説明

音響再生装置

【課題】本発明は、不特定多数の人物に対し、騒音感を低減でき、かつ広告への注目を喚起できる音響再生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】音響再生装置は、ディスプレイ11に設けたパラメトリックスピーカ13と、ディスプレイ11に設けた、パラメトリックスピーカ13より指向性の広いスピーカ27と、パラメトリックスピーカ13の方向を可変するための駆動部15と、ディスプレイ11に設けた人感センサ25と、パラメトリックスピーカ13、スピーカ27、及び人感センサ25と電気的に接続される制御部19と、を備え、制御部19は、人感センサ25の出力により得られる、ディスプレイ11の前の人物の数に応じて、駆動部15によりパラメトリックスピーカ13の方向を可変して音響情報を再生する制御と、スピーカ27の音響情報を再生する制御とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラメトリックスピーカを用いた音響再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の画像表示により広告を行うディスプレイ装置が開発されている。このようなディスプレイ装置では動画による広告が可能となるので、広告への注目度が高まる。この際に、音声や音楽、効果音等の音響情報を再生することで、さらに広告の注目度を高めることができる。しかし、前記音響情報の再生は、通行人にとって騒音と感じる場合がある。
【0003】
これに対し、従来、前記音響情報に指向性を持たせる超指向性スピーカ(パラメトリックスピーカとも呼ばれる)を用いて、前記音声情報を特定の対象者にのみ伝達する音響再生装置としての音声出力制御装置が提案されており、そのうちの一つに、特許文献1に記載されているものがある。その音声出力制御装置の斜視図を図5に示す。
【0004】
広告の画像を表示する表示装置101は、例えば液晶表示パネル等のフラットパネルディスプレイで構成される表示パネル103を備える。表示装置101の上端部には超指向性スピーカ105とカメラ107が取り付けられている。尚、超指向性スピーカ105はスピーカ台座109により支持される。スピーカ台座109は図示しないモータを備え、図5の矢印に示すように、水平方向、及び垂直方向に超指向性スピーカ105の音声出力方向を変更する。また、表示装置101、超指向性スピーカ105、カメラ107、及びスピーカ台座109は、図示しない制御装置に接続されている。
【0005】
前記制御装置は、カメラ107の撮影画像に写っている人物を対象者として検出する。そして、スピーカ台座109により、超指向性スピーカ105の音声出力方向が対象者に向くように調整し、超指向性スピーカ105から音声を出力する。その結果、広告を視認できる範囲の人に対し、超指向性スピーカ105を用いた音声出力によって広告への注目を喚起できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−39094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記図5のような音声出力制御装置においては、カメラ107が撮影した対象者に向かって超指向性スピーカ105から指向性の鋭い音声を出力するので、特定の対象者にのみ、音声による広告への注目を喚起することができる。従って、通行人が騒音と感じる可能性を低減できる。しかし、特定の対象者以外の通行人に対しては、指向性が鋭いため音声が届かない場合があり、広告への注目喚起が十分に図れないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、不特定多数の人物に対し、騒音と感じる可能性を低減でき、かつ広告への注目を喚起できる音響再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の音響再生装置は、ディスプレイに設けたパラメトリックスピーカと、前記ディスプレイに設けた、前記パラメトリックスピーカより指向性の広いスピーカと、前記パラメトリックスピーカの方向を可変するための駆動部と、前記ディスプレイに設けた人感センサと、前記パラメトリックスピーカ、スピーカ、及び人感センサと電気的に接続される制御部と、を備え、前記制御部は、前記人感センサの出力により得られる、前記ディスプレイの前の人物の数に応じて、前記駆動部により前記パラメトリックスピーカの方向を可変して音響情報を再生する制御と、前記スピーカの音響情報を再生する制御とを切り替えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の音響再生装置によれば、人感センサの出力により得られる、ディスプレイの前の人物の数に応じて、パラメトリックスピーカとスピーカを切り替えて音響情報を再生する。これにより、人物の数が少なければ駆動部によりパラメトリックスピーカの方向を前記人物に向けて、音響情報をパラメトリックスピーカから前記人物に届けることができる。その結果、前記人物に対する広告への注目喚起が可能になるとともに、ディスプレイから離れた不特定多数の人物には、前記音響情報が聞こえにくいため、騒音と感じる可能性を低減できる。更に、前記人物の数が多ければ、スピーカから前記音響情報を再生する。その結果、ディスプレイの前にいる複数の人物全員に前記音響情報を届けることができ、広告への注目を喚起することが可能となる。従って、不特定多数の人物に対し、騒音と感じる可能性を低減でき、かつ広告への注目喚起が可能な音響再生装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1、2における音響再生装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態3における音響再生装置の構成図
【図3】本発明の実施の形態4における音響再生装置の構成図
【図4】本発明の実施の形態5における音響再生装置の構成図
【図5】従来の音声出力制御装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における音響再生装置の構成図である。
【0014】
図1において、ディスプレイ11は自発光式やバックライト式のフラットパネルディスプレイであり、広告内容を静的、または動的に表示する。従って、ディスプレイ11は光源を備えるので、視覚的な注目喚起が向上する。このディスプレイ11は不特定多数の通行人に対し更に注目を喚起するために、例えば店頭や通路の壁面に設置される。
【0015】
ディスプレイ11にはパラメトリックスピーカ13が設けられている。
【0016】
本発明の音響再生装置に用いているパラメトリックスピーカ13は、可聴音の音圧が、パラメトリックスピーカ13の位置から音軸方向に所定の距離でピークを有する特性を持ち、かつ超音波を搬送波として用いるものである。即ち、可聴音成分を超音波に重畳して放射すると、空気の弾性特性の非線形性の影響を受けるために、空気中を進むにつれて搬送波である超音波の波形が歪む。それと共に、周波数の高い超音波成分から減衰する。従って、超音波に対して低い周波数で、超音波に重畳されている可聴音成分が再生されてくる。この際、一般に音波の周波数が高いほど音軸から拡がることなく伝播するので、放射角は小さくなり指向性は高くなる。そのため、可聴音よりも周波数の高い超音波を搬送波として用いているパラメトリックスピーカ13が放射する音波の指向性は高く、空気の非線形特性の影響を受けて超音波の伝播の過程で生成される可聴音の指向性も高くなる。ここで、パラメトリックスピーカ13における可聴音の音圧がピークを持つ前記所定の距離のことを、以下、音圧ピーク距離と呼ぶ。尚、前記音圧ピーク距離には、誤差分のマージンを含むものとする。
【0017】
パラメトリックスピーカ13はモータを内蔵した駆動部15と機械的に接続される。従って、パラメトリックスピーカ13は駆動部15を介してディスプレイ11に設けられる。尚、以下の説明では、パラメトリックスピーカ13と駆動部15を合わせてパラメトリックスピーカユニット17と呼ぶ。
【0018】
駆動部15は制御部19と電気的に接続される。そして、制御部19からの制御信号に応じて、駆動部15はパラメトリックスピーカ13を図1の太矢印の方向、即ち、駆動部15を固定点としてディスプレイ11の上下方向、及び左右方向に動かすことができる構成としている。これにより、パラメトリックスピーカ13が放射する音波の方向、即ち、音軸の方向を、駆動部15の駆動可能範囲において任意に変えることができるので、特定の人物に音響情報を届けることができる。なお、以下の説明でパラメトリックスピーカ13の方向と記載した場合は、その音軸の方向のことであると定義する。
【0019】
ここで、駆動部15の駆動可能範囲は次のように決定した。即ち、本実施の形態1では図1の左右方向矢印の角度範囲を180度として、ディスプレイ11より左右方向の手前全体をカバーするようにした。また、上下方向矢印の角度範囲は、パラメトリックスピーカユニット17自体をディスプレイ11に対し下向きに10度傾けて固定した状態から、30度の範囲とした。これにより、ディスプレイ11の前を通る通行人の身長差をカバーするようにしている。尚、上記した駆動可能範囲は一例であり、これらの数値に限定されるものではなく、ディスプレイ11の取り付け位置やサイズ、設置環境、さらにパラメトリックスピーカ13の可聴音における前記音圧ピーク距離等に基づいて、パラメトリックスピーカ13から再生される音を伝達したい範囲を適宜決定すれば良い。
