側マイクロコンピュータ10lは、コンデンサCclを介して入力されるLch信号とマイクロフォン11lによる収音信号とに基づき、外部音(ノイズ音)がキャンセルされたものと知覚させるためのノイズキャンセリング信号を生成し、当該ノイズキャンセリング信号に基づきドライバユニット12lを駆動する。
これにより、NCイヤホン装置1の装着者には、外部音がキャンセルされたLch音声を聴取させることができる。すなわち、ノイズキャンセリング効果が得られる。
なお、Rch側マイクロコンピュータ10rによるノイズキャンセリング処理は、上記によるLch側の処理とL/Rの符号を反転させたものとなるので、重複説明は避ける。
【0050】
また本例の場合、Rch側のハウジング部3Rh内にはLED15が設けられ、これに対応しRch側マイクロコンピュータ10rは当該LED15の発光駆動制御も行うようにされる(後述するインジケータ表示制御機能部Fn6)。
【0051】
また、本実施の形態では、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとが、互いにデータ通信可能に構成されている。具体的に本例の場合、これらLch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとが有線接続されることで、データ通信が可能とされている。
この場合、データ通信方式としては、I2C(Inter-Integrated Circuit)によるシリアル通信方式が採用され、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとはデータ(DATA)、クロック(CLK)、及びグランド(GND)の各配線で接続されている。
【0052】
図示するように、これらデータ、クロック、グランドの各配線は、コード上ハウジング部4内を経由してLch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとを接続するものとなる。つまりこのことからも理解されるように、前述したLch側コードCl、Rch側コードCr内には、これらデータ、クロック、グランドの各配線も含まれるものである。
なお本例の場合、グランド線は音声信号についてのグランド線と共用とされる。
【0053】
コード上ハウジング部4には、前述した操作ボタン4Aと連動するスイッチSWが設けられている。このスイッチSWは、操作ボタン4Aの押圧の有無をマイクロコンピュータ10に対して通知するように構成される。具体的に本例の場合、各マイクロコンピュータ10に対しては、スイッチSWから延びるオン/オフ制御線(ON/OFF)が接続されており、スイッチSWは、操作ボタン4Aの押圧により、当該オン/オフ制御線とグランド線とを結線するように構成されている。
なお、上記オン/オフ制御線としても、Lch側コードCl、Rch側コードCrを通じてLch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rに接続されている。
【0054】
<3.外部装置との通信について>
ここで、通常、NCイヤホン装置については、工場出荷時などの所定のタイミングで、個体ごとのばらつきを吸収するため、音響検査を行い、その結果に応じてノイズキャンセリング処理の設定値を調整するということが行われる。
【0055】
本実施の形態のNCイヤホン装置1では、このような設定値等の外部からの入力を可能とするための通信用端子を、コード上ハウジング部4に対して設けるものとしている。
【0056】
図5は、通信用端子の具体的な形成態様について説明するための図である。
図5Aに示されるように、通信用端子Tは、コード上ハウジング部4における操作ボタン4Aが形成される面(表面とする)とは逆側となる裏面に露出可能に形成されている。
具体的には、コード上ハウジング部4の裏面に対して開口部4Bが設けられ、当該開口部4B内に通信用端子Tが露出されるように構成されている。
本例の場合、前述のようにマイクロコンピュータ10のデータ通信方式としてはI2C方式が採用されるので、これに対応し通信用端子Tとしては、データ端子Td、クロック端子Tc、グランド端子Tgを形成する。先の図4に示しているように、データ端子Tdはデータ線(DATA)、クロック端子Tcはクロック線(CLK)、グランド端子Tgはグランド線(GND)にそれぞれ接続された端子となる。
【0057】
上記開口部4Bは、製品として出荷される段階では、図5Bに示すようにオーナメント4Cで覆われることになる。換言すれば、エンドユーザが購入した際には、各端子Tは外部に露出されていないものである。
【0058】
上記のように本実施の形態では、音声出力部(出力部3)のハウジング内にノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータ10をそれぞれ収納した構成において、コード上ハウジング部4に対し、各マイクロコンピュータ10との間でデータ通信を行うための通信用端子Tを設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子Tを露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【0059】
ここで、通信用端子Tを利用したマイクロコンピュータ10に対する設定は、工場出荷時に行う以外に、ユーザ側で行うことも考えられる。
ユーザ側で各種設定を行うとしたときには、例えば図6に示されるように、パーソナルコンピュータ31などの所定の情報処理装置に接続可能な専用(又は汎用でも良い)のクレードル30を用いる。
具体的に、この場合のクレードル30は、図のようにコード上ハウジング部4を嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に、コード上ハウジング部4が嵌合された際にデータ端子Td、クロック端子Tc、グランド端子Tgとそれぞれ接続される端子が形成されている。
【0060】
ユーザは、クレードル30を接続したパーソナルコンピュータ31を操作することで、クレードル30にコード上ハウジング部4が嵌合されたNCイヤホン装置1(マイクロコンピュータ10)に各種の設定を行うことができる。
【0061】
具体的な設定内容としては、例えば、NCフィルタのフィルタ特性の設定(カスタマイズ)、NCフィルタの最適ゲインの設定等を挙げることができる。或いは、マイクロコンピュータ10のファームウエアのアップデートや、イコライザの周波数特性の設定等が可能となるようにしてもよい。
【0062】
<4.各種機能>
ここで、本実施の形態のNCイヤホン装置1において、Lch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rが有する各種機能について図7を参照して説明しておく。
なお図7では、Lch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rのソフトウエア処理により実現されるそれぞれの機能を、機能ごとにブロック化して示している。以下では便宜上、ソフトウエア処理で実現される各種機能について、その機能を実現するハードウエア(機能部Fn)が構成されているものと犠牲して説明を行う。
【0063】
図7において、Lch側マイクロコンピュータ10lは、ノイズキャンセリング処理機能部Fn1、NCモード判定処理機能部Fn2、電池残量検知機能部Fn3、充電制御機能部Fn4、外部入力設定対応処理機能部Fn5を有する。
なお、NCモード同期制御機能部Fn7〜残量確認後同時オン制御機能部Fn10については後に改めて説明する。
【0064】
ノイズキャンセリング処理機能部Fn1については、先の図4において説明した通りであり、マイクロフォン11lによる収音信号とプラグ部2を介して入力されるLch信号とに基づきノイズキャンセリング信号を生成し、当該ノイズキャンセリング信号に基づきドライバユニット12lを駆動することでノイズキャンセリング効果を実現する機能部となる。
【0065】
またNCモード判定処理機能部Fn2は、外部の騒音状況に応じて適切とされるNCモードを判定する機能部となる。
具体的に、本例においては、NCモード(NCフィルタの特性)としてAモード:飛行機、Bモード:バス・電車、Cモード:オフィスの各モードが予め定められており、NCモード判定処理機能部Fn2は、マイクロフォン11lによる収音信号に基づき、これらのモードのうち現在の外部騒音状況に応じて設定されるべき適切なモードを判定する。
【0066】
また、電池残量検知機能部Fn3は、電池13lの残量を検知する。
また充電制御機能部Fn4は、先の図4にて説明した通り、Lch配線を介して充電のための直流電流が供給されているか否かを判定した結果に基づき、充電部14lの電池13lに対する充電動作を制御する機能部となる。
【0067】
また外部入力設定対応処理機能部Fn5は、前述した通信用端子Tを介した外部装置からの設定入力の受付や入力値に応じた設定を行う機能部となる。例えば、通信用端子Tを介して外部装置よりNCフィルタのフィルタ係数が設定値として入力された場合は、当該係数をNCフィルタのフィルタ係数として設定する処理を実行する。
【0068】
一方、Rch側マイクロコンピュータ10rは、Lch側マイクロコンピュータ10lが有する上記のノイズキャンセリング処理機能部Fn1〜外部入力設定対応処理機能部Fn5のうち、NCモード判定処理機能部Fn2を除いた4つの機能部Fnを有する。
なお、ここでは各機能部FnについてLch側とRch側とで同一符号を付しているが、Rch側の場合、上記によるLch側についての説明においてL/Rの符号を反転させたものとなることは言うまでもない。
【0069】
さらに、Rch側マイクロコンピュータ10rは、上記4つの機能部Fn(Fn1,3,4,5)と共に、ハウジング3Rh内にLED15が形成されることに対応して、インジケータ表示制御機能部Fn6を有する。
このインジケータ表示制御機能部Fn6は、Rch側マイクロコンピュータ10rがLED15の発光駆動制御機能を有することを確認的に示したものである。
【0070】
続いて、Lch側マイクロコンピュータ10lが有するNCモード同期制御機能部Fn7、異常検知・制御機能部Fn8、LR同時オフ制御機能部Fn9、残量確認後同時オン制御機能部Fn10について説明する。
ここで、これらNCモード同期制御機能部Fn7〜残量確認後同時オン制御機能部Fn10としての処理については、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rのうち、Lch側マイクロコンピュータ10lがマスターコンピュータとして動作することになる。
【0071】
先ず、NCモード同期制御機能部Fn7は、NCモードをLch/Rch側で同期させるための処理を実行する。すなわち、Lch側とRch側とで設定されるNCモードが、前述のNCモード判定処理機能部Fn2により判定された同一のNCモードで統一されるようにするものである。
【0072】
ここで、NCモードの設定状態が左右で異なると、ユーザに聴取上の違和感を与えることとなってしまう。このためNCモード同期制御機能部Fn7は、NCモードの切り替えタイミングについても、Lch側とRch側とで同期がとられるように(つまり切り替えタイミングが同時となるように)制御を行う。
【0073】
続いて、異常検知・制御機能部Fn8は、他方のchであるRch側に異常が生じていることを検知し、それに応じた対応処理を実行する。
具体的に本例では、Rch側マイクロコンピュータ10rが何らかの異常により動作を停止している(つまりNC処理がオフ状態)ことを検知し、動作を停止している場合は、自らをシャットダウン(オフ状態へ移行)する。本例の場合、Rch側が動作停止状態にあるか否かの判別は、Rch側との定期通信時に逐次行うものとしている。
