説明

音響特性改善構造

【課題】機器の動作や性能を維持するために必要な流体の通行の妨げになることなく、不要な騒音を広い周波数帯域で効果的に減衰させることができる音響特性改善構造を提供する。
【解決手段】音響特性改善構造において、機器開口部2bに接続され、流体及び音波を通過させる風管路1と、前記風管路1を構成し、平行かつ等間隔に配置された複数の平板状部材3と、を備え、前記複数の平板状部材3は、前記機器開口部2bに接続される側の端部が互いに位置的なずれを生じるように配置され、かつ、前記風管路の出口1a側の端部が位置的に揃うように配置されるとともに、前記複数の平板状部材3のそれぞれの平面部分に対して、前記機器開口部2bからの流体の流れが、前記平面部分と前記流れの進行方向とが所定の角度をなして衝突し得るように配置される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響特性改善構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、音の流れる管路を長くすることで音響レベル減衰を促す構造が自動車等のマフラーに用いられている。また、従来の自動車等の車両においてエンジン室に通じる通風部の騒音を低減する構造として、通風部に設けられたグリルの開口部に騒音低減部品を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この騒音低減部品は開口部を通過する空気の風圧に応じて、開口部の周縁に沿った回転軸線の回りに回転するように設けられている。そして、エンジン音をこの開口部から外部に放射する際に放射音を騒音低減部品に衝突させることにより音響レベルを減衰させるものである。
【0003】
また、家庭用電気機器においては、騒音源であるモータ等を吸音材や遮音効果のある壁面等で覆うことによって、モータ等の騒音源から放射される音響レベルを低減させる方法が従来用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−145080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に示された従来における音響特性改善構造は、風路が短く風路部分で音響レベルの減衰効果を得にくいため、風路の出口部分に遮音蓋の役割をもつ騒音低減部品を設け、音響レベルを減衰させるものである。
【0006】
しかしながら、このような特許文献1に記載されたものは、開口部における空気の移動を妨げることで音圧を減衰させるものであるため、通風部における通風抵抗として働いてしまう。このため、開口部において圧力損失が発生し、開口部を通じて冷却等のため外気を内部に導入する又は逆に開口部を通じて外部へと熱を排出すること等の妨げになってしまうという課題がある。また、減衰できる周波数帯域は騒音低減部品に依存し、限られた狭い周波数帯域の音響レベルしか減衰させることができないという課題もある。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、機器の動作や性能を維持するために必要な空気(流体)の通行の妨げになることなく、不要な騒音を広い周波数帯域で効果的に減衰させることができる音響特性改善構造を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る音響特性改善構造においては、機器開口部に接続され、流体及び音波を通過させる風管路と、前記風管路を構成し、平行かつ等間隔に配置された複数の平板状部材と、を備え、前記複数の平板状部材は、前記機器開口部に接続される側の端部が互いに位置的なずれを生じるように配置され、かつ、前記風管路の出口側の端部が位置的に揃うように配置されるとともに、前記複数の平板状部材のそれぞれの平面部分に対して、前記機器開口部からの流体の流れが、前記平面部分と前記流れの進行方向とが所定の角度をなして衝突し得るように配置される構成とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る音響特性改善構造においては、機器の動作や性能を維持するために必要な流体の通行の妨げになることなく、不要な騒音を広い周波数帯域で効果的に減衰させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る音響特性改善構造を構成する風管路の全体構成の概略を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る風管路内の音の伝播状態を模式的に説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る風管路内の音の位相状態を模式的に説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る音響特性改善構造を構成する風管路の有無による音放射測定結果の違いを比較する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る音響特性改善構造を構成する風管路を空調機器に適用した一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る音響特性改善構造を構成する風管路を掃除機に適用した一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る図6の適用例における音響レベルの周波数特性を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す断面図である。