【0020】
制御部19は、駆動部15を制御する以外に、広告データ21を内蔵し、広告データ21の画像信号をディスプレイ11に出力すると共に、広告データ21の音響信号をパラメトリックスピーカ駆動回路23に出力する機能を有する。尚、広告データ21は、例えば制御部19に内蔵された記憶媒体に予め記憶しておいても良いし、通信機能により外部から受信するようにしても良い。
【0021】
パラメトリックスピーカ駆動回路23は、広告データ21の音響信号である可聴音成分を超音波に重畳してパラメトリックスピーカ13に出力する構成を有する。これにより、パラメトリックスピーカ13は指向性の鋭い音響情報を放射する。
【0022】
ディスプレイ11には、更に人感センサ25が設けられる。人感センサ25は人物を検出するために用いられ、焦電センサやカメラ等を適用することができる。本実施の形態1では人感センサ25としてカメラを用いた。尚、人感センサ25による撮像範囲が、駆動部15の駆動可能範囲より広くなるように、人感センサ25には広角レンズ(図示せず)が備えられる。これにより、パラメトリックスピーカ13の音が届く範囲を人感センサ25が撮像できる。また、人感センサ25は制御部19と電気的に接続されており、人感センサ25の出力(撮像信号)は制御部19に取り込まれる。
【0023】
また、ディスプレイ11には、更にスピーカ27が設けられる。ここで、スピーカ27はパラメトリックスピーカ13よりも指向性が広い特性を有するもので、本実施の形態1では一般にダイナミックスピーカと呼ばれるものを用いている。スピーカ27は、図1に示すように、ディスプレイ11の右側に設けられている。また、スピーカ27はスピーカ駆動回路29と電気的に接続される。更に、スピーカ駆動回路29は制御部19と電気的に接続される。従って、制御部19に内蔵された広告データ21の音響信号がスピーカ駆動回路29に入力される。そして、スピーカ駆動回路29はスピーカ27に対し、前記音響信号を増幅して出力する。
【0024】
次に、このような音響再生装置の動作について説明する。
【0025】
まず、音響再生装置の基本動作から述べる。制御部19は、広告データ21の画像信号をディスプレイ11に出力する。これにより、広告の画像情報がディスプレイ11に表示される。この画像情報は、静止画や、静止画の切替表示、動画などであり、特に限定されるものではなく、これらの組合せでも良い。
【0026】
次に、制御部19は人感センサ25から出力される前記撮像信号により、ディスプレイ11の前にいる人物の数を検出する。尚、前記撮像信号からの人物検出は、例えばデジタルカメラ等で採用されている人物認識機能の適用により実現できる。
【0027】
また、ディスプレイ11の前とは、駆動部15の駆動可能範囲において、パラメトリックスピーカ13の位置を中心とした音圧ピーク距離(誤差分のマージンを含む)までの範囲内であると定義する。この音圧ピーク距離はパラメトリックスピーカ13の仕様により既知である。本実施の形態1では、前記音圧ピーク距離を2mとした。
【0028】
一方、パラメトリックスピーカ13と人感センサ25との距離は既知である。また、人感センサ25が出力する前記撮像信号から、検出された前記人物までの距離(撮像された前記人物の画像に対する合焦処理を行うことで求める)と、人感センサ25の中心から前記人物までの角度がわかる。これらの距離と角度から、制御部19は前記人物とパラメトリックスピーカ13との距離を求める。
【0029】
そして、制御部19は、求められた距離と、前記音圧ピーク距離とを比較することで、ディスプレイ11の前に前記人物が何人いるかを検出する。従って、パラメトリックスピーカ13の再生する可聴音が聞こえにくい位置はディスプレイ11の前ではないことになり、その位置にいる人物はカウントされない。
【0030】
次に、制御部19が検出したディスプレイ11の前にいる前記人物の数が1人であり、パラメトリックスピーカ13の数と同じであった場合について述べる。この場合、制御部19は、駆動部15によりパラメトリックスピーカ13の方向を前記人物に向けるように可変し、広告データ21の前記音響情報をパラメトリックスピーカ駆動回路23に出力する。なお、前記音響信号は可聴音成分を含み、例えば上記したように音声、効果音、音楽などであるが、特に限定されるものではなく、これらの組合せでも良い。
【0031】
パラメトリックスピーカ駆動回路23は、前記音響情報の可聴音成分を超音波に重畳してパラメトリックスピーカ13に出力する。その結果、パラメトリックスピーカ13は前記人物に対してのみ前記音響情報を再生する。これにより、前記人物に対する広告への注目喚起が可能になるとともに、ディスプレイ11から離れた位置にいる不特定多数の人物には、前記音響情報が聞こえにくいため、騒音と感じる可能性を低減できる。
【0032】
その後、制御部19は、人感センサ25からの出力により、上記した方法でディスプレイ11の前にいる前記人物とパラメトリックスピーカ13との距離を求める動作を継続する。そして、前記人物がディスプレイ11に対し所定距離まで近づいたことを検出すると、スピーカ27から音響情報を再生するように切り替える。これは、次の理由による。
【0033】
上記したように、パラメトリックスピーカ13が再生する可聴音の音圧は、前記音圧ピーク距離を有する特性を持つ。従って、前記人物が前記音圧ピーク距離よりもパラメトリックスピーカ13に近づくと、可聴音の音圧が低下し、前記人物に対しても前記音響情報が聞こえにくくなる。そこで、制御部19は、前記人物がディスプレイ11に対し所定距離まで近づいたことを検出すると、スピーカ27からの音響情報の再生に切り替える。この際、スピーカ27は、ディスプレイ11の前の範囲、即ち、パラメトリックスピーカ13から2mの範囲まで聞こえる音量に予め設定されている。従って、スピーカ27からの前記音響情報の再生が行われても、ディスプレイ11から離れた位置にいる不特定多数の人物には、前記音響情報が聞こえにくいため、騒音と感じる可能性を低減できる。
【0034】
このような動作により、広告に興味を持った前記人物に対し、前記音響情報を継続して聞かせることができ、広告への注目喚起を更に高めることが可能となる。なお、前記所定距離とは、前記音響情報の再生をパラメトリックスピーカ13からスピーカ27に切り替える距離のことで、本実施の形態1では前記所定距離を1mとした。
【0035】
これらの動作をまとめると、ディスプレイ11の前と定義した位置(パラメトリックスピーカ13の音圧ピーク距離である2mの位置)に前記人物がいると、制御部19はそれを検出し、まずパラメトリックスピーカ13の方向を前記人物に向け、パラメトリックスピーカ13から前記音響情報の再生を行う。次に、前記人物が所定距離(1m)まで近づくと、制御部19はそれを検出し、スピーカ27からの前記音響情報の再生に切り替える。
【0036】
なお、前記人物がディスプレイ11に近づいた後、離れると、上記と逆の動作を行う。即ち、前記人物が前記所定距離より遠くへ離れれば、前記制御部19はそれを検出し、スピーカ27からの前記音響情報の再生から、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報の再生に切り替える。この時、制御部19はパラメトリックスピーカ13の方向を前記人物に向ける。これにより、前記人物がディスプレイ11から離れても、前記音圧ピーク距離までは前記音響情報を届け続ける。その結果、主に前記音響情報による広告を前記人物に対して継続できる。
【0037】
次に、制御部19が検出したディスプレイ11の前にいる人物の数が2人以上であり、パラメトリックスピーカ13の数より多い場合について述べる。この場合、制御部19は、パラメトリックスピーカ13からの前記音響再生を行わず、スピーカ27からの前記音響再生を行なうように制御する。この際、上記したように、スピーカ27は、ディスプレイ11の前の範囲まで聞こえる音量に予め設定されている。従って、スピーカ27からの前記音響情報の再生が行われると、ディスプレイ11の周りにいる2人以上の前記人物には全員に前記音響情報が届くとともに、ディスプレイ11から離れた位置にいる不特定多数の人物には、前記音響情報が聞こえにくいため、騒音と感じる可能性を低減できる。
【0038】
なお、前記人物の数が1人であり、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報の再生を行っている際に、制御部19が人感センサ25からの出力により、ディスプレイ11の前の範囲に、更に別の人物が来たことを検出する場合がある。これに対し、制御部19は、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多いと判断した時点で、パラメトリックスピーカ13から、スピーカ27へ切り替えて前記音響情報を再生する制御を行なう。従って、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報が聞こえていた最初の前記人物には、引き続きスピーカ27から前記音響情報が聞こえる。更に、後から来た人物に対しては、初めからスピーカ27の前記音響情報が聞こえる。従って、最初の人物と、後から来た人物の両方に対して、状況に応じた最適な前記音響情報の再生が行え、広告への注目喚起が図れる。
