説明

音響報知ユニット及びそれを用いた信号表示灯

【課題】設置対象機器の設置面形状にかかわらず、容易に音響波発散構造を得ることのできる音響報知ユニット及びそれを用いた信号表示灯を提供する。
【解決手段】筒状ケース7aと、前記筒状ケース7aの側面に形成された開口部10と、前記開口部10に装着される蓋体4と、前記筒状ケース7aに内蔵されたスピーカ9とを備え、前記蓋体4には、前記スピーカ9から出力される音響波を発散させることのできる拡声スロート部THが形成されている。
【効果】筒状ケース7aの側面において拡声スロート部THの構造を設けたことで、従来制約を受けていた拡声スロート部THの配置の自由度を高めることができる。音響報知ユニット7を中心とした水平・垂直方向の音の広がり(指向特性)を改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響の発生により種々の報知を行うことのできる音響報知ユニットに関するものである。また、本発明は、前記音響報知ユニットを用いた信号表示灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号表示灯は、自動機械、生産ラインなどの設置対象機器に設置され、LED等の表示器やスピーカを内蔵し、光信号の点灯/点滅や音響の発生により種々の報知を行うものである。
信号表示灯は、光信号の点灯/点滅のための表示器を内蔵した表示ユニットや、音響報知のための音響報知ユニット7を備えている。
【0003】
従来の信号表示灯は、他のユニット(例えば電源ユニットや制御ユニット)の一端に、背の低い音響報知ユニット7を配置する構造を採用している。
下記特許文献1では、電源ユニット(7)の上に、別筐体からなるブザーユニット(5)が載置されている(用語に添えた(番号)は当該文献で使われている図面参照番号とする)。ブザーユニット(5)に内蔵されるブザー(71)の音響は、連通孔 (72)を通して外部に放音される。
【特許文献1】特開2004-186091号公報(図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記連通孔 (72)は、側面視「コ」形状の空間部で拡声するため、十分に拡声するだけの通路の広がりや拡声長を確保できなかった。
そこで、ブザーユニットを信号表示灯の最下部に設け、設置対象機器の設置面に薄い平面ゴムを取り付け、その薄い平面ゴムでもって連通孔の底面とする方法も有効と考えられるが、設置対象機器の設置面の形状により音響波特性が変化する懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、設置対象機器の設置面形状にかかわらず、容易に音響波発散構造を得ることのできる音響報知ユニット及びそれを用いた信号表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の音響報知ユニットは、筒状ケースと、前記筒状ケースの側面に形成された開口部と、前記開口部に装着される蓋体と、前記筒状ケース又は前記蓋体に内蔵されたスピーカとを備え、前記蓋体には、前記スピーカから出力される音響波を発散させることのできる拡声スロート部が形成されていることを特徴とする。
前記構成の筒状ケースの側面において拡声スロート部の構造を設けたことで、従来制約を受けていた拡声スロート部の配置の自由度を高めることができる。
【0007】
また、拡声スロート部をユニットの側面、特に中間付近(設置対象機器の設置面から少し距離をおいた状態)に設けることで、警報音を発した際、設置対象機器や床による垂直方向の音響波特性への悪影響を抑制することができ、安定した音響波特性を得やすくなる。さらに、音響報知ユニット周囲への音響報知に必要な広がりのある指向特性に改善でき、広範囲の作業者へ報知音が伝わりやすくなる。
【0008】
つまり、本発明の構造によれば、音響報知ユニットを中心とした水平・垂直方向の音の広がり(指向特性)を改善できる。
前記蓋体は、前記開口部に挿入される筒状部と、前記筒状部を塞ぐ隔壁と、前記開口部に装着された場合に前記筒状ケースの側面とほぼ同一面になる正面カバーとを有し、前記拡声スロート部は、前記隔壁と前記正面カバーとの間に形成されるものであることが好ましい。この隔壁により、音響報知ユニットの外部から内部への水や湿気の浸入を完全に防ぐことができるとともに、隔壁と正面カバーとを利用した簡単な構造で拡声スロート部を形成することができる。
