説明

音響装置

【課題】重ねて配置された電気音響変換部と発光部を有する音響装置において、透明な材料を用いなくても、電気音響変換部と発光部の一方が他方の機能を損なわないようにする技術を提供すること。
【解決手段】音響装置1は、平坦面を有する振動体10を具備する電気音響変換部(100)と、二次元的に間隔をあけて配置された複数の光源(41)と、これら光源が取着される基板(40)とを有し、電気音響変換部の振動体に重ねて配置された発光部(200)とを有し、発光部の基板の少なくとも一部に、音を通過させる貫通孔(42)が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響変換部と発光部を有する音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平坦面を有する振動体を振動させて平面波を放出するスピーカ(平面スピーカ)として静電型スピーカが知られている。静電型スピーカは、間隔を開けて向かい合う2枚の平行平面電極(固定電極)と、この2枚の電極の間に挿入された導電性を有するシート状の振動体とから構成されており、振動体に所定のバイアス電圧を印加しておき、電極に印加する電圧を変化させると、振動体に作用する静電力が変化し、これにより振動体が変位する。この印加電圧を入力される音響信号に応じて変化させれば、それに応じて振動体は変位を繰り返し(すなわち振動し)、音響信号に応じた音波が振動体から発生する。そして、発生した音波は、平面電極に空けられた孔を通り抜けて外部へ放射される(特許文献1及び2参照)。
【0003】
また静電型スピーカを透明なスピーカとし、情報表示装置の表示面側に装着したスピーカ一体型表示装置が提案されている(特許文献3)。特許文献3に記載のスピーカ一体型表示装置では、スピーカを透明とするため、スピーカを構成する振動版及び固定電極をITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明な材料から形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296125号公報
【特許文献2】特開2010−4254号公報
【特許文献3】特開2002−281597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載のスピーカ一体型表示装置では、スピーカが情報表示部の上に重ねて設けられるため、スピーカと情報表示装置が重ならないように設ける場合と比べて、装置面積を小さくできる。しかしながら、特許文献3に記載のスピーカ一体型表示装置では、スピーカを透明とするために使用する材料が限られる。
【0006】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、重ねて配置された電気音響変換部と発光部を有する音響装置において、透明な材料を用いなくても、電気音響変換部と発光部の一方が他方の機能を損なわないようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部と、二次元的に間隔をあけて配置された複数の光源と、これら光源が取着される基板とを有し、前記電気音響変換部の前記振動体に重ねて配置された発光部とを有し、前記発光部の前記基板の少なくとも一部に、前記発音部により生成された音を通過させる貫通孔が設けられていることを特徴とする音響装置を提供する。
【0008】
また、上述した課題を解決するため、本発明は、二次元的に配置された複数の光源を有する発光部と、前記複数の光源に対向して配置された平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部とを有し、前記振動体に前記複数の光源から発せられた光を通過させる貫通孔が形成されていることを特徴とする音響装置を提供する。
【0009】
また、上述した課題を解決するため、本発明は、二次元的に間隔をあけて配置された各々接続用のリードを有する複数の光源と、これら光源のリードが取着される基板とを有する発光部と、平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部とを有し、各光源のリードは、前記振動体を該振動体の振動方向に貫通して前記基板に取着されていることを特徴とする音響装置を提供する。
【0010】
好ましい態様において、前記光源の各々のリードは絶縁体により被覆されていてもよい。
【0011】