【0074】
このような異常検知・制御機能部Fn8としての処理により、左右で動作状態がちぐはぐになる事態を効果的に回避できる。具体的には、Lch側のみがオン状態とされて左右の聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまうことを効果的に回避できる。
なお確認のため述べておくと、マイクロコンピュータ10がオフ状態においては、ノイズキャンセリング機能のみがオフとなり、音声信号に基づく放音自体は継続されるものとなる。
【0075】
また、LR同時オフ制御機能部Fn9は、何れか一方のchの電池残量が不十分(所定量以下)となった場合に、他方の残量が十分であっても、両chを同時にオフする処理を実行する。
これによっても、左右で動作が揃わないことによりユーザが違和感を感じてしまうことを効果的に回避できる。つまりこの場合としても、片ch側のみがオン状態とされて左右の聴取音に差が生じユーザに違和感を与えてしまうことを効果的に回避できる。
【0076】
また、残量確認後同時オン制御機能部Fn10は、操作ボタン4Aによりユーザからの電源オン指示が為されたことに応じ、Lch側、Rch側の双方の電池残量を確認し、双方のchで電池残量が十分(所定量以上)である場合のみ、Lch側とRch側が同時に起動するように制御を行う。
【0077】
ここで、何れか一方のchの電池残量が不十分である場合に起動を試みてしまうと、片ch側のみが起動し他方のchが起動しないという状況に陥る可能性がある。すなわち、左右で聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまう虞がある。
そこで、双方のchの残量が十分な場合にのみ両chの起動を試みるようにすることで、そのような違和感の発生を効果的に防止することができる。
【0078】
また、Rch側マイクロコンピュータ10rは、残量表示制御機能部Fn11を有する。
本例の場合、この残量表示制御機能部Fn11としての処理については、Rch側マイクロコンピュータ10rがマスターとして動作することになる。
【0079】
残量表示制御機能部Fn11は、Lch側・Rch側の電池残量のうち、少ない方の電池残量がLED15により表示されるように制御を行う。
ここで、本例においては、LED15としての発光部は1つのみが設けられており、従ってLED15によっては、オン/オフ状態の表示と共に、当該電池残量についての表示も行うことが要請される。
そこで本例では、LED15によるこれらの表示を時間軸上で区切って行うという手法を採るものとしている。具体的には、電源オン時においてLED15を電池残量表示のためのインジケータとして機能させ、それ以降はオン/オフ状態の表示のためのインジケータとして機能させるというものである。
【0080】
このことに対応して、本例の残量表示制御機能部Fn11は、Rch側マイクロコンピュータ10rの起動に応じて、自ch(つまりRch)側の電池残量と他ch(Lch)側の電池残量とを確認し、それらのうち少ない方の電池残量に応じた表示が為されるようにLED15の発光状態を制御する。
ここで、電池残量の表示態様としては、点滅速度や発光輝度等によるものを挙げることができる。
なお言うまでも無いが、上記のような電池残量表示を実行させた後は、LED15の発光状態がオン状態を表すものとなるように制御を行うことになる。
【0081】
ここで、本例においては、前述したLR同時オフ制御機能部Fn9により、何れか一方のchの電池残量が不十分である場合には、他方のchの残量が十分であっても両chが強制的にオフとされる。この点を考慮すれば、上記のような残量表示制御機能部Fn11により、適切な電池残量をユーザに通知できることが分かる。
【0082】
また、上記ように本例では、電源オン時に対応してのみLED15を電池残量表示に用いるものとしているが、このことによれば、オン/オフ状態の表示と電池残量の表示とを行うにあたって設けるべき発光部を、1つのみとすることができる(つまり共用できる)。
【0083】
<5.処理手順>
続いて、図8〜図12のフローチャートにより、NCモード同期制御機能部Fn7〜残量表示制御機能部Fn11として説明した各種機能を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順について説明する。
なおこれら図8〜図12において、「Lch」と表記する処理はLch側マイクロコンピュータ10lが実行し、「Rch」と表記する処理はRch側マイクロコンピュータ10rが実行するものである。
【0084】
図8は、NCモード同期制御機能部Fn7に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
先ず、Lch側において、ステップS101では、NCモードが変化するまで待機する。すなわち、先のNCモード判定処理機能部Fn2としての処理により新たなNCモードが判定されるまで待機する。
【0085】
ステップS101においてNCモードが変化したとされた場合は、ステップS102において、Rch側に対してNCモードを通知する。すなわち、新たに判定されたNCモードを通知するものである。
【0086】
このNCモードの通知に応じ、Rch側は、ステップS201においてLch側に返信を行う。なおこの返信は、上記通知を受けたことを確認するための返信となる。
【0087】
Lch側では、上記Rch側からの返信をステップS103にて待機している。
ステップS103において、Rch側からの返信があった場合は、ステップS104においてRch側にモード切替え指示を行う。
そしてその後、ステップS105にてNCモード切替えを行う。つまりNCモード(例えばNCフィルタのフィルタ特性)を新たに判定されたNCモードに切替えるものである。
【0088】
Rch側では、上記ステップS104のモード切替え指示に応じ、ステップS202にて、通知されたNCモードに切替える処理を実行する。すなわち、先のステップS201にて通知されたNCモードへの切替えを行うものである。
【0089】
ここで、上記のようにLch側が行ったNCモードの通知に応じRch側から返信が行われるのを待って、Lch側が自身のNCモード切替えを行うようにしていることで、NCモードの切り替えタイミングが同期するように図られている。
【0090】
なお、上記では、NCモードの変化タイミングにおいて、左右のNCモード設定の同期を図るものとしたが、NCモードの同期処理としては、定期的にLch側(マスター側)がRch側に現在のNCモードを通知して同期を図るということを併せて行うようにしてもよい。
【0091】
図9は、異常検知・制御機能部Fn8に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
図9において、Lch側は、ステップS301において定期通信タイミングとなるまで待機する。すなわち、Rch側との定期通信を行うべきタイミングとなるまで待機するものである。
【0092】
そして、定期通信タイミングに至ったことに応じ、ステップS302にてRch側に定期通知を行う。
この定期通知に応じ、Rch側はステップS401にてLch側に返信を行う。
【0093】
Lch側では、上記ステップS401による返信が行われたか否かを、ステップS303にて判別する。
ステップS303において、上記返信があったとして肯定結果が得られた場合は、先のステップS301に戻る。すなわち、このように返信がない場合にステップS301に戻ることで、Rch側の動作停止状態(異常状態)が検知されるまで待機するループ処理が形成されているものである。
【0094】
ステップS303において、Rch側からの上記返信がないとして否定結果が得られた場合は、ステップS304において、自らをシャットダウンする。これにより、Rch側が動作停止状態にあるとされる場合に対応して、自ch側もオフ状態に移行することができる。
【0095】
図10は、LR同時オフ制御機能部Fn9に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
図10において、Lch側は、ステップS501において残量確認タイミングとなるまで待機する。ここで言う残量確認タイミングとは、電池残量を確認すべきとして予め定められた所定のタイミングを指すものである。例えば、所定時間ごとのタイミングとすればよい。
【0096】
残量確認タイミングとなったことに応じては、ステップS502において、Rch側に残量通知要求を行う。
当該残量通知要求に応じ、Rch側は、ステップS601にてLch側に電池13rについての残量通知を行う。
【0097】
Lch側では、上記ステップS601による残量通知を、ステップS503にて待機している。そして、当該残量通知があった場合は、ステップS504において、双方とも残量が十分であるか否かを判別する。すなわち、先の電池残量検知機能部Fn3により検知された電池13lの残量と、Rch側から通知された電池13rの残量の双方ともが十分である、すなわち所定の残量以上であるか否かを判別する。
【0098】
ステップS504において、双方とも残量が十分であるとして肯定結果が得られた場合は、先のステップS501に戻る。このようにステップS504にて肯定結果が得られた場合にステップS501に戻るようにされることで、ステップS504にて否定結果が得られる状態、すなわち双方とも残量が十分であるとの条件を満たさない状態となるまで待機するループ処理が形成されるものとなる。
【0099】
ステップS504において、双方とも残量が十分であるとの条件を満たさないとして否定結果が得られた場合は、ステップS505に進み、Rch側にオフ指示(シャットダウン指示)を行う。
そしてその後、ステップS506にてオフ状態に移行する。
【0100】
Rch側では、上記ステップS505で為されたオフ指示に応じ、ステップS602にてオフ状態に移行する。
【0101】
上記のような一連の処理により、何れか一方でも電池残量が不十分とされた場合は、Lch/Rchの双方が同時にオフ状態に移行することになる。
【0102】
図11は、残量確認後同時オン制御機能部Fn10に対応する処理動作について、また図12は残量表示制御機能部Fn11に対応する処理動作についてそれぞれ説明するためのフローチャートである。
なお先の説明からも理解されるように、本例では、残量表示制御機能部Fn11に係る処理は電源オン時に対応して実行するものとしていることから、図12の処理は図11の処理と連続した処理となる。
【0103】
先ず、図11において、Lch側は、ステップS701にてオン操作が行われるまで待機する。すなわち、本例の場合は操作ボタン4Aの押圧が検知されるまで待機する。
ステップS701にてオン操作が行われたとした場合は、ステップS702の残量検知処理として、電池13lの残量検知を行った後、ステップS703においてRch側に残量通知要求を行う。
【0104】
Rch側では、上記ステップS703にて行われた残量通知要求に応じ、ステップS801の残量検知処理として、電池13rの残量検知を行った後、ステップS802にて当該検知した残量をLch側に通知する。
【0105】
ここで、Lch側では、ステップS703による残量通知要求を行った後、ステップS704においてタイムカウントをスタートする。このタイムカウントは、ステップS703による要求を行ってからの経過時間をカウントするために行われる。
【0106】
Lch側では、ステップS704でタイムカウントをスタートした後、ステップS705及びステップS706の処理により、Rch側からの残量通知の受信、又はタイムアウトの何れかの条件が成立するまで待機する。
