説明

音響波信号処理装置ならびにその制御方法および制御プログラム

【課題】平板上に配置された音響波検出器で、生産コストを増大させることなく、アーチファクトを低減した再構成画像を得るための技術を提供する。
【解決手段】複数の素子を持つ音響波検出器が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択部と、音響波信号群を用いて注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出部と、判定部を有し、選択部は、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が異なる複数の音響波信号群を設定し、判定部は、注目点に対して音響波信号群ごとに算出された音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものかを判定し、少なくとも一つの音響波信号群において音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する音響波信号処理装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波信号処理装置ならびにその制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーなどの光源から照射した光を用いて生体などの被検体内の情報を得る光画像化装置の研究が医療分野で積極的に進められている。
このような光画像化技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモ
グラフィー)がある。光音響トモグラフィーとは、光音響効果により被検体内で伝播・拡散した光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波に基づき、被検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する技術である。光学特性値に関連した情報取得の一例としては、音響波を、被検体を取り囲む複数の個所で検出し、得られた信号を数学的に解析処理する方法がある。
【0003】
この技術で得られる、光照射によって生じた初期音圧分布あるいは光エネルギー吸収密度分布などの情報は、新生血管の増殖を伴う悪性腫瘍場所の特定などに利用できる。以降の説明では光エネルギー吸収密度分布の記述を省略するが、初期音圧分布の説明に含まれるものとする。このような初期音圧分布に基づく3次元再構成画像の生成と表示は生体組織の内部の把握に有用であり、医療分野における診断に役立つことが期待されている。ただし、発展途上の技術であるため、よりノイズ、アーチファクトの低減された画像の生成が望まれている。
【0004】
ここで、光音響効果とは、物体にパルス光を照明すると、被測定物内の吸収係数が高い領域で体積膨張により音響波(疎密波であり、典型的には超音波)が発生する現象である。パルス光を照射することによる体積膨張によって発生した音響波を、本発明において「光音響波」という。
【0005】
一般に光音響トモグラフィーでは、被検体全体を取り囲む閉じられた空間表面(特に球面状測定表面)の様々な点で、音響波の時間変化を理想的な音響検出器(広帯域・点検出)で測定すれば、理論的には光照射により生じた初期音圧分布を完全に可視化できる。また、閉じられた空間でなくとも、被検体に対して円柱状あるいは平板状に測定可能であれば、光照射により生じた初期音圧分布をほぼ再現できることが数学的に知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
下記式(1)は、PATの基本となる偏微分方程式であり、「光音響波動方程式」と言われる。この式を解けば、初期音圧分布からの音波伝播を記述でき、どの場所で音響波がどのように検出できるかを理論的に求めることができる。
【数1】


ここで、rは位置、tは時間であり、p(r,t)は音圧の時間変化、p0(r)は初期音圧分布、cは音速である。δ(t)は光パルスの形状をあらわすデルタ関数である。
【0007】
一方、PATの画像再構成とは、検出点で得られた音圧pd(rd,t)から初期音圧分布p0(r)を導き出すことであり、数学的には逆問題と呼ばれる。以下にPATの画像再構成手法で代表
的に使われているUniversal Back Projection(UBP)法に関して説明する。式(1)の光音響
波動方程式を周波数空間上で解析することで、p0(r)を求める逆問題を正確に解くことが
できる。その結果を時間空間上で表したのがUBPである。最終的に以下のような式(2)が導かれる。
【数2】


ここで、Ω0は任意の再構成ボクセル(あるいはフォーカス点)に対する全体の測定エ
リアS0の立体角である。
【0008】
さらに、式を分かりやすく変形すると、以下の式(3)となる。
【数3】


ここでb(r0,t)は投影データ、dΩ0は任意の観測点Pに対する検出器dS0の立体角である
。この投影データを式(3)の積分に従って逆投影することで初期音圧分布p0(r)を得ることができる。
【0009】
なお、b(r0,t)とdΩ0は、以下の式(4)、式(5)で表わされる。
【数4】


ここで、θは検出器と任意の観測点Pとがなす角度である。
【0010】
音源の大きさに比べて、音源と測定位置の距離が十分大きい場合(遠距離音場近似)、以下の式(6)となる。
【数5】


このときb(r0,t)は、以下の式(7)となる。
【数6】

【0011】
このようにPATの画像再構成では、検出器で得られた検出信号p(r0,t)を時間微分することで投影データb(r0,t)を得て、式(3)に従って逆投影することで、初期音圧分布p0(r)が
求まることが知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0012】
ただし、式(3)を求めるために利用した光音響波動方程式である式(1)は、「音速一定」、「全方位からの測定」、「インパルス的光励起」、「広帯域での音響波検出」、「ポイントでの音響波検出」、「連続的な音響波のサンプリング」を仮定している。現実的には、これらの仮定を満たす装置の実現は容易ではない。
【0013】
例えば、現実の被検体では、被検体全体を囲む、閉じた空間表面全体で、音響波検出情報を得ることは困難である。また、音響波の測定領域を大きくするには、音響検出器のサイズや素子数、および各素子の信号処理、制御部を増大させる必要があり、製造コストの増加につながる。このような事情から、PATの技術を用いた実用的な測定装置は、被検体
の特定の方向から、限られた大きさの探触子を用いて音響波を検出する装置として構成されることが多い。
【0014】
このような装置の一例として、特許文献1で開示されているように、平板型測定系の光音響トモグラフィーが考案されている。この光音響トモグラフィーでは、平板で挟まれた被検体に光を照射し、平板上に配置された音響波検出器で音響波を検出する。ここで、光の照射数と音響波受信の回数は、複数回行われる場合もある。複数回の光の照射と音響波受信を元に、音響波信号、または、音響波信号に基づいて算出された各値を平均化した値を算出して用いることもある。
【0015】
なお、平板の探触子を被検体に密着させて音響波を検出する方法には、ノイズの少ない音響波の検出ができる点や、検出を繰り返す間、被検体や探触子の位置の固定や、探触子の移動の制御等が容易になる、といった利点がある。
【0016】
さらに、本発明と類似した効果を持ち、タイムドメイン法とフーリエドメイン法による画像再構成方法について、特許文献2の画像再構成方法がある。特許文献2では、2種類の画像再構成方法による2種類の再構成画像から、アーチファクトの低減を図る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5840023号公報
【特許文献2】特願2008−201902号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】PHYSICAL REVIEW E 71, 016706(2005)
【非特許文献2】REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS, 77, 042201(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来の技術のように、理想的ではない条件で検出した音響波に基づく情
報を用いて、解析解による画像再構成処理を行うと、再構成画像には計算上、多数のアーチファクトが生じてしまう問題がある。