【0039】
尚、ここでは制御部19がパラメトリックスピーカ13からスピーカ27へ切り替えて、引き続き前記人物に前記音響情報を聞かせるために、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27とが再生する前記音響情報は同じものとしている。しかし、前記音響情報は同じものに限定されるものではなく、制御部19は、異なる音響情報をパラメトリックスピーカ13とスピーカ27とから、それぞれ再生するようにしても良い。この場合、前記人物がパラメトリックスピーカ13の再生する前記音響情報によりディスプレイ11の広告に興味を持ち、ディスプレイ11に近づくと、スピーカ27から異なる音響情報が聞こえるため、前記人物に対する広告への注目喚起が更に高まる。この際、制御部19の広告データ21は、パラメトリックスピーカ13の再生する前記音響情報が広告の商品名やキャッチフレーズなど比較的短い音響情報であり、スピーカ27から再生される前記音響情報が広告の詳細情報であるように構成されることで、前記人物に対して広告内容の注目喚起を向上できる。
【0040】
次に、ディスプレイ11の前から前記人物が全員立ち去った場合について述べる。制御部19は、人感センサ25からの出力により、人物を検出していない状態となれば、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27の両方における前記音響情報の再生を停止する。そして、パラメトリックスピーカ13による前記音響情報の再生時には、駆動部15を停止するように制御する。これにより、誰もいない状態における前記音響情報の再生を停止するので、省電力化が図れるという効果が得られる。この際、ディスプレイ11の前記画像情報の表示も併せて消すようにしても良い。この場合、更なる省電力化が図れる。
【0041】
次に、制御部19が、前記音響情報の再生を停止している際に、人感センサ25からの出力により、人物がディスプレイ11の前(前記音圧ピーク距離)まで近づいたことを検出すると、制御部19はパラメトリックスピーカ13の方向を前記人物に向けるように駆動部15を制御する。そして、制御部19は、前記音響情報をパラメトリックスピーカ13から再生する制御を開始する。この時、ディスプレイ11の前記画像情報の表示が消えていた場合は、制御部19は再び前記画像情報を表示する。以後の動作は上記したとおりである。
【0042】
尚、この際に制御部19は、パラメトリックスピーカ13の音量が所定音量になるまで徐々に大きくするようにして前記音響情報を再生するように制御する。これにより、前記人物が突然、前記音響情報を聞くことにより驚く可能性を低減できる。なお、前記所定音量は前記音圧ピーク距離にて前記人物が十分に前記音響情報を聞くことができる音量として予め決定され、制御部19のメモリ(図示せず)に記憶してある。
【0043】
但し、制御部19による、パラメトリックスピーカ13の音量が前記所定音量になるまで徐々に大きくするようにして前記音響情報を再生する制御は、それに限定されるものではない。即ち、例えばディスプレイ11の設置場所における周囲音が大きく、最初から前記所定音量で前記音響情報を再生しても前記人物が驚かない場合は、パラメトリックスピーカ13の音量を徐々に大きくする制御を行なわなくても良い。
【0044】
以上の構成、動作により、制御部19は、人感センサ25の出力により得られる、ディスプレイ11の前の人物の数に応じて、駆動部15によりパラメトリックスピーカ13の方向を可変して音響情報を再生する制御と、スピーカ27の音響情報を再生する制御とを切り替える。これにより、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を低減でき、かつディスプレイ11の前にいる前記人物の広告への注目喚起が可能な音響再生装置を実現できる。
【0045】
尚、本実施の形態1では、制御部19は、パラメトリックスピーカ13からの音響再生とスピーカ27からの音響再生とを、ディスプレイ11の前の人物の数や、ディスプレイ11と前記人物との距離に応じて切り替える構成としている。これに対し、制御部19は音圧ピーク距離までの範囲に聞こえる音量でスピーカ27から前記音響情報を常時再生し、人感センサ25が人物を検出した場合に、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報も再生するように切り替え制御するようにしても良い。このように制御する理由は次の通りである。
【0046】
上記したように、パラメトリックスピーカ13の音圧は、パラメトリックスピーカ13の音軸方向に対し、前記音圧ピーク距離までは徐々に大きくなり、前記音圧ピーク距離から遠くなるほど小さくなる特性を有する。一方、スピーカ27(ダイナミックスピーカ)の音圧は、音軸方向に対し距離が遠くなるほど単調に小さくなる。従って、前記音圧ピーク距離までの範囲に聞こえる音量でスピーカ27から前記音響情報を再生すると、前記音圧ピーク距離では音圧が低くなる。これにより、不特定多数の人物に騒音感を与える可能性は低減されるものの、例えば周囲音が大きい環境にディスプレイ11が設置される場合、前記人物に前記音響情報を十分に伝えられなくなる可能性がある。そこで、制御部19が前記人物の検出時にパラメトリックスピーカ13からの前記音響情報の再生を併用するように切り替えることで、前記音圧ピーク距離にいる人物に対しては、前記音響情報の音量をアシストして届けることができる。このような制御とすることによっても、騒音感の低減と、広告への注目喚起が可能な音響再生装置を実現できる。
【0047】
ゆえに、制御部19による、パラメトリックスピーカ13からの前記音響再生、およびスピーカ27からの前記音響再生は、完全に切り替えられる制御でも良いし、スピーカ27から前記音響情報が常時再生され、前記人物が検出された時にパラメトリックスピーカ13からの前記音響情報が再生されて、その伝達をアシストするように切り替えられる制御としても良い。
【0048】
また、本実施の形態1で述べた以下の構成、動作については、任意に選択したり、組み合わせるようにしても良い。
【0049】
1)駆動部15において、パラメトリックスピーカ13の方向を上下左右に可変する構成
これは、上記したように上下方向の駆動可能範囲が左右方向に対して小さいので、ディスプレイ11の設置場所によっては、上下方向を手動で調整して固定する構成としても良いし、予め決められた角度に固定される構成としても良い。これにより、駆動部15の構成が簡単になるという効果が得られる。従って、駆動部15は上下左右への駆動可能な構成に限定されるものではない。
【0050】
2)制御部19において、人感センサ25からの出力により、前記人物を検出していなければ、制御部19が前記音響情報の再生を停止するとともに、駆動部15を停止する制御
これは、ディスプレイ11が通行人の多い壁面等に設置されるなど、人感センサ25の出力による前記人物の検出が途切れても、すぐに次の人物を検出する場合、例えば通行人の多い時間帯では、人物検出がなされなくても前記音響情報を再生し続けるように制御部19が制御するようにしても良い。これにより、制御部19の制御が前記時間帯では簡易になるという効果が得られる。従って、制御部19の人物非検出時における前記音響情報の再生停止制御に限定されるものではない。
【0051】
3)制御部19において、人感センサ25からの出力により、前記人物がディスプレイ11に対し前記所定距離まで近づいたことを検出すると、スピーカ27からの前記音響情報を再生する制御
これは、ディスプレイ11の内容が特段の音響情報による再生を必要としないものであれば、前記人物が前記所定距離まで近づいてもスピーカ27からの前記音響情報の再生に切り替える制御を特に行なわなくても良い。この場合、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報の再生は、前記人物に対するディスプレイ11への注目喚起が目的となる。これにより、制御部19の制御が簡易化されるという効果が得られる。尚、上記したように前記人物の数が多い際に、パラメトリックスピーカ13からスピーカ27へ前記音響情報の再生を切り替える場合や、不特定多数の人物に騒音感を感じさせずに、かつ、ディスプレイ11の前の前記人物に聞こえる音量でスピーカ27から前記音響情報を常時再生する場合が想定されるため、スピーカ27は必要である。
【0052】
4)制御部19において、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多いと、パラメトリックスピーカ13から、スピーカ27へ切り替えて前記音響情報を再生する制御
この制御は、上記したようにスピーカ27から前記音響情報を常時再生する場合は不要となる。これにより、制御部19の制御が簡易化されるという効果が得られる。但し、スピーカ27からの前記音響情報が常時再生されるため、省電力化の観点からは、常時再生を行わず、上記3)、4)の制御を行なう方が良い。従って、周囲音の環境や省電力などの状況に応じて適宜最適な制御を選択すれば良い。
