説明

音響発生装置

【課題】薄型化が可能であるとともに、簡単な構成で十分な音量の音を発生することのできる音響発生装置を提供する。
【解決手段】音響発生装置100は、電極が対向して配置された電極部(4、5)と、電極間に配置され、電界が与えられることによって電極に向けて移動する互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体(61、62)と、電極の一方と接触するように互いに対向配置される振動部(2、3)とを備える。二種類の帯電性媒体は、電極を介して電界が与えられることによって電極または振動部に衝突し、振動部は、帯電性媒体が電極または振動部に衝突することによって振動し、音響を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的信号を変換して音響を発生させる音響発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的信号を変換して音響を発生させる音響発生装置として、様々な種類のラウドスピーカーが広く用いられている。このようなラウドスピーカーの一種である静電型(コンデンサ型)スピーカーにおいて、電極とその駆動回路とを一体化して薄型化を図った構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−17337号公報(第4−5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の静電型スピーカーには、次のような問題があった。すなわち、静電型スピーカーは、電極間において発生する吸引力によって電極を振動させて音響を発生させる構造であるため、音量が充分でない問題があった。また、上述した従来の静電型スピーカーでは、多数の薄膜トランジスタ(TFT)が用いられるため、構造が複雑になる問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡素な構造で薄型化を図りつつ、充分な音量を発生し得る音響発生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解消するため、本発明の音響発生装置は、電極が対向して配置された電極部と、前記電極間に配置され、電界が与えられることによって前記電極に向けて移動する互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体と、前記電極の一方と接触するように配置される互いに対向する二つの振動部とを備え、前記二種類の帯電性媒体は、対向する前記電極を介して電界が与えられることによってそれぞれ前記電極または前記振動部に衝突し、前記振動部は、前記二種類の帯電性媒体がそれぞれ前記電極または前記振動部に衝突することによって振動して、音響を発生することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の音響発生装置の好適例としては、対向する前記電極間に形成された空間を区画する区画部を備え、前記区画部は、前記空間を一または複数の領域に区画し、前記二種類の帯電性媒体は、それぞれの前記領域に配置されることがある。
【0008】
さらに、本発明の音響発生装置の好適例としては、前記振動部は、対向して配置された前記電極の外側に設けられることがある。
【0009】
さらにまた、本発明の音響発生装置の好適例としては、前記二種類の帯電性媒体は、それぞれ同じ形状であるとともに、同種同量の重量調整材を含有することによってほぼ同じ比重となっていることがある。
【0010】
また、本発明の音響発生装置の好適例としては、前記二種類の帯電性媒体が含有する同種同量の重量調整材が、チタン酸化物であることがある。
【0011】
さらに、本発明の音響発生装置の好適例としては、前記二種類の帯電性媒体が、正帯電性球形粒子および負帯電性球形粒子であることがある。
【0012】
なお、本発明において、「比重が同じ二種類の帯電性媒体」とは、二種類の帯電性媒体の比重が同じ場合が最も好ましいが、両者の比重を全く同じに揃えることは難しく、両者の比重の間に若干誤差がある場合も含むことを意味する。また、本発明の好適例において、「二種類の帯電性媒体は、それぞれ同じ形状である」とは、二種類の帯電性媒体の形状が同じ場合が最も好ましいが、両者の形状を全く同じに揃えることは難しく、両者の形状に若干の相違がある場合も含むことを意味する。
しかしながら、「比重が同じ二種類の帯電性媒体」および「二種類の帯電性媒体は、それぞれ同じ形状である」とは、大きさが同じである場合および大きさが異なる場合の二つの場合を含むものであり、大きさまでを同じにすることを限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極間に配置され、電界が与えられることによって前記電極に向けて移動する互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体を使用することで、簡素な構造で薄型化を図りつつ、充分な音量を発生し得る音響発生装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、二種類の帯電性媒体を使用する構成により、二種類の帯電性媒体をそれぞれ別の振動部に衝突させて音響を発生させることができるため、一種類の帯電性媒体を飛翔させて基板に衝突させる場合よりも大きな音を発生することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、二種類の帯電性媒体を互いに反対方向に飛翔させて、対向配置させた二つの振動部に衝突させて音を発生する構成において、単に帯電極性の異なる二種類の帯電性媒体を用いただけでなく、比重がほぼ同じ二種類の帯電性媒体を用いるようにしているため、互いに反対方向に飛翔した二種類の帯電性媒体が同時に振動部に衝突するようになり、一方の振動部ともう一方の振動部とが発生する音がばらつかなくなり、良い音を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の音響発生装置において帯電性媒体が移動して音を発生させる原理を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係る音響発生装置100を含む音響発生システム1の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る音響発生システム1の機能ブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る音響発生装置100の区画部130の概略斜視図である。