他の好ましい態様において、前記電気音響変換部は前記振動体から当該振動体の面に垂直な方向に離間して配置された導電性を有する板状の固定電極を更に具備し、前記振動体と前記固定電極により静電型の電気音響変換部が構成されており、前記発光部の前記基板は、絶縁性の板状部材と、前記電気音響変換部に対向する前記板状部材の一面に設けられ前記電気音響変換部の前記固定電極として機能する導電層と、前記板状部材の他面に設けられ、前記光源の配線をする配線層とを有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重ねて配置された電気音響変換部と発光部を有する音響装置において、透明な材料を用いなくても、電気音響変換部と発光部の一方が他方の機能を損なわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る音響装置1の外観図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る音響装置1の断面と電気的構成の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る音響装置1の機能ブロック図である。
【図4】本発明の変形例1に係る音響装置1の外観図である。
【図5】本発明の変形例2に係る音響装置1の断面と電気的構成の模式図である。
【図6】本発明の変形例3に係る音響装置1の断面と電気的構成の模式図である。
【図7】本発明の変形例4に係る音響装置1の断面と電気的構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る音響装置1の外観を模式的に示した斜視図、図2は音響装置1の断面と電気的構成を模式的に示した図である。図に示したように、この音響装置1は、発音部としての静電型スピーカ100と、静電型スピーカ1の上に重ねて設けられた発光部としてのLEDパネル200とを有する。図1及び2において、X、Y、Zは3軸の直交座標系の座標軸を意味している。互いに直交するX軸、Y軸はいずれも静電型スピーカ100の放音面と平行であり、Z軸が静電型スピーカ100の放音面に対して垂直である。
【0015】
(静電型スピーカ100)
静電型スピーカ100は、振動体10、固定電極20U,20L、及びスペーサ30U,30Lを有している。なお、本実施形態においては、固定電極20U,20Lの構成は同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。また、スペーサ30Uとスペーサ30Lの構成は同じであるため、これらの部材についても両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。また、図中の振動体、固定電極等の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてあり、図中で「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0016】
静電型スピーカ100においては、振動体10の周縁部がスペーサ30Uとスペーサ30Lとの間に張力が掛からない、所謂テンションレスの状態で挟まれている。また、静電型スピーカ100においては、固定電極20Uはスペーサ30Uに固定され、固定電極20Lはスペーサ30Lに固定されている。このような構造により、固定電極20U、20Lの各々は振動体10から振動体10の面に垂直な方向(Z方向)に離間して配置されている。
【0017】
固定電極20U,20Lは、振動体10を挟んで対向するようにスペーサ30U,30Lに固定され、振動体10は、固定電極20Uと固定電極20Lとの間の空間内において、固定電極20に垂直な方向に振動可能に支持される。
【0018】
次に、静電型スピーカ100を構成する各部について説明する。振動体10は、例えば、PET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)、PP(polypropylene、ポリプロピレン)などのフィルムに、金属膜を蒸着あるいは導電性塗料を塗布したシート状の部材であり、その厚さは、数μm〜数十μm程度の厚さとなっている。振動体10は平坦面を有し、振動させられると平面波の音を生成する。
【0019】
スペーサ30は、絶縁体で形成されており、その形状は矩形の枠の形状となっている。なお、本実施形態においては、スペーサ30のX方向およびY方向の長さと、固定電極20のX方向およびY方向の長さは同じとなっている。また、スペーサ30Uとスペーサ30LのZ方向の高さは、いずれも同じとなっている。
【0020】