【0053】
また、本実施の形態1では、ディスプレイ11として光源を備えたフラットパネルディスプレイを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばショウウインドウに展示される商品そのものやポスター、看板等をディスプレイ11として用いても良い。この場合は広告データ21の前記画像信号が不要となる。そして、商品そのものや、ポスター、看板の文字、写真、絵等の広告に対して、騒音感を低減しつつ、前記人物の注目を喚起することが可能となる。更に、前記フラットパネルディスプレイを用いる場合であっても、透過式や反射式等の、いわゆる電子ペーパをディスプレイ11として用いても良い。この場合、光源を持たないため、視覚的な注目喚起については不十分な場合があるが、軽量で曲げられるものもあるため、設置自由度が高いという特長がある。従って、ディスプレイ11の設置環境に応じて、適宜最適なディスプレイ11を選択すればよい。
【0054】
また、本実施の形態1では、駆動部15と人感センサ25をディスプレイ11の上部に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、ディスプレイ11の左部、右部、あるいは下部に設けても良いし、それぞれ別の部分に設けても良い。さらに、ディスプレイ11の近傍であれば若干離れた位置にパラメトリックスピーカユニット17と人感センサ25を設けても良い。これらによっても、上部に固定した場合と同様に、騒音感の低減と広告への注目喚起が可能となる。但し、ディスプレイ11から離れすぎると、パラメトリックスピーカ13からの音の方向とディスプレイ11の位置にずれが生じるので、広告への注目喚起効果が低減する。従って、パラメトリックスピーカユニット17と人感センサ25をディスプレイ11から離して設ける場合も、できるだけディスプレイ11の近傍に設ける構成が望ましい。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態2における音響再生装置の構成は、実施の形態1の図1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0056】
即ち、本実施の形態2における特徴は、図1の音響再生装置における基本となる動作、即ち、人感センサ25の出力により得られる、ディスプレイ11の前の前記人物の数に応じて、制御部19が駆動部15によりパラメトリックスピーカ13の方向を可変して前記音響情報を再生する制御と、スピーカ27の前記音響情報を再生する制御とを切り替える動作に対し、以下の動作を付加した点である。
【0057】
5)制御部19は、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数以下の場合、前記人物に追従して駆動部15を制御し、前記音響情報を再生する動作
6)制御部19は、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多い場合、任意の前記人物に追従して駆動部15を制御するとともに所定の前記音響情報を再生し、前記音響情報の再生後に別の前記人物に追従して駆動部15を制御するとともに所定の前記音響情報を再生する一連の動作を繰り返し行う
7)上記6)の動作において、制御部19は、人感センサ25からの出力により、ディスプレイ11に最も近い前記人物を優先して検出する動作
8)制御部19は、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多い場合、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27とから同時に前記音響情報を再生するように切り替えて制御する動作
9)上記8)において、制御部19は、スピーカ27の音量を大きくし、パラメトリックスピーカ13の音量を小さくするように切り替えて制御する動作
次に、上記5)から9)の動作の詳細な説明と、それにより得られる効果について、以下、説明する。
【0058】
まず、上記5)の動作を付加した場合について述べる。本実施の形態2では音響再生装置の構成が図1と同じであるので、パラメトリックスピーカ13の数は1個である。従って、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数以下の場合とは、前記人物の数が1人の場合に相当する。この際に、制御部19は、人感センサ25から得られる出力を画像処理することにより、前記人物の方向を求め、パラメトリックスピーカ13がその方向を向くように駆動部15を制御する。ここで、前記人物が移動している場合、制御部19は人感センサ25の出力により移動を検出し、それに追従して駆動部15を制御する。それと同時に、制御部19はパラメトリックスピーカ13から前記音響情報を再生する。その結果、前記人物がディスプレイ11の前を移動していても、前記人物にはパラメトリックスピーカ13からの前記音響情報が聞こえ続ける。その結果、前記人物に対する広告への注目喚起を高めることが可能となる。更に、制御部19は、前記人物に追従してパラメトリックスピーカ13から前記音響情報を再生するので、前記音響情報が前記人物にのみ聞こえる。従って、ディスプレイ11から離れた場所の不特定多数の人物に対しては、騒音感を低減することが可能となる。
【0059】
次に、上記6)の動作を付加した場合について述べる。上記したように、パラメトリックスピーカ13の数は1個であるので、人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多い場合とは、前記人物の数が2人以上の場合に相当する。この際に、制御部19は、人感センサ25から得られる出力を画像処理することにより、任意の前記人物を選択し、その人物の方向を求め、パラメトリックスピーカ13がその方向を向くように駆動部15を追従制御する。それと同時に、制御部19はパラメトリックスピーカ13から所定の前記音響情報を再生する。ここで、所定の前記音響情報とは、広告対象の商品名やキャッチフレーズ等であり、予め広告データ21に記憶してある。
【0060】
制御部19は所定の前記音響情報を再生し終わると、その後、人感センサ25の出力を画像処理した結果から、選択した前記人物とは別の人物を改めて選択する。そして、制御部19は、その人物に追従して駆動部15を制御し、パラメトリックスピーカ13から所定の前記音響情報を再生する。
【0061】
制御部19は上記のような一連の動作を繰り返す。その結果、選択された任意の人物に順番に所定の前記音響情報を聞かせることができる。ここで、所定の前記音響情報を次々と前記人物に聞かせるためには、所定の前記音響情報の再生が短時間で終わる必要がある。従って、上記したように所定の前記音響情報は商品名やキャッチフレーズ等としている。
【0062】
このように動作することにより、上記5)の効果に加え、できるだけ多くの人物にパラメトリックスピーカ13から前記音響情報を届けることができるので、更に広告への注目喚起を向上することができる。
【0063】
ここで、制御部19は、上記7)の動作、即ち、制御部19による人感センサ25からの出力の画像処理で、ディスプレイ11に最も近い前記人物を優先して検出する動作を同時に行っている。これにより、人感センサ25が多数の前記人物を検出した場合、ディスプレイ11の広告を最も見やすい前記人物から優先して、パラメトリックスピーカ13による所定の前記音響情報を再生するので、更に広告への注目喚起を高めることができる。
【0064】
尚、実施の形態1で述べたように、パラメトリックスピーカ13の音圧特性は、前記音圧ピーク距離を持つ。従って、前記人物がディスプレイ11の直近まで接近している場合のように、前記音圧ピーク距離より短い距離までパラメトリックスピーカ13に近づいている前記人物に対しては、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報が十分に届かない。また、この人物にはスピーカ27からの前記音響情報が届く。従って、制御部19が優先して検出する、ディスプレイ11に最も近い前記人物とは、ディスプレイ11に最も近く、かつ、前記音圧ピーク距離近傍に位置する人物であると定義する。
【0065】
また、制御部19は、上記7)の動作を行わず、上記6)の動作のみを行うようにしても良い。これは、例えば通行人が多い場所にディスプレイ11を設置した場合のように、優先順位を付けにくい際に、上記6)のみの動作を適用すれば良い。この場合、検出された前記人物の優先順位を付ける必要がない分、制御部19の制御が簡単になる。
【0066】
次に、上記8)の動作を付加した場合について述べる。人感センサ25からの出力により得られた前記人物の数が、パラメトリックスピーカ13の数より多い場合、即ち、ここでは前記人物の数が2人以上の場合、制御部19は、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27とから同時に前記音響情報を再生するように切り替えて制御する。即ち、上記6)、7)で説明したように、パラメトリックスピーカ13が、検出された任意の前記人物に対して所定の前記音響情報を再生する動作に加え、スピーカ27からも前記音響情報を再生する。これにより、所定の前記音響情報を聞いて広告に興味を持った前記人物に対しては、スピーカ27からの前記音響情報が継続して聞こえる。従って、広告の注目喚起を更に高めることができる。