【0020】
このようなアーチファクトは、理想的ではない条件で検出した音響波に基づいて解析解による画像再構成を行うと、必ず生じるものである。理想的でない条件としては、音響波検出器が平板上に配置されるために全方位からの検出にならない点や、理想的な音響波検出器(広帯域・点検出)ではない点等がある。
【0021】
例えば、前述のUBP法の計算過程で得られる投影データb(r0,t)では、計算上、音源の可能性がある正の値と、逆投影時には音源でない値を打ち消す負の値が算出される。全方位からの検出信号を使用する等の理想的な条件で算出された場合には正負の値は相殺され、音源を示す値だけを含む再構成画像が算出される。しかし、全方位の検出信号を使用できない場合には、偏った位置にある一部の投影データのみで逆投影するため、初期音圧分布p0(r)には、実際には音源ではないが、計算上、音源の可能性を否定しきれずに残る値が
ある。
【0022】
再構成画像を表示して視認すると、これらの音源の可能性を否定しきれずに残った値が、検出対象物体に近い位置に近い強度で存在すると、検出対象物体を間延びさせたようなアーチファクトが表示される。また、このような音源の可能性を否定できない値は、計算上、検出対象物体の大きさ、数、位置により、様々な位置に生じうる。そのため、再構成画像全体にノイズのような多数のアーチファクトが表示される。
【0023】
さらに、画像再構成を行う領域と検出器の位置により、アーチファクトは規則的な像を作りやすい点も再構成画像の視認時には問題となる。これは、解析解による再構成処理において、特定の向きで検出した音響波を用いて、音源の存在を推定するような規則的な計算処理が繰り返されるためである。例えば、UBP法では、検出器の素子の位置を中心とし
た半球面上にあたる位置に音源の存在を推定するような規則的な計算処理が繰り返される。そのため、再構成画像に残るアーチファクトも規則的な位置に生じる傾向があり、ランダムなノイズよりも、判別しづらいアーチファクトとなりやすい。
【0024】
このようなアーチファクトを軽減させる方法としては、より理想的な音響波検出器を用いる方法が挙げられる。しかし、人体のような被検体に全方位から光音響波を検出できる音響波検出器は、現実的には存在しない。また、より広範囲な受信面や半球面のような形状の音響波検出器や、複数の音響波検出器を配置するような方法では、生産コストを増大させ、冗長な構成を必要とする。
【0025】
これらの問題は、解析解による画像再構成処理を行う画像情報取得装置においては、タイムドメイン、フーリエドメイン等の画像再構成処理方法によらず、全般的に生じる問題である。特に、光音響波を用いた再構成画像を取得し、医用画像として診断に役立てようとする光音響トモグラフィーにおいては、よりアーチファクトの少ない再構成画像を得ることが課題となっている。
【0026】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、平板上に配置された音響波検出器で、生産コストを増大させることなく、アーチファクトを低減した再構成画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するため、本発明の以下の構成を採用する。すなわち、被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器と、前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号
を選択して音響波信号群を設定する選択部と、前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出部と、判定部と、を有し、前記選択部は、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、前記判定部は、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出部が算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定、および、前記第一の判定の結果により、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定を行うことを特徴とする音響波信号処理装置である。
【0028】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器を有する音響波信号処理装置の制御方法であって、前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択ステップと、前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出ステップと、判定ステップと、を有し、前記選択ステップは、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、前記判定ステップは、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出ステップが算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定ステップ、および、前記第一の判定ステップの結果、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定ステップを含むことを特徴とする音響波信号処理装置の制御方法である。
【0029】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器を有する音響波信号処理装置に、前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択ステップと、前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出ステップと、判定ステップと、を実行させる、音響波信号処理装置の制御プログラムであって、前記選択ステップは、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、前記判定ステップは、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出ステップが算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定ステップ、および、前記第一の判定ステップの結果、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定ステップを含むことを特徴とする音響波信号処理装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、平板上に配置された音響波検出器で、生産コストを増大させることなく、アーチファクトを低減した再構成画像を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】画像情報取得装置の機能ブロックを示す図。
【図2】情報処理部をソフトウェアにより実現するコンピュータの構成図。
【図3】音響波信号計測部の構成例を示す図。
【図4】中間データの画像再構成を行う手順を示すフローチャート。
【図5】中間データを元に画像再構成を行う手順を示すフローチャート。
【図6】1点ごとに画像再構成を行う手順を示すフローチャート。
【図7】注目点に対する有効な素子の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0033】
[実施形態1]
本実施形態では、検出した音響波から初期音圧分布を求めて3次元再構成画像を生成する画像再構成方法について説明する。本実施形態の画像再構成方法を実施する画像情報取得装置は、光音響波診断装置である。ここで、画像再構成に必要な情報は、音響波信号を処理して得られる初期音圧分布などの音圧に関連する情報であるため、本発明を音響波信号処理装置として捉えることもできる。その場合、音響波信号処理により得られた情報を制御装置等で別途画像化して、診断に用いることになる。本発明はまた、音響波信号処理装置の制御方法または制御プログラムとして捉えることもできる。
【0034】