固定電極20は、矩形で板状に形成されており導電性を有している。また、固定電極20においては、音響透過性を確保するために、固定電極20の表面から裏面に貫通する微細な貫通孔21がX方向とY方向とに所定の間隔で複数設けられている。なお、本実施形態においては、固定電極20のX方向およびY方向の長さと、振動体10のX方向およびY方向の長さは同じとなっている。
【0021】
(静電型スピーカ100の電気的構成)
次に、静電型スピーカ100の電気的構成について説明する。図2に示したように、静電型スピーカ100は、変圧器50と、外部から音響信号が入力される入力部60と、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源70とを備えている。バイアス電源70は、振動体10と、変圧器50の出力側の中点との間に接続されており、固定電極20U,20Lはそれぞれ変圧器50の出力側の一端および他端に接続されている。この構成においては、入力部60に音響信号が入力されると、入力部60は入力された音響信号に応じた電圧を生成し、生成された電圧は変圧器50を介して固定電極20U、20Lに印加される。
【0022】
(静電型スピーカ100の動作)
次に、静電型スピーカ100の動作について説明する。入力部60に入力された音響信号に基づいて生成された電圧が変圧器50を介して対向する固定電極20U、20Lに供給され、これら固定電極の間に電位差が生じると、振動体10を図中のZ方向側またはZ方向と反対の方向側へ引き寄せる静電力が振動体10に働く。
【0023】
例えば、入力部60に音響信号が入力され、固定電極20Uにプラスの電圧が印加され、固定電極20Lにマイナスの電圧が印加されると、振動体10にはバイアス電源70によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10と固定電極20Uとの間に働く静電引力が弱まる一方、振動体10と固定電極20Lとの間に働く静電引力が強まる。従って、振動体10には、振動体10に加わる静電引力の差に応じて固定電極20L側に吸引力が働き、振動体10において固定電極20Uと固定電極20Lとの間にある部分は、固定電極20L側へ変位する。
【0024】
次に入力部60に音響信号が入力され、固定電極20Uにマイナスの電圧が印加され、固定電極20Lにプラスの電圧が印加されると、振動体10にはバイアス電源70によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10と固定電極20Uとの間に働く静電引力がつ強まる一方、振動体10と固定電極20Lとの間に働く静電引力が弱まる。従って、振動体10には、振動体10に加わる静電引力の差に応じて固定電極20U側に吸引力が働き、振動体10において固定電極20Uと固定電極20Lとの間にある部分は、固定電極20U側へ変位する。
【0025】
このように、振動体10が音響信号に応じて変位し(撓み)、その変位方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。発生した音は、少なくとも固定電極20U側または固定電極20L側の一方を通り抜けて静電型スピーカ100の外部に放射される。即ち、この例では、静電型スピーカ100の上面及び下面が放音面となっている。
【0026】
(LEDパネル200)
図1に示すように、LEDパネル200は、X方向及びY方向に4×4のマトリックス状に離間して配置されたLED(Light Emitting Diode)41と、これらLED41が取着される基板40とを有し、静電型スピーカ100の上面に重ねて設けられている。LED41は、基板40の上面に配置されている。LED41は、全て同じ色でも、異なる色を有していてもよい。例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光色のLED41で各画素を構成し、カラーの静止画像または動画を表示できるようにしてもよい。また、LEDパネル200に含まれるLEDの数(または解像度)は図示した例に限定されるものではない。例えば、LEDパネル200は、64×64、96×128など様々な解像度を有するものであってもよく、更に、そのようなLEDパネル200を複数組み合わせることで、野球場やビルの壁面等で用いられる縦横数メートルの大型の表示装置を構成してもよい。或いは、LEDパネル200は、例えばコンサートなどでの演出効果を高めるための演出用照明装置として用いてもよい。
【0027】