【図11】この発明の実施の形態5に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1から図7は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は音響特性改善構造を構成する風管路の全体構成の概略を示す図、図2は風管路内の音の伝播状態を模式的に説明する図、図3は風管路内の音の位相状態を模式的に説明する図、図4は音響特性改善構造を構成する風管路の有無による音放射測定結果の違いを比較する図、図5は音響特性改善構造を構成する風管路を空調機器に適用した一例を示す図、図6は音響特性改善構造を構成する風管路を掃除機に適用した一例を示す図、図7は図6の適用例における音響レベルの周波数特性を示す図である。
【0012】
図1において、1は音響特性改善構造を構成する風管路であり、2はこの風管路1が装着される機器本体である。この機器本体2は、例えば空調機器や電気掃除機等の家庭用電気機器である。この機器本体2の内部(機器本体内部2a)では、図示しないファン等によって空気流が発生されている。そして、機器本体2には、この機器本体内部2aの空気流を機器本体2の外部へと排出するための機器開口部2bが設けられている。風管路1は、その一端側がこの機器開口部2bに接続されている。
【0013】
風管路1は、複数の平板3から構成されている。ここでは、風管路1は、第1の平板3a、第2の平板3b、第3の平板3c及び第4の平板3dの4つの平板3から構成されているとする。これらの平板3は、互いに平行に、かつ、隣り合う平板3同士の間隔Wが等しくなるように配置されている。また、これら複数の平板3は、機器開口部2bに接続された側の一端から、この一端とは反対側の他端までの寸法(以下「板長」と呼ぶ)が、それぞれ互いに異なる寸法になるように形成されている。具体的には、第1の平板3aの板長をL1、第2の平板3bの板長をL2、第3の平板3cの板長をL3、第4の平板3dの板長をL4とすると、これらは次の(1)式に示すような関係となっている。
【0014】
L1>L2>L3>L4 …(1)
【0015】
このように、風管路1を構成する各平板3の板長は、互いに異なる寸法に設定されている。そして、各平板3の風管路出口1a側の端部は揃えられる一方、機器開口部2bに接続される側の端部は(1)式で表される各板長の差の分だけ互いにずれて配置される。
【0016】
このようにして、風管路1は、平行かつ等間隔(W)に配置された複数の平板3である第1の平板3a、第2の平板3b、第3の平板3c及び第4の平板3dによって構成されている。そして、これらの平板3の間に風管路空間4が形成される。例えば、第1の平板3a及び第2の平板3bの間に形成される風管路空間4は、板長がL1及びL2、管径(間隔寸法)がWの空間である。
【0017】
風管路1は、機器本体内部2aから機器開口部2bへと向かう空気流の流向に対して所定の角度だけ傾けられた状態で機器開口部2bに接続されている。この所定の角度はここでは45度である。機器本体内部2aの図示しないモータ等の騒音源から発生した音波は、機器開口部2bへと向かう空気流と同方向の平面波となって伝播する。従って、風管路1の方向と空気流の流向とのなす角は、風管路1の方向と音波の進行方向とのなす角と等しい。すなわち、風管路1は、機器本体内部2aから機器開口部2bへと向かう音波の進行方向に対して所定の角度である45度傾いているとも換言できる。
【0018】
機器本体内部2aで発生した音波は、機器開口部2bから風管路1内へと入り、風管路空間4を通過して風管路出口1aから外部へと放射される。この際の風管路1における音波の伝播状態を図2を参照しながら説明する。前述したように、風管路1は機器本体内部2aでの音波の進行方向に対して所定の角度である45度だけ傾けられて設けられている。従って、音波は、風管路1の各平板3の平面部分に対して45度の角度をもって入射することになる。
【0019】