光音響波診断装置は、光を照射された被検体が放出する音響波を検出し、音響波信号に基づき音圧に関連する情報を3次元再構成画像データとして生成する。本実施形態では、1回の撮影で検出された音響波信号より、検出元の素子の数や位置が異なる複数の音響波信号群を抽出して、複数の3次元再構成画像データを中間データとして生成する。各3次元再構成画像の同一位置(注目点)における3次元画像データ群(つまりボクセルデータ)を判定し、全てのボクセルデータで音源を示す値である場合のみ音源とみなして、再構成画像を生成する。つまり、異なる音響波信号群より生成された、注目点のボクセルデータのうち、1つのボクセルデータが音源を示す値でないと判定された場合、その注目点に対応する被検体内の位置には、音源となる光吸収体は存在しないと判定される。以降の説明においては、「音圧に関連する情報」として、初期音圧を例として説明するが、本発明はこれに限るものではない。本発明において、「音圧に関連する情報」とは、初期音圧や、初期音圧から求められる光エネルギー吸収密度、吸収係数等が含まれる。
【0035】
(概略機能ブロック図)
図1は、本実施形態に係る光音響波診断装置の機能構成を示している。図1に示すように、本実施形態に係る光音響波診断装置は、情報処理部1000、音響波信号計測部1100によって構成されている。各機能ブロックを実施するための機器構成の例を図2、図3に示している。図2は、本実施形態に係る光音響波診断装置の情報処理部1000を実施する機器構成の一例である。また、図3は、音響波信号計測部1100を実施する機器構成の一例である。
【0036】
音響波信号計測部1100は、その内部の音響波検出器1105(図3)の各素子で検出された音響波信号を含む音響波信号情報を情報処理部1000に送信する。
ここで、音響波検出器1105は、例えば、音響波を検出する探触子である。また、音響波信号情報とは、音響波信号や、受信面上に配置された素子の位置や感度、指向性に関する情報のように受信素子の情報が該当する。さらに、音響波取得の撮影パラメータや他の計測情報のような音響波信号取得時の条件に関わる情報も含まれる。光音響波診断装置では、音響波を放出する光の光源の制御や、被検体を圧迫する場合の圧迫に関する情報も、音響波信号取得時の条件として取得する。なお、後述するように、音響波検出器は検出した音響波をアナログ電気信号に変換するものである。制御部1102(図3)がこのアナログ電気信号に少なくとも増幅、デジタル変換処理を加えて、情報処理部に送信する音響波信号となる。
【0037】
ここで、素子の位置に関する情報とは、被検体や、画像再構成の対象とする再構成領域と素子との位置関係が把握できる情報であれば、どのような情報でもよい。例えば、各素子の数、素子配列のピッチ、受信面上における素子位置等の情報と、音響波検出器の位置
、被検体の位置やサイズ、画像再構成を行う再構成領域の位置やサイズ、それぞれの相対的な位置関係などの情報である。
素子ごとに取得される情報は、音響波検出器1105の素子の識別子と関連付けられた情報として送信される。
【0038】
音響波信号情報の音響波に関する情報は、音響波信号の情報を送信してもよいし、素子の感度補正、ゲイン補正等の補正を施した後の音響波信号の情報を送信してもよい。また、光音響波診断装置における1回の撮影処理で複数回の光を照射し、それぞれの照射で得られた音響波信号の平均を求め、音響波信号情報として送信してもよい。
【0039】
なお、音響波信号情報において、実施形態の構成に応じて静的な定数としても実施に支障のない情報は、情報処理部1000の主メモリ102や、磁気ディスク103(図2)にあらかじめ記憶しておいて、画像再構成処理の実行時に利用してもよい。ただし、撮影の度に動的に定まる情報は音響波信号情報の一部として、音響波信号計測部1100から情報処理部1000に送信する。
例えば、音響波検出器1105の受信面上における素子の位置に関する情報は、素子の識別子が、音響波信号計測部1100から情報処理部1000に送信された後、あらかじめ情報処理部1000に記憶されている位置情報を参照しても良い。
【0040】
情報処理部1000は、音響波信号計測部1100から得られた音響波信号情報を用いて、3次元画像再構成処理を行い、生成された3次元再構成画像から表示用画像を生成して表示する。
【0041】
次に図1の下側における、情報処理部1000の機能ブロックについて説明する。情報処理部1000は、音響波情報取得部1001、画像再構成部1002、表示情報生成部1003、表示部1004によって構成される。
【0042】
音響波情報取得部1001は、音響波信号計測部1100から送信された音響波信号情報を取得し、画像再構成部1002に送信したりメモリに保存したりすることで、画像再構成部1002が利用できるようにする。
【0043】
画像再構成部1002は、画像再構成を行う領域内の各点ごとに、後述する方法で選択された音響波信号のみを用いて3次元画像再構成を行い、音響波信号情報に基づく3次元再構成画像(ボリュームデータ)を生成する。ここで、画像再構成部1002の画像再構成処理は、解析解による3次元画像再構成であれば、タイムドメイン法であっても、フーリエドメイン法であっても本発明の第1の実施形態を適用することができる。画像再構成部は、後述するように、本発明の選択部、算出部、判定部および決定部の機能を果たす。
【0044】
光音響波診断装置では、被検体内における光の吸収係数分布を示す値を算出し、再構成された3次元画像を生成する。照射する光の波長に応じて、被検体内で光の吸収の度合いが異なることから、被検体内の組成の相違を3次元画像として表示することができる。
【0045】
なお、再構成処理で用いる各情報は、音響波信号情報として、音響波計測部1100から送信される情報に含めてもよいし、情報処理部が図2のような構成であれば、あらかじめ、磁気ディスク103に格納されている情報を使用してもよい。さらに、オペレータの指示により入力部106からの操作指示で指定することも可能である。
生成された3次元再構成画像は、画像再構成部1002から表示情報生成部1003に送られる。
【0046】
表示情報生成部1003は、生成された3次元再構成画像から、表示部1004で表示
する情報を生成する。表示情報は、3次元画像情報に基づいて生成される表示情報であれば、どのような表示情報でも実施できる。表示情報の例としては、ボリュームレンダリング、多断面変換表示法、最大値投影法などで得られる2次元画像がある。また、3次元画像情報から得られる情報を統計情報などの別の表示情報を生成することもできる。
【0047】
光音響波診断装置では、照射光の波長に応じた被検体内の吸収係数分布値に基づく3次元画像情報を得ることができる。これらの値を、生体組織を構成する物質(グルコース、コラーゲン、酸化・還元ヘモグロビンなど)固有の波長依存性と比較することによって、様々な情報を生成することができる。すなわち、生体を構成する物質の濃度分布を画像化したものや、各値の統計情報を数値、グラフやヒストグラム等で表示するための情報などである。
【0048】
表示部1004は、表示情報生成部1003で生成した表示情報を表示するためのグラフィックカード、および、液晶ディスプレイやCRTディスプレイのような、表示装置である。
【0049】
なお、本発明の画像再構成方法を実施する光音響波診断装置の説明では、音響波信号計測部1100と情報処理部1000を分けて説明している。具体的には、デジタルマンモグラフィのような計測装置と制御装置(PCでもよい)のような機器構成が一例として挙げられる。しかし、音響波計測部1100と情報処理部1000を含む1つの画像情報取得装置としても実施可能であることは言うまでもない。例えば、一般的な超音波診断装置のようなモダリティの装置構成で実施することも可能である。
【0050】
図2は、情報処理部1000の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成を示す図である。
【0051】
CPU101は、主として情報処理部1000の各構成要素の動作を制御する。主メモリ102は、CPU101が実行する制御プログラムを格納したり、CPU101によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。磁気ディスク103は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライバ、後述するフローチャートの処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等を格納する。表示メモリ104は、モニタ105のための表示用データを一時記憶する。
【0052】
モニタ105は、例えばCRTディスプレイや液晶モニタ等であり、表示メモリ1204からのデータに基づいて画像を表示する。入力部106は、マウス、キーボードなどのオペレータによるポインティング入力及び文字等の入力を行う。本発明の実施形態におけるオペレータの操作は入力部106より行われる。
