説明

音響部材を有するラウドスピーカ

本発明は、音響部材(10)及び駆動ユニット(21)を有する大きなエクスカージョンを有するラウドスピーカ(20)に係る。音響部材は、ピストンモードにおける稼動を意図され、且つ板状ボディ(1)を備えられる。駆動ユニットは、移動軸(x)に沿って音響部材を移動させるよう意図され、該移動軸は、板状ボディのメイン面に対して実質的に垂直に方向を定められる。音響部材は、移動軸から見て、互いに対して軸方向に距離をおいて配置される2つの可撓性のサスペンション(25,27)の配置によってフレーム(23)からサスペンドされる。製造上の理由により、板状ボディは、リップ(3)の構造を有する。リップは、メイン面に対して実質的に垂直に延在し、且つ板状ボディの一体部分である。サスペンションのうち一方は、リップの構造に対して取り付けられるスパイダーサスペンション(27)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響部材と、駆動ユニットと、フレームとを有するラウドスピーカに係る。該音響部材は、ピストンモードにおける稼動を意図され、また、板状ボディを備えられる。該駆動ユニットは、板状ボディのメイン面に対して実質的に垂直に方向を定められる移動軸に沿って、音響部材を移動させる。該フレームからは、移動軸に沿って見ると、互いから軸方向に距離をおいて配置される2つの可撓性のサスペンションの配置によって、音響部材がサスペンドされる。
【背景技術】
【0002】
US−A 6,095,280(特許文献1)は、可動コイル型の大きなエクスカージョン(large−excursion)ラウドスピーカを開示する。該ラウドスピーカは、フレームによって支持される平らなデュアルスキン(dual−skin)ダイアフラムと、フォーマ(former)及びフォーマによって支持される音声コイル巻き線を有する音声コイルと、電磁モータによって直線的に動かされると同時に磁気ギャップにおいて音声コイルを安定化及びセンタリングさせるシステムと、を有する。当該システム(系)は、ダイアフラムの下部に対して接着されるアダプタリング(adaptor ring)又は含浸フォーム(impregnated foam)を用いてダイアフラムに対して取り付けられる管状安定器と、一端においてフレームに対して取り付けられ、他端において管状安定器の下方端部に対して取り付けられる波形のサスペンダを有するスパイダーサスペンション(spider−suspension)と、内側端部上でダイアフラムの外周端部に対して取り付けられ、外周端部上でフレームに対して取り付けられる弓状ロールを有するロールサスペンションと、を有する。
【0003】
既知のラウドスピーカの音声コイルを安定化し且つセンタリングするシステムは、多少製造が容易ではなく、高価なシステムである。
【特許文献1】US−A 6,095,280
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため本発明は、大きなエクスカージョンラウドスピーカとして適切であり、且つ音響部材の運動を安定化するよう製造が容易な構造を有する、ラウドスピーカを与える、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明に従ったラウドスピーカによって達成される。当該ラウドスピーカは、ピストンモードにおける稼動を意図され且つ板状ボディを備えられる音響部材、板状ボディのメイン面に対して実質的に垂直に方向を定められる移動軸に沿って音響部材を移動させる駆動ユニット、及び、移動軸から見て、互いにから軸方向に距離をおかれる2つの可撓性のサスペンションの配置によって音響部材がサスペンドされるところのフレーム、を有する。該板状ボディは、メイン面に対して実質的に垂直に延在し且つ板状のボディの一体部分である、リップの構造を有し、また、サスペンションのうち少なくとも一方は、リップの構造に対して取り付けられる。
【0006】