【図5】本発明の変更例に係る区画部130Aの概略斜視図である。
【図6】本発明の変更例に係る区画部130Bの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る音響発生装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)音響発生装置100を含む音響発生システム1の概略構成、(2)音響発生システム1の機能ブロック構成、(3)本発明の特徴となる帯電性媒体60の構成、(4)音響発生装置の詳細構成、及び(5)作用・効果について説明する。
【0018】
(1)音響発生装置を含む音響発生システムの概略構成
まず、本発明の音響発生装置において帯電性媒体60が移動して音を発生させる原理について説明する。図1(a)、(b)は、それぞれ、本発明の音響発生装置100において帯電性媒体60が移動して音を発生させる原理を説明するために、装置の部分断面を示す図である。図1(a)、(b)に示す例では、正帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体61と負帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体62との2種類を帯電性媒体としている。そして、図1(a)に示すように、第1の導電性面4を負、第2の導電性面5を正とすることで、正帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体61は第1の基板2側に移動するとともに、負帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体62は第2の基板3側に移動する。また、図1(b)に示すように、第1の導電性面4を正、第2の導電性面5を負とすることで、正帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体61は第2の基板3側に移動するとともに、負帯電した球形粒子を含んだ粒子群として構成した帯電性媒体62は第1の基板2側に移動する。2種類の帯電性媒体(帯電性媒体61および帯電性媒体62)が移動して第1の基板2および第2の基板3に衝突することによって、第1の基板2および第2の基板3が振動することで、音が発生すると推察している。なお、7は対向空間、8は導電性面4および導電性面5に電圧を印加して対向する導電性面間に電界を形成するために給電する電源である。電源8は交流であってもよいし、直流であってもよい。
【0019】
図2は、本実施形態に係る音響発生装置100を含む音響発生システム1の概略構成図である。図1に示すように、音響発生システム1は、音源200、アンプ300及び音響発生装置100によって構成される。
【0020】
音源200は、音声や音楽などの音響信号が変換された電気的信号(アナログまたはディジタル)を出力する。音源200としては、マイクロフォン、MP3プレーヤなどの音楽プレーヤ、テレビ、パーソナルコンピュータ(PC)及びゲーム機などを用いることができる。
【0021】
アンプ300は、音源200から出力された電気的信号を増幅する。アンプ300は、ディジタル信号処理(DSP)による信号補正機能などを搭載してもよい。特に、後述する帯電性媒体60が閾値電圧特性を有する場合、微小電圧に対して帯電性媒体60が移動しなくなることを防ぐため、電気的信号の補正が必要となり得る。
【0022】
アンプ300は、電圧波形として、アナログ波形またはパルス波形を出力できることが好ましい。パルス波形への変換には、ΔΣ変調などを用いることができる。パルス波形を出力することによって、閾値電圧特性を有する帯電性媒体60を用いた場合でも、効果的に音響を発生させることができる。
【0023】
音響発生装置100は、アンプ30と接続される。音響発生装置100は、電極40を備えた基板20(振動パネル121と呼ぶ)、電極50を備えた基板30(振動パネル122と呼ぶ)、区画部130、及び帯電性媒体60を備える。
【0024】
電極40と電極50とは、対向して配置される。電極40及び電極50を構成する導電性材料としては、(i)酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛などの導電金属酸化物類、(ii)ポリアニリン、ポリビロール、ポリチオフェン(例えば、PEDOT:PSSなど)などの導電性高分子類、(iii)金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属、(iv)これらの金属を主成分とする合金が挙げられる。これらの導電性材料で形成された導電膜は、透明であってもよいし、透明でなくてもよい。なお、電極40及び電極50は、表面に絶縁膜のようなコート膜が施されていてもよい。
【0025】
電極40及び電極50の形成方法としては、上述した導電性材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法などで薄膜状に形成する方法や、金属箔(例えば、圧延銀箔)をラミネートする方法、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布する方法を用いることができる。なお、電極40及び電極50の厚みは、導電性が確保できればよく、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。なお、ITOなどの金属酸化物系の導電性材料は、金属材料に比べて可撓性が小さいため、これら金属酸化物系の導電性材料を用いて電極40及び電極50を構成する場合には、断線防止のため、可撓性に優れる銅、アルミニウム、ニッケルや、これらの合金などの金属電極を含ませた複合構造とすることが好ましい。ライン状の電極であれば、金属ライン電極を、金属酸化物系ライン状電極に並接するように設けたり、金属酸化物系ライン状電極に埋設したりする構造とすることができる。
【0026】