【0053】
I/F107は、情報処理部1000と外部との間で各種データのやりとりを行うためのものであり、IEEE1394やUSB、イーサネットポート(「イーサネット」は登録商標)等によって構成される。I/F107を介して取得したデータは、主メモリ102に取り込まれる。
音響波信号計測部1100の機能は、I/F107を介して実現される。なお、上記各構成要素は共通バス108により互いに通信可能に接続されている。
【0054】
図3は、音響波信号計測部1100の構成の一例である光音響波診断装置を示す図である。
光源1101は、レーザーや発光ダイオード等のような被検体に照射する照射光の光源である。照射光は、被検体を構成する成分のうち特定の成分で吸収の度合いが強いと予想される波長の照射光を用いる。
【0055】
制御部1102は、光源1101、光学装置1104や音響波検出器1105、位置制御手段1106の制御を行う。制御部1102はまた、音響波検出器1105で得られた光音響波の電気信号を増幅し、アナログ信号からデジタル信号に変換する。また、各種信号処理、各種補正処理を行う。また、不図示のインターフェースを介して、音響波信号計測部1100から、例えば情報処理部1000のような外部機器に音響波信号を送信する。
【0056】
レーザーの制御の内容としては、レーザー照射のタイミング、波形、強度などの制御がある。音響波検出器の位置制御手段1106の制御については、音響波検出器1105の位置を適切な位置に移動する。
【0057】
制御部1102はまた、音響波検出器1105が検出した光音響波の信号をレーザー照射のタイミングと同期をとって計測するための各制御を行う。さらに、複数回のレーザーを照射して得られる素子ごとの音響波信号を加算平均して素子ごとの音響波信号の平均値を算出するような信号処理も行う。
【0058】
光学装置1104は、例えば光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズなどである。このような光学部品は、光源から発せられた光1103が被検体1107に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。このような光学部品は、光源から発せられた光1103が被検体1107に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。光源1101、光学装置1104は、複数用いることも可能である。
【0059】
なお、光源1101から照射された光1104は、光導波路などを用いて伝搬させることも可能である。光導波路としては、光ファイバが好ましい。複数の光源があり、かつ、光ファイバを用いる場合は、それぞれの光源に対して複数の光ファイバを使用して、生体表面に光を導くことも可能である。あるいは、複数の光源からの光を一本の光ファイバに導き、一本の光ファイバのみを用いて、すべての光を生体に導いても良い。
【0060】
このような構成で制御部1102の制御の元、光源1101で発生させた光1103を、光学装置1104を介して被検体1107に照射すると、被検体内の光吸収体1108が光を吸収し、光音響波1109を放出する。この場合、光吸収体1108が音源に該当する。
【0061】
音響波検出器1105は、圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなどで構成される。音響波を検知できるものであれば、どのような音響波検出器を用いてもよい。音響波検出器1105は、被検体1107に直に接触して音響波を検出してもよいし、平板1110のような板で被検体を圧迫し、平板越しに圧迫された被検体の光音響波1109を検出してもよい。
【0062】
本実施形態の音響波検出器は、複数の素子(検出エレメント)が2次元的に配置されたものを前提に説明する。このような2次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で音響波を検出することができ、検出時間を短縮できると共に、被検体の振動などの影響を低減できる。また、音響波検出器1105と被検体との間には、音響波の反射を抑えるための不図示のジェルや水などの音響インピーダンスマッチング剤を使うことが望ましい。
【0063】
ここで、光を被検体に照射する領域や音響波検出器1105は移動可能であってよい。光源から発生した光が被検体上を移動可能となるように光学装置1104を構成すること
ができる。光を被検体に照射する領域を移動させる方法としては、可動式ミラー等を用いる方法、光源自体を機械的に移動させる方法などがある。さらに、音響波検出器1105の位置を移動する位置制御手段1106を設けて、音響波検出器を移動できるように構成する。位置制御手段1106の一例としては、位置センサの情報に基づき平板1110上をモーターで移動する方法がある。
【0064】
光を照射する領域や音響波検出器1105の位置の制御は制御部1102が行う。また、制御部1102は、光を被検体1107に照射する領域(被検体に照射される光)と、音響波検出器1105とを同期して移動するように制御することもできる。光の照射領域が移動可能であることにより、より広範囲に光を照射し、かつ、照射領域に対して適切な位置にある音響波検出器で光音響波を検出することができるようになる。
【0065】
(実施手順)
次に、図4及び図5のフローチャートを用いて、本実施形態における光音響波診断装置が実行する具体的な処理の手順を説明する。
【0066】
図4は、本実施形態における素子数や位置の異なる受信素子群で検出された複数の音響波信号群に基づく3次元再構成画像群を生成する処理の手順を示したフローチャートである。また、図5は、同じ再構成領域を対象に再構成された複数の3次元再構成画像群から、アーチファクトを低減した3次元再構成画像を生成する手順を示したフローチャートである。本実施形態では、素子の組み合わせや素子の位置が異なる受信素子で検出された複数の音響波信号群に基づいて再構成された複数の3次元再構成画像を生成する手順に相当する。本発明において選択部で選択される音響波信号群は、同じ素子群であっても、音響波検出器の移動によりその素子群の位置が異なる場合は、移動前の音響波信号群と、移動後の音響波信号群は異なる音響波信号群として選択することができる。
【0067】
はじめに、図4のフローチャートを用いて、素子数や位置の異なる複数の音響波信号群に基づく3次元画像群を画像再構成する手順を説明する。
図4のフローチャートは、本発明の画像再構成方法を実施する画像情報取得装置の撮影処理を始めた時点から開始される。
【0068】
ステップS401において、音響波信号計測部1100が光音響波の計測処理を開始すると、制御部1102の制御により、光源1101が、光学装置1104を介して被検体1107にレーザー光を照射する。そして、被検体1107が放出した光音響波を音響波検出器1105で検出する。光音響波を検出すると、制御部1102は、撮影時のパラメータや音響波検出器1105の素子ごとに検出された音響波信号等の音響波信号情報を生成する。
【0069】
ここで、音響波信号情報には、光音響波の計測に関連する情報ならどのような情報を含めてもよい。また、1回の撮影でレーザー光を複数回照射する場合は、レーザー照射回数や照射時刻等の情報と共に、検出された複数の音響波信号を含めてもよい。または、ノイズを軽減するために、各照射時の音響波信号の平均値を音響波信号情報とするように、信号処理を加えた情報としてもよい。
【0070】
ステップS402において、音響波信号計測部1100は、情報処理部1000の音響波情報取得部に、生成した音響波信号情報を送信する。音響波情報取得部1001は取得した音響波信号情報を主メモリ102、または、磁気ディスク103等の記憶装置に記憶し、画像再構成部1002が利用できるようにする。そして、画像再構成部1002に音響波信号情報、または、記憶したアドレスに関する情報を送信する。
【0071】
ステップS403において、画像再構成部1002は、音響波信号計測部1100から送信された音響波信号情報のうち、画像再構成処理にどの素子に関する音響波信号を用いるか選択する。
【0072】
ここで選択される音響波信号とは、例えば、1回の撮影で計測された、全部の素子分の音響波信号群を用いることもあれば、半数の素子で検出された音響波信号群を用いる場合もある。また、同じ素子数で検出された音響波信号群であっても、異なる位置の素子で検出された音響波信号群の場合もある。音響波検出器1105の受信面上に、受信素子が縦M個、横N個で配置された2次元プローブを用いるとすると、このような音響波信号を検出した素子の組み合わせC(m,n)は、次の式(8)で示される。