【0009】
前記隔壁の一端部を正面側に曲げ、ここに前記拡声スロート部の音響放射口を形成すれば、音響波を水平方向に発散させることが容易にできる。
前記スピーカは前記筒状ケースに内蔵されている場合、前記開口部には、前記スピーカから出力される音響波を導くための連通孔が形成され、前記拡声スロート部は、前記蓋体を前記開口部に装着した状態で、前記連通孔につながるものであってもよい。この構成により、スピーカから発生した音響波は連通孔を通って、蓋体の拡声スロート部で拡声されて外部に発散される。
【0010】
前記連通孔は、前記蓋体を前記開口部に装着したときに前記隔壁よりも外側に位置するものであることが好ましい。この隔壁により、音響報知ユニットの外部から内部への水や湿気の浸入を完全に防ぐことができるとともに、前記連通孔は、前記蓋体を前記開口部に装着したときに前記隔壁よりも正面側に位置することになるので、音響波が拡声スロート部に導かれるのを妨げることもない。
【0011】
前記連通孔は、この音響報知ユニットを他のユニットに対して上下方向に連結した状態で、下方向に向けられて形成されていることが好ましい。下方向に向けられて形成されていれば、音響報知ユニットの外面を滴下する水などの浸入を防ぎやすいからである。
前記筒状ケースの中には、制御基板が内蔵されているものであれば、この音響報知ユニットを制御ユニットと兼用することができる。したがって、対応する他のユニットに連結した場合であっても、全高が高くならないで済む。特に本発明の音響報知ユニットを信号表示灯へ適用する場合有利である。
【0012】
前記筒状ケースの中に配線ケーブルが通っている場合であっても、このユニットを音響報知ユニットとして利用することができる。
前記開口部の奥には、前記蓋体を外した状態で調整することのできる調整部材(例えば音量/音質調整ボリューム)が配置されていれば、蓋体のあったケースの内側に調整部材を設けることにより、調整が簡単にでき、使い勝手が向上する。
【0013】
また、前記筒状ケースの上部、下部のいずれか又は両方に、対応する他のユニットと構造的及び電気的に連結される連結接続部が設けられている場合は、他のユニットと連結することが容易になる。
また、本発明の音響報知ユニットは、光による表示機能を有さないものであってもよい。
【0014】
また、本発明の信号表示灯は、設置対象機器に設置され、光信号を発する表示ユニットと、いままでに説明した音響報知ユニットとを連結してなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る信号表示灯1の正面図である。垂直方向をZ方向とする。信号表示灯1は、一方向に長い柱状をなしている。信号表示灯1は、その長手方向がZ方向に沿った状態で、設置対象機器、例えば自動機械の上面(一点鎖線で表す)に設置される。なお、信号表示灯1の長手方向をZ方向以外の方向(例えばX方向)に沿わせて信号表示灯1を設置してもよい。本実施形態では、長手方向をZ方向に沿わせて設置する場合に則して説明する。
【0016】
信号表示灯1は、ベースユニット3と、このベースユニット3の上に嵌合状態で連結される信号表示灯本体とを有している。ベースユニット3は、信号表示灯本体を設置対象機器に固定するためのユニットである。また、設置対象機器から導出された信号線(信号伝達用の電線)や電源線(電力供給用の電線)(まとめて「配線ケーブル8」という)がベースユニット3の上部にある信号表示灯本体との電気的接続部において、信号表示灯本体4に接続される。なお、ベースユニット3は、信号表示灯本体と一体であってもかまわない。
【0017】
信号表示灯本体は、当該信号表示灯1の頂部に配置されるカバー5と、光信号を発する例えば3つの表示ユニット6と、表示ユニット6に制御信号や制御電力を供給するために当該信号表示灯本体の基部に配置される制御ユニットとを有している。前記制御ユニットには、制御基板が内蔵され、表示ユニット6の光源の変圧・光点滅等の各機能を実現する。本発明の実施形態において、アラーム音等を発する音響報知ユニット7内に、この制御ユニットとしての機能を有する。
【0018】
前記カバー5と複数の表示ユニット6と音響報知ユニット7とは、互いに着脱できるように連結してなる。また、音響報知ユニット7の下端部に、ベースユニット3が連結されている。