すなわち、ステップS704においては、Rch側からの残量通知の有無を判別し、Rch側からの残量通知が為されていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS706に進んでタイムアウトであるか否か、つまりステップS704で開始したタイムカウント値が所定値に達したか否かを判別する。そして、当該ステップS706にてタイムアウトではないとして否定結果が得られた場合は、上記ステップS705に戻るようにされる。
【0107】
ここで、ステップS706にてタイムアウトであるとの肯定結果が得られた場合は、Rch側が何らかの異常状態(例えば電池13rの残量が枯渇して返信をできない状態等)にあると推測することができる。
そこで、ステップS706にて肯定結果が得られた場合は、ステップS707に進んでタイムカウントをリセットし、図のように処理動作を終了する。これにより、Rch側が起動不能とされる場合にLch側のみが起動してしまうといった事態の発生を防止でき、左右の動作状態を揃えることができる。
【0108】
一方、上記ステップS705において、Rch側からの残量通知があったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS708に進み、双方とも残量が十分であるか否かを判別する。
ステップS708において、双方とも残量が十分であるとの条件が満たされずに否定結果が得られた場合は、ステップS709に進み、Rch側に対して終了通知を行った後、処理動作を終了する。
【0109】
Rch側では、上記ステップS709によるLch側からの終了通知に応じて、図のように処理動作を終了するようにされる。
【0110】
このように、何れか一方のchの電池残量が不十分であるとされた場合には、双方のchとも起動はしないようにされる。このことで、片ch側のみが起動し他方のchが起動しないという状況に陥ることが効果的に回避され、結果、左右で聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまうことがないようにできる。
【0111】
また、ステップS708において、双方とも残量が十分であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS710に進んでRch側にオン指示(起動指示)を行った後、ステップS711にてオン状態に移行する(つまり起動する)処理を実行する。
【0112】
Rch側では、上記ステップS710のオン指示に応じ、ステップS803にてオン状態に移行する処理を実行する。
【0113】
このように、双方のchの残量が十分な場合にのみ、両chが同時に起動することとなる。
【0114】
続いて、図12に示す処理について説明する。
図12において、Rch側は、先のステップS803により起動した後は、ステップS804においてLch側に残量通知要求を行う。
【0115】
Lch側では、このようなRch側からの残量通知要求に応じ、ステップS712においてRch側に残量通知を行う。
【0116】
Rch側では、上記ステップS712によるLch側からの残量通知を、ステップS805にて待機している。
そして、Lch側からの残量通知があった場合は、ステップS806にて残量比較を行った後、ステップS807において、少ない方の残量を表示するための処理を実行する。すなわち、電池13lと電池13rのうち少ない方の残量を表す発光状態が得られるように、LED15の発光動作を制御するものである。
【0117】
なお、残量表示制御について、上記説明では、Lch側が残量をRch側に通知してRch側が少ない方の残量を選択して表示制御を行うものとしたが、逆に、Lch側がRch側からの残量通知を受け、Lch側が少ない方の残量を選択し、その結果をRch側に送信して残量表示制御を実行させるようにすることもできる。
【0118】
<6.まとめ>
上記により説明してきたように、本実施の形態では、ノイズキャンセリング機能の実現のために必要とされる電池13をLch/Rchの双方のハウジング部内に収納するものとしたことで、従来のNCイヤホン装置100のようにコード上ハウジング部103に対して電池ボックス103Aを設ける必要がなくなる。これにより、コード上ハウジング部4を大幅に小型・軽量化でき、当該コード上ハウジング部4の重量によりLch/Rchの出力部3の装着感が損なわれるといった問題を解消することができる。
【0119】
また、本実施の形態のNCイヤホン装置1によれば、Lch/Rchの出力部3を左右対称構造としているので、左右の重量バランスが良く装着感に優れるイヤホン装置を実現できる。
【0120】
また、左右対称構造とすれば、Lch/Rchのハウジング部内の空き容積が同じになるため、音響特性が左右で同じとなり、結果、自然な聞き心地を実現できる。
【0121】
また、電池13の収納位置をコード上ハウジング部以外とする構成としては、電池13をLch/Rchの何れか一方の出力部3のハウジング部に移設する構成も考えられるが、そのような片チャンネル寄せの構成とすると、左右でハウジング部の設計を別々に行わなければならなくなる。これに対し、左右対称構造とすれば、Lch/Rchの出力部3の設計は片チャンネル側のみを行うことで、他方のチャンネル側の設計はこれを反転させればよいものとなり、この点で設計の容易性を格段に増すことができる。
【0122】
また、本実施の形態では、回路基板21(マイクロコンピュータ10)をLch/Rchの出力部3内にそれぞれ収納するものとしている。
このことによると、ノイズキャンセリング処理を実行する回路基板21が、マイクロフォン11と同じハウジング内に収納されることになる。そしてこれによれば、マイクロフォン11−回路基板21間の配線距離は、従来のようにコード上ハウジング部103に回路基板を設ける場合と比較して格段に短くすることができる。
この結果、マイクロフォン11の収音信号に生じるノイズの低減効果が得られる。
また、マイクロフォン11と回路基板21との間の配線から生じる不要輻射の低減効果も得られる。
【0123】
また、本例のNCイヤホン装置1において、従来のように回路基板21をコード上ハウジング部内に形成するものとしてしまうと、当該回路基板21への電力供給のために出力部3内に収納された電池からコード上ハウジング部4まで電力供給配線を延ばさなくてはならず、その分、配線数が増えコード径が大きくなってしまう等の問題がある。
これに対し、回路基板21を出力部3内に収納するものとした本例のNCイヤホン装置1によれば、そのような問題を効果的に回避できる。
【0124】
また、本実施の形態では、音声出力部(出力部3)のハウジング内にノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータ10をそれぞれ収納した構成において、コード上ハウジング部4に対し、各マイクロコンピュータ10との間でデータ通信を行うための通信用端子Tを設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子Tを露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【0125】
また、本実施の形態では、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとがデータ通信可能となるように構成している。このことで、Lch側、Rch側の一方が他方の動作状況を容易に把握することができる。
これにより、Lch側とRch側とが互いの動作状況を把握できずに左右で動作がちぐはぐになるといった不具合の発生を効果的に防止でき、両チャンネルで動作を揃えることができる。
結果、Lch側とRch側とで動作が異なることにより使用者が違和感を感じるといった事態の発生を効果的に防止できる。
【0126】
<7.変形例>
以上、本技術に係る実施の形態について説明したが、本技術としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、電池13がLch/Rchの出力部3内に収納される場合を例示したが、本技術において、電池13はコード上ハウジング部に収納することもできる。
【0127】
また本技術は、イヤホン装置のみでなく、例えばオーバーヘッド型等のヘッドホン装置にも好適に適用することができる。
【0128】
また、本技術は、ノイズキャンセリング方式としてFF方式のみでなく、FB方式を採用する場合にも好適に適用できる。特に、オーバーヘッド型のヘッドホン装置とする場合には、FB方式を好適に適用できる。なおFB方式の場合、マイクロフォン11は使用者の耳との間の空間に生じる音(ドライバユニットが発する音と使用者の耳に漏れ込む外部ノイズ音の双方)を収音できる位置に設置することになる。
【0129】
また、本技術は以下に示す構成とすることも可能である。
(1)
Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部と、
上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部と、
上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部と、
上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部と
を備えると共に、
上記コード上ハウジング部に、
上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられている
音響再生装置。
(2)
上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部のそれぞれに電池が収納されている上記(1)に記載の音響再生装置。
【符号の説明】
【0130】
1 NCイヤホン装置、2 プラグ部、3L Lch出力部、3R Rch出力部、3Lh,3Rh ハウジング、3Lp,3Rp イヤーピース、4 コード上ハウジング部、4A 操作ボタン、4B 開口部、4C オーナメント、Ci 入力側コード、Cl Lch側コード、Cr Rch側コード、10l Lch側マイクロコンピュータ、10r Rch側マイクロコンピュータ、11l,11r マイクロフォン、12l,12r ドライバユニット、13l,13r 電池、14l,14r 充電部、15 LED、20 スリーブ、21 回路基板、30 クレードル、31 パーソナルコンピュータ
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノイズキャンセリング機能を有する音響再生装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2003−47083号公報
【背景技術】
【0003】
ノイズキャンセリング機能を有するイヤホン装置(以下、NCイヤホン装置とも表記する)が広く一般に普及している。
NCイヤホン装置は、ノイズキャンセリング処理をイヤホン装置自体が行うため、通常のオーディオプレーヤに接続して用いても使用者はノイズキャンセリング効果を享受することができる。
【0004】
図13は、従来のNCイヤホン装置100の外観図である。
この図13に示すNCイヤホン装置100は、いわゆる耳孔挿入型のイヤホン装置とされる。
ここで、耳孔挿入型のイヤホン装置とは、放音部が使用者の耳孔内に挿入されて聴取が行われるイヤホン装置を総称したものである。例えば、カナル型やインナーイヤ型のイヤホン装置は、当該耳孔挿入型のイヤホン装置に該当する。
この図13に示すNCイヤホン装置100は、カナル型のNCイヤホン装置とされる。