【数7】

【0073】
本実施形態では、この組み合わせの中から選択された受信素子の数や位置に関する情報を記録し、再構成された3次元再構成画像に関連付けられるものとする。
【0074】
ただし、記録される受信素子の数や位置の情報は、画像再構成処理ごとに使用した音響波信号を検出した受信素子群を特定できる情報であれば、どのような記録であってもよい。例えば、音響波検出器1105の素子ごとの識別子と、再構成領域との相対的な位置関係を算出できる素子の位置情報で実施できる。また、音響波検出器1105の受信平面上の領域を示す情報のように、必ずしも素子の情報でなくてもよい。また、前述の組み合わせを識別子と共に管理するテーブルを作成し、その識別子を保存するだけでもよい。
【0075】
以上のように、ステップS403では、画像再構成部が、後のステップの画像再構成処理で用いる音響波信号群として、検出した素子の数や位置の組み合わせの種類を選択し、選択した素子の数や位置の情報を記憶する。なお、本実施形態では、1回目の画像再構成処理では、全部の受信素子で検出した音響波信号を用いた画像再構成処理から始める。2回目以降は、同じ素子数で位置の異なる音響波信号群のすべてのケースを使用後、また、素子数を減らして同様に画像再構成処理を繰り返し、全部の組み合わせで実施するものとする。
【0076】
ここで、一般に、音響波信号の画像再構成処理においては、受信素子数の多いプローブで検出した音響波信号を元に画像再構成処理を行う方が、よい初期音圧分布の値が算出できる。そのため、光音響波の音源となる領域に位置する再構成画像についても、よりよい強度値が得られる場合が多い。そのため、本実施形態では、アーチファクトではなく光音響波の音源となる位置の強度値を決める代表値として、すべての受信素子で検出した音響波信号を用いて画像再構成処理を行った値を用いる例として説明する。
【0077】
ただし、光音響波の音源の位置における強度値を決める代表値として、より適した値を算出できる場合は、必ずしも全ての受信素子の音響波信号を用いる必要はない。音響波検出器1105の一部の受信素子の音響波信号情報を元に画像再構成処理を行って算出された値を代表値としてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、全部の素子で検出された音響波信号から、素子数を減らして繰り返す手順で説明しているが、素子数や素子の位置を変更する順はどのような順であってもよい。あらかじめ、ユーザーの指定により設定された組み合わせに限定された範囲で実施することもできる。
【0079】
ステップS404において、画像再構成の対象となる再構成領域における一点を注目点として抽出する。ここで、再構成領域とは、本発明の画像情報取得装置における計測範囲に相当し、画像再構成を行う3次元の領域である。
【0080】
再構成領域となる装置の計測範囲は、被検体を設置する場所の所定の領域であれば、設定可能である。また、被検体1107の領域を検出して設定する方法や、ユーザーがUIから操作して被検体1107に相当する領域を計測範囲として設定する方法でもよい。さらに、計測範囲を被検体1107の一部の領域に限定する場合には、被検体内1107の内部の領域を3次元座標で指定した領域であってもよい。
【0081】
以上のような再構成領域をボリュームデータとして定義した場合、ステップS404で抽出する注目点を抽出することは、ボリュームデータ上のボクセルを抽出することに相当する。この場合、光音響波の音響波信号情報に基づいて画像再構成処理で算出された光の吸収係数値は、再構成領域を構成するボクセルのボクセル値として扱うことができる。以降の説明では、3次元再構成画像をボリュームデータとし、注目点は、ボリュームデータを構成するボクセルであるとして説明する。
【0082】
なお、これらの領域の指定に用いる座標系は、装置上の一点を原点として定義し、更に互いに直交する3軸をそれぞれX軸、Y軸、Z軸として定義した座標系である。また、適切に位置合わせを行う手段を併用して座標変換を行える場合には、別の座標系で指定された値を用いることも可能である。例えば、被検体上の一点を原点として定義し、互いに直交する3軸をそれぞれX軸、Y軸、Z軸として定義した座標系で指定された値を装置上の座標系に座標変換して用いてもよい。
【0083】
さらに、再構成領域は平面として、本実施形態を実施しても構わない。任意の位置姿勢の平面を再構成領域として定義し、平面上の注目点のみを再構成するようにする。再構成処理は、3次元の位置姿勢を考慮した計算であるが、平面上の注目点のみで構成された3次元再構成画像を生成する。このように、2次元画像に相当する領域のみを投影して表示することにより、2次元画像にも対応することができる。
【0084】
ステップS405において、画像再構成部1002は、ステップS403で選択された受信素子の中からステップS404で抽出された注目点に対して有効な素子で検出された音響波信号を抽出する。
【0085】
ここで注目点に対する有効な素子とは、注目点に光音響波の音源が存在した場合に、素子の指向性の範囲内で音源からの光音響波を検出しうる位置にある受信素子のことである。つまり、素子の指向性の範囲内に音源が収まる必要がある。一般に、探触子の受信平面上に配置された素子は、どの位置であっても、音響波を検出するが、素子の感度により定まる指向性の範囲の外では、実用にそぐわない著しく強度の異なる信号が検出されてしまう場合がある。そのため、素子により定まる指向性の範囲内の音源による音響波信号のみを扱うことにより、実用的な素子の感度で検出された音響波信号を得ることができる。
【0086】
図7は、上述の、注目点に対する有効な素子の概念図である。有効素子の決定方法について、図7を用いて説明する。
【0087】
図7の音響波検出器の受信面701は、本実施形態に係る音響波検出器1105の一例である。音響波検出器の受信面701には音響波を受信する素子が受信面上に25個配置されている。注目点702から素子の指向性の範囲に収まる領域を算出すると、音響波検出器の受信面701の受信面に下ろした垂線703の足を中心とした円形の領域が有効素
子領域704となる。すなわち、有効素子領域704は、注目点702を指向性の範囲に含みうる素子の存在範囲を示している。有効素子領域704上に配置されている素子が、音響波検出器の受信面701の受信面上における有効素子705として選択される。
【0088】
以上のように、ステップS405において、画像再構成部1002は、再構成領域内の注目点の位置を抽出する。そして、ステップS403で決定された受信素子が指向性の範囲に入る位置に存在するような素子を選択する。そして、注目点が素子の指向性の範囲に入る位置の受信素子で検出された音響波信号を抽出する。
【0089】
ステップS406において、画像再構成部1002は、ステップS405で抽出された、注目点に対して有効な素子による音響波信号群を用いて画像再構成処理を行い、光音響波の初期音圧値を算出する。具体的には再構成領域に相当するボリュームデータのボクセルの1つに注目し、画像再構成処理により算出した値をボクセル値として扱う。
【0090】
ここで、本実施形態における画像再構成処理は、解析解による再構成処理であってタイムドメイン法に基づく再構成処理であれば、どのような再構成処理でもよい。一例としてはUBP法による再構成処理で実施することができる。
【0091】
ステップS407において、画像再構成部1002は、算出された値が光音響波の音源による初期音圧の値とみなせるか、または、アーチファクトか判定する。
【0092】
ここで、光音響波の音源とみなせない値とは、再構成領域内の注目点における画像再構成処理の算出値が、光音響波による音響波信号だけでなく、他の音響波やシステムノイズの影響と区別がつかない値のことである。理想的な環境で検出された光音響波をもとに算出される場合は、光音響波の音源のない位置ではゼロが算出される。しかし、実際の計測では、音響波検出器1105の装着された装置のシステム上のノイズが、検出された光音響波の信号情報に含まれる。また、被検体から発せられ、直接受信された音響波以外の音響波等、様々な要因で光の吸収以外の要因による値が含まれうる。
【0093】
そのため、例えば、閾値処理のような方法で、システムの構成により定める所定の数値以上の値を光音響波の音源の可能性がある値として扱い、所定の数値以下の値を光音響波の音源ではないとして判定する。このステップS407の判定処理は、本発明の第一の判定に相当する。