前記カバー5、表示ユニット6,及び音響報知ユニット7の断面形状は例えば円筒形状である。これらのユニットが互いに連結された状態で、それぞれの円筒の軸線S0は、互いに一致し、かつ信号表示灯1の長手方向に沿っている。この長手方向が連結方向に相当する。
【0019】
図2は、信号表示灯1の要部である音響報知ユニット7の、上述のZX面で切った断面図を示す。
図2を参照して、音響報知ユニット7は、筒状ケース7aの内部に、音響報知ユニット7の下部ユニット(ベースユニット3)からの信号や電源入力等を上部ユニットに伝達するための配線を行うスペースである配線空間部35を有する。また、筒状ケース7aの内部には、表示ユニット6の光源の変圧・光点灯/点滅・音量音質の調整等の各調整機能を実現するための制御基板12が収容されてなる。
【0020】
21は筒状ケース7aの内面に長手方向に沿って形成された溝22(図3参照)を形成するためのリブである。この溝22に制御基板12が挿入され、固定される。
筒状ケース7aの最下部には、ベースユニット3と機械的に連結されるとともに、電気的に接続される下部ユニット連結部37が形成されている。なおこの部分にベースユニット3の機能をもたせることで、ベースユニット3が不要な場合もある。
【0021】
下部ユニット連結部37の直ぐ上部には、ベースユニット3から引き出される配線ケーブルと電気的に接続される下部ユニット接続基板13が、筒状ケース7aの内部に形成された横溝(図示せず)に挿入され、固定されている。下部ユニット接続基板13の面積は、前記筒状ケース7aの中の配線空間部35に配線ケーブルを通すために、筒状ケース7aの断面積よりも若干小さくなっていることが好ましい。下部ユニット接続基板13と制御基板12とは、接続ケーブル13aで接続されている。
【0022】
また、筒状ケース7aの最上部にも、表示ユニット6と機械的に連結されるとともに、電気的に接続される上部ユニット連結部38が形成されている。上部ユニット連結部38には、制御基板12及び配線ケーブルを通じて得られた電気信号を中継するための上部ユニット接続基板14が、筒状ケース7aの内部に形成された横溝(図示せず)に挿入され、固定されている。この上部ユニット接続基板14も、配線ケーブルを通すため、筒状ケース7aの断面積より少し小さくなっているのが好ましい。上部ユニット接続基板14と制御基板12とは、接続ケーブル14aで接続されている。
【0023】
制御基板12には、音響報知ユニット7のスピーカ9にスピーカ駆動信号を供給するための駆動端子12aが設けられている。この駆動端子12aからケーブル12bを通じて、スピーカ9を装着するための装着基板31に駆動信号が供給される。装着基板31には、スピーカ9が装着されており、前記駆動信号がスピーカ9に入力され、スピーカ9から音響波が発生するようになっている。
【0024】
また、筒状ケース7aの開口部(後述)の裏に該当する制御基板12の部位には、スピーカ9から発生する音波の音量を調整するための音量調整用つまみ15と、音質を調整するための音質調整用つまみ16が搭載されている。音質調整用つまみ16は、スピーカ9から発音される音の周波数分布を変化させることにより、低い音にしたり高い音にしたりするものである。なお、制御基板12には、音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16とともに、あるいは音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16に代えて、リセット用スイッチなど各種の操作をするための部材が搭載されていても良い。
【0025】
図3は、音響報知ユニット7から制御基板12やスピーカ9を取り除いた状態、すなわち円筒形状の筒状ケース7aのみを示す断面図であり、図4は正面図である。図5は筒状ケース7aに蓋体4を装着した状態を示す断面図である。
筒状ケース7aは略円筒形を有し、音響報知ユニット7の外形(直径)と略同じである。その側面の一部には、蓋体4が挿入・回転係止されることにより装着されるほぼ円形の孔である開口部10が形成されている。この開口部10に、スピーカ9の音を拡声するための拡声スロート部THのついた蓋体4が装着される。この開口部10の裏側(筒状ケース7aの内部)には、前記制御基板12の音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16などが面している。したがって、蓋体4を外した状態で、この開口部10を通して、ドライバなどの工具を用いて制御基板12の音量調整用つまみ15や音質調整用つまみ16を調整できるようになっている。