振動部となる振動パネル121は、電極40と基板20とが接触するように構成される。振動パネル122は、電極50と基板30とが接触するように構成される。振動パネル121と振動パネル122とは、電極40と電極50とが内側になるように対向して配置される。
【0027】
振動パネル121及び振動パネル122を構成する基板材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、アクリル樹脂などのプラスチック材料や、ガラス、石英、硬質プラスチック、金属などが挙げられる。振動パネル121及び振動パネル122の厚みは、2μm〜5,000μmが好ましい。
【0028】
振動パネル121及び振動パネル122は、帯電性媒体60が衝突することによって振動し、音響を発生する。すなわち、帯電性媒体60は、電極40及び電極50に印加される電圧によって電極間に形成された電界にしたがって、電極40または電極50に向けて飛翔移動し、電極40または電極50に衝突する。電極40及び電極50は、音源200から出力された電気的信号に基づいて電圧が印加されるため、帯電性媒体60は、この電圧変化に応じて、移動方向を変え、電極への衝突が繰り返される。この結果、振動パネル121の表面121a及び振動パネル122の表面122aが振動し、音源200に応じた音響を発生する。
【0029】
区画部130は、電極40と電極50との間に形成された空間を区画する。具体的には、区画部130は、当該空間を一または複数の領域に区画する。帯電性媒体60は、区画部130によって区画された領域に配置される。ここで言う区画は厳密なものではなく、区画するための部材は連続に形成されてもよいし、不連続に、断続的に形成されてもよい。また、区画部130内の当該空間は、帯電性媒体60と気体(空気)によって満たされる。なお、当該空間は、真空としてもよい。
【0030】
帯電性媒体60は、電極40と電極50との間、具体的には区画部130によって区画された空間に配置される。帯電性媒体60は、電界が与えられることによって電極40または電極50に向けて飛翔移動する。本実施形態では、帯電性媒体60は、互いに異なる帯電特性を有する球形粒子を含んだ二種類の粒子群(61および62)である。帯電性媒体60の詳細については、後述する。
【0031】
(2)音響発生システム1の機能ブロック構成
図3は、音響発生システム1の機能ブロック構成図である。なお、図3では、振動パネル121の基板20及び振動パネル122の基板30、区画部130及び帯電性媒体60は省略されている。図3では、図2における対向する電極部110(電極40および電極50)を、複数の板状電極部111aと、複数の板状電極部112aとで形成している。複数の板状電極部111aと、複数の板状電極部112aとは互いに対向交差している。交差させる角度に限定はないが、直交すなわち90度で交差させるのが好ましい。
【0032】
図3に示すように、音響発生装置100は、複数の電極40を構成する複数の板状電極部111aと、複数の電極50を構成する複数の板状電極部112aとを有する。
【0033】
セレクタ140は、音響発生装置100の電極部110を構成する複数の電極のうち、アンプ300と接続される電極を選択する。セレクタ140によってアンプ300と所望の電極が電気的に接続され、アンプ300からの出力信号が当該電極に供給される。
セレクタ140は、複数の板状電極部111a及び複数の板状電極部112aにそれぞれ接続される。セレクタ140は、板状電極部111aと板状電極部112aとが重なった領域(図3では、縦5×横5)毎に、板状電極部111a及び板状電極部112aに電圧を印加することができる。セレクタ140には、ドライバICと呼ばれる半導体チップを用いることができる。なお、セレクタ140(ドライバIC)を用いた具体的な帯電性媒体60の駆動方法(パッシブ駆動)としては、公知の方法(例えば、特開2003−307755号公報参照)を用いることができる。
帯電性媒体60の駆動方法としては、電極40および電極50をマトリックス電極としてパッシブ駆動させる上記駆動方法のほか、電極40および電極50をマトリックス電極としてアクティブ駆動させる駆動方法や、電極40および電極50をべた電極としてパッシブ駆動させる駆動方法などを用いることができる。
以下に示す実施形態においては、電極40および電極50をマトリックス電極としたパッシブ駆動を採用した音響発生装置100としている。
【0034】
図4は、音響発生装置100の区画部130の概略斜視図である。図4に示すように、区画部130は、複数のセル131を有する。区画部130は、上述したように、板状電極部111aと板状電極部112aとの間に形成され、セル131のそれぞれには、帯電性媒体60が配置される。ここでは、全てのセル131に帯電性媒体60を配置し、かつ、完全に区切られたセル131としてセル内に帯電性媒体60を封入した例を示している。帯電性媒体60が配置されていないセルを設けてもよいし、セルは密閉されていなくてもよい。
【0035】
セル131は、区画部130の平面視において、略正方形であり、区画部130の縦方向及び横方向に連続して形成される。区画部130の高さH、つまり、電極40と電極50との距離は、10μm〜500μmであることが好ましい。セル131は、縦方向及び横方向に延在する直線状の隔壁132によって形成される。隔壁132の形成材料としては、ドライフィルムレジスト材が好適に用いられる。例えば、アルフォNIT2(ニチゴーモートン社製)やPDF300(新日鐵化学社製)を用いることができる。
【0036】
(3)本発明の特徴となる帯電性媒体の構成
本発明の音響発生装置100の特徴は、帯電性媒体60として、互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体61、62を使用する点にある。ここで言う二種類とは、上記したセル131に配置する帯電性媒体の種類であり、異なるセル131に配置する帯電性媒体では別の二種類の組み合わせが可能である。セル131によって組み合わせて配置する二種類の帯電性媒体を変えて、二種類以上の帯電性媒体60を使用することになる際も、同じセル131に配置される二種類の帯電性媒体のそれぞれが、互いに帯電極性が異なるとともに(正極性または負極性)比重が同じであれば良い。また、二種類の帯電性媒体61、62の形状も、同じであることが好ましい。
【0037】