【0094】
ステップS407において、光音響波の音源がないと判定された場合は、ステップS408の処理を行う。ステップS408において、画像再構成部1002は、再構成処理の初期音圧値を、光音響波の音源ではないことを示し、光音響波の音源の可能性がある他の算出値と識別できる値(例えばゼロ)に置き換える。
【0095】
ここで、本実施形態では、画像再構成処理の初期音圧の算出値を置き換える手順で説明するが、算出値を置き換えない方法であっても構わない。例えば、注目点の位置ごとに光音響波の音源とみなすかどうかを示すフラグを用意する方法でもよい。この場合、本実施形態において算出値がゼロか、ゼロ以外か判別する代わりに注目点の位置ごとのフラグを参照して光音響波の音源の有無を判定するような方法であっても、本実施形態を実施することができる。
【0096】
ステップS407で光音響波の音響波信号により算出された値として判定された場合は、ステップS409の処理を行う。ステップS409において、画像再構成部1002は、ステップS407の判定後の値を注目点における初期音圧値を示すボクセル値として決定し、一時的に記憶する。記憶する情報は、注目点の3次元座標と関連付けて算出値を記
憶できれば、どのような方法であってもよい。例えば、あらかじめ3次元座標の情報と関連づけられたボクセルであれば、ボクセルの識別子とボクセル値のみを配列で記憶するような方法でもよい。
【0097】
ステップS410において、画像再構成部1002は、再構成領域内に画像再構成処理が未処理の注目点が存在するかどうか判定する。未処理の注目点がある場合は、ステップS404からステップS410までの処理を繰り返すことにより、再構成領域内のすべての点における初期音圧値を決定する。ステップS410において、未処理の注目点がないと判定された場合は、ステップS411に進む。
【0098】
ステップS411において、画像再構成部1002は、ステップS404からステップS410の処理で決定された初期音圧値群を保存する。このとき、ステップS403で選択した素子数や素子の位置に関する情報と、その音響波信号情報群に基づく3次元再構成画像と関連づける情報も合わせて保存する。
【0099】
ステップS412において、画像再構成部1002は、すでに画像再構成処理を実行済みの素子群の情報を参照し、画像再構成処理を実行前である他の素子群の音響波信号情報を選択して画像再構成を行うかどうか判定する。ここで、他の受信素子群とは、ステップS411において3次元再構成画像の候補を算出済みの受信素子群に対し、素子数、または、同数であっても素子の位置が異なる受信素子群を含む。本実施形態では、全ての素子群の組み合わせを実施するまで繰り返すものとする。
【0100】
ここで、本実施形態では、素子数や位置の異なる受信素子の組み合わせを全て網羅するまで繰り返す方法について説明した。しかし、あらかじめ素子群の種類を示すテーブルや識別子を設けて、指定された種類の受信素子群のみ、再構成処理を実施するようにしてもよい。
【0101】
ステップS412において、画像再構成を実施する全ての受信素子群の音響波信号情報による3次元画像の候補が生成されると、素子数や素子の位置の異なる音響波信号群に基づく3次元再構成画像群の生成処理を終了する。
【0102】
以上、示したような手順により、本実施形態における、素子数や位置の異なる受信素子群で検出された複数の音響波信号に基づく3次元再構成画像群を生成することができる。これらは、本実施形態でアーチファクトを低減した3次元再構成画像のボリュームデータを生成するための中間データとして、以降の手順で使用される。
【0103】
このように、異なる数や位置の素子で検出された音響波信号群の組み合わせを使い分けて画像再構成処理を行うと、再構成画像における光音響波の音源ではないアーチファクトの像は、それぞれ異なる位置に生じる。
【0104】
一般に、解析解による画像再構成で生成した再構成画像においては、異なる位置で検出された音響波信号の増減が、光音響波の音源の可能性がある領域とない領域の双方に影響する。すなわち、異なる位置の素子で検出された音響波信号ごとに、音源の可能性を否定しきれずにアーチファクトを生じさせる位置と音源の可能性を否定する位置がある。そのため、同一の手法で再構成処理を行ったとしても、用いる音響波信号が異なる位置で検出されたものであれば、再構成画像内の初期音圧値の算出結果を異ならせるという影響を及ぼす。理想的な環境下では、これらの影響は完全に相殺される。しかし、理想的な環境ではない場合、光音響波の音源ではないが、画像再構成処理の計算上、音源の可能性を否定しきれない算出値が残る場合があり、アーチファクトとして再構成画像に残ってしまう。
【0105】
そこで本実施形態では、上述したように、同一の撮影処理で一度に検出された音響波信号に対して、異なる数や位置の受信素子による音響波信号群に基づいて複数回の画像再構成を行う。これにより、各素子が算出結果に及ぼす影響範囲と相殺される領域が異なる再構成画像群を生成できる。これらは、同じ再構成領域における同じ計測データに基づく再構成処理でありながら、再構成画像ごとに、個々の注目点におけるアーチファクトの存否が異なっている。
一方、いずれの組み合わせの音響波信号情報群を用いても、光音響波の音源の位置については、常に光音響波に基づく値が算出されるため、いずれの再構成画像中からも消えることはない。
【0106】
以上の性質を利用して、素子の組み合わせや素子の位置が異なる複数の音響波信号群を設定し、それぞれの音響波信号群から生成された複数の再構成画像群の間で、同一位置の値を判定する。そして、いずれかの再構成画像において音響波の音源ではないと判定された位置は、少なくとも音響波の音源ではないことが判明する。すなわち、全ての再構成画像に音源と推定される値がある位置以外はアーチファクトとみなすことができる。アーチファクトとみなされた位置を除外することによって、単一の音響波信号群による再構成画像よりもアーチファクトを低減した再構成画像を生成できる。
【0107】
次に図5のフローチャートを用いて、素子数や位置の異なる受信素子群で検出された音響波信号に基づく3次元再構成画像群から、アーチファクトを低減した3次元再構成画像を生成する手順について説明する。
図5のフローチャートは、本実施形態における中間データである、3次元再構成画像のボリュームデータ群が生成済みの状況で開始する。
【0108】
ステップS501において、画像再構成部1002は、再構成領域内の一点を注目点として抽出する。たとえば、中間データである3次元再構成画像の各ボリュームデータについて、再構成領域内の同一位置となる未処理のボクセルを1つずつ抽出する。
【0109】
ステップS502において、画像再構成部1002は、それぞれの中間データから抽出した同一位置のボクセルについて、全てのボクセル値を参照する。そして、各中間データにおける同一位置のボクセル値のなかで、光音響波の音源ではないことを示す値が含まれているか判定する。
【0110】
ステップS502で光音響波の音源ではないことを示す値が1つでも含まれていた場合はステップS503に進む。ステップS503において、画像再構成部1002は、最終的に算出する再構成画像のボリュームデータにおける判定された位置のボクセル値を光音響波の音源ではないことを示すゼロの値で決定する。
【0111】
また、ステップS502において、全ての候補データのボクセル値に光音響波の音源の可能性がある値であると判定された場合は、ステップS504に進む。ステップS504において、画像再構成部1002は、代表値として用いる中間データのボクセル値をこの位置のボクセル値として決定する。この処理により、複数種類の音響波信号情報群を用いた3次元再構成処理でありながら、光音響波の音源の位置と推定される位置の初期音圧の値としては、一様であり、同一撮影条件で最も望ましい値を反映させることができる。このステップS502の判定処理は、本発明の第二の判定に相当する。
【0112】
ステップS503、または、ステップS504で、注目点の位置のボクセル値が決定されると、ステップS505に進む。
ステップS505において、未処理の注目点である他の位置のボクセルが残っているか判定する。他の位置のボクセルが未処理である場合には、ステップS501〜S504ま
での処理を繰り返す。そして、すべての注目点についてボクセル値を決定するとステップS506に進む。
【0113】
ステップS506において、画像再構成部1002は、注目点ごとにアーチファクトが除去された3次元再構成画像のボリュームデータを記録(メモリや磁気ディスクに保存)する。