すなわち、疎密波である音波は、45度傾いた風管路1の第1の平板3aに対してθ1=45度の角度をなして衝突する。また、第2の平板3bに対してθ2=45度の角度をなして衝突する。他の平板3である第3の平板3cに対しても図示は省略しているが同様である。そして、第1の平板3aに対してθ1=45度の角度をなして衝突した音波は、同じく第1の平板3aに対してθ1=45度の角度をなして反射される。この際、入射した音波の進行方向と反射した音波の進行方向とのなす角は90度になる。
【0020】
こうして、第1の平板3aに衝突して反射された音波は、今度は第1の平板3aに対向する第2の平板3bの第1の平板3a側の面に対してθ1’=45度の角度をなして衝突する。すると、先ほどと同様にして、第2の平板3bに対してθ1’=45度の角度をなして反射される。第2の平板3bに衝突して反射された音波は、再び第1の平板3aに対してθ1=45度の角度をなして衝突する。このように、音波は第1の平板3aと第2の平板3bとの間で衝突を繰り返しながら風管路空間4を伝播していく。
【0021】
また、第2の平板3bに対してθ2=45度の角度をなして衝突した音波も、同様にして、第2の平板3bに対してθ2=45度の角度をなして反射される。第2の平板3bに衝突して反射された音波は、今度は第2の平板3bに対向する第3の平板3cの第2の平板3b側の面に対してθ2’=45度の角度をなして衝突する。すると、先ほどと同様にして、第3の平板3cに対してθ2’=45度の角度をなして反射される。第3の平板3cに衝突して反射された音波は、再び第2の平板3bに対してθ2=45度の角度をなして衝突する。このように、音波は第2の平板3bと第3の平板3cとの間でも、衝突を繰り返しながら風管路空間4を伝播していく。なお、図示は省略しているが、第3の平板3cと第4の平板3dとの間でも同じ現象が起きている。
【0022】
このようにして、風管路1内に進入した音波は、風管路1を構成する平板3に対して衝突を繰り返しながら風管路空間4を風管路出口1aに向けて伝播していく。この平板3に対する衝突により音波の有する音響エネルギーが平板3の振動エネルギーに変換される。よって、風管路空間4を伝播していくなかで、次第に平板3の振動エネルギーに変換されて音波の持つエネルギーは減衰される。こうして、風管路1を通過する音波の音響レベルを減衰させることができる。
【0023】
音波の反射屈折は規則正しく行われるものである。従って、平板3によって風管路1を構成する際に、上述した風管路空間4での音波の伝播経路を考慮して、風管路出口1aの位置、すなわち、各平板3の板長L1〜L4を決定することにより、それぞれの風管路空間4を通過して風管路出口1aから外部へと放射される音波の放射方向を、図1及び図2に示すように同一の方向に揃えることが可能である。
【0024】
この際、平板3による音波の反射方向は平板3に対して45度の方向であるから、同一方向に揃えられた音波の放射方向も平板3に対して45度の方向となる。これに対し、機器開口部2bから排気される空気流は、風管路1によって平板3に略平行な方向に変えられることから、風管路1によって音の放射方向と排気(空気流)の方向とを異ならせることができる。従って、例えば家庭用電気機器において、空気流は利用者に向けて排気するとともに、騒音は利用者のいない方向へと放射して利用者に聞かせないようにすることが可能となる。
【0025】
なお、風管路1は、家庭用電気機器の機能上必要な空気流量を確保できる程度に、空気流を円滑に流す必要がある。そのために、管径Wの寸法は、風管路1を通過する空気流における圧力損失が0.5Pa以下程度に抑えることが可能であるように調整される。また、風管路1の断面形状は、略円形や略角形を基本形状とする。
【0026】
次に、風管路1における音波の位相状態を図3を参照しながら説明する。前述したように、風管路1を構成する各平板3の板長は、(1)式で表される関係を有し、互いに異なるように設定されている。すなわち、各平板3間において形成される風管路空間4の長さが互いに異なっている。例えば、第1の平板3a及び第2の平板3bとの間に形成される風管路空間4は、第1の始点5aから第1の終点6aまでの長さ(すなわち第2の平板3bの板長L2)を持つ第1の音響管7aであると考えられる。また、第2の平板3b及び第3の平板3cとの間に形成される風管路空間4は、第2の始点5bから第2の終点6bまでの長さ(すなわち第3の平板3cの板長L3)を持つ第2の音響管7bであると考えられる。
【0027】
そして、これらの音響管の長さすなわち各平板3の板長を、次に示す(2)式に基づいて決定する。なお、(2)式において、Lは平板3の板長(音響管の管路長)、Cは音速(空気中では約340m/s)、nは次数(nは自然数)、fは周波数である。
【0028】
L=C×(n)/(2×f)×0.8 …(2)
ただし、0.8は設計定数である。
【0029】