なお、本発明において、「比重が同じ二種類の帯電性媒体」とは、二種類の帯電性媒体の比重が同じ場合が最も好ましいが、両者の比重を全く同じに揃えることは難しく、両者の比重の間に若干誤差がある場合も含むことを意味する。また、比重は、一般の比重の定義と同じように、帯電性媒体の全質量を全体積で割った値となる。
【0038】
帯電性媒体60として、互いに帯電極性が異なるとともに比重がほぼ同じ二種類の帯電性媒体61、62を使用することで、二種類の帯電性媒体61、62をそれぞれ別の振動部(振動パネル121、振動パネル122)に衝突させて音響を発生させることができるため、一種類の帯電性媒体だけを用いた場合よりも大きな音を発生することができる。また、二種類の帯電性媒体を互いに反対方向に飛翔させて、それぞれ別の振動部(振動パネル)に衝突させて音を発生する構成において、単に帯電極性の異なる二種類の帯電性媒体を用いただけでなく、比重がほぼ同じ二種類の帯電性媒体を用いているため、二種類の帯電性媒体に電界を付与してそれぞれを互いに反対方向に飛翔させる際、それぞれの帯電性媒体がほぼ同時に飛翔を開始して、ほぼ同時に振動部(振動パネル)に衝突するようになり、トーンの揃った良い音を得ることができるものと推察している。
【0039】
帯電性媒体60としては、帯電性を有する球形粒子であって平均粒子径が1μm〜20μmの範囲の粒子が好ましいが、粒子形状以外にも、直径が1μm〜20μmの範囲の短繊維も好ましい。形状としては、粒子であれば球形および球形以外の不定形であってもよいし、短繊維であれば円柱形、円錐台形、円錐形、樽形、鼓形であってもよい。組み合わせて用いる二種類において、同じ形状であること、好ましくは同じ大きさであることが肝要である。二種類の帯電性媒体(例えば帯電性粒子)の帯電極性は異なる。光学的反射率(色)は同じであってもよいし、異なっていてもよい。互いの色を異なるようにして、振動パネルの少なくとも一方を透明にすれば、透明な振動パネルに飛翔してきた負帯電性媒体と正帯電性媒体とのコントラストを利用した表示を行うことができる。透明な振動パネルは、透明な電極および透明な基板で形成される。また、この場合の帯電性媒体は表示媒体としても機能するものであり、一方の色を白色とし、もう一方の色を黒色とするのが好ましい。
【0040】
本発明の二種類の帯電性媒体の一方とする負帯電性球形粒子は、次のように製造することができる。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、重量調整材としての所定量の二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)と、負帯電性荷電制御剤としてのフェノール系縮合物(ポントロンE89:オリエント化学製)5質量部とを、二軸混練機により溶融混練する。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級する。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の負帯電性球形粒子を得る。二酸化チタンの替わりにチタンブラックを用いることもできる。重量調整材としては、二酸化チタン(チタンホワイト)やチタンブラックなどのチタン酸化物が好ましい。
【0041】
本発明の二種類の帯電性媒体の他方とする正帯電性球形粒子は、次のように製造することができる。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、重量調整材として、前記負帯電性球形粒子に配合したのと同じ所定量の二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)と、正帯電性荷電制御剤としてのニグロシン化合物(ボントロンNO7:オリエント化学(株)製)3質量部とを、二軸混練機により溶融混練する。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級する。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の正帯電性球形粒子を得る。二酸化チタンの替わりにチタンブラックを用いることもできる。重量調整材としては、二酸化チタン(チタンホワイト)やチタンブラックなどのチタン酸化物が好ましい。
【0042】
帯電性媒体(上記では帯電性球形粒子)のベース樹脂として、シクロオレフィン樹脂(ゼオネックス330R:日本ゼオン(株)製)を用いることもできる。
また、溶融球状化を行わないで、不定形の粒子とすることもできる。この場合も分級処理によって、平均粒子径を所定の範囲にする。
【0043】
粒子や短繊維の表面に、平均粒子径10nm〜500nmのシリカ微小粒子を付着させて帯電性媒体を構成すると、帯電性媒体が飛翔移動しやすくなるので好ましい。
例えば、上記負帯電性粒子に、シリカ微小粒子(H3004:日本クラリアント(株))を2質量%程度外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した構成の負帯電性球形粒子を得ることができる。また、上記正帯電性粒子に、シリカ微小粒子(H3050:日本クラリアント(株))を2質量%程度外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した構成の正帯電性球形粒子を得ることができる。外添するシリカ微小粒子は、母体粒子または母体短繊維の帯電極性に対応して、種類を選択することが好ましく、上記は好ましい組み合わせの一例である。
【0044】
従来の帯電性媒体では、正帯電性粒子(正帯電性の帯電性媒体)と負帯電性粒子(負帯電性の帯電性媒体)とでは、配合される顔料や荷電制御剤の重さが異なる。そのため、そのままでは、両者の帯電性を互いに逆極性にすることはできても、両者の比重をほぼ同じとすることは難しい場合がある。その場合は、上述したように帯電性媒体の母材とするベース樹脂に重量調整材を添加して、両者の比重をほぼ同じとすることが好ましい。
【0045】
帯電性媒体の比重を調整するために用いる重量調整材としては、二酸化チタン(チタンホワイト)や酸化チタン系材料であるチタンブラック、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化鉄、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。なかでも、帯電特性に及ぼす影響が少なく、比重の大きい材料である二酸化チタン(チタンホワイト)およびチタンブラックなどのチタン酸化物が好ましい。