本発明に従ったラウドスピーカにおいて、リップの構造は、高出力の用途に対する非常に大きなエクスカージョンが求められる際でも、音響部材の安定した運動を獲得及び保持するよう前出の2つのサスペンションの間に各々所望の軸方向距離を作る役割を果たす。板状ボディ及びリップの構造は、製造が容易である一個構成の構成部品を形成する。板状ボディは、アルミニウム又はマグネシウムのシート等の金属シートであり得、リップは、シートから出て湾曲される部分である。あるいは、板状ボディは、特にはプラスチック製品である射出成形製品であり得、故に一体化されるリップを備えられる。適切なプラスチックは、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、及びポリプロピレン(PP)である。プラスチックの代わりに、射出成形によって板状ボディを製造するよう、適切な他の材料が使用され得る。本発明に従ったラウドスピーカにおいて適用される板状ボディの全ての可能な変形は、既知の機械によって低い製造コストで大量生産され得る。更には、板状ボディ、特にはそのリップの構造及びサスペンションの組立ては、単純に自動化されて行われ得る。ラウドスピーカの製造に関する上述された利点の他に、本発明に従ったラウドスピーカは、適用される構造がその技術的特徴を制限することなく自由な設計の選択を与える、という更なる利点を有する。特には、ラウドスピーカの奥行きは、音響部材に大きなエクスカージョンが所望されるにもかかわらず、大変小さくなり得る。
【0007】
ボディを補強するようリブの構造を板状ボディに与える、ことは望ましい。望ましくは、かかるリブは、板状ボディのメイン面に対して実質的に平行に延在し、その一体部分である。設計上の理由により、リブは少なくとも部分的に音響部材の輪郭に対応して方向を定められる、ことが所望される。板状ボディが金属シートである際、リブは、板状ボディから出て湾曲される部分であり得るか、あるいは板状ボディから押し出される部分であり得る。
【0008】
本発明に従ったラウドスピーカの実際的な一実施例では、音響部材は、板状ボディに対して平行に延在する膜を備えられ、該膜のメイン面は、板状ボディのメイン面に対して取り付けられる。該膜は、金属、プラスチック、ガラス、又は紙等の適切な材料を有して作られ得る。
【0009】
JP−A−57−2193は矩形のスピーカダイアフラムを開示する、ことが留意される。該矩形のスピーカダイアフラムは、サンドウィッチ構造を有し、また、ダイアフラムのメイン面に対して接着され且つダイアフラムの長さ方向において延在する2つの補強ビームを備えられる。
【0010】
更に、US−A 4 928 312が平面天井スピーカパネルを開示する、ことは留意される。該パネルは、発泡スチロールを有する周縁部、及び周縁部から弾性的にサスペンドされる発泡ポリマを有するダイアフラム部を有する。ダイアフラムは、ダイアフラムを剛性にするよう半径方向に拡大する複数のリブを有する。
【0011】
既知の矩形スピーカダイアフラム及び既知の平面天井スピーカパネルはいずれも、本発明に従ったラウドスピーカと直接的ではない関係(oblique relationship)を有するのみである。
【0012】
本発明に従ったラウドスピーカの実際的な一実施例では、駆動ユニットは、フレームに対して固定される固定駆動部分、及び板状ボディに対して固定される移動可能駆動部分を有する。駆動ユニットは、周知の電磁型であり得る。即ち、移動可能駆動部分は通電コイルを備えられ、固定部分は永久磁石を備えられるか、あるいはその逆である。この実施例では、リップは、望ましくは、移動可能駆動部分の周囲に延在する域において位置付けられる。
【0013】
本発明に従ったラウドスピーカの更なる実際的な一実施例では、サスペンションのうち一方は、スパイダーサスペンションである。該スパイダーサスペンションは、既知の種類であり得、リップに対してその内周端部の近くにおいて接着され、フレームに対してその外周端部の近くにおいて固定される。他方のサスペンションは、望ましくはロールサスペンションである。該ロールサスペンションは、既知の種類であり得、板状ボディに対してその内周端部の近くにおいて固定され、フレームに対してその外周端部の近くにおいて固定される。
【0014】
本発明に従ったラウドスピーカは、TVオーディオ、ハイファイオーディオ、家庭用オーディオ、及びマルチメディアオーディオのシステムにおける音響再生に対して適切であり、特には高出力音響システムに向いている。
【0015】
本発明はまた、本願中に開示される板状ボディの特徴を提示し、且つ本発明に従ったラウドスピーカにおける使用に対して構成され、また該使用に対して明らかに意図される、板状ボディに係る。
【0016】
本発明は更に、本発明に従った板状ボディを有する音響部材に係る。望ましくは、本発明に従った音響部材は、板状ボディに対して平行に延在する膜を備えられる。
【0017】