ここで、Lの算出に用いる周波数fは、風管路1によって音響レベルを減衰させる対象となる周波数帯域を決定するものである。ここでは、まず、音響レベルを減衰させる対象となる周波数帯域の帯域幅を、1/3オクターブの音程幅となる帯域幅とした。そして、周波数fは、この1/3オクターブの中心周波数とする。(2)式における設計定数0.8は、周波数fを中心とする1/3オクターブの周波数帯域において減衰効果が実際に得られるように、実験によって求められたものである。なお、ここで、温度は室温±20℃の範囲において、周波数fを中心とする1/3オクターブの周波数帯域において減衰効果が実際に得られることが実験結果から判っている。
【0030】
風管路1において形成される各音響管の管路長、すなわち、各平板3の板長は、上記(2)式に基づいて設定される。この際、まず、音響レベルを減衰させる対象の周波数帯域を選定し(2)式に代入する周波数fを決定した上で、さらに、異なる音響管同士において、前記周波数fの音波が1/4波長分ずつ(1/4波長分を単位として)位相がずれるように、各音響管の管路長を決定する。また、ここで、さらに、音響管の管路長は前記周波数fの音波の一波長以下となるように決定する。
【0031】
以上のようにして、各平板3の板長(音響管の管路長)が決定された風管路1においては、各音響管に進入する音波について、進入時点で点音源になったものとみなすことができる。そしてこれらの点音源の位置は各音響管毎に異なるものになる。従って、各音響管の中を伝播する音波の周波数が異なるとともに、これらの音波がずれて進行することから音波の位相もずれることになる。よって、風管路出口1aである第1の終点6a及び第2の終点6bから外部に音波が放射される際には、音波の位相が互いに反転している(逆位相の関係にある)部分が存在する。そして、当該部分においては、音波が互いに打ち消しあって消音空間が形成される。
【0032】
このように、風管路1においては、音波の衝突による減衰と位相反転による減衰(消音)とが行われることになる。よって、これらの相乗により、風管路1を通過する音波の音響レベルを大きく減衰させることができる。また、さらに、前述のように風管路1を通過する空気流の方向と音波の放射方向とを45度異ならせることができるので、利用者に対しては騒がしさをさらに感じさせなくすることが可能である。
【0033】
この音響レベル減衰効果と音波の放射方向を変更させる効果は、図4において実際に測定した結果から確認することができる。この図4は、1500Hzから4000Hzの音波の伝播する様子を、風管路1が無い場合と風管路1が有る場合において、音響レベルを測定することにより示すものである。このように、風管路1が無い場合と比較して、風管路1が有る場合には音響レベルが高い領域が広がる方向が異なるとともに、その面積も小さくなっていることが分かる。
【0034】
図5は、以上のように構成された風管路1を家庭用電気機器である空調機器に適用した一例を示すものである。すなわち、空調機器8の上面には、この空調機器8から放出される空気流の風路である空調機器開口部8aが設けられている。そして、この空調機器開口部8aには、風管路1が接続されている。従って、空調機器開口部8aから放出される空気流は風管路1に沿って斜め上方に進む。加えて、空調機器開口部8aから放出される騒音は風管路1において減じられるとともに風管路1の出口において消音され、さらに、利用者がいない空調機器8の後面側へとその進行方向が変えられる。
【0035】
また、図6は、以上のように構成された風管路1を家庭用電気機器である電気掃除機に適用した一例を示すものである。すなわち、掃除機9の後面には、この掃除機9から空気流が排出される排気口9aが設けられている。この掃除機9の吸引力は、掃除機9に内蔵されたファンが回転することにより作り出される。このファンの回転はロータ部により駆動される。このファンの回転により作り出された空気流及びファンやロータ部から発生した騒音は、排気口9aから掃除機9の外部へと放出される。
【0036】
そして、この排気口9aには、風管路1が接続されている。従って、排気口9aから放出される空気流は風管路1に沿って斜め上方に進む。加えて、排気口9aから放出される騒音は風管路1において減じられるとともに風管路1の出口において消音され、さらに、利用者がいない掃除機9の後面の下方側へとその進行方向が変えられる。
【0037】
このように構成された掃除機9の、音響レベルの周波数特性を示すものが図7である。この図7では、横軸に周波数を、縦軸に音響レベルであるレスポンスをdBで表したものをとっている。実線で示された風管路1が無い場合と比べて、点線で示された風管路1が有る場合は、おおよそ1000Hz前後から高い周波数領域において音響レベルの減衰効果が得られていることが分かる。
【0038】
なお、ここでは、所定の角度を45度としたが、この所定の角度は45度に限られない。
【0039】