【0046】
二酸化チタンは、白色を発現する着色剤にもなるので、白色表示媒体としても用いることができる帯電性媒体を得るために用いる重量調整材として特に好適である。
【0047】
チタンブラックは、黒色を発現する着色剤にもなるので、黒色表示媒体としても用いることができる帯電性媒体を得るために用いる重量調整材として特に好適である。
【0048】
二酸化チタンとチタンブラックとはその化学構造がほとんど同じであり、比重もほぼ等しい。したがって、二種類の帯電性媒体のうち一方の帯電性媒体の重量調整材に二酸化チタンを用い、もう一方の帯電性媒体の重量調整材にチタンブラックを用いれば、同じ比重を有するとともに帯電極性が互いに異なる白色帯電性媒体および黒色帯電性媒体を得ることができ、これらを、電界駆動方式の画像表示パネル用の表示媒体とすることもできる。
【0049】
音響発生装置で用いる帯電性媒体の比重は、比較的大きいことが好ましく、1.2以上とする。二酸化チタン(比重4.2)、チタンブラック(比重4.2)などの重量調整材を、比重が1.0程度の母材樹脂材料(100質量部)に対して混合して所望の比重の帯電性媒体とすることができるが、混合できる割合には限度がある。重合法で作製する場合には、20質量部程度が混合できる限度であり、混練混合した後粉砕して作製する場合には、400質量部程度が混合できる限度である。必要に応じて作製方法および混合割合を決めることとなる。
【0050】
(3)音響発生装置の詳細構成
次に、音響発生装置100の詳細構成について説明する。具体的には、(3.1)電極部110、(3.2)振動パネル121,122、(3.3)区画部130及び(3.4)帯電性媒体60の詳細構成について変更例を含めて説明する。
【0051】
(3.1)電極部110
電極部110を構成する電極40及び電極50は、上述した導電性材料を用いることによって、一定の透明性を有するようにしたり、透明性を有しないようにしたりでき、いずれであっても構わない。なお、音響発生装置100の構成は、帯電性媒体60を表示媒体として用いた画像表示装置(例えば、特開2008−268650号公報参照)と概ね同様であるため、音響発生装置100がこのような画像表示装置の機能を兼ねる場合には、電極40及び電極50の少なくとも一方は、一定の透明性を有する必要がある。
【0052】
電極40と帯電性媒体60との間、電極50と帯電性媒体60との間に帯電性媒体60を通過させるがその移動性を抑える膜を形成してもよい。このような膜を配置すると、帯電性媒体60が膜に衝突した後、振動パネル121または振動パネル122に衝突するため、振動パネル121,122が発生する音響の音色が異なり得る。
【0053】
電極部110を構成する電極40および電極50は、それぞれ振動パネル121,122においてその外側に設けてもよい。つまり、振動パネル121と振動パネル122とが一定の間隔を空けて対向して設けられ、電極40は振動パネル121において基板の外側に設けられる。また、電極50は、振動パネル122において基板の外側に設けられる。このような配置とすると、帯電性媒体60は、振動パネル121の基板または振動パネル122の基板に直接衝突し、振動パネル121,122が発生する音響の音色が異なり得る。
【0054】
また、電極40及び電極50の硬さ(剛性)は、所望の音色に応じて変更してもよい。
【0055】
(3.2)振動パネル121,122
振動パネル121,122の硬さ(剛性)も、所望の音色に応じて変更してもよい。例えば、振動パネル121,122に用いられる電極材料の硬さや基板材料の硬さを調整して音響の周波数特性を改善したり、材料のロス特性を調整して音響の減衰特性を改善したりすることができる。
【0056】
また、振動パネル121,122は、上述したように金属製としてもよく、この場合、電極40及び電極50と兼用してもよい。さらに、振動パネル121,122は、高剛性であって内部に多くの空隙が形成されていてもよい。
【0057】
(3.3)区画部130
区画部130の高さHは、上述したように、10μm〜500μmであることが好ましいが、高さHは、さらに大きくしてもよい。また、セル131のサイズは、より大きいサイズでも構わない。つまり、セル131を構成する隔壁132が設けられる間隔は、さらに広げても構わない。また、隔壁132としては、高弾性率の材料または低弾性率の材料を用いることができる。さらに、隔壁132と振動パネル121,122とは、少なくとも一部が接触していればよい。また、必ずしも隔壁132と振動パネル121(122)とが接触する部分すべてを接着しなくても構わない。
【0058】
区画部130は、出力される音響のダイナミックレンジの拡大や音色のバリエーションを増やすることを目的として、隔壁132の高さや間隔が異なる複数のセルから構成されてもよい。さらに、区画部130を構成するセルの形状は、次のように変更してもよい。
図5は、本発明の変更例に係る区画部130Aの概略斜視図である。図5に示すように、区画部130Aは、六角形のセル133が複数連なったハニカム状である。それぞれのセル133には、帯電性媒体61及び帯電性媒体62が封入される。なお、区画部130Aが用いられる場合、区画部130Aの外縁形状に合わせて、電極部110の形状や振動パネル121,122の形状を変更してもよい。この例においても、全てのセル133に、帯電性媒体61及び帯電性媒体62を配置(封入)する必要はなく、空きのセルが設けられていてもよい。
【0059】
図6は、本発明の変更例に係る区画部130Bの概略斜視図である。図6に示すように、区画部130Bは完全なセル構造を有さずに不完全なセル構造であり、セルに加えて複数のポスト135が設けられている。不完全なセル構造を形成してもよいが、ポスト135のみを設けた構造としてもよい。
【0060】
区画部130Bには、帯電性媒体61及び帯電性媒体62が配置(封入)される。ポスト135は、区画部130Bの底面から略垂直方向に向かって延びる柱状の部分である。ポスト135は、一定の間隔を空けつつ、縦方向及び横方向に沿って複数設けられる。ポスト135の配置は、規則性を有していてもよいし、ランダムでもよい。
【0061】