請求項を参照すると、請求項中に開示される実施例及び特徴の多種の組合せが、可能であり及び/又は本発明の範囲内に意図される、ことは留意される。かかる組合せは、本発明の一部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明はこれより、例証として図面を参照してより詳細に説明される。
【0019】
図1乃至図3中に示される板状ボディ1は、原理上、リップ4の構造及びリブ5の構造を備えられるシートである。この実施例では、シートは、アルミニウムを有して作られ、更には中央開口7を備えられる。リップ3、リブ5、及び開口7は、穿孔、切断、及び/又は湾曲等の既知である機械的方法又は工程によって形成される。板状ボディ1が射出成形製品である際、リップの構造及びリブの構造、また場合によっては中央開口は、成形工程中に形成され得る。
【0020】
図示される板状ボディ1は、中央開口7の周囲に一様に位置付けられ、また板状ボディ1のメイン面1aに対して垂直に方向を定められる、4つのリップ3を有する。リップ3は、以下に説明されるサスペンションを取り付ける役割を果たす。
【0021】
図示される板状ボディ1は更に、板状ボディ1のメイン面1aに対して平行に延在し、且つ板状ボディ1の輪郭1bに沿って主に方向を定められる、4つのリブ5を有する。リブ5は、板状ボディ1を補強する役割を果たす。
【0022】
図4中に示される音響部材10は、板状ボディ1及び板状ボディ1に対して平行に延在する膜12を有する。膜12は、既知の適切な膜材料を有して作られる。本実施例では、材料は、特にはポリカーボネート(PC)であるプラスチックである。他の適切な材料は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)である。膜12のメイン面12aは、本実施例では接着剤を用いて、板状ボディ1のメイン面1aに対して取り付けられる。上述された通りに製造される音響部材10は、所望の剛性を有し、また、板状ボディ1及び膜12の特性が互いから独立して選択され得るという事実により、ピストンモードにおける稼動に対して優れた特徴を有する。
【0023】
図5及び図6中に示されるラウドスピーカ20は、音響部材10と、移動軸xに沿って音響部材10を駆動する駆動ユニット21と、音響部材10をサスペンドし且つ駆動ユニット21を支持するフレーム23と、を有する駆動ユニット21は、フレーム23に対して固定される固定駆動部分21a、及び音響部材10の板状ボディ1に対して固定される移動可能駆動部分21bを有する。固定駆動部分21aは、永久磁石及び空隙を形成する磁石ヨークを有する磁石系を有する。移動可能駆動部分21bは、コイル支持及び前出の空隙において延在する音声コイルを有する、コイル系を有する。かかる駆動ユニットは一般的に既知であるため、本願では更には説明されない。あるいは、固定駆動部分はコイル系を有し得、移動可能駆動部分は磁石系を有し得る。
【0024】
移動可能駆動部分21bは、板状ボディ1の中央開口7と同軸であり、本実施例では、部分的に開口7を取り囲む2つの湾曲したカラー部7aに対して粘着剤を用いて取り付けられる。適切な粘着剤は、例えば既知の二成分型接着剤である。
【0025】
ラウドスピーカ20は、2つの可撓性のサスペンション25及び27を有するサスペンション系を備えられる。サスペンション25は、既知のリング形の弓状ロール(arruate roll)を有する所謂ロールサスペンションであり、ゴム又はフォーム(foam)等を有して作られる。その内周端部25aは板状ボディ1に対して固定される一方、その外周端部25bはフレーム23に対して固定される。サスペンション27は、既知のリング形の波形ボディを有する所謂スパイダーサスペンションであり、繊維製品等を有して作られる。その内周端部27aはリップ3に対して固定され、その外周端部27bはフレーム23に対して固定される。かかる全ての固定は、上述された特定の粘着剤等の適切な接着剤を利用して実現され得る。
【0026】
本発明の範囲内において、示される実施例とは異なることが可能である、ことは留意される。例えば、円形の板状ボディ又は矩形の中央開口を有する板状ボディを適用することは、発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従った板状ボディの一実施例の概略的平面図である。
【図2】図1の実施例中のII−IIの概略的断面図である。
【図3】図1の実施例中のIII−IIIの概略的断面図である。
【図4】本発明に従った音響部材の一実施例の概略的分解組立図である。
【図5】本発明に従ったラウドスピーカの図1の実施例中の断面II−IIに対応する概略的断面図である。