以上のように構成された音響特性改善構造は、機器開口部に接続され、流体及び音波を通過させる風管路と、風管路を構成し、平行かつ等間隔に配置された複数の平板状部材である平板と、を備え、これら複数の平板状部材は、機器開口部に接続される側の端部が互いに位置的なずれを生じるように配置され、かつ、風管路の出口側の端部が位置的に揃うように配置されるとともに、複数の平板状部材のそれぞれの平面部分に対して、機器開口部からの流体の流れである空気流等が、前記平面部分と前記流れの進行方向とが所定の角度をなして衝突し得るように配置されるものである。
【0040】
このため、機器の動作や性能を維持するために必要な空気(流体)の通行の妨げになることなく、不要な騒音を広い周波数帯域で効果的に減衰させることができる。また、さらに、風管路を通過する空気流の方向と音波の放射方向とを異ならせることができるので、機器の利用者に対して、機器により処理された空気流を提供し、かつ、音波は利用者のいない方向へと放射することが可能である。
【0041】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す斜視図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成の風管路において、各平板間に、複数の仕切壁を設けるようにしたものである。
【0042】
すなわち、風管路1を構成する各平板3の間のそれぞれには、仕切壁10が複数設けられている。これらの仕切壁10は、各平板3の平面部分に対して垂直に設けられて、各平板3間の風管路空間4を複数の空間に仕切っている。なお、他の構成は実施の形態1と同様である。また、この図8においては、平板両側端部3eにおける壁面の図示を省略している。
【0043】
以上のように構成された風管路1においては、各平板3間の風管路空間4を、さらに仕切壁10で分割することにより、この分割された風管路空間4を伝播する音波の周波数帯域を調整することが可能となる。従って、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、より広い周波数帯域で音響レベル減衰効果を得ることができる。
【0044】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す斜視図である。
ここで説明する実施の形態3は、前述した実施の形態1や実施の形態2の構成の風管路を構成する各平板において、1つの平板における板長寸法(機器開口部2bに接続される側の端部から風管路出口1a側の端部までの長さ寸法)を変化させるようにしたものである。
【0045】
すなわち、風管路1を構成する各平板3のそれぞれにおいて、機器開口部2bに接続される側の端部が、直線状ではなく曲線状に形成されている。そして、このため、ある1つの平板3について見てみると、図9中の矢印Aに沿った方向にわたって、異なる2以上の板長寸法(例えばLa及びLb)を有するようになっている。なお、他の構成は実施の形態1、2と同様である。また、この図9においても、平板両側端部3eにおける壁面の図示を省略している。
【0046】
以上のように構成された風管路1においては、1つの平板3において2以上の異なる板長寸法を有するため、平板3間に形成される風管路空間4の管路長の種類を多くすることができる。従って、風管路空間4を伝播する音波の周波数帯域を広げることができ、実施の形態1、2と同様の効果を奏することができるのに加えて、さらに広い周波数帯域で音響レベル減衰効果を得ることができる。
【0047】
なお、ここでは、平板3における機器開口部2bに接続される側の端部の形状を、直線状ではなく曲線状に形成することにより、1つの平板3において2以上の異なる板長寸法を有するようにした。しかし、この点については、1つの平板3において2以上の異なる板長寸法を有することができるのであれば、平板3における機器開口部2bに接続される側の端部の形状は曲線状に限られない。
【0048】
実施の形態4.
図10は、この発明の実施の形態4に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す断面図である。
ここで説明する実施の形態4は、前述した実施の形態1−3の構成の風管路において、風管路空間の内壁面に吸音材を固着させたものである。
【0049】
すなわち、風管路1を構成する各平板3における、風管路空間4に対する内壁面には、吸音材11が固着されている。この吸音材11は、例えば、不織布やウレタン等の発泡材等が用いられる。そして、特に、吸音材11として不織布を用いる場合は、例えば、その目付け量を700g/m^2以上とし、厚みを5mm程度としてもよい。あるいは、目付け量を1000g/m^2とし、さらに圧縮成形処理を施した上で、吸音材11のそのものの厚みを2mm〜3mm厚に圧縮するようにしてもよい。他の構成は実施の形態1−3と同様である。
【0050】
以上のように構成された風管路1においては、風管路1の風管路空間4中を通過する空気等の流体が吸音材11に衝突・摩擦することで、空気流等の圧力損失の発生を抑えつつ音響レベルをさらに減衰させることができる。
【0051】
実施の形態5.