このように、当該空間をセルに区画するための隔壁(セル形成用隔壁)の配置は格子状、ハニカム状、網目状などにすることができる。また、セルの平面視における形状(横断面形状)は、四角形、三角形、六角形などの多角形や、円形、楕円形、レーストラック形などの何れでもよいし、複数の形状を組み合わせてもよい。帯電性媒体60を移動し易くする観点からは曲線を有する形状が好ましい。このような点を考慮すると、角丸付きの四角形や角丸付きの六角形が好ましい。
【0062】
(3.4)帯電性媒体60
帯電性媒体60の質量は、所望の音色に応じて大きくしたり、小さくしたりしてもよい。上述した帯電性媒体60は球状(球形粒子)であったが、帯電性媒体60は、楕球状や円盤状であってもよい。或いは、帯電性媒体60は、球状ではなく花弁状や細長い繊維状であってもよい。
【0063】
また、電極部110に印加する電圧がパルス電圧の場合には、電圧のパルス幅やパルス高さ、電極部110に印加する電圧がアナログ電圧の場合には周期や波高を変更することによって、帯電性媒体60が電極40,50または振動パネル121の基板,振動パネル122の基板に衝突する頻度や強さが変化する。この結果、音程や音量を調整し得る。
【0064】
(4)作用・効果
音響発生装置100によれば、帯電性媒体60は、電極部110を介して電界が与えられることによって振動パネル121および振動パネル122に衝突する。帯電性媒体60が衝突することによって振動パネル121,122は振動し、音響を発生する。このため、従来の静電型スピーカーと比較して、帯電性媒体60が振動パネル121および振動パネル122に衝突することによって容易に充分な音量を得ることができる。また、音響発生装置100では、薄膜トランジスタ(TFT)などは用いられず、構成が簡素である。すなわち、音響発生装置100によれば、簡素な構造で薄型化を図りつつ、充分な音量を発生し得る。もちろん、必要に応じてTFTを備えた電極を電極部に用いることもできる。
【0065】
上述した実施形態では、区画部130は、電極111aと電極112aとの間に形成された空間を複数のセル131に区画する。また、二種類の帯電性媒体61、62は、それぞれのセル131に配置(封入)される。このため、それぞれのセル131毎に帯電性媒体60の挙動を制御でき、音響発生装置100は、複数のセル131による纏まった領域毎に異なる音響(例えば、左右の領域に区分したステレオ信号のLチャネルとRチャネル)を発生できる。
【0066】
上述した実施形態では、振動パネル121,122は、対向して配置され、それぞれの振動パネル121,122が備える板状電極111a,板状電極112aは、内側にある。反対に、振動パネル121,122の基板を内側にすると、基板と比較して損傷し易い板状電極111a,板状電極112aに帯電性媒体60が直接衝突しないようにでき、電極の耐久性を向上できる点では都合がよい。
【0067】
上述した実施形態では、帯電性媒体60は、帯電性を有する球形粒子の群によって構成される。このため、花弁状や繊維状の帯電性媒体の群と比較して、区画部130内の移動がスムーズであり、音量の増大や音程の制御において有利である。
【0068】
さらに、本発明の音響発生装置によれば、帯電性媒体60として、互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体61、62を使用することで、二種類の帯電性媒体61、62をそれぞれ別の振動パネル(振動パネル121、振動パネル122)に衝突させて音響を発生させることができるため、一種類の帯電性媒体だけを用いた場合よりも大きな音を発生することができる。また、二種類の帯電性媒体を互いに反対方向に飛翔させて、それぞれ別の振動パネルに衝突させて音を発生する構成において、単に帯電極性の異なる二種類の帯電性媒体を用いただけでなく、比重がほぼ同じ二種類の帯電性媒体を用いているため、二種類の帯電性媒体に電界を付与してそれぞれを互いに反対方向に飛翔させる際、それぞれの帯電性媒体がほぼ同時に飛翔を開始して、ほぼ同時に振動パネルに衝突するようになり、トーンが揃った良い音を得ることができる。
【実施例】
【0069】
以下のように、互いに帯電極性が異なるとともに比重がほぼ同じ二種類の帯電性球形粒子を帯電性媒体として用いた実施例1〜6と、互いに帯電極性は異なるが比重が異なる二種類の帯電性球形粒子を帯電性媒体として用いた比較例1〜2とについて、評価用の音響発生装置を作製して音の発生を定性的に評価した。
【0070】
<音響発生装置の構成>
(a)振動パネルを構成する基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)製、厚さ125μm;
(b)電極:酸化インジウム錫(ITO)製ストライプ状(板状)、幅300μm、スペース20μm、厚さ0.1μm;
(c)基板間ギャップ:50μm;
(d)駆動方法:300μm×300μmサイズの電極対が、100×100でマトリックス配置されたマトリックス電極対にパルス電圧を印加するパッシブ駆動;
(e)帯電性媒体:以下に示す方法で、実施例1〜6および比較例1〜2の帯電性媒体を構成する帯電性粒子を作製した。粒子形状はいずれも球形とした。
【0071】
(実施例1〜6の帯電性粒子)
実施例1〜6の負帯電性粒子を、次のようにして製造した。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、重量調整材としての以下の表1に示す所定質量部の二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)またはチタンブラックと、負帯電性荷電制御剤としてのフェノール系縮合物(ポントロンE89:オリエント化学製)5質量部とを、二軸混練機により溶融混練した。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級して、粒子径が5μm〜20μmの粒子を得た。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の負帯電性球形粒子を得た。
得られた負帯電性球形粒子に、シリカ微小粒子(H3004:日本クラリアント(株))を2質量%外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した負帯電性球形粒子で構成された帯電性媒体(負帯電性)とした。
【0072】