【0005】
図示するようにNCイヤホン装置100は、Lch(ch:チャンネル)出力部101L、Rch出力部101R、プラグ部102、及びコード上ハウジング部103を有する。
プラグ部102とコード上ハウジング部103の間、及びコード上ハウジング部103とLch出力部101L、Rch出力部101Rのそれぞれとの間は、図のようにコードで結ばれている。
【0006】
Lch出力部101L、Rch出力部101Rには、それぞれプラグ部102から入力される音声信号に応じた放音を行うドライバユニットと、ノイズキャンセリング機能の実現のため外部音を収音するためのマイクロフォンとがそれぞれ設けられている。
【0007】
コード上ハウジング部103の内部には、ノイズキャンセリング機能を実現するための電気回路部(ノイズキャンセリング処理部)が設けられている。
このノイズキャンセリング処理部は、プラグ部102から入力されるLch音声信号とLch出力部101L内のマイクロフォンからの収音信号とに基づきLch側ノイズキャンセリング信号を生成すると共に、同様にプラグ部102から入力されるRch音声信号とRch出力部101R内のマイクロフォンからの収音信号とに基づきRch側ノイズキャンセリング信号を生成する。そしてノイズキャンセリング処理部は、上記Lch側ノイズキャンセリング信号に基づきLch出力部101L内のドライバユニットを駆動すると共に、上記Rch側ノイズキャンセリング信号に基づきRch出力部101R内のドライバユニットを駆動する。これにより、当該NCイヤホン装置100の装着者にノイズがキャンセルされた音声を知覚させることができる。
【0008】
また、コード上ハウジング部103には、上記のようなノイズキャンセリング処理に必要とされる電力を供給するための電池が収納されるべき電池ボックス103Aが形成されている。
【0009】
ところで、NCイヤホン装置100については、工場出荷時などの所定のタイミングで、個体ごとのばらつき吸収のために、音響検査を行い、その結果に応じてノイズキャンセリング処理の設定値を調整するということが行われる。
具体的には、Lch出力部101L、Rch出力部101Rを所定の調整用治具にセットした状態にて音響再生を行い、その出力音を解析した結果からその個体に応じたノイズキャンセリング処理の設定値を求める。このように求めた設定値を、NCイヤホン装置100に指示して設定させる。
このとき、設定値の指示入力は、予め設定値を入力するための通信用端子をコード上ハウジング部103に設けておき、当該通信用端子を通じて行うようにされている。このような通信用端子は、コード上ハウジング部103の一部を剥離するなどして外部に露出するようにされており、使用者(エンドユーザ)による使用は想定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記説明からも理解されるように、従来のNCイヤホン装置100では、コード上ハウジング部103内にノイズキャンセリング処理や各種設定制御を行うための電気回路が形成されている。具体的には、ノイズキャンセリング処理等を実行するマイクロコンピュータが実装されている。
【0011】
このようなマイクロコンピュータが実装されることから、コード上ハウジング部103にはこれに対する給電を行う電池を収納するための電池ボックス103Aも形成されている。これらの点より、従来のNCイヤホン装置100は、コード上ハウジング部103のサイズや重量が大きくなってしまう。
【0012】
コード上ハウジング部103が重くなることによると、使用者に装着されたLch出力部101L、Rch出力部101Rが下方に引っ張られ易くなり、結果、装着感が損なわれてしまうという問題がある。
なお、この対策として従来では、胸ポケットの縁部等の適当な場所にコード上ハウジング部103を係止するためのクリップ等を設けて、コード上ハウジング部103の重量による出力部101の引っ張りを防止し装着感の安定性向上を図るようにしたものもある。しかしながらこの構成ではそもそもクリップの形成が必要であるし、また使用者にクリップ止めの手間を強いるという問題もある。
【0013】
そこで、Lch出力部101L、Rch出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理のためのマイクロコンピュータや電池を収納するという構成が考えられる。これにより、コード上ハウジング部103を大幅に小型・軽量化でき、上記の問題点を解消することができる。
【0014】
しかしながら、出力部101L,101Rにノイズキャンセリング用のマイクロコンピュータを搭載する構成としてしまうと、以下のような問題が生じる。
すなわち、従来においては、音響検査時に用いる通信用端子を、マイクロコンピュータが搭載されるハウジング部に対して設けるという構成を採っているが、出力部101L,101Rにノイズキャンセリング用のマイクロコンピュータを搭載する場合において、このような構成を踏襲してしまうと、音響検査時に通信用端子を露出させるために、出力部101L,101Rのハウジングの一部をそれぞれ分解しなければならないこととなる。
このように出力部101L,101Rの一部を分解した状態としてしまうと、実際の使用時と音響特性が異なるものとなってしまい、結果、調整処理において正しい設定値を求めることができなくなってしまう。すなわち、ノイズキャンセリング処理の設定値を正しく調整することができないものとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術では上記の問題点を解消すべく、音響再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本技術の音響再生装置は、Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部を備える。
また、上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部を備える。
また、上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部を備える。
また、上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部を備える。
そして、上記コード上ハウジング部に、上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられているものである。
【0016】
上記のように本技術では、ドライバユニットを有して音声出力(音響再生)を行う音声出力部のハウジング内に、ノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータを収納した構成を採っている。そして、このような構成を採った上で、コード上ハウジング部に対し、上記マイクロコンピュータとの間でデータ通信を行うための通信用端子を設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子を露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本技術によれば、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整を適正に行うことのできる音響再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態のNCイヤホン装置の外観図である。
【図2】実施の形態のLch出力部の分解斜視図である。
【図3】ハウジング内に収納されたマイクロフォン、ドライバユニット、電池の位置関係を表した図である。
【図4】実施の形態のNCイヤホン装置の内部構成を示したブロック図である。
【図5】通信用端子の具体的な形成態様について説明するための図である。
【図6】通信用端子を利用してユーザ側で各種設定を行うとしたときの具体的な接続態様を例示した図である。
【図7】Lch側マイクロコンピュータ、Rch側マイクロコンピュータが有する各種機能について説明するための図である。
【図8】NCモード同期制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図9】異常検知・制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図10】LR同時オフ制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図11】残量確認後同時オン制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】残量表示制御機能部に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図13】従来のNCイヤホン装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態としての装置構造>
<2.実施の形態としての装置内部構成>
<3.外部装置との通信について>
<4.各種機能>
<5.処理手順>
<6.まとめ>
<7.変形例>
【0020】
<1.実施の形態としての装置構造>
図1は、本技術の一実施形態としてのNCイヤホン装置1(NC:ノイズキャンセリング)の外観図である。
ここで、NCイヤホン装置とは、NC機能を有するイヤホン装置を意味するものである。NCイヤホン装置は、ノイズキャンセリング処理をイヤホン装置自体が行うため、通常のオーディオプレーヤに接続して用いても使用者はNC効果を享受することができる。
【0021】
本実施の形態のNCイヤホン装置1は、いわゆる耳孔挿入型のイヤホン装置とされる。
「耳孔挿入型」のイヤホン装置とは、放音部が使用者の耳孔内に挿入されて聴取が行われるイヤホン装置を総称したものである。例えば、カナル型やインナーイヤ型のイヤホン装置は、耳孔挿入型のイヤホン装置に該当する。
図1に示すNCイヤホン装置1は、カナル型のイヤホン装置とされる。
【0022】
図示するようにNCイヤホン装置1は、プラグ部2、Lch(ch:チャンネル)出力部3L、Rch出力部3R、及びコード上ハウジング部4を有する。また、プラグ部2とコード上ハウジング部4の間を結ぶ入力側コードCiと、コード上ハウジング部4とLch出力部3Lとの間を結ぶLch側コードClと、コード上ハウジング部4とRch出力部3Rとの間を結ぶRch側コードCrとを有する。
【0023】
プラグ部2は、当該NCイヤホン装置1が接続されたオーディオプレーヤからの出力音声信号を入力するために設けられる。本例におけるプラグ部2にはLch、Rch、GND(グランド)の3端子が形成されており、入力側コードCi内にはこれらLch、Rch、GNDの各端子に対応する3つの配線が形成されている。
【0024】
Lch出力部3Lは、プラグ部2を介して入力されるLch信号(音声信号)に基づく音声を出力するための部位であり、またRch出力部3Rは、同様にプラグ部2を介して入力されるRch信号に基づく音声を出力するための部位となる。
Lch出力部3Lは、筐体としてのハウジング3Lhと、これに着脱可能に装着されたイヤーピース3Lpとを有して成る。同様にRch出力部3Rは、筐体としてのハウジング3Rhと、これに着脱可能に装着されたイヤーピース3Rpとを有して成る。
Lch出力部3Lについてはイヤーピース3Lpが、Rch出力部3Rについてはイヤーピース3Rpがそれぞれ使用者の対応する側の耳孔に挿入され、その状態にて出力音の聴取が行われる。
【0025】
ここで、ノイズキャンセリング機能の実現にあたっては、外部音(外部ノイズ音)を収音することが要請される。このため、Lch出力部3L、Rch出力部3Rのそれぞれには、外部音を収音するためのマイクロフォン(後述するマイクロフォン11l,11r)が設けられる。