【0114】
以上の手順で得られた3次元再構成画像のボリュームデータにより、同一条件の撮影で検出された1種類の受信素子群に関連する音響波信号を用いて画像再構成した場合より、はるかにアーチファクトの少ない3次元再構成画像を得ることができる。アーチファクトを低減させた3次元再構成画像が生成されるとステップS507に進み、表示情報を生成する。
【0115】
ステップS507において、表示情報生成部1003は、算出された3次元再構成画像のボリュームデータから表示用の情報を生成して、表示部1004に送る。表示用の情報の例としては、撮影した条件や音響波信号計測部の撮影時のパラメータや統計情報、解析情報、表示用の2次元断面画像、ボリュームレンダリングによる表示画像等がある。
【0116】
ステップS508において、表示部1004は、ステップS507で生成された、3次元再構成画像のボリュームデータから生成された表示情報を表示する。
以上のような手順により、アーチファクトの低減された3次元再構成画像をユーザーに提示する。
【0117】
以上のような手順で生成された初期音圧分布の値による再構成画像は、音響波の音源の強度により、被検体の音響特性を画像化して提示することができる。特に光音響波診断装置においては、特定の波長を吸収して音響波を発する物質の形状を画像化して表示することができる。本発明の画像再構成方法を用いることにより、アーチファクトの少ないより正確な形状の3次元画像を提示できるようになる。
【0118】
本実施形態では、表示情報生成部1003、および、表示部1004を用いて、検出された音響波信号を元にアーチファクトを低減した再構成画像を表示する例として説明したが、実施方法はこれに限られない。例えば、表示ではなくファイルの保存、または、通信により他の装置へ送るような手順であっても、本発明の画像再構成方法を適用できることは言うまでもない。
【0119】
また、本実施形態では、タイムドメイン法による画像再構成手法を用いて画像再構成を行い中間データとしての3次元再構成画像群を生成して本発明の画像再構成手法を適用する例として説明した。しかし、フーリエドメイン法による画像再構成手法を用いて本実施形態を実施することも可能である。フーリエドメイン法の場合は、注目点ごとではないが、本実施形態と同様に選択された音響波信号情報ごとに画像再構成手法を行う。生成された素子数や位置の異なる音響波信号情報に基づく3次元再構成画像群を中間データとして用意し、本実施形態における図5のステップS501〜S508の手順を実施すればよい。
【0120】
さらに、本実施形態では、光を照射する光音響波を検出して初期音圧分布、および、光の吸収エネルギーの3次元再構成画像を例として説明したが、実際はこれに限られない。例えば、検出した音響波信号に基づいた画像再構成処理であれば、光音響波でなく、一般的な音響波に基づく画像再構成方法にも適用することができる。
【0121】
[実施形態2]
上記の実施形態1では、中間データとして3次元再構成画像を生成し、生成した3次元再構成画像群から、アーチファクトを低減した再構成画像を生成していた。
【0122】
本実施形態では、検出した音響波から初期音圧分布を求めて3次元再構成画像を生成する画像再構成方法について説明する。本実施形態における画像情報取得装置は、実施形態1と同じ光音響波診断装置である。ただし、本実施形態では、実施形態1と異なり、中間データとして3次元再構成画像の生成を実施しない。
【0123】
本実施形態では、再構成領域における画像再構成する注目点ごとにアーチファクトの判定を行い、冗長な計算処理を省略することにより、実施形態1と同程度のアーチファクト低減効果のある3次元再構成画像を高速に得ることができる。
【0124】
(概略機能ブロック図)
本実施形態に係る光音響波診断装置は、実施形態1と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0125】
(実施手順)
図6は、本実施形態の処理の手順を示したフローチャートである。図6のフローチャートを用いて、本実施形態における光音響波診断装置が実行する具体的な処理の手順を説明する。図6のフローチャートは、本発明の画像再構成方法を実施する画像情報取得装置の撮影処理を始めた時点から開始される。
【0126】
ステップS601の音響波信号計測部1100の処理と、ステップS602の音響波情報取得部1001の処理は、実施形態1のステップS401、ステップS402と同様の処理であるために詳細な説明を省略する。
【0127】
ステップS603において、画像再構成部1002は、画像再構成の対象となる再構成領域の一点を注目点として抽出する。すなわち再構成領域をボリュームデータとして定義した場合の未処理のボクセルを1つ抽出する。
【0128】
ステップS604において、画像再構成部1002は、注目点に対する有効素子を抽出する。すなわち、ステップS603で抽出されたボクセルの位置に音源が存在する場合、素子の指向性の範囲で受信しうる位置にある素子を、実施形態1とは異なり、音響波検出器1105の受信面の全素子から抽出する。
【0129】
ステップS605において、実施形態1のステップS403と同様に、音響波信号計測部1100から送信された音響波信号情報のうち、画像再構成処理にどの素子に関する音響波信号を用いるか選択する。ただし、実施形態1のステップS403では、音響波検出器1105の全素子から選択していたのに対し、本実施形態では、注目点ごとの有効素子で検出された音響波信号群から選択する点が異なる。ただし、注目点によっては、有効素子が全素子となる場合には、実施形態1のステップS403と同様の選択処理となる。
【0130】
ステップS606において、画像再構成部1002は、ステップS605で選択した素子で検出された音響波信号に基づき、ステップS504で抽出した注目点であるボクセルの画像再構成処理を行う。
【0131】
ここで、本実施形態における画像再構成処理は、解析解による再構成処理であってタイムドメイン法に基づく再構成処理であれば、どのような再構成処理でもよい。一例としてはUBP法による再構成処理で実施することができる。
【0132】
ステップS607において、画像再構成部1002は、ステップS606における注目点のボクセルの画像再構成処理によって算出された値が光音響波の音源による初期音圧の値とみなせるか、または、アーチファクトか判定する。
この判定処理は、実施形態1のステップS407の処理と同様の判定処理であるため、説明を省略する。
【0133】
ステップS607において、光音響波の音源がないと判定された場合は、ステップS608の処理を行う。ステップS607において、光音響波の音源がないと判定された場合は、同一ボクセルにおける残りの音響波信号群による画像再構成処理を行わずに、次の注目点のボクセルにおける再構成処理に移ることができる。そのため、実施形態1のように、全てのボクセルに対し、設定されたすべての音響波信号群の組み合わせについて計算処理を行う場合よりも3次元再構成画像生成終了までの時間を短縮することができる。
【0134】
ステップS608の処理は、実施形態1のステップS408の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0135】
ステップS607で光音響波の音響波信号により算出された値として判定された場合は、ステップS609の処理を行う。
ステップS609において、画像再構成部1002は、算出された初期音圧値の候補値を保存する。この候補値の決定方法は、光音響波の音響波信号により算出されたとみなす値であれば、どのように決定しても本実施形態を実施することができる。一例としては、全有効素子で検出された音響波信号に基づく再構成処理の算出値を候補値とする方法がある。ステップS605の選択範囲の中で、光音響波の音源による再構成画像として最も望ましい値が算出できる音響波信号群を候補値として保存すればよい。
【0136】
ステップS610において、画像再構成部1002は、未処理の音響波信号群がある場合には、再度ステップS605の処理に向かう。そして、他の音響波信号群を選択してステップS605〜610の処理を繰り返し実施する。
【0137】
ステップS610において、同一ボクセルにおける全ての音響波信号群の組み合わせについて、全ての音響波信号情報群の画像再構成処理を実施し、光音響波の音源ではないと、一度も判定されなかった場合は、ステップS611に進む。
【0138】
ステップS611において、画像再構成部1002は、ステップS608により置き換えられた音源ではないと識別できる値、または、ステップS609で候補値として設定された初期音圧値のいずれかで、注目点のボクセル値を決定して保存する。