【図6】図5中に示される図1の実施例中の断面III−IIIに対応する概略的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウドスピーカであって、
・ ピストンモードにおける稼動を意図され、板状ボディを備えられる、音響部材と、
・ 前記板状ボディのメイン面に対して実質的に垂直に方向を定められる移動軸に沿って前記音響部材を移動させる、駆動ユニットと、
・ 前記移動軸に沿って見ると、互いから軸方向に距離をおく2つの可撓性のサスペンションの配置によって、前記音響部材がサスペンドされるフレームと、
を有し、
前記板状ボディは、リップの構造を有し、前記リップは、前記メイン面に対して実質的に垂直に延在し、また前記板状ボディの一体部分であり、前記サスペンションのうち少なくとも一方は、前記リップの構造に対して取り付けられる、
ラウドスピーカ。
【請求項2】
前記板状ボディは、補強するようリブの構造を有し、前記リブは、前記メイン面に対して実質的に平行に延在し、且つ前記板状ボディの一体部分である、
請求項1記載のラウドスピーカ。
【請求項3】
前記音響部材は、前記板状ボディに対して平行して延在する膜を備えられ、前記膜のメイン面は、前記板状ボディの前記メイン面に対して取り付けられる、
請求項1又は2記載のラウドスピーカ。
【請求項4】
前記板状ボディは、金属シートであり、前記リップは前記シートから出て曲げられる部分である、
請求項1乃至3記載のラウドスピーカ。
【請求項5】
前記リブは、前記音響部材の輪郭に対応して少なくとも部分的に方向を定められる、
請求項2記載のラウドスピーカ。
【請求項6】
前記板状ボディは、金属シートであり、前記リブは、前記シートから出て、又は前記シートから押し進められて曲げられる部分である、
請求項2記載のラウドスピーカ。
【請求項7】
前記駆動ユニットは、前記フレームに対して固定される固定駆動部分と、前記板状ボディに対して固定される移動可能駆動部分とを有し、
前記リップは、前記移動可能駆動部分の周囲に延在する域において位置付けられる、
請求項1乃至3記載のラウドスピーカ。
【請求項8】
前記サスペンションの一方は、スパイダーサスペンションであり、その内周端部の近くにおいて前記リップ部に対して接着され、その外周端部の近くにおいて前記フレームに対して固定される、
請求項1乃至3記載のラウドスピーカ。
【請求項9】
前記サスペンションの他方は、ロールサスペンションであり、その内周端部の近くにおいて前記板状ボディに対して固定され、その外周端部の近くにおいて前記フレームに対して固定される、
請求項8記載のラウドスピーカ。
【請求項10】
前記板状ボディは、アルミニウム又はマグネシウムを有して作られる、
請求項1乃至3記載のラウドスピーカ。
【請求項11】
前記板状ボディは、射出成形製品である、
請求項1乃至3記載のラウドスピーカ。
【請求項12】
前記膜は、金属、プラスチック、ガラス、又は紙を有して作られる、
請求項2記載のラウドスピーカ。
【請求項13】
板状ボディであって、
請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の板状ボディの全ての特徴を提示し、
故に請求項1乃至12のうちいずれか一項記載のラウドスピーカにおける使用に対して構成され、且つ明らかに前記使用を意図される、
板状ボディ。
【請求項14】
請求項13記載の板状ボディを備えられる、
音響部材。
【請求項15】
前記板状ボディに対して平行に延在する膜を備えられる、
請求項14記載の音響部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−515325(P2008−515325A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534163(P2007−534163)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053212
【国際公開番号】WO2006/035412
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507176747)ピーエスエス・ベルギー・エヌブイ (10)
【氏名又は名称原語表記】PSS Belgium NV
【住所又は居所原語表記】Hoogveld 50, 9200 Dendermonde, Belgium
【Fターム(参考)】