【0026】
コード上ハウジング部4は、本例の場合、ノイズキャンセリング機能のオン/オフ(NCイヤホン装置1の電源オン/オフ)操作を可能とするための操作部として設けられたものとなる。
具体的に、コード上ハウジング部4には、図のように操作ボタン4Aが設けられ、使用者は当該操作ボタン4Aを通じてNCイヤホン装置1にオン/オフ指示を行うことができる。本例の場合、操作ボタン4Aの押圧によりオン/オフ指示が実現されるように構成されている。オフ状態での押圧はオン指示、オン状態での押圧はオフ指示となる。
【0027】
また本例の場合、コード上ハウジング部4において、配線がLch側とRch側に分岐するようにされている。
具体的に、コード上ハウジング部4内においては、入力側コードCiに含まれるLch、Rch、GNDの配線が、Lch・GNDの組とRch・GNDの組とに分けられ、前者の組がLch側コードClを通じてLch出力部3Lまで到達し、後者の組がRch側コードCrを通じてRch出力部3Rに到達するようにされている。
なお、Lch側コードCl内、Rch側コードCr内に含まれる配線の詳細については後述する。
【0028】
続いて、図2及び図3により、本実施の形態のLch出力部3L、Rch出力部3Rのハウジング内の構造について説明する。
図2は、Lch出力部3Lの分解斜視図を示している。
ここで、Rch出力部3Rの構造に関しては、Lch出力部3Lの構造を左右反転させたものとなる(但しRch出力部3RにはLED15が設けられる点は異なる)ことから、図示による説明は省略する。
図2においては、Lch出力部3Lと共にLch側コードClも併せて示されている。
なお、Rch出力部3Rに設けられるLED15(図4を参照)は、NCイヤホン装置1のオン/オフ状態や電池残量を表すインジケータとして機能するものである。
【0029】
図示するようにLch出力部3Lは、図1に示したハウジング3Lhを構成するハウジングフロントピース3Lh-f及びハウジングリアピース3Lh-rと、同じく図1に示したイヤーピース3Lpと、Lch側コードCl内の配線をハウジング3Lh内部に導くためのスリーブ20とを有する。
【0030】
そして、本実施の形態のLch出力部3Lにおいては、ハウジングフロントピース3Lh-fとハウジングリアピース3Lh-rとで構成されるハウジング3Lhの内部空間に、マイクロフォン11l、ドライバユニット12l、回路基板21、及び電池13lが収納される。
【0031】
マイクロフォン11lは、外部音を収音するために設けられる。カナル型の場合、ノイズキャンセリング方式としていわゆるFF方式(フィードフォワード方式)が採用されるため、マイクロフォン11lは、ハウジング外部の音を収音すべく、その収音面がドライバユニット12lの放音方向とは逆側を向くように配置される。本例の場合、マイクロフォン11lはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォンとされる。
【0032】
回路基板21は、ノイズキャンセリング機能や後述する各種機能を実現するための電気回路部が形成された基板となる。後述するLch側マイクロコンピュータ10l(Rch出力部3RにおいてはRch側マイクロコンピュータ10r)は、当該回路基板21上に形成される。
【0033】
電池13lは、回路基板21上に形成された電気回路部の動作電源として設けられたものである。本例の場合、ボタン型の二次電池が採用される。
【0034】
ドライバユニット12lは、音声信号に基づく放音(音響再生)を行う。本例の場合、ドライバユニット12lとしてはBA型(BA:バランスド・アーマチュア)のものを用いるものとしている。
【0035】
なお、本例の場合、イヤーピース3Lpは、ハウジングフロントピース3Lh-fに形成されている筒上部(その先端に放音口を有する)に対してその穴部が嵌合されることで、ハウジング3Lhに対して装着される。
【0036】
確認のため、図3に、ハウジング3Lh内に収納されたマイクロフォン11l、ドライバユニット12l、電池13lの位置関係を表す。図3A、図3B、図3CはLch出力部3Lの透視図であり、それぞれ斜視図、正面図、上面図である。
【0037】
ここで、図2や図3を参照して分かるように、本例においては、ドライバユニット12lが収納される空間とは別に、略円柱状の空間が形成されるようにハウジング3Lhを設計している。そしてこの略円柱状の空間に、回路基板21やボタン型の電池13lを収納するように設計している。
このような設計としたことで、耳孔挿入型のイヤホン装置としての、音声出力部のハウジングサイズを比較的小型とすることが要請されるイヤホン装置において、ハウジング3Lh内に電池13l等を効率的に収納することができる。
【0038】
また本例では、マイクロフォン11lとしてMEMSマイクロフォンを用いるものとしている。MEMSマイクロフォンは小型であるため、ハウジング3Lh内に電池13l等を収納する設計の容易性を増すことができる。或いは、設計の自由度を増すことができる。
【0039】
また本例では、ドライバユニット12lとしてBA型のものを用いるものとしているが、BA型のドライバユニットはダイナミック型などと比較して小型であるので、この点においても、電池13l等を収納するためのハウジング3Lhの設計が容易となり、又は設計の自由度を増すことができる。
【0040】
ここで、上記により説明したNCイヤホン装置1によれば、ノイズキャンセリング機能の実現のために必要とされる電池13がLch/Rchの双方のハウジング部内に収納されるので、従来のNCイヤホン装置100のようにコード上ハウジング部103に対して電池ボックス103Aを設ける必要がなくなる。これにより、コード上ハウジング部4を大幅に小型・軽量化でき、コード上ハウジング部4の重量によりLch/Rchの音声出力部の装着感が損なわれるといった問題を解消することができる。
【0041】
また、本実施の形態のNCイヤホン装置1は、Lch/Rchの音声出力部を左右対称構造としている(除くLED15)。この結果、左右の重量バランスが良く装着感に優れるイヤホン装置を実現できる。
【0042】
また、左右対称構造とすれば、Lch/Rchのハウジング部内の空き容積が同じになるため、音響特性が左右で同じとなり、結果、自然な聞き心地を実現できる。
【0043】
なお確認のために述べておくと、LED15は極めて小型・軽量であるため、その有無による重量・音響特性の差は極めて微小である。
【0044】
また、電池13の収納位置をコード上ハウジング部4以外とする構成としては、電池13をLch/Rchの何れか一方のハウジング部に移設する構成も考えられるが、そのような片チャンネル寄せの構成とすると、左右でハウジング部の設計を別々に行わなければならなくなる。これに対し、左右対称構造とする本実施の形態によれば、Lch/Rchの音声出力部の設計は片チャンネル側のみを行うことで、他方のチャンネル側の設計はこれを反転させればよいものとなり、この点で設計の容易性を格段に増すことができる。
【0045】
また、片チャンネル寄せの構成とせず、左右に分散させた構成としたことで、音声出力部のサイズを左右で均等とできる。
【0046】
<2.実施の形態としての装置内部構成>
図4は、NCイヤホン装置1の内部構成を示したブロック図である。
なお図4ではプラグ部2に形成される各端子(Lch、Rch、GND)の図示は省略している。
【0047】
先ず、プラグ部2を介して入力されたLch信号、Rch信号は、それぞれコード上ハウジング部4を介して、ハウジング3Lh、ハウジング3Rhの内部に入力される。
ハウジング3Lh内において、Lch信号は、Lch側マイクロコンピュータ10l、及び充電部14lに供給される。本例の場合、Lch側マイクロコンピュータ10lには、Lch信号としてコンデンサCclを介した信号と介さない信号との2系統が入力される。
同様に、ハウジング3Rh内においては、Rch信号がRch側マイクロコンピュータ10r、及び充電部14rに供給される。そしてRch側マイクロコンピュータ10rには、Rch信号としてコンデンサCcrを介した信号と介さない信号との2系統が入力される。
コンデンサCcl、Ccrは、直流成分カットのために設けられたものである。コンデンサCclを介したLch信号、コンデンサCcrを介したRch信号は、それぞれマイクロコンピュータ10によるノイズキャンセリング処理(或いはNC機能がオフ時はドライバユニット12の駆動のため)に用いられることになる。
【0048】
ここで、本例において、各マイクロコンピュータ10にコンデンサCcを介さない信号(直流カット無しの信号)も併せて入力するようにしているのは、本例では電池13に対する充電をLch、Rchの配線を介して行うことを前提としているためである。
この場合、充電時には、Lch、Rchの配線を介して直流電流が供給されることになるが、各マイクロコンピュータ10は、コンデンサCcを介さない側の配線の信号をモニタし、直流電流が供給されているか否かを判定する。そして、直流電流が供給された場合には、充電部14に指示を出し、電池13に対する充電が行われるようにする(後述する充電制御機能部Fn4)。
なお図から明らかなように、充電部14lは、当該充電部14lに接続されるLchの配線を介して供給される直流電流を電池13lに供給して充電を行う。同様に、充電部14rは、当該充電部14rに接続されるRchの配線を介して供給される直流電流を電池13rに供給して充電を行う。
【0049】
各マイクロコンピュータ10は、それぞれ後述する各機能部Fn(図7)としての処理を実行する。
例えば、ノイズキャンセリング機能を実現するための処理を実行する(後述するノイズキャンセリング処理機能部Fn1)。
具体的に、Lch側マイクロコンピュータ10lは、コンデンサCclを介して入力されるLch信号とマイクロフォン11lによる収音信号とに基づき、外部音(ノイズ音)がキャンセルされたものと知覚させるためのノイズキャンセリング信号を生成し、当該ノイズキャンセリング信号に基づきドライバユニット12lを駆動する。
これにより、NCイヤホン装置1の装着者には、外部音がキャンセルされたLch音声を聴取させることができる。すなわち、ノイズキャンセリング効果が得られる。
なお、Rch側マイクロコンピュータ10rによるノイズキャンセリング処理は、上記によるLch側の処理とL/Rの符号を反転させたものとなるので、重複説明は避ける。
【0050】
また本例の場合、Rch側のハウジング部3Rh内にはLED15が設けられ、これに対応しRch側マイクロコンピュータ10rは当該LED15の発光駆動制御も行うようにされる(後述するインジケータ表示制御機能部Fn6)。
【0051】
また、本実施の形態では、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとが、互いにデータ通信可能に構成されている。具体的に本例の場合、これらLch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとが有線接続されることで、データ通信が可能とされている。
この場合、データ通信方式としては、I2C(Inter-Integrated Circuit)によるシリアル通信方式が採用され、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとはデータ(DATA)、クロック(CLK)、及びグランド(GND)の各配線で接続されている。
【0052】