【0139】
1つの注目点についてボクセル値が決定すると、ステップS612において、再構成領域内における未処理の注目点の有無を判定する。未処理の注目点がある場合は、ステップS603〜ステップS611の処理を繰り返し、各注目点におけるボクセル値を決定する。すべてのボクセル値が決定されるとステップS613に進む。
【0140】
ステップS613において、表示情報生成部1003の処理は、実施形態1のステップS507と同様の処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0141】
ステップS614において、表示部1004の処理は、実施形態1のステップS508と同様の処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0142】
以上のような手順により、効率的にアーチファクトを低減した再構成画像を生成することが可能であり、実施形態1と同程度の低減効果がありながら、より高速に再構成画像を
生成することができる。
【0143】
なお、本実施形態では、音響波の検出後、直ちに画像再構成を行う手順で説明した。ただし、必ずしも、音響波の検出後、直ちに画像再構成して表示する必要はない。音響波信号情報を保存しておき、再度、表示させたい時に本発明の再構成方法を実施してもよい。また、音響波信号情報で画像再構成可能な領域の一部を再構成しても構わない。例えば、大きな3次元領域で再構成可能な音響波信号情報のうち、表示させたい各断面画像の占める領域のみを再構成領域としてユーザーが指定することで、各断面画像の表示のたびに本発明の画像再構成方法を適用することも可能である。
【0144】
本実施形態と実施形態1の手順を併用する方法も可能である。例えば、素子数や素子の位置の相違により選択された音響波信号情報に基づいて、フーリエドメイン法の画像再構成手法を用いた3次元再構成画像を生成する。加えて、タイムドメイン法に基づいた本実施形態の手順で再構成された3次元再構成画像を生成する。そして、これらのフーリエドメイン法と本実施形態の再構成方法による3次元再構成画像群を中間データとして、実施形態1における図5のステップS501〜S508の手順を実施する。この場合のアーチファクトの低減効果は、本発明の素子数や素子の位置の異なる音響波信号情報を複数用いたことによる効果と、異なる再構成手法を用いた効果の相乗効果により、さらに増大する。
【符号の説明】
【0145】
1000:情報処理部,1001:音響波情報取得部,1002:画像再構成部,1100:音響波信号計測部,1105:音響波検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器と、
前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択部と、
前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出部と、
判定部と、
を有し、
前記選択部は、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、
前記判定部は、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出部が算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定、および、前記第一の判定の結果により、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定を行う
ことを特徴とする音響波信号処理装置。
【請求項2】
前記音響波検出器の複数の素子のうち、前記注目点が指向性の範囲に収まるような素子である有効素子を決定する決定部をさらに有し、
前記選択部は、前記有効素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波信号処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第一の判定において、前記算出部が算出した前記音圧に関連する情報が所定の閾値より大きい場合に、当該音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものであると判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の音響波信号処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第一の判定での結果が、いずれの音響波信号群に対応する音圧に関連する情報も音源の存在に基づくものである場合に、前記第二の判定において、前記注目点の位置に音源が存在すると判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の音響波信号処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記音響波信号群の一つとして、前記有効素子の音響波信号の全てを選択し、
前記判定部により前記注目点の位置に音源が存在すると判定された注目点については、前記算出部が、前記有効素子の音響波信号の全てを用いて算出した音圧をもって、被検体の画像データを生成する際に用いるデータとする
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波信号処理装置。
【請求項6】
被検体から放出される前記音響波は、光源からの光を受けた被検体の中の光吸収体が音源となって発生する光音響波である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の音響波信号処理装置。
【請求項7】
被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器を有する音響波信号処理装置の制御方法であって、
前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択ステップと、
前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出ステップと、
判定ステップと、
を有し、
前記選択ステップは、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、
前記判定ステップは、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出ステップが算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定ステップ、および、前記第一の判定ステップの結果、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定ステップを含む
ことを特徴とする音響波信号処理装置の制御方法。
【請求項8】
被検体から放出される音響波を検出する複数の素子を配置した音響波検出器を有する音響波信号処理装置に、
前記音響波検出器の複数の素子が検出した音響波に基づく音響波信号から、一部または全部の素子の音響波信号を選択して音響波信号群を設定する選択ステップと、
前記音響波信号群を用いて、注目点の音響波の音圧に関連する情報を求める算出ステップと、
判定ステップと、
を実行させる、音響波信号処理装置の制御プログラムであって、
前記選択ステップは、素子の組み合わせ又は素子の位置の少なくとも一方が互いに異なる複数の音響波信号群を設定するものであり、
前記判定ステップは、同じ注目点に対して前記複数の音響波信号群ごとに前記算出ステップが算出した前記音圧に関連する情報のそれぞれについて、音源の存在に基づくものかどうかを判定する第一の判定ステップ、および、前記第一の判定ステップの結果、少なくとも一つの音響波信号群による前記音圧に関連する情報が音源の存在に基づくものではないと判定された注目点は音源が存在しないと判定する第二の判定ステップを含む
ことを特徴とする音響波信号処理装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61202(P2012−61202A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208975(P2010−208975)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】