【0067】
尚、パラメトリックスピーカ13から再生される前記音響情報と、スピーカ27から再生される前記音響情報は同じであっても異なっていても良い。同じである場合は、パラメトリックスピーカ13が他の人物に対し所定の前記音響情報を再生している間も、スピーカ27から所定の前記音響情報が繰り返し聞こえるので、前記人物に対し広告への印象を深めることができる。また、異なる場合は、例えばスピーカ27から広告の詳細な説明を行う前記音響情報を再生することで、ディスプレイ11に興味を持った前記人物に対し、広告への更なる注目喚起を図ることができる。
【0068】
ここで、制御部19は、上記9)の動作、即ち、制御部19が、スピーカ27の音量を大きくし、パラメトリックスピーカ13の音量を小さくするように切り替えて制御する動作を同時に行っている。これにより、ディスプレイ11の前に多数の前記人物がいる場合、パラメトリックスピーカ13による前記人物への広告の注目喚起を行いつつも、その音量を小さくし、多数の前記人物に聞こえるようにスピーカ27の音量を大きくすることで、広告への注目喚起の効率を高めることができる。
【0069】
尚、制御部19は、上記9)の動作を行わず、上記8)の動作のみを行うようにしても良い。これは、例えば通行人が少なく、スピーカ27の音量を大きくしなくても前記人物に十分聞こえる場合に、上記9)の動作を行わず、上記8)の動作のみを行う制御を適用すれば良い。これにより、不要な騒音感をディスプレイ11から離れた不特定多数の人物に与える可能性が低減される。
【0070】
以上の構成、動作により、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を更に低減できるとともに、ディスプレイ11の前にいる前記人物の広告への更なる注目喚起が可能な音響再生装置を実現できる。
【0071】
尚、本実施の形態2では、制御部19は、上記5)〜9)の動作を同時に行っているが、この内、5)、6)、8)の動作については、上記したように音響再生装置の設置環境や広告内容等に応じて、それぞれ任意に選択しても良いし、任意に組合せてもよい。これにより、不要な動作を行うことなく、騒音感の低減と広告への注目喚起が図れる。
【0072】
(実施の形態3)
図2は、本発明の実施の形態3における音響再生装置の構成図である。尚、図2において、図1と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
即ち、本実施の形態3における特徴となる構成は、図2に示すように、パラメトリックスピーカ13と駆動部15と、からなるパラメトリックスピーカユニット17を、ディスプレイ11に複数設けた点である。尚、本実施の形態3では、パラメトリックスピーカユニット17を2個設けている。それ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0074】
ここで、本実施の形態3においては、各パラメトリックスピーカ13には1つのパラメトリックスピーカ駆動回路23が電気的に接続される。従って、各パラメトリックスピーカ13からは、同じ前記音響情報が再生される構成としている。
【0075】
次に、このような音響再生装置の動作について、実施の形態1、2と異なる点について説明する。
【0076】
まず、基本的な動作において、本実施の形態3では駆動部15が2個設けられた構成であるので、制御部19は、人感センサ25の出力により得られる、ディスプレイ11の前の前記人物の数が2人であれば、それぞれの駆動部15により各パラメトリックスピーカ13の方向を可変して前記音響情報を再生する制御を行なう。これにより、2名の前記人物にそれぞれパラメトリックスピーカ13からの前記音響情報を同時に届けることができるので、実施の形態1、2に比べ、広告への注目喚起の効率を向上することが可能となる。
【0077】
ここで、人感センサ25で検出された前記人物が2名の場合、2個のパラメトリックスピーカ13を、それぞれどの前記人物に向けるか、については、制御部19が求めた各パラメトリックスピーカ13と前記各人物との距離に基づいて決定される。即ち、上記したようにパラメトリックスピーカ13は前記音圧ピーク距離を有するので、制御部19は、2名の前記人物の内、前記音圧ピーク距離に近い方の前記人物に、それぞれのパラメトリックスピーカ13の方向を向けるように制御する。尚、各パラメトリックスピーカ13と前記各人物との距離は、実施の形態1で述べたように人感センサ25の出力から制御部19により計算される。このような動作により、2名の前記各人物には、2個のパラメトリックスピーカ13の内、音圧が高い方から前記音響情報が届けられるので、前記各人物は、より明瞭に前記音響情報を聞くことができる。
【0078】
次に、人感センサ25で検出された前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より少ない場合、即ち、ここでは前記人物が1人の場合について述べる。前記人物が1人であれば、制御部19は、2個のパラメトリックスピーカ13の内、できるだけ前記音圧ピーク距離に近い方のパラメトリックスピーカ13の方向を前記人物に向け、そのパラメトリックスピーカ13からのみ前記音響情報の再生を行う。これにより、前記人物に対し、より明瞭な前記音響情報を届けることができる。そして、制御部19は、他方のパラメトリックスピーカ13からの前記音響再生を停止する。これにより、必要なパラメトリックスピーカ13のみを駆動するので、省電力化も図れる。
【0079】
尚、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より少ない場合(ここでは前記人物が1人の場合)についての動作は、必要なパラメトリックスピーカ13のみを駆動する動作に限定されるものではなく、例えば、2個のパラメトリックスピーカ13の両方を1人の前記人物に向けて、同時に前記音響情報を再生するようにしても良い。この場合、両方のパラメトリックスピーカ13を駆動するための電力が必要になるものの、周囲音が大きい環境で、前記人物に対し、更に明瞭に前記音響情報を届けることができる。従って、周囲音の環境に応じて、必要なパラメトリックスピーカ13のみを駆動するか、または2個のパラメトリックスピーカ13を同時に駆動するか、を適宜選択すればよい。
【0080】
また、1人の前記人物に対して2個のパラメトリックスピーカ13を同時に駆動した場合、本実施の形態3では同じ前記音響情報が再生される動作としているが、これに限定されるものではなく、2個のパラメトリックスピーカ13から再生される音響情報を異なるもの(例えばステレオ音)としても良い。これにより、前記人物に対して前記音響情報が、より立体的に聞こえるため、さらなる広告への注目喚起が向上する。
【0081】
次に、人感センサ25で検出された前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より多い場合、即ち、ここでは前記人物が3人以上の場合について述べる。この場合、パラメトリックスピーカ13からだけでは前記人物全員への前記音響情報の伝達が不十分となるので、実施の形態1と同様に、スピーカ27からの前記音響情報の再生に切り替える。これにより、前記人物全員への広告の注目喚起が可能となる。
【0082】
尚、本実施の形態3においても、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より多い場合の動作は、実施の形態1、2で述べたように、パラメトリックスピーカ13からスピーカ27への前記音響情報の再生を切り替える動作に限定されるものではない。即ち、制御部19は、スピーカ27からの前記音響情報の再生を常時行い、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より多くなれば、パラメトリックスピーカ13からの前記音響情報の再生を停止するように切り替え制御しても良い。また、制御部19は、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より多くなれば、2個のパラメトリックスピーカ13とスピーカ27とから同時に前記音響情報を再生するように切り替え制御しても良い。これらいずれの場合も、前記人物全員に前記音響情報を届けることができ、広告への注目喚起が可能となる。
【0083】
以上の構成、動作により、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を低減できるとともに、ディスプレイ11の前にいる人物の広告への更なる注目喚起が可能な音響再生装置を実現できる。
【0084】
尚、本実施の形態3においても、実施の形態1で述べた上記1)〜4)の動作を任意に追加、もしくは組み合わせても良い。この場合も、実施の形態1で説明した同じ効果を得ることができる。
【0085】
また、本実施の形態3においても、実施の形態2で述べた上記5)〜8)の動作を任意に追加、もしくは組み合わせても良い。この場合も、実施の形態2で説明した同じ効果を得ることができる。