【0026】
なお開口部10は、蓋体4の拡声スロート部THの共鳴長を確保できる大きさであればよく、略円形でなくても、略楕円形状でもよく、略長方形状でもよい。
この開口部10の形状を詳しく説明すると、開口部10は、蓋体4を装着するために、水平方向に伸びる円筒部30を含んでいる。この円筒部30によって、蓋体4が回転係止される開口孔を形成する。
【0027】
円筒部30の内壁面(蓋体4の装着面側)には、図4に示すように、蓋体4の係止突起51(図8)を係止するための円形状の係止突起23aと、係止突起23aの一部に形成された切り欠き23bが設けられている。この切り欠き23bは蓋体4の係止突起51を所定深さまで挿入させるためのものであり、係止突起23aは、蓋体4を回転したときに、前記係止突起51と係合し、蓋体4が抜け落ちるのを防ぐためのものである。なお、このような回転係止構造を採用しなくても、他の公知の係止構造を用いて蓋体4を円筒部30に係止させるようにしてもよい。
【0028】
そして円筒部30の内壁面の上部には、スピーカ9から発生する音波を導くための小さな連通孔32が垂直下向き(−Z方向)に形成されている。連通孔32を垂直下向きに形成するのは、音響報知ユニット7は通常、図1に示したように、長手方向を垂直方向であるZ方向に沿わせて設置されるので、音響報知ユニット7の筒状ケース7aの側面を滴下した水が、開口部10の連通孔32を通して、スピーカ9に入らないようにするためである。
【0029】
この連通孔32の上側に、音響報知ユニット7から報知されるアラーム音等の音源であるスピーカ9及びその装着基板31を格納し支持するための空間が形成されている。この空間を「音源設置部34」という。音源設置部34は、筒状ケース7aの内側面に、筒状ケース7aと一体的に形成されている。
この状態で、スピーカ9から発生し、連通孔32から導かれた音波は、拡声スロート部THを進んでいくことにより、共鳴され、拡声され、音響報知ユニット7の外部に向けて発散される。
【0030】
図6〜図9は蓋体4を示す図であり、図6は側面図、図7は蓋体4の断面図である。図8は平面図、図9は底面図である。
蓋体4は、筒状ケース7aの開口部10に装着される部材であり、開口部10に挿入される円筒状の筒部54と、拡声スロート部THと、両者を区画する隔壁46とを有する。筒部54と隔壁46とは樹脂で一体に形成されている。
【0031】
筒部54は、隔壁46に対して蓋体4の裏面側(筒状ケース7aに装着時、内面側)に形成され、拡声スロート部THは、隔壁46に対して蓋体4の正面側(筒状ケース7aに装着時、外面側)に形成されている。隔壁46の裏に形成される筒内空間を、凹部33という。
隔壁46は、筒状ケース7aの内部への水の浸入を防ぐなどの目的で設けられている。この隔壁46により、音響報知ユニット7の内部と外部は遮断され、音響報知ユニット7の内部に位置する制御基板12が、水、湿気などから保護される。
【0032】
筒部54は、蓋体4に加わった応力を一箇所集中しないようにするため、開口部10の円筒部30の内周面と略同一の大きさを持っている。図6に示すように、筒部54の外周面の一部には、前述した円筒部30に形成された切り欠き23bを通り、係止突起23aと係合するための係止突起51が設けられ、これにより、装着された蓋体4が筒状ケース7aから抜け落ちないようにしている。なお、筒部54は、抜け落ち防止のための係止構造を有するものならば、その形状は必ずしも略円筒形状でなくてもよい。略楕円形状でもよく、略長方形状でもよい。
【0033】
さらに筒部54には、水が、円筒部30の壁を伝わって筒状ケース7aの内部に浸入することを防止するための防水パッキン56を保持するパッキン装着溝55が形成されている。この防水用パッキン56により、隔壁46の裏の凹部33と蓋体4の周囲に存在する空隙を閉鎖することができ、外部から音響報知ユニット7内への水の浸入を防止することができる。
【0034】
以下、蓋体4に設けられている拡声スロート部THの形状を詳細に説明する。