図示するように、これらデータ、クロック、グランドの各配線は、コード上ハウジング部4内を経由してLch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとを接続するものとなる。つまりこのことからも理解されるように、前述したLch側コードCl、Rch側コードCr内には、これらデータ、クロック、グランドの各配線も含まれるものである。
なお本例の場合、グランド線は音声信号についてのグランド線と共用とされる。
【0053】
コード上ハウジング部4には、前述した操作ボタン4Aと連動するスイッチSWが設けられている。このスイッチSWは、操作ボタン4Aの押圧の有無をマイクロコンピュータ10に対して通知するように構成される。具体的に本例の場合、各マイクロコンピュータ10に対しては、スイッチSWから延びるオン/オフ制御線(ON/OFF)が接続されており、スイッチSWは、操作ボタン4Aの押圧により、当該オン/オフ制御線とグランド線とを結線するように構成されている。
なお、上記オン/オフ制御線としても、Lch側コードCl、Rch側コードCrを通じてLch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rに接続されている。
【0054】
<3.外部装置との通信について>
ここで、通常、NCイヤホン装置については、工場出荷時などの所定のタイミングで、個体ごとのばらつきを吸収するため、音響検査を行い、その結果に応じてノイズキャンセリング処理の設定値を調整するということが行われる。
【0055】
本実施の形態のNCイヤホン装置1では、このような設定値等の外部からの入力を可能とするための通信用端子を、コード上ハウジング部4に対して設けるものとしている。
【0056】
図5は、通信用端子の具体的な形成態様について説明するための図である。
図5Aに示されるように、通信用端子Tは、コード上ハウジング部4における操作ボタン4Aが形成される面(表面とする)とは逆側となる裏面に露出可能に形成されている。
具体的には、コード上ハウジング部4の裏面に対して開口部4Bが設けられ、当該開口部4B内に通信用端子Tが露出されるように構成されている。
本例の場合、前述のようにマイクロコンピュータ10のデータ通信方式としてはI2C方式が採用されるので、これに対応し通信用端子Tとしては、データ端子Td、クロック端子Tc、グランド端子Tgを形成する。先の図4に示しているように、データ端子Tdはデータ線(DATA)、クロック端子Tcはクロック線(CLK)、グランド端子Tgはグランド線(GND)にそれぞれ接続された端子となる。
【0057】
上記開口部4Bは、製品として出荷される段階では、図5Bに示すようにオーナメント4Cで覆われることになる。換言すれば、エンドユーザが購入した際には、各端子Tは外部に露出されていないものである。
【0058】
上記のように本実施の形態では、音声出力部(出力部3)のハウジング内にノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータ10をそれぞれ収納した構成において、コード上ハウジング部4に対し、各マイクロコンピュータ10との間でデータ通信を行うための通信用端子Tを設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子Tを露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【0059】
ここで、通信用端子Tを利用したマイクロコンピュータ10に対する設定は、工場出荷時に行う以外に、ユーザ側で行うことも考えられる。
ユーザ側で各種設定を行うとしたときには、例えば図6に示されるように、パーソナルコンピュータ31などの所定の情報処理装置に接続可能な専用(又は汎用でも良い)のクレードル30を用いる。
具体的に、この場合のクレードル30は、図のようにコード上ハウジング部4を嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に、コード上ハウジング部4が嵌合された際にデータ端子Td、クロック端子Tc、グランド端子Tgとそれぞれ接続される端子が形成されている。
【0060】
ユーザは、クレードル30を接続したパーソナルコンピュータ31を操作することで、クレードル30にコード上ハウジング部4が嵌合されたNCイヤホン装置1(マイクロコンピュータ10)に各種の設定を行うことができる。
【0061】
具体的な設定内容としては、例えば、NCフィルタのフィルタ特性の設定(カスタマイズ)、NCフィルタの最適ゲインの設定等を挙げることができる。或いは、マイクロコンピュータ10のファームウエアのアップデートや、イコライザの周波数特性の設定等が可能となるようにしてもよい。
【0062】
<4.各種機能>
ここで、本実施の形態のNCイヤホン装置1において、Lch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rが有する各種機能について図7を参照して説明しておく。
なお図7では、Lch側マイクロコンピュータ10l、Rch側マイクロコンピュータ10rのソフトウエア処理により実現されるそれぞれの機能を、機能ごとにブロック化して示している。以下では便宜上、ソフトウエア処理で実現される各種機能について、その機能を実現するハードウエア(機能部Fn)が構成されているものと犠牲して説明を行う。
【0063】
図7において、Lch側マイクロコンピュータ10lは、ノイズキャンセリング処理機能部Fn1、NCモード判定処理機能部Fn2、電池残量検知機能部Fn3、充電制御機能部Fn4、外部入力設定対応処理機能部Fn5を有する。
なお、NCモード同期制御機能部Fn7〜残量確認後同時オン制御機能部Fn10については後に改めて説明する。
【0064】
ノイズキャンセリング処理機能部Fn1については、先の図4において説明した通りであり、マイクロフォン11lによる収音信号とプラグ部2を介して入力されるLch信号とに基づきノイズキャンセリング信号を生成し、当該ノイズキャンセリング信号に基づきドライバユニット12lを駆動することでノイズキャンセリング効果を実現する機能部となる。
【0065】
またNCモード判定処理機能部Fn2は、外部の騒音状況に応じて適切とされるNCモードを判定する機能部となる。
具体的に、本例においては、NCモード(NCフィルタの特性)としてAモード:飛行機、Bモード:バス・電車、Cモード:オフィスの各モードが予め定められており、NCモード判定処理機能部Fn2は、マイクロフォン11lによる収音信号に基づき、これらのモードのうち現在の外部騒音状況に応じて設定されるべき適切なモードを判定する。
【0066】
また、電池残量検知機能部Fn3は、電池13lの残量を検知する。
また充電制御機能部Fn4は、先の図4にて説明した通り、Lch配線を介して充電のための直流電流が供給されているか否かを判定した結果に基づき、充電部14lの電池13lに対する充電動作を制御する機能部となる。
【0067】
また外部入力設定対応処理機能部Fn5は、前述した通信用端子Tを介した外部装置からの設定入力の受付や入力値に応じた設定を行う機能部となる。例えば、通信用端子Tを介して外部装置よりNCフィルタのフィルタ係数が設定値として入力された場合は、当該係数をNCフィルタのフィルタ係数として設定する処理を実行する。
【0068】
一方、Rch側マイクロコンピュータ10rは、Lch側マイクロコンピュータ10lが有する上記のノイズキャンセリング処理機能部Fn1〜外部入力設定対応処理機能部Fn5のうち、NCモード判定処理機能部Fn2を除いた4つの機能部Fnを有する。
なお、ここでは各機能部FnについてLch側とRch側とで同一符号を付しているが、Rch側の場合、上記によるLch側についての説明においてL/Rの符号を反転させたものとなることは言うまでもない。
【0069】
さらに、Rch側マイクロコンピュータ10rは、上記4つの機能部Fn(Fn1,3,4,5)と共に、ハウジング3Rh内にLED15が形成されることに対応して、インジケータ表示制御機能部Fn6を有する。
このインジケータ表示制御機能部Fn6は、Rch側マイクロコンピュータ10rがLED15の発光駆動制御機能を有することを確認的に示したものである。
【0070】
続いて、Lch側マイクロコンピュータ10lが有するNCモード同期制御機能部Fn7、異常検知・制御機能部Fn8、LR同時オフ制御機能部Fn9、残量確認後同時オン制御機能部Fn10について説明する。
ここで、これらNCモード同期制御機能部Fn7〜残量確認後同時オン制御機能部Fn10としての処理については、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rのうち、Lch側マイクロコンピュータ10lがマスターコンピュータとして動作することになる。
【0071】
先ず、NCモード同期制御機能部Fn7は、NCモードをLch/Rch側で同期させるための処理を実行する。すなわち、Lch側とRch側とで設定されるNCモードが、前述のNCモード判定処理機能部Fn2により判定された同一のNCモードで統一されるようにするものである。
【0072】
ここで、NCモードの設定状態が左右で異なると、ユーザに聴取上の違和感を与えることとなってしまう。このためNCモード同期制御機能部Fn7は、NCモードの切り替えタイミングについても、Lch側とRch側とで同期がとられるように(つまり切り替えタイミングが同時となるように)制御を行う。
【0073】
続いて、異常検知・制御機能部Fn8は、他方のchであるRch側に異常が生じていることを検知し、それに応じた対応処理を実行する。
具体的に本例では、Rch側マイクロコンピュータ10rが何らかの異常により動作を停止している(つまりNC処理がオフ状態)ことを検知し、動作を停止している場合は、自らをシャットダウン(オフ状態へ移行)する。本例の場合、Rch側が動作停止状態にあるか否かの判別は、Rch側との定期通信時に逐次行うものとしている。
【0074】
このような異常検知・制御機能部Fn8としての処理により、左右で動作状態がちぐはぐになる事態を効果的に回避できる。具体的には、Lch側のみがオン状態とされて左右の聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまうことを効果的に回避できる。
なお確認のため述べておくと、マイクロコンピュータ10がオフ状態においては、ノイズキャンセリング機能のみがオフとなり、音声信号に基づく放音自体は継続されるものとなる。
【0075】
また、LR同時オフ制御機能部Fn9は、何れか一方のchの電池残量が不十分(所定量以下)となった場合に、他方の残量が十分であっても、両chを同時にオフする処理を実行する。
これによっても、左右で動作が揃わないことによりユーザが違和感を感じてしまうことを効果的に回避できる。つまりこの場合としても、片ch側のみがオン状態とされて左右の聴取音に差が生じユーザに違和感を与えてしまうことを効果的に回避できる。
【0076】
また、残量確認後同時オン制御機能部Fn10は、操作ボタン4Aによりユーザからの電源オン指示が為されたことに応じ、Lch側、Rch側の双方の電池残量を確認し、双方のchで電池残量が十分(所定量以上)である場合のみ、Lch側とRch側が同時に起動するように制御を行う。
【0077】
ここで、何れか一方のchの電池残量が不十分である場合に起動を試みてしまうと、片ch側のみが起動し他方のchが起動しないという状況に陥る可能性がある。すなわち、左右で聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまう虞がある。
そこで、双方のchの残量が十分な場合にのみ両chの起動を試みるようにすることで、そのような違和感の発生を効果的に防止することができる。