基板40は、この例では、絶縁性の板状部材の表面や内部に銅箔などの導電体でLED41等の部品を電気的に接続する配線が形成されたプリント配線板である。基板40は、LED駆動回路201(図3参照)に接続され、LED駆動回路201からの信号によって各LED41の点灯/消灯が制御される。LED駆動回路201からの信号により各LED41の輝度を制御してもよい。尚、基板40はプリント配線板に限らず、表面にLED41を二次元的に間隔をあけて配置可能な部材であればよい。例えば基板40は銅箔を有さず、基板40に取着されたLED41等の部品の配線をリード線を用いて行ってもよい。また、基板40は一枚の板状部材からなるものに限定されず、複数の部材を組み合わせて形成されてもよい。
【0028】
基板40は、例えば接着剤やボルトなどの固定手段により静電型スピーカ100の上面に固定される。尚、静電型スピーカ100の上面と対向する基板40の面(下面)に電気配線が設けられる場合、基板40の下面と静電型スピーカ100の上面との間にスペーサを設けて、基板40の下面に設けられた電気配線と、静電型スピーカ100の上面(即ち、固定電極20Uの上面)とが接触しないようにしてもよい。
【0029】
基板40の一部には貫通孔42が形成されている。この例では、マトリックス状に配置されたLED41とX方向及びY方向に重ならない位置に複数の正方形の貫通孔42が形成されており、その結果、基板40はグリッド状のフレームをなしている。また、各貫通孔42は、静電型スピーカ100の上側の固定電極20Uに形成された微細な貫通孔21よりも大きなサイズを有しており、各貫通孔42内に複数の貫通孔21が位置している。これにより、静電型スピーカ100の上面から放出された音(より詳細には、固定電極20Uに形成された貫通孔21を通過した音)は、基板40の貫通孔42を通過し、LEDパネル200の上面から放射される。
【0030】
(音響装置1の機能構成)
図3は、音響装置1の機能ブロック図である。図示されているように、音響装置1は、制御部300と、記憶部301と、通信部302と、LED駆動回路201と、スピーカ駆動回路101とを有する。制御部300は、CPU等のプロセッサであって、各部を制御する。記憶部301は半導体メモリやハードディスク等の記憶装置であって、各部を制御するためのプログラムやデータなどの情報を格納する。この情報は、制御部300によって書きこみ/読み出しが行われる。通信部302は、USBケーブルや通信ネットワーク(例えば、電話回線、LAN(Local Area Network)など)を介してパーソナルコンピュータやサーバ等の外部装置と通信するためのインタフェースである。
【0031】
(音響装置1の動作)
制御部300は、記憶部301に格納されたデータまたは通信部302を介して外部装置から送られてきたデータに基づいて、静電型スピーカ100を駆動するためのスピーカ駆動信号(音響信号)と、LEDパネル200を駆動するためのLED駆動信号を生成する。スピーカ駆動回路101は、図2の入力部60、変圧器50、及びバイアス電源70により構成され、制御部300から受信したスピーカ駆動信号(音響信号)に基づいて電圧を生成し、静電型スピーカ100に印加する。LED駆動回路201は、制御部300から受信したLED駆動信号に基づき、LEDパネル200の各LED41の点灯/消灯を制御する信号を生成してLEDパネル200に供給する。
【0032】
例えば、音響装置1は、以下のように用いることができる。
(1)音響装置1は、静電型スピーカ100から放出される音の音色や音量に応じて、LEDパネル200における発光の態様を変えてもよい。例えば、音響装置1の制御部300は、静電型スピーカ100に供給される音響信号に基づき、音量が大きいほどLEDパネル200がより明るくなるようにLEDパネル200(LED駆動回路201)に供給されるLED駆動信号を生成してもよい。或いは、音響信号に含まれる低音成分や高音成分の大きさに応じて特定の色のLED41の輝度が高くなるようにLED駆動信号を生成してもよい。静電型スピーカ100が独立して動作可能な複数の領域に分割されており、各領域に対応した音響信号が供給される場合(マルチチャンネルシステム)、各領域に対応付けられた1または複数のLED41を、その領域に対応する音響信号に基づいて制御してもよい。
(2)音響装置1は、(1)の動作態様と逆に、LEDパネル200に供給されるLED駆動信号に応じて、静電型スピーカ100から放出される音を変えてもよい。例えば、音響装置1の制御部300は、LEDパネル200に供給されるLED駆動信号により示されるLEDパネル200の明るさに応じて、静電型スピーカ100から放出される音の大きさを変えるように制御してもよい。或いは、LEDパネル200の点滅パターンに対応して、静電型スピーカ100から放出される音に予め定められたエフェクトをかけてもよい。