拡声スロート部THは、スピーカ9からのアラーム音等を共鳴・拡声させるための空洞であり、スロート形状をなしている。従来技術では、拡声スロート構造の一部に別部材(パッキンや別ユニット)が設けられ、これらの別部材が拡声スロート部の一部を構成していたが、本発明の実施形態では、拡声スロート部自身で拡声スロート構造を形成する。
【0035】
拡声スロート部THは、蓋体4の正面側(筒状ケース7aに装着時、外面側)に形成されている正面カバー44と、前記隔壁46とによって規定される内部空間である。正面カバー44及び隔壁46は、拡声スロート部THを十分に共鳴・拡声機能させるため、その長手方向に渡って一定の剛性のある素材/厚さで構成されている。
正面カバー44は、拡声スロート部THの前面側の外壁を形成し、蓋体4を筒状ケース7aに装着した場合、筒状ケース7aと略同一の曲面を形成する。正面カバー44の裏面の壁(「前面壁45」という)は、共鳴・拡声する拡声スロート部THのスロート内壁の一部をなす。
【0036】
正面カバー44の外面には、筒状ケース7aの側面に設けられた係止案内マーク36と協働する部分で、蓋体4を筒状ケース7aに装着した際の係止固定箇所を案内する働きをするマーク44aが付いている。このマーク44aと係止案内マーク36とは、蓋体4を筒状ケース7aの開口部10へ挿入し、回転係止した際に、回転が十分に行われたかどうかを示す目印となる。
【0037】
隔壁46は、筒状ケース7aの内部への水の浸入を防ぐ目的で設けられているだけでなく、拡声スロート部THの背面側(筒状ケース7aに装着時内側)の内壁としての役割も果たす。すなわち、隔壁46は、共鳴・拡声する拡声スロート部THの内壁の一部をなす。
さらに隔壁46の両側面は、前記正面カバー44の両側面に滑らかにつながっている。これらのつながっている部分を左側面壁47及び右側面壁48という。これらの左側面壁47及び右側面壁48も共鳴・拡声する拡声スロート部THのスロート内壁の一部をなす。
【0038】
すなわち、この隔壁46と前面壁45と、これらを滑らかにつなぐ左側面壁47及び右側面壁48とにより、拡声スロート部THのスロートの内壁が形成される。拡声スロート部THはその断面が略半円形状に、すなわちホーン状に形成されることになる。
この拡声スロート部THの入口にあたる部分であるスロートの口部40は、連通孔32を通ったスピーカ9からの音波がスロートに入力される部分である。図8に示すように、スロートの口部40の断面は略半楕円形状になっているが、連通孔32からの音を遮ることなく拡声スロート部THに入力できるのであればその断面形状は問わない。
【0039】
拡声スロート部THは、スロートの口部40を通じて入力された音を共鳴により拡声するための部分であり、共鳴長を確保するため、蓋体4を筒状ケース7aに装着したとき、筒状ケース7aの長手方向(ユニットの積層方向)にそのスロートが長くなるよう設けられている。
この拡声スロート部THによる共鳴・拡声機能のために、スピーカ9から発生する音波は、必要な周波数特性を持つ音響へ容易に変換することができ、音響報知ユニットとしての音圧も確保することができる。
【0040】
拡声スロート部THは、筒状ケース7aと脱着容易にするためにその断面が略半円形状に形成されていたが、筒状ケース7aと一体成型されている場合等においてはその断面形状は共鳴・拡声機能を有する限り変形してもかまわない。
また、左側面壁47及び右側面壁48の下には、隔壁46とつながる底面壁49が正面側に向かって曲げられ、略放物面を描いて一体形成されている。そして、この底面壁49の端面と、前記正面カバー44の底辺44bとによって、拡声スロート部THの音響放射口43が形成される。
【0041】
音響放射口43は、筒状ケース7aと略同一曲面を形成しているので、拡声スロート部THからの音波を水平方向に放つことに役立つ。このような放音に関する構造を、筒状ケース7aの側面位置に設けたことで、水平・垂直方向の音の広がり(指向特性)を改善することができ、広範囲の作業者(利用者)へ拡声音が伝達しやすくなる。
なお、隔壁46や底面壁49は拡声スロート部THと一体でなくてもよく、筒状ケース7aの一部であってもよい。その際には拡声スロート部THを構成する部分を保持する機構を別途設ければよい。
【0042】
以上に説明した音響報知ユニット7の構造において、筒状ケース7aに装着された蓋体4を外して、音量調整用つまみ15と、音質調整用つまみ16を調整する手順を、図10を参照しながら説明する。