【0078】
また、Rch側マイクロコンピュータ10rは、残量表示制御機能部Fn11を有する。
本例の場合、この残量表示制御機能部Fn11としての処理については、Rch側マイクロコンピュータ10rがマスターとして動作することになる。
【0079】
残量表示制御機能部Fn11は、Lch側・Rch側の電池残量のうち、少ない方の電池残量がLED15により表示されるように制御を行う。
ここで、本例においては、LED15としての発光部は1つのみが設けられており、従ってLED15によっては、オン/オフ状態の表示と共に、当該電池残量についての表示も行うことが要請される。
そこで本例では、LED15によるこれらの表示を時間軸上で区切って行うという手法を採るものとしている。具体的には、電源オン時においてLED15を電池残量表示のためのインジケータとして機能させ、それ以降はオン/オフ状態の表示のためのインジケータとして機能させるというものである。
【0080】
このことに対応して、本例の残量表示制御機能部Fn11は、Rch側マイクロコンピュータ10rの起動に応じて、自ch(つまりRch)側の電池残量と他ch(Lch)側の電池残量とを確認し、それらのうち少ない方の電池残量に応じた表示が為されるようにLED15の発光状態を制御する。
ここで、電池残量の表示態様としては、点滅速度や発光輝度等によるものを挙げることができる。
なお言うまでも無いが、上記のような電池残量表示を実行させた後は、LED15の発光状態がオン状態を表すものとなるように制御を行うことになる。
【0081】
ここで、本例においては、前述したLR同時オフ制御機能部Fn9により、何れか一方のchの電池残量が不十分である場合には、他方のchの残量が十分であっても両chが強制的にオフとされる。この点を考慮すれば、上記のような残量表示制御機能部Fn11により、適切な電池残量をユーザに通知できることが分かる。
【0082】
また、上記ように本例では、電源オン時に対応してのみLED15を電池残量表示に用いるものとしているが、このことによれば、オン/オフ状態の表示と電池残量の表示とを行うにあたって設けるべき発光部を、1つのみとすることができる(つまり共用できる)。
【0083】
<5.処理手順>
続いて、図8〜図12のフローチャートにより、NCモード同期制御機能部Fn7〜残量表示制御機能部Fn11として説明した各種機能を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順について説明する。
なおこれら図8〜図12において、「Lch」と表記する処理はLch側マイクロコンピュータ10lが実行し、「Rch」と表記する処理はRch側マイクロコンピュータ10rが実行するものである。
【0084】
図8は、NCモード同期制御機能部Fn7に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
先ず、Lch側において、ステップS101では、NCモードが変化するまで待機する。すなわち、先のNCモード判定処理機能部Fn2としての処理により新たなNCモードが判定されるまで待機する。
【0085】
ステップS101においてNCモードが変化したとされた場合は、ステップS102において、Rch側に対してNCモードを通知する。すなわち、新たに判定されたNCモードを通知するものである。
【0086】
このNCモードの通知に応じ、Rch側は、ステップS201においてLch側に返信を行う。なおこの返信は、上記通知を受けたことを確認するための返信となる。
【0087】
Lch側では、上記Rch側からの返信をステップS103にて待機している。
ステップS103において、Rch側からの返信があった場合は、ステップS104においてRch側にモード切替え指示を行う。
そしてその後、ステップS105にてNCモード切替えを行う。つまりNCモード(例えばNCフィルタのフィルタ特性)を新たに判定されたNCモードに切替えるものである。
【0088】
Rch側では、上記ステップS104のモード切替え指示に応じ、ステップS202にて、通知されたNCモードに切替える処理を実行する。すなわち、先のステップS201にて通知されたNCモードへの切替えを行うものである。
【0089】
ここで、上記のようにLch側が行ったNCモードの通知に応じRch側から返信が行われるのを待って、Lch側が自身のNCモード切替えを行うようにしていることで、NCモードの切り替えタイミングが同期するように図られている。
【0090】
なお、上記では、NCモードの変化タイミングにおいて、左右のNCモード設定の同期を図るものとしたが、NCモードの同期処理としては、定期的にLch側(マスター側)がRch側に現在のNCモードを通知して同期を図るということを併せて行うようにしてもよい。
【0091】
図9は、異常検知・制御機能部Fn8に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
図9において、Lch側は、ステップS301において定期通信タイミングとなるまで待機する。すなわち、Rch側との定期通信を行うべきタイミングとなるまで待機するものである。
【0092】
そして、定期通信タイミングに至ったことに応じ、ステップS302にてRch側に定期通知を行う。
この定期通知に応じ、Rch側はステップS401にてLch側に返信を行う。
【0093】
Lch側では、上記ステップS401による返信が行われたか否かを、ステップS303にて判別する。
ステップS303において、上記返信があったとして肯定結果が得られた場合は、先のステップS301に戻る。すなわち、このように返信がない場合にステップS301に戻ることで、Rch側の動作停止状態(異常状態)が検知されるまで待機するループ処理が形成されているものである。
【0094】
ステップS303において、Rch側からの上記返信がないとして否定結果が得られた場合は、ステップS304において、自らをシャットダウンする。これにより、Rch側が動作停止状態にあるとされる場合に対応して、自ch側もオフ状態に移行することができる。
【0095】
図10は、LR同時オフ制御機能部Fn9に対応する処理動作について説明するためのフローチャートである。
図10において、Lch側は、ステップS501において残量確認タイミングとなるまで待機する。ここで言う残量確認タイミングとは、電池残量を確認すべきとして予め定められた所定のタイミングを指すものである。例えば、所定時間ごとのタイミングとすればよい。
【0096】
残量確認タイミングとなったことに応じては、ステップS502において、Rch側に残量通知要求を行う。
当該残量通知要求に応じ、Rch側は、ステップS601にてLch側に電池13rについての残量通知を行う。
【0097】
Lch側では、上記ステップS601による残量通知を、ステップS503にて待機している。そして、当該残量通知があった場合は、ステップS504において、双方とも残量が十分であるか否かを判別する。すなわち、先の電池残量検知機能部Fn3により検知された電池13lの残量と、Rch側から通知された電池13rの残量の双方ともが十分である、すなわち所定の残量以上であるか否かを判別する。
【0098】
ステップS504において、双方とも残量が十分であるとして肯定結果が得られた場合は、先のステップS501に戻る。このようにステップS504にて肯定結果が得られた場合にステップS501に戻るようにされることで、ステップS504にて否定結果が得られる状態、すなわち双方とも残量が十分であるとの条件を満たさない状態となるまで待機するループ処理が形成されるものとなる。
【0099】
ステップS504において、双方とも残量が十分であるとの条件を満たさないとして否定結果が得られた場合は、ステップS505に進み、Rch側にオフ指示(シャットダウン指示)を行う。
そしてその後、ステップS506にてオフ状態に移行する。
【0100】
Rch側では、上記ステップS505で為されたオフ指示に応じ、ステップS602にてオフ状態に移行する。
【0101】
上記のような一連の処理により、何れか一方でも電池残量が不十分とされた場合は、Lch/Rchの双方が同時にオフ状態に移行することになる。
【0102】
図11は、残量確認後同時オン制御機能部Fn10に対応する処理動作について、また図12は残量表示制御機能部Fn11に対応する処理動作についてそれぞれ説明するためのフローチャートである。
なお先の説明からも理解されるように、本例では、残量表示制御機能部Fn11に係る処理は電源オン時に対応して実行するものとしていることから、図12の処理は図11の処理と連続した処理となる。
【0103】
先ず、図11において、Lch側は、ステップS701にてオン操作が行われるまで待機する。すなわち、本例の場合は操作ボタン4Aの押圧が検知されるまで待機する。
ステップS701にてオン操作が行われたとした場合は、ステップS702の残量検知処理として、電池13lの残量検知を行った後、ステップS703においてRch側に残量通知要求を行う。
【0104】
Rch側では、上記ステップS703にて行われた残量通知要求に応じ、ステップS801の残量検知処理として、電池13rの残量検知を行った後、ステップS802にて当該検知した残量をLch側に通知する。
【0105】
ここで、Lch側では、ステップS703による残量通知要求を行った後、ステップS704においてタイムカウントをスタートする。このタイムカウントは、ステップS703による要求を行ってからの経過時間をカウントするために行われる。
【0106】
Lch側では、ステップS704でタイムカウントをスタートした後、ステップS705及びステップS706の処理により、Rch側からの残量通知の受信、又はタイムアウトの何れかの条件が成立するまで待機する。
すなわち、ステップS704においては、Rch側からの残量通知の有無を判別し、Rch側からの残量通知が為されていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS706に進んでタイムアウトであるか否か、つまりステップS704で開始したタイムカウント値が所定値に達したか否かを判別する。そして、当該ステップS706にてタイムアウトではないとして否定結果が得られた場合は、上記ステップS705に戻るようにされる。
【0107】
ここで、ステップS706にてタイムアウトであるとの肯定結果が得られた場合は、Rch側が何らかの異常状態(例えば電池13rの残量が枯渇して返信をできない状態等)にあると推測することができる。
そこで、ステップS706にて肯定結果が得られた場合は、ステップS707に進んでタイムカウントをリセットし、図のように処理動作を終了する。これにより、Rch側が起動不能とされる場合にLch側のみが起動してしまうといった事態の発生を防止でき、左右の動作状態を揃えることができる。
【0108】
一方、上記ステップS705において、Rch側からの残量通知があったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS708に進み、双方とも残量が十分であるか否かを判別する。
ステップS708において、双方とも残量が十分であるとの条件が満たされずに否定結果が得られた場合は、ステップS709に進み、Rch側に対して終了通知を行った後、処理動作を終了する。
【0109】
Rch側では、上記ステップS709によるLch側からの終了通知に応じて、図のように処理動作を終了するようにされる。
【0110】
このように、何れか一方のchの電池残量が不十分であるとされた場合には、双方のchとも起動はしないようにされる。このことで、片ch側のみが起動し他方のchが起動しないという状況に陥ることが効果的に回避され、結果、左右で聴取音に差が生じてユーザに違和感を与えてしまうことがないようにできる。