【0033】
尚、上記したような静電型スピーカ100とLEDパネル200を協働して動作させる制御は、一方を制御するための信号(例えば、静電型スピーカ100に供給される音響信号)に基づいて、他方を制御するための信号(例えば、LEDパネル200に供給されるLED駆動信号)を所定のプログラムに基づいて制御部300が生成することで行ってもよいし、或いは、静電型スピーカ100とLEDパネル200が協働動作するように予め関連付けられた音響信号及びLED駆動信号を記憶部301や外部装置に格納しておき、それら予め関連付けられた音響信号及びLED駆動信号に基づいて静電型スピーカ100及びLEDパネル200を制御することで行ってもよい。尚、例えば外部装置から通信部30を介して音響信号及びLED駆動信号を受信する場合、音響信号にLED駆動信号を重畳しておき、制御部300で分離してもよい。
【0034】
本実施形態の音響装置1では、LEDパネル200が静電型スピーカ100の放音面に重なる(即ち、静電型スピーカ100の振動体10に重なる)ように配置されているため、それらが並べて配置される場合に比べて装置面積を小さくできる。また、LEDパネル200の基板40に貫通孔42が設けられ、静電型スピーカ100の上面から放出された音が、貫通孔42を通過するので、LEDパネル200が静電型スピーカ100の放音機能を損なうことがない。
【0035】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0036】
(変形例1)
上述した実施形態においては、LEDパネル200の基板40は、正方形の貫通孔42を有し、グリッド状のフレームをなしていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板40は、図4の斜視図に示す形状としてもよい。図4において、図1と共通する部分には同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。図4の例では、基板40に、LED41のY方向に延びる列と列の間において、LED列に沿って延びる矩形の貫通孔42aが形成されている。その結果、基板40は、Y方向に延びる複数のクロス部材を有する梯子状のフレームをなしている。振動体10により発せられ貫通孔21を通過する音は、貫通孔42aを通過してLEDパネル200の上面から放出される。
【0037】
(変形例2)
上述した実施形態においては、LEDパネル200の基板40に形成された貫通孔42は、固定電極20に形成された貫通孔21より大きいサイズを有するものとしたが、本発明はこれに限定されない。図5は、変形例2に係る音響装置1の断面と電気的構成を模式的に示した図である。図5において、図2と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図5の例では、LEDパネル200の基板40は、固定電極20の貫通孔21と同じサイズの貫通孔42bを有する。各貫通孔42bは、上側の固定電極20Uの貫通孔21のいずれかとXY方向に整合した位置に設けられる。振動体10により発せられ貫通孔21を通過する音は、貫通孔42bを通過してLEDパネル200の上面から放出される。
【0038】
このように、基板40に形成される貫通孔の位置、形状、及び大きさは、静電型スピーカ100から放出された音が貫通孔を通過し、且つ、貫通孔がLED41の配線を妨げなければ任意である。
【0039】
(変形例3)
上述した実施形態においては、LEDパネル200を静電型スピーカ100の上面に重なるように設けた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。図6は、変形例3に係る音響装置1の断面と電気的構成を模式的に示した図である。図6において、図2と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図6に示した音響装置1では、LEDパネル200が、スペーサ80を介して、静電型スピーカ100の下面に取着されている。スペーサ80は、スペーサ30U、30Lと同様に、絶縁体で形成されており、その形状は矩形の枠の形状である。
【0040】
図6に示した音響装置1では、基板40のLED41が配置された面が、静電型スピーカ100の下面に対向している。即ち、LED41は、静電型スピーカ100の下面、スペーサ40、及び基板40によって画定された空間内に配置される。
【0041】