実施例1〜6の正帯電性粒子を、次のようにして製造した。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、重量調整材としての以下の表1に示す所定質量部の二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)またはチタンブラックと、正帯電性荷電制御剤としてのニグロシン化合物(ボントロンNO7:オリエント化学(株)製)3質量部とを、二軸混練機により溶融混練した。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級して、粒子径が5μm〜20μmの粒子を得た。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の正帯電性球形粒子を得た。
得られた正帯電性球形粒子に、シリカ微小粒子(H3050:日本クラリアント(株))を2質量%外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した正帯電性球形粒子で構成された帯電性媒体(正帯電性)とした。
【0073】
(比較例1、2の帯電性粒子)
比較例1の負帯電性粒子を、次のようにして製造した。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、白色顔料としての二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)20質量部と、負帯電性荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ポントロンE89:オリエント化学製)5質量部とを、二軸混練機により溶融混練した。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級して、粒子径が5μm〜20μmの粒子を得た。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の負帯電性球形粒子を得た。この球形粒子は白色粒子であった。
得られた負帯電性球形粒子に、シリカ微小粒子(H3004:日本クラリアント(株))を2質量%外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した負帯電性球形粒子で構成された帯電性媒体(負帯電性)とした。
比較例2の負帯電性粒子を、次のようにして製造した。(i)母材としてのポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100質量部と、白色顔料としての二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100質量部と、負帯電性荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ポントロンE89:オリエント化学製)5質量部とを、二軸混練機により溶融混練した。(ii)ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業製)で(i)の生成物を細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業製)を用いて分級して、粒子径が5μm〜20μmの粒子を得た。(iii)溶融球状化装置(MR−10:日本ニューマチック工業製)を用いて(ii)の生成物を溶融球状化し、さらに分級して、平均粒子径10μm程度の負帯電性球形粒子を得た。この球形粒子は白色粒子であった。
得られた負帯電性球形粒子に、シリカ微小粒子(H3004:日本クラリアント(株))を2質量%外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した負帯電性球形粒子で構成された帯電性媒体(負帯電性)とした。
【0074】
比較例1および比較例2の正帯電性粒子を、次のようにして製造した。(i)メチルメタクリレートモノマー(関東化成試薬)60質量部、及び、1分子中に重合反応基を複数持つ多官能性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬試薬)40質量部(約25mol%)に、正帯電性荷電制御剤としてニグロシン化合物(ボントロンN07:オリエント化学製)3質量部、及び、黒色顔料としてのカーボンブラック(スペシャルブラック:デグッサ製))5質量部をサンドミルにより分散させた。分散させた液に界面活性剤(ラウリルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂製))を溶融させた。その液を、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(ラテムルE−118B:花王製))を0.5質量%添加した精製水に懸濁させて重合した。(ii)重合終了後、懸濁液をろ過し、得られた粒子を乾燥させた。得られた乾燥物をジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック工業(株)製)で細かくし、さらに、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業(株))を用いて分級することによって、平均粒子径が10μm程度の正帯電性球形粒子を得た。この球形粒子は黒色粒子であった。
得られた正帯電性球形粒子に、シリカ微小粒子(H3050:日本クラリアント(株))を2質量%外添し、ヘンシェルミキサー(FM5C:三井金属鉱山(株))にて攪拌し、シリカ微小粒子が表面に付着した正帯電性球形粒子で構成された帯電性媒体(正帯電性)とした。
【0075】
帯電性媒体を間に配置する対向する二枚の振動パネルの一方は次のようにして作製した。まず、ITO電極がストライプ状に形成されたPET基板に、厚さ50μmのドライレジストフィルム、アルフォNIT2(ニチゴーモートン社製)を積層後、フォトリソグラフィー技術により、格子状リブ(幅20μm、開口300μm×300μm)を形成した。格子状リブで囲まれた領域(セル)に、準備した負帯電性球形粒子(負帯電性媒体)と正帯電性球形粒子(正帯電性媒体)とを同重量ずつ、合わせて体積占有率30%になるように充填して配置した。その後、格子状リブの上にアクリル系接着剤を配置し、もう一方の振動パネルとなる、ITO電極がストライプ状に形成されたPET基板を、ストライプ状電極が互いに直交するように対向させて貼り合せて得た音響発生部にドライバIC(図3のセルクタ140)を実装して評価用音響発生装置を得た。