図10(a)は、音響報知ユニット7の筒状ケース7aに蓋体4を装着した状態を示す斜視図である。筒状ケース7aの側面には係止案内マーク36が付いており、この係止案内マーク36は、蓋体44についている係止案内マーク44aと協働する部分で、ホーン4を報知ユニット4に装着した際の係止固定箇所を示すものである。
【0043】
この状態から、蓋体4を取り外すには、蓋体4を正面視で反時計回り方向に回転させ、係止案内マーク44aを音響報知ユニット7の側面に設けられた目印39(○)に合わせるまで回転させる。これにより、蓋体4の係合用の係止突起51と、開口部10を形成する円筒部30の係止突起23aとの係合が外れ、蓋体4を開口部10から取り外すことができるようになる。この開口部10から外れた蓋体4の外観を図10(b)に示す。
【0044】
蓋体4を完全に取り外すと、図10(c)に示すように、開口部10を通して、筒状ケース7aの中の制御基板12を見ることができるようになる。この状態でドライバなどの工具を開口部10の中に挿入して、音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16などを回転調整することができる。
以上のように、本発明の一実施形態に係る音響報知ユニット7によれば、音響共鳴・拡声構造を持つ拡声スロート部THを筒状ケース7aに装着することができ、信号表示灯1の高さを余分に高くすることなく使用できる。また拡声スロート部THの配置位置を筒状ケース7aの側面の任意の位置に選択できる。よって、音響報知ユニット7を設置する上下構造や床、設置対象機器の板材など、取付け環境から受ける垂直方向の音響特性への悪影響を最小限に留め、安定した音響特性が得られる。
【0045】
さらに筒状ケース7a内に備える制御基板12等の機能調整を行う部材を、蓋体4により保護することができるとともに、音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16などを操作する作業の際には、比較的容易に蓋体4の取りはずしを可能にした。すなわち、通常時利用しない音量調整用つまみ15、音質調整用つまみ16などを、筒状ケース7aの内部に、浸水保護をしつつ保持できる。
【0046】
次にスピーカ9の設置部位の変形例を説明する。今までの形態ではスピーカ9は筒状ケース7aに内蔵されていた。具体的にはスピーカ9は、開口部10を形成する円筒部30の連通孔32の上側に相当する部位に取り付けられていた。しかし、スピーカ9の設置位置はこれに限られるものではなく、例えば、蓋体4に取り付けられていても良い。
図11及び図12は、蓋体4の拡声スロート部THにスピーカ9を取り付けた例を示す断面図である。図11は、蓋体4の上部にスピーカ9を取り付けた例を示し、図12は、蓋体4の隔壁46の裏側にスピーカ9を取り付けた例を示す。いずれの場合も、スピーカ9に音響波信号を供給するために、スピーカ9の装着基板31と、筒状ケース7a内部の制御基板12との間をケーブル又は接続端子で結ぶ必要がある。このためには、図11の場合、開口部10の円筒部30に接触端子(図示せず)を取り付けて蓋体4を装着したときにスピーカ9の装着基板31の所定の端子と前記開口筒に接触端子とが接触して、音響信号を伝送できるようにする必要がある。図12の場合には、スピーカ9の装着基板31の所定の端子と制御基板12の音響出力端子とを柔軟なケーブルで接続しておく必要がある。
【0047】
このようにスピーカ9及びその装着基板31を蓋体4に設けることで、筒状ケース7a側に音源設置部34を設けなくてもよくなり、音響発生機能を蓋体4に持たせることができる。例えば、発生されたい音響波の種類(周波数)に応じた蓋体4を適時取り替えることができるから、警報音の周波数を変更した際に生じる警報音量の低減等を少なくすることができる。
【0048】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態を示す信号表示灯の正面図である。
【図2】音響報知ユニット7の断面図を示す。
【図3】音響報知ユニット7から制御基板12やスピーカ9を取り除いた状態、すなわち円筒形状の筒状ケース7aのみを示す断面図である。
【図4】筒状ケース7aの正面図である。
【図5】筒状ケース7aに蓋体4を装着した状態を示す断面図である。
【図6】蓋体4の側面図である。
【図7】蓋体4の断面図である。
【図8】蓋体4の平面図である。
【図9】蓋体4の底面図である。