【0111】
また、ステップS708において、双方とも残量が十分であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS710に進んでRch側にオン指示(起動指示)を行った後、ステップS711にてオン状態に移行する(つまり起動する)処理を実行する。
【0112】
Rch側では、上記ステップS710のオン指示に応じ、ステップS803にてオン状態に移行する処理を実行する。
【0113】
このように、双方のchの残量が十分な場合にのみ、両chが同時に起動することとなる。
【0114】
続いて、図12に示す処理について説明する。
図12において、Rch側は、先のステップS803により起動した後は、ステップS804においてLch側に残量通知要求を行う。
【0115】
Lch側では、このようなRch側からの残量通知要求に応じ、ステップS712においてRch側に残量通知を行う。
【0116】
Rch側では、上記ステップS712によるLch側からの残量通知を、ステップS805にて待機している。
そして、Lch側からの残量通知があった場合は、ステップS806にて残量比較を行った後、ステップS807において、少ない方の残量を表示するための処理を実行する。すなわち、電池13lと電池13rのうち少ない方の残量を表す発光状態が得られるように、LED15の発光動作を制御するものである。
【0117】
なお、残量表示制御について、上記説明では、Lch側が残量をRch側に通知してRch側が少ない方の残量を選択して表示制御を行うものとしたが、逆に、Lch側がRch側からの残量通知を受け、Lch側が少ない方の残量を選択し、その結果をRch側に送信して残量表示制御を実行させるようにすることもできる。
【0118】
<6.まとめ>
上記により説明してきたように、本実施の形態では、ノイズキャンセリング機能の実現のために必要とされる電池13をLch/Rchの双方のハウジング部内に収納するものとしたことで、従来のNCイヤホン装置100のようにコード上ハウジング部103に対して電池ボックス103Aを設ける必要がなくなる。これにより、コード上ハウジング部4を大幅に小型・軽量化でき、当該コード上ハウジング部4の重量によりLch/Rchの出力部3の装着感が損なわれるといった問題を解消することができる。
【0119】
また、本実施の形態のNCイヤホン装置1によれば、Lch/Rchの出力部3を左右対称構造としているので、左右の重量バランスが良く装着感に優れるイヤホン装置を実現できる。
【0120】
また、左右対称構造とすれば、Lch/Rchのハウジング部内の空き容積が同じになるため、音響特性が左右で同じとなり、結果、自然な聞き心地を実現できる。
【0121】
また、電池13の収納位置をコード上ハウジング部以外とする構成としては、電池13をLch/Rchの何れか一方の出力部3のハウジング部に移設する構成も考えられるが、そのような片チャンネル寄せの構成とすると、左右でハウジング部の設計を別々に行わなければならなくなる。これに対し、左右対称構造とすれば、Lch/Rchの出力部3の設計は片チャンネル側のみを行うことで、他方のチャンネル側の設計はこれを反転させればよいものとなり、この点で設計の容易性を格段に増すことができる。
【0122】
また、本実施の形態では、回路基板21(マイクロコンピュータ10)をLch/Rchの出力部3内にそれぞれ収納するものとしている。
このことによると、ノイズキャンセリング処理を実行する回路基板21が、マイクロフォン11と同じハウジング内に収納されることになる。そしてこれによれば、マイクロフォン11−回路基板21間の配線距離は、従来のようにコード上ハウジング部103に回路基板を設ける場合と比較して格段に短くすることができる。
この結果、マイクロフォン11の収音信号に生じるノイズの低減効果が得られる。
また、マイクロフォン11と回路基板21との間の配線から生じる不要輻射の低減効果も得られる。
【0123】
また、本例のNCイヤホン装置1において、従来のように回路基板21をコード上ハウジング部内に形成するものとしてしまうと、当該回路基板21への電力供給のために出力部3内に収納された電池からコード上ハウジング部4まで電力供給配線を延ばさなくてはならず、その分、配線数が増えコード径が大きくなってしまう等の問題がある。
これに対し、回路基板21を出力部3内に収納するものとした本例のNCイヤホン装置1によれば、そのような問題を効果的に回避できる。
【0124】
また、本実施の形態では、音声出力部(出力部3)のハウジング内にノイズキャンセリング処理用のマイクロコンピュータ10をそれぞれ収納した構成において、コード上ハウジング部4に対し、各マイクロコンピュータ10との間でデータ通信を行うための通信用端子Tを設けるものとしている。
このような構成とすることで、音響検査時に通信用端子Tを露出させるにあたって音声出力部のハウジングの一部を分解するという必要がなくなり、実際の使用時と同様の状態で音響検査を行うことができる。この結果、ノイズキャンセリング処理の設定値の調整が適正に行われるようにできる。
【0125】
また、本実施の形態では、Lch側マイクロコンピュータ10lとRch側マイクロコンピュータ10rとがデータ通信可能となるように構成している。このことで、Lch側、Rch側の一方が他方の動作状況を容易に把握することができる。
これにより、Lch側とRch側とが互いの動作状況を把握できずに左右で動作がちぐはぐになるといった不具合の発生を効果的に防止でき、両チャンネルで動作を揃えることができる。
結果、Lch側とRch側とで動作が異なることにより使用者が違和感を感じるといった事態の発生を効果的に防止できる。
【0126】
<7.変形例>
以上、本技術に係る実施の形態について説明したが、本技術としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、電池13がLch/Rchの出力部3内に収納される場合を例示したが、本技術において、電池13はコード上ハウジング部に収納することもできる。
【0127】
また本技術は、イヤホン装置のみでなく、例えばオーバーヘッド型等のヘッドホン装置にも好適に適用することができる。
【0128】
また、本技術は、ノイズキャンセリング方式としてFF方式のみでなく、FB方式を採用する場合にも好適に適用できる。特に、オーバーヘッド型のヘッドホン装置とする場合には、FB方式を好適に適用できる。なおFB方式の場合、マイクロフォン11は使用者の耳との間の空間に生じる音(ドライバユニットが発する音と使用者の耳に漏れ込む外部ノイズ音の双方)を収音できる位置に設置することになる。
【0129】
また、本技術は以下に示す構成とすることも可能である。
(1)
Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部と、
上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部と、
上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部と、
上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部と
を備えると共に、
上記コード上ハウジング部に、
上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられている
音響再生装置。
(2)
上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部のそれぞれに電池が収納されている上記(1)に記載の音響再生装置。
【符号の説明】
【0130】
1 NCイヤホン装置、2 プラグ部、3L Lch出力部、3R Rch出力部、3Lh,3Rh ハウジング、3Lp,3Rp イヤーピース、4 コード上ハウジング部、4A 操作ボタン、4B 開口部、4C オーナメント、Ci 入力側コード、Cl Lch側コード、Cr Rch側コード、10l Lch側マイクロコンピュータ、10r Rch側マイクロコンピュータ、11l,11r マイクロフォン、12l,12r ドライバユニット、13l,13r 電池、14l,14r 充電部、15 LED、20 スリーブ、21 回路基板、30 クレードル、31 パーソナルコンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部と、
上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部と、
上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部と、
上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部と
を備えると共に、
上記コード上ハウジング部に、
上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられている
音響再生装置。
【請求項2】
上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部のそれぞれに電池が収納されている請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項1】
Lチャンネル側音声信号とRチャンネル側音声信号が入力されるプラグ部と、
上記Lチャンネル側音声信号に基づくLチャンネル音を放音するLチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するLチャンネル側マイクロフォンと、上記Lチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うLチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたLチャンネル側ハウジング部と、
上記Rチャンネル側音声信号に基づくRチャンネル音を放音するRチャンネル側ドライバユニットと、外部音を収音するRチャンネル側マイクロフォンと、上記Rチャンネル側マイクロフォンの収音信号に基づくノイズキャンセリング処理についての設定制御を行うRチャンネル側マイクロコンピュータとが少なくとも収納されたRチャンネル側ハウジング部と、
上記プラグ部より入力される信号を上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部に供給するための配線コード上に挿入されるように形成されたコード上ハウジング部と
を備えると共に、
上記コード上ハウジング部に、
上記Lチャンネル側マイクロコンピュータ、及び上記Rチャンネル側マイクロコンピュータと外部装置との間でデータ通信を可能とするための通信用端子が設けられている
音響再生装置。
【請求項2】
上記Lチャンネル側ハウジング部、上記Rチャンネル側ハウジング部のそれぞれに電池が収納されている請求項1に記載の音響再生装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【公開番号】特開2013−51625(P2013−51625A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189553(P2011−189553)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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