図11は、この発明の実施の形態5に係る音響特性改善構造を構成する風管路を示す断面図である。
ここで説明する実施の形態5は、前述した実施の形態1−3の構成の風管路の平板を、不織布を熱圧縮成形処理した圧縮成形吸音材によって構成したものである。
【0052】
すなわち、風管路1を構成する各平板3は、圧縮成形吸音材12によって作られている。この圧縮成形吸音材12は、不織布に熱圧縮成形処理を施すことにより製作される。そして、この圧縮成形吸音材12の厚み方向(すなわち平板3の厚み方向)の略中央には、背部空気層12aが形成されている。他の構成は実施の形態1−3と同様である。
【0053】
以上のように構成された風管路1においては、風管路1の風管路空間4中を通過する空気等の流体が圧縮成形吸音材12に衝突・摩擦することで、空気流等の圧力損失の発生を抑えつつ音響レベルをさらに減衰させることができる。そして、この際、圧縮成形吸音材の有する背部空気層の作用により、より一層の音響減衰効果を得ることが可能である。
【0054】
また、以上説明した実施の形態1−5に係る音響特性改善構造は、可動部がない簡潔な構成であるため、装置全体として長寿命化を図ることができるとともに、製作も容易である。
【0055】
なお、以上説明した実施の形態2−5においても、実施の形態1と同様に、以上のように構成された風管路を家庭用電気機器である空調機器や電気掃除機に適用することにより、有用な効果を得ることができることは言うまでもない、さらには、このような風管路は、流体の流れ及び音波の双方が伴う他の機器や、道路の防音壁等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 風管路
1a 風管路出口
2 機器本体
2a 機器本体内部
2b 機器開口部
3 平板
3a 第1の平板
3b 第2の平板
3c 第3の平板
3d 第4の平板
3e 平板両側端部
3f 平板端部
4 風管路空間
5a 第1の始点
5b 第2の始点
6a 第1の終点
6b 第2の終点
7a 第1の音響管
7b 第2の音響管
8 空調機器
8a 空調機器開口部
9 掃除機
9a 排気口
10 仕切壁
11 吸音材
12 圧縮成形吸音材
12a 背部空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器開口部に接続され、流体及び音波を通過させる風管路と、
前記風管路を構成し、平行かつ等間隔に配置された複数の平板状部材と、を備え、
前記複数の平板状部材は、前記機器開口部に接続される側の端部が互いに位置的なずれを生じるように配置され、かつ、前記風管路の出口側の端部が位置的に揃うように配置されるとともに、前記複数の平板状部材のそれぞれの平面部分に対して、前記機器開口部からの流体の流れが、前記平面部分と前記流れの進行方向とが所定の角度をなして衝突し得るように配置されることを特徴とする音響特性改善構造。
【請求項2】
前記所定の角度は45度であることを特徴とする請求項1に記載の音響特性改善構造。
【請求項3】
前記風管路の管路長は、前記流体中の音速をC、前記流体中の音波の次数をn、前記音波の周波数をfとした次の式により算出されたLのうち、前記周波数fの前記音波の一波長以下の長さとし、
前記算出に用いる前記周波数fは、1/3オクターブの音程幅に相当する帯域幅となる周波数帯域の中心周波数とすることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の音響特性改善構造。

L=C×(n)/(2×f)×0.8

【請求項4】
前記複数の平板状部材のそれぞれにおける、前記機器開口部に接続される側の端部から前記風管路の出口側の端部までの長さは、前記複数の平板状部材の間のそれぞれを通過した前記音波の位相が前記音波の1/4波長分だけ互いにずれるように決定されることを特徴とする請求項3に記載の音響特性改善構造。
【請求項5】
前記複数の平板状部材の間に設けられ、前記平板状部材の前記平面部分に対して垂直に配置された複数の仕切壁を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の音響特性改善構造。
【請求項6】
前記平板状部材の前記機器開口部に接続される側の端部の形状は、1の当該平板状部材において、前記機器開口部に接続される側の端部から前記風管路の出口側の端部までの長さ寸法として2以上の異なる長さ寸法を有するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の音響特性改善構造。
【請求項7】
前記風管路の内壁面に設けられた吸音材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の音響特性改善構造。
【請求項8】
前記平板状部材は、圧縮成形吸音材からなり、
前記平板状部材の厚み方向の略中央に設けられた背部空気層を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の音響特性改善構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−145776(P2012−145776A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4131(P2011−4131)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】