【図10】音響報知ユニット7に装着された蓋体4を外して、音量調整用つまみ15と、音質調整用つまみ16を調整する手順を示す斜視図である。
【図11】蓋体4の拡声スロート部にスピーカ9を取り付けた例を示す断面図である。
【図12】蓋体4の隔壁46の裏側にスピーカ9を取り付けた例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 信号表示灯
3 ベースユニット
4 蓋体
7 音響報知ユニット
7a 筒状ケース
9 スピーカ
10 開口部
12 制御基板
15 音量調整用つまみ(調整部材)
16 音質調整用つまみ(調整部材)
32 連通孔
43音響放射口
37 下部ユニット連結部
38 上部ユニット連結部
44 正面カバー
46 隔壁
54筒状部
TH 拡声スロート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する他のユニットに連結することが可能な音響報知ユニットであって、
筒状ケースと、
前記筒状ケースの側面に形成された開口部と、
前記開口部に装着される蓋体と、
前記筒状ケース又は前記蓋体に内蔵されたスピーカとを備え、
前記蓋体には、前記スピーカから出力される音響波を発散させることのできる拡声スロート部が形成されていることを特徴とする音響報知ユニット。
【請求項2】
前記蓋体は、前記開口部に挿入される筒状部と、前記筒状部を塞ぐ隔壁と、前記開口部に装着された場合に前記筒状ケースの側面とほぼ同一面になる正面カバーとを有し、前記拡声スロート部は、前記隔壁と前記正面カバーとの間に形成される請求項1記載の音響報知ユニット。
【請求項3】
前記隔壁の一端部は正面側に曲げられ、ここに前記拡声スロート部の音響放射口が形成される請求項2記載の音響報知ユニット。
【請求項4】
前記スピーカは前記筒状ケースに内蔵され、
前記開口部には、前記スピーカから出力される音響波を導くための連通孔が形成され、
前記拡声スロート部は、前記蓋体を前記開口部に装着した状態で、前記連通孔につながる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項5】
前記連通孔は、前記蓋体を前記開口部に装着したときに前記隔壁よりも正面側に位置する請求項4記載の音響報知ユニット。
【請求項6】
前記連通孔は、この音響報知ユニットを他のユニットに対して上下方向に連結した状態で、下方向に向けられて形成されている請求項4又は請求項5記載の音響報知ユニット。
【請求項7】
前記筒状ケースの中には、制御基板が内蔵されている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項8】
前記筒状ケースの中には、配線ケーブルが通っている請求項1〜請求項7のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項9】
前記開口部の奥には、前記蓋体を外した状態で調整することのできる調整部材が配置されている請求項1〜請求項8のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項10】
前記筒状ケースの上部、下部のいずれか又は両方には、対応する他のユニットと構造的及び電気的に連結される連結接続部が設けられている請求項1〜請求項9のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項11】
光による表示機能を有さない請求項1〜請求項10のいずれかに記載の音響報知ユニット。
【請求項12】
設置対象機器に設置される信号表示灯であって、
光信号を発する表示ユニットと、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の音響報知ユニットとを連結してなることを特徴とする信号表示灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−17132(P2009−17132A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175448(P2007−175448)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000143695)株式会社パトライト (39)
【Fターム(参考)】