【0086】
但し、実施の形態2で述べた、パラメトリックスピーカ13の方向が前記人物を追従するように、制御部19が駆動部15を制御する動作については、本実施の形態3ではパラメトリックスピーカ13が2個あるので、制御部19は次のように制御する。
【0087】
まず、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数以下の場合、即ち本実施の形態3では前記人物の数が1人、または2人の場合について述べる。
【0088】
前記人物が2人の場合は、パラメトリックスピーカ13の数と同じであるので、制御部19は、各パラメトリックスピーカ13の方向が、それぞれの前記人物に追従するよう各駆動部15を制御する。これにより実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0089】
前記人物が1人の場合、制御部19は、いずれか一方のパラメトリックスピーカ13の方向が、前記人物に追従するよう各駆動部15を制御する。この動作は実施の形態2と同じであるので、同様の効果が得られる。あるいは、制御部19は、両方のパラメトリックスピーカ13が1人の前記人物に追従するよう各駆動部15を制御しても良い。この場合は、前記人物が移動しており、かつ、上記したように前記人物の周囲音が大きい環境であっても、前記人物に対し、更に明瞭に前記音響情報を届けることができる。
【0090】
次に、前記人物の数がパラメトリックスピーカ13の数より多い場合、即ち本実施の形態3では前記人物の数が3人以上の場合について述べる。
【0091】
この場合、制御部19は人感センサ25の出力より検出された任意の前記人物から2名を選択して、それら前記人物に対してパラメトリックスピーカ13が、それぞれ追従するよう各駆動部15を制御する。そして、前記音響情報の再生が終われば、別の任意の前記人物から2名を選択する。このような動作を繰り返すことにより、実施の形態2に比べ、パラメトリックスピーカ13の数が多いほど、多くの前記人物に前記音響情報を届けることができる。
【0092】
この際、実施の形態2で述べた7)の動作、即ち、制御部19が、人感センサ25からの出力により、ディスプレイ11に最も近い、前記音圧ピーク距離近傍に位置する前記人物を優先して検出する動作を行っても良い。この場合、パラメトリックスピーカ13が2個あるので、制御部19はディスプレイ11から最も近い前記人物として、近い順に2名を選択する。そして、前記音響情報の再生が終われば、その時点で、制御部19が人感センサ25からの出力によりディスプレイ11から最も近い前記人物を再び検出し、その内、既に前記音響情報の再生を行った前記人物を除いて近い順に2名を選択する。このような動作を繰り返すことにより、多くの前記人物に対して更に広告への注目喚起を高めることができる。
【0093】
また、本実施の形態3において、制御部19は、人感センサ25の出力から求めた前記人物の数が変わった場合、直ちに人数に応じた上記各動作に切り替える。これにより、人数の変化に対しても、前記人物の広告への注目喚起を効率的に高めることができる。
【0094】
また、本実施の形態3ではパラメトリックスピーカ13の数を2個としたが、これは更に多くても良い。この場合の動作も本実施の形態3と同様である。これにより、更に多くの前記人物に同時に前記音響情報を届けることができるので、より効率的に広告への注目喚起を図ることができる。
【0095】
(実施の形態4)
図3は、本発明の実施の形態4における音響再生装置の構成図である。尚、図3において、図2と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
即ち、本実施の形態4における特徴となる構成は、図3に示すように、ディスプレイ11の左側にもスピーカ27を設けた点である。これにより、本実施の形態4において、スピーカ27はディスプレイ11に2個設ける構成となる。なお、ディスプレイ11の左側に設けたスピーカ27はスピーカ駆動回路29と電気的に接続される。
【0097】
次に、このような音響再生装置の動作について、実施の形態3と異なる点について説明する。
【0098】
実施の形態3において、スピーカ27からの前記音響情報を再生する際に、本実施の形態4では、両方のスピーカ27から前記音響情報を再生する。これにより、ディスプレイ11の近傍に多数の人物がいる場合でも、前記音響情報を十分に届けることが可能となる。
【0099】
この際に、両方のスピーカ27から再生される前記音響情報は、同じであっても良いし異なっていてもよい。同じであれば、多数の前記人物全員に同じ前記音響情報を聞かせることができるので、広告において最も訴求したい点を効率的に伝達できる。また、前記音響情報が異なる場合は、例えば前記音響情報をステレオ音とすることで、立体的な音響効果を多数の前記人物に聞かせることができるので、広告への注目喚起を更に高めることが可能となる。
【0100】
上記以外の動作は、実施の形態3と同じである。
【0101】
以上の構成、動作により、実施の形態3と同様に、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を低減できる効果に加え、ディスプレイ11の近傍にいる前記人物の広告への更なる注目喚起が可能な音響再生装置を実現できる。
【0102】
尚、本実施の形態4ではディスプレイ11にスピーカ27を2個設ける構成としたが、これは3個以上であっても良い。この場合は、例えばディスプレイ11が壁面一面に亘るなど大型の場合であっても、スピーカ27が多数あり、それぞれのスピーカ27が騒音感を感じさせない音量で前記音響情報を再生することで、騒音感を低減しつつ、ディスプレイ11近傍の人物全員に前記音響情報を届けることができる。
【0103】
また、本実施の形態4では、実施の形態3における図2の構成にスピーカ27を追加しているが、これに限定されるものではなく、パラメトリックスピーカ13が1個である実施の形態1、2の構成にスピーカ27を追加しても良い。この場合も、本実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、本実施の形態4においても、実施の形態1で述べた上記1)〜4)の動作を任意に追加、もしくは組み合わせても良い。この場合も、実施の形態1で説明した同じ効果を得ることができる。
【0105】
また、本実施の形態4においても、実施の形態2で述べた上記5)〜8)の動作を任意に追加、もしくは組み合わせても良い。この場合も、実施の形態2で説明した同じ効果を得ることができる。
【0106】
また、実施の形態1〜4で述べた音響再生装置は、広告用のディスプレイ11に対して設けられる構成としているが、これは例えば家庭用テレビにパラメトリックスピーカ13を設けた構成に対しても適用できる。まず、家庭用テレビの視聴時における音響再生用にパラメトリックスピーカ13を用い、その聴取方向を調整するために電動の駆動部15も設ける。この家庭用テレビに、実施の形態1〜4に示すように人感センサ25の出力に応じて駆動部15によりパラメトリックスピーカ13の方向を可変する動作を、デモモードとして制御部19のソフトウエアにより内蔵しておく。また、デモモードにおける音響情報として、前記家庭用テレビのブランド名や説明音声等を記憶しておく。次に、前記家庭用テレビを店頭に並べた際に、デモモードを実行すると、前記家庭用テレビは人感センサ25からの出力に応じて、パラメトリックスピーカ13から前記音響情報を来店者の方向に発し、自らを宣伝する。これにより、前記来店者に対する前記家庭用テレビへの注目を喚起することが可能となる。
【0107】
(実施の形態5)
図4は、本発明の実施の形態5における音響再生装置の構成図である。尚、図4において、図3と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0108】
即ち、本実施の形態5における特徴となる構成は、図4に示すように、制御部19に蓄電部31が電気的に接続される点である。蓄電部31は電力を蓄えるための二次電池と、前記二次電池の充放電回路(いずれも図示せず)から構成される。そして、蓄電部31は系統電源33と電気的に接続されている。
【0109】
このような構成により、蓄電部31は、系統電源33が正常な非停電時に、系統電源33の電力を前記二次電池に充電するとともに、制御部19に供給する。尚、系統電源33が正常であるか否かは、蓄電部31に内蔵した前記充放電回路により検出され、その結果が制御部19に出力される構成としている。制御部19は、図4に示すように、ディスプレイ11、パラメトリックスピーカ駆動回路23、スピーカ駆動回路29、駆動部15、および人感センサ25と電気的に接続される。さらに、パラメトリックスピーカ駆動回路23にはパラメトリックスピーカ13が、スピーカ駆動回路29にはスピーカ27が、それぞれ電気的に接続される。従って、制御部19に供給された系統電源33の電力は、上記した各構成要素にも供給される。
【0110】
次に、本実施の形態5における音響再生装置の特徴となる動作について説明する。
【0111】
まず、系統電源33が正常な非停電時における動作は、実施の形態4と同じである。従って、実施の形態4と同様に、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を低減できるとともに、ディスプレイ11の近傍にいる前記人物の広告への注目喚起が可能となる。