また、図6に示した音響装置1では、LED41と整合した位置において、固定電極20U、20Lに貫通孔22U、22Lが形成され、振動体10に貫通孔11が形成されている。これにより、図5において矢印Aで示すように、各LED41から発せられた光は、対応する貫通孔22L、11、及び22Uを通過して、静電型スピーカ100の上面から放射される。
【0042】
尚、図6の例では、スペーサ80の高さ(Z方向の長さ)は、LED41の高さより高くなっているが、本発明はこれに限定されない。スペーサ80の高さがLED41の高さより低く、LED41が貫通孔22L、12、及び22Uの少なくとも一部を通って伸びていてもよい。また、例えばLED41から発せられた光を演出用照明に用いるような場合、LED41から発せられた光が静電型スピーカ100の上面から放出されれば、静電型スピーカ100の固定電極20U、20Lに形成される貫通孔22U、22L及び振動膜10に形成される貫通孔11の位置は、必ずしもLED41の配置位置に整合していなくてもよい。また、LEDパネル200を液晶ディスプレイ等のディスプレイに置き換えてもよい。
【0043】
(変形例4)
上述した実施形態においては、LEDパネル200の基板40とLED41はいずれも静電型スピーカ100の上面側に配置されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。図7は、変形例3に係る音響装置1の断面と電気的構成を模式的に示した図である。図7において、図2と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図7に示した音響装置1では、LED41の発光部は静電型スピーカ100の上面に設けられ、基板40は静電型スピーカ100の下面に設けられている。
【0044】
各LED41は電気接続用の一対のリード41aを有し、これらリード41aは、振動体10の振動方向(図7のZ方向)に延び、静電型スピーカ100の固定電極20U、振動体10、及び固定電極20Lと、LEDパネル200の基板40とを貫通して、先端が基板40の下面に達し、基板40の下面に設けられた配線層(図示せず)に電気的に接続されている。各リード41aは、電気接続がなされる先端部を除いて絶縁材料で被覆され、それにより、例えば振動体10によってリード41a同士が電気的に短絡するのが防止される。
【0045】
LED41のリード41aが貫通する静電型スピーカ100の固定電極20U、振動体10、固定電極20L、及びLEDパネル200の基板40には、リード41aを通すための貫通孔(図示せず)をLED41のマウント前に予め形成してもよい。あるいは、LED41のマウントの際に、LED41のリード41aを固定電極20U、振動体10、固定電極20L、及び基板40に対して押し付け、リード41a自身によってこれら部材に貫通孔が形成されるようにしてもよい。
【0046】
また、図7に示した音響装置1では、LEDパネル200の基板40をなす絶縁性板状部材の上面(静電型スピーカ100に対向した面)に金属膜を蒸着あるいは導電性塗料を塗布するなどして導電層を形成し、それを静電型スピーカ100の固定電極20Lとして用いてもよい。また、静電型スピーカ100の駆動回路(入力部60、変圧器50、及びバイアス電源70)の全部または一部を、LEDパネル200の基板40上に配置してもよい。
【0047】
(変形例5)
上記実施形態では、発音部が、対向する一対の固定電極20U、20Lを用いたプッシュ・プル型の静電型スピーカからなる例を示したが、本発明はこれに限らず、固定電極を一つのみ用いてプッシュ型の静電型スピーカとすることも可能である。また、本発明の発音部は必ずしも静電型スピーカに限定されず、他のタイプの平面スピーカとしてもよい。また、枠形のスペーサ30U(30L)の内側に、振動体10と固定電極20U(20L)とに挟まれたクッション材を配置してもよい。クッション材は、例えば、一方の面を起毛された絶縁性を有するシート状の不織布(繊維が集合した繊維集合体)とするとよい。そのようにすると、不織布を構成する繊維の間を空気が通過できるため、音響透過性が確保される。クッション材は弾性を有し、振動体10の振動を妨げることなく、振動体10の撓みを防ぐ働きをする。
【0048】
(変形例6)
上記実施形態では、光源を一つのLEDとしたが、本発明はこれに限定されない。光源は複数のLEDを含んでもよい。また、LED以外の他の発光素子を光源として用いてもよい。
【0049】
(変形例7)