この評価用音響発生装置では、振動パネルを構成するPET基板が振動部であるとも、ストライプ状電極が形成されたPET基板全体、すなわち、振動パネル全体が振動部であるとも言える。
【0076】
<音の定性的評価>
作製した評価用音響発生装置を、アンプ300、音源200を備えた駆動装置に接続して、図3に示すような音響発生システムを構成し、このシステムを用いて、評価用音響発生装置の振動パネル面の全面領域で二種類の帯電性球形粒子(負帯電性の帯電性媒体および正帯電性の帯電性媒体)を互いに反対の振動パネル側に飛翔させて振動パネルに衝突させ、振動パネルから発生した音を聴いて、トーンが揃った音であるか、トーンがばらついた音であるかを、いずれも20人の被験者が定性的に判断した。実施例1〜6の評価用音響発生装置、比較例1、2の評価用音響発生装置それぞれにおいて同様に発生させた音を、同様の条件で被験者に視聴させて、良好と判断した被験者数を結果として以下の表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1の結果から、互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体を用いた実施例1〜6は、互いに帯電極性は異なるが比重が異なる二種類の帯電性媒体を用いた比較例1、2と比較して、優れた音の評価を得ることができた。
【0079】
二種類の帯電性媒体の比重をほぼ同じにすることで、なぜ、上記のように優れた音の評価が得られるのかについては解明できてはいないが、以下に述べるような理由があると推量している。すなわち、比重の小さい帯電性媒体(帯電性粒子)が飛翔してきて振動部(基板)に衝突した場合と、比重の大きい帯電性媒体(帯電性粒子)が飛翔してきて振動部(基板)に衝突した場合とで、発生する音にばらつきがあり、全体としてトーンが揃っていない音となるのは、比重の違いによって、帯電性媒体の飛翔性に違いがあるためである。
対向する電極間に配置した帯電性媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、帯電性媒体が電界による力やクーロン力等によって引き寄せられ、帯電性媒体が電界方向の変化によって飛翔する方向が切り換わることにより、二種類の帯電性媒体がそれぞれ反対側にある振動部に衝突して、振動部を振動させて音を発生させると考えられる。したがって、帯電性媒体が、均一に飛翔して、振動部を振動できるように、音響発生装置を設計する必要がある。ここで、帯電性媒体(例えば粒子)にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付け合う力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等が考えられる。したがって、これら各種力を上手く調整することができれば、二種類の帯電性媒体をほぼ同時に飛翔させて、ほぼ同時に振動部に衝突させることができると考えられる。発明者らは、比重を揃えたことで、上記した、帯電性媒体にかかる各種力が上手く調整されて、帯電極性の異なる二種類の帯電性媒体が、ほぼ同時に飛翔して、ほぼ同時に振動部に衝突するようにできたものと考えている。
これによって、発生する音にばらつきがなくなり、全体としてトーンが揃った音となるものと考えている。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の音響発生装置は、薄型に構成できるとともに十分な音量を得ることができる。そのため、必要に応じてフレキシブルにして、フレキシブルフラットスピーカーとすることもできる。また、搭載する場所の形状に合わせた曲面形状に構成して、凸曲面型スピーカーとしたり、凹曲面型スピーカーとしたり、波型スピーカーとしたり、階段型スピーカーとしたりすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1…音響発生システム、2…第1の基板、3…第2の基板、4…第1の導電性面、5…第2の導電性面、60(61、62)…帯電性媒体、7…対向空間、8…電源、200…音源、300…アンプ、100…音響発生装置、110…電極部、40,50…電極、111a,112a…板状電極部、121,122…振動パネル(振動部)、121a,122a…表面、130,130A,130B…区画部、131…セル、132…隔壁、133…セル、135…ポスト、140…セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が対向して配置された電極部と、
前記電極間に配置され、電界が与えられることによって前記電極に向けて移動する互いに帯電極性が異なるとともに比重が同じ二種類の帯電性媒体と、
前記電極の一方と接触するように配置される互いに対向する二つの振動部と、
を備え、
前記二種類の帯電性媒体は、対向する前記電極を介して電界が与えられることによってそれぞれ前記電極または前記振動部に衝突し、
前記振動部は、前記二種類の帯電性媒体がそれぞれ前記電極または前記振動部に衝突することによって振動して、音響を発生する音響発生装置。
【請求項2】
対向する前記電極間に形成された空間を区画する区画部を備え、
前記区画部は、前記空間を一または複数の領域に区画し、
前記二種類の帯電性媒体は、それぞれの前記領域に配置される請求項1に記載の音響発生装置。
【請求項3】
前記振動部は、対向して配置された前記電極の外側に設けられる請求項1または2に記載の音響発生装置。
【請求項4】
前記二種類の帯電性媒体は、それぞれ同じ形状であるとともに、同種同量の重量調整材を含有することによって同じ比重となっている請求項1乃至3の何れか一項に記載の音響発生装置。
【請求項5】
前記二種類の帯電性媒体が含有する同種同量の重量調整材が、チタン酸化物である請求項4に記載の音響発生装置。
【請求項6】
前記二種類の帯電性媒体が、正帯電性球形粒子および負帯電性球形粒子である請求項1乃至5の何れか一項に記載の音響発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−26852(P2013−26852A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160228(P2011−160228)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】