【0112】
次に、系統電源33が災害や事故等により停電となった場合、あるいは計画停電が発生した場合について述べる。系統電源33が停電になると、前記充放電回路がそれを検出する。そして、前記充放電回路は直ちに系統電源33と蓄電部31との電気的接続を断つ。これにより、蓄電部31の前記二次電池が蓄えた電力の系統電源33への逆流を防ぐ。同時に、前記充放電回路は前記二次電池の電力を制御部19に供給する。また、蓄電部31は停電が発生したことを制御部19に出力する。
【0113】
制御部19は、停電が発生すると、蓄電部31から供給される電力を用いて、広告データ21に予め記憶された停電時画像情報をディスプレイ11に表示するよう制御する。尚、前記停電時画像情報は、例えば現在停電発生中や計画停電中であることを伝える文字情報でも良いし、ディスプレイ11が建物内や地下道などに設置されている場合は、最寄りの出口を示す画像情報でも良い。また、前記停電時画像情報は広告データ21に予め記憶されたものに限定されるものではなく、例えば、制御部19が外部と無線や有線で情報の授受ができる構成であり、かつ、制御部19の情報授受先が停電時でもパックアップ電源により稼動している状態であれば、停電に関する種々の情報を前記停電時画像情報として表示するようにしても良い。この場合も、前記情報授受先が停止している場合は、広告データ21に予め記憶された前記停電時画像情報を表示する。
【0114】
更に、制御部19は、広告データ21に予め記憶された停電時音響情報をパラメトリックスピーカ13とスピーカ27から再生するように制御する。ここで、前記停電時音響情報は、例えば現在停電発生中や計画停電中であることを伝える音響情報でも良いし、音響再生装置が建物内や地下道などに設置されている場合は、最寄りの出口を案内する音響情報でも良い。また、前記停電時画像情報は広告データ21に予め記憶されたものに限定されるものではなく、例えば、制御部19と前記情報授受先とが停電時でも稼動している状態であれば、停電に関する種々の情報を前記停電時音響情報として再生するようにしても良い。この場合も、前記情報授受先が停止している場合は、広告データ21に予め記憶された前記停電時音響情報を再生する。
【0115】
尚、本実施の形態5では、制御部19は前記停電時音響情報をパラメトリックスピーカ13とスピーカ27の両方から再生するように制御しているが、これはできるだけ多数の人物に前記停電時音響情報を届けることで安全性を高めるためである。この際、特に災害や事故時の停電であれば、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27から同じ内容の前記停電時音響情報を最大音量で再生する。これにより、音響再生装置から遠くにいる不特定多数の人物に対しても前記停電時音響情報を届けることができるので、安全性が高まる。尚、計画停電実施の日付や時刻は予めわかっているため、それにより制御部19は、災害や事故時の停電と計画停電とを区別することができる。
【0116】
上記のようにして、制御部19は前記停電時画像情報の表示と前記停電時音響情報の再生を継続する。その際、制御部19は、人感センサ25による出力から前記人物が検出されなくなっても、音響再生装置から遠くにいる不特定多数の人物に対する安全性を高めるために、前記停電時画像情報の表示と前記停電時音響情報の再生を継続する。
【0117】
これと同時に、制御部19は蓄電部31からの信号により、蓄電部31に内蔵した前記二次電池が蓄えている電力を監視する。そして、前記電力が所定値以下になれば、できるだけ長く音響再生装置を動作させ続けるために、優先度の低い構成要素への電力供給を止める動作を行う。その詳細について、以下に説明する。尚、前記電力の所定値は、前記二次電池の容量や音響再生装置の設置環境などに応じて、適宜決定し、制御部19のメモリに記憶しておく。本実施の形態5では蓄電部31に蓄えた電力の半分を所定値とした。
【0118】
制御部19は、蓄電部31の前記電力が所定値である半分になると、まず人感センサ25から得られる照度を求める。ここで、実施の形態1で述べたように、人感センサ25はカメラで構成されるため、その画像の明るさから照度を得ることができる。尚、本実施の形態5では、照度の検出も必要なため、人感センサ25として前記カメラを用いているが、例えば人感センサ25として焦電センサを用いている場合は照度の検出ができない。そこで、この場合は、前記焦電センサと照度センサ(例えばフォトトランジスタ)とを一体化して人感センサ25を構成すればよい。
【0119】
次に、制御部19は、得られた照度が所定照度以下であるか否かを判断する。ここで、所定照度とは、暗くて照明が必要と感じる照度であり、予め制御部19の前記メモリに記憶される。
【0120】
もし、人感センサ25から得られる前記照度が前記所定照度以下であれば、制御部19は前記停電時音響情報の再生を停止し、前記停電時画像情報のディスプレイ11への表示のみを行う。これにより、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27からの前記停電時音響情報の再生が停止するので、その分の電力をディスプレイ11の表示に使うことができる。その結果、暗がりの中でもディスプレイ11が表示し続けることで、ある程度、照明の代わりとなるので、人物への安心感を提供できる。更に、建物内や地下道などにディスプレイ11が設置されている場合は、最寄りの出口案内などの有益な情報を蓄電部31の電力がなくなるまで提供し続けることができる。これにより、前記人物への安全性を高めることが可能となる。従って、前記照度が前記所定照度以下であれば、前記停電時画像情報の表示のための構成要素(ここではディスプレイ11)への電力供給が、前記停電時音響情報の再生のための構成要素(ここではパラメトリックスピーカユニット17、パラメトリックスピーカ駆動回路23、スピーカ27、及びスピーカ駆動回路29)への電力供給より優先される。
【0121】
一方、人感センサ25から得られる前記照度が前記所定照度より大きければ、前記停電時画像情報のディスプレイ11への表示を停止し、パラメトリックスピーカ13とスピーカ27からの前記停電時音響情報の再生のみを行う。即ち、上記した前記照度が前記所定照度以下の場合と逆の動作を行う。この場合、前記人物にとって、周囲の状況を見ることはできるので、前記停電時画像情報のディスプレイ11への表示を停止しても、暗がりの中にいる場合よりは安全性が高い。そこで、制御部19は、前記停電時画像情報のディスプレイ11への表示を停止することにより、その分の電力をパラメトリックスピーカ13とスピーカ27からの前記停電時音響情報の再生に使う。その結果、音響再生装置から遠くの位置にいる人物に対しても前記停電時音響情報の再生が継続されるので、前記人物への安心感を提供できる。更に、建物内であれば、前記停電時音響情報による最寄りの出口案内などの有益な情報を蓄電部31の電力がなくなるまで提供し続けることができる。これにより、前記人物への安全性を高めることが可能となる。従って、前記照度が前記所定照度より大きい場合は、前記停電時音響情報の再生のための構成要素への電力供給が、前記停電時画像情報の表示のための構成要素への電力供給より優先される。
【0122】
尚、前記停電時音響情報の再生を継続する場合、更に蓄電部31の電力が低下すれば、パラメトリックスピーカ13からの前記停電時音響情報の再生を停止し、スピーカ27のみからの再生に切り替えても良い。この場合、スピーカ27はパラメトリックスピーカ13より指向性が広いので、蓄電部31の電力がなくなる最後まで、できるだけ多くの人物に前記停電時音響情報を再生し続けることができる。
【0123】
次に、系統電源33の停電が復帰した場合の動作について述べる。蓄電部31の前記充放電回路には、系統電源33が停電から復帰すると、その電力が供給される構成としている。従って、前記充放電回路は停電から復帰して動作を開始すると、非停電時と判断し、直ちに系統電源33と蓄電部31を電気的に接続する。そして、蓄電部31の前記二次電池が満充電になるまで充電を行う。
【0124】
一方、蓄電部31は停電が復帰した情報を制御部19に送信する。これを受け、制御部19は、前記停電時画像情報のディスプレイ11への表示と、前記停電時音響情報の再生を停止し、実施の形態4と同様の非停電時における動作に戻す。但し、災害や事故発生時の停電からの復帰時は、引き続き前記停電時画像情報の表示と前記停電時音響情報の再生を行う。これにより、前記人物に対する二次災害等の可能性を低減できる。
【0125】
以上の構成、動作により、実施の形態4と同様に、前記音響情報が、不特定多数の人物に対し、騒音であると感じる可能性を低減できるとともに、ディスプレイ11の近傍にいる前記人物の広告への更なる注目喚起が可能となる効果に加え、停電時に前記人物に対する安全性を高めることも可能な音響再生装置を実現できる。
【0126】
尚、本実施の形態5における蓄電部31を有する構成は、実施の形態1〜3に適用しても良い。これによっても、本実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0127】