上記実施形態では、音響装置1のLEDパネル200のX方向およびY方向の長さと静電型スピーカ100のX方向およびY方向の長さは同じであったが、本発明はこれに限定されない。LEDパネル200のX軸方向及び/またはY軸方向の寸法が静電型スピーカ100より大きくてもよいし、或いは、その逆でもよい。LEDパネル200のX軸方向及び/またはY軸方向の寸法が静電型スピーカ100より大きい場合、一つのLEDパネル200に対し複数の静電型スピーカ100を組み合わせて音響装置1を構成してもよい。例えば、LEDパネル200のX軸方向及びY軸方向の寸法が静電型スピーカ100の2倍の場合、一つのLEDパネル200に対し4つの静電型スピーカ100を組み合わせてもよい。逆に、LEDパネル200のX軸方向及び/またはY軸方向の寸法が静電型スピーカ100より小さい場合、複数のLEDパネル200に対し一つの静電型スピーカ100を組み合わせて音響装置1を構成してもよい。
【0050】
(変形例8)
上記実施形態では、音響装置1は電気音響変換部として、電気信号(音響信号)を音に変換して出力する発音部(静電型スピーカ100)を有するものとしたが、本発明はこれに限定されない。外部からの音に応じた振動体10の振動を電気信号に変換して出力することにより、静電型スピーカ100を静電型マイクロフォン(収音部)として用いることも可能である。具体的には、外部からの音により振動体10が振動すると、振動体10と固定電極20U、20Lとの間の距離が変わるため、振動体10と固定電極20U、20Lとの間の静電容量が変化する。振動体10、固定電極20U、および固定電極20Lに適切な電圧を印加しておくと、静電容量の変化に応じて固定電極20Uと固定電極20Lとの間に電流が流れるので、この電流に応じた電気信号を出力すればよい。このように、電気音響変換部はマイクロフォン(収音部)であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・音響装置、10・・・振動体、11・・・貫通孔、20U、20L・・・固定電極、22U、22L・・・貫通孔、30U、30L・・・スペーサ、40・・・基板、41・・・LED、42・・・貫通孔、50・・・変圧器、60・・・入力部、70・・・バイアス電源、80・・・スペーサ、100・・・静電型スピーカ、101・・・スピーカ駆動回路、200・・・LEDパネル、201・・・LED駆動回路、300・・・制御部、301・・・記憶部、302・・・通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部と、
二次元的に間隔をあけて配置された複数の光源と、これら光源が取着される基板とを有し、前記電気音響変換部の前記振動体に重ねて配置された発光部と
を有し、
前記発光部の前記基板の少なくとも一部に、音を通過させる貫通孔が設けられていることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
二次元的に配置された複数の光源を有する発光部と、
前記複数の光源に対向して配置された平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部と
を有し、
前記振動体に前記複数の光源から発せられた光を通過させる貫通孔が形成されていることを特徴とする音響装置。
【請求項3】
二次元的に間隔をあけて配置された各々接続用のリードを有する複数の光源と、これら光源のリードが取着される基板とを有する発光部と、
平坦面を有する振動体を具備する電気音響変換部と
を有し、
各光源のリードは、前記振動体を該振動体の振動方向に貫通して前記基板に取着されていることを特徴とする音響装置。
【請求項4】
前記光源の各々のリードは絶縁体により被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記電気音響変換部は前記振動体から当該振動体の面に垂直な方向に離間して配置された導電性を有する板状の固定電極を更に具備し、前記振動体と前記固定電極により静電型の電気音響変換部が構成されており、
前記発光部の前記基板は、
絶縁性の板状部材と、
前記電気音響変換部に対向する前記板状部材の一面に設けられ前記電気音響変換部の前記固定電極として機能する導電層と、
前記板状部材の他面に設けられ、前記光源の配線をする配線層と
を有することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21684(P2013−21684A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126991(P2012−126991)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】