また、本実施の形態5では、実施の形態1で述べたように、ディスプレイ11が自発光式やバックライト式の光源を備えた前記フラットパネルディスプレイである構成について説明した。これに対し、ディスプレイ11が商品そのものやポスター、看板などである場合、あるいは透過型や反射型で光源を持たないフラットパネルディスプレイの場合、停電時に、制御部19は照度に関係なく前記停電時音響情報の再生のみを行うようにする。これにより、ディスプレイ11への前記停電時画像情報の表示を行わない分の電力を前記停電時音響情報の再生に使えるので、長時間に亘る前記停電時音響情報の再生による前記人物への安全性向上が可能となる。但し、暗がりにおける前記人物の安全性向上の観点からは、本実施の形態5で述べたディスプレイ11が光源を備えたフラットパネルディスプレイである構成の方が望ましい。
【0128】
また、本実施の形態5では、人感センサ25として照度が検出できるカメラを用いたが、これは照度の検出ができないもの(例えば焦電センサのみ)であった場合は、制御部19が、停電時に蓄電部31の電力量と照度に応じて、前記停電時画像情報の表示と、前記停電時音響情報の再生との選択を行う動作を行わない。そして、蓄電部31の電力がある限り、制御部19は前記停電時画像情報の表示と前記停電時音響情報の再生の両方を継続する。これによっても前記人物への安全性向上の可能性が高まる。但し、動作できる期間は短くなるので、本実施の形態5で述べた照度検出が可能な人感センサ25を用いる構成の方が望ましい。
【0129】
また、本実施の形態5では蓄電部31に前記二次電池が内蔵される構成について説明したが、これは大容量の電気化学キャパシタや電気二重層キャパシタ等の他の蓄電デバイスであっても良い。
【0130】
また、実施の形態1〜5で述べた音響再生装置は、パラメトリックスピーカユニット17、人感センサ25、およびスピーカ27がディスプレイ11に固定されることで設置されているが、これは、音響再生装置をディスプレイ11から取り外すことができる構成としても良い。これにより、ディスプレイ11が変更されても音響再生装置はそのまま継続使用できる。従って、音響再生装置はディスプレイ11に設けられていれば、固定されていても良いし、取り外し可能な構成でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明にかかる音響再生装置は、不特定多数の人物に対する騒音感を低減しつつ、広告への注目喚起ができるので、特に、不特定多数の人物に対し音響信号を再生する広告用の音響再生装置等として有用である。
【符号の説明】
【0132】
11 ディスプレイ
13 パラメトリックスピーカ
15 駆動部
17 パラメトリックスピーカユニット
19 制御部
25 人感センサ
27 スピーカ
31 蓄電部
33 系統電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに設けたパラメトリックスピーカと、
前記ディスプレイに設けた、前記パラメトリックスピーカより指向性の広いスピーカと、
前記パラメトリックスピーカの方向を可変するための駆動部と、
前記ディスプレイに設けた人感センサと、
前記パラメトリックスピーカ、スピーカ、及び人感センサと電気的に接続される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記人感センサの出力により得られる、前記ディスプレイの前の人物の数に応じて、前記駆動部により前記パラメトリックスピーカの方向を可変して音響情報を再生する制御と、前記スピーカの音響情報を再生する制御とを切り替えることを特徴とする音響再生装置。
【請求項2】
前記パラメトリックスピーカと、前記駆動部と、からなるパラメトリックスピーカユニットを、前記ディスプレイに2個以上設ける構成を有することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
前記スピーカを、前記ディスプレイに2個以上設ける構成を有することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記パラメトリックスピーカの方向を上下左右に可変できる構成を有することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により、人物を検出していなければ、前記制御部が前記音響情報の再生を停止するとともに、前記駆動部を停止するように制御することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記音響情報の再生を停止している際に、前記人感センサからの出力により、前記人物が前記ディスプレイの前まで近づいたことを検出すると、前記パラメトリックスピーカの音量が所定音量になるまで徐々に大きくするようにして前記音響情報を再生するように制御することを特徴とする請求項5に記載の音響再生装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により、前記人物が前記ディスプレイに対し所定距離まで近づいたことを検出すると、前記スピーカからの前記音響情報を再生することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により得られた前記人物の数が、前記パラメトリックスピーカの数以下の場合、前記人物に追従して前記駆動部を制御し、前記音響情報を再生することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により得られた前記人物の数が、前記パラメトリックスピーカの数より多い場合、任意の前記人物に追従して前記駆動部を制御するとともに所定の前記音響情報を再生し、前記音響情報の再生後に別の前記人物に追従して前記駆動部を制御するとともに所定の前記音響情報を再生する一連の動作を繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により、前記ディスプレイに最も近い前記人物を優先して検出することを特徴とする請求項9に記載の音響再生装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により得られた前記人物の数が、前記パラメトリックスピーカの数より多い場合、前記パラメトリックスピーカと前記スピーカとから同時に前記音響情報を再生するように切り替えて制御することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記スピーカの音量を大きくし、前記パラメトリックスピーカの音量を小さくするように切り替えて制御することを特徴とする請求項11に記載の音響再生装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記人感センサからの出力により得られた前記人物の数が、前記パラメトリックスピーカの数より多い場合、前記パラメトリックスピーカから、前記スピーカへ切り替えて前記音響情報を再生することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項14】
前記パラメトリックスピーカと前記スピーカとで異なる前記音響情報を再生することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項15】
前記パラメトリックスピーカ、スピーカ、駆動部、人感センサ、及び制御部と電気的に接続される蓄電部を、さらに備え、
前記蓄電部は、非停電時に系統電源により充電されるとともに、停電時に前記蓄電部の電力が放電され、
前記制御部は、停電時に停電時音響情報を再生することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項16】
前記ディスプレイは光源を備え、前記制御部からの画像情報を表示する構成を有するとともに、前記蓄電部と電気的に接続され、
前記制御部は、停電時に停電時画像情報を前記ディスプレイに表示することを特徴とする請求項15に記載の音響再生装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記蓄電部の電力が所定値以下になれば、
前記人感センサから得られる照度が所定照度以下の場合に、前記停電時音響情報の再生を停止し、前記停電時画像情報の前記ディスプレイへの表示のみを行い、
前記人感センサから得られる照度が所定照度より大きい場合に、前記停電時画像情報の前記ディスプレイへの表示を停止し、前記停電時音響情報の再生のみを行うことを特徴とする請求項16に記載の音響再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−70213(P2013−70213A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206923(P2011−206923)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【特許番号】特許第5163796号(P5163796)
【特許公報発行日】平成25年3月13日(2013.3.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】